ホームページの見出しを何度直しても問い合わせが増えないとき、原因は文章の上手い下手にないことがあります。
書いている「選ばれる理由」が、実際にお金を払った人の理由とずれているのです。
そのずれを埋めるいちばん確かな方法が、顧客インタビューです。
この記事では、中小企業が自社のお客様に「なぜうちに決めたのか」を聞き、その言葉をホームページに戻すまでの手順を、準備・質問・整理・反映・確かめ方の順にまとめました。
読み終えたときに、誰に何を聞き、サイトのどこを直すかが1つ決まっている状態を目指します。
顧客インタビューとは 買った人に決めるまでの経緯を聞く調査
顧客インタビューは、実際の顧客や見込み客に1対1で話を聞き、商品を探し始めた理由や比べた相手、最後に決めた決め手を掘り下げる調査です。
アンケートが「何人がそう答えたか」を数えるのに向いているのに対し、インタビューは「なぜそうなったか」の筋道をたどるのに向いています。
中小企業が使う場合、目的はもっと絞ってかまいません。
新しい商品を開発するための調査として構える必要はなく、すでに買ってくれた人が、何を見て、何に迷い、どの言葉で決めたのかを集めれば十分です。
その答えが、ホームページの見出し、選ばれる理由の並び順、よくある質問、問い合わせボタンの近くに置く一文の材料になります。
顧客インタビューの3つの種類
顧客インタビューは、目的によって大きく3つに分かれます。
1つ目は、まだ商品がない段階で、見込み客の困りごとを探る調査です。
新しい事業を始める前に、本当にお金を払ってでも解決したい悩みがあるかを確かめるために行います。
2つ目は、試作品や新しい案を見せて、反応を確かめる調査です。
3つ目が、この記事で扱う、すでに買った人に決めた経緯を聞く調査です。
中小企業のホームページを直すのに最も役立つのは、3つ目の顧客インタビューです。
商品はすでにあり、売れた実績もあるので、あとは「なぜ売れたのか」をお客様の言葉で確かめればよいからです。
アンケートとの違い
アンケートは、あらかじめ用意した選択肢の中から答えてもらう形が中心です。
選択肢を作るのは売り手なので、売り手が想定していない理由は最初から選べません。
「価格」「品質」「対応の早さ」「その他」と並べた時点で、答えはその4つのどれかに寄っていきます。
インタビューは、相手が自分の言葉で話した内容をそのまま拾えます。
「担当の方が、うちの事情を先に聞いてくれたから」のような、選択肢に並びそうにない理由が出てくるのはこちらです。
アンケートの集め方と活かし方については、アンケートの活用方法の記事で別に整理しています。
導入事例インタビューとの違い
同じ「お客様インタビュー」という名前でも、サイトに掲載する導入事例の取材とは目的が違います。
導入事例は、第三者の声を読み物として見せ、見込み客を安心させるためのコンテンツです。
顧客インタビューは、売り手が自分の思い込みを直すための調査です。
掲載を前提にすると、相手は人に見られてもよい答えを選びがちになります。
調査として聞くときは「サイトには載せません」と最初に伝えたほうが、迷った点や他社と比べた話が出やすくなります。
中小企業にとっての使い道
大企業の調査部門のように何十人も集める必要はありません。
年に数十件の契約がある会社なら、直近の契約者から5人に話を聞くだけで、ホームページに書くべき言葉の候補はかなり集まります。
何人に聞けば足りるかは、後の節で研究の数字とあわせて説明します。
顧客インタビューで分かることと分からないこと
顧客インタビューで分かるのは、少人数のお客様が、どんな順番で何を考えて決めたかという筋道です。
反対に、その理由が顧客全体の何割に当てはまるかという割合は、5人や10人の話からは分かりません。
割合を知りたいときは、インタビューで出た言葉を選択肢にしたアンケートを、あとから別に取ります。
もう1つ、インタビューで分かりにくいのは、お客様自身が気づいていない影響です。
ページのどこで手が止まったか、どのボタンが押されなかったかは、本人に聞くよりアクセス解析を見たほうが確かです。
顧客インタビューは、ほかの調べ方の代わりになるものではありません。
ほかの調べ方では拾えない「本人の言葉」を集める道具だと考えると、使いどころを間違えません。
| 調べ方 | 分かること | 中小企業での使いどころ |
|---|---|---|
| 顧客インタビュー | 決めるまでの経緯と、本人の言葉で語られた決め手 | ホームページの見出しや選ばれる理由を書き直す前 |
| アンケート | 用意した選択肢ごとの人数や割合 | インタビューで出た理由が、ほかの顧客にも当てはまるかの確認 |
| 導入事例の取材 | 掲載してよい成果や感想 | 見込み客に見せる読み物として、事例ページを作るとき |
| アクセス解析 | どのページが読まれ、どこで離れたか | インタビューで直した箇所が、読まれ方を変えたかの確認 |
| 営業担当の聞き取りメモ | 商談中に出た質問や反論 | インタビューの対象者選びや、質問を作るときの下書き |
売れた理由を勘違いしたままサイトを直すと起きること
商品が売れると、売り手は「やはりここが評価されたのだ」と考えます。
その「ここ」は、たいてい自分たちが力を入れた部分です。
技術に自信のある会社は技術が、価格を抑えた会社は価格が評価されたと思いやすいものです。
ところが、買った人に聞いてみると、売り手が想像していなかった理由が返ってくることがあります。
売り手が思う理由と買い手の理由はずれやすい
たとえば、ある工務店が「自然素材の家」を前面に出しているとします。
契約したお客様に話を聞くと、決め手は素材の話より、見学会で「予算の上限を先に聞かれ、その中でできることとできないことを最初に説明された」ことだった、という話が出てくることがあります。
この場合、お客様が欲しかったのは素材の良さより、予算を超えない安心でした。
サイトの見出しが素材の話だけだと、同じ不安を持つ人にはこの安心が伝わりません。
以下は、業種ごとに起こりやすいずれを想定例として並べたものです。
| 業種(想定例) | 売り手が思っている決め手 | 聞いてみると出てきやすい決め手 |
|---|---|---|
| 工務店 | 自然素材や性能の数値 | 予算の上限を先に聞き、できないことを最初に言ってくれた |
| 税理士事務所 | 節税の提案力 | 質問への返信がその日のうちに来ると知人から聞いた |
| 製造業の部品加工 | 精度と設備の新しさ | 少ない数でも断られず、図面が粗くても相談に乗ってくれた |
| 学習塾 | 合格実績 | 子どもが嫌がらずに通えそうだと、体験の帰りに本人が言った |
| 整体院 | 施術の技術 | 予約の変更がネットで簡単にでき、気兼ねがいらなかった |
どれも、売り手の強みが間違っているという話ではありません。
強みは本物でも、お客様が最後に背中を押されたのは別の点だったのです。
ずれたまま直すと、機能の説明ばかり増える
売れた理由を勘違いしたまま改善を続けると、直す方向も一緒にずれます。
「性能で選ばれている」と思っている会社は、問い合わせが減ると性能の説明を足します。
数値の表が増え、専門用語が増え、ページが長くなります。
ところが、お客様の決め手が「最初に不安を聞いてくれたこと」だった場合、性能の説明をいくら足しても、その不安を持つ人には響きません。
直せば直すほど、肝心の人に届く言葉が遠ざかっていくのです。
機能をお客様の得に言い換える作業は商品スペックをベネフィットに変換する記事でも扱いましたが、言い換える前に「どの得が本当に効いたのか」を確かめる工程がインタビューにあたります。
強みを語る言葉と、お客様が使う言葉は違う
決め手が売り手の想定どおりだった場合でも、インタビューには意味があります。
同じ強みでも、売り手とお客様では、それを表す言葉が違うことが多いからです。
売り手が「迅速な対応」と書いている点を、お客様は「問い合わせた日の夕方に電話が来た」と話します。
「高い施工品質」と書いている点を、お客様は「引き渡しから2年たっても扉の建て付けが狂わない」と話します。
見込み客の心に引っかかるのは、後者の言い方です。
前者はどの会社のサイトにも書いてある言葉なので、読み手の目は素通りしてしまいます。
インタビューは、強みを探す作業であると同時に、強みを言い表す言葉を探す作業でもあります。
値下げを考える前に聞く
問い合わせが減ったとき、真っ先に値下げを考える会社は少なくありません。
ところが、顧客インタビューをすると、価格が決め手だったと話すお客様は、売り手が思うほど多くないことがあります。
比べた相手の中で最も安かったわけではないのに選んだ、という人が5人中3人いれば、価格以外の何かが効いています。
