リピーターを増やす方法を調べると、ポイントの付け方、割引券の配り方、会員の集め方が並びます。ところが、そもそもお客様が2回目に来ない理由は、どの解説も同じ前提で片づけています。
この記事は、店舗、サロン、飲食店、小売店、そして法人向けのサービスを営む中小企業の経営者と、集客を任されたWeb担当者に向けて書きました。扱うのは、初めて来たお客様が2回目に来るまでの間に何が起きているのか、という一点です。
調べる前に決めた約束があります。「新規の顧客を獲得する費用は、既存客を維持する費用の5倍かかる」という説は書きません。出典を確かめようとしましたが、公的機関の資料では裏が取れなかったからです。
使った数字は、書いた日に開いて確かめた公的機関の資料だけです。日本政策金融公庫が2026年10月29日に公表した生活衛生関係営業の景気動向等調査と、2025年12月5日に公表した新規開業実態調査の2つを、2026年11月2日に開いて確認しました。
先に答え:リピーターは、初回の帰り道から2回目までの空白の間に増える
リピーターとは、同じ店や同じ会社で、2回以上買ったり利用したりしたお客様のことです。数を増やすには、2回目に来てもらう人の割合を上げるのが先です。
2回目の割合を上げるには、初回のあと、お客様に何が起きているのかを知る必要があります。店を出た瞬間から、お客様は日常に戻ります。
日常に戻ったお客様は、満足していても、次を思い出す理由を持ちません。不満があって来なくなる人よりも、不満がないのに来なくなる人のほうが、小さな店には多いはずです。
この仮説を前提に、手順を3つに絞ります。
| 手順 | やること | 向かう先 |
|---|---|---|
| 1 | 初回の帰り際に、次の約束を1つ置く | 店や現場での声かけ |
| 2 | 初回の数日後に、1通だけ連絡する | 手紙、メール、電話のどれか |
| 3 | 2回目の人が最初に開くページを用意する | 自社のホームページ |
3つとも、特別な機械や会員の仕組みは要りません。1人で回している店でも、今週から始められます。
1文で言うと
リピーターは、満足したお客様に、次に来る理由と手段を渡した結果として増えます。理由と手段のどちらが欠けても、お客様は日常に戻ります。
この記事で使う言葉
言葉の意味を、最初にそろえます。同じ言葉でも、人によって指す範囲が違うからです。
| 言葉 | この記事での意味 | 例 |
|---|---|---|
| 初回客 | 初めて買った、または利用したお客様 | 初めて来店した美容室の客 |
| 2回目の人 | 初回のあとで、もう一度来たお客様 | 2回目の来店予約を入れた客 |
| リピーター | 2回以上利用したお客様の総称 | 3回目以降も来ている客 |
| 常連 | 来る頻度が高く、店の人が顔と名前を覚えているお客様 | 月に1回は必ず来る客 |
| 再来店 | 同じ店にもう一度来ること | 飲食店の2度目の来店 |
この記事の中心は、初回客が2回目の人になる場面です。常連になったあとの話は、2回目を越えた先の話として軽く触れます。
リピート率を、自分の店の数字で一度だけ数えておく
リピート率の考え方はいくつかありますが、この記事では「ある月に初めて来た人のうち、3か月以内にもう一度来た人の割合」を使います。
紙の予約台帳や会計の控えがあれば、数えられます。10人の初回客のうち3人が戻ったなら、3割です。
この数字に良い悪いの基準はありません。業種や、もともとの来店間隔によって、適した値が違うからです。大切なのは、今の自分の店の値を知り、手を打ったあとで変わったかを見ることです。
読む順番の目安
時間のない方は、次の順で読めば足ります。
| 知りたいこと | 読む場所 |
|---|---|
| まず何をすればよいか | 「先に答え」と最後の「今日できる点検」 |
| なぜ2回目に来ないのか | 「2回目の壁」の節 |
| 自分の業種の例 | 「業種別の例」の節 |
| 自社サイトに何を置くか | 「2回目の人向けページ」の節 |
先日見かけたQ&Aサイトの悩み:納車のときに渡すプレゼントで、リピーターは増えるのか
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。投稿されたのは2025年の初めで、自動車を扱う小さな店を営む方からでした。
内容は、納車のときに何かプレゼントを渡して、リピーターを増やしたい、という相談です。あわせて、お客様の許可を得て、顔の見える声をSNSやホームページに載せたいとも書かれていました。採算が合う方法を教えてほしい、という結びでした。
