初めてプレスリリースを書くことになった。例文もテンプレートも見たけれど、自社のことになると手が止まる。そんな中小企業の経営者や担当者に向けて書きます。
先に答えを書きます。
記者に読まれるプレスリリースは、4つの部品の型に、1つの切り口を乗せるだけで書けます。
4つの部品とは、タイトル、リード文、本文、問い合わせ先です。切り口とは、自社の発表を「世の中にとってのニュース」に言い換えた一言のことです。
先に答え:型は4つの部品、勝負は切り口
プレスリリースの型は、実はそれほど複雑ではありません。
発信日と発信者を頭に置き、タイトルで要点を伝え、リード文で5W1Hをまとめ、本文で背景と詳細を足し、最後に問い合わせ先を書きます。この順番は、どの解説を見てもほぼ同じです。
型を守れば、読みにくいリリースにはなりません。ただ、型を守っただけでは取り上げられません。
取り上げられるかどうかは、切り口で決まる
記者が見ているのは、自社が何をしたかよりも、読者や視聴者にとって何が新しいかです。
新商品を出した、という事実は、会社にとっては大きな出来事です。けれども記者の側から見ると、毎日大量に届く「発表」のひとつにすぎません。
そこで必要になるのが切り口です。
「創業40年の工務店が、築古住宅の寒さ対策を始めた」と書けば、地域の住まいの話題になります。「新サービスを開始しました」だけでは、何の話題か分かりません。
型だけで終わらせないために、自社サイトにも同じ内容を置く
もうひとつ、この記事で強く伝えたいことがあります。
プレスリリースを配信したら、同じ内容のページを自社のホームページにも置いてください。
リリースを読んだ記者や、記事を見た人は、まず会社名で検索します。そのとき確かめる先が自社サイトに無いと、せっかくの発表が信用されないまま終わります。
最近は、人だけでなくAIも同じ動きをします。会社名を聞かれたAIは、公開されているページを探して答えを組み立てます。
この記事の読み方
読者として思い浮かべているのは、広報の専任がいない会社の方です。
専門用語はなるべく使わず、使うときは意味を添えます。
読み終えたときに、タイトルとリード文の下書きが手元にあり、自社サイトに置くページの中身も決まっている状態を目指します。
| 知りたいこと | 読む場所 | 読み終えて残るもの |
|---|---|---|
| そもそも何を書くのか | 先に答えと全体の型 | 4つの部品の名前と順番 |
| ネタが見つからない | 切り口の見つけ方 | 自社の発表を言い換えた一文 |
| タイトルが決まらない | タイトルの型 | 使えるタイトル案が3本 |
| 実際の文章が見たい | 架空の例文 | 差し替えて使える下書き |
| 配信したあとが不安 | 自社サイトのページと配信の章 | 配信後にやることの一覧 |
Q&Aサイトで見かけた、新聞やテレビに取材を頼む方法が分からないという悩み
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
投稿者は、前の年に非営利の法人を立ち上げた方です。活動を広く知ってもらうために、新聞社やテレビ局に取材をお願いしたいと考えていました。
ただ、どのルートからどう申し込めばよいのかが分からず、検索しても具体的な方法が見つからないと書かれていました。質問そのものはかなり前に投稿されたものですが、悩みの形は今もそのまま通用します。
質問者が困っていたのは、窓口が見えないこと
質問者は、取材を頼む気持ちは固まっていました。足りなかったのは、誰に、何を、どんな形で渡せばよいかという道筋です。
会社でも同じことが起きます。ホームページはある、商品もある、伝えたいこともある。それでも、記者に届ける方法が分からず、何も出さないまま時間が過ぎていきます。
回答は、現実の厳しさと、現実的な入口の両方を書いていた
寄せられた回答のひとつは、取材のお願いは新聞社やテレビ局に毎日たくさん届くので、よほど特殊で報道する価値があると認められないと、応じてもらえる可能性は低い、という内容でした。
地元局や地域のケーブルテレビは地域密着を売りにしているので、多少ハードルは低いものの、伝えるべき価値のある実績がないと難しい、とも書かれていました。
もうひとつの回答は、新聞社の記者を名乗る方からでした。分野に合った記者クラブに、プレスリリースという形で投げ込んではどうか、という提案です。
福祉なら厚生労働省、環境なら環境省というように、役所ごとに記者クラブがあり、代表番号に電話すれば記者クラブの連絡先を教えてもらえる、という具体的な道筋まで書かれていました。
回答した人の立場で、答えの方向が違った
2つの回答は、立場が違います。
ひとつは、取材を依頼される側が置かれた状況の説明でした。もうひとつは、リリースを受け取る側の記者が出した実務的な提案でした。
どちらも事実で、見ている場所が違うだけです。依頼する側の私たちは、受け取る側の事情を知ったうえで準備すると、成功の確率が上がります。
この質問から読み取れること
この2つの回答は、矛盾していません。
入口は用意されています。ただし、入口を通れるのは「報道する価値がある」と記者が判断した内容だけです。
つまり、取り上げてもらうために磨くべきなのは、送り方よりも中身の見せ方です。書き方の型と、ニュースの切り口がそこで効いてきます。
そもそもプレスリリースとは、何のために出すものか
言葉の意味を、最初にそろえておきます。
プレスリリースは、企業や団体が、新聞、雑誌、テレビ、ウェブメディアなどの報道機関に向けて、発表したい事実を伝える文書です。報道発表の資料、と言い換えても意味は変わりません。
目的は、記者に記事の材料を渡すこと
プレスリリースを出す目的は、メディアにニュースとして取り上げてもらい、お客さんや取引先、地域の人に広く知らせることです。
広告は、お金を払って自社の言いたいことを載せます。プレスリリースは、記者が「伝える価値がある」と判断したときだけ、記者自身の言葉で記事になります。
この違いは、書き方に直結します。広告なら強みを大きく言ってよいのですが、リリースで強みを大きく言うと、記者は「宣伝だ」と受け取って手を止めます。
ニュースリリースとの違い
「ニュースリリース」という言葉もよく見かけます。
実務ではほぼ同じ意味で使われますが、プレスリリースは報道機関向け、ニュースリリースは顧客や株主なども含む幅広い読み手向け、というニュアンスの違いで説明されることがあります。
自社のホームページに置くページは、記者以外の人も読みます。そのため、この記事では、配信するものをプレスリリース、自社サイトに置くものを同じ内容のお知らせページと呼び分けます。
広告やブログ記事との違い
迷いやすいので、並べて整理します。
| プレスリリース | 広告 | ブログ記事 | |
|---|---|---|---|
| 誰に向けるか | まず記者、その先に読者 | 見込み客 | 検索してきた人 |
| 何を書くか | 発表する事実と、その社会的な意味 | 商品の魅力と購入の呼びかけ | 悩みへの答えや体験 |
| 載るかどうか | 記者の判断で決まる | お金を払えば載る | 自分で公開できる |
| 文体 | 客観的で、短く、事実中心 | 感情に訴える | 親しみやすい語り口 |
| 向いている場面 | 新商品、提携、受賞、調査結果 | 販売促進 | 継続的な情報発信 |
小さな会社こそ、プレスリリースに向いている場面がある
大きな会社は、広告にも広報にも人を割けます。小さな会社は、広告費を使えない代わりに、自社の話を地域や業界の人に知ってもらう方法が限られます。
プレスリリースは、書く手間と、配信の手段を選ぶだけで、記者という第三者に自社を紹介してもらえる可能性が生まれます。
取り上げられれば、記事を見た人が会社名を検索します。広告よりも信用されやすいと言われるのは、第三者が書いた形になるからです。
取り上げられなくても、リリースは無駄にならない
初めてのリリースが、すぐ記事になるとは限りません。
それでも、書く過程で「自社の何が新しいのか」「誰に役立つのか」を言葉にする作業は、営業資料にもホームページにも使えます。
さらに、自社サイトに同じ内容を置けば、取引先や求職者が会社を知るときの確かな材料にもなります。記者に届かなかった場合でも、置き場所があれば成果が残ります。
先に覚えておく用語は5つだけ
専門用語は多く見えますが、リリースを書くうえで覚えるのは5つだけです。
| 用語 | 意味 | 書く場所 |
|---|---|---|
| 5W1H | いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって、の6つの要素 | リード文と本文 |
| リード文 | タイトルのすぐ下に置く、要点を数行にまとめた文 | タイトルの下 |
| 逆三角形 | 大事な情報から先に書き、詳細を後ろへ回す構成 | 全体の構成 |
| 会社概要 | 会社の基本情報を短くまとめた欄。ボイラープレートとも呼ぶ | 末尾 |
| 投げ込み | 記者クラブの窓口に資料を直接届けること | 配信のとき |
この5つの意味が分かれば、解説記事や例文集も読みやすくなります。
配信の手段は大きく3つに分かれる
配信の手段にも触れておきます。細かい比較は後の章で書きます。
1つ目は、無料や有料の配信サービスを使う方法です。登録した報道機関に、まとめて届けてもらえます。
2つ目は、記者クラブへの投げ込みです。役所の記者室や、商工会議所内の記者クラブなどに資料を届けます。質問者への回答にも出てきた方法です。
3つ目は、取り上げてほしい記者に、個別にメールや郵送で送る方法です。相手を選べるので、地域の話題や専門分野の話題に向いています。
どの手段を選ぶにしても、中身の書き方は同じです。型を先に身につけておけば、配信の手段はあとから選べます。
書く前に、読む側の1日を想像する
記者の1日を、少し想像してみてください。
朝から何十通ものメールや資料が届き、取材や締め切りの合間にそれを見ます。1通に使える時間は、長くて数十秒でしょう。
この状況で読まれるには、開いた瞬間に何の話かが分かること、続きを読まなくても要点が取れること、気になったらすぐ連絡できること、の3つが必要です。
プレスリリースの型は、この3つを満たすために作られています。型に意味があると分かれば、守るのが苦になりません。
取り上げられたあとに起きることを、先に知っておく
記事になったあとの流れを、先に知っておくと、準備の優先順位が決まります。
| 時期 | 起きること | 準備しておくこと |
|---|---|---|
| 記事が出た当日 | 会社名で検索する人が増える | 自社サイトの専用ページと会社情報を整えておく |
| 数日以内 | 電話やメールの問い合わせが来る | 窓口の担当者と、想定問答を決めておく |
| 1週間以内 | 他の記者や取引先から連絡が来ることがある | 追加の資料と写真を、すぐ出せるようにしておく |
| 1か月後 | 記事を見て検討していた人が相談に来る | ページを更新し、受け付けを続けておく |
記事が出る日は、会社が一番見られる日です。この日に、自社サイトが古い情報のまま、問い合わせ先も見つかりにくい状態だと、せっかくの機会を逃します。
プレスリリースの準備とは、文章を書くことだけではありません。読んだ人が次に取る行動の受け皿を、先に整えることまで含みます。
小さな会社の強みは、現場の言葉で書けること
大きな会社のリリースは、広報部が整えた、きれいで無難な文章になりがちです。
小さな会社には、社長や職人が自分の言葉で語れるという強みがあります。現場で聞いた一言や、失敗から学んだことは、記者にとって新鮮な材料です。
型は守りつつ、コメントや背景には、現場の言葉をそのまま使ってください。整えすぎない言葉が、記事に引用されやすくなります。
中小企業のプレスリリースは、なぜ読まれずに終わりやすいのか
中小企業がプレスリリースを出すこと自体は、珍しくありません。