その何かが分からないまま値下げをすると、利益が減るうえに、本当の決め手は相変わらず伝わらないままです。
値下げは、話を聞いて価格が決め手だと確かめてからでも遅くありません。
想定していなかった使い道が見つかることもある
インタビューをすると、売り手が想定していなかった使われ方が分かることもあります。
社内研修用に作った資料作成の代行サービスを、実際には「取引先に出す提案書を整えるため」に頼んでいる会社が多かった、というような発見です。
この場合、サイトに書くべき利用場面そのものが変わります。
見出しを「研修資料を作ります」から「取引先に出す提案書を整えます」に変えるだけで、検索してくる人も、問い合わせの内容も変わります。
同じ商品でも、何に使うものとして見せるかで、欲しいと思う人の範囲が入れ替わるのです。
人は自分が買った理由を正確には話せない
ここで1つ、聞き方の前提になる研究を紹介します。
「なぜ買ったのですか」と真正面から聞いても、正しい答えが返ってくるとは限らないという研究です。
理由を尋ねると、もっともらしい理由が返ってくる
1977年、ミシガン大学の心理学者リチャード・ニスベットとティモシー・ウィルソンは、米国心理学会の学術誌「サイコロジカル・レビュー」に、人が自分の判断の理由をどこまで説明できるかを調べた論文を発表しました。
論文の冒頭で、2人はこう結論を述べています。
「高次の認知過程には、直接の内省によるアクセスがほとんど、あるいはまったく無い可能性がある」(論文の要旨より訳出)。
平たく言えば、人は自分がなぜそう判断したのかを、心の中をのぞいて確かめているわけではありません。
理由を聞かれた人は、「こういう場面ではこういう理由で選ぶものだ」という一般的な思い込みをもとに答えている、と2人は述べています。
靴下の実験で、本当の理由に触れた人は1人もいなかった
論文の中で紹介されている実験の1つが、商業施設で行われた品定めの実験です。
実験では、同じ品質のナイロンの靴下4足を横一列に並べ、52人に「どれがいちばん品質がよいか」を選んでもらいました。
中身はまったく同じ靴下なのに、結果は並べた位置に強く左右されました。
論文によると「右端の靴下は、左端の靴下よりおよそ4対1の比率で好まれた」とされています。
そのうえで、選んだ理由を尋ねると「品物の位置に自分から触れた人は1人もいなかった」と書かれています。
人々は、編み目や透け感、手触りといった、靴下を選ぶ理由として「それらしい」点を挙げたのです。
実験者が位置の影響について直接尋ねても、ほぼ全員が否定したと論文は伝えています。
| 聞き方 | 返ってきやすい答え | サイトの改善に使えるか |
|---|---|---|
| 「なぜうちに決めたのですか」 | 「品質がよさそうだったから」「信頼できそうだったから」などの一般的な理由 | 抽象的すぎて、見出しや本文の材料になりにくい |
| 「ほかと比べて何がよかったですか」 | 売り手が言ってほしい長所に寄った答え | 相手が気を遣うため、本音が混ざりにくい |
| 「最初にうちを知ったのはいつ、どこでしたか」 | 日付や場所、きっかけになった出来事 | 集客の入口と、そのとき抱えていた悩みが分かる |
| 「申し込む前の晩、何を見ていましたか」 | 見比べていたページや、最後まで残った不安 | 決める直前に必要だった情報が分かる |
| 「申し込むと決めたとき、誰かに相談しましたか」 | 家族や上司の名前と、その人に説明した言葉 | お客様が周りを説得するときに使った言葉を、そのままサイトに使える |
聞くべきは理由より、そのときの行動
この研究から言えるのは、「理由」を直接聞くより、決めるまでの「行動」を具体的に聞いたほうが確かだということです。
いつ、どこで、何を見て、誰に相談し、最後に何を確かめたか。
行動の記憶は、理由の説明ほど一般論に置き換わりにくいからです。
理由は、聞き手が行動の並びから読み取ります。
「予算の話をしてくれたから」と本人が言わなくても、「見学会の帰りに、資金計画の紙を家族に見せた」という行動が出てくれば、予算の安心が効いていたと推測できます。
この「行動を聞いて、理由はこちらで読む」という姿勢が、この記事でいちばん伝えたい点です。
それでも本人の言葉には価値がある
ここまで読むと、お客様に話を聞いても意味がないのでは、と感じるかもしれません。
そうはなりません。
ニスベットとウィルソンも、人の説明がいつも間違っているとは言っておらず、説明が当たる場合もあると論文の中で述べています。
大事なのは、本人が語る「理由」をそのまま答えとして受け取らないことです。
語られた理由は、お客様がその選択を周りにどう説明しているかを示す材料として使えます。
たとえば「信頼できそうだったから」という答えは、決め手の説明としては弱いものです。
それでも、お客様が「信頼」という言葉で自分の選択をまとめていることは分かります。
そのうえで「信頼できそうだと思ったのは、何を見たときでしたか」と行動に引き戻せば、具体的な出来事にたどり着けます。
何人に聞けば足りるか 研究が示す目安
インタビューを始めようとすると、「何人に聞けば信用できる結果になるのか」が気になります。
これについては、商品開発の分野で古くから参照されている研究があります。
1人で33%、2人で51%、4人で72%
アビー・グリフィンとマサチューセッツ工科大学のジョン・ハウザーは、1993年に学術誌「マーケティング・サイエンス」に掲載された論文「顧客の声」で、顧客の要望を集めるのに何人へのインタビューが必要かを調べています。
その中で、事務機器の調査では、2時間のグループインタビュー8回と1時間の個別インタビュー9人分の記録から、合わせて230個の要望が見つかりました。
個別インタビューの記録を人数ごとに見ると、1人分の記録で230個のうち平均33%、2人分で51%、4人分で72%の要望が見つかっていました。
2時間のグループインタビュー1回で見つかったのは50%、2回で67%です。
個別インタビュー2人分がグループインタビュー1回分とほぼ同じ量の要望を拾っていたことになります。
結果を見た企業側の担当者は、「1時間の記録は、1対1でもグループでも、ほぼ同じ1時間分の記録になる」と話したと論文は伝えています。
| 聞いた人数(1時間の個別インタビュー) | 230個の要望のうち見つかった割合(平均) | 中小企業での読み方 |
|---|---|---|
| 1人 | 33% | 1人の話だけでサイトを直すと、残り3分の2を見落とす |
| 2人 | 51% | 半分が見えてくる。2人目で「1人目と同じ話」が出始める |
| 4人 | 72% | 見出しの候補を決めるには、ここまで聞きたい |
| グループ1回(2時間・数人) | 50% | 個別2人分とほぼ同じ。日程を合わせる手間を考えると個別が楽 |
| グループ2回 | 67% | 個別4人分(72%)にやや届かない |
グループで聞くより、1人ずつ聞くほうが中小企業向き
数人を集めて一度に話を聞くグループインタビューは、手間が省けるように見えます。
しかし、先ほどの数字では、2時間のグループ1回で見つかった要望は、1時間の個別インタビュー2人分とほぼ同じでした。
論文は、グループで話し合うことで生まれると期待される相乗効果は、このデータでは見られなかったとまとめています。
グループでは、ほかの参加者の前で話しにくいことが出にくくなる面もあります。
予算の上限や、家族の反対といった話は、1対1のほうが格段に出やすくなります。
日程を合わせる手間も考えると、中小企業はオンラインで1人ずつ、30〜45分で聞く形がいちばん続けやすい方法です。
1回の時間は30〜45分で足りる
論文で使われた個別インタビューは1回1時間でした。
ただ、ホームページの見出しを直す目的なら、聞く範囲を「知ってから決めるまで」に絞れるので、30〜45分で足ります。
時間を短くすると、相手が引き受けやすくなるという利点もあります。
1時間と言われると身構える人も、30分なら昼休みの後に時間を取ってくれることが多いものです。
話が盛り上がって延びそうなときは、約束の時刻に一度区切り、相手が続けてよいと言った場合だけ延ばします。
20人で9割、ただし中小企業は5人から始めてよい
同じ論文では、保冷バッグやピクニック用の入れ物など、持ち運び用品の見込み客30人にインタビューした別の調査も分析されています。
こちらでは、30人から見つかった要望のうち「20人へのインタビューで90%以上が見つかる」という結果でした。
論文のまとめでは、「20〜30人へのインタビューで、比較的均質な顧客層の要望の90%以上が見つかるはずだ」と述べられています。
