AI検索の回答には、根拠として参照したページや投稿の一覧が付きます。この一覧に載ることを、論文の世界では「露出」と呼びます。
では、その露出は誰に配られているのか。すでに多くの人に見られている発信者ほど、AI検索でも引用されやすいのか。
この問いを実際のデータで確かめたのが、2026年1月にarXivで公開された「When Attention Becomes Exposure in Generative Search」です。
先に種類をはっきりさせておきます。この論文は、理論やシミュレーションの研究とは種類が違います。
実在する4つのAI検索に、実際に質問を投げ、返ってきた引用を数えた「監査」の研究です。
題材はWeb3(暗号資産やブロックチェーンの事業)の44事業で、各事業のまわりで報酬を受けて発信している人たちのX(旧Twitter)上の投稿が、どれだけ引用されたかを調べています。
制作者の行動がその後どう変わるかは、この論文の調査範囲の外にあります。この記事では、何を測り、何が分かり、何が分かっていないかを原文から整理します。
合同会社謙虚は、3つのドメインを並行して運用し、何を変えると数字が動くかを測り続けています。お客様に「AI検索に載ることは、何を意味するのか」を説明するとき、露出が誰に集まりやすいかという実測は、その土台になると考えて読みました。
結論:3行で言うと
- Web3の44事業について、4つのAI検索に132問を投げて引用を数えました。発信者の引用を分析できたGrokとPerplexityの画面(3つの設定、37〜41事業)では、外部の順位表で上位10人に入る発信者ほど、引用で有利に扱われていました(下位半分との差は、事業あたり平均4.32〜7.16ポイント)
- 引用された発信者の順位は、でたらめに選んだ場合の期待値より高く、「偶然」では説明しにくい上振れが出ました(約9〜10ポイント)。フォロワーが多い発信者ほど、引用された中での順位が高いという関連も見られました
- 同じAIでも、画面から使う場合と、プログラムから呼び出す場合(API)とで、引用の中身が大きく違いました。3つのAIのAPIでは、X上の投稿が1件も返りませんでした
ただし、題材はWeb3とXに限られ、測っているのは「引用一覧に載った回数」です。読まれたか、クリックされたかは測定の範囲外です。
日本語での検証が報告されていない点も含めて、後の章で整理します。
この論文の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 題名(原題) | When Attention Becomes Exposure in Generative Search |
| 著者 | Shayan Alipour、Mehdi Kargar、Morteza Zihayat(3人。所属はトロント・メトロポリタン大学。筆頭著者はローマ・サピエンツァ大学にも所属) |
| 公開日 | 2026年1月5日(arXivの初版。確認した版もv1) |
| arXiv番号 | 2601.01750(分野は情報検索。副分野はコンピューターと社会) |
| 掲載・採択状況 | arXivのプレプリント。コメント欄は「8ページ、図2つ」のみで、学会・論文誌への採択の記載はありません |
| 種類 | 実データの監査(観察研究)。短い論文で、本文は6ページです |
| データの公開先 | 質問集、発信者の順位表、AI検索の回答と引用一覧を、著者がコードの公開サイトで公開していると論文に書かれています |
論文はこちらで読めます。arXiv(2601.01750)、DOI。
この論文が答えた問い
論文が立てた問いは、次の1つにまとめられます。
AI検索が回答に付ける引用は、外の世界ですでに集まっている注目(人気)に引っぱられているのか。引っぱられているなら、どんな要素がそれと関係しているのか。
背景にあるのは、検索の見え方の変化です。従来の検索では、露出は「何位に出たか」で決まりました。
AI検索では、回答にまとめられた後の引用一覧に「載ったか」「何回載ったか」で決まります。論文は、この引用一覧を露出の配分として扱い、誰にどれだけ配られたかを数えています。
題材にWeb3が選ばれた理由も書かれています。Web3の事業は、Xで事業の話題を広めてくれる発信者に報酬を出す仕組みを持つことが多く、発信者の順位表が公開されています。
「注目が通貨のように働く世界」を、数字で測りやすいというのが論文の説明です。ここでいう「報酬で動く制作者」は、事業から報酬を受けて発信する人のことで、順位表はその人たちの人気を測る物差しとして使われています。
閲覧数や広告収入で動くブログ運営者一般とは、前提が異なります。