中小企業庁が2023年12月に公表した集計では、2021年6月時点の中小企業は336.5万者で、企業全体の99.7%を占めました。日本の企業のほとんどが中小企業です。
出す側は多い。だから記者の机には似た発表が重なる
数字を見ると、リリースを出す側に中小企業が多くても不思議ではありません。
ただし、この数字は企業の数であって、リリースの本数ではありません。中小企業のリリースが何本届いているかは、公的な統計では確かめられませんでした。
確かなのは、発表したい会社は多く、記者が1日に読める本数には限りがある、という構造です。限られた時間の中で、記者は中身を一瞬で判断します。
読まれずに終わるリリースには、共通する3つの癖がある
実務の解説でも繰り返し指摘されている、読まれにくいリリースの癖を整理します。
| 読まれにくい癖 | 記者の側で起きること | 直す方向 |
|---|---|---|
| 自社の想いから書き始める | 何の発表か分からず、読み進めてもらえない | 最初の1行に発表内容を書く |
| 広告のような言い回しが多い | 事実と宣伝の区別がつかず、記事に使いにくい | 事実と数字で書き、形容詞を減らす |
| 誰のためのニュースか分からない | 読者や視聴者に伝える理由が立たない | 社会や地域との接点を一言で書く |
最初の1行で、読まれるかどうかが決まる
具体例で見てみます。どれも架空の工務店の発表です。
| 悪い書き出し | 直した書き出し | 直した理由 |
|---|---|---|
| 私たちは創業以来、お客様の笑顔のために家づくりに励んで参りました | 〇〇工務店は、築30年以上の住宅向けに、断熱改修の無料点検を始めます | 想いから入らず、発表内容を最初に置いた |
| 業界初の画期的なサービスを開始いたします | 〇〇工務店は、冬の室温を事前に測る点検サービスを始めます | 根拠のない「業界初」を外し、中身を具体的にした |
| 地域の皆様に愛される会社を目指して | 〇〇市内の住宅を対象に、10月から受け付けを始めます | 誰に、いつから、が分かる形にした |
直した書き出しは、どれも「誰が、何を、いつ」が読み取れます。
記者は最初の数行だけ見て、先へ進むか、閉じるかを決めています。ここで足を止めさせることが最優先です。
広告表現は、事実の証拠がなければ外す
「最高」「圧倒的」「業界初」といった言葉は、書いた会社が主観で決めた評価です。
記者は、そのまま記事に書くわけにいきません。裏づけが示されていなければ、確認の手間が増えるだけで、リリースごと後回しになります。
評価の言葉を使いたいときは、数字や第三者の評価に置き換えます。「施工実績が200件」「地域の商工会から表彰を受けた」のように、確かめられる事実で書きます。
「悪いリリースを出す会社」と見られると、次も読まれにくい
もうひとつ、見落とされやすい点があります。
広報の実務解説では、記者から見て分かりにくい、使えないリリースを続けて送ると、その会社の次のリリースも敬遠されやすくなる、という指摘があります。
これは実務家の経験則で、統計の裏づけがあるわけではありません。それでも、1本目を丁寧に書く理由としては十分です。
読まれるリリースは、記者の仕事を減らす
記者は、リリースを材料にして記事を書きます。
だから、読まれるリリースは、記者が確認したいことが最初から全部入っています。いつ、誰が、何を、なぜ、どこで、どうやって。そして、問い合わせたいときの連絡先です。
記者の手間が減るほど、取り上げられる確率は上がります。この後の章で、その手間をどう減らすかを部品ごとに書いていきます。
この記事の全体像:切り口を決め、4つの部品を埋め、自社サイトに置く
ここまでの話を、手順にまとめます。
最初に、書く前の準備として、目的と読者を決めます。次に、自社の発表を切り口に言い換えます。そのうえで、タイトル、リード文、本文、問い合わせ先の順に埋めていきます。
最後に、配信と同時に自社サイトへ同じ内容のページを置きます。
手順を一覧にすると
| 順番 | やること | 目安の時間 | 出来上がるもの |
|---|---|---|---|
| 1 | 目的と届けたい記者を決める | 30分 | 目的の一文と媒体のメモ |
| 2 | 切り口を見つける | 1時間 | 切り口を書いた一文 |
| 3 | 部品を埋めて下書きを作る | 2時間 | タイトルから問い合わせ先までの原稿 |
| 4 | 事実と数字を確かめる | 1時間 | 裏が取れた原稿 |
| 5 | 自社サイトにページを作る | 1時間 | 発表と同じ内容の公開ページ |
| 6 | 配信して、連絡を待つ | 配信日 | 配信の記録と問い合わせ窓口 |
時間はあくまで目安です。初めての場合は、全体で半日から1日あれば形になります。
この記事が伝えたい軸
多くの解説は、配信サービスの選び方や、配信のタイミングに紙面を割いています。
この記事は、そこに加えて「配信したあと、会社名で検索した人が確かめる先を用意する」ところまでを範囲に入れています。取り上げられた後の信用は、ここで決まるからです。
自社のホームページを「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で整えると、これが自然に実現します。余計な装飾を引き算して、事実を正確に、迷わず読める形で置く。その具体的な姿は、後の章で説明します。
初めてでも半日で形になる理由
プレスリリースは、長い文章を書く仕事ではありません。
A4用紙の1枚から2枚に収まる分量で、決まった順に情報を並べるだけです。部品ごとに書く内容が決まっているので、迷う場所は切り口の1か所だけです。
だから、切り口さえ決まれば、書く作業そのものは数時間で終わります。逆に、切り口が決まらないまま書き始めると、何時間かけても同じところをぐるぐる回ります。
担当者が1人しかいない会社の進め方
広報専任がいない会社では、社長が切り口を決め、担当者が下書きを作り、社長が事実を確認する、という分担がうまくいきます。
事実の確認は、必ず発表する本人が行ってください。数字の桁や日付の1つの間違いが、記者の信用をまとめて失う原因になるからです。
書き終えたら、この3つを自分に聞く
下書きができたら、公開や配信の前に3つの問いで確かめます。
最初の問いは、「この発表を知らない人が、タイトルだけ読んで何の話か分かるか」です。
次の問いは、「記者が記事を書くとき、リリースの中だけで事実の確認が終わるか」です。足りない情報があれば、記者はそこで読むのをやめます。
最後の問いは、「会社名で検索した人が、同じ内容を自社サイトで見つけられるか」です。見つからないなら、まだ配信の準備は終わっていません。
この3つに「はい」と答えられれば、初めてのリリースとして十分な出来です。
完璧を目指さず、1本目を出してから直す
初めてのリリースに、満点は要りません。
記者から反応が来た、来なかった、問い合わせの内容はこうだった。そうした事実が、2本目を書くときの最も確かな材料になります。
1本目で全部を決めようとして手が止まるより、型に沿って出してしまい、反応を見て直す方が、結果として早く上達します。
書き始める前に決める4つのこと
いきなりタイトルを考えるのは、遠回りです。
書く前に決めておくことが4つあります。目的、届けたい記者、載せるニュースの数、裏づけの材料です。この4つが決まっていれば、書く作業は短く終わります。
1つ目は、このリリースの目的を一文にすること
プレスリリースを出す理由は、会社ごとに違います。
目的が曖昧なまま書くと、あれもこれもと情報が増え、記者にとって何の発表か分からなくなります。最初に、目的を一文で書き出してください。
| 目的の例 | 一文にするとこうなる | 向いている切り口 |
|---|---|---|
| 地域の認知を広げたい | 〇〇市内の住宅オーナーに、点検サービスを知ってもらう | 地域の暮らしの話題 |
| 採用につなげたい | 地元で働きたい若者に、職人育成の取り組みを知ってもらう | 人材育成、働き方の変化 |
| 取引先の信頼を得たい | 設計の品質管理を強化したことを、既存の取引先に伝える | 品質や安全に関する取り組み |
| 新商品を売りたい | 新しい断熱材を使った施工メニューを、見込み客に知らせる | 暮らしの困りごとの解決 |
| 実績を知らせたい | 受賞や資格の取得を、取引先と地域に伝える | 第三者からの評価 |
2つ目は、届けたい記者と媒体を絞ること
プレスリリースは、全員に同じものを送るよりも、相手を絞った方が読まれやすくなります。
地域の工務店なら、まず地元の新聞、地域の情報誌、地元のウェブメディア、住宅や建築の業界紙が候補になります。全国紙や全国放送は、その後に考えれば十分です。
媒体を選ぶときは、実際にその媒体の記事を何本か読んでみてください。どんな題材を、どんな長さで、どの面で取り上げているかが分かります。
自社の発表が、その面に載っている記事の延長線にあるかどうか。それを確かめるだけで、送る先の優先順位が決まります。
媒体研究のやり方
難しい作業ではありません。
候補の媒体のウェブサイトを開き、直近の記事を10本ほど読みます。そして、自社と近い業種や地域の記事が、どんな書き出しで始まっているかを見ます。
気づいたことは、メモに残します。「地元企業の新サービスは、写真つきで短く載る」「業界紙は、数字が入った記事が多い」といった観察が、そのまま切り口の材料になります。
3つ目は、1本のリリースに載せるニュースを1つに絞ること
初めて書く人がやりがちなのは、新商品も、受賞も、採用も、一度に詰め込むことです。
詰め込むと、記者は「何が一番伝えたいのか」を判断できません。結局、どの話題も取り上げられずに終わります。
ニュースが複数あるなら、リリースも複数に分けます。1本に1つのニュースで、タイトルの一言で言い切れる状態が理想です。
| 詰め込みすぎの例 | 分け方 |
|---|---|
| 新サービス開始と新店舗オープンと採用情報を1本に入れる | 3本に分け、それぞれ日を変えて出す |
| 受賞の報告に、会社の沿革を長く入れる | 沿革は会社概要に短く回し、受賞の話に集中する |
| 新商品の発表に、既存商品の宣伝を足す | 既存商品は触れず、新商品だけを書く |
4つ目は、裏づけの材料を先にそろえること
文章を書く前に、裏づけとなる材料を集めておきます。
数字、写真、お客さんや第三者のコメント、公的機関の資料などです。これらがあるだけで、リリースは「会社の主張」から「確かめられる事実」に変わります。
数字を使うときは、自社で集計した数字か、官公庁などの資料から引いた数字かを区別し、出どころを本文に書いてください。出どころの分からない数字は、載せない方が安全です。
写真も重要です。新商品なら商品の写真、サービスなら施工中や利用中の写真があると、記者は紙面や画面のイメージをつかめます。
ニュースになる切り口の見つけ方
この記事でいちばん大事な章です。
型は誰でも真似できます。切り口を見つけるには、少し考える作業が要ります。
記者が「ニュースだ」と感じるのは、どんなとき
ニュースの価値は、事実の大きさだけでは決まりません。読者や視聴者にとって意味があるかどうかが問われます。
実務の解説でよく挙げられる観点を、中小企業の場面に当てはめて整理しました。
| 観点 | 意味 | 中小企業での言い換え例 |
|---|---|---|
| 新しさ | 初めての取り組みか、新しい動きか | 地域で初めての試み、自社で初めての試み |
| 社会との接点 | 世の中の関心事とつながっているか | 人手不足、物価、防災、高齢化との関わり |
| 地域性 | その地域の人に関係があるか | 地元の雇用、地元の素材、地元の行事 |
| 数字と変化 | 数字で変化が示せるか | 利用者が前年の2倍、待ち時間が半分 |
| 人の物語 | 人の決断や努力が見えるか | 後継ぎが決めたこと、職人の技の継承 |
| 意外性 | 意外な組み合わせか | 老舗と若い世代、異業種の協力 |