ただし、これは新商品をつくるために、要望を漏れなく集めることが目的の数字です。
ホームページの見出しや選ばれる理由を直すのが目的なら、まず5人に聞き、何度も出てくる言葉を探すところから始めて問題ありません。
4人で7割という数字を思い出せば、5人なら主な理由の7割以上が見えてくると考えられます。
新しい話が出なくなったら止める
何人で止めるかの判断には、「飽和」という考え方が使えます。
新しい人に聞いても、もう新しい話が出てこない状態のことです。
研究者のグレッグ・ゲストらが2006年に学術誌「フィールド・メソッズ」に発表した論文では、60件の聞き取りを分析し、「飽和は最初の12件のインタビューの中で起きた」と報告しています。
この研究では、主な論点の土台は6件目の時点でもう現れていたとされています。
中小企業なら、5人に聞いて新しい話が出続けているうちは追加し、3人続けて同じ話しか出なくなったら一区切りにする、という運用で十分です。
お客様の層が大きく2つに分かれている会社は、層ごとに数えます。
法人と個人の両方に売っているなら、それぞれ5人ずつが目安です。
誰に聞くか 対象者の選び方
インタビューの質は、誰に聞くかでほぼ決まります。
話しやすい常連さんにばかり声をかけると、「昔から知っているから」という答えが並び、ホームページの改善には使いにくくなります。
サイトを直すために聞くなら、ここ数か月のうちに、ほかの会社と比べたうえで自社を選んだ人を中心に選びます。
最近買った人を中心にする
買ってから時間がたつほど、決めたときの細かい記憶は薄れていきます。
そのあとの利用体験で、記憶が上書きされることもあります。
目安は、契約や購入からおおむね3か月以内の人です。
見積もりを取った日や、見比べていたページの名前まで覚えている時期に聞くと、具体的な行動の話が出てきます。
ほかと比べて選んだ人を入れる
紹介で来て、ほかを検討せずに決めた人の話も貴重ですが、ホームページの改善に直接効くのは「検索して、比べて、選んだ人」の話です。
その人たちは、まさにサイトを見て判断した当事者だからです。
どの会社と比べたか、比べるときに何を基準にしたか、最後に何が残ったかを聞くと、サイトに足りない情報がはっきりします。
迷って申し込まなかった人にも1〜2人聞く
見積もりまで進んだのに申し込まなかった人は、声をかけにくい相手です。
それでも1〜2人に聞けると、選ばれなかった理由が分かります。
買った人の話は「何が効いたか」を教えてくれますが、買わなかった人の話は「何が足りなかったか」を教えてくれます。
断られることも多いので、依頼の段階で「営業のご連絡はしません」と明記しておくと応じてもらいやすくなります。
長く使っている人は別枠で聞く
何年も取引が続いているお客様の話は、続けて選ばれている理由を知るのに向いています。
ただし、最初に選んだときの理由とは混ざりやすいので、新しいお客様とは別に整理します。
サイトの見出しには新しいお客様の決め手を、事例やよくある質問には長いお客様の話を使う、という分け方が扱いやすいでしょう。
対象者は問い合わせの記録から探す
対象者を探すときは、記憶に頼らず、問い合わせや契約の記録から探します。
問い合わせフォームの「当社を知ったきっかけ」欄や、最初のメールの文面を見れば、検索から来た人か、紹介で来た人かがある程度分かります。
見積もりの記録に「他社と比較中」と書かれていれば、比べて選んだ人の候補です。
営業担当がいる会社なら、「最近の契約で、ほかの会社と迷っていたお客様は誰でしたか」と聞くだけで候補が挙がります。
候補を一覧にしたら、業種や地域、契約の大きさが偏りすぎていないかを見てから、声をかける順番を決めます。
| 対象者の種類 | 聞くと分かること | 次にすること |
|---|---|---|
| 3か月以内に買った人 | 決める直前に見ていた情報と、最後の不安 | 最優先で3〜4人に依頼する |
| ほかの会社と比べて選んだ人 | 比べた基準と、自社が残った理由 | 問い合わせ時のメモから、比較していたと分かる人を探す |
| 見積もり後に申し込まなかった人 | 選ばれなかった理由、サイトで分からなかった点 | 営業しないと約束したうえで1〜2人に依頼する |
| 紹介で来た人 | 紹介者がどんな言葉で自社を説明したか | 紹介者の説明の言葉を書き取り、見出しの候補に入れる |
| 何年も続いているお客様 | 続けて選んでいる理由 | 新しいお客様とは分けて整理し、事例やよくある質問に使う |
依頼の仕方と当日までの準備
対象者が決まったら、依頼の連絡を入れます。
中小企業の場合、普段やり取りしている担当者から直接お願いするのがいちばん受けてもらいやすい方法です。
聞く前に、自分たちの予想を書いておく
依頼を出す前に、社内で1つやっておきたいことがあります。
「お客様はたぶんこういう理由で選んでくれている」という予想を、紙に3つ書き出しておくことです。
社長と現場の担当者で、それぞれ別々に書くとなおよいでしょう。
インタビューが終わったあとで予想と結果を見比べると、社内の思い込みがどこにあったかがはっきり分かります。
予想を書かずに話を聞くと、人は聞いた話を「やはりそうだった」と自分の予想に合わせて受け取りがちです。
先に書いておけば、予想が外れたことを、外れたこととして受け止められます。
依頼の文面に入れること
依頼の文面には、目的、所要時間、話してほしい内容、記録の扱い、お礼の5点を入れます。
目的は「サービスの改善のため、決めていただくまでの経緯を伺いたい」程度の書き方で十分です。
「ホームページを直すため」と書くと、相手がサイトの感想を言わなければと身構えることがあるので、あえて細かく書きすぎないほうが話は自然に流れます。
所要時間は30〜45分と明記します。
相手の予定を押さえるお願いなので、終わる時刻を先に約束しておくと受けてもらいやすくなります。
依頼文の例
依頼文は長く書く必要はありません。
次のような短い文面で十分です。
「いつもお世話になっております。当社では、サービスとご案内の改善のため、ご契約いただいたお客様に、ご検討から決めていただくまでの経緯を伺っております。」
「オンラインで30分ほど、ご都合のよい日時にお時間をいただけないでしょうか。いただいたお話は改善のためにのみ使い、お名前を外に出すことはありません。」
「記録のため録音させていただけると助かりますが、ご希望でなければ録音はいたしません。ささやかですが、お礼の品をご用意しております。」
ポイントは、相手が判断に必要な情報を1通で全部受け取れるようにすることです。
所要時間、記録の扱い、お礼の3つが書かれていないと、相手は質問を返す手間が増え、そのまま返事が来なくなることがあります。
対面かオンラインか
対面でもオンラインでも、得られる話の量に大きな差はありません。
中小企業のお客様は忙しい経営者や会社員であることが多いので、移動のいらないオンラインのほうが日程を合わせやすいはずです。
ただし、店舗や現場がある業種では、お客様が来店したついでに15分だけ話を聞く、という方法も使えます。
時間が短い場合は、質問を「最初に知ったとき」「決める直前」「決めた後」の3つに絞ります。
お礼は用意する、ただし口コミの依頼とは切り離す
時間をもらう以上、お礼の品は用意したほうが礼儀にかないます。
商品券や自社サービスの割引など、相手にとって負担のない形を選びます。
注意したいのは、お礼と引き換えに口コミサイトやGoogleの口コミへの投稿をお願いしないことです。
投稿と特典を結びつけると、口コミサイトやGoogleマップの規約に触れるおそれがあり、口コミそのものが削除されることもあります。
インタビューはあくまで調査として依頼し、口コミのお願いをする場合は別の機会に、お礼とは切り離して行います。
| 時期 | やること | 忘れやすい点 |
|---|---|---|
| 2週間前 | 対象者を5〜7人選び、担当者から依頼する | 断られる前提で、必要な人数より2人多く声をかける |
| 1週間前 | 日時を確定し、所要時間と記録の扱いを伝える | 録音する場合は、この時点で同意をもらっておく |
| 3日前 | その人の契約内容と、問い合わせ時のやり取りを読み返す | 読み返した内容を、当日こちらから先に言わない |
| 前日 | 質問の流れを紙1枚にまとめ、聞き手と記録係を決める | 質問を増やしすぎない。主な質問は8つ程度まで |
| 当日の終了後 | その日のうちに記録を清書し、お礼を送る | 記憶が新しいうちに、相手の言い回しをそのまま残す |
個人情報と録音の扱い
インタビューでは、お客様の名前や会社名、家族構成や予算といった情報を聞くことになります。
