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STP分析とは 例とやり方とテンプレート 全員に売りたいをやめて自社サイトの一文を決める手順

2026 10/31
2026年10月31日
中野輝規
STP分析とは 例とやり方とテンプレート 全員に売りたいをやめて自社サイトの一文を決める手順

STP分析を調べると、市場を細かく分ける、狙う相手を選ぶ、立ち位置を決める、という3つの段の説明と、有名な会社を使った記入例が出てきます。説明を読めば意味は分かるのに、自社のホームページの何を書き換えればよいのかは、どの解説にも書かれていません。

この記事は、中小企業の経営者と、マーケティングの表づくりを任されたWeb担当者に向けて書きました。STP分析の意味、3つの段の中身、やり方、記入例、テンプレートを押さえます。そのうえで「全員に売りたい」という気持ちを手放して、市場の切り口を1つ選び、それを自社サイトのトップの一文、対象外の明記、比較のページに落とすところまで進めます。

使った資料は、書いた日に開いて確かめたものだけです。ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の「市場細分化」の項目、神戸大学の学術成果リポジトリで公開されているポジショニングに関する論文、総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査の3つです。どれも2026年10月31日に開いて、記述を確認しました。

STP分析を最初に唱えた人物と年は、辞書や学術の一次情報で確かめられませんでした。そのため、この記事には書いていません。

目次

先に答え:STP分析は、「全員に売りたい」をやめて、サイトの一文を決める道具として使う

STP分析とは、市場を分け、狙う相手を選び、その相手にとっての自社の立ち位置を決める、3段の手順です。読み方は「エスティーピーぶんせき」です。

3つの段の頭文字を取って、この名前が付いています。セグメンテーションは市場を分ける段、ターゲティングは分けた市場から狙う相手を選ぶ段、ポジショニングはその相手にとって自社をどんな存在にするかを決める段です。

次の表が、3つの段の役割です。

段 呼び名 答える問い 出てくるもの
S セグメンテーション 買ってくれる人は、どんな集まりに分けられるか 市場の切り口の一覧
T ターゲティング その中で、自社はどの集まりを狙うか 狙う集まりと、狙わない集まり
P ポジショニング 狙う集まりにとって、自社は何で選ばれる存在か 選ばれる理由を言い切る一文

3つの段を表に埋めること自体は、1時間もあれば終わります。ところが、埋めた表を眺めても、来週から何を直せばよいのかは見えてきません。

見えない原因は、表の出口が決まっていないところにあります。表は途中の材料にすぎません。中小企業にとっての出口は、自社サイトの最初の1画面に置く一文です。

「全員に売りたい」という気持ちは、経営者なら誰でも持っています。しかし、全員に向けて書いた一文は、誰にも刺さりません。STP分析は、この気持ちに区切りを付けるために使います。

区切りを付けるとは、買ってほしくない人、買ってもらえなくてよい人を、先に決めることです。決めた結果は、サイトの3か所に現れます。

1か所目は、トップページの最初の一文です。2か所目は、対象外を書いた短い案内です。3か所目は、自社と他の選択肢を並べて見せる比較のページです。

この3か所を書き換える手順を、記事の後半で順に示します。

「全員に売りたい」が生まれる場面

「全員に売りたい」は、わがままから生まれるわけではありません。経営の事情から自然に出てくる気持ちです。

次の表に、よくある場面と、その気持ちの裏にある事情を並べました。

場面 出てくる言葉 裏にある事情
売上が落ちた月 「どんなお客様でもいいから来てほしい」 固定の支払いが、先に頭をよぎる
問い合わせを断った後 「断らなくて済む形にしたい」 断った相手を、損失として数えてしまう
ホームページの打ち合わせ 「対応できることは全部載せてください」 載せなかった仕事が来なくなる不安がある
競合の広告を見たとき 「うちも同じ範囲をカバーしたい」 範囲の広さが強さだと考えている

どの言葉も、もっともな不安から出ています。ただ、不安に従って範囲を広げるほど、トップページの一文は薄くなります。

薄くなった一文は、読んだ人に「自分のための会社だ」と感じさせません。感じさせないまま離れる人が、静かに増えていきます。

先日見かけたQ&Aサイトの悩み:「ターゲットが見えているのに、市場を細かく分ける意味が分からない」

先日、Q&Aサイトでこのような質問を拝見しました。マーケティングの本でSTP分析を学んでいる方が、実際の使い方で引っかかっていました。

その方が読んだ本には、市場を分ける変数として、地域、人口、行動、心理の4種類が載っていたそうです。事例には、男性と女性、日本と海外といった分け方もありました。

質問者は、ここで疑問を持ちました。たとえば大学受験の対策アプリを売る場合、買う人は学生だと最初から見えています。それなのに、30代や40代まで含めて市場を分ける意味が分からない、というのです。

質問者が考えた、実務の順番

質問者は、実際の仕事ではこの順番になるのではないか、と書いていました。

まず、商品から想定される相手を仮に置きます。次に、その仮の相手の中を細かく分けます。分けた結果から相手を確定して、最後に立ち位置を決めます。

つまり、T、S、T、Pの順になる、という整理です。質問者は、教科書どおりのS、T、Pの順が、実務に合っていないのではと感じていました。

寄せられた答えは、順番は行き来してよい、というものでした

この質問への答えの一つは、実務では順番にこだわらなくてよい、という内容でした。3つの段は流れ作業のように左から右へ進む決まりはなく、行ったり来たりしながら固めていくものだ、という説明です。

私は、この答えは正しいと考えます。同時に、質問者の違和感にも筋が通っています。

質問者が引っかかったのは、順番ではありません。分けた結果で何を決めるのかが、本の説明からは見えなかったことです。決めることが見えていないと、分ける作業は、ただの分類遊びに感じられます。

中小企業のホームページでも、同じ所で手が止まる

この質問は、学生や教科書の話に限りません。自社のSTP分析を任された担当者も、同じ所で手が止まります。

市場を分けても、狙う相手を選んでも、それがホームページのどこに出るのかが見えないからです。分析と制作が、別の部屋で行われています。

この記事では、分けた結果で決めることを、最初に固定します。決めるのは、サイトのトップに置く一文と、その一文を支える2つのページです。出口が決まれば、市場の分け方も、選び方も、迷いが小さくなります。

次の表は、質問者の迷いと、この記事での答えの対応です。

質問者の迷い 迷いが生まれる理由 この記事での答え
相手が見えているのに、なぜ分けるのか 分けた結果で何を決めるかが見えていない 分けた結果で、サイトの一文を決める
順番はS、T、Pでよいのか 教科書は流れを一本道で描く 行き来してよい。ただし出口は固定する
男女や年代で分けて意味があるのか 分け方の軸が、買う理由と結び付いていない 買う理由に近い軸だけで分ける
結局、何を書き換えればよいのか 分析とサイト制作が別の作業になっている トップの一文、対象外、比較のページの3か所

STP分析とは:3つの段の意味と、読み方

ここからは、STP分析そのものの意味を、一つずつ確認します。辞書で確かめた範囲と、確かめられなかった範囲を分けて書きます。

セグメンテーションは、市場を何かの基準で分けること

セグメンテーションは、日本語では市場細分化と呼ばれます。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の「市場細分化」の項目には、「市場を何らかの基準で人為的に分割し,さまざまに細分化した市場を成立させるとともに,きめ細かいマーケティング・プログラムを持ってアプローチすることを意図した市場開発の有力な方策」と書かれています。

この一文の中で大事なのは、「人為的に」という言葉です。市場には、最初から線が引かれているわけではありません。売る側が基準を決めて、線を引きます。

同じ項目には、基準の種類も挙げられています。地理的変数、人口統計学的変数、心理的変数、行動変数の4つで、複合的に使われることも多い、と書かれています。

質問者が読んだ本に載っていた4種類は、この項目の記述と一致しています。

4種類の変数の中身

事典の記述には、それぞれの変数の例も添えられています。次の表は、その記述をもとに、中小企業の言葉で言い換えたものです。

変数の種類 事典に載っている例 中小企業の言葉に直すと
地理的変数 地域、人口密度、気候 商圏、車で通える範囲、雪の多い地域か
人口統計学的変数 性別、年齢、職業 経営者か担当者か、従業員の人数、業種
心理的変数 ライフスタイル、性格 安さを重んじるか、安心を重んじるか
行動変数 購買機会、使用頻度 初めて頼むか、毎月頼むか、急ぎで頼むか

4つの変数は、全部使う必要はありません。買う理由に近い変数を、1つか2つ選べば足ります。

ターゲティングは、分けた市場から狙う集まりを選ぶこと

ターゲティングは、セグメンテーションで分けた集まりの中から、自社が狙う集まりを選ぶ段です。

辞書では、この段の定義を確かめられませんでした。そのため、この記事では、事典で確かめられた市場細分化の記述を土台に、狙う集まりを選ぶ段として説明します。

ここで大事なのは、選ぶことは、選ばないことと同時に起きる点です。1つの集まりを狙うと決めると、他の集まりは、いまは狙わないと決めたことになります。

小さな会社にとって、狙わない集まりを決める作業は、狙う集まりを決める作業より難しくなります。目の前の売上を、手放すように感じるからです。

ポジショニングは、狙う相手の頭の中に居場所を作ること

ポジショニングは、狙う相手にとって、自社がどんな存在かを決める段です。

神戸大学の学術成果リポジトリで公開されている論文は、ポジショニングの本来の役割を「自社製品のユニークな提供価値やイメージを顧客の頭の中に刷り込み、その脳内に固有の居場所を確保すること」と述べています。論文の著者は結城祥氏で、2021年12月の発行です。

同じ論文は、ポジショニングを「知覚マップを作って自社製品の位置を競合他社から少しずらすこと」とは違うものだと述べています。

つまり、ポジショニングの舞台は、買う人の頭の中です。競合との図の上は、舞台に含みません。図を描くことは、そのための手段にすぎません。

この見方は、自社サイトの文章に直結します。買う人の頭の中に居場所を作るのは、最初の1画面で読ませる一文だからです。

3つの段の関係を、1枚の表にまとめる

3つの段を、決めること、決めないこと、サイトでの現れ方の順に並べます。

段 決めること 決めないこと サイトでの現れ方
セグメンテーション 市場を分ける軸と、分けた集まりの名前 どの集まりを狙うか まだ現れない。社内の材料
ターゲティング 狙う集まり1つと、狙わない集まり 何で選ばれるか 対象外の案内と、トップの読者の呼びかけ
ポジショニング 狙う集まりに選ばれる理由 具体的な料金や仕様 トップの一文と、比較のページ

