「AI検索の回答には出典リンクが付いている。だから書いてあることは確かだろう」。
そう考えている方は、少なくないと思います。
サイト運営者の立場では、「出典に自社のページが出ていれば、自社の情報が正しく伝わっている」と受け取りたくなります。
ところが、出典表示の正確さを調べた研究や調査を読むと、話はそう単純ではありません。
出典が付いていても、その内容が出典に書かれていなかった例があります。元の記事とは別の転載先が示された例や、存在しないURLが示された例も報告されています。
この記事では、主な調査4本を、次の順に整理します。
誰が、いつ、何を、どう調べ、何が分かり、どこまで言えるのか。
そのうえで、中小企業のサイト運営者が何を確かめ、何を整えておくとよいかをまとめました。
数値は、2026年10月17日に、論文や調査の発行元のページで確かめたものだけを載せています。
いずれの調査も、実施した時点のサービスが対象です。現在の性能とは受け取らず、調査時点の結果として読んでください。
先に結論:4つの調査から言えること
先に、結論を表にまとめます。
| 論点 | 確かめられたこと | この記事の判断 |
|---|---|---|
| 出典が付いていれば、内容も裏付けられているか | 2023年の論文では、回答の文のうち、付いている出典で完全に裏付けられていたのは平均51.5% | 出典の有無と、内容の裏付けは別に確かめる |
| 示された出典は、正しい発信元か | Tow Centerの2025年3月の調査では、8つのツール全体で、質問の60%超に誤って答えた。転載先や、存在しないURLを示す例もあった | 示されたURLを自分で開く |
| 改善は進んでいるか | BBC同士の比較では、重大な問題のある回答が51%から37%に減った。ただし、使った製品の版も違う | 改善の方向を示す数字として読み、現在の水準とは言わない |
| 今も課題は残っているか | EBUとBBCの2025年の調査では、回答の45%に重大な問題があった。出典の問題は31% | 自社に関する回答を、定期的に確かめる |
4つの調査は、対象も測り方も違います。表の数字を並べて、優劣や改善幅を計算することはできません。
サイト運営者にとっての要点
要点を一言でいえば、「引用されたか」だけでなく、「正しく引用されたか」まで確かめる、ということです。
この考え方を、後半の「サイト運営者にとっての意味」で具体的な手順にしました。
そもそも「引用が正確」とは何を指すのか
調査の結果を読む前に、「引用の正確さ」にはいくつかの意味があることを押さえます。調査によって、何を誤りと数えるかが違うためです。
| 観点 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 出典の裏付け | 回答の文の内容が、示された出典に実際に書かれているか | 出典のページにない数字を、回答が述べている |
| 出典の特定 | 正しい記事、正しい発信元を示しているか | 元の記事の代わりに、転載先のページを示す |
| リンクの有効性 | 示されたURLが実在し、目的のページにつながるか | 存在しないURL、サイトのトップページだけのリンク |
| 内容の正確さ | 要約や言い換えで、事実が変わっていないか | 日付や数字の取り違え、古い情報の提示 |
| 文脈と区別 | 意見と事実が区別され、必要な前提が保たれているか | 一部の意見を、事実のように述べる |
4つの調査は、この表の異なる部分に重点を置いています。
「裏付け」と「事実の正しさ」は別のもの
1つ目の論文は、自分たちが測ったのは「検証できるか」であって、「事実として正しいか」ではないと、はっきり書いています。
出典に書かれている内容どおりに回答していても、その出典自体が間違っている可能性は残ります。
つまり、裏付けられていることは、正しさの保証ではありません。出典に当たって内容を確かめるための、手がかりにすぎません。
調査ごとに「誤り」の意味が変わる
たとえば、Tow Centerの調査は、引用文の出どころを当てられたかを見ています。
BBCやEBUの調査は、ジャーナリストが、正確さ、出典の示し方、文脈などを人の目で評価しています。
同じ「誤り」という言葉でも、数えているものが違います。数字を引用するときは、何を誤りと数えたのかも一緒に書いてください。
この記事で使った情報源と読み方