小さな会社でも、こうした情報を扱う以上は個人情報保護法に沿った扱いが必要です。
利用目的を伝える
個人情報保護法の第21条第1項には、次のように定められています。
「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。」
インタビューの依頼文に「いただいたお話は、当社のサービスと案内の改善のためにのみ使います」と書いておけば、利用目的を本人に伝えたことになります。
自社のプライバシーポリシーに「サービス改善のための調査」が利用目的として入っているかも、この機会に確かめておきます。
録音や録画は事前に同意をもらう
正確に書き取るには録音があると便利です。
録音する場合は、依頼の段階で「記録のために録音させてください」と伝え、当日も始める前にもう一度確認します。
録音した音声は、清書が終わったら決めた期間で消すなど、保管の期間と担当者を社内で決めておきます。
サイトに載せるなら、別に許可を取る
インタビューで出た言葉がとてもよく、ホームページに「お客様の声」として載せたくなることがあります。
その場合は、調査の同意とは別に、掲載の許可を取り直します。
載せる文章を相手に見てもらい、名前を出すか、業種と地域だけにするかも本人に決めてもらいます。
許可なく載せると信頼を失いますし、相手が特定されれば個人情報の問題にもなります。
社内での記録の扱い
清書した記録を社内で共有するときは、氏名を伏せて「お客様A」「お客様B」と番号で呼びます。
整理や議論に必要なのは話の中身で、誰が言ったかは関係ないからです。
氏名と番号の対応表は、記録とは別の場所に、担当者だけが見られる形で保管します。
この一手間で、記録が社内に広く回っても、お客様の個人情報が不用意に広がることを防げます。
| 場面 | いま起きがちなこと | 次にすること |
|---|---|---|
| 依頼するとき | 使い道を伝えずに「お話を聞かせてください」とだけ送る | 依頼文に利用目的を1行書く |
| 録音するとき | 始まってから「録音してもいいですか」と聞く | 依頼の段階で同意をもらい、当日も再確認する |
| 記録を残すとき | 個人のパソコンに音声と清書が散らばる | 保存場所と保管の期間、担当者を決める |
| サイトに使うとき | 調査の同意だけで、発言をそのまま載せる | 載せる文面を見せて、掲載の許可を別に取る |
| 社内で共有するとき | 氏名入りの記録を全員に回す | 整理の段階で氏名を伏せ、番号で呼ぶ |
質問の組み立て方 決めた日までさかのぼって聞く
質問は、お客様が自社を知ってから申し込むまでを、時間の順にたどる形で組み立てます。
前の節で見たとおり、「なぜ」を聞くより「そのとき何をしたか」を聞いたほうが、本当の決め手に近づけるからです。
出来事を時間の順に並べると、相手も思い出しやすくなります。
1つ目の段階 最初に気になったとき
最初に聞くのは、商品やサービスを探し始めたきっかけです。
「最初に、こういうサービスが必要かもしれないと思ったのは、いつ頃のどんな場面でしたか」と聞きます。
ここで出てくるのは、お客様が抱えていた悩みの原型です。
「冬に浴室が寒くて、親が入浴を嫌がるようになった」のような具体的な場面が出てきたら、それがサイトの冒頭で呼びかけるべき場面の候補になります。
2つ目の段階 探したとき
次に、どうやって探したかを聞きます。
「そのとき、まず何をしましたか」「検索したなら、どんな言葉で調べましたか」と聞くと、集客の入口が分かります。
お客様が使った検索の言葉は、そのままキーワードの候補になります。
売り手が使う業界用語と、お客様が検索に打ち込む言葉が違っていることはよくあります。
3つ目の段階 比べたとき
3つ目は、ほかの選択肢と比べた段階です。
「ほかにも候補はありましたか」「最後まで残っていたのはどこでしたか」と聞きます。
比べた相手は、同業他社とは限りません。
自分でやる、今のまま我慢する、知り合いに頼む、といった選択肢と比べていたことも多いものです。
何と比べられていたかが分かると、サイトで答えるべき疑問が変わります。
4つ目の段階 決めたとき
4つ目は、申し込むと決めた瞬間です。
「申し込む前の日や当日、何を確かめましたか」「申し込むと決めたとき、誰かに相談しましたか」と聞きます。
家族や上司に相談した人には、「そのとき、どんなふうに説明しましたか」と続けます。
お客様が周りを説得するために使った言葉は、次に同じ立場で迷う人にもそのまま効く言葉です。
相手が言いにくいことを聞くとき
比べた会社の名前や、予算の上限、家族の反対といった話は、相手が言いにくいことがあります。
そういうときは、無理に聞き出そうとせず、「差し支えない範囲で」と前置きしてから聞きます。
比べた会社の名前を言いにくそうなら、名前は聞かずに「その会社のどこがよさそうに見えましたか」と中身だけを聞きます。
自社より他社のほうがよさそうに見えた点こそ、サイトで先回りして答えておくべき点です。
5つ目の段階 最後まで残った不安
最後に、申し込む直前まで残っていた不安を聞きます。
「申し込む直前まで、心配だったことはありましたか」「それはどうやって解消しましたか」と聞きます。
不安を電話で問い合わせて解消した、という答えが出たら、その質問と答えはサイトのよくある質問にそのまま載せる候補です。
電話で聞かなければ分からなかったことは、聞けなかった人にとっては離脱の理由になっているかもしれません。
質問は8つまでに絞る
聞きたいことを全部並べると、質問は20を超えます。
30〜45分のインタビューで20の質問をこなそうとすると、1つずつの掘り下げができず、浅い答えが並ぶだけになります。
主な質問は、上の5つの段階から1つか2つずつ選び、8つ程度にとどめます。
残りの時間は、相手の答えに対する「たとえば」「そのとき」の掘り下げに使います。
用意した質問を全部聞けなくても、掘り下げで具体的な出来事が出てきたなら、そのインタビューは成功です。
6つ目の段階 決めた後
余裕があれば、買った後の話も聞きます。
「実際に使ってみて、申し込む前の想像と違ったことはありましたか」と聞くと、サイトの説明と実際とのずれが分かります。
「思っていたより打ち合わせの回数が多かった」という答えが出たら、サイトの流れの説明に打ち合わせの回数を書き足します。
買った後の驚きを、買う前に知らせておくと、契約後の行き違いも減ります。
| 段階 | 聞く質問の例 | 答えをサイトのどこに使うか |
|---|---|---|
| 最初に気になったとき | 最初に必要だと思ったのは、いつ頃のどんな場面でしたか | ファーストビューで呼びかける悩みの場面 |
| 探したとき | まず何をしましたか。検索したならどんな言葉で調べましたか | 記事やページのキーワード、見出しの言葉 |
| 比べたとき | ほかに候補はありましたか。最後まで残ったのはどこでしたか | 比較表や「ほかの方法との違い」の節 |
| 決めたとき | 申し込む前に何を確かめましたか。誰かに相談しましたか | 選ばれる理由の1番目、問い合わせボタン近くの一文 |
| 最後まで残った不安 | 申し込む直前まで心配だったことは何ですか。どう解消しましたか | よくある質問、料金や流れのページ |
| 決めた後 | 実際に使ってみて、申し込む前の想像と違ったことはありますか | 導入後の流れの説明、事例ページ |
聞いてはいけない質問と、その言い換え
質問を作り慣れていないと、答えを決めつける聞き方が混ざります。
悪気がなくても、聞き手が期待している答えは相手に伝わります。
お客様はたいてい親切なので、期待に合わせた答えを返してくれます。
その結果、売り手の思い込みを確かめるだけのインタビューになってしまいます。
答えを誘導する質問
「対応が早いところがよかったですよね」のように、答えを含んだ質問は使いません。
聞かれた側は「はい」と言うのがいちばん楽だからです。
言い換えるなら、「問い合わせてから、最初の返事が来るまでのことを覚えていますか」と出来事を聞きます。
そこで「その日のうちに電話が来て驚いた」と相手から出てくれば、早さが本当に効いていたと分かります。
出てこなければ、早さは決め手に入っていなかったと考えます。
将来の仮定を聞く質問
「こういうサービスがあったら使いますか」「この値段なら申し込みますか」という質問も、答えが当てになりません。
人は未来の自分の行動を、実際よりも前向きに見積もりやすいからです。
「使うと思います」と答えた人が実際に申し込むとは限りません。
聞くなら、「前に似たようなサービスを探したことはありますか」「そのとき、どうしましたか」と過去の行動に置き換えます。
過去に実際にお金や時間を使ったかどうかのほうが、未来の約束よりずっと確かな手がかりになります。