寄せられた答えは、2つの方向に分かれていた
並んだ答えを読むと、方向は大きく2つに分かれていました。
1つは、実用的な小物を渡せば喜ばれる、という答えです。もう1つは、プレゼントとリピートは直接つながらないので、買ったあとの付き合いの仕組みを考えたほうがよい、という答えでした。
後者の答えには、半年ごとの点検、冬前のタイヤの履き替え、車検の前の案内といった、具体的な提案が並んでいました。どれも、次に来る理由を、先に決めておく考え方です。
この相談から見えること
この相談には、リピーターを増やしたい店が最初につまずく場所が、よく出ています。
| 相談の言葉 | 裏にある考え | 抜けているもの |
|---|---|---|
| 納車のとき何かプレゼントしたい | 最後の印象を良くすれば戻ると考えている | 戻る理由と日付 |
| 顧客の声を載せたい | 声は新規集めの材料だと考えている | 戻らない人の声 |
| 採算の合う方法がほしい | 費用の大きさで選ぼうとしている | 初回客の何割が戻るかの数字 |
プレゼントを渡すこと自体は悪くありません。足りないのは、渡したあとにお客様が日常へ戻る場面を、誰も設計していないことです。
自動車の店に限らない
この相談は自動車の店のものですが、美容室でも、飲食店でも、リフォームを請ける工務店でも、事情は同じです。
最後の一場面を整えることに力を入れ、そのあとの数週間は、お客様に任せきりにしてしまいます。この空白に、リピーターが増えるかどうかの分かれ目があります。
リピーターとは:2回目の人、常連、リピート率の言葉を整理する
次に、言葉をもう少し細かく整理します。同じ「リピーター」でも、指している段階が違うと、打つ手が変わるからです。
リピーターを段階で分ける
お客様は、段階ごとに、考えていることが違います。
| 段階 | お客様の頭の中 | 店に必要な手 |
|---|---|---|
| 初回客 | まだ判断の途中で、また来るかは決めていない | 次の約束を渡す |
| 2回目の人 | 一度目の判断が当たったか確かめに来ている | 前回との違いを出さない |
| 3回目以降 | 習慣になり始めている | 来る間隔を保つ |
| 常連 | 店に居場所を感じている | 敬意を示し続ける |
多くの解説は、この段階を分けずに、同じ打ち手を並べています。初回客に常連向けの優待を案内しても、響かないのはそのためです。
売上に効くのは2回目の人の数
3回目以降のお客様は、すでに店の良さを知っています。止めない限り、通い続けてくれます。
数が足りないのは、2回目の人です。初回客がたくさんいても、2回目に進む人が少なければ、リピーターは育ちません。
同じ人が戻ってくる、とは限らない業種もある
引っ越しや結婚式、家の建築のように、同じ人が何度も頼まないサービスもあります。その場合のリピートは、同じ人の再利用だけを指しません。
家族や知人を紹介してもらうことや、同じ人の別の依頼を指すこともあります。この記事では、同じ人の再利用を中心にしつつ、後半で別の戻り方にも触れます。
公的な数字で見る:客数の減少は、小さな店に共通する悩みになっている
リピーターの話に入る前に、お客様の数について、公的な機関が把握している数字を見ておきます。自分の店だけの不調ではない、と分かるだけでも、考え方が変わります。
生活衛生関係営業の調査で見える「顧客数の減少」
日本政策金融公庫が2026年10月29日に公表した「生活衛生関係営業の景気動向等調査結果(2026年7~9月期)」には、経営上の問題点の集計があります。
この調査は2026年9月中旬に、飲食業、理容業、美容業、クリーニング業、ホテル・旅館業などの企業を訪問して行われ、有効回答は3,118企業でした。
結果は、2つまで選べる複数回答で、「仕入価格・人件費等の上昇を価格に転嫁困難」が56.0%で最も多く、次いで「顧客数の減少」が41.4%でした。
| 経営上の問題点 | 割合 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 仕入価格・人件費等の上昇を価格に転嫁困難 | 56.0% | 値上げの説明が、お客様に届きにくい |
| 顧客数の減少 | 41.4% | 4割を超える企業が、客数に悩んでいる |
| 店舗施設の狭隘・老朽化 | 20.9% | 設備の悩みは、客数より少ない |
出典の名前と公表日を書けば、自分のページに載せても、数字の信頼が保てます。
新規開業の調査で見える「顧客・販路の開拓」
もう1つ、同じ機関が2025年12月5日に公表した「2025年度新規開業実態調査」があります。