論文は問いを3つに分けています。1つ目は発信者の顔ぶれがどれだけ固定しているか、2つ目はAI検索がこの発信者たちをどれだけ引用し、人気が引用に上乗せされているか、3つ目はどんな要素が引用の多さと関係するかです。
どうやって調べたのか
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| 対象 | Web3の44事業(主要な仕組みの提供元、基盤の提供元、分散型のアプリなど) |
| 発信者の人気の物差し | 外部の民間サービスが公開している発信者の順位表。独自の点数で、内容の質、反応の本物らしさ、継続性を見ていると説明されています |
| 発信者のデータ | 各事業の上位100人を、2025年9月28日と10月18日の2回(20日間隔)取得。重複を除いて3,232人 |
| 質問 | 1事業3問で計132問。2問は事業の目的や中核技術を尋ねる一般的な質問、1問は直近10日以内の公式発表に触れる時事的な質問 |
| AI検索 | Grok 4(ライブ検索つき)、GPT-5(ウェブ検索つき)、Gemini 2.5 Flash(Google検索による裏づけつき)、Perplexity Sonar Pro(ウェブ検索つき)の4つ |
| 追加の設定 | PerplexityのAPIと画面で同じ質問の引用を比べる監査。Grokの参照先をXの投稿だけに絞った設定 |
露出の測り方は2種類
1つ目は「上位10人の有利さ」です。事業ごとに、引用全体のうち各順位の発信者が占める割合を出し、上位10人の1人あたりの割合から、51位以下の1人あたりの割合を引きます。
プラスなら上位が有利です。これを、引用と順位表が重なった事業(37〜41事業)で平均し、事業を選び直す計算(ブートストラップ、1,000回)で95%の幅を付けています。
2つ目は「偶然と比べた上振れ」です。引用された発信者に、順位に応じた点を付けます。
1〜10位は3点、11〜50位は2点、51〜100位は1点、100位より下は0点です。引用一覧の全員が上位10人だった場合を満点として割合を出し、順位表からでたらめに選んだ場合の期待値との差を取ります。
差がプラスなら、偶然より上位の人が多く引用されたことになります。
3つ目の問いには、回帰分析(複数の要素と結果の関係を同時に見る統計の手法)を使っています。引用された発信者に絞って、その人の順位を、フォロワー数と、事業ごとの顔ぶれの固定度で説明する形です。
結果
発信者の顔ぶれは、20日でほとんど入れ替わらなかった
2回の順位表で、上位100人の顔ぶれがどれだけ重なるかを見ると、事業平均で0.67でした(0は全員入れ替わり、1は同じ顔ぶれ)。
両方に残った人の順位の並びの一致度は0.75でした(1が完全一致、0が無関係)。論文は、同じ中核の発信者が活動を続け、相対的な影響力もほぼ保たれていると読んでいます。
引用一覧の中身は、AIと設定で大きく違った
論文の表1から、主な3つの設定の内訳を拾います。
| 設定 | 質問数 | 引用された固有の出典 | うちXの投稿 | 順位表の発信者と一致した数 |
|---|---|---|---|---|
| Grok | 132 | 2,223 | 1,123(50.52%) | 152(7.02%) |
| Perplexity(画面) | 132 | 3,698 | 1,255(33.94%) | 134(3.62%) |
| Grok(Xのみ) | 132 | 2,194 | 2,194(100%) | 333(15.12%) |
割合は論文の表記どおりです。Grokの2行は本数から計算すると6.84%・15.18%になり、分母は本文に明記がありません。
- GPT、Gemini、PerplexityのAPIでは、Xの投稿が1件も返りませんでした。パラメーターでXを明示的に指定しても同じだったと論文は書いています。このため、発信者の分析はGrokとPerplexityの画面の結果が中心です
- Perplexityの画面では、Xを参照先に含める設定を付けずに1事業1問で試した段階で、Xの割合は12.13%でした。設定を付けて3問ずつにすると33.94%まで上がっています
- 順位表の発信者に当たった割合は、論文の表では約4〜15%です。引用の大半は、順位表の発信者以外の出典でした
上位10人は、引用で有利に扱われていた
論文の表2(a)から拾います。数字はポイント(割合の差)で、かっこ内は95%の幅です。
| 設定 | 上位10人と下位半分の差 | 偶然と比べた上振れ | 集計できた事業数 |
|---|---|---|---|
