パンフレットの作り方を調べると、文書作成ソフトでの段組みの設定や、プレゼンテーションソフトでの折り方の設定が、ずらりと並びます。道具の使い方は分かるのに、何を書いて、どの順に並べればよいのかは、どの解説も一行で済ませています。
この記事は、中小企業の経営者と、会社案内や商品パンフレットを任された担当者に向けて書きました。目的と渡す場面の決め方、紙面の順番、文章の書き方、パソコンで作るときの道具の選び方、入稿前の点検、そして自社のホームページとの役割分担までを、順に説明します。
統計と法令の話は、公的機関の資料をその場で開いて確かめたものだけを使いました。総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査と、消費者庁の2026年3月改訂版「事例でわかる景品表示法」です。どちらも、記事を書いた2026年10月30日に開いて内容を確認しています。
先に答え:パンフレットは、渡す場面を1つ決めてから、紙面の順番を作る
結論は、作り方の最初の一手が道具の起動ではないということです。最初に決めるのは、誰に、どんな場面で、何のために渡すのかの3つです。
この3つが決まると、紙の大きさ、ページ数、載せる項目、文章の長さが、ほぼ自動で決まります。逆に3つが決まらないまま作り始めると、書くたびに迷い、何度も作り直すことになります。
| 順番 | 決めること | 決まらないと起きること |
|---|---|---|
| 1 | 渡す相手と場面 | 載せる項目が増え続け、誰にも刺さらない |
| 2 | 渡した直後に相手にしてほしい行動 | 最後のページに、次の一歩が書かれない |
| 3 | 紙面の順番 | 大事な情報が奥のページに埋もれる |
| 4 | 文章と写真 | 形容詞だけの会社案内になる |
| 5 | 入稿前の点検 | 印刷してから誤字や抜けに気づく |
| 6 | 自社サイトとの分担 | 紙にも画面にも同じ内容を書き、更新が追いつかない |
6つの順番は、この記事の見出しの並びと同じです。途中から読む場合は、自分が止まっている番号の節に進んでください。
紙1枚で何でも説明しようとしない
パンフレットは、詳しい資料ではありません。手渡しの場面で、相手に「もう少し聞いてみよう」と思ってもらうための紙です。
詳しい内容は、あとで相手が自分のペースで調べられる場所に置きます。その場所が、自社のホームページです。紙とサイトの分担は、後の節で表にして整理します。
近い紙ものの記事との違い
メニュー表やショップカードの作り方は、すでに別の記事で書きました。店頭で数秒のうちに読まれる紙ものでした。
メニュー表の作り方とショップカードの作り方の記事があります。この記事で扱うパンフレットは、相手が座って数分かけて読む紙です。順番と文章の組み立てが、判断の中心になります。
先日見かけたQ&Aサイトの悩み:「パンフレットを作りたいが、頼むべきか、パソコンで作るのか、費用はいくらか」
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
質問した方は、部活動の公演で配るパンフレットを任されていました。発行部数は300部ほど、本のような形で6ページくらいを想定しています。
印刷は外部の会社に頼むことになりそうだと考えていました。ただ、原本をどう作るのか、パソコンとスマートフォンのどちらで編集するのか、費用はどのくらいかかるのかが、まったく見えていませんでした。
回答は、道具の話と、頼む先への相談に分かれていた
回答の1つは、スマートフォンで作るのは普通にはやらず、専用のデザインソフトを使うのが一般的だと答えていました。別の回答は、印刷会社にラフスケッチを見せれば、見積もりを出してくれると勧めていました。
さらに別の回答は、印刷会社によって受け付けられるファイルの形式に制限があるので、先に問い合わせて、どんな原稿を渡せばよいかを教えてもらうよう助言していました。具体的なサンプルを用意して見せることも勧めていました。
質問に書かれていなかったこと
質問には、誰に配るのか、何のために配るのか、読んだ人にどうしてほしいのかが、1行も書かれていませんでした。回答も、その点には触れていません。
道具と費用の話は、目的が決まってからでないと答えが出ません。6ページにするのか、4ページで足りるのかは、渡す場面と、載せたい内容で決まるからです。