この調査は、2024年4月から9月にかけて融資した、開業後1年以内の企業にアンケートを送り、2,165社から回答を得ています。
開業して現在苦労していることとして、最も多かったのは「顧客・販路の開拓」の48.8%でした。「資金繰り、資金調達」の36.2%を上回っています。
数字を読むときの注意
この2つの調査から言えるのは、客数と開拓に悩む事業者が多い、という範囲までです。
リピーターが少ないことが原因だ、とは、どちらの調査も述べていません。この記事でも、その結論は導きません。
| してよい読み方 | してはいけない読み方 |
|---|---|
| 客数を気にしているのは自社だけでない | 新規よりリピートに力を入れれば解決する |
| 開拓の悩みは開業後も続く | 開拓が難しいからリピートに逃げるべきだ |
| 数字の出どころを書いて使う | 数字を自社の成果のように言い換える |
数字は、悩みの大きさを知る材料です。打ち手の正しさを証明する材料としては使いません。
「新規は既存の5倍の費用がかかる」を、この記事で使わない理由
リピーターの話題では、新規の顧客を獲得する費用は既存客の維持費の5倍、という説がよく引かれます。
私たちはこの説の出どころを探しましたが、公的機関の資料や学術の資料で、5倍という数字を確かめられませんでした。業種や時期によって比が変わるのは当然で、一つの倍率で言い切れるとは考えにくいからです。
そのため、この記事では倍率を使いません。使いたい場合は、自社の広告費と、新規の客数を割り算して、自社の1人あたりの獲得費用を出すほうが確かです。
2回目の壁:初回のあと、お客様に何が起きているのか
ここからが、この記事の中心です。初回客が2回目の人にならない理由を、5つの場面に分けて見ます。
どの場面も、店の人からは見えません。見えないから、手が打たれないまま残ります。
場面1:満足したのに、忘れてしまう
最も多いと考えられるのが、これです。仕上がりに満足し、味に満足し、接客に満足しています。
それでも、次の日には別の用事が入り、1週間後には、店の名前を思い出さなくなります。不満のない人ほど、忘れることに抵抗がありません。
場面2:次に来る理由が、思いつかない
髪が伸びる、物が減る、車検の時期が来る。次に来る理由が自然に生まれる業種は、いいほうです。
理由が生まれない業種では、お客様は「また今度」と考え、その今度が来ません。理由は、店のほうから渡す必要があります。
場面3:戻るために、手間がかかる
もう一度来ようと思っても、予約の取り方が分からない、営業時間を探すのが面倒、前回の担当者の名前を思い出せない、という壁があります。
手間が一つでもあると、気持ちはそこで止まります。戻る手段の分かりやすさは、戻りたい気持ちと同じくらい重要です。
場面4:初回で残った小さな疑問が、解けていない
初回の対応は良かったものの、小さな疑問が残る場合があります。次はいつ頃来ればよいのか、家でのお手入れはこれでよいのか、といった疑問です。
疑問は、満足の裏に隠れているので、お客様も口に出しません。聞かれなかった疑問は、そのまま不安に変わります。
場面5:時期が来たのに、気づかない
お客様が自分で気づく前に、店のほうから「そろそろ」と伝えれば、戻る人がいます。
時期は、お客様の側には見えにくいものです。見える立場にいる店が、先に声をかけます。
5つの場面を一覧にする
5つの場面は、次の表で整理できます。
| 場面 | お客様の状態 | 店に足りないもの |
|---|---|---|
| 1 | 満足したが忘れた | 思い出す接点 |
| 2 | 次に来る理由がない | 次の約束や目安 |
| 3 | 戻る手間が大きい | 分かりやすい戻り方 |
| 4 | 小さな疑問が残った | 初回後のひと言 |
| 5 | 時期に気づかない | 時期を知らせる連絡 |
5つのうち、どれが自分の店で最も多いかを知ることが、打ち手を選ぶ最初の作業になります。
5つの場面を、自分の店で見分ける方法
見分けるには、戻らなかったお客様に聞くのが確かです。ただし、全員に聞く必要はありません。
初回のみで終わった直近の10人を台帳から選び、1人ずつ「なぜ戻らなかったと思うか」を、自分の推測で書き出します。そのあと、2〜3人に電話や手紙で聞きます。
聞き方の細かい手順は、別の記事の顧客インタビューにまとめています。ここでは、戻らなかった人に聞くことを覚えておいてください。戻った人の声だけでは、壁の場所が見えません。
業種別の例:5つの小さな店で、2回目の壁を見てみる