機能の評価を聞く質問
「この機能はどう思いますか」「デザインは見やすかったですか」という質問は、相手を評論家にしてしまいます。
評論家の立場に立った人は、普段は気にしていない点まで考えて答えます。
その答えは、実際に買ったときの判断とは別物です。
サイトについて聞く場合も、「申し込む前に、どのページを見ましたか」「そのページで探していた情報は見つかりましたか」と、そのときの行動を聞きます。
1つの質問に2つを詰め込む質問
「価格と対応のどちらがよかったですか」のように、2つを同時に聞く質問も避けます。
相手はどちらかを選ばなければならないと感じ、本当の決め手がそのどちらでもなかった場合に言い出しにくくなります。
聞きたいことが2つあるなら、質問を2つに分けます。
| 避けたい質問 | 起きること | 言い換えた質問 |
|---|---|---|
| 対応が早いところがよかったですよね | 相手は気を遣って「はい」と答える | 問い合わせてから最初の返事が来るまでのことを覚えていますか |
| こういうサービスがあったら使いますか | 実際より前向きな答えが返る | 前に似たサービスを探したことはありますか。そのときどうしましたか |
| なぜうちに決めたのですか | 「信頼できそうだった」など一般論が返る | 申し込む前の日に、何を見て何を確かめましたか |
| このページは見やすかったですか | 相手が評論家になり、普段の判断と違う答えになる | 申し込む前にどのページを見ましたか。探していた情報はありましたか |
| 価格と対応のどちらがよかったですか | 選択肢の外にある本当の決め手が出てこない | 最後まで残った候補と比べて、決め手になったことを教えてください |
| 何か不満はありますか | その場では「特にありません」で終わる | 申し込む前の想像と、実際に違ったことはありましたか |
当日の進め方 話を引き出す聞き手の動き
質問を用意できたら、当日の進め方を決めます。
インタビューでいちばん多い失敗は、聞き手が話しすぎることです。
聞き手の発言は全体の2割程度にとどめ、残りはお客様に話してもらうつもりで臨みます。
冒頭の5分で伝えること
始めに、今日の目的と終わる時刻、録音の有無をもう一度伝えます。
続けて「正解はありませんし、うまく話そうとしなくて大丈夫です」「よくなかった点も、そのまま話してもらえると助かります」と伝えます。
この一言があるだけで、相手は褒めなければいけないという気持ちから少し解放されます。
最初の質問は、相手が答えやすい事実から入ります。
「お仕事ではどんなことを担当されているのですか」のような質問で、相手の話す調子をつかみます。
沈黙を待つ
質問をしたあと、相手が考え込んで黙ることがあります。
聞き手はつい言葉を足したくなりますが、ここは5秒ほど待ちます。
沈黙のあとに出てくる話は、用意してきた答えと違い、思い出しながら話した内容であることが多いからです。
待っても答えが出ないときは、「たとえば、そのときどこにいらっしゃいましたか」と場面を思い出す手がかりを渡します。
「たとえば」と「そのとき」で掘り下げる
相手が「安心できたので」と抽象的に答えたら、そこで次の質問に移らずに掘り下げます。
「安心できたというのは、たとえばどんな場面でしたか」「そのとき、何を見て安心したのですか」と続けます。
抽象的な言葉の奥にある具体的な出来事にたどり着くまで、2〜3回は掘り下げるつもりで聞きます。
サイトに使えるのは、「安心」という言葉より、安心させた出来事のほうです。
掘り下げに使う短い言葉
掘り下げの質問は、長くする必要はありません。
「具体的には」「それで、どうされましたか」「ほかには何かありましたか」「そのとき、どう感じましたか」の4つを使い回せば十分です。
短い言葉で促すほうが、聞き手の考えが質問に入り込まず、相手の話の流れを邪魔しません。
相手が話した言葉をそのまま繰り返して「資金計画の紙、ですか」と返すだけでも、相手は続きを話してくれます。
相手の言葉をそのまま書き取る
記録係は、相手の言葉を要約せず、言い回しのまま書き取ります。
「対応が丁寧」と要約してしまうと、相手が実際に言った「見積もりの紙に、できないことまで書いてあった」という言葉が消えてしまいます。
サイトの見出しや本文で効くのは、要約された言葉よりも、お客様自身の言い回しです。
同じ悩みを持つ人は、同じような言葉で悩みを抱えているからです。
聞き手と記録係は分ける
可能なら、聞き手と記録係を2人で分担します。
1人で聞きながら書くと、書くことに気を取られて掘り下げが浅くなります。
前述のグリフィンとハウザーの論文には、同じ記録を7人に読ませて要望を拾わせた分析があります。
1人が拾えた要望は平均54%、人によって45%から68%の幅がありました。
論文は「経歴の違う読み手は、顧客の言葉を違うふうに解釈する」と述べ、まとめでは記録の読み解きに4〜6人が当たるべきだとしています。
中小企業なら、社長と現場の担当者の2人で記録を読み合わせるだけでも、1人では見落とす言葉が拾えます。
オンラインで聞くときの注意
オンラインで聞く場合は、始める前に音声がきちんと届いているかを確かめます。
途中で音声が途切れると、相手の話の流れが止まり、思い出しかけていた記憶が戻ってこないことがあります。
画面越しだと相づちが伝わりにくいので、対面のときより少し大きくうなずき、短い声の相づちを意識して入れます。
記録係はカメラを切っておくと、相手が見られている感覚を持たずに済みます。
相手が画面を共有して「このページを見ていました」と見せてくれることもあるので、画面共有の方法も事前に案内しておくと便利です。
終わったあとの一言
インタビューが終わったら、その日のうちにお礼の連絡を入れます。
お礼の文面に「伺ったお話のうち、〇〇の点はさっそく案内の改善に使わせていただきます」と1つだけ具体的に書くと、相手は話してよかったと感じてくれます。
実際にサイトを直したら、もう一度「おかげさまでこう変えました」と知らせると、次に別のお願いをするときにも応じてもらいやすくなります。
| 時間の目安(40分の場合) | やること | 聞き手が気をつけること |
|---|---|---|
| 最初の5分 | 目的・終了時刻・録音の確認と、答えやすい質問 | 「正解はない」「よくない点も歓迎」と伝える |
| 5〜15分 | 最初に気になったときと、探したときの話 | 日付や場所など、具体的な出来事を聞く |
| 15〜25分 | 比べたときと、決めたときの話 | 比べた相手には同業以外の選択肢も含める |
| 25〜35分 | 最後まで残った不安と、決めた後の話 | 抽象的な答えは「たとえば」で2〜3回掘り下げる |
| 最後の5分 | 言い残したことの確認と、お礼 | 「最後に、ほかの人に紹介するとしたら何と言いますか」と聞く |
最後の「ほかの人に紹介するとしたら、何と言いますか」という質問は、特に役に立ちます。
お客様が自社をひとことで説明するときの言葉が、そのまま出てくるからです。
聞いた内容の整理 事実と解釈を分ける
インタビューが終わったら、記録を整理します。
整理で大事なのは、相手が話した事実と、聞き手がそこから考えた解釈を分けて書くことです。
2つが混ざると、あとで読み返したときに、どこまでが相手の話で、どこからが自分たちの思い込みなのか分からなくなります。
1件ごとに3列で書き出す
記録は、1件の話ごとに「相手が話した事実」「そこから考えたこと」「サイトでの使い道」の3列に書き出します。
たとえば、相手が「見学会の帰りに、資金計画の紙を家に持って帰って妻に見せた」と話したとします。
これが事実です。
そこから「予算の見通しが立つことが、家族を説得する材料になった」と考えるのが解釈です。
使い道は「トップページに、資金計画を最初に一緒に作ることを書く」となります。
| 相手が話した事実(言い回しのまま) | そこから考えたこと | サイトでの使い道 |
|---|---|---|
| 見学会の帰りに、資金計画の紙を家に持って帰って家族に見せた | 予算の見通しが、家族を説得する材料になった | トップページで、資金計画を最初に一緒に作ることを伝える |
| 3社に見積もりを頼んで、最初に返事が来たのがここだった | 返事の早さが、比べる段階で差になった | 問い合わせボタンの近くに、返事が来るまでの目安を書く |
| ほかの会社は図面がないと見積もれないと言われた | 図面がなくても相談できる点が、他社との違いになった | 選ばれる理由の1番目に「図面がなくても相談できる」を置く |