会社のパンフレットでも、同じ場所で手が止まる
この悩みは、部活動に限りません。会社案内や商品パンフレットを任された担当者が、最初に聞くのも「頼むべきか」「何で作るのか」「費用はどのくらいか」の3つです。
その3つの手前に、渡す相手と場面を決める作業があります。この記事は、そこから順に進めます。
パンフレットの種類と、渡す場面の対応:何を作るかは場面で決まる
一口にパンフレットといっても、会社案内、商品やサービスの案内、採用向け、行事や催しの案内があります。種類が違えば、相手も、渡す場面も、読まれる時間も違います。
まず、自社がいま必要としているのはどの種類かを、場面から逆算して選びます。
| 種類 | 渡す場面 | 相手が読む時間の目安 | 紙面の主役 |
|---|---|---|---|
| 会社案内 | 初めての商談、取引先への挨拶、展示会 | 机の上で数分 | 何をしている会社か、誰が対応するか |
| 商品やサービスの案内 | 見積もりの打ち合わせ、店頭、訪問営業 | 説明を聞きながら数分 | 悩みの解決の仕方と、選ぶ決め手 |
| 採用向け | 合同説明会、学校への訪問 | 持ち帰って読む | 働く人の顔と、1日の流れ |
| 催しの案内 | 来場者への配布、受付 | 開始前の数分 | 日時、場所、見どころ |
この表の中で、自社が使う場面に近い行を1つだけ選んでください。複数の種類を1冊で兼ねようとすると、どの相手にも中途半端な紙になります。
会社案内と商品案内は、別の紙に分けたほうが楽
会社案内に商品の説明を全部詰めると、商品が増えるたびに作り直しになります。商品案内は商品ごとに作り、会社案内は会社の説明だけにする分け方が、更新の手間を減らします。
商品が数点しかない会社なら、1冊にまとめてもかまいません。その場合も、前半を会社、後半を商品と、はっきり分けておくと、後から差し替えやすくなります。
渡す場面は、紙の厚さと大きさも決める
郵送するなら軽さが、カバンに入れて持ち歩くなら折りたたんだ大きさが、効いてきます。展示会の机に並べるなら、遠くからでも題名が見える表紙が必要です。
渡す場面を思い浮かべると、紙の大きさや折り方の迷いが、半分は消えます。
パンフレットが「作ること」で終わってしまう構造的な理由
パンフレットが、作ったのに使われない紙になってしまう会社は少なくありません。原因は担当者の努力の量にはありません。作り始めの順番にあります。
作る理由が「そろそろ必要だから」になっている
きっかけは、展示会が決まった、取引先に会社案内を求められた、古い版の在庫が切れた、といった外からの事情です。その時点では、誰に何を伝えたいのかが、まだ決まっていません。
期限が迫っているので、前の版を手直しして出します。結果として、前の版の弱点も、そのまま引き継がれます。
社内の意見が「全部載せる」方向に集まる
各部署に載せたい内容を聞くと、全員が自分の部署の説明を入れたがります。誰も削ろうとしないので、紙面は情報で埋まります。
読む相手の側から見ると、情報が多すぎる紙は、どこから読めばよいか分からない紙です。
道具の操作が、作業の中心になる
文書作成ソフトやプレゼンテーションソフトは、画面上で図形や画像を動かせます。操作が楽しく、時間が経つので、作業した感覚が残ります。
ただし、動かしているのは見た目であって、伝える内容ではありません。見た目の調整に2日かけて、文章は前の版のまま、という進み方は珍しくありません。
渡したあとの成果が、測られていない
配った枚数は数えても、配った相手から何件の問い合わせが来たかは、数えていない会社が多くあります。成果が見えないので、次の版も同じ作り方になります。
渡す場面と、渡した後にしてほしい行動を先に決めておけば、後から振り返る基準ができます。
紙とサイトの役割分担:紙は手渡しの場面で、詳しい情報はサイトへ
パンフレットを作るとき、ホームページとの分担を決めずに進めると、同じ内容を紙にも画面にも書くことになります。どちらかを直すたびに、もう片方がずれます。
総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査によると、インターネット利用者のうち、検索サービスを利用している人は77.5%でした。手渡されたパンフレットを読んだ相手が、社名や商品名を検索して、さらに調べる場面は、いまや当たり前になっています。
