ChatGPTやGeminiのような生成AIの回答に、リンクが「引用」として付くかどうかは、何で決まるのでしょうか。2026年10月10日に公開された「What Drives AI Citations? Content, Retrieval and Model Knowledge in Generative Engine Optimization (GEO)」は、この問いを、実際の回答約16万件と、AIの検索の中身をのぞく実験で調べた論文です。
この記事は、論文を原文から読んで整理します。FAQや構造化データのような「よく勧められる施策」が、同じサイトの中で比べるとどう見えるのかも分かります。
合同会社謙虚は、3つのドメインを並行して運用し、何を変えると数字が動くかを測り続けています。この論文は、サイトの人気による見かけの差と、ページ単位の差を切り分ける考え方を示しており、自社の記事づくりを点検する材料になるため読みました。
結論:3行で言うと
- 同じサイトの中でページを比べると、引用の多さと結びついた中身は「質問と、ページの題名・段落が合っていること」でした。FAQ・構造化データ・要約ボックス・表示速度は、サイトをまたぐ比較でだけ効いて見えました
- ChatGPTが引用したページは、すべて、ChatGPT自身の検索で取得されたページでした。ChatGPTの90日間の引用数について、同じサイト内のページ間のばらつきを説明する割合は、取得の指標で32%、ページの性質14項目では2.8%です(API再現実験)
- モデルの知識も効いていました。ChatGPTは知っているブランド名を検索語に書き込み、同じ事実の商品でも、ブランド名を見せると順位が入れ替わりました(小型モデルでの実験)
ただし、結果の多くは「同じ条件で比べたとき、どちらが多く引用されたか」という関連です。何かを変えれば引用が増える、という因果は示されていません。
この論文の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原題 | What Drives AI Citations? Content, Retrieval and Model Knowledge in Generative Engine Optimization (GEO) |
| 著者 | Mahe Chen、Nick Koudas(2人。トロント大学) |
| 公開日 | 2026年10月10日(v1)。arXiv:2610.15033(分野はcs.IR、情報検索)。11ページ |
| 掲載/採択状況 | arXivのプレプリント。採択された会議や雑誌の記載は、見つかりませんでした。PDFの書式はACMの投稿用の雛形のままです |
| 種類 | 収集した回答の分析、API再現実験、制御実験の組み合わせ |
| 調べたAI | ChatGPT(GPT-5.4 nano)、Gemini(Gemini 3.1 Flash Lite)、Perplexity(Sonar)。いずれもAPIで、検索機能つきです |
| データ・コード | 公開するとありますが、公開先のURLは本文に見当たりませんでした |
論文はこちらです。arXiv(2610.15033)、arXiv発行のDOI。
この論文が答えた問い
生成AIの回答で、どのページが引用されるのかは、ページの中身、AIの検索、AIモデルの知識のどれで決まるのか。
背景にあるのは、FAQ・構造化データ・要約ボックスなどをページに足す、という広く勧められている対策です。論文は、こうした助言が実験の外ではほとんど検証されていないと言います。
前の記事で解説したGEO原論文のように、AIに渡すページが決まった状態で書き換えの効果を測る研究が、多くありました。この論文は、それが「回答を作る段階」だけの評価だと指摘し、その前の「検索の段階」に注目します。
同じ研究チームの前の2本との関係
著者のChenとKoudasを含む研究チームは、すでに解説したAI検索は第三者の媒体を選びやすいのかと、Google検索とAI検索は引用元がほとんど重ならないの論文も書いています。今回の論文はこの2本を関連研究として引用し、「出典はどんなサイトか」を数える段階から、「なぜそのページか」を調べる段階へ進んでいます。
なお、前の論文ではChatGPTの引用が第三者の媒体に大きく偏っていました。今回は64%が、回線事業者(依頼元と競合)のサイトです。
質問もモデルも違い、論文はこの差を論じていません。
どうやって調べたのか
論文は、同じサイト内のページ同士だけを比べる分析、同じ質問をAPIへ送り直してAIの検索語と順位を記録する再現実験、検索を使わせないモデル単体への質問、入力を1つずつ変える制御実験を組み合わせています。
データは、対照的な2つの市場で、同じ質問を毎日90日間、各AIに送って集めました。
| 項目 | 主データ(消費者向けの市場) | 2つ目のデータ(小規模B2Bの市場) |
|---|---|---|