この表の右端の列が、この記事の出口です。左の2列は、社内で使う材料です。

順番は、行き来してよい

質問者が悩んだ順番については、行き来してよいと考えます。

実際の中小企業では、狙いたい相手が先に見えていることが多いからです。大学受験のアプリの質問者のように、相手を仮置きしてから、その中を分けるのは、自然な進め方です。

ただし、仮置きした相手を、そのまま確定してはいけません。仮置きの相手の中を分けてみて、初めて、本当に狙いたい集まりが見えてきます。

仮置きから始めても、出口は変わりません。最後に、サイトの一文に落ちるかどうかを確かめます。

近い分析との違い

STP分析に近い分析が、いくつかあります。取り違えやすいので、役割の違いを表にします。

分析 見ているもの 使う場面
3C分析 顧客、競合、自社の3方向 市場の全体像をつかむとき
SWOT分析 自社の強みと弱み、外の機会と脅威 自社の立ち位置を内と外から見直すとき
STP分析 市場の分け方、狙う集まり、選ばれる理由 誰に何で選ばれるかを決めるとき
4P分析 製品、価格、流通、販促の4つの欄 決めた相手に向けて売り方を揃えるとき

3C分析とSWOT分析は、STP分析の前に使うことが多い分析です。この記事では詳しく扱いません。

3C分析の使い方は、3C分析の記事に、SWOT分析の使い方は SWOT分析の記事にまとめています。

4P分析は、STP分析の後に使う分析です。狙う相手が決まったあとで、製品、価格、流通、販促の4つの欄を、その相手に向けて揃えていきます。4P分析の読み方と直し方は 4P分析の記事に書きました。この記事では、4つの欄の中身には踏み込みません。

STP分析で決めた相手を、より具体的な一人の姿にしたいときは、ペルソナの作り方の記事が役立ちます。選ばれる理由を一言にまとめたいときは、USPの記事を併せて読んでください。

STP分析を使う場面と、まだ使わない場面

STP分析は、売り方を決める前の段階で使います。次の表に、使う場面と、まだ使わない場面を並べました。

場面 STP分析を使うか 理由
新しいサービスを始める前 使う 誰に売るかが決まっていないと、料金も言葉も決められない
問い合わせが来るが、相手がばらばら 使う 来てほしい相手と、来てほしくない相手を分けられる
ホームページを作り直す前 使う トップの一文を決める根拠になる
開業したばかりで、客が1人もいない 仮置きで使う 実際の客がいないので、仮の相手を置いて試す
既存の客が全員同じ属性で、満足している まだ使わない 分ける必要が小さく、客の声を集めるほうが先

開業したばかりの会社は、客のデータがありません。その場合は、友人や紹介で来た最初の数人の姿を、仮の相手に置きます。

仮の相手は、半年に一度見直します。見直すときの材料は、実際に問い合わせてきた人の言葉です。

分析の結果を残す場所を、先に決めておく

STP分析の結果は、会議の資料に残すだけでは使われません。サイトを触る人の目に入る場所に残します。

具体的には、トップページを編集する人が開く共有メモの先頭に、3行だけ書きます。狙う集まり、狙わない集まり、選ばれる理由の3行です。

この3行が、サイトを直すときの物差しになります。担当者が替わっても、3行を読めば、トップの一文を書いた理由が分かります。

読む人によって、欲しい答えは違う

STP分析を調べる人は、大きく3種類に分かれます。

1種類目は、学校の課題や資格の勉強で調べる人です。この人は、3つの段の定義と、記入例の形が欲しいはずです。前の節までで答えています。

2種類目は、自社の売り方を決めたい経営者です。この人には、狙わない集まりを決める判断の基準が必要になります。

3種類目は、サイトの更新を任された担当者です。この人には、分析の結果をどのページのどの文章に書くか、という手順が欠かせません。

この記事の後半は、2種類目と3種類目の人に向けて書きました。

「分ける」作業に使う材料は、手元にある

市場を分ける、と聞くと、大きな調査が必要に思えます。小さな会社の場合、材料は手元にあります。

過去の問い合わせ、見積りのメモ、断った案件の記録、お礼の言葉。この4種類の記録に、客の状況が書かれています。

手元の材料 入っている情報 分ける軸の見つかり方
問い合わせの文面 悩みの言葉、頼もうとした場面 場面や目的の軸が見つかる
見積りのメモ 規模、時期、予算の感覚 規模や時期の軸が見つかる
断った案件の記録 受けられなかった理由 狙わない集まりの条件が見つかる
お礼の言葉 続けて頼んでくれた理由 選ばれる理由が見つかる

外部の統計や調査資料は、材料が足りないときの補いとして使います。最初に読むのは、自社の記録です。

この記事で使う、3つの架空の会社

記事の後半では、3つの架空の会社を使って、記入表と書き換えを示します。どれも実在の会社ではありません。

A社は、水まわりのリフォームを請け負う、従業員8名の会社です。B社は、中小企業の労務を支える、社会保険労務士の事務所です。C社は、海外の雑貨を仕入れて売る、小さなネットショップです。

3社とも、悩みは同じです。「うちは誰にでも対応できます」と書いたトップページから、問い合わせが増えません。

3社の例を通して、同じ手順が、業種を変えても使えることを確かめます。

STP分析のやり方:材料を集めて、軸を選び、1つの集まりに絞るまでの5つの手順

ここからは、やり方を手順に分けて示します。5つの手順の出口は、いずれも「サイトに置く一文」です。

手順 やること 出てくるもの かかる目安
1 実際の客の記録を5件集める 客の言葉のメモ 半日
2 買う理由に近い軸を1つか2つ選ぶ 市場を分ける軸 1時間
3 分けた集まりに名前を付ける 集まりの一覧 1時間
4 狙う集まりを1つ選び、狙わない集まりを書く 選ぶ理由つきの決定 1時間
5 選ばれる理由を一文にする トップに置く一文の案 1時間

全部で1日あれば終わる量です。1か月かけて作り込むより、1日で粗く通して、サイトに出してから直すほうが、手応えを得られます。

手順1:実際の客の記録を5件集める

最初の作業は、集めることです。机の上で市場を想像する前に、実際に頼んでくれた客の記録を5件集めます。

記録とは、問い合わせの文面、見積りのメモ、電話で聞いた内容、受注後のやり取りなどです。完成した資料である必要はありません。

5件を選ぶときは、次の2つを混ぜます。喜んで続けてくれた客と、一度きりで終わった客です。両方を見ると、自社が選ばれる場面と、選ばれない場面の差が見えてきます。

集める記録 見るところ 見つけたいこと
続けてくれた客の最初の問い合わせ 何に困って連絡してきたか 自社が選ばれる場面
一度で終わった客の最初の問い合わせ 何を期待して連絡してきたか 自社に合わなかった場面
見積りの段階で断られた記録 断られた言葉 自社が選ばれなかった理由
断った記録 こちらが断った理由 受けたくない仕事の特徴

記録が5件に満たない場合は、あるだけで始めて構いません。3件でも、想像より確かな材料になります。

手順2:買う理由に近い軸を1つか2つ選ぶ

材料が集まったら、市場を分ける軸を選びます。事典に載っている4種類の変数のうち、客の記録を見て、買う理由に近いものを選びます。

選ぶときの物差しは、1つです。その軸で分けた2つの集まりが、買う理由の違う人たちになっているかを確かめます。

たとえば、水まわりのリフォームの客を、男性と女性に分けたとします。男性の客と女性の客で、頼む理由が違うでしょうか。記録を読むと、違いは小さいことが多いはずです。

別の軸で分けてみます。水まわりが壊れてから急いで頼む客と、壊れる前に計画して頼む客です。この2つでは、頼む理由も、比べる点も、大きく違います。

こちらの軸が、買う理由に近い軸です。

軸の候補 軸の種類 買う理由との近さ 判断
性別 人口統計学的変数 遠いことが多い 買う理由が違うと確かめられたときだけ使う
年齢 人口統計学的変数 商品によっては近い 暮らし方の違いを表すときに使う
住んでいる場所 地理的変数 来店や訪問が要る商売では近い 通える範囲を決める軸として使う
急ぎか、計画的か 行動変数 近い 優先して試す
安さを重んじるか、安心を重んじるか 心理的変数 近い 客の言葉から読み取れるなら使う

軸は、多すぎても少なすぎても使いにくくなります。1つか2つで分けて、4〜6個の集まりができるくらいが、扱いやすい量です。

手順3:分けた集まりに、人の呼び名を付ける

軸で分けると、集まりができます。この集まりに、人の呼び名を付けます。

「急ぎで計画なし」のような軸の言葉のままだと、頭に浮かぶ人の姿が曖昧です。「蛇口の水漏れで、今日中に直したい人」のように、場面が見える呼び名にします。

呼び名は、客の言葉から拾います。記録の中に出てきた言い回しを、そのまま使うと、あとで見出しや一文にも転用できます。

集まりに名前を付けたら、次の4つの点で見比べます。

見る点 問い 判断の目安
大きさ その集まりは、商売が成り立つ程度にいるか 継続して見つかる。周りに数人しかいない状態は避ける
届くか その人たちに、こちらの情報を届けられるか 検索、紹介、掲示など、届く道がある
違いが出せるか 自社の強みが、その人たちの買う理由に合うか 強みと買う理由が重なる
反応するか その人たちは、実際に問い合わせてくるか 過去の記録に、同じ形の問い合わせがある

4つの点のうち、特に見落としやすいのが、4つ目の「反応するか」です。理屈の上で大きな集まりでも、過去の記録に1件もなければ、仮説の域を出ません。

集まりの大きさは、おおまかな数でつかむ

集まりの大きさを確かめるとき、正確な人数を調べる必要はありません。商売が成り立つかどうかを判断できる程度の、おおまかな見当で足ります。

おおまかな見当のつけ方は、自社の過去の記録を使います。この1年に、その集まりに当たる問い合わせが何件あったかを数えます。1年で数件しかなければ、小さすぎる集まりです。

