同業他社と同じことを、同じように、少しだけ丁寧にやっている。
ホームページを見比べても違いが分からず、最後は価格で選ばれる。そんな状態から抜け出すための道具として知られているのが、ERRCグリッドです。
ERRCグリッドは、業界が当たり前に競ってきた要素を「取り除く・減らす・増やす・付け加える」の4つに振り分け、自社の打ち出し方を組み替えるための表です。
大企業の新規事業のための道具と思われがちですが、実際に効くのは、人も予算も限られた中小企業のほうです。
この記事では、ERRCグリッドの考え方を一次情報に沿って整理したうえで、中小企業が自社のサービスに当てはめ、その結果をホームページの1か所に反映するまでの手順をまとめました。
読み終えたときに、自社が「やめること」を1つ、サイトに書くことを1つ決められる状態を目指します。
ERRCグリッドとは 4つの問いで業界の当たり前を組み替える表
ERRCグリッドは、フランスの経営大学院INSEADのW・チャン・キム教授とレネ・モボルニュ教授が示した「ブルーオーシャン戦略」の中で使われる表です。
名前は、取り除く・減らす・増やす・付け加えるを表す4つの英単語の頭文字から来ています。
やることは単純で、業界がこれまで競ってきた要素を1つずつ取り上げ、4つの欄のどこに入れるかを決めていきます。
表そのものは2行2列の枠にすぎません。
難しいのは、どの要素を「取り除く」に入れるかを決める場面です。
実際に中小企業の社長と一緒に表を埋めると、この欄を空けたまま「増やす」だけを埋めてしまう場面によく出会います。
4つの問いの中身
提唱者の公式サイトでは、4つの欄はそれぞれ問いの形で示されています。筆者が訳すと次のとおりです。
「業界で当然とされている要素のうち、取り除くべきものはどれか」
「業界の標準より大きく減らすべき要素はどれか」
「業界の標準より大きく増やすべき要素はどれか」
「業界がこれまで提供してこなかった要素のうち、付け加えるべきものはどれか」
4つの問いに共通しているのは、比べる相手が「業界の標準」になっている点です。
自社の昨年と比べるのでも、特定の競合1社と比べるのでもありません。同業者みんなが横並びで提供しているものを基準に、そこからどれだけ外れるかを決めます。
| 欄 | 問い | 中小企業での例 |
|---|---|---|
| 取り除く | 業界で当然とされているが、顧客が価値を感じていない要素は何か | 全業種対応の看板、来社前提の初回面談、紙の会社案内の郵送 |
| 減らす | 業界標準より過剰に出している要素は何か | 20項目を超えるサービス一覧、施工事例の数の多さ競争 |
| 増やす | 業界標準より大きく上げると顧客が喜ぶ要素は何か | 見積もりの内訳の細かさ、着工前の説明の回数、返信の速さ |
| 付け加える | 業界がこれまで出してこなかった要素は何か | 依頼しなかった場合の判断材料の提供、工事後1年の定期点検の記録 |
ブルーオーシャン戦略とのつながり
ERRCグリッドを理解するには、もとになったブルーオーシャン戦略の考え方を押さえておく必要があります。
キム教授とモボルニュ教授は、2004年10月のハーバード・ビジネス・レビューに掲載した論文で、市場を2種類の海にたとえました。
赤い海については、原文を訳すと「今日存在するすべての産業であり、すでに知られた市場空間」と説明しています。
そこでは業界の境界も競争のルールも決まっていて、各社は限られた需要の取り合いをします。混み合うほど利益と成長の見込みは小さくなります。
青い海は、まだ存在しない市場空間です。論文は「青い海では、需要は奪い合うものから、新たに生み出すものに変わる」という趣旨を述べています。
論文は、赤い海が混み合うにつれて商品が汎用品のようになり、競争が血みどろになっていくとも書いています。
中小企業が「最後は値段で比べられる」と感じるのは、まさにこの状態です。
ERRCグリッドは、赤い海の中で横並びになっている自社の打ち出し方を組み替え、青い海の側へ一歩ずらすための道具として位置づけられています。
中小企業が使うときの割り切り
中小企業がブルーオーシャン戦略を丸ごと取り入れようとすると、話が大きくなりすぎて手が止まります。
新しい市場を一から作るほどの予算も時間も、たいていの会社にはありません。
そこでこの記事では、ERRCグリッドを「同業者と同じ土俵で同じ物差しで比べられる状態から、一歩だけ抜け出すための表」として使います。
新事業を立ち上げる必要はありません。今の商品のまま、何をやめて何を前に出すかを決めるだけでも、ホームページの見え方は大きく変わります。
