市場調査を自分でやろうとして検索すると、定量調査と定性調査の違い、ネットリサーチ、グループインタビューといった言葉が並びます。どれも調査会社に頼む前提で書かれていて、社内の誰かが空き時間に進める場面は想定されていません。
この記事は、中小企業の経営者と、市場調査を任されたWeb担当者に向けて書きました。少ない予算で、自分の手でできる調べ方を、お金のかからない順に5つ並べます。そのうえで、調べた結果を自社のホームページのどのページに書き戻すかまで、順番に進めます。
使った資料は、書いた日に開いて確かめたものだけです。総務省統計局の家計調査、経済センサス-活動調査、国勢調査の各ページと、政府統計の総合窓口e-Stat、総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査です。どれも2026年11月1日に開いて、記述を確認しました。
特定の調査会社や、アンケート作成ツールの名前は出しません。必要になる場面では「調査会社」「アンケート作成ツール」と書きます。
先に答え:市場調査は、お金のかからない順に5つ試し、結果を1ページの1文に書き戻す
市場調査の方法は、数が多すぎて選べなくなる分野です。少ない予算なら、お金のかからない順に並べると、選ぶ手間が消えます。
1つ目は、自社にすでにある記録を読むことです。問い合わせのメール、断られた理由、よく聞かれる質問が、いちばん安く、いちばん自社に近い調査資料になります。
2つ目は、公的な統計を引くことです。人口、世帯、事業所の数、家計の支出は、国が調べて無料で公開しています。
3つ目は、検索の言葉を見ることです。お客様が実際に打ち込んでいる言葉は、需要の記録そのものです。
4つ目は、既存のお客様に直接聞くことです。5人に30分ずつ話を聞けば、アンケート100通より深い材料が手に入る場面があります。
5つ目は、小さなアンケートです。1問から始めて、足りないところだけを数で確かめます。
次の表が、この記事の全体の流れです。
| 段 | 調べること | 手元に残るもの |
|---|---|---|
| 1 | 自社の記録を読む | お客様の言葉の一覧 |
| 2 | 公的な統計で市場の姿をつかむ | 地域と業界の数字のメモ |
| 3 | 検索の言葉を見る | 探されている言葉の一覧 |
| 4 | 既存のお客様に聞く | 選んだ理由と迷った理由 |
| 5 | 小さなアンケートで確かめる | 数で見た割合 |
| 6 | 結果をサイトのページに書き戻す | 直すページと、直す一文 |
調べることは、手段にすぎません。出口は6段目の「直すページと、直す一文」です。来週ホームページのどこを直すかを決めるために調べます。報告書を作ることは目的に入れません。
先日見かけたQ&Aサイトの悩み:「市場調査を自分でやりたい。業者に頼むと高額な請求が心配」
先日、Q&Aサイトでこのような質問を拝見しました。ずいぶん前に投稿されたものですが、悩みの形は今も変わりません。
質問者は、市場調査を自分で実施したいと考えていました。調査会社に頼むと、こちらの意図が伝わらないまま意に沿わない報告書が出てきて、高額な報酬を請求されるかもしれない。だから自分でやりたい、という内容です。
質問内容は固めてあり、あとは協力者を募るだけだと書かれていました。そして、事業企画書の書き方の本は見かけるが、市場調査のやり方の本はあるかと尋ねていました。
回答は1件で、方法の話にはなっていなかった
寄せられた回答は1件でした。予算があるかを聞き返したうえで、予算がないなら、やりたい事業の成功事例を徹底的に調べるようにと勧める内容です。
具体例として挙がっていたのは、他社の店先を1週間撮影して客数を数えるといった、他人の敷地や持ち物に踏み込む方法でした。回答者自身が「推奨しているわけではない」と断っていますが、真似できる方法ではありません。
質問者の「ハウツー本はありますか」という問いには、結局答えが出ないまま終わっていました。
質問に書かれていなかったこと
この質問には、調べた結果で何を決めるのかが書かれていませんでした。質問内容は固まっているのに、その質問への答えを得たあとに何を変えるのかが見えません。
調査会社への不安も、同じ所から来ています。何を決めるための調査かが決まっていないと、会社に頼んでも自分でやっても、報告書は手元で使えない資料になります。意図が伝わらないという不満は、意図が自分の中で固まっていないときに起きやすい不満です。