| 項目 | 紙のパンフレット | 自社のホームページ |
|---|---|---|
| 渡す場面 | 対面、郵送、展示会 | 検索、紹介、パンフレットを読んだ後 |
| 読まれ方 | 手元で通して読む | 知りたい箇所だけ拾い読み |
| 向く内容 | 会社の考え方、代表の顔、事例の抜粋 | 料金の目安、よくある質問、最新の営業時間、事例の全部 |
| 更新の手間 | 刷り直しが必要 | すぐ直せる |
| 弱点 | 古くなった情報が残る | 最初の信頼を作る場面がない |
役割は、紙が「出会いの場面で興味を持たせる」、サイトが「興味を持った人の疑問に全部答える」と分けます。この分け方なら、紙には変わりにくい内容だけを載せて、変わりやすい内容はサイトに置けます。
紙に書かないほうがよい、変わりやすい情報
担当者の名前、営業時間、取扱商品の細かい一覧、料金の詳細は、変わりやすい情報です。紙に印刷すると、刷り直すまで古い情報が配られ続けます。
紙には「詳しくはホームページで」と書き、最新の内容は画面で見てもらう形にします。
サイトに戻ってきた人が、迷わない出口を作る
パンフレットの最後に、サイトの住所だけを載せても、相手は何を見ればよいか分かりません。サイトのどのページを見てほしいのかまで、紙の上で指定します。
その具体的なやり方は、後の節で説明します。
よくある間違い1:全部載せて、結局どこも読まれない
会社案内でいちばん多い失敗は、載せられる内容を全部載せることです。社長のあいさつ、沿革、組織図、事業内容、取引先、設備、採用、アクセスと並べて、32ページになった会社案内もあります。
全部載っているので安心に見えますが、相手の側から見ると、何を伝えたい会社なのかが分かりません。
全部載せの紙は、読まれた順に印象が決まる
人は、表紙と最初の1〜2ページで、読み続けるかどうかを決めます。沿革や組織図が最初に来ると、読む前に閉じられます。
会社の歴史を知ってもらいたい気持ちは自然ですが、初めて会う相手が知りたいのは、自分に関係のある話です。
| 載せたくなる内容 | 相手が最初に知りたいこと | 置く場所の目安 |
|---|---|---|
| 創業の経緯 | この会社は何をしてくれるのか | 中盤か後半 |
| 組織図 | 誰に連絡すればよいのか | 最後のページ |
| 設備の一覧 | 自分の悩みを解決できるのか | 事例の後ろ |
| 社長のあいさつ | 信頼できる人なのか | 表紙の次、短く |
削る基準は「渡す相手が決める前に必要か」
載せるか迷う項目は、渡した相手が次の一歩を決めるために必要かどうかで判断します。必要でない項目は、サイトに回します。
削るのは勇気が要りますが、削った分だけ、残った項目が読まれるようになります。
よくある間違い2:テンプレートと道具選びから始める
次に多いのは、作り方を調べて最初に決めるのが、道具とひな形になるパターンです。見た目の気に入ったひな形を選び、文字を流し込んで、完成にします。
ひな形に合わせて、伝える内容が決まってしまう
ひな形には、あらかじめ「社長あいさつ」「事業紹介」「会社概要」の枠が用意されています。枠を埋めれば形にはなりますが、相手の悩みに答える紙にはなりません。
ひな形の枠は、どこの会社にも当てはまるように作られています。使うなら、順番と枠の数を、自社の場面に合わせて組み替える前提で選んでください。
道具の違いは、仕上がりの違いより、直す頻度の違い
文書作成ソフトは、文章を主役にした紙に向きます。プレゼンテーションソフトは、図や写真を自由に置きたい紙に向きます。専用のデザインソフトは、印刷の細かい指定に対応しやすい代わりに、使い方を覚える時間がかかります。
道具に上下はありません。自社の誰が、どのくらいの頻度で直すのかで選びます。この選び方は、後の節で表にしてまとめます。
質問者の「スマートフォンで作れるか」への答え
先に紹介した質問では、スマートフォンで作ってよいのかが問われていました。回答は、普通はパソコンで作るというものでした。
文字や画像の位置を細かく指定する作業は、画面が大きく、マウスやキーボードを使えるパソコンのほうが確実です。スマートフォンで案を考えて、パソコンで仕上げる分け方なら、どちらも活かせます。
よくある間違い3:誇大な言い方で、読む前に信用を落とす