なぜ中小企業に効くのか 108社の調査が示したこと
「同業者より少し良くする」改善は、手堅く見えます。
ところが、ブルーオーシャン戦略の論文には、その手堅さが利益につながりにくいことを示す数字が載っています。
既存の延長は売上の62%を占めても利益は39%
同じ2004年の論文によると、キム教授とモボルニュ教授は108社の新規事業の立ち上げを調べています。
立ち上げの86%は、既存の商品を少しずつ改良した「延長線上」のものでした。新しい市場を作ろうとしたものは14%にとどまります。
延長線上の86%は売上全体の62%を占めましたが、利益は39%しか生みませんでした。
一方、新しい市場を狙った14%は、売上の38%に対して利益の61%を生んでいました。
| 立ち上げの種類 | 件数の割合 | 売上に占める割合 | 利益に占める割合 |
|---|---|---|---|
| 既存の商品の改良(延長線上) | 86% | 62% | 39% |
| 新しい市場を狙ったもの | 14% | 38% | 61% |
| 中小企業への読み替え | 同業者と同じ物差しで少しだけ上回る改善は、手間の割に利益が残りにくい | ||
この数字は大企業を含む調査なので、そのまま中小企業に当てはめることはできません。
それでも、同じ物差しの上で少し上回ろうとする努力が、手間の割に利益として残りにくいという傾向は、筆者が相談を受けてきた中小企業の現場の実感とも重なります。
論文は、延長線上の改良が悪いと言っているわけでもありません。
既存の商品を磨く仕事は、売上を支える土台として必要です。
問題になるのは、改良だけを続けた結果、同業者と同じ物差しの上で差が縮まり、価格でしか比べられなくなる状態です。
ERRCグリッドは、その物差し自体を少しずらすための道具だと考えると、使いどころが分かりやすくなります。
差別化と低コストを同時に追う
経営の教科書では長く、戦略は「差別化するか、安くするか」の二択だと説明されてきました。
論文はここに異を唱え、原文を訳すと「青い海を切り開いた企業は、差別化と低コストを同時に追っている」と書いています。
この2つを同時に成り立たせる仕組みが、ERRCグリッドの4つの欄です。
取り除く・減らすでコストを下げ、増やす・付け加えるで顧客にとっての価値を上げます。
前の2つだけなら値下げ競争になり、後ろの2つだけならコストが膨らみます。4つを同時に埋めることで、はじめて両立します。
小さい会社ほど「やめる」が効く理由
大企業は、やめた業務の担当者を別の部署に移せます。
中小企業では、社長や数人の社員が全部の業務を抱えています。1つやめれば、その時間がそのまま「増やす」欄の仕事に回ります。
たとえば、全業種対応をうたって毎月10件の小さな見積もり依頼に対応している会社が、得意な2業種に絞ったとします。
見積もり作業に使っていた時間を、得意分野の提案書を厚くする作業に回せます。
やめることがそのまま原資になる。この点で、ERRCグリッドは資源の少ない会社ほど効果が見えやすい道具です。
手間をかけた仕事の価値を顧客に伝える方法は、価値を高める方法とは 中小企業が手間を見せて価格で比較されないサイトにする手順で詳しく扱っています。
戦略キャンバスとの関係 先に業界の当たり前を並べる
ERRCグリッドは単独で使うより、戦略キャンバスと組み合わせて使うと迷いが減ります。
4つの欄に何を入れるかを決める前に、そもそも業界が何で競っているかを一覧にする必要があるからです。
戦略キャンバスとは
戦略キャンバスは、キム教授とモボルニュ教授が2002年6月のハーバード・ビジネス・レビューで示した図です。
横軸に業界が競っている要素を並べ、縦軸にそれぞれの要素をどのくらい提供しているかを取り、点を線で結びます。
この線を「価値曲線」と呼びます。
同業者の価値曲線を何社分か重ねると、ほとんど同じ形の線が並ぶことがよくあります。
線の形がそろっているということは、顧客から見て違いが無く、価格以外に比べる材料が無いということです。
紙1枚で戦略キャンバスを描く手順
戦略キャンバスは、専用の道具がなくても紙1枚か表計算ソフトで描けます。
横に要素を10個並べ、縦に1から5までの目盛りを取ります。
次に、同業者の中で顧客がよく比べている1社を選び、その会社の点数を線で結びます。
その上に自社の点数を別の色で重ねます。
2本の線がほぼ同じ形をしていたら、顧客から見て違いが無い状態です。形が違う部分があれば、そこが自社の打ち出し方の芯になる候補です。