| 料金のページに、追加でかかる費用まで書いてあった | あとから費用が増える不安が、申し込みを止めていた | 料金ページの見出しの直下に、追加費用の有無を書く |
| 上司には「ほかより手間がかからない」と説明した | 決裁者を説得する言葉は、手間の少なさだった | 法人向けページの見出しに、社内の手間が減る点を入れる |
付箋や表計算で並べてもよい
整理の道具は何でもかまいません。
発言を1つずつ付箋に書いて壁に貼り、似た話を近くに寄せていく方法は、社内の何人かで一緒に作業するときに向いています。
表計算ソフトを使うなら、1行に1つの発言を書き、列に「お客様の番号」「段階」「事実」「解釈」「使い道」を並べます。
どちらの方法でも、1つの付箋や1つの行には1つの発言だけを書くのが決まりです。
複数の話を1つにまとめて書くと、あとで似た話を寄せるときに分けられなくなります。
同じ言葉が何人から出たかを数える
5人分の整理が終わったら、似た話をまとめ、何人から出たかを数えます。
5人中3人以上から出た話は、ほかのお客様にも共通する決め手である可能性が高いと考えられます。
1人からしか出なかった話も捨てずに残しておき、次のインタビューで同じ話が出るかを確かめます。
数えるときは、言葉が違っても中身が同じ話はまとめます。
「返事が早かった」と「すぐ電話が来た」は、同じ話として数えます。
決め手を1つに絞る基準
何度も出てくる話が2つ以上あるときは、どれをサイトに先に置くかを決めなければなりません。
迷ったら、次の順で考えます。
まず、出てきた人数が多いもの。
次に、他社のサイトにはまだ書かれていないもの。
最後に、自社が今後も守り続けられるものです。
「返事が早い」が決め手でも、繁忙期に守れないなら、見出しに掲げると約束違反になります。
守れる約束だけを、お客様の言葉で書きます。
聞く前の予想と答え合わせをする
整理が終わったら、依頼の前に書いておいた予想を取り出します。
予想した3つの決め手のうち、実際にお客様から出てきたものに丸をつけます。
3つとも当たっていれば、自社の強みの見立ては合っていて、あとは言葉を直すだけです。
1つも当たっていなければ、サイトの見出しから選ばれる理由まで、組み立てを見直す必要があります。
この答え合わせの結果は、社内で共有しておくと、次に新しいサービスの案内を作るときの戒めになります。
想定していなかった話に印をつける
整理の中で、売り手が想定していなかった話には印をつけます。
ここに、サイトを大きく変える手がかりがあることが多いからです。
想定どおりの話は、すでにサイトに書かれていることがほとんどです。
想定外の話は、まだどこにも書かれていない、つまり伸びしろが残っている話です。
表に出ていない望みを言葉にする考え方は、潜在ニーズの記事でも詳しく扱っています。
整理は社長1人で抱えない
整理の作業は、社長1人で進めないほうが安全です。
社長は自社の強みをいちばんよく知っている分、自分の思い込みに合う話を拾いやすくなります。
先ほどの論文でも、調査の専門家が拾えた要望は7人の中で少ない側にあり、実際に商品を作る開発チームのほうが多く拾っていました。
論文はその理由の仮説として、専門家は「何が顧客の要望か」について先入観を持っていて、意外な発言を見落とすのかもしれない、と書いています。
現場の担当者や、普段お客様と電話でやり取りしている事務の担当者に記録を読んでもらうと、社長が素通りした言葉に気づいてくれることがあります。
ホームページのどこに反映するか
整理が終わったら、いよいよサイトに戻します。
聞いた話を全部載せようとすると、ページが長くなるだけで効果がぼやけます。
まずは、5人中3人以上から出た決め手を1つ選び、それを置く場所を1か所決めます。
ファーストビューの見出し
いちばん効果が大きいのは、トップページを開いて最初に見える場所の見出しです。
ここには、お客様が「最初に気になったとき」に抱えていた悩みの場面か、「決めたとき」の決め手を置きます。
お客様の言い回しをそのまま使える場合は、なるべく手を加えずに使います。
「図面がなくても、写真1枚から相談できます」のように、お客様が実際に助かった出来事を言葉にすると、同じ状況の人が自分のことだと気づきやすくなります。
選ばれる理由の並び順
中小企業のサイトの大半には「選ばれる理由」の欄があります。
そこに並んでいる項目の順番を、インタビューで多く出た順に入れ替えます。
売り手が自信を持っている技術の話が1番目にあり、お客様が実際に決め手にした対応の話が4番目にある、という並びはよく見かけます。
項目の中身は変えずに順番を入れ替えるだけでも、読まれ方は変わります。
選ばれる理由をすぐに答えられない状態がどんな影響を生むかは、選ばれる理由の記事で詳しく書きました。
よくある質問
「最後まで残った不安」で出てきた話は、よくある質問にそのまま載せます。
お客様が電話やメールで確かめてから申し込んだ内容は、確かめられなかった人にとっての離脱の理由です。
質問の文も、お客様の言い回しに近い形で書きます。
「追加料金はかかりますか」と書くより、「見積もりのあとで金額が増えることはありますか」と書いたほうが、実際の不安に近い言葉になります。
問い合わせボタンの近く
問い合わせボタンのすぐ上や横は、申し込む直前の不安を消すための場所です。
インタビューで「申し込む前に確かめたこと」として出てきた話を、ここに1行で置きます。
「返事は翌営業日までにお送りします」「相談だけで終わっても、こちらからの営業はしません」などが典型です。
ボタンの近くに置く一文の書き方は、LP改善の順番の記事でも触れています。
事例ページに使うとき
インタビューの中で、そのまま事例として紹介したくなる話が出てくることがあります。
その場合は、調査とは別に事例の取材を改めてお願いし、掲載の許可を取ります。
事例ページでは、インタビューの整理で分かった「決めるまでの流れ」を、そのまま記事の骨組みに使えます。
最初に困っていた場面、比べた選択肢、決め手、使ってみてどうだったか、の順に書くと、同じ状況の見込み客が自分に重ねて読みやすくなります。
サービスページの冒頭
トップページの次に手を入れたいのが、サービスごとの説明ページの冒頭です。
検索から直接サービスページに入ってくる人は、トップページを見ていません。
そのため、サービスページの最初の段落にも、そのサービスを選んだお客様が最初に抱えていた場面を書きます。
サービスが複数ある会社は、サービスごとに別のお客様に話を聞くと、それぞれのページに合った言葉が見つかります。
広告やチラシにも同じ言葉を使う
インタビューで見つかった言葉は、ホームページだけで使うのはもったいない材料です。
検索広告の見出し、チラシの見出し、営業の最初の説明にも、同じ言葉を使えます。
入口の広告とホームページで同じ言葉を使うと、広告を見て来た人が「さっき見た話の続きだ」と気づき、読み進めてもらいやすくなります。
反対に、広告では価格を、サイトでは技術を前に出していると、来た人は話が違うと感じて離れていきます。
| インタビューで出た話の種類 | 置く場所 | 次にすること |
|---|---|---|
| 最初に気になった場面 | トップページの最初の見出し | お客様の言い回しのまま、場面を1文で書く |
| 決めたときの決め手 | 選ばれる理由の1番目 | 今の並び順を、インタビューで多く出た順に入れ替える |
| 最後まで残った不安 | よくある質問、料金ページ | 不安をお客様の言葉で質問の形にして載せる |
| 申し込む前に確かめたこと | 問い合わせボタンのすぐ近く | 確かめた内容への答えを1行で置く |
| 周りを説得した言葉 | 法人向けページ、資料請求のページ | 決裁者に見せる前提で、説得に使われた言葉を見出しに使う |
| 検索に使った言葉 | 記事やサービスページのタイトル | 業界用語をお客様の言葉に置き換える |
反映したあとの確かめ方
サイトを直したら、それが効いたかを確かめます。
中小企業のサイトは月の問い合わせが数件から数十件のことが多く、件数だけを見ても、偶然の増減と区別がつきにくいものです。
そこで、件数とあわせて、問い合わせの中身がどう変わったかを見ます。
問い合わせの文面が変わったかを見る
見出しにお客様の決め手を置いたあと、問い合わせのメールやフォームの文面に、その言葉が出てくるようになったかを確かめます。
「図面がなくても相談できると書いてあったので」という一文が問い合わせに書かれるようになれば、その見出しが読まれ、行動のきっかけになったと分かります。
電話の問い合わせなら、受けた担当者に「何を見て電話をくださいましたか」と一言聞いてもらい、答えを記録してもらいます。
件数が少なくても、文面の変化は1件目から見えます。
比べる期間をそろえる