1年の件数 見方 判断
数件 続けて受けるには少ない 他の集まりと合わせて広げる
十数件 商売として成り立つ見込みがある 狙う集まりの候補にする
数十件以上 十分に大きい 候補にする。ただし競合の多さも確かめる

件数が少ない場合は、集まりの呼び名の範囲を、少し広げます。「築30年以上」を「築20年以上」に広げる、といった調整です。

広げすぎると、元の問題に戻ります。広げる幅は、集まりの状況が変わらない範囲にとどめてください。

客の記録がまだ少ない会社の進め方

開業して間もない会社や、新しい事業を始める会社は、客の記録が足りません。その場合の進め方を、表にしました。

状況 材料の集め方 気をつけること
客が0〜2件 開業前の相談、知人からの質問を記録する 身内の意見だけで決めない
客が3〜5件 実際の問い合わせの言葉を並べる 少なくても、読み込んで共通点を探す
客が6件以上 続いた客と終わった客に分けて並べる 続いた客の共通点を、優先して見る

材料が少ないうちは、決めた内容を仮のものとして扱います。仮の一文を出して、問い合わせの反応を記録し、その記録を次の材料にします。

仮でも、一文を出すことには意味があります。出さなければ、反応という材料が、いつまでも手に入りません。

手順4:狙う集まりを1つ選び、狙わない集まりを書く

見比べたら、狙う集まりを1つ選びます。2つ選びたくなる気持ちは、よく分かります。しかし、最初に選ぶのは1つにします。

1つに絞る理由は、サイトの最初の1画面に、一文しか置けないからです。2つの集まりに話しかける文は、1つの集まりにも届かなくなります。

選んだら、同時に、狙わない集まりを書きます。この作業を飛ばすと、ターゲティングは終わりません。

書くこと 書き方の例 書く理由
狙う集まり 「壊れる前に、計画して水まわりを直したい人」 トップの一文の主語になる
選んだ理由 「過去の記録で、継続して頼まれたのがこの集まりだった」 会議で迷ったときの根拠になる
狙わない集まり 「今日中に、最短で直したい人」 対象外の案内の元になる
狙わない理由 「当日の駆け付けには、人手が足りない」 断る場面で言葉に詰まらない

狙わない集まりを書くとき、その人たちが悪い客だという書き方をしてはいけません。この人たちは、別の会社のほうが合っているだけです。

手順5:選ばれる理由を、一文にする

最後の手順が、ポジショニングです。狙う集まりにとって、自社が選ばれる理由を、一文に言い切ります。

一文には、3つの要素を入れます。誰が、何に困っていて、自社のどんな点で応えるのか、の3つです。

要素 書く内容 例
誰が 狙う集まりの呼び名 水まわりが壊れる前に、直す計画を立てたい方へ
何に困っているか 買う理由の元にある悩み 見積りの比べ方が分からず、決められない
自社のどんな点で応えるか 選ばれる理由 工事の順番と、費用の内訳を、図にして先にお見せする

3つの要素を並べて文にすると、次のようになります。

「水まわりが壊れる前に直す計画を立てたい方へ。工事の順番と費用の内訳を、図にして先にお見せします。」

この一文は、急ぎで直したい人には合いません。合わなくてよいのです。合う人には、「自分のための会社だ」と伝わります。

A社の記録5件を、実際に読んでみる

A社の場合、集めた5件の記録は、次のような中身でした。記録の読み方の見本として、要点を並べます。

記録 客の最初の言葉 読み取れること
1件目(続いた) 「築30年で、水まわりがそろそろ心配です」 壊れる前に、全体を見たい
2件目(続いた) 「何年後に何を替えるか、順番を知りたい」 費用の山を、先に知りたい
3件目(一度で終わった) 「蛇口から水が止まらないので、今すぐ来てほしい」 急ぎの駆け付けが目的
4件目(見積りで断られた) 「別の会社のほうが、見積りが早かった」 速さを重んじる客だった
5件目(こちらが断った) 「明日までに、浴室を全部替えたい」 日程に無理がある

5件を並べると、A社が続けて頼まれる場面と、そうでない場面の差が見えてきます。続いた2件は、どちらも壊れる前の相談でした。

この読み方は、特別な技術を要しません。客が最初に書いた言葉を、そのまま表に写して、共通点に線を引くだけです。

手順の行き来は、1往復まで試す

5つの手順は、一本道に見えます。実際には、手順4まで進んでから、手順2に戻ることがよくあります。

戻るきっかけは、狙う集まりを選ぶときに、「この集まりは、思ったより小さい」と気づく場面です。その場合は、軸を変えて、分け直します。

ただし、行き来は1往復までにします。何度も戻っていると、分析が終わらなくなります。1往復して決まらなければ、いま見えている範囲で一旦決めて、サイトに出します。

出してみた結果が、次の分析の材料になります。決めきれない分析より、粗く決めて動かした分析のほうが、多くを教えてくれます。

書いた一文の良し悪しを、3つの問いで確かめる

一文を書いたら、次の3つの問いに通します。1つでも「いいえ」があれば、書き直します。

問い 「はい」の目安 「いいえ」のときの直し方
この一文を読んで、自分のことだと感じる人が、はっきり想像できるか 具体的な場面が1つ浮かぶ 狙う集まりの呼び名を、場面の言葉に直す
この一文を読んで、自分には合わないと感じる人が、いるか いる 範囲を絞る言葉を足す
競合の会社も、そのまま同じ文を載せられるか 載せられない 自社しか言えない実績や手順を入れる

2つ目の問いは、驚かれることが多い問いです。合わないと感じる人がいる一文のほうが、合う人にとって強い文になります。

3つ目の問いは、他社のサイトを実際に開いて確かめます。同じ一文を、他社のトップに貼ってみて、違和感がなければ、まだ薄い文です。

書き直した一文は、声に出して読みます。口に出して引っかかる箇所は、読む人も引っかかります。

軸を間違えたときの見分け方

手順を踏んでも、軸の選び方を間違えることがあります。見分けるサインは、3つあります。

サイン 何が起きているか 直し方
どの集まりを選んでも、同じ一文になる 軸が買う理由と関係していない 別の軸で分け直す
集まりの呼び名が、人の姿として浮かばない 軸の言葉のまま止まっている 客の言葉で呼び名を付け直す
狙わない集まりが、1つも書けない 全員に売る形に戻っている 断った記録を読み返す

軸の選び直しは、失敗ではありません。選んで、書いて、違和感に気づく流れそのものが、分析の作業です。

STP分析の例:3つの架空の会社の記入表

ここからは、3つの架空の会社で、記入表の形を示します。3社とも、手順1から5を、そのまま通した結果です。

A社:水まわりのリフォーム会社(従業員8名)

A社は、これまで「水まわりのことなら何でもお任せください」とトップに書いていました。問い合わせは、蛇口の水漏れから浴室の全面改装まで、ばらばらに届きます。

客の記録5件を読むと、次のことが分かりました。続けて頼んでくれた客は、水まわりが壊れる前に、点検を頼んだ人たちでした。一度で終わった客は、急ぎの修理だけを頼んだ人たちでした。

段 A社の記入
S:分ける軸 行動変数(急ぎか、計画的か)と、地理的変数(通える範囲)
S:できた集まり 今日中に直したい人/壊れる前に計画したい人/築年数が古く、全体を見直したい人/通える範囲の外の人
T:狙う集まり 築年数が古く、壊れる前に水まわり全体を見直したい人
T:狙わない集まり 今日中に直したい人/通える範囲の外の人
P:選ばれる理由 工事の順番と費用の内訳を、図にして先に見せる

A社のトップの一文は、「築年数の古いお宅の水まわりを、壊れる前に順番を決めて直します」に書き換わりました。

B社:社会保険労務士の事務所

B社は、従業員が増えて困っている会社の相談を受ける事務所です。トップには「労務のことなら、どんなご相談も承ります」と書いていました。

客の記録を読むと、続いている客の多くは、従業員が10人前後に増えたばかりの会社でした。就業規則を整えたいが、何から手を付けるのか分からない、という相談が最も多く寄せられていました。

段 B社の記入
S:分ける軸 人口統計学的変数(従業員の人数)と、行動変数(相談のきっかけ)
S:できた集まり 従業員数名で、これから雇う会社/10人前後に増えたばかりの会社/50人を超えた会社/トラブルが起きた後の会社
T:狙う集まり 従業員が10人前後に増えたばかりで、決まりを整えたい会社
T:狙わない集まり 50人を超えた会社/トラブルの対応を急ぐ会社
P:選ばれる理由 最初の1か月で、直す順番を1枚の紙にして渡す

B社のトップの一文は、「従業員が10人前後に増えた会社の、決まりごとの整え方を、順番にお伝えします」になりました。

C社:海外の雑貨を売る小さなネットショップ

C社は、海外から仕入れた雑貨を売る、小さなネットショップです。トップには「あらゆる暮らしに、素敵な雑貨を」と書いていました。

客の記録を見ると、リピートしてくれる客は、贈り物として買う人たちでした。自分用に買う客は、一度買うと、次はなかなか戻ってきませんでした。

段 C社の記入
S:分ける軸 行動変数(購買機会)と、心理的変数(贈る相手への気持ち)
S:できた集まり 自分用に買う人/季節の贈り物を探す人/祝い事の記念に贈る人/仕事の取引先に贈る人
T:狙う集まり 祝い事の記念に、気持ちのこもった物を贈りたい人
T:狙わない集まり 自分用に、最安値で探す人
P:選ばれる理由 贈る相手の暮らしに合わせて、選び方を添えて届ける

C社のトップの一文は、「祝い事の記念に、贈る相手の暮らしを思い浮かべて選べる雑貨店です」になりました。

3社の表を、隣り合う段で照らす

3社の表ができたら、隣り合う段どうしを照らして、食い違いがないかを確かめます。照らす組は、全部で3つです。

照らす組 確かめること 食い違いの例
分ける軸と、狙う集まり 狙う集まりが、選んだ軸の言葉で説明できるか 軸は「急ぎか計画的か」なのに、狙う集まりを年齢で書いている
狙う集まりと、選ばれる理由 選ばれる理由が、その集まりの悩みに答えているか 狙う集まりは慎重な人なのに、理由が「最短で対応」になっている
選ばれる理由と、自社の実際の力 理由に書いたことを、いまの体制で守れるか 「当日対応」と書いたが、人手が足りない