線を引いたら、点数の高い要素と低い要素に印を付けておきます。この印が、後でERRCグリッドの4つの欄に振り分けるときの出発点になります。
中小企業が書き出す項目の例
横軸に並べる要素は、業界の人が「当然やるもの」と思っている項目です。
自社のホームページと、同業者のホームページを3社ほど開き、どの会社も載せている項目を拾っていくと見つけやすくなります。
| 業種 | 業界の当たり前(横軸の候補) | 同業者のサイトでよく見る書き方 |
|---|---|---|
| 地域の工務店 | 施工事例の数、対応エリアの広さ、自然素材、保証期間、無料見積もり | 「施工実績多数」「地域密着」「自然素材にこだわる家づくり」 |
| 税理士事務所 | 対応業種の幅、顧問料の安さ、記帳代行、面談の回数、クラウド会計対応 | 「あらゆる業種に対応」「初回相談無料」「迅速丁寧」 |
| 部品加工(BtoB) | 対応できる材質の数、設備の台数、短納期、品質管理体制、試作対応 | 「多品種小ロット対応」「高品質・短納期」「設備一覧」 |
| 美容室 | メニューの数、駅からの近さ、クーポンの割引率、最新の薬剤、指名の有無 | 「豊富なメニュー」「駅徒歩3分」「初回限定クーポン」 |
| 研修会社 | 講座の数、講師の経歴、受講者数、オンライン対応、資料の厚さ | 「200以上の講座」「実績豊富な講師陣」「オンライン対応」 |
右の列に並んだ言葉が、同業者のサイトでどこも同じように使われているなら、その要素は赤い海の中で横並びになっています。
ERRCグリッドで最初に手を付けるのは、この横並びの要素です。
価値曲線を自社だけで描くときの注意
社内だけで価値曲線を描くと、自社の線が実際より高く出がちです。
「うちは対応が丁寧だ」と思っていても、顧客から見れば同業者と変わらないことはよくあります。
点数を付けるときは、最近依頼をくれた顧客に「ほかにどこと比べましたか」「その会社とうちで違うと感じた点はどこですか」と聞いた答えを根拠にします。
根拠が取れない項目は、点数を付けずに「未確認」としておきます。思い込みで線を引くより、空欄のほうが後で役に立ちます。
ERRCグリッドの作り方 中小企業が半日で終える5つの手順
ここからは、中小企業がERRCグリッドを実際に作る手順を5つに分けて説明します。
社長1人でも進められますが、営業や現場で顧客と話している人が1人加わると、手順2の精度が上がります。
流れを図にすると次のようになります。最後の手順で問い合わせの中身を確かめ、その結果を次の見直しに戻します。
手順1 業界の当たり前を10個書き出す
最初に、業界が競っている要素を10個前後書き出します。
自社のサイトと同業者3社のサイト、業界の広告やチラシを見比べ、どこも載せている項目を拾います。
価格、対応エリア、実績の数、保証、対応の速さ、設備、資格、相談の無料化など、顧客が比べるときに目に入るものはすべて候補です。
10個に満たない場合は、見積もりの依頼を受けたときに顧客から聞かれる質問を思い出してください。よく聞かれる項目は、顧客が比べている要素です。
書き出したら、自社と同業者それぞれに5段階で点数を付けます。これが自社用の簡易な戦略キャンバスになります。
このとき、要素の言葉は顧客が使う言葉で書いてください。
社内では「施工管理体制」と呼んでいても、顧客が「工事中にちゃんと見に来てくれるか」と言っているなら、そちらの言葉で書きます。
顧客の言葉で書いておくと、手順5でサイトに反映するときに、そのまま見出しの材料になります。
手順2 顧客の声で過不足を確かめる
次に、書き出した要素ごとに「顧客はそれを本当に求めているか」を確かめます。
確かめ方は、最近依頼をくれた顧客3〜5人に短く話を聞くのがいちばん確実です。
聞くことは2つで足ります。「依頼を決める前に、何を比べましたか」と「うちに頼んでみて、思っていたのと違ったところはありますか」です。
2つ目の質問で「そこまでしてくれなくてもよかった」という答えが出たら、その要素は過剰に提供している可能性があります。
反対に「そこがもっと分かれば早く決められた」という答えは、増やす欄の候補です。
顧客の話を聞いてサイトの言葉に戻す方法は、顧客インタビューとは 買った理由を聞いてホームページの言葉を直す手順にまとめています。
手順3 取り除く・減らすを先に決める
4つの欄のうち、先に埋めるのは取り除くと減らすです。
増やす欄から始めると、やりたいことが次々に出てきて、仕事が増えるだけで終わります。