| 市場 | 米国の家庭向けインターネット回線。大手が占める | 建築・建設会社向けの提案書作成・営業支援ソフト。小さなベンダーが多い |
| 質問 | 651問(サポートや料金など7テーマ) | 55問(ほとんどが「知りたい」型) |
| 回答/引用 | 143,249件/396,188件 | 14,850件/71,849件 |
主データの期間は2026年6月24日〜9月21日で、2つ目も同じAIと設定、同じ90日間です。質問は、どちらも各市場の事業者向けに作られたものです。
ページの性質は14項目を機械で計算しました。質問との合致4項目(題名や段落と質問との語の重なりや意味の近さ)、構造5項目(文字数、外部リンク、見出し、表、リスト)、よく勧められる施策4項目(FAQブロック、要約ボックス、著者情報、構造化データ)、古さ1項目です。
結果は「標準偏差(ばらつきの目安)1つ分だけ値が高いページは、同じサイトの別のページより、引用が何%多いか」で示されます。偶然を拾わないよう、5つの検定をすべて通った項目だけを「確かな効果」としています。
結果
1. 同じサイトの中では、質問に合うページが多く引用された
| ページの性質(原文Table 2) | 同じサイト内での差 | 通過した検定 |
|---|---|---|
| いちばん質問に合う段落の合致 | +15.5% | 5つ全部 |
| 題名と質問の合致 | +14.1% | 5つ全部 |
| FAQブロックあり | -3.4% | 2つ |
| 要約ボックスあり | +6.9% | 2つ |
| 著者情報あり | -4.6% | 2つ |
| 構造化データあり | -5.3% | 2つ |
対象は、2回以上引用された12,038ページ(1,120サイト)です。有無の項目は、あるページとないページの差です。
- 最良段落の合致の95%区間は11.1〜20.1%、題名の合致は10.7〜17.6%です。第三者のサイトに限ると+25.7%と+23.6%でした
- 最良段落の合致は、ChatGPT(+9.5%)、Gemini(+7.8%)、Perplexity(+4.8%)のすべてで確認されました。題名の合致はChatGPTでは-0.2%(有意でない)で、論文は、ChatGPTが質問を自分の検索語に書き換えるためと説明します
同じ事業者サイトで、引用された4,513ページと、一度も引用されなかった5,262ページを比べた分析もあります。最良段落の合致が標準偏差1つ分高いと、引用される確率の比(オッズ)は11.9倍でした。
2. よく勧められる施策は、サイトをまたぐ比較でだけ効いて見えた
| 施策 | サイトをまたぎ、その施策だけで比べた場合 | 同じサイト内で比べた場合 |
|---|---|---|
| FAQブロックあり | +18.1% | -3.4% |
| 要約ボックスあり | +20.9% | +6.9% |
| 著者情報あり | +14.9% | -4.6% |
| 構造化データあり | +7.5% | -5.3% |
表示速度(466ページのみ)を含む5つが、サイトをまたぐと有意で、サイト内ではどれも有意ではありませんでした。サイトをまたぐ比較でも、ほかの性質を同時に考慮すると、表示速度以外の4つの差はほぼ0か負になります(論文の図1からの読み取り)。
理由は、これらの施策が、別の理由でよく引用されるサイトに集中しているためです。FAQブロックは、最もよく引用される4分の1のサイトのページの43%にあり、最も少ない4分の1では23%でした。
論文はこれを「シンプソンのパラドックス」(全体と内訳で逆の傾向に見える現象)の一例とし、2つ目のデータでもFAQブロックは+22.5%(サイト間)と-1.9%(サイト内)でした。
3. ページの性質は、サイト内のばらつきをほとんど説明しなかった
- 引用数のばらつきのうち、サイト間の差は13%、同じサイト内のページ間の差は87%でした。ページの性質が説明するのは、前者の42%、後者の3.4%です
- 日ごとの偶然は全体の約10%で、約75%は再現するのに、どのページ項目でも説明できないと論文は述べます
- 期間をずらすと再現も弱まり、10週間後にも共通していたばらつきは、ChatGPTで14%、Geminiで29%、Perplexityで0%でした
4. 理由は「検索の段階」にあった
再現実験は、651問を13回、11日間にわたってAPIへ送りました。順位まで追えたのはChatGPTだけで、Perplexityは再現できませんでした。
- ChatGPTが引用した22,315件のURLの100.0%は、自身の検索が返したページでした
- 1問につき平均26ページを参照し、3ページを引用します。引用率は1位が43.8%、6〜10位が12.2%、11〜20位が3.5%で、1位は11〜20位の約12.5倍です(43.8÷3.5、概算)。ただし論文は、ChatGPTが先に読んだ情報を引用しやすい癖(位置効果)も確かめており、順位の差の一部はこの癖によると述べています