| Grok | +4.32(+1.46〜+7.51) | +9.39(+2.59〜+16.45) | 37 |
| Perplexity(画面) | +4.79(+2.42〜+7.35) | +9.94(+3.18〜+16.57) | 38 |
| Grok(Xのみ) | +7.16(+3.81〜+10.93) | +8.99(+3.83〜+14.28) | 41 |
- 3つの設定すべてで、95%の幅がプラスの側に収まりました。上位10人が、51位以下より1人あたり多く引用される傾向は、偶然の揺れでは説明しにくい大きさです
- Xだけに絞ったGrokで、上位の有利さが最も大きくなりました(+7.16ポイント)。論文は、最も目立つ発信者への集中が強まったと読んでいます
- 偶然と比べた上振れは、3つの設定で+8.99〜+9.94ポイントと近い値でした
- 44事業のうち、引用と順位表の重なりがなかった事業は集計から外れています(Grokでは37事業が対象)
フォロワーが多いほど、引用された中での順位が高かった
回帰分析の結果は、論文の表2(b)にあります。観測数は373件で、当てはまりの目安(疑似決定係数)は0.30です。
- フォロワー数の係数は-0.44で、統計的に意味のある水準(5%未満)でした。フォロワーが多い発信者ほど、引用された人の中で順位が高いという関連です。私の概算では、フォロワーが2倍の発信者は、順位の数字がおよそ0.74倍になる計算です(e^(-0.44×ln2)で計算。フォロワー数が十分大きい場合の近似)
- 顔ぶれの固定度の係数は-1.62でした。論文は、顔ぶれが固まっている事業ほど、上位の発信者が引用されやすいと解釈しています
- 切片の3.05は、フォロワー数と固定度が平均的な場合に、引用された人の順位がおよそ21位になることを表すと論文は説明しています
論文はこれらをまとめて、AI検索の引用にはすでに目立っている声に寄る「露出の偏り」があり、既存の有力者を固定し、見方の多様さを狭めるおそれがあると結論づけています。
論文自身が書いている限界
論文は最後に、次の4つを限界として挙げています。
- 題材はWeb3だけです。注目の集まり方が違う分野には、そのまま広げられない可能性があります
- APIと画面の差は記録しましたが、AI検索の内部が見えないため、原因までは突き止められていません
- 発信者の人気は外部の順位表で測っており、その採点方法自体に偏りが含まれている可能性があります
- 引用一覧のどの出典も同じだけ見られると仮定しています。利用者が実際に見たか、クリックしたかの記録は使っておらず、測っているのは「見られうる露出」で、実際の影響ではありません
論文は、AI検索の提供者と研究者に、APIと画面の差を埋める努力と、差があることを前提にした監査の設計・報告を呼びかけています。
原文を読んで気づいた点
- 日本語での検証は、この論文の範囲外です。質問の言語は本文に明記されていませんが、題材は英語圏中心のWeb3の事業と、X上の発信者です
- 4つのAIのうち、発信者の分析に使えたのは実質2つ(GrokとPerplexityの画面)です。GPTとGeminiはAPIでXの投稿が返らず、結果の表に載っていません。Grokを画面とAPIのどちらで使ったかは、本文に明記がありません
- 「偶然」の基準は、順位表の発信者から均等に選ぶ場合です。上位の発信者ほど投稿の数が多い可能性は、この基準では調整されていません。「AIが人気者をひいきした」のか「人気者ほど引用されうる投稿を多く出していた」のかは、この設計では切り分けられていないと私は読みました
- 回帰分析は、引用された発信者だけを対象にしています。引用された人とされなかった人を比べる形ではないため、「フォロワーが多いと引用される確率が上がる」ことを直接示したものではありません。示しているのは関連で、因果を確かめるには別の設計が必要です
- 論文が「顔ぶれの集中度」と呼ぶ指標は、2回の順位表の重なり(20日間での入れ替わりの少なさ)です。集中と安定は近い概念ですが、別物として読むのが安全です
- 各質問を何回ずつ投げたかは本文から読み取れません。AI検索の回答は同じ質問でも揺れるため、繰り返しの回数は結果の安定に関わります(この点は可視性を1回の測定で決めない研究の解説で扱いました)
- arXivのプレプリントで、採択の記載がない段階の論文です。書式は国際会議の短い論文の体裁に近いものです
この論文から、言えること・言えないこと
| 言えること(論文の設定で確認された) | 言えないこと(論文では確認されていない) |
|---|---|
| Web3の事業について、GrokとPerplexityの画面(37〜41事業)では、外部の順位表で上位の発信者ほど、AI検索に引用されやすかった | 日本語や、Web3以外の業種で同じ偏りが出ること |