| 公共性 | 多くの人の役に立つか | 無料の相談会、安全に関する情報提供 |
7つすべてを満たす必要はありません。1つか2つが強ければ、ニュースとして成り立ちます。
自社の発表を、社会の言葉に言い換える3つの質問
切り口は、次の3つの質問に答えていくと見つかります。
1つ目の質問は、「この発表で、誰のどんな困りごとが減るのか」です。
2つ目の質問は、「いま世の中で話題になっていることと、どこでつながるのか」です。
3つ目の質問は、「数字にしたら、どんな変化が言えるのか」です。
答えを組み合わせると、切り口になります。
具体例:断熱改修の点検サービス(架空)
〇〇工務店が、築30年以上の住宅向けに、冬の室温を測る点検を始める場合を考えます。
誰の困りごとが減るかと考えると、「冬に家が寒く、暖房費が気になる人の不安が減る」と答えられます。
世の中とのつながりは、冬の暖房に関わる関心や、住宅の断熱への関心の高まりです。数字にできることは、点検した家の室温の差や、点検を受けた軒数です。
この3つを一文にすると、「築30年以上の住宅の冬の寒さを、室温の測定で見える化する点検を、〇〇工務店が始める」になります。新サービスの開始、という書き方よりも、記者が読者の顔を思い浮かべやすくなります。
ネタがないと感じる会社の掘り起こし方
「うちには発表するようなネタがない」という声は多く聞かれます。
けれども、会社の中には、本人たちが当たり前だと思っているニュースの種がいくつも眠っています。棚卸しの観点を表にしました。
| 棚卸しの観点 | 問いかけ | ニュースの種の例 |
|---|---|---|
| 新しく始めたこと | この1年で、新しく始めたことは何か | 新メニュー、新しい対応エリア、新しい仕組み |
| 続けてきたこと | 10年以上、変えずに続けていることは何か | 創業からの製法、毎年の地域行事への参加 |
| 数字にできること | 数えれば、数字になることは何か | 施工件数、リピート率、創業からの年数 |
| お客さんの変化 | お客さんの声や相談の内容は変わったか | 相談の増えた分野、年代の変化 |
| 人と働き方 | 社員や職人に、変化や挑戦はあるか | 資格の取得、若手の育成、女性職人の活躍 |
| 地域との関わり | 地域の人や団体と、何かしているか | 清掃活動、学校への出前授業、共同の企画 |
この表を、社内で10分ずつ話し合うだけで、10個ほど種が出てきます。その中から、記者が読者に伝えたくなりそうなものを選びます。
季節や行事に結びつけて、旬の話題にする
同じ内容でも、出すタイミングで価値が変わります。
寒い季節の前なら暖房や断熱、梅雨の前なら湿気対策、大型連休の前なら旅行や帰省、年度末なら新生活、といった具合です。
記者は季節ごとの記事を準備しています。自社の発表がその流れに乗っていると、記事の枠に入りやすくなります。
ただし、季節や時事に無理に結びつけると、関係のない便乗に見えてしまいます。自社の事業と本当につながる範囲で使ってください。
ニュースになりにくい発表の例
逆に、ニュースとして扱われにくい発表もあります。
| 発表の内容 | 扱われにくい理由 | 見直しの方向 |
|---|---|---|
| 営業時間や定休日の変更だけ | 読者への関係が限られる | 自社サイトのお知らせに載せる |
| 既に広く知られている商品の再紹介 | 新しさが無い | 新しい使い方や数字を足す |
| 売り込みだけを並べた案内 | 広告に見える | 利用者の変化や社会的な意味を足す |
| 事実の確認ができない評価の言葉 | 記事に書けない | 数字や第三者の評価で裏づける |
全部を無理にニュースにする必要はありません。ニュースにならない話題は、自社サイトのお知らせやSNSで出せば十分です。
媒体によって、同じ発表でも切り口を変える
同じ発表でも、載せる媒体が違えば、記者が知りたいことも変わります。
| 媒体の種類 | 記者が知りたいこと | 切り口の寄せ方 |
|---|---|---|
| 地元の新聞 | 地域の人にどう関係するか | 地域の雇用、地元の素材、地元の行事との接点 |
| 地域の情報誌 | 読者が行ってみたくなるか | 体験できること、写真映えする場面 |
| 業界の専門紙 | 同業者にとって新しい知見か | 数字、技術の違い、導入の手順 |
| ウェブメディア | 見出しで興味を引けるか | 意外性、短く言い切れる変化 |
| テレビ | 画で見せられるか | 動きのある場面、人の表情、現場 |
全部に同じリリースを送るのが悪い、という意味ではありません。リード文の一行目と、添える写真だけでも、相手に合わせて変えると効果が変わります。
公的な統計を使って、切り口の背景を固める
切り口が「社会の事情」とつながっていることを示すとき、公的な統計が役に立ちます。
たとえば、この記事でも中小企業庁の集計を使いました。2021年6月時点で、中小企業は336.5万者、企業全体の99.7%、小規模事業者は285.3万者で84.5%でした。
こうした数字は、官公庁の公式ページで誰でも確かめられます。政府統計は、総合窓口のサイトからも探せます。
使い方の手順は決まっています。
最初に、探している数字の公表元を調べます。次に、公式ページを実際に開いて、数字と調査時点を確かめます。最後に、リリースには「〇〇省が20XX年に公表した調査によると」と、出どころを文章で書きます。
ここで気をつけたいのは、検索結果の要約や、他社の解説記事の孫引きをそのまま使わないことです。数字の桁が違っていたり、調査の年が古かったりすることがあります。
必ず、元の資料を開いてから書いてください。確かめられなかった数字は、使わない方が安全です。
悪い切り口を、直す例
実際に、よくある悪い切り口を、直した形で見てみます。
| 悪い切り口 | 何が問題か | 直した切り口 |
|---|---|---|
| 〇〇工務店が新サービスを開始 | 誰のどんな困りごとかが分からない | 冬の寒さに悩む築古住宅向けに、〇〇工務店が室温測定つきの点検を開始 |
| 〇〇商店が創業50周年 | 会社の祝い事で、読者との関係が薄い | 創業50年の〇〇商店が、地域の子どもに商店街の歴史を伝える講座を開催 |
| 〇〇歯科が新しい機器を導入 | 設備の話で終わっている | 〇〇歯科が、子どもの歯科治療の怖さを減らす機器を導入。待ち時間も短縮 |
| 〇〇製作所が社員募集を開始 | 求人は広告に見える | 〇〇製作所が、未経験者を職人に育てる半年の育成制度を始める |
どの直しも、読者の姿が見える方向に変えています。商品や会社の話から、人の困りごとや変化の話へ、一歩ずらします。
切り口を社内で決める30分の進め方
切り口は、1人で悩むより、短い会議で決める方が早く決まります。
参加者は、社長、現場の担当者、事務の担当者の3人くらいがちょうどよいです。立場が違うと、見えているお客さんの姿が変わるからです。
最初の10分で、棚卸しの表を使い、種を出せるだけ出します。次の10分で、種の中から読者への意味が強いものに丸を付けます。残りの10分で、丸を付けたものを、先ほどの型で一文にします。
一文が2つか3つ出たら、そのうち記者が読者に伝えたくなりそうなものを1つ選びます。残りは、次回以降のリリースの予備として取っておきます。
現場の言葉が、いちばん強い切り口になる
現場にいる人が使う言葉には、記者が書きたくなる具体性があります。
たとえば、「築古住宅は、冬に居間より廊下の方が先に冷える」という言葉は、設計の専門家なら知っていても、一般の読者には新鮮な発見です。
こうした現場の気づきは、社内では当たり前でも、外から見ると十分にニュースの材料になります。
社員に「お客さんによく驚かれることは何ですか」と聞いてみてください。そこで出てきた言葉は、切り口やタイトルにそのまま使えることがあります。
数字を探す前に、比べる相手を決める
「前年の2倍」「待ち時間が半分」のような数字は、記者に好まれます。
ただし、何と比べた数字なのかを、必ず添えてください。比べる相手が不明な数字は、記事にしたときに誤解を生みます。
比べる相手は、自社の過去、他の地域、一般的な平均値のいずれかです。他の会社の名前を挙げて比べるのは、避けます。比べた根拠を示せないからです。
自社の過去と比べる場合は、集計の期間をそろえます。前年の同じ月と比べる、といった形です。数字を出した日付と範囲を、本文に書いておくと、記者が確認しやすくなります。
切り口を一文にする型
見つけた切り口は、必ず一文にして書き出します。
型は簡単です。「誰が、どんな社会の事情を背景に、何を始めるのか」です。
| 型に当てはめた例 | 業種 |
|---|---|
| 築30年以上の住宅が増える地域で、〇〇工務店が冬の室温を測る点検を始める | 工務店 |
| 人手不足で配達に困る高齢の利用者向けに、〇〇商店が週1回の買い物代行を始める | 小売店 |
| 子育て世代が増える街で、〇〇歯科が土曜の夕方に親子向けの相談会を開く | 歯科医院 |
| 後継者不足が続く業界で、〇〇製作所が若手職人の育成講座を一般に公開する | 製造業 |
この一文がしっくりこないうちは、書き始めない方がよいです。一文が決まれば、タイトルもリード文もその言い換えで書けます。
業種ごとに、切り口の掘り方は少しずつ違う
業種によって、ニュースの種が出やすい場所は変わります。
| 業種 | 種が出やすい場所 | 切り口の方向 |
|---|---|---|
| 工務店、リフォーム | 季節の住まいの困りごと、施工前後の変化 | 暮らしの不便が減った数字 |
| 飲食店、食品 | 地元の素材、季節の味、作り手の工夫 | 地域の生産者との関わり |
| 美容、健康、整体 | 年代ごとの相談の変化、予防の取り組み | 生活習慣の変化への対応 |
| 士業、コンサルタント | 制度の改正、相談の増えた分野 | 制度の変更で困る人への情報提供 |
| 製造業 | 技術の継承、新素材、小ロット対応 | 職人の技と、数字で見える品質 |
| 小売店 | 買い物の不便への対応、地域との協力 | 高齢化や人手不足への取り組み |
士業や健康に関わる業種は、効果や効能を断定する書き方に注意が要ります。法律や広告の規制に触れるおそれがあるときは、専門家や所管の窓口に確かめてから書いてください。
発表のタイミングを決める
切り口が決まったら、いつ出すかを決めます。
記者は、発表の日付を基準にして、記事を載せる日を決めます。発表の日から離れすぎた時期に配信すると、ニュースとしての新しさが落ちます。
イベントや開始日がある発表は、その日の2週間から1か月ほど前に出すのが、一般的な目安とされます。記者が取材の日程を組む余裕を、残しておくためです。
ただし、この日数は、媒体や題材によって違います。確実なのは、「いつから、どこで」をリリースに明記し、記者が逆算できる形にしておくことです。
また、休日や連休の直前は、記者が取材で出払っていることもあります。配信の曜日や時間帯には、目安として意識する程度の注意を払ってください。
同じ週に、別のニュースと重ねない
自社が複数の発表を予定しているときは、日を分けます。
同じ週に2本出すと、記者は「どちらが本命なのか」と迷います。1本ずつ、間隔をあけて出すと、1本ごとに読まれる時間が確保できます。
また、記事になった後に、自社サイトの更新も追いつかなくなります。ページを作る手間まで含めて、無理のない間隔で出してください。
ニュース性の最終チェック表
最後に、切り口が固まったかを、表で確かめます。
| 確かめる項目 | はい | いいえのときの対処 |
|---|---|---|
| 発表の内容を、一文で言い切れる | 次へ進む | 詰め込みすぎ。ニュースを1つに絞る |
| 読者の困りごとか変化が書かれている | 次へ進む | 棚卸しの表に戻り、別の種を探す |
| 数字か第三者の評価で裏づけられる | 次へ進む | 数字を集計するか、評価の言葉を外す |
| 日付と場所がはっきりしている | 次へ進む | 開始日や場所を確定してから書く |