壁の場面は、業種によって強さが違います。5つの小さな店を例に、どの場面が強いかを見ます。
A店(1人で営む美容室)の例
A店は、髪の長さが整う間隔が決まっているため、場面2はあまり強くありません。強いのは、場面5の「時期に気づかない」と、場面3の「予約の取り方」です。
次の来店の目安を伝え、予約の取り方を一言で示すだけで、2回目の人が増えると考えられます。
B店(住宅街の食堂)の例
B店では、味は気に入られたのに、来る理由が「近くを通ったとき」だけです。場面1の「忘れる」と、場面2の「理由がない」が強く出ます。
日替わりのお知らせや、週に1回の決まったメニューなど、行く日を決めやすくする工夫が向きます。
C店(雑貨を売る小売店)の例
C店は、買った物が長持ちするほど、次に来る理由が減ります。場面2が最も強い業種です。
使い方の追加や、組み合わせの提案など、買ったあとにも話題のある店にします。
D社(外壁の塗り替えを請ける工務店)の例
D社の次の仕事は、10年単位でしか訪れません。場面1の「忘れる」が最も強く、同じ人の再利用よりも、近所への紹介が戻り方になります。
点検の案内を年に1回出して、次の相談を受ける窓口を残しておくことが、現実的です。
E事務所(税理士の個人事務所)の例
E事務所は、契約が続く業種なので、2回目の壁は「継続の確認」の形で現れます。場面4の「疑問が残る」が強く、初回の相談の後、聞きそびれたことが解けないまま止まります。
初回の相談のあとで、確認の連絡を1通出すだけで、解約を防げる場面があります。
| 店 | 強い場面 | 向く打ち手 |
|---|---|---|
| A店(美容室) | 5と3 | 次の目安と予約の取り方を伝える |
| B店(食堂) | 1と2 | 行く日を決めやすくする |
| C店(雑貨店) | 2 | 買ったあとの話題を足す |
| D社(工務店) | 1 | 年1回の点検の案内 |
| E事務所(税理士) | 4 | 初回後の確認の連絡 |
5つの店で共通しているのは、打ち手が、お客様の日常に戻った後を想定していることです。
よくある対策が空振りする理由:多くの店が最初にやること
2回目の壁を知らないまま、よく選ばれる対策があります。どれも悪い手ではありません。ただ、壁のどの場面に効くのかを決めずに始めるので、空振りが続きます。
空振り1:割引や景品を増やす
初回客に、次回に使える割引券を渡す店は多くあります。割引券は、場面2の「次に来る理由」には効くはずです。
ところが、券の期限が長いと、ポケットの奥にしまわれたまま、忘れられます。期限が短いと、予定が合わず、使われません。
さらに、割引を渡す相手を選ばないと、割引を目当てにする人ばかりが戻ります。通常の価格で来てくれる人が、見えにくくなります。
空振り2:連絡先を集めて、全員に同じ案内を送る
メールアドレスや電話番号を集めて、全員に同じ案内を一斉に送る方法があります。
初回客と常連と、1年前に一度来ただけの人に同じ文面を送ると、読まれない案内になります。読まれない案内が続くと、案内そのものが迷惑に変わります。
連絡は、数を打つよりも、時期と相手を絞って1通だけ出すほうが、返ってくる反応が確かです。
空振り3:SNSのフォロワーを増やす
SNSで投稿を続け、フォロワーを増やせば、リピーターも増えると考える店があります。
フォロワーの数と、再来店の数は、別の数字です。投稿を見ているだけで一度も来ない人も、一度来て二度と投稿を見ない人も、現実にはいるはずです。
SNSは場面1の「忘れる」には効きます。ただ、場面3の「戻る手間」を減らす役目は、予約のページや電話番号が担います。
空振り4:新規集客の広告を増やす
客数が減ると、広告を増やして、新規客で穴を埋めたくなります。
新規客を増やすのは、必要な作業です。ただ、2回目に進む人の割合が低いままだと、広告を増やすほど、使う費用も同じ割合で増えます。
穴の空いた器に水を注ぎ続けるのと同じ状態が続きます。器の穴をふさぐのは、2回目の壁を越える作業です。
空振り5:常連だけを大切にする
長く通ってくれる常連を大切にするのは正しいことです。ただ、常連だけを見ていると、新しいお客様に居づらい店になることがあります。
内輪の話が飛び交う店や、常連の席が決まっている店では、初回客は2回目を考える前に、居心地の悪さを感じます。
常連が増えるのは、2回目の壁を越えた人が積み重なった結果です。入口の2回目を整えないと、常連も育ちません。
5つの空振りを、壁の場面に対応させる
5つの空振りは、壁の場面との対応を見ると、どこにずれがあるかが分かります。
| 対策 | 効く場面 | 効かない場面 | ずれの原因 |