取り除く欄には、顧客が価値を感じていないのに業界の慣習で続けている要素を入れます。
減らす欄には、顧客が求める水準を超えて出している要素を入れます。
この2つで浮いた時間や費用が、次の手順で使える原資になります。
どちらの欄にも何も入らない場合は、手順2の聞き取りが足りていないことが多いので、もう1人に話を聞いてから戻ってください。
やめるかどうか迷う要素は、やめた場合に失う顧客を具体的に数えてみると判断しやすくなります。
たとえば来社での初回面談をやめた場合、過去1年で来社を強く希望した顧客が何人いたかを数えます。
その数が少なく、しかも来社の対応に毎月まとまった時間を使っているなら、やめる側に入れてよい要素です。
数えてみて失う顧客が多いと分かった要素は、取り除く欄から減らす欄に移し、頻度や範囲を下げる形で残します。
手順4 増やす・付け加えるを1つずつ決める
浮いた原資を、どこに回すかを決めます。
増やす欄と付け加える欄には、最初はそれぞれ1つだけ入れます。
2つも3つも入れると、ホームページで何を前に出すかがまた散らばってしまいます。
増やす欄には、手順2で「そこがもっと分かれば」と言われた要素を入れます。
付け加える欄には、同業者のサイトにどこにも書かれていないが、顧客が依頼の前に知りたがっていることを入れます。
手順5 ホームページの1か所に反映する
4つの欄が埋まったら、その中から1つを選んでホームページに反映します。
最初に反映するのは、増やす欄に入れた要素です。顧客が比べている点で、業界の標準より大きく上回ると宣言できるものだからです。
反映する場所は、トップページの最初に目に入る見出しの直下か、サービスページの冒頭が向いています。
取り除く欄の要素は、「当社が行っていないこと」として、よくある質問や料金ページに書きます。
反映してから3か月ほど、問い合わせの文面に変化があるかを見ます。反映した要素に触れた問い合わせが出てくれば、狙いが届いています。
問い合わせの件数だけを見ると、季節や景気の影響と区別が付きません。
「見積もりの内訳が細かいと書いてあったので」のように、反映した言葉を顧客が文面で使っているかを数えるほうが、変化を確かめやすくなります。
問い合わせフォームに「当社を知ったきっかけ」や「決め手になった点」を自由に書ける欄を1つ設けておくと、この確認が楽になります。
| 手順 | 手元に残るもの | つまずきやすい点 | 次にすること |
|---|---|---|---|
| 1 当たり前を書き出す | 要素10個と5段階の点数表 | 自社の点数を高く付けすぎる | 点数の根拠を顧客の言葉で確かめる |
| 2 顧客の声で確かめる | 3〜5人分の聞き取りメモ | 社内の思い込みで済ませる | 「そこまでしなくてよかった」を拾う |
| 3 取り除く・減らす | やめる要素1〜3個 | どれもやめられないと感じる | やめた場合に失う顧客を数えてみる |
| 4 増やす・付け加える | 前に出す要素を各1個 | やりたいことを全部入れる | 手順2の声に出た要素だけに絞る |
| 5 サイトに反映 | 書き換えた見出しと説明文 | 全ページを一度に直そうとする | 1か所だけ直して3か月見る |
取り除く 業界が当然と思っている要素を外す
4つの欄の中で、いちばん決めにくく、いちばん効くのが取り除く欄です。
ここに入る要素は、同業者の誰もが続けているので、やめると「手を抜いている」と思われそうな気がします。
ところが、顧客の側から見ると、その要素がなくても困らないことがよくあります。
取り除く候補の見つけ方
取り除く候補は、次の3つの見方で探すと見つかりやすくなります。
1つ目は、顧客から一度も評価されたことがない要素です。手間をかけているのに、お礼の言葉や口コミで触れられたことがないものです。
2つ目は、社内で「昔からやっているから」としか理由を説明できない要素です。
3つ目は、それを維持するために、本来やりたい仕事の時間が削られている要素です。
| 候補の見つけ方 | 具体例 | やめる前に確かめること |
|---|---|---|
| 顧客に評価されたことがない | 季節ごとに送っている紙の案内、会社概要ページの長い沿革 | 直近1年の問い合わせで触れた人がいるか |
| 理由が「昔から」しかない | 全業種対応の表記、来社しての初回面談 | やめた場合に困る顧客が具体的に何人いるか |
| 本来の仕事を削っている | 小口の見積もりへの個別対応、毎月のブログ更新の義務 | 浮いた時間を何に回すか決まっているか |