「業界No.1」「どこよりも安い」「お客様満足度100%」のような言葉は、短い言葉で強い印象を与えるので、パンフレットに入れたくなります。ところが、根拠が示せない言い方は、読んだ相手に疑われるだけでなく、法律の問題にもなります。
消費者庁の資料で、パンフレットは「表示」に含まれている
消費者庁の2026年3月改訂版「事例でわかる景品表示法」では、商品やサービスの品質、規格などを消費者に知らせる広告や表示の例として、チラシ・パンフレット、カタログ、ダイレクトメールを挙げています。
同じ資料は、景品表示法が、商品やサービスの品質や規格などについて、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示を、優良誤認表示として禁止していると説明しています。
さらに、不当表示については「事業者側に故意・過失がなかったとしても、景品表示法に基づく措置命令が行われることとなります」と書かれています。悪意がなくても、根拠のない言い切りが問題になる可能性があるということです。
この資料が想定しているのは、一般の消費者向けの表示
景品表示法の資料は、一般の消費者に向けた表示を対象に説明しています。企業どうしの取引向けの会社案内に、そのまま同じ扱いが当てはまるかどうかは、この資料だけでは判断できません。
判断に迷う表現は、専門家や、地域の相談窓口に確かめるのが確実です。この記事では、法律の個別の判断はしていません。
言い切る前に、根拠を手元に置く
数字や順位を載せるときは、いつ、誰が、何を対象に調べたのかを説明できる状態にしておきます。説明できない数字は、パンフレットに載せないほうが安全です。
| 書きたい言い方 | 先に確かめること | 書けないときの言い換え |
|---|---|---|
| 地域で一番 | 何を基準にした順位か | 創業から続けている年数を事実で書く |
| お客様満足度が高い | 調べた時期と回答数 | 寄せられた声を一部、そのまま載せる |
| どこより早い | 他社と比べた事実があるか | 自社の標準の納期を、具体的に書く |
| 最高の品質 | 検査の方法と記録 | 検査の工程を順に書く |
よくある間違い4:入稿してから、誤字と抜けに気づく
印刷に出した後に誤字が見つかると、刷り直しになります。部数が多いほど、損失は大きくなります。
誤字の原因は、確認する人が書いた本人だけになっていることです。自分の書いた文章は、頭の中で補って読んでしまうので、間違いが見えません。
確認は、書いていない人に頼む
社内の別の部署の人や、会社のことを知らない人に、声に出して読んでもらうのが効果的です。つかえたところが、直す候補になります。
点検の具体的な項目は、後半の「入稿前の点検」の節にまとめました。
パンフレットの作り方:「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、相手の知りたいことから決める
ここからは、実際の作り方です。軸にするのは、私が「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいる考え方です。
謙虚とは、会社が言いたいことを一度引いて、受け取る人が知りたいことに先に答える順番を守ることです。パンフレットでは、自社の紹介から始めず、相手の悩みから始めます。
| 手順 | やること | 使うもの |
|---|---|---|
| 1 | 渡す相手と場面を1つ決める | 直近の商談や展示会の予定 |
| 2 | 渡した後にしてほしい行動を1つ決める | 問い合わせ、見積もりの依頼、サイトの特定のページを見る |
| 3 | 相手の悩みを、相手の言葉で5つ書く | 問い合わせの履歴、営業の聞き取り |
| 4 | 紙面の順番を作る | 次の節の型 |
| 5 | 文章と写真を入れる | 事実、数字、現場の写真 |
| 6 | 入稿前に点検する | 後半の点検表 |
手順の1から3は、道具を開く前に、紙とペンで終わらせます。ここで3時間かけても、後の作業が早くなります。
手順2:渡した後の行動は、1つだけに絞る
「電話をください」「メールをください」「サイトを見てください」を全部並べると、相手はどれもしません。最後のページで頼む行動は、1つにします。
初めて会った相手に、いきなり問い合わせを求めるのは重いので、サイトの特定のページを見てもらう、までを目標にする方法もあります。