|---|---|---|---|
| 割引や景品 | 2 | 1、3、4、5 | 理由だけを渡している |
| 一斉の案内 | 1 | 4、5 | 相手と時期を絞っていない |
| SNSの投稿 | 1 | 3、4 | 戻る手段が別の場所にある |
| 広告の追加 | なし | 全部 | 2回目の割合を上げていない |
| 常連への優遇 | なし | 全部 | 入口の2回目に届いていない |
効く場面が1つしかない対策に、すべてを任せると、ほかの場面で落ちる人が出ます。
空振りが続いたあとに起きること
空振りが続くと、店の中では、次のような声が出始めます。
「リピーターは、結局、商品が良ければ増えるものだ」。「うちの商売は、一度きりの客が多い業種だ」。「来る人は来るし、来ない人は来ない」。
どれも、一部は事実かもしれません。ただ、確かめる前にそう結論すると、打つ手が止まります。止まった店では、初回客の数だけが、静かに減っていきます。
確かめる前に結論しないために
結論を急がないために、次の3つを先に確かめます。
| 確かめること | 方法 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 初回客のうち、戻った割合 | 台帳から直近10人を数える | 15分 |
| 戻らなかった人の共通点 | 10人を並べて眺める | 15分 |
| 戻った人が来た理由 | 戻った人に一言聞く | 次の来店時 |
3つ目だけは、次に会ったときに聞けば足ります。
数字を出さない店と、出す店の違い
ここで、数字の扱いについて、もう少し触れておきます。リピーターの話では、数字が曖昧なまま対策が決まることが多いからです。
「リピート率が高い」とは、何と比べているのか
解説記事には、リピート率の目標値が書かれていることがあります。ただ、その値が、どの業種の何人を数えたものなのか、記載がない場合が多いのです。
美容室の月1回の来店と、住宅の塗り替えの10年に1回を、同じ物差しで比べることはできません。
自社のリピート率の良し悪しは、自社の昨年の値と比べて判断するのが、最も確かです。
手元に残す数字は3つで足りる
小さな店で、複雑な分析は続きません。続けられるのは、次の3つです。
| 数字 | 数え方 | 見ること |
|---|---|---|
| 月の初回客数 | 初めて来た人の数 | 新規の入口の太さ |
| 3か月以内に戻った人数 | 初回客のうち、再来した人の数 | 2回目の壁の高さ |
| 戻るまでの日数の目安 | 初回から2回目までの日数の中央あたり | 連絡を出す時期 |
3つ目の数字を知ると、連絡を出す日が決まります。例えば、戻る人の多くが25日前後で来ているなら、20日前後に連絡を出します。
数字を取り始めるときの注意
数字は、取り始めた月より、数か月先に価値が出ます。1か月分では、増えたのか減ったのか、判断できません。
最低でも3か月は、同じ数え方を続けます。途中で数え方を変えると、前の月との比較ができなくなります。
数える人を決めておくことも大切です。誰か1人が、月末に15分だけ、台帳を開いて数えます。
数字を取らない店の、よくある思い込み
数字を取らない店には、よくある思い込みがあります。
「お客様の顔は覚えているから、数えなくても分かる」。確かに、常連は分かります。ところが、1回しか来なかった人の顔は、すぐに忘れます。
戻らなかった人の数は、顔の記憶では数えられません。台帳に残して初めて見えます。
解決策:「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、初回のあとの空白に先に声をかける
ここからが、この記事の本題です。2回目の壁の5つの場面に、順番に手を打つ手順を説明します。
土台に置くのは、「売れるサイトはみな謙虚」という考え方です。ウェブサイトから要素を引き算して、訪れた人が迷わず次の一歩に進める形に組み直す、という考え方を指します。
リピーターの場面に当てはめると、店の側が自分を売り込む前に、お客様の日常に戻ったあとの困りごとへ、先に答えを用意することになります。
謙虚とは、お客様の「また今度」を責めずに、次の一歩を小さくして渡すこと
「また来てください」と言われて、嫌な気持ちになる人は少数です。ただ、その一言だけでは、次の一歩の大きさが分かりません。
謙虚に書くとは、お客様が「また今度」と言う気持ちを受け止めたうえで、次の一歩を、思い出す手間のないところまで小さくして渡すことです。