3つ目の組は、見落とされがちです。選ばれる理由を魅力的に書くほど、守れない約束を書いてしまう危険が高まります。

守れるかどうかは、現場の担当者に読んでもらうのが一番確実です。書いた本人が気づけない食い違いを、現場の人は一読で指摘してくれます。

3社の記入表に共通すること

3社の表には、共通点が3つあります。

1つ目は、狙う集まりの呼び名が、人の姿として浮かぶことです。「築年数が古く、壊れる前に見直したい人」と書くと、顔が思い浮かびます。

2つ目は、狙わない集まりが、はっきり書かれていることです。書かれているおかげで、トップの一文が、他の人を呼ばずに済みます。

3つ目は、選ばれる理由が、客の記録から出ていることです。実際に続いた客の姿から拾っています。机の上で考えた強みは使っていません。

共通点 書けていない場合に起きること
狙う集まりが人の姿で浮かぶ トップの一文が、抽象的な言葉の羅列になる
狙わない集まりが書かれている 一文が、あらゆる人に話しかけてしまう
選ばれる理由が客の記録から出ている 競合と同じ言葉の強みになる

3社のトップの一文を、書き換え前と並べる

3社が書き換えた一文を、元の文と並べて読み比べます。読み比べると、絞ることで文が具体的になる様子が分かります。

会社 書き換え前 書き換え後
A社 水まわりのことなら何でもお任せください 築年数の古いお宅の水まわりを、壊れる前に順番を決めて直します
B社 労務のことなら、どんなご相談も承ります 従業員が10人前後に増えた会社の、決まりごとの整え方を、順番にお伝えします
C社 あらゆる暮らしに、素敵な雑貨を 祝い事の記念に、贈る相手の暮らしを思い浮かべて選べる雑貨店です

書き換え前の文は、どの会社のトップに置いても通用します。書き換え後の文は、その会社にしか置けません。

書き換え後の文は、読む人を減らします。減った分だけ、残った読者が、先を読む理由を手にします。

次の章からは、この記入表をサイトに落とすときの、つまずきを見ていきます。

STP分析の表を埋めても、サイトが変わらない5つの症状

3つの段の表が埋まっているのに、ホームページが何も変わらない会社には、共通する症状があります。自社に当てはまるものがないかを、読みながら確かめてください。

症状 起きていること 根にあるもの
1 表が埋まって会議が終わる 分析が成果物になっている 出口が決まっていない
2 狙う集まりが3つも4つも並ぶ 選ぶ作業が終わっていない 狙わない集まりを書けない
3 トップの文が分析の前後で同じ 分析がサイトに届いていない 分析と制作の担当者が別
4 問い合わせが来るが、相手がばらばら 呼びたい人を絞れていない 対象外を書いていない
5 値下げや広告を足しても反応が変わらない 約束が相手に合っていない 選ばれる理由が曖昧

症状1:表が埋まって会議が終わる

会議で3つの段の表を埋めて、全員が納得して解散する場面があります。表は立派に見えます。

ところが、翌週になっても、サイトは1文字も変わっていません。表を見返す人もいません。

この症状は、分析そのものが目的になっているときに起こります。表の最後の行に、「サイトのどの文を、いつまでに、誰が書き換えるか」を入れておくと、止まりにくくなります。

症状2:狙う集まりが、3つも4つも並ぶ

ターゲティングの欄に、狙う集まりが3つも4つも書かれている表があります。

書いた人の意図は、よく分かります。どの集まりも、いずれ客になる可能性があるからです。しかし、並んだ集まりは、選んだことになりません。

3つの集まりに話しかける一文を作ると、結局、「どなたでもどうぞ」に近い文になります。表にいくつ並べてもよいですが、サイトの最初の一文が話しかけるのは、そのうちの1つだけです。

症状3:トップの文が、分析の前後で同じ

分析をしたのに、トップページの最初の一文が、前と同じままの会社があります。

分析をした人と、サイトを触る人が別の部署、または別の会社であることが主な原因です。分析の結果が、サイトを触る人の手元まで届いていません。

届いていない状態は、外から見ても気づけません。分析の結果を、サイトの担当者に渡す場面を、手順の中に1つ作ってください。

症状4:問い合わせは来るが、相手がばらばら

問い合わせの数は悪くないのに、来る相手の用件が毎回違う会社があります。

受けたい仕事の問い合わせが1割で、残りは受けられない仕事や、利益の出ない仕事、という状態です。対応に時間を取られ、肝心の仕事に手が回りません。

呼びたい人を絞れていないことが原因です。サイトに「対応できること」ばかり書いて、「対応しないこと」を1行も書いていません。

症状5:値下げや広告を足しても、反応が変わらない

反応が薄いときに、料金を下げる、広告を増やす、という手に出る会社があります。

選ばれる理由が曖昧なままでは、値下げをしても、広告を増やしても、読んだ人に「自分のための会社だ」と伝わりません。伝わらない約束に、お金を足しても、効果は出にくくなります。

A社に起きたこと:呼びたくない客からの問い合わせが、9割になった

A社は、トップに「水まわりのことなら何でもお任せください」と書いていました。問い合わせの用件を1か月分並べると、次の内訳でした。

用件 件数の割合 A社にとって
蛇口やトイレの小さな修理 6割 利益が薄く、移動が大きな負担になる
浴室やキッチンの全面改装の見積り 3割 受けたい。ただし相見積りが多い
壊れる前の点検と、順番の相談 1割 最も受けたい。継続して頼まれる

最も受けたい用件が、1割しかありません。トップの文が、小さな修理を呼び込んでいたからです。

A社が悩んでいたのは、忙しいのに利益が残らない状態でした。売上そのものは落ちていません。

B社に起きたこと:対応範囲を全部書いたら、何の事務所か分からなくなった

B社は、労務の相談に幅広く対応できる事務所です。トップに、対応できる業務を20項目並べました。

項目を並べるほど、どんな会社に向いているのかが見えなくなりました。読んだ人は、「よく分からないから、とりあえず別の事務所も見てみよう」と画面を戻します。

B社の20項目は、全部本当のことです。ただ、本当のことを全部並べると、特徴が消えます。

C社に起きたこと:自分用の客が増えて、贈り物の客が離れた

C社は、「あらゆる暮らしに、素敵な雑貨を」とトップに書いていました。広告を足すと、アクセスは増えました。

増えたのは、自分用に、できるだけ安く買いたい人たちでした。この人たちは、1回買うと、次に別の店の安い商品を見つけて、戻ってきません。

贈り物を探していた人たちは、サイトの商品一覧が自分用の商品と混ざっていて、贈り物に向くかどうかを判断できませんでした。判断できないまま、別の店へ移りました。

C社の問題は、商品の質ではありません。サイトの最初の一文が、贈り物を探す人に話しかけていなかったことです。

自社の症状を診断する

5つの症状のうち、自社がどれに当たるかを、次の表で見分けます。当てはまる行に印を付けてください。

確かめる質問 当てはまるとき 近い症状
分析の表は、会議のあと開かれていないか 開かれていない 症状1
狙う集まりの欄に、3つ以上書いていないか 書いている 症状2
トップの最初の一文は、分析の前と同じか 同じ 症状3
先月の問い合わせの用件が、ばらばらではないか ばらばら 症状4
値下げや広告を足して、用件の質は変わったか 変わっていない 症状5

印が2つ以上付いたら、サイトの最初の一文を見直す価値があります。1つだけなら、その症状の節だけ読み返してください。

症状の根は、サイトの一文が約束を広げすぎていること

5つの症状は、見た目がばらばらです。根は、ひとつにつながっています。

サイトの一文が、実際の中身より広い約束をしているのです。広い約束は、広い範囲から問い合わせを集めます。集まった問い合わせは、実際の中身と合いません。

約束の広さ 集まる問い合わせ 起きること
広すぎる 用件がばらばら 受けたくない仕事が増える
中身と合っている 用件が揃う 受けたい仕事が増える
狭すぎる 数が少ない 機会を逃す

狭すぎる場合も、問題はあります。ただ、中小企業のホームページで多いのは、広すぎる約束のほうです。

5つの症状を、3つの落とし先で直す

5つの症状は、サイトの3か所の落とし先を整えると、多くが同時に直ります。どの症状にどの落とし先が効くかを、表に示します。

症状 最も効く落とし先 直る理由
1 表が埋まって会議が終わる 3か所すべて 出口が決まり、担当者と期日が付く
2 狙う集まりが並ぶ トップの一文 一文に入るのは1つの集まりだけなので、選ばざるを得ない
3 トップの文が変わらない トップの一文 書き換える場所が、はっきりする
4 相手がばらばら 対象外の案内 合わない人が、問い合わせる前に気づく
5 値下げしても反応が変わらない 比較のページ 選ぶ基準を、先に買う人へ渡せる

経営者は、分析の結論に責任を持ち、サイトの担当者は、一文の言葉を整えます。役割を分けると、分析が止まりません。

経営者は、「狙わない集まり」を決めるところで、最も力を使います。担当者は、決まった内容を、読みやすい言葉に直す作業で、最も力を使います。

解説どおりにSTP分析をしても、なぜサイトの一文が決まらないのか

STP分析の解説記事は、たくさんあります。それでも、サイトの一文が決まらないのは、解説の描き方に理由があります。

解説は、市場の側から描かれている

多くの解説は、大きな会社の事例を使って、市場の分け方と、立ち位置の取り方を紹介しています。

大きな会社は、広告も、店舗も、商品の種類も持っています。分けた市場のそれぞれに、別々の手を打てます。

小さな会社は、手が限られています。同じ表を埋めても、使える手の数が違うので、同じ使い方はできません。

項目 大きな会社 小さな会社
狙う集まりの数 複数を同時に狙える 1つに絞る必要がある
売り場や窓口 集まりごとに分けられる 1つの窓口で全員を受ける
約束の伝え方 広告で集まりごとに変えられる サイトの一文で全員に伝える
失敗の影響 一部の集まりで済む 会社全体の売上に響く