件数を比べるときは、直す前と直した後で、同じ長さの期間を比べます。
季節によって問い合わせが増減する業種なら、前の月と比べるより、前の年の同じ月と比べたほうが確かです。
直した日をメモしておき、その前後8週間ずつを並べるのが1つの目安です。
同じ時期に広告を増やしたり、チラシを配ったりした場合は、それも一緒に記録しておきます。
あとで「件数が増えたのは見出しのおかげか、チラシのおかげか」を見分ける手がかりになります。
件数が少ないときは、2案の比べ方にこだわらない
ページの2つの案を同時に出して比べる方法は、月の訪問者数が少ないサイトでは結論が出るまでに時間がかかりすぎます。
中小企業のサイトでは、1か所を直して、問い合わせの文面と件数の両方を2か月ほど見る、という確かめ方のほうが現実的です。
件数が少ない中での確かめ方は、LP改善の順番の記事で数字を使って説明しています。
アクセス解析で見る場所
アクセス解析を使っているなら、直したページの読まれ方も確かめます。
見る場所は多くなくてかまいません。
直したページから問い合わせページへ進んだ人の数と、直したページでの滞在時間の2つを、直す前と後で比べます。
見出しを直したことで、問い合わせページへ進む人が増えていれば、見出しの言葉が次の行動を後押ししていると考えられます。
滞在時間だけが伸びて問い合わせが増えない場合は、読まれてはいるものの、最後の一押しが足りない状態です。
その場合は、問い合わせボタンの近くに置く一文を、インタビューで出た「申し込む前に確かめたこと」に差し替えてみます。
直した日と中身を記録しておく
確かめる作業で意外に抜けるのが、いつ何を直したかの記録です。
直した日付、直したページ、直す前の文と直した後の文を、1行ずつ表に残しておきます。
この記録があれば、2か月後に問い合わせの変化を見たとき、どの変更が効いたのかをたどれます。
サイトの更新を外部の制作会社に頼んでいる場合も、依頼した日と反映された日の両方を書いておきます。
次のインタビューにつなげる
確かめた結果は、次のインタビューの材料になります。
問い合わせが増えたのに契約につながらないなら、次は「問い合わせたあとで申し込まなかった人」に話を聞きます。
問い合わせの文面に新しい言葉が出てきたなら、その言葉を使った人に、次のインタビューをお願いしてみます。
インタビューは1回きりで終えず、半年に1回ほど、5人ずつ続けるくらいがちょうどよい頻度です。
お客様の悩みは、景気や季節、競合の動きで少しずつ変わっていくからです。
| 直した後の状態 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 問い合わせの文面に、見出しの言葉が出てくる | 見出しが読まれ、行動のきっかけになっている | 同じ決め手を、よくある質問やほかのページにも広げる |
| 件数は増えたが、契約が増えない | 見出しに惹かれた人と、実際に合う人がずれている | 問い合わせ後に申し込まなかった人に話を聞く |
| 件数も文面も変わらない | 直した場所が読まれていないか、決め手の選び方がずれている | 置く場所をトップページの最初の見出しに移すか、整理をやり直す |
| 想定外の層からの問い合わせが増えた | お客様の言葉が、売り手の想定より広い人に届いている | その層の人に次のインタビューを依頼する |
| 電話で同じ質問を何度も受ける | サイトで答えられていない不安が残っている | その質問と答えを、お客様の言い回しでよくある質問に載せる |
業種別に見る 聞き方と反映のしかたの例
ここからは、業種ごとに、誰に何を聞き、どこに反映するかの例を挙げます。
どれも説明のための想定例で、特定の会社の話ではありません。
自社に近い業種の例を参考に、質問の言葉を自社用に置き換えてください。
工務店やリフォーム会社
住まいの工事は、家族で相談して決めることがほとんどです。
インタビューでは、契約した本人だけでなく、家族の誰が反対し、何で納得したかを聞くと、決め手の全体が見えます。
「最初に工事を考えたのは、どんな出来事がきっかけでしたか」「ご家族に話したとき、最初に何と言われましたか」と聞きます。
「夫は金額を、母は工事中に家にいられるかを心配していた」という話が出たら、サイトには予算の決め方と、工事中の暮らし方の両方を書く必要があります。
どちらか片方しか書いていないと、家族の誰かを説得しきれずに話が止まります。
税理士や社会保険労務士などの士業
士業は、サービスの中身が外から見えにくく、比べる基準を見込み客が持っていないことが多い業種です。
そのため、お客様が何を手がかりに選んだかを聞くと、売り手が思ってもみない基準が出てきます。
「前の先生から替えようと思ったのは、どんな出来事があったときですか」「替える先を探すとき、何を見て判断しましたか」と聞きます。
「前の先生は質問への返事が1週間後だった」という話が複数の人から出たら、選ばれる理由の1番目は専門性の話より、返事の目安の話になります。
士業のサイトは資格や経歴の説明が中心になりがちですが、お客様が比べていたのは、やり取りのしやすさだったということはよくあります。
製造業の部品加工や試作
法人向けの取引では、窓口の担当者と、最後に決める人が違います。
インタビューは窓口の担当者にお願いすることが多いので、「社内でどう説明して、決裁を取りましたか」と必ず聞きます。
担当者が上司に説明した言葉は、そのまま法人向けページの見出しに使える材料です。
「ほかの会社は数が少ないと断ってきたが、ここは1個から受けてくれた」という話が出たら、それは少量の試作を探している別の担当者にも効く言葉です。
設備の一覧や精度の数値は、見比べる段階では必要ですが、最初に目に入る見出しには、担当者が困っていた場面を書いたほうが反応が取りやすくなります。
学習塾や習い事の教室
塾や教室では、お金を払う親と、通う子どもの両方が決める側にいます。
インタビューは親にお願いしつつ、「お子さんは体験のあと、何と言っていましたか」と子どもの反応も聞きます。
「体験の帰りに、子どもが自分から次はいつ行くのかと聞いてきた」という話が出たら、親が最後に背中を押されたのは子どもの様子だったと分かります。
この場合、合格実績の数字より、体験授業の様子や、子どもが通い続けられる理由を伝える写真と文章のほうが、親の決め手に近い情報になります。
法人向けのサービス業
研修や清掃、システムの保守など、法人向けのサービス業では、最初に検索した人と、契約書に判を押す人が違うことがほとんどです。
インタビューは窓口になった担当者にお願いし、「社内で何社の中から選び、誰がどの順番で決めましたか」と、決裁の流れそのものを聞きます。
「部長は実績の社名を気にし、経理は解約の条件を気にしていた」という話が出たら、サイトには導入の実績と契約の条件の両方を、見つけやすい場所に置く必要があります。
担当者がひとりで決められない以上、担当者が社内で説明しやすい材料をサイトにそろえておくことが、問い合わせを契約に変える近道です。
整体院やサロンなどの店舗
店舗の業種では、来店した日のついでに10〜15分だけ話を聞く方法が使えます。
「このお店を最初に知ったのはどこでしたか」「予約するまでに、ほかのお店も見ましたか」「予約するとき、迷ったことはありましたか」の3つに絞ります。
「初回に何をされるのか分からなくて、予約するまで2週間迷った」という話が出たら、初回の流れを写真つきで説明するページが足りていないと分かります。
技術の説明を増やすより、初めての人の不安を先回りして消すほうが、予約の数に直接つながります。
飲食店
飲食店では、予約や来店のきっかけを、会計のときに一言だけ聞く方法が手軽です。
ただ、それだけでは決め手までは分からないので、常連になりかけている人に、改めて10分ほど話を聞かせてもらいます。
「最初に来ようと思ったのは、どこで何を見たときでしたか」「2回目に来ようと思ったのは、どうしてですか」と聞きます。
「写真で見た個室が、子ども連れでも気兼ねしなさそうだった」という話が出たら、料理の写真と同じくらい、席の写真と説明が大事だと分かります。
| 業種(想定例) | 必ず聞きたい質問 | 反映する場所 |
|---|---|---|
| 工務店・リフォーム | ご家族に話したとき、最初に何と言われましたか | 予算の決め方と、工事中の暮らし方の説明 |
| 士業 | 前の先生から替えようと思ったのは、どんな出来事のときですか | 選ばれる理由の1番目と、返事の目安 |
| 製造業の部品加工 | 社内でどう説明して決裁を取りましたか | 法人向けページの見出し |
| 学習塾・教室 | お子さんは体験のあと、何と言っていましたか | 体験授業の様子を伝える写真と文章 |