| 写真か図が1点以上ある | 次へ進む | 撮影の予定を立てる |
5つのうち、4つ以上が「はい」なら、書き始めてよい状態です。残りは、書きながら補うこともできます。
切り口で起きやすい3つの間違い
切り口を作るとき、やりすぎて信用を落とすパターンがあります。
| 間違い | 起きること | 避け方 |
|---|---|---|
| 世の中の話題への便乗 | 自社の事業と関係が薄く、読者に違和感を与える | 自社の事業から無理なく説明できる範囲だけ使う |
| 社会課題を大きく語りすぎる | 自社の取り組みの小ささが目立つ | 自社が実際に解決できる範囲を、数字で示す |
| 誇張した「初めて」「唯一」 | 記者が確認し、違うと分かった時点で信用を失う | 範囲を区切り、根拠を添える |
特に気をつけたいのは、社会課題との結びつけ方です。
人手不足、高齢化、物価の上昇などは、確かに多くの会社に関係します。けれども、自社が行うのは、その一部への対応です。「人手不足を解決します」と大きく言うより、「人手不足で配達に困る高齢の利用者向けに、週1回の買い物代行を始めます」と、実際にできる範囲を書く方が、誠実に伝わります。
記者から必ず聞かれる3つの質問
切り口を決めたら、記者に聞かれそうなことを先に考えておきます。
記者が必ず確認したがることは、大きく3つあります。
| 記者の質問 | 準備しておくこと |
|---|---|
| なぜ今、その発表なのか | 時期の理由を一文で言えるようにする |
| 誰の、どんな困りごとが減るのか | 具体的な場面を1つ用意する |
| 数字や写真で確かめられるか | 根拠の資料と、使える写真を手元に置く |
この3つに即答できれば、取材の電話が来ても慌てません。答えられない質問があれば、リリースの内容を見直す合図です。
記者の目線を、会社の中に置く
最後に、社内での進め方を1つ提案します。
リリースの下書きができたら、社内で「記者役」を1人決めてください。記者役の人は、リリースを読んで、最初に浮かんだ疑問を3つ書き出します。
その疑問に、リリースの中で答えが出ていなければ、本文に足します。社内の人がつまずく場所は、記者もつまずきます。
この読み合わせを1回するだけで、リリースの完成度は大きく変わります。
切り口が決まったかを確かめる質問
最後に、切り口が決まったかを確かめます。
自分が記者だとして、この一文を読んで「読者に伝えたい」と思えるか。友人に話したとき、「へえ」と言ってもらえるか。この2つに答えられれば、次の章に進めます。
もし答えられないなら、棚卸しの表に戻って、別の種を探します。切り口は何度作り直しても構いません。
プレスリリースの全体の型と、タイトルの書き方
切り口が一文で決まったら、いよいよ書く作業に入ります。
プレスリリースは、上から順に、発信日と発信者、タイトル、リード文、本文、問い合わせ先と会社概要、という並びで作ります。この並びは、多くの解説で共通しています。
全体の型を一覧で見る
まず、全体の型を表にします。
| 部品 | 役割 | 分量の目安 | 書く内容 |
|---|---|---|---|
| 発信日と発信者 | いつ、誰が出した資料かを示す | 2行 | 配信する日付、会社の正式名称 |
| タイトル | 記者が最初に見る見出し | 30字から50字 | 発表内容と切り口 |
| リード文 | 要点を数行にまとめた文 | 5行から6行 | 5W1Hをまとめた文 |
| 本文 | 詳細と背景 | A4用紙1枚から2枚 | 背景、内容、数字、コメント |
| 問い合わせ先 | 記者が連絡する窓口 | 3行から5行 | 部署、担当者、電話、メール |
| 会社概要 | 会社の基本情報 | 5行ほど | 社名、所在地、事業、設立 |
分量はあくまで目安です。読みやすさを第一に、長くなりすぎない範囲で調整してください。
逆三角形の考え方で、重要な情報から書く
プレスリリースは、結論を最初に書きます。
物語のように起承転結で書くと、結論が最後まで出てきません。記者は途中で閉じてしまうので、もったいないことになります。
重要な情報を先頭に置き、後ろへ行くほど詳細を足す。この形を逆三角形と呼びます。途中で読むのをやめても、要点は伝わる形です。
発信日と発信者の書き方
リリースの頭には、発信日と発信者を置きます。
発信日は、配信する日の日付です。西暦か和暦のどちらかに統一し、年も入れてください。
発信者は、会社の正式名称で書きます。「株式会社」を省略したり、略称を使ったりしないでください。記事にするときに、記者が正式名称を調べ直す手間が出るからです。
右上に「報道関係各位」と書く習慣もあります。書いても書かなくても問題ありませんが、記者に宛てた資料であることが一目で分かります。
タイトルは、記者が本文を読むかを決める
タイトルは、リリースの中で最も読まれる部分です。
記者が本文を開くかどうかは、タイトルの数秒で決まります。ここに時間をかけるのは、決して大げさではありません。
長さは30字から50字を目安にする
実務の解説では、タイトルは30字程度から50字以内に収める、という目安が多く挙げられています。
短すぎると要点が入らず、長すぎると途中で切れて読みにくくなります。メールの件名にも使うことを考えると、前半に大事な言葉を置くのが安全です。
タイトルに入れる3つの要素
タイトルには、誰が、何をする、どんな切り口で、の3つを入れます。
たとえば、「築30年以上の住宅の冬の寒さを見える化 〇〇工務店が室温測定つきの点検を開始」のような形です。
誰が、は社名です。何をする、は点検の開始です。切り口は、冬の寒さを見える化する、の部分です。
サブタイトルで補足する
タイトルに入りきらない補足は、サブタイトルに回せます。
メインのタイトルで切り口を言い切り、サブタイトルで日付や場所、数字を補います。ただし、サブタイトルまで長くすると、全体が読みにくくなります。1行に収まる程度にしてください。
悪いタイトルと、直したタイトル
具体例で比べます。
| 悪いタイトル | 問題点 | 直したタイトル |
|---|---|---|
| 新サービス開始のお知らせ | 何のサービスか分からない | 冬の室温を測る住宅点検を開始 〇〇工務店 |
| 〇〇工務店が画期的な点検を開始 | 画期的が主観で、中身が見えない | 築古住宅の冬の寒さを数値で確認 〇〇工務店が点検開始 |
| お客様に喜ばれる家づくりを目指して | 発表内容が無い | 〇〇市内の築30年以上の住宅を対象に、10月から無料点検 |
| 〇〇工務店からのお知らせ | 情報がゼロ | 〇〇工務店、10月1日から断熱の無料点検 受付開始 |
直したタイトルは、どれも読んだ瞬間に何の発表かが分かります。
タイトルの案を、3本出してから選ぶ
タイトルは、最初に思いついた1本で決めない方が良いです。
3本の案を書き、一番「記者が開きたくなる」ものを選びます。社内の別の人に見せて、どれが一番読みたくなるかを聞くのも効果的です。
| 案の観点 | 例 |
|---|---|
| 切り口を前に出す案 | 築30年以上の家の冬の寒さを見える化 点検を開始 |
| 数字を前に出す案 | 室温の差を測定 築古住宅向けの無料点検が10月に開始 |
| 地域を前に出す案 | 〇〇市の築古住宅向けに、冬の室温を測る点検 〇〇工務店 |
同じ内容でも、前に出す要素で印象が変わります。送る先の媒体に合わせて、使い分けてください。
リード文と本文の書き方
タイトルの次に読まれるのが、リード文です。
リード文は、タイトルの要点を数行に広げた文です。ここだけを読んでも、発表の全体が分かる状態にします。
リード文は、社名から始めて5W1Hを入れる
リード文の型は、決まっています。
冒頭に社名を置き、所在地と代表者名を括弧に入れます。続けて、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように、を入れます。
| 5W1Hの要素 | 意味 | リード文での書き方の例 |
|---|---|---|
| 誰が | 主語になる会社 | 〇〇工務店(所在地:〇〇市、代表取締役:〇〇)は |
| いつ | 日付や期間 | 2026年10月1日から |
| どこで | 場所や対象の範囲 | 〇〇市内の住宅を対象に |
| 何を | 発表の中身 | 冬の室温を測る点検を |
| なぜ | 背景や理由 | 築古住宅の寒さの相談が増えたため |
| どのように | 方法や手順 | 無料で、専用の測定機器を使って |
リード文の分量は、5行から6行が目安とされます。短いリード文でも、5W1Hが漏れていなければ十分です。
リード文の例
先ほどの表を、文章にします。
「〇〇工務店(所在地:〇〇市、代表取締役:〇〇)は、2026年10月1日から、〇〇市内の築30年以上の住宅を対象に、冬の室温を測定する無料点検を始めます。築古住宅の寒さに関する相談が増えたことを受けたもので、専用の機器で居間や廊下の温度差を測り、結果を数値で報告します。」
この文章は、2文で5W1Hがすべて入っています。長い一文で詰め込むより、2文に分けた方が読みやすくなります。
本文は、リード文の内容を3つの塊で広げる
本文は、リード文に書いたことの詳細を、順に展開します。
塊は3つです。背景、内容、今後の展開。この3つの順に書くと、記者は「なぜ今なのか」「何をするのか」「これからどうなるのか」を順に追えます。
| 塊 | 書く内容 | 分量の目安 |
|---|---|---|
| 背景 | なぜこの取り組みを始めたのか | 3段落ほど |
| 内容 | 具体的に何をするのか、どう使うのか | 4段落から5段落 |
| 今後の展開 | これからどう広げるのか | 1段落から2段落 |
背景には、社会の事情と自社の気づきを入れる
背景は、切り口で決めた「社会の事情」を言葉にする場所です。
自社が実際に見聞きした事実を、数字や具体的な場面で書きます。「築30年以上の住宅について、昨年の冬の相談が前年より増えた」のような一文です。
公的な資料を使うなら、出どころを本文に書きます。「国土交通省が公表した調査によると」のように、機関名と資料名を文章にします。数字は、必ず元の資料で確かめてから書いてください。
内容には、数字と手順を入れる
内容では、読者が知りたいことを先回りして書きます。
いつから、どこで、誰が対象で、どんな手順で、費用はどうなるのか。この問いに全部答える形にします。
金額に関する情報は、発表の中身として必要なら書きます。ただし、数字は正確に、前提となる条件も添えてください。
今後の展開は、無理に大きく言わない
今後の計画は、実現する見込みのある範囲で書きます。
「全国に展開します」のような大きな言葉は、根拠が無ければ書かない方が良いです。記者は、書かれた計画が実際に実行されるかを確かめることがあります。
「まずは〇〇市内で始め、反応を見て対象エリアの拡大を検討します」くらいの、等身大の書き方が信頼されます。
コメントを入れると、記事にしやすくなる
本文の中に、代表者や担当者のコメントを入れると、記者が記事に引用しやすくなります。
コメントは、「この取り組みを始めた理由」と「これから目指すこと」を、本人の言葉で語る形にします。
悪い例は、「お客様に喜ばれるよう努力して参ります」のような、誰でも言える一文です。良い例は、「冬に廊下が冷えるという声を何度も聞き、数字で見せれば家族で話し合うきっかけになると考えた」のように、具体的な出来事が入った一文です。
コメントの前後には、発言者の肩書きと名前を書きます。
広告的な表現と専門用語を減らす
本文では、広告のような言い回しを避けます。
「最高の」「画期的な」「圧倒的な」といった評価の言葉は、事実に置き換えます。
専門用語は、できるだけ使わずに、使う場合は意味を添えます。記者は、その分野の専門家とは限りません。「断熱等級」のような言葉は、「住宅の断熱性能を示す基準」と説明を足してください。