窓口が1つしかない小さな会社は、サイトの最初の一文が、全員への約束になります。その一文を、1つの集まりに合わせて作るのが、小さな会社のSTP分析の核です。

有名な会社の分析を真似ても、動かない理由

解説記事には、有名な会社のSTP分析が載っていることがよくあります。どの会社も、市場の分け方が鮮やかで、立ち位置の取り方が分かりやすく見えます。

ただ、有名な会社の分析は、完成した結果から逆にたどって描かれています。当時の会社が、何を捨てて、何を選んだかという、迷いの部分は書かれません。

小さな会社が真似るとよいのは、選ぶときの迷い方です。表の形は、真似なくて構いません。何を捨てると決めたのか、その根拠は何だったのかを、自分の客の記録で再現します。

この記事で架空の3社を使ったのは、迷いの部分まで書くためです。実在の会社の分析は、外から見える結果しか書けません。

お客様は、検索して、サイトで確かめている

次の数字は、買う人が、どれほど検索してから動くかを示します。

総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査では、個人のインターネット利用者のうち77.5%が、検索サービスを利用していました。インターネットを使う人の4人に3人以上が、何かを調べるときに、検索をしています。

調べたい人は、検索結果から1つのサイトを開き、最初の画面で、読み続けるかどうかを決めます。その最初の画面に、自分のための会社だと感じられる一文があるかどうかで、先を読む人の数が決まります。

STP分析から、サイトの一文を決めるまで客の記録を読む5件を並べる分ける集まりを1つ選ぶ外す所も書く言い切る一文にする誰に何をどう置く3か所に置く3つの置き場所

図の流れは、この記事の骨組みです。社内の材料を、サイトの一文に変換して、置く場所を決める、という4つの動きです。

お客様がサイトで確かめていること

サイトを開いた人は、最初の画面で、次の3つを確かめています。

確かめること 見ている場所 足りないと起きること
自分向けの会社か 最初の一文と、見出し 「違いそうだ」と閉じる
自分の悩みに応えるか 一文の下の説明 「うちの件は無理かも」と迷う
頼める状態か 料金や連絡先の案内 連絡する前にやめる

1つ目の確認は、数秒で終わります。ここを通らないと、2つ目、3つ目の確認まで進みません。

STP分析の結果は、この1つ目の確認を通すために使います。市場を分けて、集まりを選ぶ作業は、最初の数秒に使う一文を決める作業と、同じです。

分析の結果を、3か所に流し込む

分析が終わったら、結果をサイトの3か所に流し込みます。

流し込み先 入れるもの 元になる段
トップページの最初の一文 狙う集まりへの呼びかけと、選ばれる理由 ターゲティングとポジショニング
対象外を書いた短い案内 狙わない集まりの条件と、案内先 ターゲティング
比較のページ 狙う集まりが他の選択肢と比べる観点 ポジショニング

この3か所の書き方は、記事の後半で一つずつ詳しく示します。

分析の鮮度は、問い合わせの変化で測る

分析を一度終えたら、数か月後に、結果を見直します。見直す目印は、問い合わせの変化です。

トップの一文を書き換えて数か月経っても、問い合わせの用件が変わらなければ、一文が狙った集まりに届いていません。逆に、狙った集まりの問い合わせが増え始めたら、分析が当たっています。

変化 読み取れること 次にすること
狙った用件の問い合わせが増えた 分析が当たっている 同じ集まりに向けて、ページを足す
用件が変わらない 一文が届いていない 一文の言葉を、客の言葉に近づける
問い合わせの数自体が減った 絞りすぎの可能性 狙う集まりの条件を少し広げる

数が減ることを、失敗と決めつけないでください。絞った直後は、減るのが普通です。用件の質がどう変わったかを、先に見ます。

分析をした人と、サイトを触る人をつなぐ

症状3と間違い5は、どちらも、分析をした人と、サイトを触る人の間の断絶から起きています。

つなぎ方は、難しくありません。分析が終わった日に、サイトの担当者と15分だけ話す時間を取ります。話すのは、3行の内容と、その理由です。

担当者が理由を聞いておくと、トップの一文を書くときに迷いません。理由を知らない担当者は、「少し範囲を広げたほうが安全だ」と考えて、一文を元に戻してしまいます。

つなぐ場面 話す内容 渡すもの
分析が終わった日 狙う集まりと、狙わない集まりの理由 3行のメモ
一文の案ができた日 案が3つの問いを通ったか 通った一文と、却下した案
公開から1か月後 問い合わせの用件が変わったか 用件を数えた一覧

却下した案を残しておくと、あとで担当者が替わっても、同じ案を何度も作り直す手間が減ります。

小さな会社の分析は、早く粗く終えるほうがよい

大きな会社は、調査会社の資料を買い、数か月かけて分析をします。小さな会社が同じ時間をかけると、分析している間に、機会を逃します。

1日で粗く通し、サイトに出し、数か月の問い合わせで確かめる、という速さが合っています。この速さなら、間違えても、直す費用が小さく済みます。

粗く終えるといっても、客の記録を読む作業だけは省けません。ここを省くと、机の上の想像で一文を書くことになり、5つの症状のどれかに戻ります。

よくある間違ったSTP分析の進め方と、その末路

STP分析の失敗には、決まった型があります。6つの型を、起きる結果と一緒に示します。

間違い1:全部の市場を、きれいに分け切ろうとする

市場を分ける作業に熱中して、軸を何種類も試し、集まりが20個も30個もできる人がいます。

きれいに分けたくなる気持ちは、自然です。しかし、分け切ることは目的ではありません。選ぶために、分けています。

分けすぎると、選ぶ段階で迷いが増えます。軸は1つか2つ、集まりは4〜6個で止めてください。

間違い2:大きな集まりを選ぶ

選ぶ段階で、一番人数の多い集まりを選ぶ人がいます。大きい集まりのほうが、売上が大きいと考えるからです。

大きな集まりには、大きな競合がいます。小さな会社が、同じ集まりに同じ言葉で話しかけても、目立ちません。

小さな会社は、大きな会社が手を出さない、小さな集まりの中で一番になるほうが、選ばれやすくなります。

間違い3:強みを、全部ポジショニングに入れる

選ばれる理由の欄に、強みを5つも6つも書く人がいます。強みが多い会社ほど、書きたくなります。

選ばれる理由は、1つに絞ります。強みが多いことは、選ばれる理由が多いことと、一致しないからです。

読む人は、1つの文から、1つの印象しか持ち帰れません。印象が散ると、どれも残りません。

間違い4:競合の位置を、地図の上だけで決める

縦軸と横軸を引いて、競合の位置を図に描き、空いている場所を見つけて、「ここが狙い目だ」と決める人がいます。

空いている場所には、理由があります。買う人が、そこに価値を感じていないから空いている、という場合です。

先ほど紹介した論文は、ポジショニングの舞台を「顧客の脳内」としていました。図の上の空白を探す前に、買う人の頭の中に、その場所への需要があるかを確かめます。

間違い5:分析の結果を、サイトの担当者に渡さない

分析をまとめた資料が、社内の共有フォルダに眠っている会社があります。

サイトを触る人は、その資料の存在を知りません。結果として、サイトは、これまでの勘で更新されていきます。

分析の最後に、サイトの担当者へ渡す3行を作る習慣が必要です。3行とは、狙う集まり、狙わない集まり、選ばれる理由です。

間違い6:一度決めたら、見直さない

分析は、一度やれば終わりではありません。客の層は、数年単位で変わります。

決めた当時の狙い方が、いまの客に合っているかを、年に一度は確かめます。確かめる材料は、直近1年の問い合わせの記録です。

間違い 末路 防ぐ最初の一手
1 分け切ろうとする 選ぶ前に力尽きる 集まりを6個で止める
2 大きな集まりを選ぶ 大手と同じ言葉で埋もれる 小さな集まりの一番を目指す
3 強みを全部入れる どれも印象に残らない 選ばれる理由を1つにする
4 地図の空白だけで決める 需要のない場所に立つ 買う人の言葉で需要を確かめる
5 結果を渡さない サイトが勘で更新される 3行をサイトの担当者に渡す
6 見直さない 古い狙いのまま続く 年に一度、問い合わせ記録で確かめる

6つの間違いは、どれも「分析して終わり」の気持ちから生まれます。分析の出口を、サイトの一文に置いておけば、多くは防げます。

解決策:「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、全員に売ることをやめる

ここまでの症状と間違いは、ひとつの原因にたどり着きます。全員に向けて話そうとしている、ということです。

私は、売れているサイトに共通する性質を、謙虚さだと考えています。「売れるサイトはみな謙虚」という言葉には、自分の言いたいことを、読む人の知りたいことの後ろに置く、という意味を込めています。

STP分析に当てはめると、謙虚とは、全員に話しかけないことです。話しかける相手を1つの集まりに決め、その人の悩みから話を始めます。

謙虚な一文は、読む人を限る

「何でもお任せください」という一文は、一見すると謙虚に聞こえます。しかし、実際は逆です。

この一文は、読む人の悩みを聞く前に、自分の対応範囲を広げて見せています。自分の言いたいことが先に立った文です。

謙虚な一文は、読む人の悩みから始まります。「築年数の古いお宅の水まわりを、壊れる前に順番を決めて直します」という文は、悩んでいる人の状況を先に描いています。

見た目 一文の例 実際に先に立っているもの
親切そうに見える 何でもお任せください 自社の対応範囲
絞って見える 築年数の古いお宅の水まわりを、壊れる前に直します 読む人の状況

選ばないことは、見捨てることではない

狙わない集まりを決めるとき、多くの経営者が、「その人たちを見捨てるようで気が引ける」と感じます。

この気持ちは、優しさから来ています。ただ、実際には、合わない仕事を無理に受けるほうが、相手を困らせます。

A社が、当日の駆け付けを求める客を受けると、約束の時間に遅れたり、仕上がりが雑になったりします。受けない判断は、その客を、駆け付けを専門にしている会社へ向かわせることにつながります。