| 同業者全員がやっている | 「初回相談無料」「迅速丁寧」の決まり文句 | その言葉を消しても問い合わせ数が変わらないか |
取り除いたことをサイトにどう書くか
取り除いた要素は、黙って消すより、理由と一緒に書いたほうが顧客の判断を助けます。
たとえば「当社は来社しての初回面談を行っていません。移動の時間を、事前の資料確認に充てています」と書けば、やめたことが手抜きに見えません。
やめた理由が、顧客にとっての利点とつながっていることが伝わるからです。
自社の制限を正直に書くことで合う顧客が残る仕組みは、カリギュラ効果とは 中小企業のサイトで正直な制限を書いて選ばれる方法で詳しく説明しています。
社内で反対されたときの進め方
取り除く欄を決めると、社内から「お客様が離れるのではないか」という声が出ることがあります。
そのときは、いきなり全部をやめるのでなく、期間を決めて試す形にすると話が進みます。
たとえば3か月だけ新規の受付で全業種対応の表記を外し、問い合わせの件数と中身を記録します。
件数が大きく落ちず、得意分野の問い合わせの比率が上がっていれば、続ける根拠になります。
反対した人も、自分の目で数字を見れば納得しやすくなります。
取り除けない要素の扱い
法律や業界の規則で求められている要素は、取り除く欄に入れられません。
資格の表示、契約前の重要事項の説明、個人情報の取り扱いなどは、顧客が意識していなくても必要なものです。
こうした要素は、減らす欄の候補として扱い、ホームページ上での見せ方を簡潔にする方向で考えます。
減らす 過剰に出しているものを顧客が必要な水準まで下げる
減らす欄は、要素そのものは残しつつ、量や頻度を業界の標準より下げる欄です。
中小企業のホームページで、この欄に入りやすいものが2つあります。メニューの数と、ページの情報量です。
メニューの数を減らす
選択肢が多すぎると人は選べなくなる、という現象はよく知られています。
コロンビア大学のアイエンガー教授らが2000年に学術誌で発表した実験によると、試食台に並べるジャムを24種類にしたときと6種類にしたときで、購入した人の割合を比べました。
試食台に立ち寄った人のうち実際に買った人は、24種類のときが3%、6種類のときが30%でした。
この実験はスーパーの試食台での結果で、ホームページにそのまま当てはまるわけではありません。
それでも、サービス一覧に20項目以上並んでいるサイトで、訪問者がどれを見ればよいか迷っている状態は、同じ構図です。
ジャムの実験とウェブ集客の関係はジャムの法則(決定回避の法則)から学ぶウェブ集客の鉄則で扱っています。
ページの情報量を減らす
同業者が設備一覧や資格一覧を細かく載せていると、自社も同じだけ載せなければと考えがちです。
顧客が依頼の判断に使っている情報がその一部だけなら、残りは別ページに移すか、まとめて短くできます。
判断の手がかりになる情報が上に来るだけで、ページを読み進める人の迷いは減ります。
どこを残すかは、手順2の聞き取りで「何を比べましたか」に対して出てきた答えを基準にします。
減らす欄に入れてはいけないもの
減らす欄に、顧客が比べている要素を入れてしまうと逆効果です。
たとえば見積もりの内訳を、社内の手間を減らすために「一式」とまとめてしまうと、比べている顧客にとっては判断材料が消えたことになります。
減らすのは、顧客が必要としている水準を超えている部分だけです。足りていない部分を減らすと、ただのサービスの低下になります。
| 減らす対象 | いま起きていること | 減らし方 |
|---|---|---|
| サービスメニュー | 20項目以上並び、訪問者が自分に関係あるものを探せない | 依頼の多い3〜5項目を前に出し、残りは「その他の対応」にまとめる |
| 設備・資格の一覧 | ページの半分を占め、依頼の判断に使われていない | 判断に関わるものだけ残し、全一覧は別ページへ |
| 施工事例・実績の数 | 件数を競っているが、1件ずつの説明が薄い | 件数を減らし、1件ごとに依頼の経緯と結果を書く |
| ブログの更新頻度 | 更新の義務感で中身の薄い記事が増えている | 頻度を落とし、よく聞かれる質問に答える記事に絞る |
| 問い合わせフォームの項目 | 初回から細かい情報を求め、入力の途中でやめられている | 初回に必要な項目だけ残し、残りは返信後に聞く |
サービスの数を絞る具体的な進め方は、サービスメニューが多すぎるサイトの絞り込みの手順も参考になります。
増やす 顧客が本当に比べている点を業界の標準より上げる