4つの調査と、確認した一次情報を表にします。
| 調査 | 発行元と形式 | 時期 | 確認したページ |
|---|---|---|---|
| 調査1 | Liu、Zhang、Liangの論文 | 2023年4月にarXivで公開。2023年12月に学会の論文集へ掲載 | arXivの論文、ACL Anthologyの掲載情報 |
| 調査2 | Tow Center(コロンビア大学)の調査。Columbia Journalism Reviewに掲載 | 2024年11月27日、2025年3月6日 | CJRの記事2本 |
| 調査3 | BBCの調査報告書 | 2025年2月11日 | BBCの報道発表と報告書 |
| 調査4 | EBUとBBCの国際共同調査の報告書 | 2025年10月 | EBUの報告書ページと報告書本文 |
論文は、英語の原文を読んで日本語にしました。専門用語の訳は、筆者によるものです。
調査を読む4つの問い
どの調査も、次の4つの問いの順に確かめると、数字の意味をつかみやすくなります。
- 誰が調べたのか
- 何を、どう測ったのか
- 何が分かったのか
- どこまで言えるのか
次の図は、この順番を示したものです。この記事も、各調査をこの順番で説明します。
調査1:生成AI検索の「検証可能性」を測った論文(2023年)
最初に取り上げるのは、AI検索の出典表示を、人の目で1文ずつ確かめた学術論文です。
誰が・いつ発表したか
スタンフォード大学の3名による論文「Evaluating Verifiability in Generative Search Engines」です。
著者は、Nelson F. Liu、Tianyi Zhang、Percy Liangです。
2023年4月19日にarXiv(論文の公開サイト)で公開され、同年10月に改訂されました。2023年12月には、自然言語処理の国際会議EMNLP 2023の論文集(Findings)に掲載されています。
何を、どう調べたか
当時の代表的な生成AI検索4つ(Bing Chat、NeevaAI、perplexity.ai、YouChat)に、多様な質問を投げました。
回答は2023年2月下旬から3月下旬に集められ、各サービスの最初の回答だけを評価しています。
OpenAIのChatGPTとGoogleのBardは、当時、回答に引用リンクを付けていなかったため、対象から外されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 質問の数 | 1サービスにつき1,450問 |
| 質問の出どころ | 12種類。Googleの実際の検索質問を集めたデータ(NaturalQuestions)、Redditの「わかりやすく説明して」系の質問(ELI5)、WikiHowをもとにした手順の質問、オックスフォード大学の入試の小論文題、AIに作らせた討論題など |
| 評価した人 | 34人の評価者。Amazon Mechanical Turkで作業 |
| 評価の単位 | 回答の1文ごと |
2つの指標の意味
論文は、検証可能性を2つの指標で測っています。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| 引用再現率(citation recall) | 事実について述べた文のうち、付いている出典で完全に裏付けられている文の割合 |
| 引用適合率(citation precision) | 付いている出典のうち、その出典が付いた文を実際に裏付けている出典の割合 |
再現率は「根拠を付けているか」、適合率は「付けた根拠が合っているか」を見ています。
何が分かったか
4サービスの平均で、引用再現率は51.5%、引用適合率は74.5%でした。
つまり、回答の文のうち、出典で完全に裏付けられていたのは約半分です。付いている出典のうち、その文を裏付けていたのは約4分の3でした。
一方で、回答の流ちょうさは5段階評価で平均4.48、役に立つ度合いは平均4.50と高い評価でした。読み手には、役に立つ回答に見えていたことになります。
サービスごとの差は大きい
平均だけを見ると、4サービスが同じ水準だったように読めます。実際には、サービスごとの差がとても大きい結果でした。
| サービス | 引用再現率 | 引用適合率 | 役に立つ度合い(5段階) |
|---|---|---|---|