選ばないとは、自社が一番役に立てる人に、力を集めることです。

謙虚さを確かめる、3つの問い

トップの一文が謙虚かどうかを、次の問いで確かめます。

問い 謙虚な状態 謙虚でない状態
最初に出てくるのは、誰の話か 読む人の状況 会社の歴史や対応範囲
読んで、自分が除かれる人はいるか いる 全員が入っている
約束は、実際の体制で守れるか 守れる 守れない約束がある

3つの問いに通る一文は、数は少なくても、読んだ人が先へ進みます。

市場の切り口を、1つ選ぶ判断の手順

STP分析で最も悩ましいのは、複数の集まりの中から、1つを選ぶ場面です。選ぶ根拠を、順に示します。

3つの目で見て、残った集まりを選ぶ

選ぶときは、3つの目で集まりを見ます。

目 問い 確かめ方
過去の記録の目 その集まりは、実際に続いた客に多かったか 客の記録5件の読み直し
自社の力の目 その集まりの悩みに、いまの体制で応えられるか 現場の担当者に聞く
届く道の目 その集まりに、情報を届ける道があるか 検索の言葉、紹介、掲示

3つの目をすべて通った集まりが、候補です。通らなかった集まりは、狙わない集まりに回します。

1つの目だけで選ぶと、間違えます。たとえば、過去の記録だけを見ると、昔の客に引きずられます。届く道だけを見ると、広告を出しやすい集まりを選んでしまいます。

切り口の型を知っておくと、軸を見つけやすい

市場の切り口には、中小企業でよく使われる型があります。自社に近い型を探すと、軸を見つけやすくなります。

切り口の型 分け方の例 向く商売
場面で分ける 急ぎの人/計画的な人 修理、緊急対応、予約制の仕事
規模で分ける 従業員が10人前後の会社/50人を超えた会社 法人向けの仕事
目的で分ける 自分用/贈り物 小売、物販
時期で分ける 始めたばかりの人/続けている人 教室、サブスクリプション型のサービス
悩みの深さで分ける 情報だけ欲しい人/手を動かしてほしい人 相談、制作、教育

A社は場面と時期、B社は規模と時期、C社は目的の型で分けています。型は組み合わせて使えますが、軸が3つを超えると、集まりが増えすぎます。

A社が、最初の選択を直した話

A社は、最初、「全面改装を考えている人」を狙う集まりに選びました。売上が大きいと考えたからです。

ところが、全面改装の問い合わせは、相見積りが多く、A社は価格で競り負けることが続きました。過去の記録の目で見ると、続いた客に全面改装の人は少なかったのです。

A社は、選び直しました。続いた客に多かった、「壊れる前に順番を知りたい人」へ変えたのです。この集まりは小さいので、競合も少なく、A社の手順の説明が評価されました。

項目 最初の選択 選び直した後
狙う集まり 全面改装を考えている人 壊れる前に順番を知りたい人
選んだ根拠 売上が大きそう 続いた客に多かった
競合の数 多い 少ない
結果 相見積りで競り負けた 手順の説明が評価された

最初の選択が違っていても、問題はありません。記録の目で見直して、選び直せば足ります。

B社が、絞ることを怖がった話

B社の所長は、「従業員が10人前後に増えた会社」に絞ることを、最初は怖がりました。ほかの会社から相談が来なくなるように感じたからです。

そこで、トップの一文は絞りつつ、料金や相談の入口のページには、他の規模の会社も相談できる、と書き残しました。一文で呼ぶ相手は絞るが、問い合わせの窓口までは閉じない、という使い分けです。

結果として、10人前後の会社からの相談が増え、他の規模の会社は、紹介や既存の縁を通じて、以前と同じように連絡してきました。

絞ることは、他を拒むことと同じではありません。呼びかけを絞ることと、窓口を閉じることは、別の作業です。

作業 B社の対応 目的
呼びかけ トップの一文を、10人前後の会社に絞る 狙った集まりに刺さる
窓口 他の規模の会社も、問い合わせはできる 機会を逃さない
案内 50人を超える会社には、向く場合と向かない場合を書く 合わない期待を防ぐ

迷ったときは、小さく試す

3つの目を通しても、2つの集まりで迷うことがあります。その場合は、2つの一文を作って、小さく試します。

試し方は、2つあります。1つは、トップの一文を、1か月ごとに入れ替えて、問い合わせの用件を比べる方法です。もう1つは、短い案内文を2種類作り、既存の客に見せて、どちらが自分に近いかを聞く方法です。

小さく試した結果は、会議の議論よりも、確かな根拠になります。

トップの一文に落とす:選ばれる理由を、最初の1画面に置く

選んだ集まりと、選ばれる理由が決まったら、いよいよサイトに置きます。最初に書き換えるのは、トップページの最初の一文です。

一文の型:誰に、何を、どんな方法で

トップの一文は、次の型で書くと、まとまりやすくなります。

部品 内容 例(A社)
誰に 狙う集まりの呼び名 築年数の古いお宅の
何を 応える悩み 水まわりを、壊れる前に
どんな方法で 選ばれる理由 順番を決めて直します

3つの部品が揃うと、読んだ人は、自分のことかどうかを、数秒で判断できます。

部品の順番は入れ替えて構いません。ただし、「誰に」は必ず文の前半に置きます。自分のことかどうかを判断する材料が、最初に目に入るようにするためです。

3社の一文を、型に当てはめる

3社の一文を、型に分解して確かめます。

会社 誰に 何を どんな方法で
A社 築年数の古いお宅の 水まわりを、壊れる前に 順番を決めて直します
B社 従業員が10人前後に増えた会社の 決まりごとの整え方を 順番にお伝えします
C社 祝い事の記念に贈る人へ 贈る相手の暮らしを思い浮かべた選び方を 添えて届ける雑貨店です

どの一文も、金額や数字の大きな約束を含んでいません。数字を入れなくても、読む人の状況を描けば、一文は成り立ちます。

「誰に」の呼び名を付けるときのコツ

トップの一文の頭に置く、狙う集まりの呼び名は、書き方で効果が変わります。コツは、状況で呼ぶことです。属性で呼ぶ書き方は、避けます。

「40代の男性」という呼び名は、属性です。読んだ人は、自分が当てはまるかどうかを、年齢と性別で判断します。判断の材料が、悩みと関係していません。

「築年数が古く、水まわりがそろそろ心配なお宅」という呼び名は、状況です。年齢や性別が違っても、同じ状況にいる人は、自分のことだと感じます。

呼び名の種類 例 読んだ人の反応
属性で呼ぶ 40代の経営者の方へ 年齢が合えば読むが、悩みは伝わらない
状況で呼ぶ 従業員が10人前後に増えて、決まりが追いつかない会社へ 悩みが重なる人が、自分のことと感じる
願いで呼ぶ 壊れる前に、直す順番を決めたい方へ 目的が重なる人が、先を読む

状況で呼ぶ場合も、状況を長く書きすぎないでください。20字から30字に収まると、一目で読めます。

避けたい言い回しと、その言い換え

一文を書くとき、つい使ってしまう言い回しがあります。どれも、全員に向けた文に近づけてしまいます。

避けたい言い回し 起きること 言い換えの方向
何でもお任せください 範囲が広すぎて、特徴が消える 応える悩みを1つに絞る
お客様に寄り添います 誰でも言える言葉になる 寄り添う具体的な手順を書く
豊富な経験と実績 経験の中身が見えない 続いた客の状況を1つ書く
丁寧な対応をお約束します 守れたかどうかを測れない 対応の手順と、期限を書く
幅広いニーズにお応えします 全員に話しかけている ニーズの種類を1つ選ぶ

言い換えるときの方向は、いつも同じです。抽象的な言葉を、具体的な状況や手順に置き換えます。

トップ以外のページも、同じ集まりに揃える

トップの一文を書き換えたら、他のページの冒頭も、同じ集まりに揃えます。揃えないと、トップで絞った呼びかけが、次のページで広がってしまいます。

揃えるページは、料金や進め方のページ、事例のページ、よくある質問のページなどです。書き換える量は、冒頭の1〜2文で足ります。

ページ 冒頭に入れる内容 注意すること
料金や進め方 狙う集まりの状況に合わせた進め方 全員向けの一般論に戻さない
事例 狙う集まりに近い客の事例を先頭に置く 狙わない集まりの事例は後ろへ回す
よくある質問 狙う集まりが最初に抱く疑問から並べる 社内で気になる順に並べない
会社案内 狙う集まりに向けた取り組みを先に書く 沿革を最初に置かない

どのページも、読む人が最初の数行で、自分の状況に合っているかを確かめます。その確認に、トップと同じ呼びかけが続いていれば、読む人は安心して先へ進みます。

一文の下に、補足を1段だけ置く

一文だけでは、読む人は「自分のことかもしれない」と感じるところまでしか進めません。次の確認に進めるように、一文の下に、補足を1段だけ置きます。

補足には、2つのことを書きます。この会社が、どんな悩みに応えているかと、その悩みをどう解くかの、手順の名前です。

A社の例では、次のようになります。

「水まわりは、壊れてから直すと、急な出費と日程の無理が重なります。A社では、点検のあと、工事の順番と費用の内訳を図にしてお渡しします。」

補足が長くなるほど、一文の力が薄まります。補足は、3文以内に収めてください。

一文を置いたあとに、確かめること

一文を公開したら、1か月後に、次の3つを確かめます。

確かめること 見る場所 良い兆し
問い合わせの用件 受け付けた内容の記録 狙った用件の割合が増える
トップから先へ進む人 アクセスの記録 次のページを見る人が増える
問い合わせの文面 本文の言葉 一文に近い言葉が、文面に現れる

3つ目の兆しは、見落とされやすいものです。問い合わせの文面に、トップの一文に近い言い回しが現れたら、その一文は、狙った人に届いています。

対象外を明記する:合わない人に、先に伝える

トップの一文で呼びたい人を絞っても、合わない人は、サイトを訪れます。合わない人が、問い合わせまで進んでしまうと、お互いに時間を使います。

そこで、対象外を書いた短い案内を、サイトのどこかに置きます。

対象外の案内は、親切の一種

対象外を書くことに、抵抗を感じる経営者は多くいます。冷たく見えると感じるからです。

実際には、逆の効果があります。合わない人は、問い合わせる前に、別の会社を探しに行けます。探す時間を、先に渡す行為です。

書き方の3つの原則

対象外の案内は、書き方次第で、冷たくも親切にも見えます。

原則 内容 悪い例 良い例
理由を添える 受けられない事情を書く 当日対応はしません 少人数のため、当日の駆け付けはお受けできません
代わりの道を示す どんな相手なら合うかを書く (書かない) 当日の駆け付けが必要な場合は、緊急対応を専門にする会社をお探しください
やわらかい言葉で書く 断り口調を避ける お断りします 向いていない場合があります