- ChatGPTは質問を約4つの検索語に書き換えます。同じ日に同じ質問を2回送ると、検索語の重なりは2.7%、引用ページの重なりは15%でした
そしてChatGPTの検索結果は、GoogleやBingの結果と、ほとんど重なりません。取得したページの97%はGoogleの上位50位に、99%はBingの上位30位に入っていませんでした。
ただし、サイト単位では約半数(51%)がGoogleの上位50位に出ており、同じサイトでも選ばれるページが違います。サーベイ論文の解説で紹介した、本文だけを最適化すると検索の段階で不利になった研究とも、方向が重なります。
「32%対2.8%」は、ChatGPTの90日間の引用数について、同じサイト内のページ間のばらつきを何%説明できるかを比べた数字です。取得の指標(取得された回数と、上位5件に入った回数)では32%(95%区間24〜42%、6,178ページ)、ページの性質14項目では2.8%でした。
この「説明する割合」は、引用の多いページと少ないページの差を、その要因でどれだけ言い当てられるかを表します。要因を変えたら引用が何%増えるか、を表す数字ではありません。
5. モデルの知識も、検索と回答に入り込んでいた
検索を使わせず、各モデルに「この質問で薦めるブランドとサイト」を答えさせたものを、論文は「事前知識」と呼びます。
- ChatGPTは、事前知識にあるブランドを67%の場合で検索語に書き込みました。事前知識にない場合は11%です
- ChatGPTの引用の47%は、モデルが検索なしで名前を挙げたサイトのものでした(別の質問の事前知識を当てた基準は25%)
- 質問に出ていないブランドをChatGPTが回答に書いたとき、その46%には、そのブランド名を載せた引用ページが1つもありませんでした
制御実験では、検索を使わない小型モデルに、作った入力を読ませています。
- 同じ事実の商品5つで名前を見せるか隠すかを変えると、トップ3に入る割合の変化は、同じ入力を繰り返したときの2.1倍(ChatGPT)、3.3倍(Gemini)でした
- ある大手ケーブル事業者は、名前を出すとトップ3に入る割合が33ポイント下がり、別の事業者は12ポイント、小規模なベンダーは16ポイント上がりました
- 「名前は無作為で、情報はない」と書いても、同じ説明文がトップ3に入る割合は、ある名前で80%、別の名前で39%でした(ChatGPT)
6. 小規模B2Bの市場でも、多くが再現した
| 項目(ChatGPT、または同じ尺度) | 消費者向けの市場 | 小規模B2Bの市場 |
|---|---|---|
| 題名の合致(サイト内) | +14.1% | +26.4% |
| FAQブロック(サイト間/サイト内) | +18.1%/-3.4% | +22.5%/-1.9% |
| 説明する割合:取得の指標/ページの性質 | 32%/2.8% | 30%/10.0% |
小規模B2Bの取得の指標は629ページが対象で、30%と10.0%の差は有意と言えない水準でした。
一方、市場で変わる部分もありました。サイトの権威性の効果は、消費者向けで+12.1%、小規模B2Bで-1.3%です。
ChatGPTのモデルが対象ベンダーの名前を挙げる質問は2〜16%で、Geminiのモデルは60〜96%でした。
そのため小さなベンダーでは、引用された第三者のページが名前を載せると、回答がその名前を挙げるオッズが39.7倍(ChatGPT)に上がります。主データでは4.2倍でした。
論文自身が書いている限界
論文は議論の節で、次の点を挙げています。
- 結果は関連です。サイト内比較は、サイト全体で一定のものを取り除けますが、同じサイト内のページ同士の、測れていない違いは取り除けません
- ページは収集後に1回だけダウンロードし、引用されたURLの約3分の1は分析できませんでした
- 再現実験は収集後にAPIで行ったもので、消費者向けのアプリと同じとは限りません
- 質問は英語で米国市場の話です。監視プラットフォームの利用事業者向けに作られ、利用者のログから抽出したものではありません
- 制御実験は小型モデルと作った入力を使い、2つ目のデータは小さいと、論文自身が述べています
「モデルの事前知識が検索の入口になる」という筋書きは、論文が「仮説」と明記しています。各段階の関連(知っているブランドは検索語に入りやすい、など)は観察結果ですが、事前知識を変えたときの効果は示していません。
原文を読んで気づいた点
ここからは、私が原文を読んで気づいた点です。
- 査読を経た形跡は見つかりませんでした。arXivのコメント欄は「11 pages」のみで、版もv1だけです
- 日本語や日本のサイトの検証は、原文にありません。質問が英語で米国市場の話であることは、論文自身も限界として書いています
- 評価は、自動の計算と分類が中心です。ページの項目は機械で計算し、人手の確認は50ページ×2データ(全件正しい)などの抜き取りです