| 上位の偏りは、順位表から均等に選ぶ場合の期待値を上回った | 偏りの原因が、AIのひいきなのか、投稿量などの差なのか |
| 引用された発信者の中では、フォロワーが多いほど順位が高い関連があった | フォロワーを増やせば、引用が増えること(因果) |
| 同じAIでも、APIと画面で引用の中身が大きく違った | APIと画面の差が生まれる理由 |
| 発信者の顔ぶれは20日間でほとんど入れ替わらなかった | 引用に載ったことで、閲覧や流入が増えたこと |
「+4.32ポイント」は、上位10人の1人あたりの引用の割合と、51位以下の1人あたりの割合の差です。「引用される確率が4%上がる」という意味ではありません。
近い主題の論文として、AI検索の引用元が第三者の媒体(獲得メディア)に偏ることを観察した研究があります。獲得メディアの偏りを扱った論文の解説が媒体の種類の偏りを見たのに対し、今回の論文は同じ種類の出典(X上の個人の発信者)の中での偏りを見ています。
中小企業の視点で、どう受け取るか
ここからは論文の主張とは別の、私の読み取りです。論文はWeb3とXの監査で、日本の中小企業を対象にした検証ではありません。
1. AI検索の露出は、積み上げの結果として配られやすい
この論文で引用に強かったのは、20日間で入れ替わらない、すでに目立っている発信者でした。露出が「すでにある注目」に寄るなら、1本の記事の書き換えで一気に逆転する見込みは小さく、同じ分野で継続して発信し、参照される実績を積み上げるほうが筋が通ります。
確度は弱めです(題材がWeb3とXに限られるため)。
2. 自社の見え方は、お客様が使う画面で確かめる
今回いちばん実務に近い発見は、APIと画面の差だと私は考えます。3つのAIのAPIではXの投稿が返らず、Perplexityの画面では設定次第で3割を超えました。
API経由で集計する計測ツールの数字と、お客様が画面で見る引用は、同じとは限らないということです。
自社の見え方を報告するときは、どの経路で測った数字かを添えるのが安全です。
3. 「引用された」と「読まれた」は分けて説明する
論文自身が、測ったのは見られうる露出で、実際の影響ではないと書いています。AI検索に載ったことを成果として伝える場合でも、流入や問い合わせは別の数字で確かめる必要があります。
社内やお客様に報告するときも、この2つを分けておくと誤解を防げます。
4. 地域や専門の狭い分野では、構図が違う可能性がある
Web3のように有名な発信者が順位表で並ぶ世界と違い、地域の中小企業の分野では、そもそも目立つ発信者が少ないことがあります。
そうした分野で偏りが同じように働くかは、この論文からは分かりません。確かめられていない部分として扱うのが妥当です。
よくある質問
生成検索の引用が有名な発信者に偏る「露出の偏り」は、Web3以外の業種でも起きますか
この論文が調べたのはWeb3の44事業だけです。論文自身も、注目の集まり方が違う分野には広げられない可能性を限界に挙げています。
他の業種や日本語での結果は、別の検証を待つ必要があります。
生成検索の引用一覧に載ることは、アクセスが増えることと同じですか
同じとは言えません。この論文は、引用一覧のどの出典も同じだけ見られると仮定した「見られうる露出」を測っています。
クリックや閲覧の記録は使っていないと論文に明記されています。
AI検索の引用をAPIで測ると、画面で見た結果と違うのはなぜですか
論文は差があることを記録しましたが、原因はAI検索の内部が見えないため特定できていないと書いています。確かなのは、この監査ではGPT、Gemini、PerplexityのAPIでXの投稿が返らず、Perplexityの画面では返ったという事実です。
まとめ:今日できる1つのこと
自社の主要なサービス名を含む質問を1つ決め、お客様がふだん使うAI検索の画面に入力してください。回答の引用一覧に並んだ出典を書き出し、自社以外で繰り返し出てくる発信者や媒体を確かめます。
それが、その分野で「すでに注目を集めている声」の目安です。測った日付と使った画面も一緒に記録しておくと、次回との比較に使えます。
この論文は、LLMO論文の一覧の一本です。ほかの論文の解説も、順次公開しています。
この記事に書いたことを、そのまま御社のページに
生成AIに引用されるページを、お話しいただくだけでお作りします。お時間をいただくのは初回15分のヒアリングだけです。まず1ページ、無料でお作りします。
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