「AIは、ブランド自身のサイトより、第三者の記事や比較サイトを引用したがる」。LLMO対策の資料で、こうした説明を見かけます。この説明に関わる研究の一つが、2025年9月10日にarXivへ公開された「Generative Engine Optimization: How to Dominate AI Search」です。トロント大学の4人の研究者が、Googleと、検索機能つきのAI(ChatGPT、Claude、Perplexity、Gemini。実験によって組み合わせが違います)を比べています。
この記事は、その論文を原文から読み、何を測って、何が分かり、何が分かっていないのかを整理します。とくに「獲得メディア」「自社メディア」「ソーシャル」という3分類の定義を、原文どおりに説明します。別の資料で見かけた数字は、原文で確認できたものだけを載せました。論文の主張と私の読み取りも、見出しを分けて書いています。
合同会社謙虚は、3つのドメインを並行して運用し、何を変えると数字が動くかを測り続けています。この論文を読むのは、「AIに選ばれる」の中身が、自社サイトの書き方の話なのか、他所での言及の話なのかを、実験の範囲で確かめておくためです。
結論:3行で言うと
- この論文の実験では、AI検索の引用元は獲得メディア(第三者の媒体)に大きく偏り、ソーシャルは少ない割合でした。Googleは3種類が混ざっています
- 偏りの強さはAIサービスごとに違いました。ChatGPTとClaudeは獲得メディアが特に多く、PerplexityとGeminiは自社メディアやソーシャルも一定の割合で引いています
- ただし、これは引用元を数えた観察です。第三者に取り上げられたことが原因でAIに選ばれた、という因果は、この実験の範囲外です。査読を経た論文ではなく、プレプリントです
この論文の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原題 | Generative Engine Optimization: How to Dominate AI Search |
| 著者 | Mahe Chen、Xiaoxuan Wang、Kaiwen Chen、Nick Koudas(4人。全員トロント大学。最初の2人は同等の貢献と明記) |
| 公開日 | 2025年9月10日(v1)。その後の改訂版は、確認した時点で見当たりませんでした |
| arXiv番号 | 2509.08919(分野はcs.IR、情報検索)。27ページ |
| 掲載・採択の状況 | arXivのプレプリント。採択された会議や雑誌の記載は確認できませんでした(詳しくは後の章) |
| 種類 | 大規模な比較実験の報告。新しい手法の提案ではなく、AI検索とGoogleの出力を観察して比べた研究 |
| 実験データ・コード | 公開先の記載は、私が読んだ範囲で見つかりませんでした |
| データ収集の時期 | 論文は、データ収集を2025年8月と述べています |
論文はこちらで読めます。arXiv(2509.08919)、arXiv発行のDOI。
AIの回答で目立つ文章の書き方を調べた別の論文は、GEO原論文の解説にまとめています。この論文はそれと違い、「どの種類のサイトが引用されるか」を調べています。
この論文が答えた問い
AI検索は、Google検索と比べて、どんな種類のサイトを情報源にしているのか。そしてAI検索どうしでは、どう違うのか。
論文が背景に置くのは、生成AIが検索の一部を担い始めていることです。ChatGPTやPerplexityは、ランキングのリンク一覧ではなく、まとめた回答と引用元を返します。だとすれば、従来のSEOで力を入れてきた自社サイトや被リンクは、AI検索でも同じように効くのか。論文はこの疑問に、引用元の内訳を数えて答えようとしています。
どうやって調べたのか
3つの分類の定義(原文どおり)
この論文の中心は、引用されたサイトのドメインを3種類に分けて数える方法です。原文の定義を、日本語にしました。
| 分類(原文) | 原文の定義 | 原文が挙げる例 |
|---|---|---|
| 獲得メディア(Earned) | 独立したメディア、レビューサイト、比較サイト。第三者が書いたもの | nerdwallet.com、forbes.com。後の実験では、政府のサイトも獲得メディアに入れています |
| 自社メディア(Brand) | 商品やサービスを直接提供する、公式のブランドサイト | chase.com、wellsfargo.com。後の実験では、メーカーと小売店のサイトを指しています |
| ソーシャル(Social) | SNS、コミュニティの掲示板、ユーザーが投稿した内容のサイト | reddit.com、quora.com、youtube.com |