また、一文は短く、一段落は2文から3文までに収めます。改行を多めにすると、画面でも紙でも読みやすくなります。
画像や添付資料で、本文を軽くする
写真や図は、文章よりも早く内容が伝わります。
本文に長い表やデータを入れたくなったら、別の資料にして添付する方が読みやすくなります。本文は要点だけにして、詳細は添付で補う形です。
写真は、使ってよいものかを確認します。人が写っている場合は、本人の許可が必要です。記者が記事に使えるよう、使用の可否を一言添えておくと、親切です。
画像は、解像度の高いものを用意し、ファイルの名前も内容が分かるものにします。
文体と表記は、最初に決めて最後まで通す
文体は、「です・ます」で統一するのが一般的です。
報道機関向けの資料では、事実を淡々と伝えるために「である」調も使われますが、中小企業の初めてのリリースなら、読みやすい「です・ます」調で問題ありません。
大事なのは、途中で混ざらないことです。
| 表記の項目 | 決め方の例 | 混ざると起きること |
|---|---|---|
| 文体 | です・ます調で統一 | 資料の完成度が低く見える |
| 日付 | 2026年10月1日 のように年から書く | 年がないと、いつの話か不明になる |
| 数字 | 算用数字で統一 | 漢数字と混ざると読みにくい |
| 単位 | 平方メートル、人、件など正式な形 | 略語は意味が伝わりにくい |
| 社名 | 正式名称で毎回同じ | 略称だと検索で見つけにくい |
| 人名 | 肩書きと姓名を最初にフルネームで | 肩書きなしだと誰か分からない |
提出する形式は、メール本文とPDFの両方を用意する
完成したリリースは、メールの本文に貼れる形と、PDFの形の両方を用意しておくと便利です。
記者によっては、メールの本文に直接貼られたものを好みます。添付ファイルを開く手間が省けるからです。別の記者は、印刷して保管するため、PDFを好みます。
PDFにするときは、文字が画像になっていないか確認してください。文字を選択して、コピーできる状態であれば、記者が引用するときも楽になります。
写真は、メールに貼りつけず、別のファイルとして添付します。容量が大きいときは、ダウンロードできるアドレスを案内する方法もあります。
書き終えたあとは、声に出して読む
書き終えたら、一度、声に出して読んでみてください。
口に出して引っかかる場所は、読んでいても引っかかります。一文が長すぎる、言葉が重複している、主語が抜けている。こうした問題が、声に出すと見つかります。
可能なら、会社の別の人に読んでもらい、聞いた内容を自分の言葉で言い直してもらいます。言い直しが、自分の伝えたいことと違っていれば、書き方を直します。
校正のチェック表
最後に、細かい確認をします。
| 確認の項目 | 見る場所 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 社名と人名の漢字 | 全体 | 旧字体、似た字 |
| 日付と曜日 | リード文、本文 | 曜日が合っていない |
| 数字の桁と単位 | 本文、表 | 万と千の取り違え |
| 電話番号とメールアドレス | 問い合わせ先 | 市外局番、記号の間違い |
| 自社サイトのアドレス | 問い合わせ先 | 古いアドレスが残る |
| 引用した資料の出どころ | 本文 | 調査の年が古い |
| 写真の使用許可 | 添付資料 | 人が写っている写真 |
この表を印刷して、チェックを入れながら確認すると、抜けが減ります。
完成したら、公開前に社内で見せる相手を決める
リリースは、外に出る前に、必ず社内の誰かに読んでもらいます。
見せる相手は、社長、現場の責任者、法務や契約に詳しい人の3名が理想です。小さな会社なら、1人が兼ねても構いません。
社長には、発表の意図に間違いがないかを見てもらいます。現場の責任者には、数字や手順の正確さを確かめてもらいます。契約や法律に詳しい人には、取引先の名前や、効果の書き方に問題がないかを見てもらいます。
特に、取引先の名前を出すときは、事前に相手の許可を取ってください。許可なく名前を出すと、取引の信頼を損なうおそれがあります。
言い換えの早見表:広告の言葉を、事実の言葉に直す
本文を書いていて、広告のような言葉が出てきたら、次の表で言い換えます。
| 避けたい言葉 | 記者が感じること | 言い換えの方向 |
|---|---|---|
| 業界初 | 本当か確かめる手間が増える | 「〇〇市内で初めて」と範囲を区切り、根拠を添える |
| 圧倒的な品質 | 何と比べたのか不明 | 検査の基準と合格率を数字で書く |
| 多くのお客様に支持 | 何人か分からない | 「利用者は延べ200人」と数える |
| 誰でも簡単に | 条件が不明 | 「予約は電話で1回、所要時間は30分」と手順で書く |
| 話題の | 誰の話題か不明 | 話題になった事実と日付を書く |
| こだわりの | 何にこだわったのか不明 | こだわった点を1つ具体的に書く |
| 満足度が高い | 数字が無い | アンケートの回収数と、満足と答えた割合を書く |
言い換えの基本は、「確かめられる形にする」ことです。
数字の書き方にも、決まりがある
数字は、記者が最も確認する部分です。
| 数字の種類 | 書き方 | 添える情報 |
|---|---|---|
| 自社で集計した数字 | 「2025年10月から2026年9月の相談件数は120件」 | 期間と集計の方法 |
| 公的機関の数字 | 「〇〇省が公表した調査によると」 | 調査の名前と時点 |
| 前年との比較 | 「前年の同じ期間より1.5倍」 | 比べた期間 |
| 割合 | 「利用者の8割が60代以上」 | 母数となる人数 |
| 見込みの数字 | 「年間100件を見込む」 | 見込みの根拠 |
割合だけを書いて母数を書かないと、5人中4人でも、500人中400人でも、同じ「8割」になります。記者はこの違いを気にします。母数を添える習慣をつけてください。
書く順番は、本文から先にしても良い
部品の並びは、タイトルが先頭ですが、書く順番は違っても構いません。
多くの人は、本文から先に書くと、スムーズに進みます。背景と内容を先に書き、そこから要点を抜き出してリード文にします。リード文ができたら、さらにその要点を縮めて、タイトルにします。
この逆順の方法なら、タイトルで悩む時間が減ります。本文の中身が固まっているので、一番大事な言葉が自然に見えてくるからです。
本文に見出しをつけて、拾い読みしやすくする
本文は、記者が拾い読みすることを前提にして、見出しで区切ります。
見出しは、「背景」「点検の内容」「代表者のコメント」「今後の予定」のように、短く、中身が想像できる言葉にします。
ただし、見出しを増やしすぎると、A4用紙1枚から2枚に収まらなくなります。4つか5つに絞るのが、扱いやすい分量です。
長くなりすぎたときは、削る基準を決める
書いていると、あれもこれも入れたくなり、分量が増えます。
削る基準は、「この文を消しても、発表の中身が変わらないか」です。変わらない文は、削ります。変わるが、詳しすぎる文は、添付資料に回します。
会社の自慢話、過去の細かい経緯、競合との比較は、真っ先に削る候補です。
問い合わせ先と会社概要の書き方
最後の部品は、問い合わせ先と会社概要です。
目立たない場所ですが、記者が実際に連絡を取るかどうかは、ここで決まります。
問い合わせ先は、記者が迷わず連絡できる形にする
問い合わせ先には、部署名、担当者の名前、電話番号、メールアドレスを書きます。
電話とメールは、必須と考えてください。どちらか片方だけだと、記者が連絡しにくい時間帯が生まれます。
| 項目 | 書き方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 部署名 | 経営企画室、広報担当など | 部署が無ければ役職でもよい |
| 担当者名 | 姓名をフルネームで | 読み仮名を添えると親切 |
| 電話番号 | 直通か、つながりやすい番号 | 営業時間を添える |
| メール | 毎日確認するアドレス | 個人の私用アドレスは使わない |
| 担当者の人数 | できれば2名 | 不在でも連絡を逃さない |
担当者は2名にして、連絡を逃さない
記者からの連絡は、いつ来るか分かりません。
担当者が1人しかいないと、外出や休みの日に連絡が取れず、取材の機会を逃します。2名の名前を書いておけば、どちらかが対応できます。
担当者には、リリースの内容を理解してもらい、聞かれそうな質問への答えを事前に決めておきます。後の章で詳しく触れます。
問い合わせ先に、自社サイトのページを添える
問い合わせ先の近くに、自社サイトのお知らせページのアドレスを書いておきます。
記者が詳細を確認したいとき、ホームページで同じ内容が見られれば、電話をかけずに裏づけが取れます。これが、この記事で強く勧めている「確かめる先」です。
アドレスは、必ずリリースの内容と同じページに飛ぶものを書いてください。トップページのアドレスだけだと、探す手間がかかります。
会社概要は、5行ほどで短くまとめる
会社概要は、記者が会社の素性を確認するための欄です。
社名、所在地、代表者名、設立年、事業内容、ホームページのアドレスを書きます。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 社名 | 〇〇工務店 |
| 所在地 | 〇〇県〇〇市〇〇町1丁目 |
| 代表者 | 代表取締役 〇〇 〇〇 |
| 設立 | 1986年 |
| 事業内容 | 戸建て住宅の新築、リフォーム、断熱改修 |
| ホームページ | 自社サイトのアドレス |
会社概要は、すべてのリリースで同じ内容にします。リリースごとに表現が違うと、記者や読者は混乱します。
会社概要を、自社サイトの会社情報と一致させる
ここは、見落とされやすい点です。
リリースの会社概要と、自社サイトの会社情報の内容が食い違っていると、会社名で検索した人は、どちらが正しいのか迷います。AIも同じです。食い違いがあると、正しい情報を選べません。
所在地の表記、設立年、事業内容の言い回しは、リリースを書くときに自社サイトと見比べて、同じ言葉に統一してください。
この作業は、地味ですが、信用を守るために最も効果が大きい作業のひとつです。
架空の会社で見る、プレスリリースの例文と部品ごとの解説
ここまでの内容を、1本のリリースにまとめます。
〇〇工務店は、この記事のために作った架空の会社です。実在の会社、団体、地名とは関係ありません。自社の内容に差し替えて、下書きとして使ってください。
例文:全体
以下が、リリースの全文です。
2026年10月1日
報道関係各位
〇〇工務店
築30年以上の住宅の冬の寒さを見える化 〇〇工務店が室温測定つきの無料点検を開始
〇〇市内の住宅が対象 10月1日から受け付け
〇〇工務店(所在地:〇〇県〇〇市、代表取締役:〇〇 〇〇)は、2026年10月1日から、〇〇市内の築30年以上の住宅を対象に、冬の室温を測定する無料点検を始めます。築古住宅の寒さに関する相談が増えたことを受けたもので、専用の機器で居間や廊下の温度差を測り、結果を数値でお渡しします。
【背景】
当社には、昨年の冬、築30年以上の住宅について、寒さに関する相談が寄せられました。相談の多くは、居間は暖かいのに、廊下や脱衣所が極端に冷えるという内容でした。
寒さは感覚の話になりやすく、家族の間でも「寒い」「慣れた」と意見が分かれます。そこで、温度を数値で見せることで、改修が必要な場所を家族で話し合えるようにしたいと考えました。
【点検の内容】
点検は、専門の担当者が自宅を訪問し、居間、廊下、脱衣所、寝室の4か所の室温を朝と夜に測定します。測定は2日間で、結果は1週間後に報告書でお渡しします。
費用は無料で、点検後に改修を契約する義務はありません。受け付けは、電話と当社ホームページの専用ページで行います。
【代表者のコメント】