中小企業のホームページでも、同じ所で手が止まる
この悩みは、起業前の個人に限りません。会社の中で市場調査を任された担当者も、同じ所で止まります。
たとえば、地域の工務店でWeb担当を任された人が、「お客様のことを調べておいて」と言われたとします。何を調べれば仕事になるのかが決まっていないので、人口の統計を眺めたり、他社のサイトを見て回ったりして、時間だけが過ぎます。
この手が止まる状態を避けるには、調べる前に出口を決めます。この記事の中心は、その出口の決め方と、出口までの道のりです。
市場調査とは:お客様と市場と競合について、決めるための材料を集めること
市場調査とは、売る相手と、売る場所と、並ぶ相手について、事実を集めることです。事実を集める目的は、何を言うか、何を直すか、何を足すかを決めることにあります。
調べる対象は3つに分けられる
調べる対象は、お客様、市場、競合の3つに分けると整理できます。
| 対象 | 知りたいこと | 自社サイトの何に効くか |
|---|---|---|
| お客様 | 何に困り、何で選び、何で迷うのか | ページの見出しと説明の言葉 |
| 市場 | どこに、どれだけの人や事業者がいるのか | 対応地域の書き方、載せる情報の量 |
| 競合 | 近い相手は何を約束しているのか | 自社の約束の置き場所と、言い方 |
3つのうち、小さな会社が最初に調べるべきなのは、お客様です。市場の大きさは、数字が分かっても自社の行動は変わりにくいからです。お客様の言葉が分かれば、翌日からページの文を直せます。
「市場調査」と「マーケティングリサーチ」の呼び分け
調査会社の解説では、市場調査とマーケティングリサーチを分けて説明する場合があります。この記事では、小さな会社が自分で進める調べ物を、まとめて市場調査と呼びます。
呼び方の違いに時間を使うより、調べた結果で何を決めるかのほうが、成果に直結します。
近い記事との違い
すでに別の記事で書いた内容とは、役割を分けています。
アンケートの活用方法は、集めた声を意思決定につなげる記事です。この記事のアンケートは、5つある方法のうちの最後の1つとして、短く扱います。
3C分析のやり方と例は、顧客、競合、自社の欄を書き換えて、トップページの最初の一文を決める記事です。この記事は、その欄に入れる材料を、どう集めるかの記事にあたります。
同じ日に公開したPEST分析は、政治、経済、社会、技術という外の変化を拾う記事です。この記事は、お客様の側から材料を集める調べ方を扱います。
市場調査が使われずに終わる理由:調べる前に、出口が決まっていない
市場調査は、始めること自体は難しくありません。難しいのは、調べた結果を仕事に変えるところで、ここで多くの調査が止まります。
調査が、資料のまま眠る
調べた数字や声をスライドにまとめ、会議で共有して、そこで終わる。この流れは、規模の大きな会社でも小さな会社でも起きます。
眠る理由は単純で、調べる前に「この結果が出たら、これを変える」と決めていないからです。結果を見てから使い道を考えると、数字はどれも「参考になりました」で終わります。
調査会社に頼んでも、自分でやっても、同じ所で止まる
質問者が心配していた「意に沿わない報告書」も、原因は同じです。頼む側が、何に使うかを言葉にできていないと、調査会社は一般的な項目を並べるしかありません。
自分でやる場合も、出口がなければ、集めた情報が増えるだけです。調べものは楽しいので、気づくと手段が目的になっています。
小さな会社には、調査会社にない強みがある
小さな会社には、お客様との距離が近いという強みがあります。電話もメールも、現場で交わした会話も、すべて社内にあります。
調査会社は、お客様と直接話せません。自社は、毎日話しています。この差が、少ない予算でも成立する理由です。
調べる前に決める3つのこと:出口、相手、期限
調べ始める前に、紙1枚に3行だけ書きます。3行が埋まらないうちは、調べ始めません。
出口:調べた結果で、何を直すのか
出口は、自社サイトのページと、そのページの1か所で書きます。「トップページの最初の一文」「料金のページの説明」「対応地域の書き方」のような単位です。
「お客様のニーズを知る」は出口になりません。ニーズを知ったあと、何を動かすのかが書かれていないからです。
出口が決まると、調べる内容が決まります。トップページの最初の一文を直すなら、お客様が問い合わせの前に何を知りたがっているかを調べます。対応地域の書き方を直すなら、お客様がどの地名で探しているかを調べます。