- 分析の対象は「2回以上引用されたページ」です。一度も引用されないページは、サイト内のモデルに入っていません。有無の比較は、別の分析(4,513対5,262ページ)で補っています
- 「32%対2.8%」は、引用に近い段階と遠い段階の比較です。取得されなければ引用されないので、取得の指標が引用を説明するのは、仕組み上ある程度は自然です。注目したいのは、取得の差の大半を、論文が測った14項目では説明できていない点です
- 謝辞に、データ面の協力を受けた企業の名前があります。著者との関係は、原文から分かりません
この論文から、言えること・言えないこと
| 言えること(論文が示した範囲) | 言えないこと |
|---|---|
| 同じサイト内では、質問と題名・段落が合うページほど、多く引用されていた | 題名や段落を質問に合わせれば、引用が増える(因果) |
| FAQ・構造化データ・要約ボックスは、サイトをまたぐ比較では効いて見え、サイト内では差が見られなかった | FAQや構造化データが無意味である。検索結果での表示や読者の理解への効果は、測っていない |
| ChatGPTのAPI実験では、引用されたページはすべて、自分の検索が返したページだった | 消費者向けのChatGPTの画面でも、同じ割合になる |
| ブランド名が、同じ事実の商品の順位を動かす場合がある(小型モデル、作った入力) | 知名度を上げれば推薦される(論文は仮説と明記)。日本語や日本市場で同じになること |
中小企業の視点で、どう受け取るか
ここからは論文の主張とは別の、私の読み取りです。
- 題名と、いちばん答えている段落を、お客様が聞く言葉に合わせる。5つの検定を通り、2つの市場で確認された項目は、これだけです。証拠はこの論文の中では強い部類ですが、英語・米国の観察で、因果は未確認です
- FAQや構造化データを「引用の近道」とは見ない。ただし、外す理由にもしない。論文では、サイト内の比較でも、同じ順位に絞った比較でも、有利な差は見えませんでした(同じ順位ではFAQブロックが×0.93、構造化データが×0.92と、わずかに低いオッズ)。読者の理解やGoogleでの表示への役割は、測っていません
- 小さな会社は、第三者のページに名前が載る道筋を意識する。2つ目のデータでは、第三者のページが名前を載せると、回答にその名前が出るオッズが39.7倍でした。1つの業種、55問なので、確度は弱いと見ています
- 1回の結果で判断せず、同じ質問を日を置いて測る。引用されるページは数週間で入れ替わり、同じサイト内の引用数のばらつきのうち、10週間後にも共通していたのはChatGPTで14%でした
よくある質問
「What Drives AI Citations?」の論文は、FAQや構造化データが引用に効かないと言っているのですか
言っていません。同じサイトの中でページを比べると、FAQブロックや構造化データのあるページとないページの間に、引用数の差が見られなかった、という結果です。
サイトをまたぐと効いて見えるのは、これらの施策がもともとよく引用されるサイトに集中していたためです。引用以外の効果は、対象外です。
論文の「32%対2.8%」は、何と何を比べた数字ですか
ChatGPTの90日間の引用数について、同じサイト内のページ間のばらつきを説明する割合です。AI自身の検索での取得の指標が32%、ページの性質14項目が2.8%でした。
「ページを直せば引用が3割増える」という意味ではありません。
モデルの事前知識(知っているブランドを優先する現象)は、小さな会社にも当てはまりますか
論文の2つ目のデータでは、ChatGPTのモデルが小規模ベンダーの名前を自分から挙げる質問は、2〜16%でした。知らないブランドは、主に、引用された第三者のページが名前を載せたときに挙がります。
ただし、英語・米国・建築関連の業務ソフトという1つの市場の観察です。日本の中小企業に当てはまるかは、確かめられていません。
まとめ:今日できる1つのこと
お客様がよく聞く質問を1つ選び、その質問の言葉が、該当ページの題名と、いちばん答えている段落に入っているかを見てください。入っていなければ、その2か所だけを質問の言い方に寄せます。
変える前と後に、同じ質問を日を置いて3回ずつAIに聞き、出たか出なかったかを記録します。次の判断の材料になるのは、1回の結果より積み重ねた記録です。
この論文は、LLMO論文の一覧の一本です。ほかの論文の解説も、順次公開しています。
この記事に書いたことを、そのまま御社のページに
生成AIに引用されるページを、お話しいただくだけでお作りします。お時間をいただくのは初回15分のヒアリングだけです。まず1ページ、無料でお作りします。
OKが出るまで、何度でも直します。事実が違う、言い回しが硬い、この話は入れないでほしい。どれも遠慮なくおっしゃってください。何度お直ししても、追加の料金はいただきません。
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