ここで気をつけたいのは、この分類が論文の著者が作った枠組みだという点です。論文自身が、限界の節で「獲得メディアとブランドのブログの境目はあいまいなことがある」と述べています。別のチームが別の分類を使えば、数字は変わるはずだとも書いています。
分類はAIが行いました。GPT-4o-search-previewというAIが、ドメインを3つのどれかに振り分けています。ソーシャルは、既知のSNSの一覧とAIの判定を組み合わせています。
調べた対象と条件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 比べた相手 | Google(検索の上位10件のURL)と、検索機能をつけたAI 4種(ChatGPT、Claude、Perplexity、Gemini) |
| 質問の形 | 「〜のトップ10」のような、ランキングを求める質問が中心 |
| 主な実験 | 地域と業種の比較(1,000問、米国とカナダ)、地域のお店の検索、言葉の言い換え(7種類)、翻訳(5言語)、ブランドの知名度別、コーラの実験(50問)、銀行の実験(3つの利用者像) |
| 集めたもの | 回答の文章と、引用されたリンク。ドメインを取り出して、3分類に振り分ける |
| 指標 | 3分類の割合、ドメインの重なり(同じドメインがどれだけ共通か) |
| AIの設定 | APIで呼び出した版。ChatGPTはgpt-4o-search-preview、Claudeはclaude-3.5-sonnet、Geminiはgemini-2.5-flash、Perplexityはsonar-pro |
「ドメインの重なり」は、2つの結果に共通するドメインの数を、両方を合わせたドメインの数で割った値です(ジャッカード係数)。1なら完全に一致、0なら共通がゼロです。
結果
Googleと比べると、AI検索は獲得メディアに偏っていた
最初の実験は、1,000問のランキング質問を、米国とカナダで、GoogleとChatGPT(検索機能つき)に投げた結果です。数字は、引用されたドメインの種類の割合(%)です。原文の本文から拾いました。
| 業種・地域 | Google(獲得/自社/ソーシャル) | AI検索(獲得/自社/ソーシャル) |
|---|---|---|
| 家電・カナダ | 54.1/22.8/23.1 | 77.6/22.1/0.3 |
| 家電・米国 | -/32.9/15.4 | 92.1/-/ごくわずか |
| 自動車・カナダ | 40.6/36.6/22.8 | 69.1/30.9/0 |
| 自動車・米国 | 45.1/39.5/15.4 | 81.9/18.1/0 |
| ソフトウェア・カナダ | 31.8/53.8/14.4 | 74.2/25.8/0 |
| ソフトウェア・米国 | 45.4/43.7/10.9 | 72.7/26.7/ごくわずか |
「-」は、原文の本文に数字がない項目です。「0」は、原文が「ソーシャルなし」と書いている項目です。
- AI検索の獲得メディアの割合は、6つの組み合わせすべてで約69〜92%でした。Googleは約32〜54%です
- AI検索のソーシャルは、ほぼ0でした。Googleは約10〜23%を占めています
- 論文は、AI検索がRedditのような掲示板を後ろに回し、第三者のレビューや出版社のサイトを前に出していると読んでいます
- GoogleとAI検索で、引用ドメインの上位5件・10件の重なりは、家電のスマートフォンとノートパソコンで15〜32%(上位5件)、20〜41%(上位10件)と原文にあります。電気自動車は上位5件で33%、上位10件で50%を超えました
偏りの強さは、AIサービスごとに違った
次の実験では、4つのAI検索を比べました。ブランドの知名度別に、有名ブランド(Apple、Nike、Toyotaなど)と、あまり知られていないブランドの質問を用意しています。数字は引用元の割合(%)で、左から獲得メディア、自社メディア、ソーシャルです。
| AI検索 | 有名ブランドの質問 | 無名ブランドの質問 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 93.5/6.5/0 | 95.1/4.9/0 |
| Claude | 87.3/6.8/5.9 | 86.3/10.6/3.2 |
| Perplexity | 67.4/8.8/23.8 | 73.4/9.1/17.5 |
| Gemini | 63.4/25.1/11.5 | 66.4/21.2/12.7 |
- どのAI検索でも、獲得メディアが最大でした。この点は、論文が「一貫している」と書いています
- この2つの表では、ChatGPTのソーシャルは0、Claudeは数%です。Perplexityは17〜24%、Geminiは自社メディアが21〜25%と、混ざり方が違います