相手:誰について調べるのか
調べる相手は、お客様の中の「一番近い1人」に絞ります。全部のお客様を調べようとすると、情報が薄まります。
過去1年に問い合わせてくれた人のうち、いちばん売りたい商品を選んだ人を思い浮かべてください。その人と似た人が、調べる相手です。
期限:何日で切り上げるのか
調べものには、終わりがありません。期限を先に決めないと、気づけば1か月が経っています。
目安は1週間です。月曜に出口を決め、火曜から木曜で調べ、金曜にサイトに反映する。この1週間で終わらない調べものは、範囲が広すぎます。
5つの方法を並べて選ぶ
出口、相手、期限が決まったら、方法を選びます。5つの方法を、手間とお金と、分かることで並べると、次のようになります。
| 方法 | お金 | 手間 | 分かること | 向く出口 |
|---|---|---|---|---|
| 自社の記録を読む | かからない | 小さい | お客様の実際の言葉 | ページの説明の言葉 |
| 公的な統計を引く | かからない | 中くらい | 地域や業界の規模 | 対応地域、載せる情報の量 |
| 検索の言葉を見る | かからない | 中くらい | 探されている言葉 | 見出し、ページの題 |
| 既存客に聞く | ほぼかからない | 大きい | 選んだ理由と迷った理由 | 約束の言い方、不安への答え |
| 小さなアンケート | 少しかかる | 大きい | 割合 | 優先順位の確認 |
この表の読み方は、上から順に試すことです。上の方法で出口が決まれば、下の方法には進みません。
手元の記録から始める:問い合わせ、断られた理由、よく聞かれる質問
最初に読むのは、自社にすでにある記録です。新しく集める必要がなく、お金もかかりません。
集める記録は、4種類だけでよい
記録は4種類に絞ります。多く集めると読み切れず、少なすぎると偏ります。
| 記録 | 置き場所の例 | 見えること |
|---|---|---|
| 問い合わせのメールや電話のメモ | メールの受信箱、電話の記録 | 問い合わせの前に知りたかったこと |
| 見積もりのあとに断られた理由 | 営業の記録、担当者の記憶 | 選ばれなかった理由 |
| 現場でよく聞かれる質問 | 担当者への聞き取り | ページに書かれていない情報 |
| 来店や契約の決め手 | 契約時の会話、申込書の自由記入欄 | 選ばれた理由 |
読み方は、言葉をそのまま書き写すこと
読むときは、要約しません。お客様の言葉を、そのまま書き写します。
「丁寧に対応してもらえそう」「家から近い」「料金が分かりにくかった」のような一言が、そのまま見出しの候補になります。要約すると、お客様の言葉が自社の言葉に置き換わり、ページに写したときに伝わらなくなります。
書き写した言葉を並べ、似た言葉をまとめます。同じ言葉が3回出たら、それが最初の発見です。
記録から分かることと、分からないこと
自社の記録は、すでに問い合わせてくれた人の声しか含みません。問い合わせずに離れた人の声は、記録に残らないという限界があります。
この限界を補うために、次の段階の公的な統計と検索の言葉があります。記録で「いる人」を知り、統計と検索で「まだ出会っていない人」を探します。
記録が少ない会社の場合
創業して間もない会社や、問い合わせが少ない会社は、記録がほとんど無い場合があります。その場合は、次の節の公的な統計と、検索の言葉から始めてください。
記録は、調べ続けるほど増えます。今週から、問い合わせの文面を1つのファイルにまとめる習慣を始めると、来月には読める資料になっています。
公的な統計を引く:市場の姿は、国が無料で公開している
自社の記録でお客様の言葉が分かったら、次は、その人たちがどこに、どれだけいるのかを統計で確かめます。国の統計は、誰でも無料で読めます。
入口は、政府統計の総合窓口e-Stat
統計を探す入口は、e-Statです。e-Statのトップページには「e-Statは、日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイトです」と書かれています。
分野から探す欄には、人口・世帯、商業・サービス業、企業・家計・経済といった分野が並んでいます。組織から探す欄では、総務省、経済産業省、中小企業庁などの名前から探せます。
小さな会社が最初に開く画面は、この2つの欄で足ります。分野で探して見つからなければ、組織から探します。