代表取締役の〇〇は、次のように話しています。「冬に廊下が冷えるという声を何度も聞いてきました。数字で見せれば、家族で話し合うきっかけになると考えて、この点検を始めました。」
【今後の予定】
まずは〇〇市内で1年間実施し、点検を受けた家庭の声をもとに、内容を見直します。結果は、当社ホームページで公表する予定です。
【会社概要】
社名:〇〇工務店 所在地:〇〇県〇〇市 代表者:代表取締役 〇〇 〇〇 設立:1986年 事業内容:戸建て住宅の新築、リフォーム、断熱改修
【本件に関する問い合わせ先】
〇〇工務店 広報担当:〇〇(電話)0000-00-0000 / 〇〇(電話)0000-00-0001
メール:(広報用のアドレス) 受付:平日9時から18時
詳細ページ:(自社サイトの専用ページのアドレス)
この例文は、A4用紙で1枚に収まる分量です。初めてのリリースは、このくらいの長さで十分です。
例文の部品ごとの解説
例文を、部品ごとに分けて見ていきます。
| 部品 | 例文での書き方 | 意図 |
|---|---|---|
| 発信日 | 2026年10月1日 | 年から書き、いつの資料かを明示 |
| 宛先 | 報道関係各位 | 記者向けの資料であることを示す |
| タイトル | 築30年以上の住宅の冬の寒さを見える化 | 切り口を前半に置いた |
| サブタイトル | 〇〇市内の住宅が対象 10月1日から受け付け | 対象と日付を補った |
| リード文 | 社名から始め、5W1Hを2文で入れた | 要点がここだけで伝わる |
| 背景 | 相談の中身と、数値で見せる理由 | なぜ今なのかを説明 |
| 点検の内容 | 場所、回数、日数、報告時期、費用 | 記者の疑問に先回りして答える |
| コメント | 具体的な出来事が入った一文 | 記事に引用しやすい |
| 今後の予定 | 等身大の計画 | 実行可能な範囲 |
| 問い合わせ先 | 2名の連絡先、受付時間、詳細ページ | 連絡の機会を逃さない |
タイトルの工夫
例文のタイトルは、前半に切り口、後半に社名と発表内容を置きました。
メールの件名に使うと、前半だけが表示されることがあります。そのとき、「築30年以上の住宅の冬の寒さを見える化」までが見えれば、読むかどうかを判断してもらえます。
サブタイトルでは、対象と日付を補いました。ここは、読者が行動するために必要な情報です。
リード文の工夫
リード文は、2文に分けました。
1文目で、いつ、どこで、誰が、何をするのかを言い切りました。2文目で、なぜ、どのようにを補いました。
「相談が増えた」という背景は、リード文にも1行だけ入れておきます。背景を本文まで読まないと分からない書き方にしてしまうと、リード文だけで判断する記者には伝わらないからです。
本文の工夫
本文は、見出しをつけて塊を分けました。
背景、点検の内容、コメント、今後の予定の4つです。見出しがあると、記者は知りたい箇所だけを拾い読みできます。
点検の内容では、場所、回数、日数、報告の時期、費用を、すべて具体的に書きました。記者が確認の電話をかけなくても済むように、先に疑問を潰しておく書き方です。
例文を、自社の内容に差し替える手順
例文を使うときは、次の順番で差し替えます。
最初に、切り口の一文を決めて、タイトルを書き換えます。次に、リード文の5W1Hを、自社の内容に入れ替えます。そのうえで、背景と内容を、事実に合わせて書き直します。
最後に、コメント、会社概要、問い合わせ先を、実在の情報に差し替えます。
差し替えた後に、例文の言葉が残っていないかを、必ず検索で確認してください。「〇〇」という文字が残っていたら、差し替え漏れです。
業種を変えた短い例
別の業種の、タイトルとリード文だけを並べます。
| 業種 | タイトル例 | リード文の書き出し例 |
|---|---|---|
| 小売店(架空) | 高齢の利用者向けに、週1回の買い物代行を開始 〇〇商店 | 〇〇商店(所在地:〇〇県〇〇市)は、〇〇市内の高齢の利用者を対象に、週1回の買い物代行を始めます |
| 歯科医院(架空) | 子どもの治療の怖さを減らす相談会を開催 〇〇歯科 | 〇〇歯科は、土曜の夕方に、親子向けの相談会を開きます |
| 製造業(架空) | 未経験者を職人に育てる半年の講座を一般公開 〇〇製作所 | 〇〇製作所は、後継者不足が続く業界の人材育成のため、半年の講座を一般に公開します |
どれも、型は同じです。切り口を前に出し、社名と発表内容を後ろに置いています。
自社サイトに同じ内容のページを置く理由
ここからが、この記事の中心です。
プレスリリースを配信するときは、同じ内容のページを、必ず自社のホームページにも置いてください。
記事を見た人は、まず会社名で検索する
新聞やウェブ記事で会社名を見た人は、どうするでしょうか。
多くの場合、その場で会社名を検索します。本当にある会社なのか、どんな会社なのか、サービスの詳細はどこで見られるのか。それを確かめたいからです。
そのとき、検索結果に自社サイトのページが出てこない、出てきても記事と同じ内容が見つからない、という状態だと、読者は不安になります。せっかくの記事が、問い合わせにつながりません。
取材をした記者も、確認に使う
記者も同じことをします。
リリースを受け取った記者は、書く前に、その会社の公式サイトを開きます。発表内容が、会社の公式な情報として載っているかを確かめるためです。
載っていれば、記者は安心して記事を書けます。載っていなければ、リリースの内容が本当に会社の公式なものかどうかに、確認の手間がかかります。
AIも、公開されたページを探して答える
最近は、AIに会社のことを聞く人が増えています。
AIの仕組みによって違いはありますが、会社名を聞かれたAIは、ウェブ上で公開されているページを探して、答えを組み立てることが多くあります。
そのとき、公式サイトに発表内容が文章で載っていれば、AIは正しい情報を拾えます。載っていなければ、配信サービスの転載ページや、記事の要約ページに頼ることになり、内容が不正確に伝わる可能性が上がります。
AIに自社がどう答えられるかについては、次の記事も参考になります。
「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、ページを整える
弊社が大切にしている考え方に、「売れるサイトはみな謙虚」があります。
自社の魅力を大きく見せるよりも、余計な装飾を引き算して、訪れた人が迷わず必要な情報にたどり着ける形に整える、という考え方です。
プレスリリースのページにも、そのまま当てはまります。大きな飾りや長い自社の自慢話を置かず、事実を正確に、短く、迷わず読める形で置きます。
記者も、読者も、AIも、飾りの多いページより、事実が整理されたページを信用します。
自社サイトのページに入れる項目
どんな項目を入れるかを、表にしました。
| 項目 | 書く内容 | 理由 |
|---|---|---|
| ページの見出し | リリースのタイトルと同じ言葉 | 検索した人が同じ話だと分かる |
| 発表日 | 年月日を明記 | いつの情報か分かる |
| 発表の要点 | リード文と同じ内容 | 最初の数行で全体が分かる |
| 詳細 | 背景、内容、数字、手順 | 記者と読者の疑問に答える |
| コメント | 代表者のコメント | 人の顔が見える |
| 写真 | リリースに添付したものと同じ | 記事と照合できる |
| 問い合わせ先 | リリースと同じ窓口 | 連絡が迷わない |
| 会社概要へのリンク | 会社情報のページへ | 素性が確認できる |
配信と同じ日に公開する
自社サイトのページは、配信と同じ日に公開します。
記者が、配信を受けて自社サイトを開いたときに、ページがまだ無い、という事態を避けるためです。前日の夜までに、非公開で準備しておき、配信の時間に合わせて公開する運びが安全です。
ページのアドレスは、リリースの本文にも書いておきます。記者が、リリースから直接ページへ飛べるようにします。
公開したあとも、情報は更新する
ページを置いたら、終わりではありません。
内容に変更があったら、すぐ自社サイトを更新します。受け付けの終了、対象の拡大、数字の更新などです。リリースの内容と、自社サイトの内容が食い違ったままになると、信用を損ないます。
また、記事に取り上げられたら、その掲載実績を、ページの末尾に追記します。掲載先の許可を確認し、記事へのリンクを添える形が一般的です。
自社サイトのページを、後から探しやすくする
ページは、お知らせの一覧からたどれるようにします。
トップページから、お知らせ、または新着情報の一覧へ進めて、そこに発表日の新しい順で並べておく形が分かりやすいです。リリースが増えたときも、一覧から探せます。
| 置き場所 | 向いている使い方 | 注意点 |
|---|---|---|
| お知らせ欄の1ページ | 短い発表を日付つきで | 古くなると埋もれる |
| 専用のページ | サービスや取り組みの詳細 | 内容が変わったら更新する |
| 報道関係者向けのページ | リリースを一覧にまとめる | 問い合わせ先を明記する |
この考え方は、ホームページ全体の見直しにもつながる
プレスリリースのためにページを整えると、ホームページ全体の見直しにも役立ちます。
会社情報の表記を統一する、問い合わせ先を分かりやすくする、事実を文章で書く。これらは、AI検索への備えとも共通する作業です。
ホームページ全体を、AIが読みやすい形に整える進め方は、別の記事で詳しく書いています。
自社サイトのページの文章例
先ほどの例文を、自社サイトのページに置くときの形も見ておきます。
ページの見出しは、リリースのタイトルと同じ言葉にします。その下に、発表日を書き、すぐ後ろに要点を2文で置きます。
「2026年10月1日 〇〇工務店は、10月1日から、〇〇市内の築30年以上の住宅を対象に、冬の室温を測定する無料点検を始めます。居間や廊下の温度差を専用の機器で測り、結果を数値でお渡しします。」
その下に、背景、点検の内容、受け付けの方法を、見出しつきで並べます。受け付けの電話番号と、申し込みのボタンは、ページの上の方と下の方の両方に置くと、迷いません。
ページの最後には、リリースと同じ会社概要と、問い合わせ先を置きます。そして、会社情報のページへのリンクを添えます。
配信のしかたと、配信したあとの対応
リリースが書けて、自社サイトのページも用意できたら、配信です。
配信の手段は、大きく4つあります。それぞれに向き不向きがあるので、目的に合わせて選んでください。
配信の手段は4つ
| 手段 | 内容 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 無料の配信サービス | 無料で使える配信サービスに登録して配信 | 初めて出すとき、試したいとき | 届く範囲や機能に制限がある場合がある |
| 有料の配信サービス | 有料の配信サービスで、より多くの媒体に配信 | 広く知らせたいとき | 費用がかかるため、目的を絞って使う |
| 記者クラブへの投げ込み | 記者クラブの窓口に資料を直接届ける | 地域の話題、官公庁や団体に関わる話題 | クラブごとに受け付けの運用が違う |
| 個別の送付 | 取り上げてほしい記者に、直接メールなどで送る | 相手を選びたいとき | 事前に相手の送付先の確認が必要 |
選ぶときの一番の基準は、届けたい記者がどこにいるかです。目的と予算は、その次に考えます。
記者クラブへの投げ込みについて
記者クラブは、あまり馴染みがないかもしれません。
日本新聞協会は、記者クラブを次のように説明しています。「公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される『取材・報道のための自主的な組織』」です。
同じ見解の中には、「市民からの情報発信に対しても、記者クラブは開かれています」という一文もあります。外から資料を届けることは、想定されています。