次の一歩は、予約のページを開くこと、1通の返信を書くこと、電話を一本かけること、のどれかです。一歩が小さいほど、日常の中でも踏み出せます。
手順の全体像
手順は4つです。最初の3つは店や現場でできることで、最後の1つがホームページの仕事になります。
| 手順 | やること | 効く場面 | かける時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 帰り際に、次の約束を1つ置く | 2、5 | 1回10秒 |
| 2 | 数日後に、1通だけ連絡する | 1、4 | 1通5分 |
| 3 | 戻った人と戻らなかった人に聞く | 全部 | 月に30分 |
| 4 | 2回目の人向けのページを置く | 3、4 | 最初に半日 |
合わせると、最初の準備は1日で終わります。続けるのは、手順2と3だけです。
手順1:帰り際に、次の約束を1つ置く
最初の手順は、お客様が店を出る瞬間に行います。ここで置く約束が、初回のあとの空白を埋める最初の杭になります。
次の約束には、3つの種類がある
次の約束は、重さの違う3つに分けられます。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 日付つきの約束 | 次の日にちを今決める | 「4週間後のこの曜日を押さえておきますね」 |
| 目安の約束 | 次にいつ頃来ればよいかを伝える | 「髪が気になり始める頃が、次のご来店の目安です」 |
| 理由の約束 | 次に来ると良いことを1つ伝える | 「次回は、今日の仕上がりの様子を見て調整しますね」 |
最も戻りやすいのは、日付つきの約束です。ただし、押しつけに聞こえる業種では、目安の約束から始めます。
約束は、お客様の言葉を借りて作る
約束を置く言葉は、お客様が初回で話してくれたことから作ります。店の都合から作ると、押しつけに聞こえるからです。
「肩が凝りやすい」と話した人には、「肩の様子を見たいので、次回も教えてくださいね」と返します。お客様の言葉を借りた約束は、押しつけには聞こえません。
約束を置けない場面の代わり
接客の場面がない業種では、帰り際の声かけができません。通販や、納品して終わる仕事がそうです。
その場合は、納品物に添える一枚の紙や、完了の連絡の最後の一文が、約束の代わりになります。
手順2:数日後に、1通だけ連絡する
2つ目の手順は、お客様が日常に戻った直後に出す、1通の連絡です。連絡は多く出さず、1通に絞ります。
連絡を出す日は、初回の3日後から1週間後の間に置く
早すぎると、お礼だけの連絡に見えます。遅すぎると、すでに忘れられています。
目安は、お客様が日常に戻って、仕上がりや買った物の感想が固まる頃です。初回の3日後から1週間後の間に、1通出します。
連絡に書くことは、3つに絞る
連絡の文面は、長くしません。書くことは3つです。
| 書くこと | 例 | 狙い |
|---|---|---|
| 初回のお礼を1行 | 「先日はご来店ありがとうございました」 | 思い出してもらう |
| 初回のあとの様子を尋ねる | 「その後、お困りのことはありませんか」 | 残った疑問を引き出す |
| 次の一歩を1つ示す | 「ご質問は、このまま返信ください」 | 戻る手間を下げる |
売り込みの言葉や、割引の案内は入れません。入れると、様子を尋ねる連絡が、販売の連絡に変わってしまうからです。
連絡の手段は、お客様が選んだものを使う
連絡の手段は、手紙、メール、電話のどれでも構いません。ただし、初回のときに「連絡してもよい手段」を聞いておく必要があります。
聞かずに電話をかけたり、許可のない相手にメールを送ったりすると、迷惑と受け取られるおそれがあります。
連絡先は、本人の許可を得て、必要な範囲でだけ使います。個人情報の扱いは、自社の方針と法律に従ってください。
手順3:戻った人と戻らなかった人に聞く
3つ目の手順は、聞く作業です。推測で打ち手を変え続けるよりも、数人の声を聞くほうが、はるかに早く正解に近づきます。
戻った人には「なぜ戻ったか」を一言だけ聞く
戻った人に聞くのは、1つだけです。「2回目に来ようと思ったきっかけは何ですか」。
答えを書き留めておくと、自社の中で、2回目の理由が何だったのかが見えてきます。理由が見えたら、その理由を、初回の帰り際の約束に使います。
戻らなかった人には「後から」短く聞く
戻らなかった人には、無理に理由を聞く必要はありません。数週間後に、短い手紙や電話で、「その後いかがですか」と尋ねるだけで十分です。
そこで出てくる言葉が、場面1から5のどれにあたるかを、記録しておきます。
聞いた声は、台帳に1行で残す