| Bing Chat | 58.7% | 89.5% | 4.34 |
| NeevaAI | 67.6% | 72.0% | 4.48 |
| perplexity.ai | 68.7% | 72.7% | 4.56 |
| YouChat | 11.1% | 63.6% | 4.62 |
| 4サービスの平均 | 51.5% | 74.5% | 4.50 |
平均の51.5%は、再現率が極端に低かったYouChatに引っ張られています。
この表からも、「AI検索の出典は半分しか当てにならない」と一括りにするのは、適切ではないと分かります。
質問の種類でも差が出た
論文は、質問の種類による違いも報告しています。
答えがウェブ上にそのまま見つかりにくい、オックスフォード大学の入試の小論文題では、再現率の平均が44.3%と低くなりました。
論文は、関連するページを見つけられないと、出典で裏付けられない文が増えるのではないか、と推測しています。この点は、論文の仮説です。
役に立つ回答ほど、出典が合っていない傾向
この論文でよく引用されるのが、引用適合率と、役に立つ度合いの関係です。
サービスごとの平均で見ると、両者には強い負の相関(相関係数 r = −0.96)がありました。出典が合っているサービスほど、役に立つ度合いの評価が低かったことになります。
たとえば、適合率がいちばん高いBing Chatは、役に立つ度合いがいちばん低くなりました。適合率がいちばん低いYouChatは、役に立つ度合いがいちばん高くなりました。
論文が考えた理由
論文は、この理由を次のように推測しています。
出典のページの文章をそのまま写したり、近い言い換えで済ませたりすると、出典との一致は高くなります。ただし、その文章が質問の答えになっていなければ、回答は役に立ちません。
逆に、出典から離れて自由に書くほど、回答は質問に沿って見えやすくなる一方、出典で裏付けられない文が増えます。
論文は、出典の文章との類似度が高いサービスほど適合率が高い傾向(相関係数 0.80)も報告しています。ただし、これは理由の推測であって、証明ではありません。
この調査の限界
読むときは、次の点に気をつけてください。
- 2023年2月から3月のサービスの結果です。現在のサービスの性能を示す数字ではありません。
- 相関係数は、4つのサービスの平均値をもとにした数字です。サービスの数が少ないため、強い関係があるとまでは言えません。
- 評価の単位は1文です。1文に複数の主張が含まれる場合の扱いは、簡略化されています。
- 英語の質問が中心です。日本語で同じ傾向になるかは、この論文からは分かりません。
- NeevaAIは、質問の約23%に回答しませんでした。回答するサービスとしないサービスを、同じ条件で比べるのは難しいと、論文自身が注記しています。
それでも、「出典が付いていること」と「出典が内容を裏付けていること」は別だと、数字で示した点は重要です。この論文は、その後の議論の土台になっています。
調査2:Tow Centerによる引用調査(2024年11月・2025年3月)
2つ目は、ニュース記事の一部を示して「この文章はどの記事のものか」を答えさせる調査です。回答の文の中身よりも、出典の特定そのものを見ています。
誰が・いつ発表したか
米国コロンビア大学のTow Center for Digital Journalismが行い、Columbia Journalism Review(CJR)に掲載しました。
2024年11月27日に、ChatGPTの検索機能を対象にした調査を公開しています。
2025年3月6日には、対象を8つのツールに広げた調査「AI Search Has a Citation Problem」を公開しました。
何を、どう調べたか
2回の調査は、方法の骨組みが共通しています。複数の報道機関から記事を選び、その記事の一部をAIに示して、記事の出どころを答えさせました。
示した文章は、Googleなどの従来の検索に貼り付けると、元の記事が上位3件以内に出てくるものに限っています。従来の検索なら見つけられる問題を出した、ということです。
| 項目 | 2024年11月の調査 | 2025年3月の調査 |
|---|---|---|
| 対象 | ChatGPTの検索機能 | ChatGPT Search、Perplexity、Perplexity Pro、DeepSeek Search、Microsoft Copilot、Grok-2、Grok-3(ベータ版)、Gemini |