ただし、どのクラブが、どんな資料を、どんな方法で受け付けるかは、クラブごとに運用が違います。前述のQ&Aサイトの回答でも、記者クラブの連絡先は、関係する役所の代表番号に電話して尋ねる方法が示されていました。
送る前に、電話で受け付けの可否、部数、持参か郵送かを確認してください。記者クラブの位置づけは、日本新聞協会の見解のページで確認できます。
配信のタイミングと曜日
配信するのは、平日の日中が一般的です。
記者の締め切りは、媒体によって違います。朝刊なら前日の夕方、夕刊なら当日の朝など、記者の動きに合わせて余裕をもたせます。
迷う場合は、午前中の早い時間に配信し、同じ日の午後に、問い合わせに対応できる体制を整えます。
配信した日の、社内の動き
配信日は、担当者が電話とメールを待てる状態にします。
外出や会議が入らないようにして、問い合わせ先に書いた2名のどちらかが、必ず連絡を受けられる日にします。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 朝 | 自社サイトのページが公開されているか確認 |
| 配信直後 | 配信の画面で、送信の記録を保存 |
| 日中 | 電話とメールを確認し、すぐ返信 |
| 夕方 | 反応の記録をまとめ、翌日の対応を決める |
想定問答を準備する
記者から連絡が来たときに慌てないよう、想定問答を作っておきます。
聞かれそうなことを10個ほど書き出し、答えを決めておきます。「対象の条件は」「費用は」「いつまで受け付けるか」「実績は」「今後の予定は」といった質問です。
答えを書いたメモを、担当者2名で共有してください。同じ質問に違う答えを返すと、記者は混乱します。
反応が無いときの対処
配信しても、すぐ反応があるとは限りません。
反応が無くても、がっかりする必要はありません。多くの場合、そのまま記事にならないのが普通です。
数日後に、特に載せたい記者には、短い電話かメールで「先日のリリースの件で、補足があればお伝えします」と一度だけ連絡します。しつこく何度も連絡するのは避けます。
反応が無かった場合は、切り口を見直し、次のリリースに活かします。同じ内容を、何度も配信し直すことは控えます。
記事になったあとの対応
記事になったら、まず記者にお礼を伝えます。
記事の内容を確認し、事実と違う点があれば、早めに伝えます。ただし、表現の好みを理由に書き直しを求めることは避けます。
そのうえで、記事へのリンクや掲載の様子を、自社サイトのページに追記します。転載や引用の可否は、掲載元の決まりに従って確認します。
また、記事を見た人からの問い合わせが増えるので、窓口の対応を整えておいてください。
配信サービスを選ぶときの確認項目
配信サービスを使う場合は、名前や評判よりも、確認する項目で選びます。
| 確認項目 | 見るポイント | 理由 |
|---|---|---|
| 届く媒体の種類 | 地域、業界、全国のどれに強いか | 届けたい記者と合っているか |
| 掲載のしくみ | 配信後に、サービス上のページが作られるか | 転載ページが検索に出る場合がある |
| 修正のしやすさ | 配信後の訂正ができるか | 誤りが見つかったときの備え |
| 審査の有無 | 配信前に内容の確認があるか | 公開までの日数に影響する |
| 利用条件 | 無料と有料で何が違うか | 目的に必要な機能があるか |
| 配信結果の記録 | どの媒体に届いたかが分かるか | 次回の改善に使える |
どのサービスでも、配信後に、サービス上に転載ページができることがあります。そのページより先に、自社サイトの公式ページが検索で見つかる状態にしておくと、読者は公式の情報にたどり着きます。
配信の記録を、1枚の表に残す
配信のたびに、記録を残します。
| 記録する項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 配信日と時間 | 2026年10月1日 午前9時 |
| 配信の手段 | 配信サービス、投げ込み、個別送付の別 |
| 送った先 | 媒体の種類と、数 |
| 切り口の一文 | 築古住宅の冬の寒さを見える化 |
| 反応 | 問い合わせの件数、取材の依頼、掲載の有無 |
| 気づき | 次回に直すこと |
この表が溜まると、どんな切り口が反応を得やすいかが分かってきます。広報の経験を、会社の財産にできます。
取材の依頼が来たときの受け方
記者から取材の依頼が来たら、まず日程と目的を聞きます。
何を、誰に聞きたいのか。記事になるのはいつ頃か。写真や映像の撮影はあるか。この3つを確認すれば、準備の方向が決まります。
取材では、リリースに書いた内容を、自分の言葉で説明できるようにしておきます。数字が出たときは、手元に資料を置いて、正確に答えます。
その場で答えられないときは、無理に答えず、後で確認して連絡すると伝えます。曖昧な答えを出すより、正確な情報を後から渡す方が、記者の信頼を得られます。
配信したあとに、会社名で検索して確かめる
配信から数日たったら、自分で会社名を検索してみてください。
確かめる手順は3つです。社名だけで検索する、社名にサービス名を足して検索する、そしてAIに会社のことを質問する。
| 確かめ方 | 見ること | 直すこと |
|---|---|---|
| 社名だけで検索する | 自社サイトのページが上の方に出るか | 会社情報の表記をそろえる |
| 社名とサービス名で検索する | リリースの専用ページが出るか | ページの見出しを、リリースのタイトルに近づける |
| AIに会社のことを質問する | 答えが事実と合っているか | 誤った情報の元になっていそうなページを直す |
AIの答えが事実と違っていたときは、AIそのものを直すことはできません。自社サイトに、正しい事実を、文章ではっきり書いておく以外に手はありません。
AI検索で自社名がどう扱われるかは、次の記事にまとめています。
リリースの内容を、ほかの場面にも使い回す
書いたリリースは、配信だけで終わらせるのはもったいないです。
| 使い回す場面 | 使い方 | 変える点 |
|---|---|---|
| 営業資料 | 背景と内容の部分を抜き出す | 記者向けの言い回しを、お客さん向けに直す |
| 採用ページ | 取り組みの紹介として使う | 働く人の視点を足す |
| 取引先へのメール | リード文を貼り、詳細ページを案内 | 取引先に関係する点を強調 |
| SNSの投稿 | タイトルと要点を短く載せる | 詳細ページへのリンクを添える |
| 店頭や事務所の掲示 | 要点を1枚にまとめる | 文字を大きくする |
使い回すときも、事実の内容は変えません。表現だけを、相手に合わせて調整します。内容が場面ごとに違っていると、後で問い合わせが来たときに説明が食い違います。
記事になった実績は、ほかの発表の信用になる
記事に取り上げられたら、その実績は、次のリリースの強い裏づけになります。
「〇〇新聞に掲載された」と書けるだけで、記者は「他の記者が価値を認めた会社だ」と受け止めます。ただし、掲載先の名前を出すときは、事実と一致していることを必ず確かめてください。
掲載された記事そのものを、自社サイトにそのまま転載することは、著作権の関係で控えます。記事へのリンクと、紹介された事実を、自分の言葉でまとめる形にします。
初めてのプレスリリースで起きやすい失敗と、直し方
型と切り口を押さえても、つまずく場所はあります。
初めてのリリースで起きやすい失敗を、原因と直し方つきで整理します。
失敗の一覧
| 失敗 | 起きていること | 直し方 |
|---|---|---|
| 想いから書き始める | 最初の数行で、何の発表か分からない | リード文に発表内容を先に置く |
| 切り口が無く、新サービスの案内になる | 誰の話か不明で、記事の見出しにならない | 読者の困りごとを一文にして先頭に置く |
| 数字が無い | 規模や変化が分からず、記事にしにくい | 自社の集計か公的資料の数字を入れる |
| 主観の評価が多い | 事実との区別がつかず、使えない | 数字と第三者の評価に置き換える |
| 1本に複数のニュースを詰める | どれが本命か不明になる | ニュースごとに1本ずつ分ける |
| 問い合わせ先が1つだけ | 不在のとき連絡が途絶える | 担当者を2名にして、電話とメールを書く |
| 自社サイトに同じ内容が無い | 検索した人や記者が確認できない | 配信と同じ日に、同じ内容のページを公開する |
| 配信して終わりにする | 反応を次に活かせない | 記録を残し、2本目の切り口に反映する |
失敗1:専門用語が多く、記者が置いていかれる
自社の中では普通に使っている言葉が、外から見ると分からないことがあります。
業界の略語や、社内だけで通じる呼び名は、リリースに入れない方が安全です。使う場合は、初めて出てきたところで、短い説明を添えてください。
確認の方法は簡単です。業界の外にいる家族や友人に読んでもらい、分からない言葉に線を引いてもらいます。線が引かれた言葉は、言い換えるか、説明を足します。
失敗2:過去の栄誉ばかりが並び、今回の発表が埋もれる
創業からの歩みや、過去の受賞歴を長く書く会社は多いです。
けれども、記者が知りたいのは、今回の発表の中身です。沿革は、会社概要に短くまとめ、本文は今回の話に集中させます。
過去の実績は、今回の発表を裏づける材料として、必要な分だけ使います。
失敗3:写真が小さい、または無い
写真が無いと、記者は記事にするときの絵を想像できません。
スマートフォンで撮った写真でも、明るく、ピントが合っていて、内容が分かるものであれば使えます。商品や現場の様子、人物、できあがりの様子などを、数枚用意してください。
人が写っている写真は、必ず本人に使用の許可を取ります。許可の記録も、残しておくと安心です。
失敗4:誰も答えられない問い合わせが来る
配信した日に電話がかかってきたものの、担当者が詳細を知らず、答えられないことがあります。
記者は、その場で確認したいことがあって電話をしています。答えられないと、「この会社は準備ができていない」と受け取られます。
担当者には、リリースの内容を事前に共有し、想定問答のメモを渡しておきます。分からないことを聞かれた場合は、いつまでに折り返すかを伝え、必ず約束を守ってください。
失敗5:配信日の前後で、サイトの内容が食い違う
リリースでは「10月1日から開始」と書いたのに、自社サイトでは「準備中」のままになっていることがあります。
これが起きると、記者も読者も、どちらが正しいのか迷います。配信の前日までに、自社サイトの表記を、リリースと同じ言葉にそろえます。
食い違いを見つけるには、リリースと自社サイトのページを、画面に並べて見比べます。日付、数字、名称の3つを重点的に見てください。
失敗6:同じ内容を何度も送りつける
反応が無いからといって、同じ資料を何度も送るのは逆効果です。
記者の側では、同じ会社から同じ内容が届くと、迷惑に感じることがあります。次回以降のリリースが読まれにくくなる原因にもなります。
再度連絡するのは、新しい情報が加わったときだけにします。たとえば、受け付けの開始日が決まった、数字がまとまった、といった場面です。
失敗7:発表の日付が、記者の締め切りに間に合わない
イベントの直前にリリースを出しても、記者が取材や掲載の準備をする時間がありません。
日付のある発表は、余裕をもって出します。目安は、開始日の2週間から1か月前ですが、地域の小さなイベントなら、もう少し短くても取り上げられることがあります。
迷うときは、配信前に、候補にしている媒体へ電話をかけて、いつまでに資料があれば間に合うかを聞くのが確実です。電話一本で、無駄な失敗を避けられます。
失敗8:コメントが、誰が言っても同じ内容になっている
「お客様の笑顔のために頑張ります」のようなコメントは、どの会社が出しても同じに見えます。
記事に引用されるコメントは、その人でなければ言えない具体的な出来事が入ったものです。取り組みを始めたきっかけの場面、現場で聞いた一言、失敗から学んだこと。こうした具体が入ると、記事にしたときの厚みが変わります。