増やす欄は、取り除く・減らすで浮いた時間を回す先です。
ここに入れるのは、顧客が依頼の前に比べている要素のうち、業界の標準では足りていないと感じられているものです。
同業者がすでに力を入れている要素を、さらに少しだけ上回ろうとするのは、増やす欄の使い方として弱くなります。
公式サイトの問いにあるとおり、業界の標準より「大きく」上げることが前提です。
増やす要素の見つけ方
手がかりは、顧客が依頼の前に不安に感じていたことです。
「見積もりの金額が後から増えないか心配だった」という声が多ければ、見積もりの内訳の細かさが増やす候補になります。
「工事中に何が起きているか分からなかった」という声が多ければ、途中経過の報告の回数が候補です。
増やす要素は、顧客がまだ依頼する前の段階で、ホームページを見て確かめられるものだと効果が大きくなります。
依頼した後にしか分からない良さは、サイトでいくら書いても比べる材料になりにくいからです。
どのくらい増やせば「大きく」になるか
増やす量の目安は、顧客がその違いを一言で言えるかどうかです。
同業者の返信が翌営業日で、自社が当日中なら、顧客は「返事が早い会社」と言えます。
同業者が翌営業日の午前中、自社が翌営業日の朝一番という程度の差では、顧客は違いを言葉にできません。
増やす欄に入れる要素は、顧客が人に紹介するときに口にできるくらいの差をつけられるものを選んでください。
その差を出すための時間は、取り除く・減らすの欄で生んだものを使います。
増やしたことを証拠で示す
「対応が丁寧です」と書くだけでは、同業者の決まり文句と区別が付きません。
増やした要素は、実物を見せる形でサイトに載せます。
見積もりの内訳を増やしたなら、実際の見積書の項目の並び(金額は伏せる)を画像で載せます。
途中経過の報告を増やしたなら、報告の頻度と、報告に含める内容を表にして載せます。
顧客が自分の目で確かめられる形になっていれば、言葉の強さで勝負する必要がありません。
| 顧客の不安 | 増やす要素 | サイトでの見せ方 |
|---|---|---|
| 後から金額が増えないか | 見積もりの内訳の細かさ | 実際の見積書の項目の並びを画像で載せる |
| 途中で何が起きているか分からない | 途中経過の報告の回数 | 報告の頻度と内容を表で示す |
| 返事が来るまで落ち着かない | 最初の返信の速さ | 「平日は当日中に返信」など守れる範囲を明記する |
| 自分の業種でも頼めるか | 得意分野の事例の深さ | 得意な業種の事例を経緯から結果まで書く |
| 依頼後に放っておかれないか | 完了後の点検や相談の機会 | 点検の時期と内容を事前に示す |
付け加える 業界がこれまで出してこなかった価値
付け加える欄は、4つの中でいちばん発想が要る欄です。
ただ、中小企業の場合、新しい商品を一から作る必要はありません。
今の仕事の中で、同業者がどこも言葉にしていない価値を見つけ、それを提供物として明示するだけでも付け加える欄は埋まります。
新しい商品を作らずに付け加えられるもの
たとえば税理士事務所が、顧問契約を検討している人に「顧問を付けなくてもよいケース」を説明する資料を渡すとします。
同業者がどこも出していない、依頼しない場合の判断材料です。
依頼しない選択肢まで示してくれる事務所に、顧客は安心して相談できます。
工務店なら、引き渡しから1年間の点検記録をまとめて渡すことも付け加える欄に入ります。点検自体はしていても、記録として渡している会社は、同業者のサイトを見比べるとごく一部です。
こうした要素は、すでにやっている仕事を形にするだけなので、追加の費用がほとんどかかりません。
業界の外に目を向ける
ブルーオーシャン戦略では、新しい市場空間を探すための6つの見方が示されています。
その中で中小企業がすぐに使いやすいのは、代わりになる別の業界を見る見方と、買い手の周りにいる人を見る見方の2つです。
代わりになる業界とは、顧客が自社に頼まなかった場合に選ぶ別の手段のことです。
工務店にとっての代わりは、別の工務店だけでなく、ホームセンターで材料を買って自分で直すことかもしれません。そうした人が自分で直すのをやめた理由を調べると、付け加える要素が見えてきます。
買い手の周りにいる人とは、実際に依頼を決める人の横で、意見を言う人のことです。
BtoBの取引なら、発注する担当者の上司や経理の担当者が当たります。その人たちが知りたい情報を1枚にまとめて渡せるようにすれば、それも付け加える欄の候補です。