手順3:相手の悩みを、相手の言葉で書く
自社の紹介文は、自社の言葉で書いてしまいがちです。手元にある問い合わせのメールや、営業の聞き取りから、相手が実際に使った言葉を5つ拾います。
「困っている」と一般的に書くより、相手が書いた言葉をそのまま見出しに使うほうが、読み手は自分の話だと感じます。
紙面の順番:会社案内と商品案内で、並べ方を変える
紙面の順番は、相手が読み進める流れに合わせて決めます。基本は、表紙、悩みへの答え、証拠、人、次の一歩という順です。
| ページの位置 | 会社案内の場合 | 商品案内の場合 |
|---|---|---|
| 表紙 | 何の会社か分かる一行と社名 | 商品の名前と、解決する悩み |
| 最初の見開き | 相手の悩みと、その解決の仕方 | 悩みの場面と、商品の使い方 |
| 中盤 | 事例、仕事の流れ | 特長、使った人の声、仕様 |
| 後半 | 代表の言葉、人の紹介 | よくある質問、注意点 |
| 最後のページ | 連絡先と、サイトの見てほしいページ | 問い合わせ先と、サイトの見てほしいページ |
表紙は、一行で何の会社かが分かるようにする
表紙で社名だけを大きく出しても、初めて会う相手には何の会社か分かりません。社名の上か下に、何をしている会社かを一行で添えます。
たとえば「地域の住宅を、直して長く住めるようにする工務店」のような書き方です。この例は、説明のために作った架空のものです。
事例は、相手と近い立場のものを選ぶ
相手が自分に当てはまる事例を見つけると、紙の信用が大きく上がります。事例は、渡す相手に近い業種や規模のものを、2〜3件選びます。
事例を載せる許可を、依頼主から文書で得ているかも、載せる前に確かめておきます。
人の顔と名前は、相談先を想像させる
会社案内の後半に、実際に対応する人の顔と名前が載っていると、相手は問い合わせる場面を想像できます。肩書きだけの紹介にせず、担当する仕事と、一言のメッセージを添えます。
写真は、仕事をしている場面のものが向きます。証明写真のような正面の写真だけだと、人柄が伝わりません。
文章の書き方:形容詞を、行動と数字に置き換える
パンフレットの文章で最も多い弱点は、形容詞の連続です。「丁寧」「高品質」「真心込めて」は、どの会社も使える言葉なので、読んでも記憶に残りません。
形容詞の隣に、事実を1つ置く
形容詞を1つ見つけたら、その隣に、行動か数字を置きます。「丁寧に対応します」は、「依頼の翌営業日までに、見積もりをお返しします」に書き換えられます。
事実で書いた文は、守れなかったときに困るのは自社です。その分、読み手には本気が伝わります。
| 形容詞の文 | 事実で書き換えた文 |
|---|---|
| 丁寧な施工を心がけています | 施工前に、現地で3回、寸法を測り直します |
| 迅速に対応します | 問い合わせは、当日中に電話かメールで返信します |
| 長年の経験があります | 創業から続けて、同じ地域の住宅を手がけています |
| 安心してお任せください | 工事の途中経過を、写真つきで毎週お送りします |
上の4つは、説明のために作った架空の例です。自社で守れる約束だけを、同じ形で書いてください。
1段落は、短く切る
紙面では、1つの段落に詰め込むほど、読み飛ばされます。1つの段落は2文までにして、見出しと見出しの間に余白を取ります。
文字の大きさは、読む場面に合わせます。机の上で読む紙なら小さめでも読まれますが、立ったまま受け取る展示会の紙は、少し大きめが向きます。
景品表示法の観点で、言い切りは根拠とセットにする
先の節で説明したとおり、数字や順位は、根拠を手元に置いて書きます。根拠を説明できない言い切りは、削るか、事実の描写に置き換えます。
パソコンで作る:文書作成ソフト、プレゼンテーションソフト、専用ソフトの選び方
サジェストに並ぶ「ワード」「パワーポイント」は、それぞれ文書作成ソフトとプレゼンテーションソフトの名前です。どれで作るかは、誰が、どのくらいの頻度で、どんな紙を直すかで決めます。
| 道具 | 向く紙 | 直す人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 文書作成ソフト | 文章が中心の二つ折り、三つ折り | 総務や広報の担当者 | 画像の位置が崩れやすい |