地域の人口と暮らしは、地図と地域別の表で見る
自社の商圏の姿を見るなら、e-Statの中にある「地図で見る統計」と、「地域(社会・人口統計体系)」が便利です。
総務省統計局のページには、社会・人口統計体系について、人口・世帯、自然環境、経済基盤、行政基盤、教育、労働、居住、健康・医療、福祉・社会保障など、国民生活全般の実態を示す地域別統計データを体系的に整備したものだと説明されています。
市区町村ごとに項目を抽出して、表やグラフで見られます。自社の対応地域の市区町村を選び、人口や世帯の姿を確かめると、サイトに書く地名や、お客様の暮らしの前提が見えてきます。
人口と世帯の大もとは、国勢調査
国勢調査は、統計局のページで「我が国に住んでいるすべての人と世帯を対象とする国の最も重要な統計調査」と説明されています。
年齢別の人口、世帯の人数、住まいの種類といった数字の出どころは、多くがここです。お客様の年齢層や家族の形を考える場面で、最初に参照する統計になります。
事業者の数と規模は、経済センサス-活動調査
同じ業種の事業者が地域に何社あるのかを知りたいときは、経済センサス-活動調査が手がかりになります。
総務省統計局のページには、この調査の目的が次のように書かれています。「全産業分野の売上(収入)金額や、費用などの経理項目を同一時点で網羅的に把握し、我が国における事業所・企業の経済活動を全国的及び地域的に明らかにする」ものです。
同じページに、令和3年6月1日に実施されたことと、令和8年の調査に向けた案内も載っています。調べた数字が実施の何年のものかを、メモに必ず書き添えてください。
家計の支出は、家計調査
お客様が日常的にどんなものにお金を使っているかは、家計調査で見られます。統計局のページによると、全国約9千世帯を対象に、家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査していると書かれています。
二人以上の世帯の最新結果は、2026年8月分まで公表されています。品目分類ごとに、都道府県庁所在市別の1世帯当たり年間の支出金額や購入数量を見られる表もあります。
自社の商品に近い品目が、地域でどれくらい買われているかの目安になります。ただし、対象の世帯が限られているので、数字は傾向をつかむ参考として読みます。
統計を引くときの3つの注意
統計を引くときは、調査の対象、調べた年、数字の単位を、メモの1行目に書きます。
| 確認すること | 理由 | メモの書き方 |
|---|---|---|
| 誰を対象にした調査か | 対象が違うと、自社のお客様に当てはまらない | 「二人以上の世帯」のように書く |
| いつの数字か | 年が古いと、いまの姿と違う | 調査の年と公表の日を書く |
| 何の単位か | 世帯と個人、年間と月間を取り違える | 単位をそのまま写す |
統計で分かることは、「いる人」の大まかな姿まで
統計は、お客様の気持ちまでは教えてくれません。人口や支出の数字を見ても、お客様が何に迷っているかは分からないからです。
統計の役目は、自社の記録から見えた「いる人」が、地域にどれくらいいそうかの目安を出すことにあります。ここで時間をかけすぎないでください。
検索の言葉を見る:お客様が打ち込んだ言葉は、需要の記録になる
統計の次に見るのは、検索の言葉です。お客様は、問い合わせる前に、まず検索します。
総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査では、インターネット利用者の77.5%が検索サービスを利用していました。個人のインターネットの利用目的・用途の項目に出てくる数字です。
お客様の大半は、あなたに連絡する前に、何かを検索しています。その言葉を知ることが、需要を知ることになります。
検索の候補を、5つの入口から見る
検索の言葉は、お金をかけずに見られます。次の5つの入口が使えます。
| 入口 | 見えるもの | 使い方 |
|---|---|---|
| 検索窓に入れたときの候補 | よく一緒に打たれる言葉 | 自社の商品名や悩みの語を1語入れて、出てきた候補を写す |
| 検索結果の「他の人はこちらも質問」 | お客様が疑問に思っている文 | 並んだ質問をそのまま書き出す |
| 検索結果の下の関連する検索 | 次に探される言葉 | 候補と合わせて一覧にする |