| 媒体 | 20の報道機関 | 20の報道機関 |
| 問いの数 | 200(各媒体から10記事) | 1,600(20媒体 × 10記事 × 8ツール) |
| 実施時期 | 記事に明記なし(公開は11月27日) | 2025年2月 |
| 採点 | 発信元、URL、記事の日付が合っているか | 記事、発信元、URLの3点が合っているか |
2024年11月の調査で分かったこと
ChatGPTは、200回のうち153回で、部分的または完全に誤った回答を返しました。
一方で、正確に答えられないと示したのは、7回だけでした。ほとんどの誤答は、自信のある口調のまま返されています。
| 観察されたこと | 内容 |
|---|---|
| 転載先の引用 | ニューヨーク・タイムズの記事の引用文について、記事を丸ごと盗用したコピーを載せたサイトを出典として示した例がある |
| 配信先の引用 | MIT Technology Reviewの記事の引用文について、記事の配信を受けたサイトを出典として示した例がある |
| 回答のぶれ | 同じ質問を繰り返すと、毎回違う答えが返ることが多かった |
| 対応の効果 | クローラーを許可した媒体でも、許可していない媒体でも、誤りは起きた |
OpenAIとTow Centerのやり取り
この調査について、OpenAIは次のように述べたと、記事に書かれています。
データと方法が開示されていないので誤りの原因に対処しにくく、自社製品の典型的な使い方とは言えない検証だという趣旨です。
Tow Center側は、方法と観察結果はOpenAIに説明したものの、公表の前にデータは共有しなかったと説明しています。
どちらの主張が正しいかは、この記事では判断しません。調査の限界を考えるときの材料として、両方を押さえておきます。
2025年3月の調査で分かったこと
8つのツール全体で、質問の60%超に誤って答えました。ツールによる差は大きく、Perplexityは37%、Grok 3は94%でした。
| 観察されたこと | 報告された内容 |
|---|---|
| 断らずに答える | 答えられない質問でも、断らずに誤った答えや推測を返す傾向があった。ChatGPTは200件のうち134件を誤り、自信のなさを示したのは15回。答えを断ったことは一度もなかった |
| 有料版の傾向 | 有料版は無料版より正答も多かったが、自信を持って誤る割合も高かった |
| 存在しないリンク | GeminiとGrok 3は、回答の半数超で、存在しないか壊れたURLを示した。Grok 3は200件のうち154件が、エラーページにつながった |
| 配信先や転載版 | 元の記事の代わりに、Yahoo NewsやAOLなどの配信先を出典にした例があった |
| 提携の効果 | 報道機関とのコンテンツ利用契約があっても、正確な引用が保証されているとは言えなかった |
クローラーの設定との関係
2025年3月の調査には、サイト運営者に関係する観察がもう1つあります。
クローラーを拒否している媒体の記事について、AIが内容を答えた例が報告されています。たとえばPerplexity Proは、アクセスできないはずの90件の引用文のうち、3分の1近くを正しく特定したと報告されています。
調査は、AIが他の経路で情報を得た可能性も認めています。それでも、設定どおりに動いていない可能性があるとして、問題を提起しました。
一方で、クローラーを許可しても、正確に引用されるとは限りません。
Google-Extendedを許可していた媒体は20社のうち10社でしたが、Geminiが完全に正しく答えたのは1回だけだった、と記事は書いています。
2024年の調査と合わせると、クローラーを許可するかどうかと、引用の正確さは、別の問題だと筆者は読みます。
この調査の限界
読むときは、次の点に気をつけてください。
- 「引用文から元の記事を特定する」という、特定の課題での結果です。ふだんの質問への回答の正確さとは、別のものを測っています。
- 対象は報道機関の記事です。企業サイトや商品情報で、同じ結果になるとは限りません。
- 2024年末から2025年初めのサービスの結果です。その後の改良は反映されていません。
- 質問の文章は、人が選んでいます。無作為に集めた質問ではありません。