代わりの道を示すとき、他社の名前は書きません。「緊急対応を専門にする会社」のように、種類で伝えます。

3社の対象外の案内

3社の対象外の案内を、具体的に示します。

会社 対象外の案内
A社 少人数で動いているため、当日の駆け付けと、通える範囲の外のお宅はお受けしていません。緊急の修理が必要な場合は、緊急対応を専門にする会社をお探しください。
B社 従業員が50人を超える会社と、すでにトラブルが起きている会社は、お受けしていません。トラブルの対応は、弁護士などの専門の窓口をご検討ください。
C社 自分用の商品を、できるだけ安く探している方には、向いていません。

C社の案内は、短くても成り立ちます。ただし、「向いていません」だけで終えず、どんな人に向いているかを、一言添えると親切です。

置く場所は、3か所が基本

対象外の案内は、サイトの1か所に置いて終わりにしません。読む人が迷う場所に、短く置きます。

置く場所 書く量 目的
トップの一文の下 1文 最初の確認で、合わない人に気づいてもらう
料金や進め方のページ 2〜3文 問い合わせる直前に、条件を確かめてもらう
問い合わせフォームの上 1〜2文 送信する前に、最終確認をしてもらう

3か所すべてに置くと、くどくなります。最も効果が大きい場所は、問い合わせフォームの上です。まずここから始めてください。

対象外を書いたあとの問い合わせの変化

対象外を書くと、問い合わせの数は、一時的に減ることがあります。減るのは、合わない人からの問い合わせです。

減った数に慌てて、案内を消さないでください。見るべきは、受けたい用件の数と、1件あたりの対応にかかる時間です。

指標 書く前 書いた後に期待する動き
問い合わせの総数 多い 減ることがある
受けたい用件の割合 低い 上がる
1件ごとの対応時間 長い 短くなる
断る連絡の回数 多い 減る

断る連絡が減ると、現場の負担も減ります。この変化は、数字の表に現れにくいので、担当者に聞いて確かめてください。

比較のページに落とす:他社名を出さず、選ぶ基準で比べる

3つ目の落とし先が、比較のページです。ポジショニングを、買う人が確認できる形にしたものです。

比較のページは、選ぶ基準を渡すページ

買う人は、選ぶときに、比べます。どこで比べるかは、検索結果であったり、他社のサイトであったりします。

自社のサイトに比較のページがないと、買う人は、自分で基準を探します。探した基準が、自社の強みと合っていなければ、選ばれません。

そこで、自社の側から、選ぶ基準を渡します。この基準を使って比べれば、自社が選ばれる、という基準です。

他社の名前は書かない

比較のページに、他社の社名や商品名を載せることは、避けます。名指しで比べると、悪口に見えるおそれがあり、誤りがあれば信用を失います。

名前の代わりに、選択肢の種類で比べます。たとえば、水まわりのリフォームなら、「地元の小さな工事店」「大手のリフォーム会社」「自分で部品を買って直す方法」という種類です。

比較の対象 名前の出し方 理由
他社の会社 出さない。種類で呼ぶ 誤りや悪口になる危険を避ける
他社の商品 出さない。特徴で呼ぶ 商標や事実の確認が必要になる
自分で行う方法 出してよい 競合に当たらない。選択肢の一つ

比較表の作り方

比較表は、行に選ぶ基準を、列に選択肢の種類を並べます。

選ぶ基準 自社(A社の例) 大規模な会社 自分で直す方法
向いている人 壊れる前に順番を知りたい人 全面改装を早く決めたい人 費用を最小にしたい人
強み 順番と費用の内訳を図で先に示す 工事の範囲が広い 材料費だけで済む
弱み 当日の駆け付けはできない 担当者が替わりやすい 失敗すると高くつく
向いていない場合 今日中に直したい人 少しだけ直したい人 水道の元栓に触れない人

比較表の中で、自社の弱みを、隠さず書くことが大切です。弱みを書くと、強みの信頼が増します。読む人は、弱みのない比較を、疑って読むからです。

比較のページに載せてはいけないもの

比較のページには、載せない方がよい項目があります。

載せない項目 理由
他社の悪口や、事実の確認できない批判 信用を落とす。誤りのおそれがある
「業界No.1」などの根拠のない表現 根拠を示せないと、虚偽に見える
金額の細かい比較 古くなりやすく、誤解を生む
自社の弱みを隠した表 読む人が疑う

比較のページは、買う人が自分に合う選択肢を選ぶための材料です。自社を選ばせるための道具ではない、と考えると、書き方が落ち着きます。

比較のページの置き場所と、リンクの張り方

比較のページは、トップの一文から、1回のクリックで行ける場所に置きます。トップの対象外の案内の近くに、「他の選択肢と比べたい方へ」といった入口を作ります。

入口の言葉は、ページの中身が想像できる言い回しにします。「比較はこちら」よりも、「大規模な会社や自分で直す方法と、何が違うか」のほうが、押す人が増えます。

比較のページの最後には、自社が向いていない人の条件を、もう一度短く書きます。読み終えた人が、自分の状況を判断する最後の材料になります。

STP分析のテンプレート:コピーして使える3枚の記入表

ここまでの手順を、そのまま使えるテンプレートにまとめました。紙でも表計算でも、コピーして使えます。3枚を、1番から順に埋めます。

テンプレート1:客の記録のメモ

最初に埋めるのは、実際の客の記録を5件並べる表です。

記録 続いたか 最初の言葉 読み取れること 受けたい仕事か
1件目 はい/いいえ (客が書いた言葉をそのまま) (共通点や違い) はい/いいえ
2件目
3件目
4件目
5件目

「最初の言葉」の欄は、要約せずに写してください。要約すると、客の言葉が、自社の言葉に変わってしまいます。

「受けたい仕事か」の欄は、売上の大きさで判断しません。利益、対応のしやすさ、続く見込みで判断します。

テンプレート2:市場を分けて、1つ選ぶ表

次に、市場の切り口を選ぶ表です。

項目 記入欄
分ける軸1(買う理由に近いもの)
分ける軸2(なくてもよい)
集まりA(人の呼び名で)
集まりB
集まりC
集まりD

集まりごとに、3つの目で点数を付けます。

集まり 過去の記録の目 自社の力の目 届く道の目 合計
A ○/△/× ○/△/× ○/△/×
B
C
D

○を2点、△を1点、×を0点として合計し、最も点の高い集まりが候補です。同点の場合は、過去の記録の目を優先して選びます。

選んだ集まりについて、次の4行を書きます。

書くこと 記入欄
狙う集まり
選んだ理由(客の記録から)
狙わない集まり
狙わない理由

テンプレート3:サイトへ流し込む表

最後に、結果をサイトのどこに書くかを決める表です。この表が、分析の出口です。

流し込み先 書く内容 担当者 いつまでに 公開の確認
トップの最初の一文 (誰に・何を・どんな方法で)
一文の下の補足 (3文以内)
対象外の案内(問い合わせフォームの上) (理由と代わりの道つき)
比較のページ (選ぶ基準の行と、選択肢の種類の列)

「担当者」と「いつまでに」の欄を空白にしたまま会議を終えると、症状1の「表が埋まって会議が終わる」状態に戻ります。2つの欄は、会議の中で必ず埋めてください。

3枚を使う順番と、かかる時間

3枚のテンプレートは、番号の順に使います。目安の時間を、次の表に示します。

順番 使うテンプレート かかる時間の目安 出てくるもの
1 客の記録のメモ 半日 続いた客と、受けたい仕事の共通点
2 市場を分けて、1つ選ぶ表 2時間 狙う集まりと、狙わない集まり
3 サイトへ流し込む表 1時間 書き換える場所と、担当者と、期日

記入例:A社のテンプレートを埋める

A社の記入例を、テンプレート2と3で示します。

項目 A社の記入
分ける軸1 急ぎか、計画的か
分ける軸2 通える範囲の内か外か
集まりA 今日中に直したい人
集まりB 築年数が古く、壊れる前に見直したい人
集まりC 全面改装を急いで決めたい人
集まりD 通える範囲の外の人

3つの目で点数を付けた結果は、次のとおりです。

集まり 過去の記録の目 自社の力の目 届く道の目 合計
A △ × ○ 3
B ○ ○ ○ 6
C △ △ ○ 4
D × × △ 1

集まりBが最も高く、A社は、築年数が古く、壊れる前に見直したい人を狙う集まりに決めました。

テンプレート3の記入は、次のようになります。

流し込み先 A社の記入 担当者 いつまでに
トップの最初の一文 築年数の古いお宅の水まわりを、壊れる前に順番を決めて直します 事務担当 今週中
一文の下の補足 点検のあと、工事の順番と費用の内訳を図にしてお渡しします 事務担当 今週中
対象外の案内 当日の駆け付けと、通える範囲の外はお受けできません 所長 来週中
比較のページ 大規模な会社、自分で直す方法との違いを表にする 所長と事務担当 再来週

記入例:B社とC社の、3つの目の結果

B社とC社の結果も、表にして示します。

会社 選んだ集まり 3つの目の特徴
B社 従業員が10人前後に増えたばかりで、決まりを整えたい会社 過去の記録で続いた客に多く、現場の体制にも合う
C社 祝い事の記念に、気持ちのこもった物を贈りたい人 贈り物の客のリピートが多く、検索の言葉も具体的