| 上位ページの見出し | 他社が答えている内容 | 3ページ分の見出しを書き写す |
| 自社サイトの検索語句 | すでに表示されている言葉 | Search Consoleで確かめる |
自社サイトに来ている言葉は、Search Consoleで確かめる
自社サイトを持っているなら、Search Consoleの検索パフォーマンスのレポートが、最も確かな資料です。
Googleのヘルプには、このレポートが「サイトがどのような検索クエリで検索結果に表示されやすいかなどを把握する」ために使えると書かれています。初期設定では、過去3か月間のクリック数とインプレッション数が表示されます。
表示はされているのにクリックされていない語は、お客様が探しているのに、自社のページが答えきれていない語です。この語が、直すページの候補になります。
候補の言葉は、30個を超えて集めない
言葉を集めると、際限なく増えます。最初の1回は、30個までと決めてください。
集めた言葉は、「悩み」「比較」「値段の目安」「地名」のように、何を知りたがっているかで分けます。分けると、ページの見出しを何にするかが見えてきます。
既存のお客様に聞く:5人に30分ずつ話を聞く
記録と統計と検索で、おおよその姿がつかめたら、実際のお客様に聞きます。聞くのは、5人で足ります。
なぜ、5人で足りるのか
聞き取りの目的は、割合を出すことではありません。お客様が何を考えて選んだのかを、自社の言葉で知ることです。
5人に聞くと、同じ話が2人、3人と重なってきます。重なった話が、見落としていた大事な理由です。
聞く相手は、最近選んでくれた人から
聞く相手は、最近1年以内に契約や購入をしてくれた人から選びます。記憶が新しく、選んだ理由を覚えているからです。
できれば、年齢や職業が少し違う人を混ぜます。同じ属性だけに聞くと、答えが偏ります。
聞くことは、3つだけでよい
聞くことを増やすと、お客様が疲れます。次の3つに絞ります。
| 質問 | 聞いて分かること | 反映先 |
|---|---|---|
| 探し始めたとき、何で困っていましたか | 探した動機と、検索した言葉 | トップページ、記事の入口 |
| 決める前に、何を比べましたか | 比べた相手と基準 | 約束の言い方、選ばれる理由の書き方 |
| 最後に決めた理由は何ですか | 決め手 | 見出し、お客様の声の欄 |
聞くときは、誘導しないでください。「料金が安かったからですか」と聞くと、相手は「はい」と答えます。「どうして決めましたか」と、白紙で聞きます。
聞き取りの進め方
依頼の連絡は、「今後のサービス改善の参考にしたい」と目的を正直に伝えます。時間は30分以内と伝えます。
当日は、最初の5分で目的を説明し、20分で3つの質問をし、最後の5分で礼を伝えます。許可を得て録音するか、手書きのメモを残します。
話を聞いたら、その日のうちに言葉をそのまま書き写します。翌日になると、要約の癖が出てしまいます。
小さなアンケート:1問から始めて、足りないところだけ数で確かめる
聞き取りで見つけた仮説が、他のお客様にも当てはまるのかを確かめたいときに、アンケートを使います。
最初は、1問か2問でよい
アンケートの設問は、増やすほど回答率が下がります。最初は、聞き取りで見つけた疑問の中から1問か2問だけを選びます。
たとえば、「契約の前に不安だったことはどれですか」という1問を、選択肢4つと自由記入欄で聞きます。問い合わせのお礼のメールに、1行のリンクを添えるだけで始められます。
配布の場所は、すでにお客様が通る場所
専用の画面を作らなくても、アンケート作成ツールの無料の範囲で足ります。配る場所は、お礼のメールの末尾、納品書に添えた二次元コード、会計のときの口頭の依頼などです。
調査会社に回答者を集めてもらう方法もありますが、最初の1回で使う必要はありません。
数字の読み方:人数が少ないうちは、割合を言い切らない
回答が10人分しか集まっていない状態で、「7割の人が不安を感じている」と言い切ると、判断を誤ります。人数が少ないうちは、「10人中7人」と、人数のまま書いてください。
アンケートの設問の作り方、集めた声の活かし方は、アンケートの活用方法で詳しく書きました。ここでは、市場調査の中の最後の1手段として、位置づけだけを押さえます。
競合のサイトを観察する:近い相手が、最初の画面で何を約束しているか
競合の調べ方には、数字を集める方法もありますが、小さな会社が最初にやるなら、サイトの観察で足ります。