それでも、「出典リンクが付いていても、それが元の発信元とは限らない」ことを具体例で示した点は、サイト運営者にとって重要です。
自社の記事が配信先や転載先で読まれている場合、AIがそちらを出典にする可能性があるからです。
調査3:BBCによるAIアシスタントのニュース回答調査(2025年2月)
3つ目は、英国の公共放送BBCが、自社の記事を材料にした回答の質を調べた調査です。
誰が・いつ発表したか
BBCが2025年2月11日に報道発表と報告書を公開しました。調査は2024年12月に行われています。
何を、どう調べたか
ChatGPT、Copilot、Gemini、Perplexityの4つに、ニュースについての100問を尋ねました。回答では、できるだけBBC Newsの記事を情報源にするよう求めています。
BBCは、ふだんは、これらのAIアシスタントが自社サイトにアクセスすることを禁じています。調査の間だけその設定を外し、終了後に戻したと、報告書に書かれています。
回答は、その分野に詳しいBBCのジャーナリストが評価しました。評価の観点は、正確さ、出典の示し方、公平さ、意見と事実の区別、論評の混入、文脈、BBCの内容の扱いの7つです。
何が分かったか
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 重大な問題があった回答 | 51% |
| 何らかの問題があった回答(軽いものを含む) | 91% |
| BBCの内容を出典にした回答のうち、事実の誤りが入った回答 | 19%(誤った事実、数字、日付など) |
| BBCの記事から引用したとされる文章のうち、改変されたか、記事に存在しなかったもの | 13% |
報告書は、BBCの内容の扱いに重大な問題があった回答の割合を、サービス別にも示しています。Geminiは34%、Copilotは27%、Perplexityは17%、ChatGPTは15%でした。
具体例として、すでに退任した首相や首席大臣を、現職として答えた例が挙げられています。NHSの禁煙の説明を、実際と逆に述べた例もあります。
この調査の限界
- BBC自身の記事を使った、BBC自身による調査です。
- 質問は100問で、ニュースが対象です。
- ChatGPTは企業向け、CopilotとPerplexityは有料のPro版、Geminiは標準版が使われました(EBUの報告書の表による)。次の調査4の無料版とは、条件が違います。
この調査が、次に紹介する国際共同調査のきっかけになりました。
調査4:EBUとBBCの国際共同調査「News Integrity in AI Assistants」(2025年10月)
4つ目は、欧州の公共放送の連合体であるEBUが取りまとめ、BBCが加わった国際共同調査です。
誰が・いつ発表したか
EBU(欧州放送連合)の報告書ページには、2025年10月21日付で公開されています。報告書と、AIの回答を点検するためのツールキットが、同時に公開されました。
18か国の22の公共放送機関が、14の言語で参加しています。
何を、どう調べたか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | ChatGPT、Copilot、Gemini、Perplexityの無料版・一般向け版。多くの人が使う標準的な体験に近づけるためと説明されている |
| 質問 | 全機関が共通で使う質問と、各機関が加えた独自の質問 |
| 回答の生成時期 | 2025年5月下旬から6月上旬 |
| 評価した人 | 各機関のジャーナリスト |
| 評価の観点 | 正確さ、出典の示し方、意見と事実の区別、論評の混入、文脈 |
| 評価した回答の数 | 共通質問への回答で2,709件。独自の質問も含めた質問の数は3,113 |
統計は、原則として、共通質問への回答2,709件をもとにしています。
何が分かったか
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 少なくとも1つの重大な問題がある回答 | 45%(軽い問題を含めると81%) |
| 出典の示し方に重大な問題がある回答 | 31%(出典に書かれていない内容、出典がない、誤った出典など) |
| 正確さに重大な問題がある回答 | 20% |
| 文脈の不足に重大な問題がある回答 | 14% |