聞いた声は、次の形で、1行ずつ台帳に残します。
| 日付 | 誰に聞いたか | 声 | 当てはまる場面 |
|---|---|---|---|
| 11月3日 | 初回のみの人 | 「予約の取り方が分からなかった」 | 3 |
| 11月5日 | 戻った人 | 「次の目安を教えてもらえた」 | 2、5 |
3か月分たまると、自社で多い場面が、数字で分かるようになります。
手順4:自社のホームページに「2回目の人向け」のページを置く
最後の手順は、ホームページの仕事です。手順1から3で、お客様の日常に戻ったあとの空白に声をかけました。そのお客様が、実際に開く場所を用意します。
2回目の人は、ホームページの最初のページを見に来ない
初めて店を調べる人は、トップページや、料金のページを読みます。2回目の人が知りたいことは、まったく違います。
次はいつ頃来ればよいか、予約はどこから取るか、前回の内容に疑問が出たらどうすればよいか。この3つです。
初めての人向けのページに、この3つを混ぜると、どちらの人にも読みにくいページになります。2回目の人専用のページを、1枚だけ別に用意します。
ページに置くことは、5つで足りる
ページの内容は、2回目の壁の5つの場面と対応させて決めます。
| 置くこと | 対応する場面 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 次に来る目安 | 2、5 | 「髪の長さが気になり始める4週間から6週間後」 |
| 予約や相談の入口 | 3 | 電話番号と、予約のページへのリンク |
| 初回のあとのよくある疑問 | 4 | 家でのお手入れ、困ったときの連絡先 |
| 前回と同じ内容でお願いする方法 | 3 | 「前回と同じで」と伝えるだけでよい旨 |
| 店からの連絡の頻度 | 1 | 「お知らせは、年に数回だけお送りします」 |
予約の入口の作り方は、別の記事の予約フォームの作り方に詳しく書いています。入力の項目を絞ることが、戻る手間を下げます。
ページの置き場所は、初回後の連絡に書いたリンクの先
2回目の人向けのページは、トップページのメニューには出しません。出す場所は、手順2の連絡の中のリンクと、店頭の紙に印刷した二次元コードの先です。
メニューに出すと、初めての人が迷います。限られた入口からだけ開けるページにしておくと、2回目の人が見るページとして、役割がはっきりします。
ページの文章の型
文章は、お客様の言葉を借りて、短く書きます。型は次のとおりです。
| 順番 | 書くこと | 文の長さの目安 |
|---|---|---|
| 1 | 「ご来店ありがとうございました」の一言 | 1文 |
| 2 | 次に来る目安と理由 | 2文 |
| 3 | 予約や相談の入口 | 1文とボタン1つ |
| 4 | 初回のあとの疑問への答え | 3から5項目 |
| 5 | 連絡の頻度と、やめたいときの方法 | 2文 |
ページの長さは、スマホで2画面ほどが目安です。長くすると、2回目の人は読み終えずに閉じます。
ページに書いてはいけないこと
書いてはいけないことが、2つあります。
1つは、根拠のない効果の言い切りです。「必ず良くなる」「これで安心」といった表現は、広告の決まりに触れるおそれがあります。
もう1つは、他社を下げる比較です。2回目の人に向けたページでも、他の店や会社を名指しする文章は載せません。
工務店や税理士のように、2回目の頻度が低い業種のページ
数年に1回しか頼まない業種では、ページの中身が少し変わります。
次に頼む時期の目安よりも、「そろそろ点検の時期かもしれません」と気づける材料を中心に置きます。たとえば、外壁なら、見た目の変化を自分で確かめるための、3つの目安です。
別の戻り方として、家族や知人に紹介する場合の案内も、ページの終わりに置きます。紹介の案内には、特典を付けるよりも、紹介した人が気まずくならない一文を添えるほうが、受け入れられます。
3か月続けたあとの、結果の見方
手順1から4を始めたら、3か月は続けます。ここで見る数字は、前の節の3つだけです。
数字の動き方で、次の手を決める
3か月後の数字の動き方によって、次の手が変わります。
| 動き | 考えられること | 次の手 |
|---|---|---|
| 初回客数は同じで、戻った人数が増えた | 2回目の壁が下がった | 同じ手順を続ける |
| 戻った人数が変わらない | どの場面にも当たっていない | 戻らなかった人の声を聞き直す |
| 初回客数が減った | 季節や外の要因が影響した | 前年の同じ時期と比べる |