見る場所は、トップページの最初の画面
競合を3社選び、トップページを開いて、スマートフォンの画面で見える範囲を書き写します。最初の画面には、その会社がお客様に約束していることが、いちばん圧縮されて出ているからです。
書き写すのは、見出し、その下の1文、ボタンの言葉の3か所です。社名は、メモには書いても、自社のページには書きません。
3社の約束を並べて、空いている言葉を探す
3社の約束を並べると、同じ言葉が重なっている部分と、誰も言っていない部分が見えます。誰も言っていない部分のうち、自社が事実で答えられるものが、言うべきことの候補です。
競合を整理して、自社の最初の一文を決める手順は、3C分析のやり方と例で詳しく扱っています。
よくある間違った進め方と、その末路
ここまでの方法を、逆の順番で進めると、時間とお金が無駄になります。
間違い1:市場規模の数字から調べ始める
市場の大きさを調べるところから始める人は多くいます。数字は集まりますが、サイトのどこを直すかは決まりません。
結果として、立派な資料ができあがり、サイトは変わらないまま半年が過ぎます。
間違い2:最初からアンケートを100人に配る
大きなアンケートを最初にやると、設問作りに時間がかかり、回答が集まるまで待つことになります。集まった数字は、聞き取りで分かる理由を教えてくれません。
「なぜそう答えたのか」が分からないまま、割合の数字だけが手元に残ります。
間違い3:調べ終えてから、出口を考える
調査のあとで使い道を考えると、結果はどれも「参考になる情報」になってしまいます。紙1枚に出口を書いてから調べる、という順番を守ってください。
間違い4:競合の約束を、そのまま真似する
競合の最初の画面をそのまま写すと、同じ言葉が並ぶだけになります。お客様には、どこも同じに見えます。
観察の目的は、空いている言葉を探すことです。真似ることは目的に入りません。
間違い5:調べた結果を、全部サイトに載せる
調べて分かったことを、すべてページに載せると、情報が多すぎて読まれません。載せるのは、直すと決めたページの、1か所だけです。
解決策:「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、調べた結果をお客様の言葉のままページに書き戻す
調べたことをページに反映する段階で、多くの人が手を加えすぎます。お客様の言葉を、社内の言葉に直してしまうのです。
「売れるサイトはみな謙虚」という考え方は、サイトから要素を引き算し、訪れた人が迷わず次の一歩に進める形に組み直すものです。市場調査の結果の反映にも、そのまま使えます。
謙虚とは、お客様の言葉を、書き換えずに置くこと
調べて見つけたお客様の言葉は、そのままページに置きます。「丁寧に対応してもらえそう」と言われたなら、「丁寧な対応」という自社の言葉に直さず、お客様が使った形で見出しにします。
自社の言葉に直すと、お客様の目には「どこにでも書いてある言葉」に映ります。お客様自身の言葉は、お客様に届きます。
手順1:調査メモを1枚に集める
5つの方法で集めた材料を、1枚の紙にまとめます。長い報告書にはしません。
| 欄 | 書く内容 | 書き方 |
|---|---|---|
| お客様の言葉 | 記録と聞き取りで見つけた言葉 | そのまま書き写す |
| 地域と業界の数字 | 統計で確かめた数字 | 調査の年と対象を添える |
| 探されている言葉 | 検索で見つけた言葉 | 一覧にして、似た言葉をまとめる |
| 競合が約束していないこと | 観察で見つけた空き | 自社が事実で答えられるものだけ |
手順2:反映表を作る
メモの内容を、サイトのページに結びつけます。反映表は、4つの列だけです。
| 見つけたこと | お客様の言葉 | 直すページ | 直す一文 |
|---|---|---|---|
| 料金の決め方が分からず離れる | 「いくらかかるのか見えない」 | 料金のページ | 料金の決め方を、冒頭に1文で書く |
| 地名で探されている | 「〇〇市 リフォーム」 | 対応地域のページ | 市の名前を見出しに入れる |
| 初めての人は電話が不安 | 「電話しにくい」 | 問い合わせのページ | メールとLINEの手段を先頭に置く |
| 他社は価格を前面に出している | 競合3社の最初の画面 | トップページ | 価格より、決め方の説明を前に出す |
手順3:直すページを1つだけ選ぶ