重大な問題の原因として、いちばん多かったのは出典でした。問題は、特定の言語や国、AIアシスタントに限らず見られたと、報告書は述べています。
サービス別の結果
| AIアシスタント | 重大な問題がある回答 | 出典に重大な問題がある回答 |
|---|---|---|
| Gemini | 76% | 72% |
| Copilot | 37% | 15% |
| ChatGPT | 36% | 24% |
| Perplexity | 30% | 15% |
Geminiの数字が高いのは、出典の問題が主な原因だと、報告書は説明しています。ただし、これは調査時点の無料版・一般向け版の結果です。
サービス別の数字を引用するときは、いつの時点の、どの版の、どの集計かを添えてください。
改善は見られたのか
この調査は、BBC単独の前回の調査との比較も載せています。ただし、報告書自身が、多機関の結果と前回の結果は直接比べられないと書いています。
比べられるのは、BBC同士の数字だけです。
| 項目 | 前回(2024年12月に生成) | 今回(2025年5〜6月に生成) |
|---|---|---|
| 重大な問題がある回答 | 51% | 37% |
| 正確さに重大な問題がある回答 | 31% | 25% |
| 文脈の不足に重大な問題がある回答 | 22% | 13% |
| 事実と意見の区別に重大な問題がある回答 | 12% | 3% |
| 直接のURLがない回答(BBCの回答の件数) | 25件 | 1件 |
出典の問題はサービスによって分かれました。Geminiは47%とほぼ変わらず、ほかの3つは10〜15%の範囲に下がったと報告されています。
この比較を読むときの注意
BBC同士の比較は、改善の方向を示す数字としては有用です。ただし、次の点は考慮が必要です。
- 前回の回答数は362件、今回は237件で、数が少ないです。
- 前回は企業向けやPro版などを含み、今回は無料版・一般向け版です。製品の版が違います。
- 報告書は、定義や方法に小さな違いがあると断っています。
そのため、「半年で14ポイント良くなった」と一般化するのは避けたほうが安全です。
この調査の限界
- ニュースと時事問題についての調査で、企業情報や商品情報を対象にしたものではありません。
- 評価したのは公共放送のジャーナリストで、自社の内容がどう扱われたかを評価する立場でもあります。評価の基準は共通化されていますが、判断には人による幅があります。
- 機関ごと、言語ごとの結果は、回答数が少ないため、報告書自身が慎重に見るよう注記しています。
- 2025年5月から6月の結果です。AIアシスタントは更新が速いので、現在の水準とは違う可能性があります。
報告書は、結論として、AIアシスタントはまだニュースを得る手段として信頼できる水準にないと述べています。
4つの調査を並べて分かること
4つの調査を、表にまとめます。
| 調査 | 時期 | 対象 | 主に測ったもの | 主な結果(調査時点) |
|---|---|---|---|---|
| Liu、Zhang、Liangの論文 | 2023年2〜3月に回答を収集 | 生成AI検索4つ | 回答の文が出典で裏付けられているか | 完全に裏付けられた文は平均51.5%。文を裏付ける出典は平均74.5% |
| Tow Center | 2024年11月公開、2025年3月公開 | ChatGPT検索、のちに8つのツール | 引用文から、正しい記事と発信元を示せるか | 2025年3月の調査で、質問の60%超に誤答 |
| BBC | 2024年12月に実施、2025年2月公開 | AIアシスタント4つ | BBCの記事をもとにしたニュース回答の質 | 回答の51%に重大な問題 |
| EBUとBBC | 2025年5〜6月に回答を生成、2025年10月公開 | AIアシスタント4つ、14言語 | 正確さ、出典、文脈など | 回答の45%に重大な問題。出典の問題は31% |
対象も方法も違うので、数値を並べて「どれが正しい」「何年で何%良くなった」と言うことはできません。
共通して読み取れること
それでも、方法の違う調査から、共通して読み取れることがあります。
- 出典が付いていることと、内容が出典に裏付けられていることは別です。
- 出典の取り違えが起こります。転載先や配信先、存在しないURLが示される例が報告されています。