| 戻った人数が減った | 連絡が多すぎる可能性 | 連絡の回数を減らす |
数字が動かないのは、失敗とは限りません。打ち手が壁の別の場面に当たっていないだけ、という場合が多くあります。
関連して読んでおきたい記事
一度来てくれた相手との関係を長く続ける全体像は、顧客維持とはに整理しています。
戻った人と戻らなかった人への聞き方は、顧客インタビューの記事に手順を書きました。近所の人が店に入る前の不安については、田舎の集客の記事が参考になります。
よくある質問
Q1:リピーターを増やすために、ポイントや会員の仕組みは必要ですか
最初は要りません。仕組みを入れる前に、初回客の何割が戻っているかを数えるほうが先です。
数字が分かれば、仕組みが必要な業種か、帰り際の約束で足りる業種かが見分けられます。
Q2:連絡先を聞きにくいお客様には、どうすればよいですか
無理に聞かなくて構いません。帰り際の約束と、店頭の二次元コードからのページで、連絡先なしでも2回目の入口は渡せます。
連絡先は、お客様のほうから「また来たい」と言ったときに、もらうようにします。
Q3:一度きりの業種でも、リピーターを増やせますか
同じ人の再利用が見込みにくい業種では、紹介や、別の依頼が戻り方になります。
その場合は、2回目の人向けのページを、紹介の案内として整えます。目的を、再利用から紹介に置き換えれば、手順は同じです。
Q4:何か月くらいで効果が出ますか
戻るまでの日数の目安によって変わります。来店間隔が1か月の業種なら3か月、半年の業種なら1年ほど見る必要があります。
早い段階で見るのは、連絡への返信や、ページを開いた数といった、行動の数字です。
Q5:新規集客とリピートは、どちらを先にやるべきですか
どちらか一方を選ぶものではありません。ただ、台帳を見て、初回客の戻りが極端に少ないなら、リピートの空白を先に埋めたほうが、広告の費用が無駄になりません。
初回客が少ない場合は、新規の入口を先に整えます。自社の数字を見て決めます。
まとめ:リピーターは、初回のあとの空白に先に声をかけた店で増える
リピーターを増やす方法は、特別な仕組みを入れることではありません。初回のあと、お客様の日常に戻った空白に、先に声をかけることです。
| 内容 | 要点 |
|---|---|
| 2回目の壁 | 忘れる、理由がない、手間がある、疑問が残る、時期に気づかない |
| 解決の考え方 | 次の一歩を小さくして、先に渡す |
| 4つの手順 | 帰り際の約束、数日後の1通、声を聞く、2回目の人向けのページ |
| 使った公的な数字 | 顧客数の減少41.4%、顧客・販路の開拓48.8% |
| 使わなかった説 | 新規は既存の5倍かかるという、出典の確かめられない説 |
公的な数字は、悩みが自社だけのものではないことを示す材料です。打ち手の正しさは、自社の台帳の数字で確かめます。
今日できる点検
最後に、今日の30分でできる点検を表にします。上から順に、1行ずつ進めてください。
| 点検する場所 | 見ること | はい/いいえ |
|---|---|---|
| 予約台帳や会計の控え | 直近の初回客10人のうち、何人が戻ったか数えたか | |
| 帰り際の声かけ | 次の来店の目安や日付を、お客様に伝えているか | |
| 初回のあとの連絡 | 3日後から1週間後に、1通出しているか | |
| 連絡の中身 | 割引の案内でなく、様子の確認になっているか | |
| 戻らなかった人 | 直近の初回のみの人に、1人でも聞いてみたか | |
| ホームページ | 2回目の人が最初に開くページがあるか | |
| 予約の入口 | 電話番号と予約のページが、スマホですぐ見つかるか | |
| 数字の記録 | 月末に15分、初回客数と戻った人数を数える日を決めたか |
「いいえ」が付いた行が、今週の候補です。そのうち、お客様に最も近い場所の行を1つ選び、今週中に直します。
点検の結果の読み方
「いいえ」の数によって、次にやることが変わります。
| 「いいえ」の数 | 状態 | 次にやること |
|---|---|---|
| 0から2 | 初回のあとの空白に、手が打たれている | 3か月ごとに数字を見直す |
| 3から5 | 部分的に空白が残っている | お客様に近い行から直す |
| 6以上 | 初回のあとが、お客様任せになっている | まず台帳の数え直しから始める |
行の数を気にしすぎる必要はありません。1つ直すと、その周りの行も直しやすくなります。
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