- 銀行の質問では、全体で獲得メディア64.6%、自社メディア34.1%、ソーシャル1.2%でした。この実験では、利用者像(若手、子育て世代、退職者)による違いより、AIサービスの違いのほうが大きかったと論文は述べています
- AIサービス2つの組み合わせごとの答えの一致率は、有名ブランドで76〜81%、無名ブランドで71〜76%でした
言語と言い換え
- 質問を翻訳すると、ドメインの重なりは大きく下がりました。ChatGPTは言語ごとに引用元の顔ぶれが入れ替わり、重なりはほぼ0です。Claudeは英語の有力サイトを言語をまたいで使い回しています
- Googleでは、日本語の質問で日本語のサイトが引用の4分の3を超え、最も現地語寄りでした(次いでフランス語とドイツ語)。AIでは、ChatGPTとPerplexityが現地語寄りで、Claudeは英語寄りだったと述べています。ただし、翻訳した質問での結果です
- 言い換えでは、翻訳ほどは結果が動きませんでした。AI検索の獲得メディアの多さは、言い換えても変わりませんでした
地域のお店と、大手ブランドへの偏り
- 地域のお店の検索(ハウスクリーニング、歯科など)では、GoogleとAI検索のドメインの重なりが小さく、ハウスクリーニング20.6%、屋根工事17.1%、税務申告15.4%、歯科11.9%、自動車修理2.5%、ITサポート0.1%でした
- コーラの50問では、ChatGPTとPerplexityを合わせて、答えに出てくるブランド名の62.2%が大手でした。内訳は、大手613件、無名(小さなクラフトブランド)89件、その他284件の計986件です。この62.2%は、引用元の種類の割合ではなく、答えに出てくるブランド名の割合という別物です
論文自身が書いている限界
論文は最後の節で、次の3点を自分で挙げています。
- 時点の限界。データは2025年8月のもので、AI検索は頻繁に変わります。論文は、数字を「恒久的な事実として扱うことは勧められない」と述べています
- 分類の限界。3分類は著者が作った枠組みで、境目はあいまいです。論文は、絶対的な割合は「強い相対的な傾向の例」として読むべきで、AIサービスどうしの比較のほうが、絶対値より頑健だと書いています
- 外から見た観察であること。AI側の内部データにはアクセスしておらず、「なぜそうなるか」は推測です
原文を読んで気づいた点
ここからは、論文が自分では書いていない、私が原文を読んで気づいた点です。
- 査読を経た形跡は、ゼロです。arXivのページには、採択された会議や雑誌を示すコメント欄がなく、版もv1だけです。PDFの体裁は、ACMの投稿用の雛形のままです(会議名は「Conference’17」、DOIは「nnnnnnn」という仮の表記)。査読済みの論文とは言えない状態です
- 謝辞に、GEOを事業にする会社の名前があります。謝辞は、GEOを事業とする企業への感謝を述べています。さらに第6章は、継続的な「GEOのサービス」を勧める内容です。著者とこの会社の関係は、原文の外の情報が必要です。ただ、結論が事業の宣伝に近づいていないかは、割り引いて読む価値があります
- 日本語の検証は、翻訳質問だけです。日本語は5つの翻訳言語の1つで、家電などの10分野を訳した質問です。日本の中小企業の業種や、日本のサイトを対象にした実験は、対象外です。3分類の割合も、全言語をまとめて出しています
- 実験の環境は、実サービスと差があります。使ったのは、検索機能をつけたAPI版です。消費者が使うアプリの画面とは、挙動が違う可能性があります
- 分類の検証は、AI判定が中心です。私が読んだ範囲で、人による抜き取り検査や一致率の記載は、見つけた件数がゼロでした
- 最初の実験は、AIとしてChatGPTだけを使っています。要旨や見出しは「AI検索」と書きますが、地域と業種の実験の設計は「検索機能つきのGPT」です
- 質問の数が、実験によっては書かれていません。ブランド知名度別と、家電・自動車の実験は、質問数の記載が欠けています。割合の細かい差は、慎重に読む必要があります
- 本文どうしの食い違いが、少しあります。翻訳の実験で、4章はPerplexityとGeminiを「Googleと同程度かやや高い」と書き、5章は同じ実験を「重なりが全体に低い」と書いています。比べる相手が違う(Googleか、他のAIか)ためと思われますが、原文の説明は欠けています。また、地域検索の解釈に「電子機器や健康」との比較がありますが、健康の質問の結果は載っていません
- 効果を測る実験が欠けています。ブランドの露出や第三者の言及を変えて、引用の動きを見た実験は、原文でゼロ件です。「獲得メディアを増やせ」という提案は、引用元の偏りから導いた推奨です