- 答えられないときに、断らず推測で埋める傾向が、複数の調査で報告されています。
- 改善の兆しはありますが、調査時点でも課題が残っています。
4つ目の注意点
BBC同士の比較では改善が見られました。一方で、EBUとBBCの報告書は、ニュースを得る手段としては、まだ信頼できる水準にないと結論づけています。
改善と課題が同時に報告されているので、どちらか一方だけを取り上げて紹介するのは避けたほうがよい、と筆者は考えます。
サイト運営者にとっての意味
ここからは、調査の結果をもとにした筆者の考えです。調査の対象はニュースが中心で、企業サイトに同じ割合で当てはまるとは限りません。
ただ、仕組みとしては、企業サイトの情報にも同じことが起こりうると考えられます。
1. 自社の情報が誤って要約されることを前提にする
料金、営業時間、対応地域、サービス内容などが、AIの回答の中で、古い情報のまま伝わることがあります。別の会社の情報と混ざって伝わる可能性もあります。
出典に自社サイトが示されていても、回答の文が自社ページの内容と一致しているとは限りません。論文の調査1が、この点を数字で示しています。
誤った回答への対処は、AIサービスごとに画面や窓口が違います。
Perplexityについては、次の記事に手順をまとめています。
Perplexityが自社について間違った回答をするときの対処法
Copilotについては、次の記事を参照してください。
Copilotが自社について間違ったことを答えるときの対処法
GoogleのAI OverviewsとAI Modeについては、次の記事に書いています。
2. 「引用されたか」だけでなく「正しく引用されたか」を記録する
AI検索の対策の効果を測るとき、自社サイトが出典に出たかどうかだけを数えがちです。
しかし調査が示すように、出典に出ていても、回答の内容が誤っていることがあります。定点観測では、次の3点も一緒に記録すると、実態をつかめます。
| 記録する項目 | 確かめること | 記録の例 |
|---|---|---|
| 回答の中の自社の記述 | 自社ページの内容と一致しているか | 一致、一部ずれ、不一致の3段階 |
| 示された出典のURL | 自社の該当ページか、転載先、まとめサイト、古いページか | 自社、転載、古いページなど |
| URLの有効性 | 実在し、目的のページにつながるか | 開ける、エラー、トップページのみ |
言及と引用の記録の取り方は、次の記事にまとめています。
ChatGPTでの確かめ方は、次の記事で扱っています。
ChatGPTで自社サイトがどう表示、引用されているかを確かめる方法
3. 取り違えられにくい情報の出し方をする
転載先の引用や、発信元の取り違えは、サイト運営者の工夫だけでは防げません。ただ、誤解の余地を減らすことはできます。
| 整えること | 理由 |
|---|---|
| 重要な情報を、1つの正式なページにまとめる | 複数のページに同じ内容があると、古いほうが拾われる可能性がある |
| 古いお知らせやキャンペーンのページを、更新、統合、削除のいずれかにする | 古い情報が出典として示される余地を減らす |
| 数字や条件に、いつ時点の情報かを書く | 古い情報かどうかを、読み手も機械も判断しやすくなる |
| 社名とサービス名の表記を、サイト内外でそろえる | 別の会社の情報と混ざる可能性を減らす |
| 記事の転載を認める場合は、元記事へのリンクを付けてもらう | 配信先が出典として示されても、元記事へたどれるようにする |
これらは、調査の結果から筆者が考えた対策です。AIの回答が改善することを保証するものではありません。
4. AIの回答を自分で使うときも、出典を開く
サイト運営者自身が、AI検索で調べものをして、記事や資料に使う場面もあります。
調査が示すとおり、出典のリンクが付いていても、その内容が本当に書かれているとは限りません。重要な情報は、出典のページを自分で開いて確かめてください。
調査の数字を紹介するときの注意
この記事の数字を、社内資料やブログで紹介することもあると思います。次の点に気をつけると、誤解を防げます。
| 気をつけること | 具体的には |
|---|---|
| 調査の時期を添える | 「2025年5〜6月時点で」と書く |
| 対象を添える | ニュース回答の調査であることを書く |