反映表には、何行も出てきます。ここで全部を直そうとすると、1か月後も1つも終わっていません。
選ぶ基準は、お客様が最初に離れる場所です。サイトのアクセスを見て、入口の次にいちばん離れられているページを選びます。そのページの、反映表の行から、直す一文を1つだけ決めます。
手順4:ページの種類ごとに、直し方を決める
直し方は、ページの種類で変わります。次の表を参考にしてください。
| ページの種類 | 調査で見つけたこと | 直し方 |
|---|---|---|
| トップページ | 探している人の言葉 | 最初の一文をお客様の言葉に近づける |
| 商品やサービスのページ | 選ばれた理由、決め手 | 見出しを決め手の言葉にする |
| 料金のページ | 迷った理由 | 決め方と含まれる範囲を先に書く |
| よくある質問 | 現場でよく聞かれる質問 | 聞かれた順に並べる |
| 対応地域のページ | 地名で探す言葉、統計で見た商圏 | 地名を見出しに入れる |
手順5:直したあとに、確かめる
直した結果は、3つの方法で確かめます。
1つ目は、Search Consoleで、直したページの表示回数とクリック数の変化を見ることです。反映には数週間かかるので、1週間では判断しません。
2つ目は、問い合わせの文面です。直した言葉が、問い合わせの文に出てくるようになったら、届いている証拠です。
3つ目は、既存のお客様に、直したページを見せて感想を聞くことです。1人で構いません。
市場調査を続ける約束:年に1回、1週間だけ
調査は、一度やれば終わりではありません。お客様の言葉は、年とともに変わります。
年に1回、1週間だけの調査を決めておくと、サイトの言葉が古びません。調べる順番は、今回と同じです。記録、統計、検索、聞き取り、アンケートの順に、出口を決めて進めます。
3つの架空の会社で、1週間の調査を通してみる
実在する会社の名前は使いません。中小企業によくある3つの業種を、架空の会社として作りました。
| 会社 | 業種 | 調べたいこと |
|---|---|---|
| A社 | 地域の工務店 | 問い合わせが来るのに、見積もりまで進まない理由 |
| B社 | 小さな学習塾 | 体験授業の申し込みが増えない理由 |
| C社 | 雑貨を売る小売店 | ネットショップの注文が伸びない理由 |
A社:記録の読み直しで、出口が決まった
A社は、問い合わせの文面を過去1年分読み直しました。「いくらかかるか、先に知りたかった」という言葉が、4通に出てきました。
出口は、料金のページの冒頭に、金額の決まり方を書くことに決まりました。統計を調べる必要はなく、1日で終わりました。
B社:聞き取りで、本当の迷いが見つかった
B社は、最近入塾した5人の保護者に、30分ずつ話を聞きました。5人のうち3人が、「体験授業のあとに勧誘されるのではと不安だった」と話しました。
出口は、体験授業のページに、「体験のあとに入塾を勧めることはしません」といった方針を書くことでした。方針は事実として守れる範囲で書いています。
C社:検索の言葉から、探される言い方が分かった
C社は、商品名と一緒に検索される言葉を30個集めました。自社のページが使っていない言い回しが、いくつか見つかりました。
出口は、商品ページの見出しを、探される言葉に合わせて直すことです。商品の説明文は変えずに、見出しだけを直しました。
3社を並べて見えること
3社とも、使った方法は違っても、最初に出口を決めてから調べました。調べる範囲が絞れたので、1週間で終わっています。
| 会社 | 使った方法 | 出口 | かかった日数の目安 |
|---|---|---|---|
| A社 | 自社の記録 | 料金のページの冒頭の一文 | 1日 |
| B社 | 既存客への聞き取り | 体験授業のページの方針の一文 | 3日 |
| C社 | 検索の言葉 | 商品ページの見出し | 2日 |
よくある質問
Q1:予算がほとんどない場合は、どの方法から始めればよいですか
自社の記録を読む方法から始めてください。お金も新しい作業もほとんど要らず、問い合わせの文面を読むだけで、お客様の言葉が手に入ります。
次に、検索の候補を見る方法と、5人への聞き取りに進みます。この3つで、出口が決まる場合が大半です。
Q2:既存のお客様が少なくて、聞き取りができません
お客様が少ない場合は、問い合わせをくれたものの契約に至らなかった人や、見積もりを断った人に、短い連絡を取ってみます。選ばなかった理由は、選んだ理由と同じくらい貴重な材料です。