この論文から、言えること・言えないこと
| 言えること(論文の設定で確認された) | 言えないこと(論文では確認されていない) |
|---|---|
| 2025年8月時点のAPI版のAI検索は、ランキング質問で獲得メディアを最も多く引用していた | 日本語の質問で、日本のサイトについて同じ割合になること |
| Googleは、AI検索よりソーシャルと自社メディアの割合が高かった | いまのAI検索の画面で、同じ割合が続いていること |
| AIサービスごとに、引用元の顔ぶれと偏りの強さが違った | 特定のAIサービスを狙えば、確実に引用されること |
| 第三者のレビューや媒体は、多くの実験で上位の引用元だった | 第三者に取り上げられると、AIに選ばれやすくなること |
| ランキング質問では、大手ブランドの名前が多く出た | 取引や問い合わせが増えること |
中小企業の視点で、どう受け取るか
ここからは論文の主張とは別の、私の読み取りです。論文の実験では確かめられていない部分を含みます。
1. 「第三者の言及」は、確かめる価値のある仮説として扱う
引用元が獲得メディアに偏っていたことは、実験で確認されています。ただ、「その媒体に載れば自社が引用される」ことは、未確認です。私は、業界の媒体、比較サイト、取材記事などを、優先して整える対象の候補と考えます。効果を約束できる段階ではないので、小さく始めて、自社で測るのが妥当です。
2. 自社サイトの役割は、なくなっていない
AI検索の引用元でも、自社メディアは実験やサービスによって約5%から半数超まで幅がありました。購入に近い質問では自社メディアの割合が上がるという記述が原文にあります(ただし、数字は図のみで本文に載っていません)。第三者の評価を得た先で、読者がたどり着く自社サイトの内容が薄ければ、意味が薄れます。自社サイトは、第三者に語ってもらう内容の「元の資料」を置く場所と考えています。
3. 地域の中小企業は、「AIがどこを見るか」を自分で確かめる
地域のお店の検索では、GoogleとAI検索の重なりが小さいという結果でした。論文は、ディレクトリ型・集約型のサイトが目立つと述べています。日本でどのサイトが該当するかは、この論文の範囲外です。自分の業種と地域で、AIに質問して引用元を見るのが、いちばん確実です。
4. 第三者の言及は、お金で作るものではない
論文は、PRやバックリンクの獲得を勧めています。ただ、日本では、景品表示法に基づくステルスマーケティング規制(2023年10月施行)により、事業者が内容を決めた広告を広告と示さないと、不当表示になり得ます。詳細は消費者庁の資料で確認してください。原文の定義は「独立した媒体」で、私は、取引先や利用者、取材した記者が自分の判断で書いた言及を、獲得メディアと読んでいます。実務では、事例の掲載許諾や、正確な取材対応から始めるのが、堅実だと考えます。
よくある質問
「62.2%」という数字を見かけました。どういう数字ですか
コーラの実験の数字です。ChatGPTとPerplexityの答えを合わせて、出てきたブランド名986件のうち、大手ブランドが62.2%でした(論文が示した割合で、内訳の件数から私が計算し直して一致を確認しました)。引用元が獲得メディアか自社メディアかを示す割合とは別物です。「ブランド」という語が3分類の「自社メディア(Brand)」と同じに見えるため、取り違えやすい数字です。
ソーシャルは、AIに引用されないのですか
この実験のChatGPTとClaudeでは、0〜数%にとどまりました。PerplexityとGeminiでは、実験によって数%から2割強が引用されています。YouTubeは、Perplexityで特に目立つ引用元でした。AIサービスによって違うので、「引用されない」と一括りにするのは早計です。
この論文は、査読を受けていますか
確認できませんでした。arXivのプレプリントで、v1だけが公開されています。採択先として書かれた会議や雑誌名は、ゼロ件です。プレプリントは、査読を経ずに公開される形式です。この記事の数字は、原文の数字を正確に写したものですが、論文そのものの妥当性は、他の研究と合わせて判断してください。
まとめ:今日できる1つのこと
お客様が実際に聞きそうな質問を5つ選び、ChatGPTやPerplexityに入れてください。引用されたサイトを書き出して、獲得メディア、自社メディア、ソーシャルのどれかに、この記事の定義で分けます。自社が入っているか、競合が入っているか、どの媒体が繰り返し出てくるかが、自社の状況として見えます。
この論文は、LLMO論文の一覧の一本です。ほかの論文の解説も、順次公開しています。
この記事に書いたことを、そのまま御社のページに
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