買い手の周りにいる人に目を向けると、付け加える要素は見つけやすくなります。
個人向けの仕事でも、依頼を決める本人の横には家族がいます。
住宅の修理なら、問い合わせをする人と、最後に判断する人が別という家庭は珍しくありません。離れて暮らす親が費用を出す場合もあります。
その人たちに見せられる説明資料を用意しておくと、家族の中で話がまとまるまでの時間が短くなります。
付け加える欄でやりがちな失敗
付け加える欄に、自社がやりたいだけのことを入れてしまう失敗がよく起きます。
新しい設備の導入や、流行りの技術を使ったサービスなどです。
顧客がそれを求めている証拠が手順2の聞き取りで出ていなければ、付け加える欄には入れません。
付け加えるのは、顧客が依頼の前に知りたがっているのに、業界の誰も答えていないことです。
4つの欄が偏ったときに起きること
ERRCグリッドは、4つの欄すべてに何かが入っていることが前提です。
提唱者の公式サイトも、4つの問いを投げかけるだけでなく、4つすべてについて実際に手を打つことを求めています。
欄の埋まり方が偏っていると、どんな状態になるかを整理しておきます。
| 埋まり方 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 増やす・付け加えるだけ | やることが増え続け、社員が疲れて品質が落ちる | 増やした分と同じ時間をやめる要素を1つ決める |
| 取り除く・減らすだけ | コストは下がるが、顧客から見ると値下げした同業者の1社 | 浮いた時間を回す先を増やす欄に1つ書く |
| 増やすだけ | 同業者と同じ物差しで少し上回っただけで、違いが伝わらない | 同業者が言っていない要素を付け加える欄に探す |
| 付け加えるだけ | 新しいことを始めたが、既存の仕事に埋もれて顧客に届かない | 既存の要素を1つ取り除き、新しい要素を前に出す |
| 4つとも埋まっている | やめたことと前に出すことの筋が通っている | サイトの1か所に反映し、問い合わせで確かめる |
増やす・付け加えるだけで終わる場合
中小企業で最も多いのが、この偏り方です。
新しいサービスを足し、対応範囲を広げ、サイトの情報を増やす。どれも良かれと思って始めたことですが、社員の手が足りなくなります。
結果として、どの仕事も中途半端になり、顧客から見た違いはかえって薄くなります。
この状態に気づいたら、増やした要素と同じだけの時間を生む「やめる要素」を1つ決めてください。
取り除く・減らすだけで終わる場合
反対に、コスト削減だけを目的にERRCグリッドを使うと、取り除くと減らすの欄だけが埋まります。
このとき顧客から見えるのは、サービスを削った同業者の1社です。
価格を下げられても、それ以外の比べる材料がなければ、さらに安い同業者が出てきた時点で選ばれなくなります。
論文が示した「差別化と低コストを同時に追う」状態には、増やす・付け加えるの欄が欠かせません。
業種別の書き方例 3つの業種で4つの欄を埋める
ここまでの考え方を、3つの業種に当てはめた例を示します。
いずれも説明のための架空の例で、特定の会社のものではありません。
| 欄 | 地域の工務店 | 税理士事務所 | 部品加工(BtoB) |
|---|---|---|---|
| 取り除く | 対応エリアの拡大競争 | 全業種対応の表記 | 「何でも加工します」の表記 |
| 減らす | 施工事例の件数 | 来所での面談の回数 | 設備一覧の掲載量 |
| 増やす | 見積もりの内訳の細かさ | 月次の数字の説明の具体性 | 得意な材質での試作の速さ |
| 付け加える | 引き渡し後1年の点検記録の提供 | 顧問が不要なケースの説明資料 | 発注者の上司向けの1枚の比較資料 |
例1 地域の工務店
この工務店は、隣の市まで対応エリアを広げ、施工事例を年間の件数で競っていました。
移動に時間を取られ、1件ずつの説明に手が回らない状態です。
ERRCグリッドでは、対応エリアの拡大競争を取り除き、施工事例の件数を減らしました。
浮いた時間で見積もりの内訳を細かくし、引き渡し後の点検記録を渡すことを付け加えます。
ホームページでは、トップの見出しの直下に「見積もりは工程ごとに分けて提示します」と書き、実際の見積書の項目の並びを載せる形が考えられます。
例2 税理士事務所
この事務所は「あらゆる業種に対応」と書いていましたが、実際の顧問先の多くは飲食店と美容室でした。
全業種対応の表記を取り除き、得意な2業種を前に出します。
来所での面談の回数を減らした分、月次の数字の説明を具体的にします。