| 整体院・サロン | 予約するとき、迷ったことはありましたか | 初回の流れを説明するページ |
顧客インタビューでよくある失敗
最後に、中小企業が顧客インタビューで陥りやすい失敗をまとめます。
どれも、やる前に知っていれば避けられるものです。
仲のよいお客様にだけ聞く
頼みやすい相手から声をかけると、長い付き合いのお客様や、もともと自社を気に入っている人ばかりが集まります。
その人たちの話は温かいのですが、サイトを見て比べて選んだ人の話とは中身が違います。
対象者を選ぶときは、最近の契約者の一覧から、比べて選んだ人を先に探します。
聞き手が説明を始めてしまう
お客様が自社のサービスを誤解していると、聞き手はつい訂正したくなります。
ところが、その誤解こそがサイトで伝わっていない点を示す手がかりです。
インタビュー中は訂正せずに「そう思われたのは、どこかで見たからですか」と聞き、誤解の出どころを探ります。
説明は、インタビューが終わってからで間に合います。
要約したメモしか残さない
「対応がよかった」「価格が妥当」といった要約メモだけでは、サイトに使える言葉が残りません。
録音か、言い回しのままの記録を必ず残します。
見出しの材料になるのは、要約前の生の言葉です。
聞いただけで終わる
いちばん多いのは、インタビューをして満足し、サイトに何も反映しないまま終わる失敗です。
話を聞くと、お客様の顔が浮かび、何かが分かった気持ちになります。
それでもサイトが変わらなければ、次に訪れる見込み客には何も伝わりません。
インタビューの日程を決めるときに、整理と反映の日程も一緒に決めておくと、聞きっぱなしを防げます。
1人の印象的な話でサイトを直してしまう
インタビューをしていると、1人のお客様の話がとても印象に残ることがあります。
熱のこもった話ほど、すぐにサイトに使いたくなります。
ただ、その話がほかのお客様にも当てはまるかは、まだ分かりません。
1人から出た話は印をつけて残しておき、ほかの人からも同じ話が出たときに初めてサイトに使います。
結果を社内で共有しない
インタビューの結果を、聞いた人だけが知っている状態も避けたい失敗です。
お客様の言葉は、サイトだけでなく、電話の受け答えや見積もりの説明にも使えます。
整理した表を社内で回し、営業や事務の担当者にも読んでもらうと、会社全体の説明の言葉がそろっていきます。
| よくある失敗 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 仲のよいお客様にだけ聞く | 温かい話ばかりで、比べて選んだ理由が出てこない | 最近の契約者から、比べて選んだ人を先に選ぶ |
| 聞き手が説明を始める | 誤解の出どころが分からないまま終わる | 訂正せず、そう思った理由を聞く |
| 要約メモしか残さない | 見出しに使える生の言葉が消える | 録音か、言い回しのままの記録を残す |
| 1人の話でサイトを直す | その人だけの事情に合わせた見出しになる | 5人中3人以上から出た話を優先する |
| 聞いただけで終わる | サイトが変わらず、見込み客に何も届かない | インタビューの日程と一緒に、反映の日程も決める |
よくある質問
Q1. 顧客インタビューは何人に聞けば十分ですか
A. ホームページの言葉を直すのが目的なら、まず5人から始めてください。
グリフィンとハウザーの論文では、1時間の個別インタビュー4人分で、見つかった要望の平均72%が拾えていました。
5人に聞いて新しい話が出続けるなら追加し、3人続けて同じ話しか出なくなったら一区切りにします。
法人と個人のように、お客様の層がはっきり分かれている場合は、層ごとに5人ずつを目安にします。
新商品の開発のように、要望を漏れなく集めたいときは、論文が示す20〜30人を目指します。
Q2. お客様に聞かなくても、AIに聞けば分かりませんか
A. AIは、世の中で一般的に言われている買う理由をまとめるのは得意です。
ただ、自社のお客様が、自社のサイトのどこを見て、何に迷い、最後に何で決めたかは、そのお客様にしか分かりません。
AIは質問の下書きを作ったり、書き起こした記録を整理したりする場面で使い、決め手そのものは実際のお客様の言葉から取ります。
AIで顧客の悩みを調べる方法の限界は、こちらの記事でも扱っています。
Q3. 社長が自分で聞いてもよいですか
A. 社長が聞くこと自体は問題ありません。
ただ、社長が相手だとお客様は遠慮して、よくなかった点を言いにくくなります。
可能なら、そのお客様の担当ではない社員が聞き手になり、社長は記録係に回るか、録音を後で聞く形にすると、本音が出やすくなります。
社員が少なく社長が聞くしかない場合は、冒頭で「よくなかった点を聞くのがいちばん助かります」とはっきり伝えます。
そのうえで、相手が言いよどんだときほど、口を挟まずに待つことを意識します。
Q4. インタビューを断られたらどうすればよいですか
A. 断られるのは珍しいことではないので、必要な人数より2人ほど多く声をかけておきます。
30分の時間が取れない人には、メールで3問だけ答えてもらう方法もあります。
その場合も、「なぜ選んだか」より「申し込む前に何を確かめたか」のように、行動を聞く質問にします。
メールの回答は話し言葉より短くまとまりがちなので、気になる答えがあれば「もう少しだけ教えてください」と1往復だけ追加で聞きます。
断られたお客様には、無理に重ねてお願いせず、これまでどおりのお付き合いを続けます。
Q5. アンケートとインタビューはどちらを先にやるべきですか
A. 中小企業では、インタビューを先にやることをおすすめします。
インタビューで出てきたお客様の言葉を選択肢にしてアンケートを作れば、その理由がほかのお客様にもどれくらい当てはまるかを数で確かめられます。
先にアンケートを作ると、売り手が思いつく選択肢しか並ばず、想定外の理由を拾えません。
インタビューで5人から出た話をもとに選択肢を作り、契約時のアンケートに1問だけ足す、という形なら負担も小さく済みます。
回答が数十件たまれば、インタビューで見つけた決め手が、どれくらいのお客様に当てはまるかが見えてきます。
まとめ
顧客インタビューは、実際に買ったお客様に、決めるまでの経緯を聞く調査です。
売り手が思っている「選ばれる理由」と、お客様の決め手は、ずれていることがよくあります。
1977年の研究が示したとおり、人は自分が選んだ理由を正確には話せないので、「なぜ」より「そのとき何をしたか」を聞きます。
人数は、まず最近の契約者5人から始めれば十分です。
研究では、1時間の個別インタビュー4人分で、要望の平均72%が見つかっていました。
聞いた話は、相手の言い回しのまま書き取り、事実と解釈を分けて整理します。
5人中3人以上から出た決め手を1つ選び、トップページの最初の見出しか、選ばれる理由の1番目に置きます。
直したあとは、問い合わせの文面に、その言葉が出てくるようになったかを確かめます。
文章をうまく書き直す前に、お客様が実際に使った言葉を集めることが、サイトの改善でいちばん遠回りに見えて確かな近道です。
今日からできる点検
インタビューの日程を決める前に、今日のうちに確かめられることを表にしました。
1つでも「いいえ」があれば、そこが最初に手をつける場所です。
| 点検すること | 確かめ方 | 「いいえ」だったときに次にすること |
|---|---|---|
| トップページの最初の見出しは、お客様の言葉で書かれているか | 見出しを読み、お客様が実際に口にしそうな言葉か確かめる | 最近の契約者5人のインタビューを依頼する |
| 選ばれる理由の1番目は、お客様が最も多く挙げる決め手か | 直近の問い合わせメールで、何に触れているかを数える | インタビューで多く出た順に並べ替える |
| 電話で何度も受ける質問が、よくある質問に載っているか | 電話を受ける担当者に、最近よく聞かれることを3つ聞く | その質問を、お客様の言い回しでよくある質問に載せる |
| 問い合わせボタンの近くに、申し込む直前の不安への答えがあるか | ボタンの周りを読み、返事の目安や営業の有無が書かれているか見る | インタビューで出た「確かめたこと」を1行で置く |
| 最近3か月の契約者の一覧があるか | 顧客管理の表やメールから、契約日と比較検討の有無を拾う | 一覧を作り、比べて選んだ人に印をつける |
| インタビューの利用目的を伝える文面があるか | 依頼文とプライバシーポリシーに、調査の目的が書かれているか確かめる | 依頼文に利用目的を1行足す |
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