| プレゼンテーションソフト | 図や写真を自由に置く紙 | 営業や企画の担当者 | 文字が小さくなりやすい |
| 専用のデザインソフト | 印刷の細かい指定が必要な冊子 | デザインを扱える人 | 使い方を覚える時間が要る |
社内で直せる道具を選ぶと、更新が続く
デザインの出来が良くても、作った人が辞めた途端に、誰も直せなくなる紙もあります。社内で触れる人がいる道具で作ると、情報が古くなったときに、すぐ直せます。
最初から専用ソフトで本格的に作る場合は、元のデータを自社で保管し、誰が直せるのかを決めておくことが、後の手間を減らします。
用紙の大きさと折り方は、渡す場面から決める
郵送する紙は軽さを、カバンに入れて持ち歩く紙は折りたたんだ大きさを優先します。用紙はA4が基準になることが多く、二つ折りか三つ折りに折る形が、1枚ものとしては手軽です。
冊子にする場合は、ページ数が増えるほど綴じ方が複雑になります。ページ数と綴じ方は、印刷会社に相談するときに具体的に聞くのが確実です。
紙からサイトにつなぐ:最後のページに、見てほしい1ページを指定する
手順2で決めた「渡した後の行動」を、最後のページで具体的に示します。サイトの住所を載せるだけで終わらせず、見てほしいページまで指定します。
二次元コードと短いアドレスを、両方載せる
スマートフォンで読み取れる二次元コードを置き、あわせて短いアドレスも文字で載せます。コードが読み取れない場面でも、アドレスを入力して開けるようにするためです。
飛び先は、トップページよりも、パンフレットを読んだ人のために作った専用ページのほうが、続きを読みやすくなります。
飛び先のページは、紙と同じ言葉で始める
紙の最後に「詳しくはこちら」と書き、開いたページの見出しが紙と違う言葉だと、相手は戻る方向に向かいます。紙の見出しと同じ言葉を、サイトのページの最初に置きます。
サイトに専用ページを作る余裕がない場合は、既存のサービスのページの1つを、飛び先に決めます。
紙を何枚渡したかと、サイトの閲覧数を並べて見る
専用ページを用意すると、パンフレットから来た人の数をおおまかに測れます。展示会の前後で閲覧数を比べるだけでも、紙が使われているかが分かります。
測った結果は、次の版の順番を変えるときの材料になります。
入稿前の点検:印刷に出す前に、書いていない人の目で確かめる
作った紙を印刷会社に渡すことを、入稿と呼びます。入稿してから間違いに気づくと、刷り直しになります。
質問の回答にあったとおり、印刷会社によって受け付けるファイルの形式や条件が違います。作り始める前と入稿の前の2回、先方の案内で確かめてください。
内容の点検:事実と数字を、元の資料に戻して照らす
社名、住所、電話番号、サイトの住所、担当者の名前、営業時間は、最も間違いやすい項目です。会社の公式な書類やサイトと、1字ずつ見比べます。
数字や順位は、載せる根拠の資料を手元に置いて、数字が合っているかを確かめます。許可を得た事例は、載せる表現が許可された範囲に収まっているかも見ます。
見た目の点検:離れて見て、近づいて見る
印刷した試し刷りを、腕を伸ばした距離で見て、表紙の題名が読めるかを確かめます。次に近づいて、小さな文字が潰れていないかを見ます。
画面で見たときと、紙の上での色や明るさは、違って見えることがあります。画面だけで決めずに、試し刷りを必ず手に取ってください。
| 点検の種類 | 確かめること | 確かめる人 |
|---|---|---|
| 内容 | 社名、連絡先、数字が正しいか | 書いていない人 |
| 文章 | 声に出して読んで、つかえる所がないか | 別の部署の人 |
| 見た目 | 文字の大きさ、写真の鮮明さ、余白 | 試し刷りを見る人 |
| 入稿条件 | ファイルの形式、余白、切り落とす部分への配慮 | 印刷会社の案内を読む人 |
| 権利 | 写真や図の使用許可、事例の掲載許可 | 管理する担当者 |
| 遷移先 | 二次元コードを読み取って開く | スマートフォンを持つ人 |
二次元コードは、印刷前に実機で読み取る
二次元コードは、印刷してからでは直せません。画面で表示した状態と、試し刷りの状態の両方で、スマートフォンで読み取って、想定のページが開くかを確かめます。
読み取れない場合は、コードの大きさや、周りの余白を見直します。
切り落としの余白は、印刷会社の案内に従う