連絡の際は、サービス改善のために理由を知りたいことを正直に伝えます。勧誘はしないと添えます。返事が来なくても構いません。1人から返事があれば、それが最初の材料になります。
Q3:統計の数字が古い場合は、そのまま使ってよいですか
使えます。ただし、調べた年を必ず書き添えてください。経済センサス-活動調査のように、数年に一度しか行われない調査は、最新版でも数年前の数字になります。
古い数字は、規模の目安として読み、細かい差には使わないようにします。新しい調査が公表されたら、その時点で差し替えます。
Q4:調査会社に頼むのは、どんなときですか
自分で進めても出口が決まらないときや、全国規模の割合を、統計的に信頼できる形で出したいときです。
頼む前に、この記事の紙1枚(出口、相手、期限)を埋めておくと、調査会社に意図が伝わりやすくなります。質問者が心配していた「意に沿わない報告書」を避ける、いちばん確実な準備です。
Q5:競合のサイトを観察するのは、問題になりませんか
誰でも見られる公開のページを読むだけなら、問題はありません。書き写すのは、見出しや約束の内容の把握のためで、文章をそのまま自社のページに転載してはいけません。
ページの文や画像をそのまま使うと、著作権に触れる場合があります。観察で得るのは空いている部分の発見にとどめ、言葉は持ち帰らないでください。
まとめ:市場調査は、出口を決めて、お金のかからない順に進める
この記事の要点を、短く整理します。
市場調査は、調べる前に、紙1枚に出口、相手、期限を書きます。出口は、自社サイトのページと、そのページの1か所で決めます。
方法は、自社の記録、公的な統計、検索の言葉、既存のお客様への聞き取り、小さなアンケートの順に、お金のかからない順で試します。上の方法で出口が決まれば、下の方法には進みません。
調べた結果は、反映表に整理して、直すページを1つだけ選びます。お客様の言葉は、書き換えずに、そのまま置きます。
質問者の「調査会社に頼むと意に沿わない報告書が心配」という悩みには、調べる前に意図を言葉にする、という答えが当てはまります。意図が言葉になっていれば、自分で進める場合も、頼む場合も、結果が使えます。
調べるのは、1週間で足ります。月曜に出口を決め、金曜にページを1か所直す。この小さな一巡を、年に1回でも続けると、サイトの言葉がお客様の言葉から離れません。
今日できる点検
次の表の項目を、自社の状況に当てはめて確認してください。1つでも「いいえ」があれば、そこが今週の作業です。
| 点検すること | 確かめ方 | 「いいえ」の場合にすること |
|---|---|---|
| 調べる前に、直すページと直す箇所を書いたか | 紙1枚の出口の行を読む | ページを1つ選び、箇所を決める |
| 調べる相手を、お客様の中の1人に絞ったか | 相手の行に、具体的な1人が書けるか見る | 最近選んでくれた人を1人思い浮かべる |
| 調べる期限を、1週間以内に決めたか | 期限の日付を確認する | 金曜に切り上げる日を決める |
| 自社の記録を読み、お客様の言葉を書き写したか | 書き写したメモがあるか見る | 問い合わせの文面を10通読む |
| 統計を引くとき、対象と年をメモに書いたか | 統計のメモの1行目を見る | 対象と調べた年を書き足す |
| 検索の候補を30個以内で集めたか | 一覧の数を数える | 悩み、比較、地名に分ける |
| 既存のお客様に、3つの質問で聞いたか | 聞き取りのメモを見る | 最近選んでくれた1人に連絡する |
| 反映表で、直すページを1つに絞ったか | 反映表の「直すページ」の列を見る | 最初に離れられるページを選ぶ |
| 直したあと、確かめる日を決めたか | Search Consoleを開く日を予定に入れる | 数週間後の日付を決める |
点検の結果の読み方
「はい」が7つ以上なら、調べる準備は整っています。今週は、反映表の1行を選んで、ページを1か所直してください。
「はい」が3つ以下なら、調べることを減らします。出口を決める1行だけを、今日のうちに紙に書いてください。出口が決まれば、残りの項目は、順番に埋まっていきます。
点検の表は、調べ終えたあとにもう一度使えます。2回目に「いいえ」が減っていれば、調べ方が身についてきた証拠です。
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