C社の例では、届く道の目が決め手になりました。「祝い 贈り物 雑貨」のように、贈る目的を含む検索の言葉が、自社の商品とよく合っていたからです。

記入例:B社のテンプレートを、最後まで埋める

B社のテンプレート3も、同じ形で埋めます。B社の場合、書き換える場所が、トップだけでは足りませんでした。

流し込み先 B社の記入 担当者 いつまでに
トップの最初の一文 従業員が10人前後に増えた会社の、決まりごとの整え方を、順番にお伝えします 所長 今週中
一文の下の補足 最初の1か月で、直す順番を1枚の紙にしてお渡しします 所長 今週中
対象外の案内 50人を超える会社と、トラブルの対応を急ぐ会社は、お受けしていません 事務担当 来週中
比較のページ 自社で整える方法、大規模な事務所との違いを表にする 所長 再来週

B社は、業務の一覧ページも書き換えました。20項目あった一覧を、狙う集まりの悩みに近い4項目に絞り、残りの項目は、相談の入口のページにまとめました。

書き換えの順番は、トップの一文、対象外の案内、一覧ページの順でした。順番を決めておくと、途中で手が止まりません。

手順を終えたあとの、最初の4週間

分析を終えたあとの4週間の動きを、週ごとの表にしました。

週 やること 確かめること
1週目 トップの最初の一文を書き換える 声に出して読んで、引っかからないか
2週目 対象外の案内を、問い合わせフォームの上に置く 問い合わせの用件が変わり始めたか
3週目 比較のページの下書きを作る 弱みも書けているか
4週目 1か月の問い合わせを数えて、一文を見直す 狙った用件の割合が増えたか

4週間で全部を終える必要はありません。1週目だけでも、動かしてみると、次の手が見えてきます。

検索の言葉を、集まりの呼び名と照らす

選んだ集まりが、実際に検索の言葉として存在するかも、確かめておくと安心です。

方法は簡単です。集まりの呼び名の中から、客が検索しそうな言葉を3つ考え、それを自分で検索してみます。結果の上位に、自社と似た立ち位置の会社が見つかれば、その集まりには届く道があります。

確かめること 方法 判断
検索する人がいるか 言葉の候補を入力し、予測の候補が出るか見る 候補が出れば、探している人がいる
上位に似た会社が多すぎないか 検索結果の上位10件を読む 同じ呼びかけの会社が多ければ、さらに絞る
自社の言葉と一致するか 客の記録の言い回しと比べる 一致しなければ、客の言葉に寄せる

予測の候補に出る言葉は、買う人が実際に打ち込む言葉の目安になります。出てきた言葉を、見出しの案としてメモしておくと、あとでページを足すときに使えます。

テンプレートを埋めるときの、口頭の確認

テンプレートを埋めたら、書いた人が、同僚に1分だけ口頭で説明します。紙を見せずに、話すだけです。

説明のあとで、同僚に聞きます。「うちが、誰のための会社だと聞こえたか」と尋ねるのです。答えが、書いた人の意図とずれていたら、一文か呼び名のどこかが曖昧です。

確認すること 同僚への聞き方 ずれたときの直し方
狙う集まり 「どんな人のための会社だと聞こえたか」 呼び名を、状況の言葉に直す
選ばれる理由 「他の会社と、何が違うと聞こえたか」 手順や実績を、具体的に1つ足す
対象外 「どんな人には向いていないと聞こえたか」 理由と代わりの道を足す

同僚が現場で客と話している人なら、さらに確かな確認になります。現場の人は、実際の客の顔を思い浮かべて答えてくれるからです。

結果を社内に共有する、1枚の書き方

分析の結果は、社内の全員が読める形にして、渡します。A4用紙1枚に収まる量が目安です。

書く項目は、次の4つです。

項目 書く内容 分量
狙う集まり 呼び名と、その人の状況 2行
狙わない集まり 呼び名と、受けられない理由 2行
選ばれる理由 トップの一文 1行
迷ったときの合言葉 判断に迷う場面での決め方 1行

合言葉は、社員が現場で判断に迷ったときの助けになります。たとえば、A社なら「壊れる前の相談を優先する」です。

1人で使うときと、チームで使うときの違い

1人で使うときは、客の記録を読む作業に、時間をかけます。決める作業は、自分1人で済むので、早く終わります。

チームで使うときは、客の記録を読む作業を、全員で分担します。決める作業では、意見が割れることがあります。割れたときは、3つの目の点数に戻って、根拠を比べてください。

場面 時間のかけどころ 気をつけること
1人で使う 客の記録を読む作業 思い込みで書かない。他人に読んでもらう
チームで使う 意見を合わせる作業 声の大きい人の意見に流れない
外部の制作会社と使う 3行のメモを渡す作業 理由まで伝える

よくある質問

Q. STP分析は、必ずS、T、Pの順に進めるのですか。

必ず守る順番はありません。実務では、狙いたい相手が先に見えていることが多く、仮の相手を置いてから、その中を分けていくこともあります。

行き来してよいのですが、最後に、サイトの一文に落ちるかどうかを確かめてください。落ちなければ、どこかの段が曖昧です。

見分け方は簡単です。狙う集まりの呼び名を、一文の前半に入れてみます。入らなければ、ターゲティングが決まっていません。入っても、後半が他社と同じ言葉になるなら、ポジショニングが決まっていません。

Q. 「都市部に住む、健康志向の女性」と分けたら、ターゲティングではないのですか。

軸を組み合わせて集まりに名前を付けるところまでは、セグメンテーションです。その中から、自社が狙う集まりを選んだ時点で、ターゲティングになります。

分けることと、選ぶことは、別の作業です。名前の付いた集まりが複数並んでいる間は、まだ選んでいません。

質問のような分け方は、事典に載っている3種類の変数を組み合わせた例です。組み合わせるほど、集まりは具体的になります。具体的になった集まりの中から、1つを選ぶまでが、ターゲティングの仕事です。

Q. ペルソナと、STP分析は、どう違いますか。

STP分析は、市場を分けて、集まりを選び、選ばれる理由を決める作業です。ペルソナは、選んだ集まりの中にいる一人の姿を、具体的に描く作業です。

つまり、STP分析で集まりを選んでから、ペルソナで一人の姿に近づける、という順で使います。ペルソナの作り方は、ペルソナの作り方の記事で詳しく扱っています。

Q. 従業員が数名の会社や、個人事業でも使えますか。

使えます。むしろ、小さな会社ほど、窓口が1つしかないので、効果が大きくなります。

大きな会社のように、市場調査を買う必要はありません。自社の客の記録を5件読めば、始められます。

Q. どのくらいの間隔で見直せばよいですか。

年に一度を目安にします。ただし、大きな変化があったときは、その都度見直してください。

大きな変化とは、受けたい仕事の用件が変わったとき、新しい競合が近くに出たとき、サービスの内容を変えたときです。見直す材料は、直近1年の問い合わせの記録です。

見直しの結果、狙う集まりが変わらなければ、それは分析が当たっていた証拠にもなります。変えなかった理由を、3行のメモの横に1行書き残しておくと、次の見直しが楽になります。

まとめ

STP分析は、市場を分け、狙う集まりを選び、その集まりにとっての自社の立ち位置を決める、3段の手順です。ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典によると、市場細分化の基準には、地理的変数、人口統計学的変数、心理的変数、行動変数の4種類があります。

3つの段の表を埋めるだけでは、サイトは変わりません。出口をサイトの一文に置いて初めて、分析が使われます。

小さな会社にとって、サイトの最初の一文は、全員への約束です。その一文を、1つの集まりに合わせて作ることが、小さな会社のSTP分析の核です。

選ぶ手順は、客の記録5件を読み、買う理由に近い軸で分け、3つの目で集まりを1つに絞る、というものです。選ぶと同時に、狙わない集まりも書きます。

選んだ結果は、サイトの3か所に流し込みます。1か所目はトップの最初の一文、2か所目は対象外の案内、3か所目は比較のページです。

対象外を書くことは、冷たい行為ではありません。合わない人に、別の会社を探す時間を先に渡す行為です。理由と代わりの道を添えれば、親切な案内になります。

比較のページは、他社の名前を出さず、選ぶ基準を渡すページです。自社の弱みも書くと、強みの信頼が増します。

ポジショニングの舞台について、神戸大学の学術成果リポジトリで公開されている論文は、顧客の頭の中に固有の居場所を確保することだと述べています。居場所を作る場所は、買う人が最初に開くサイトの最初の1画面です。

総務省の令和7年通信利用動向調査では、インターネット利用者の77.5%が検索サービスを利用していました。買う人は、検索して、サイトで確かめています。

全部を完璧に揃える必要はありません。最初の1週間で、トップの一文だけを書き換えてください。その一文が、次の週に何を直すかを教えてくれます。

売れるサイトはみな謙虚です。全員に向けて話すことをやめ、1つの集まりの悩みから話を始める。その姿勢が、サイトの一文に現れます。

狙う相手が決まったあとの、売り方の揃え方は、4P分析の記事で詳しく扱っています。製品、価格、流通、販促の4つの欄を、決めた相手に向けて揃える手順です。

今日できる点検

点検すること 確かめ方 足りないとき
客の記録を5件集めたか 続いた客と、一度で終わった客の両方が入っているか見る 問い合わせのメモを、新しい順に5件拾う
市場を分ける軸が、買う理由に近いか その軸で分けた2つの集まりで、頼む理由が違うか見る 別の軸で、分け直す
狙う集まりを1つに絞ったか 表の「狙う集まり」の欄が、1行か見る 3つの目の点数で、最も高い集まりに絞る
狙わない集まりを書いたか 理由つきで、1つ以上書いてあるか見る 断った記録を読み返して、書き出す
トップの最初の一文に、誰に向けた文かが入っているか 一文を読んで、自分のことと感じる人を想像できるか 狙う集まりの呼び名を、一文の前半に入れる
一文を読んで、合わないと感じる人がいるか 全員に当てはまる文になっていないか見る 範囲を絞る言葉を足す
問い合わせフォームの上に、対象外の案内があるか フォームの上の2行を読む 理由と代わりの道つきで、2行書く
比較のページの入口が、トップから1回で行けるか トップから比較のページまで、クリックの数を数える 入口の言葉を、トップの対象外の案内の近くに置く

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この記事を書いた人

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合同会社謙虚 代表社員。20代から、売る言葉だけを仕事にしてきました。電話営業で受話器を握っていた時代から、数千社のWEB集客に関わったいままで。詳しいプロフィールはこちら

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