紙の端まで色や写真を広げる場合は、印刷後に紙を切り落とすので、その分を見込んで作る必要があります。必要な余白の幅や、文字を置いてはいけない範囲は、印刷会社ごとに案内が違います。
自分で判断せずに、入稿の案内に書かれた幅に合わせてください。
よくある質問
Q. パンフレットの作り方は、まず何から始めればよいですか。
渡す相手と場面を、1つに決めるところからです。道具を開くのは、その後です。
次に、渡した後に相手にしてほしい行動を1つ決めます。この2つが決まると、載せる内容が自然に絞られます。
Q. 自分で作るか、制作を頼むか、どう決めますか。
頼むか自分で作るかは、直す頻度と、社内にできる人がいるかで決まります。自分で作る場合の最初の1冊は、文書作成ソフトかプレゼンテーションソフトで、枠組みを作るのが現実的です。
見た目の水準を上げたい場面では、デザインを専門にしている人に、紙面の仕上げだけを頼む分け方もあります。その場合も、目的と順番は自社で決めてから渡します。
Q. 会社案内は、何ページくらいが適切ですか。
決まったページ数はありません。渡す場面で読まれる時間から逆算します。
1枚を折りたたんだ形は、立ち話の場面に向きます。冊子の形は、座って読む場面や、採用の場面に向きます。
Q. 写真やイラストは、自由に使ってよいですか。
自社で撮った写真は、写っている人や取引先の許可を確かめてから使います。無料で配られている素材も、使い方の条件が決められています。
使う前に、使用条件を読んで、パンフレットの用途が許可されているかを確かめてください。
Q. パンフレットとホームページ、どちらを先に作るべきですか。
先に作るのは、どちらでもかまいません。大事なのは、片方の内容をもう片方で繰り返さないことです。
手渡しの場面が多い会社は紙を先に、検索で見つけてもらう会社はサイトを先に作ります。どちらを先にしても、役割分担の表を決めてから進めると、後で迷いません。
まとめ
パンフレットの作り方は、渡す相手と場面を決めるところから始まります。道具を開くのは、その後です。次に、渡した後にしてほしい行動を1つに絞ります。
紙面は、表紙、悩みへの答え、証拠、人、次の一歩の順に並べます。文章は形容詞を、行動と数字に置き換えます。数字や順位は、根拠を手元に置いてから載せます。消費者庁の2026年3月改訂版「事例でわかる景品表示法」は、パンフレットを表示の例に挙げています。
紙は、手渡しの場面で興味を持ってもらう役目に絞ります。詳しい情報や、変わりやすい情報は、自社のホームページに置きます。総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査では、インターネット利用者の77.5%が検索サービスを利用していました。紙を読んだ相手が、検索してさらに調べる流れは、すでに普通になっています。
「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、会社が言いたいことを一度引いて、相手が知りたいことに先に答える順番で、紙面を並べてください。
今日できる点検
| 点検すること | 確かめ方 | 結果の使い方 |
|---|---|---|
| 渡す相手と場面を1つに決めたか | 次に配る機会を思い浮かべる | 複数あるなら、最も近いものを選ぶ |
| 渡した後にしてほしい行動を1つ決めたか | 最後のページに書く一文を声に出す | 複数あるなら、1つに絞る |
| 相手の悩みを相手の言葉で5つ書いたか | 問い合わせの履歴を開く | 見つからなければ、営業に聞き取る |
| 形容詞だけの文がないか | 「丁寧」「高品質」を探す | 見つけたら、行動と数字に書き換える |
| 数字や順位に根拠があるか | 調べた時期と対象を説明してみる | 説明できなければ、削る |
| 紙に変わりやすい情報が入っていないか | 担当者名、営業時間、料金の詳細を探す | サイトに移して、紙には案内だけ書く |
| 最後のページに、サイトの見てほしいページを指定したか | 二次元コードを読み取って開く | 開かなければ、飛び先を直す |
| 書いていない人に、声に出して読んでもらったか | 別の部署の人に頼む | つかえた箇所を直す |
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