コメントを書く前に、本人に「なぜ始めたのか」を30分ほど聞くと、使える言葉が見つかります。
失敗9:専用ページが無く、トップページのアドレスだけを書く
問い合わせ先に、自社サイトのトップページのアドレスだけを書いている例は多くあります。
トップページを開いた記者は、発表の内容を探し回ることになります。その手間をかけてくれる記者は多くありません。
リリースの内容と同じ内容の専用ページを作り、そのアドレスを書いてください。ページの見出しとリリースのタイトルが一致していれば、記者は迷いません。
出来を自己採点する表
配信の前に、10項目で自己採点します。
| 項目 | 合格の目安 | 結果 |
|---|---|---|
| タイトル | 30字から50字で、切り口が前半にある | 〇か×か |
| リード文 | 社名から始まり、5W1Hが入っている | 〇か×か |
| 本文の分量 | A4用紙1枚から2枚に収まっている | 〇か×か |
| 数字 | 出どころと期間が書かれている | 〇か×か |
| 評価の言葉 | 事実と数字に置き換えている | 〇か×か |
| コメント | 具体的な出来事が入っている | 〇か×か |
| 写真 | 使用の許可がある写真が1点以上 | 〇か×か |
| 問い合わせ先 | 2名の電話とメールが書かれている | 〇か×か |
| 会社概要 | 自社サイトの会社情報と一致している | 〇か×か |
| 自社サイトのページ | 同じ内容が公開できる状態になっている | 〇か×か |
8項目以上が〇なら、配信してよい水準です。×の項目は、その場で直してから配信します。
失敗10:出したあとに、サイトの問い合わせ窓口が見つからない
記事を見た人が自社サイトを開いても、問い合わせの方法がすぐ見つからないことがあります。
メニューの奥にしか電話番号がない、問い合わせフォームのボタンが小さい、受付の時間が書かれていない。こうした状態だと、関心を持った人が離れます。
配信の前に、スマートフォンで自社サイトを開き、リリース専用ページから問い合わせまで、何回の操作でたどり着けるかを数えてください。3回以内で着ける状態が目安です。
失敗を防ぐ、最後の確認の順番
失敗は、1つずつ防ぐより、確認の順番を決める方が効果的です。
配信の前日に、次の順で確認します。最初に、リリースと自社サイトの内容が一致しているか。次に、問い合わせ先の電話とメールが生きているか。最後に、数字と日付が、元の資料と合っているか。
この3つは、一度でも間違えると、取り戻すのが難しい項目です。時間が無くても、省かないでください。
確認が終わったら、配信の承認を、社長が必ず自分の目で行います。担当者任せにせず、最後の一人が責任を持つ形にすると、会社全体で内容を守れます。
初めての1本を、2週間で出すスケジュール
「いつ始めればいいか」が分からないと、先延ばしになります。
初めての1本を、2週間で出すための日程の目安を示します。休みや繁忙期は、自社の状況に合わせて動かしてください。
2週間の日程表
| 日 | やること | 担当 | 出来上がるもの |
|---|---|---|---|
| 1日目 | 目的と届けたい媒体を決める | 社長と担当者 | 目的の一文と媒体のメモ |
| 2日目 | 棚卸しの表で、ニュースの種を出す | 社内3名 | 種のリスト |
| 3日目 | 切り口を一文にする | 社長と担当者 | 切り口の一文 |
| 4日目から5日目 | 本文を書く | 担当者 | 背景と内容の下書き |
| 6日目 | リード文とタイトルを作る | 担当者 | タイトル案3本 |
| 7日目 | 写真と数字の裏づけをそろえる | 現場と担当者 | 写真、数字の根拠資料 |
| 8日目 | 問い合わせ先と会社概要を整える | 担当者 | 完成前の原稿 |
| 9日目 | 社内で読み合わせをする | 社長と現場責任者 | 修正点のリスト |
| 10日目 | 修正と想定問答の作成 | 担当者 | 完成原稿と想定問答 |
| 11日目 | 自社サイトのページを非公開で用意 | 担当者 | 公開前のページ |
| 12日目 | 配信先の確認、予約 | 担当者 | 配信の準備完了 |
| 13日目 | 最終確認 | 社長と担当者 | 配信の承認 |
| 14日目 | 配信と、自社サイトのページ公開 | 担当者 | 配信の記録 |
日程が詰まったときに、先に削るもの
時間が足りないときは、次の順で減らします。
最初に減らすのは、配信先の数です。次に、写真の枚数です。タイトルの案の数も、3本から2本に減らせます。
減らしてはいけないものが3つあります。切り口の一文、事実と数字の確認、自社サイトのページです。この3つを削ると、配信しても成果に結びつきません。
配信後の1週間でやること
配信して終わりではありません。
1日目は、反応を待ちながら、自社サイトのアクセスの変化を確認します。3日目に、問い合わせが来ていないかを整理します。1週間後に、配信の記録と気づきをまとめます。
まとめた内容は、次のリリースの切り口を考えるときの材料になります。2本目を出すまでの間隔は、1か月から2か月くらいを目安にすると、ニュースの種も溜まります。
よくある質問
初めてリリースを書く方から、よく聞かれる質問に答えます。
Q. 広報の担当者がいない小さな会社でも、プレスリリースを出せますか?
出せます。
専任の担当者がいなくても、切り口を決める人、下書きを作る人、事実を確認する人の3役を、社内で分ければ回ります。
初めてなら、半日から1日で1本の下書きを作れます。この記事の例文を差し替えて使えば、白紙から書くより早く終わります。
ただし、社長の時間は確保してください。切り口を決める30分と、事実を確認する30分は、社長でなければ決められません。この2つの時間さえ取れれば、残りの作業は担当者だけで進められます。
Q. 無料の配信サービスと、有料の配信サービスは、どう選べばよいですか?
届けたい記者の範囲で決めます。
地域の話題で、地元の媒体に届けたいなら、無料の配信サービスや、記者クラブへの投げ込み、個別の送付で足りることがあります。全国の媒体に広く届けたい場合は、有料の配信サービスを検討します。
どちらの場合でも、リリースの中身の質が低ければ、配信の手段を変えても結果は変わりません。まず、切り口と書き方を整えてください。
初めての1本は、無料の手段や個別の送付で試し、反応を見てから有料の手段を考える進め方でも十分です。最初から費用をかけるより、書き方を磨く方に力を使った方が、結果的に得るものが大きくなります。
Q. 記者クラブに、自分で資料を持ち込んでもよいのですか?
持ち込める場合があります。
日本新聞協会は、記者クラブについて「市民からの情報発信に対しても、記者クラブは開かれています」と説明しています。ただし、受け付けの運用はクラブごとに違います。
事前に電話で、受け付けの可否、必要な部数、持参か郵送かを確認してください。
Q. 取り上げられなかった場合は、失敗でしょうか?
失敗とは限りません。
リリースを出しても、記事にならない場合は多くあります。記者は毎日、たくさんの資料から、わずかなものだけを選んでいます。
大事なのは、反応を記録して、次の切り口に活かすことです。また、自社サイトのページは、記事にならなくても、取引先や求職者への確かな情報として残ります。
Q. 自社サイトに同じ内容を載せると、記者に嫌がられませんか?
嫌がられることは、まずありません。
むしろ、記者は自社サイトで裏づけを取ります。公式サイトに同じ内容があることは、リリースが会社の公式な発表であることの証拠になります。
ただし、配信より前にページを公開すると、配信の前に情報が広まってしまいます。配信と同じ日に、同時に公開してください。
記者の中には、発表内容を事前に伝え、公開日まで伏せてもらう約束で資料を渡す場合もあります。そうした約束がある場合は、その日時まで自社サイトのページも非公開にします。
Q. 数字は、どこまで正確に書くべきですか?
出どころを確かめられる数字だけを書きます。
自社で集計した数字は、集計の期間と方法を添えます。公的な資料から引く数字は、公式のページを開いて、調査の年と数字を確かめてから書きます。
確かめられない数字は、載せないのが安全です。数字が1つ間違っているだけで、リリース全体の信用が落ちます。
Q. 1年に何本くらい出すのがよいですか?
最初は、年に2本から4本で十分です。
発表する価値のある出来事が起きたときだけ、出します。本数を増やすために、ニュースにならない話題でリリースを作ると、読まれない会社と見られるおそれがあります。
3か月に1本程度のペースで出せると、記者が会社の名前を覚えやすくなります。
Q. 写真は何枚くらい用意すればよいですか?
3枚から5枚が目安です。
全体が分かる写真、中身が分かる写真、人物の写真を、1枚ずつ。それに、取り組みの様子が分かる写真を足します。
写真は、記者が記事に使うことを想定して、解像度の高いものを渡します。写真の説明文も、1行ずつ添えてください。
Q. 社長の顔写真は必要ですか?
あると便利ですが、必須ではありません。
代表者のコメントを載せる場合は、顔写真があると、記事にする記者が使いやすくなります。使用の許可は、本人に取っておきます。
まとめ
初めてのプレスリリースで、押さえるべきことを整理します。
型は、タイトル、リード文、本文、問い合わせ先の4つの部品です。上から順に、重要な情報を先に書く逆三角形で組みます。
取り上げられるかどうかは、切り口で決まります。自社の発表を、「誰の、どんな困りごとが、どう変わるのか」という社会の言葉に言い換えてください。
配信と同じ日に、自社のホームページにも同じ内容のページを置きます。会社名で検索した人、記者、そしてAIが、確かめる先になります。
| この記事の要点 | やること |
|---|---|
| 切り口が勝負 | 誰の困りごとが減るかを一文にする |
| 型は4つの部品 | タイトル、リード文、本文、問い合わせ先 |
| 裏づけを添える | 数字と出どころ、第三者の評価を入れる |
| 連絡を逃さない | 担当者を2名にし、電話とメールを書く |
| 確かめる先を作る | 自社サイトに同じ内容のページを置く |
| 次に活かす | 反応を記録し、2本目の切り口に反映する |
プレスリリースは、一度書けば、型が身につきます。2本目からは、切り口を見つけることに集中できます。
まずは、自社の中にある小さなニュースの種を、1つ見つけるところから始めてください。
今日できる点検
| 点検すること | 見る場所 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 発表したいことを、一文で言い切れるか | 手元のメモ | 10分 |
| 切り口を、棚卸しの表で3つ書き出す | 紙かメモ | 30分 |
| タイトルの案を3本書く | 下書き | 20分 |
| 会社概要が自社サイトの会社情報と一致しているか | 自社サイトの会社情報ページ | 15分 |
| 問い合わせ先の担当者を2名決めたか | 社内の確認 | 10分 |
| 自社サイトにお知らせの置き場があるか | 自社サイトのお知らせ欄 | 10分 |
この記事に書いたことを、そのまま御社のページに
生成AIに引用されるページを、お話しいただくだけでお作りします。お時間をいただくのは初回15分のヒアリングだけです。まず1ページ、無料でお作りします。
OKが出るまで、何度でも直します。事実が違う、言い回しが硬い、この話は入れないでほしい。どれも遠慮なくおっしゃってください。何度お直ししても、追加の料金はいただきません。
これまでに127社にご利用いただきました。毎月ご依頼いただいている方の6割以上が、月10ページを選ばれています。料金はページに掲載しています。
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