| 版と集計を添える | 無料版か有料版か、どの集計の数字かを書く |
| 現在の性能として紹介しない | 「現在のAI検索は半分しか正しくない」とは書かない |
| サービスを1つだけ批判しない | どの調査も、問題が特定のサービスに限られないと報告している |
今日からできるチェックリスト
- [ ] 自社名と主力サービス名で、主なAI検索サービスに月1回は質問し、回答を保存している
- [ ] 回答の中の自社に関する記述を、自社ページの内容と1文ずつ照らし合わせている
- [ ] 示された出典のURLを実際に開き、自社の正しいページか、転載先か、古いページかを確認している
- [ ] 料金や会社情報などの重要な情報について、正式なページを決め、更新日を入れている
- [ ] 古いページや、内容が矛盾するページを洗い出し、更新、統合、削除の方針を決めている
- [ ] 誤りを見つけたときの記録先と、対処する担当者を決めている
よくある失敗
調査の結果を踏まえると、次のような失敗が起こりやすいと考えられます。
出典に自社サイトが出たことで安心する
出典が正しくても、回答の文が間違っていることがあります。回答の中身まで確かめてください。
1回の確認で判断する
同じ質問でも、回答が変わることが報告されています。日を変えて何度か確認し、記録を残します。
調査の数値を「現在の性能」として社内に紹介する
紹介した数値は、いずれも調査時点のものです。社内資料に使うときは、調査の時期と方法を必ず添えてください。
よくある質問
Q1. AI検索の回答に出典リンクが付いていれば、その内容は信頼してよいですか?
出典リンクは判断の手がかりになりますが、それだけで内容が正しいとは言えません。
2023年の論文では、回答の文のうち、出典で完全に裏付けられていたのは平均で約半分でした。重要な判断に使う情報は、出典のページを開いて確かめることをおすすめします。
Q2. これらの調査は、今のAI検索にも当てはまりますか?
調査時点のサービスを対象とした結果なので、現在の性能をそのまま示すものではありません。
EBUとBBCの調査では、BBC同士の比較で、重大な問題のある回答の割合が下がりました。改善は進んでいると考えられますが、報告書は、依然として課題が多いと結論づけています。
Q3. ニュース以外の、企業や商品の情報でも同じことが起こりますか?
紹介した調査の多くは、ニュースが対象です。企業情報で、同じ割合の誤りが起こるとは言えません。
ただ、出典の取り違えや、出典にない内容を回答に含める現象は、仕組みとしては企業情報でも起こりうると考えられます。実際に自社に関する回答を確かめて、判断するのがよいでしょう。
Q4. 自社の情報が誤って引用されていたら、どうすればよいですか?
まず、回答と出典を、そのまま記録します。
次に、誤りの原因が、自社サイトにあるのか、外部のサイトにあるのか、AI側の要約にあるのかを切り分けます。そのうえで、自社サイトの修正、外部サイトへの修正依頼、各サービスへのフィードバックを行います。
サービスごとの手順は、前半の記事を参照してください。
Q5. 引用の正確さを、自社で数値にして測れますか?
簡易的には可能です。質問のリストを決めて、定期的に回答を保存します。
そして、「自社に関する記述が合っているか」「出典が自社の正しいページか」を判定して記録すれば、正しく引用された割合を追えます。ただし、質問の数が少ないうちは、割合のぶれが大きいことに注意してください。
まとめ
要点を整理します。
- 2023年の論文から2025年の国際共同調査まで、方法の違う複数の調査が、AI検索やAIアシスタントの出典表示に、調査時点で無視できない誤りがあったと報告しています
- 誤りには、出典が内容を裏付けていないもの、発信元の取り違え、存在しないリンク、事実をゆがめた要約など、いくつかの種類があります
- 改善の兆しはありますが、調査時点でも課題は残っており、継続的な点検が必要です
- サイト運営者は、自社の情報が誤って要約や引用をされうることを前提に、「正しく引用されたか」を定期的に確かめ、誤りを見つけたら原因を切り分けて対処する仕組みを持っておきましょう
まずは、自社名で主なAI検索に質問し、示された出典のURLを開いて、回答と見比べるところから始めてみてください。
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