付け加えるのは、顧問を付けなくてもよいケースの説明資料です。依頼しない選択肢を示すことで、相談のハードルが下がります。
ホームページでは、トップの見出しの直下に「飲食店と美容室の数字を、毎月の面談で具体的に説明します」と書く形が考えられます。
得意な2業種の名前が見出しに入るだけで、その業種の経営者は「自分のための事務所だ」と判断しやすくなります。
それ以外の業種の相談を断る必要はありません。サービスページの下のほうに「その他の業種もご相談ください」と1行添えれば足ります。
例3 部品加工の会社
この会社は、設備一覧と対応材質の一覧でサイトの大半を埋めていました。
同業者もほぼ同じ一覧を載せているため、発注担当者から見ると違いが分かりません。
設備一覧の掲載量を減らし、得意な材質での試作の速さを前に出します。
付け加えるのは、発注担当者が上司に説明するときに使える1枚の比較資料です。担当者の社内説明の手間を減らすことが、選ばれる理由になります。
サイトでは、得意な材質ごとに試作から納品までの流れを示し、その横に比較資料の請求の案内を置きます。
設備の一覧は、全部をトップに並べる必要はありません。得意な材質の加工に使う設備だけを残し、全一覧は別ページに移します。
発注担当者は、設備の台数より「この材質をこの精度で、いつまでに」という自分の条件に合うかを知りたがっています。
ERRCグリッドをホームページに落とし込む
4つの欄が埋まっても、ホームページに反映しなければ顧客には伝わりません。
欄ごとに、サイトのどこにどう書くかの目安を示します。
| 欄 | サイトの置き場所 | 書き方 |
|---|---|---|
| 増やす | トップの見出しの直下、サービスページの冒頭 | 何をどのくらい上回るかを、実物や数字で示す |
| 付け加える | サービスページの中ほど、資料請求の案内 | 同業者が出していない理由と、顧客にとっての利点を書く |
| 取り除く | よくある質問、料金ページ | やっていないことと、その理由をセットで書く |
| 減らす | サービス一覧、問い合わせフォーム | 項目を絞り、絞った理由が必要なら一言添える |
トップの見出しには増やす欄を置く
トップページの最初に目に入る見出しには、増やす欄の要素を置きます。
顧客が比べている点で、業界の標準より大きく上回っていると言えるものだからです。
見出しを決めるときは、手順2の聞き取りで顧客が使った言葉をそのまま使うと伝わりやすくなります。
ホームページで何を一番に伝えるかの決め方は、ホームページの目的は1つに絞る 迷わず直せるサイトにする決め方で扱っています。
「当社が行っていないこと」の欄を作る
取り除く欄の要素は、よくある質問の中に「当社が行っていないこと」として書きます。
やらないことを先に示すと、合わない依頼が減り、合う顧客の問い合わせの比率が上がります。
理由を添えることを忘れないでください。理由がないと、ただの対応範囲の狭さに見えてしまいます。
反映するのは一度に1か所
4つの欄の内容を、一度にサイト全体へ反映しようとすると、どの変更が効いたのかが分からなくなります。
最初は増やす欄の要素を1か所に反映し、問い合わせの文面に変化が出るかを見ます。
変化が見えたら、次に取り除く欄を書き、その次に付け加える欄を反映する。順に進めれば、効果のあった変更とそうでない変更を切り分けられます。
直す画面を1つに絞って効果を確かめる考え方は、コンバージョン率を上げる前に直す画面を1つに絞る手順でも説明しています。
サイト以外の接点にもそろえる
ホームページで増やす欄の要素を前に出したら、営業資料や見積書、名刺の裏面の言葉もそろえます。
サイトで「見積もりは工程ごとに分けて提示します」と書いているのに、実際の見積書が一式表記のままでは、顧客の信頼を失います。
反対に、サイトで読んだ内容が見積書や打ち合わせで確かめられると、顧客は「書いてあったとおりだ」と感じます。
この一致が、価格以外で選ばれる理由として積み上がっていきます。
ERRCグリッドでよくある失敗と直し方
ERRCグリッドは簡単な表なので、作ること自体はすぐにできます。
ただ、中小企業で使うと、いくつか決まったつまずき方があります。
| 失敗 | いま起きていること | 直し方 |
|---|---|---|
| 社内の会議だけで作る | 欄の中身が社長の思い込みで埋まる | 最近の顧客3〜5人に話を聞いてから埋め直す |
| 比べる相手が大手 | 大手と比べて取り除く要素が見つからない | 同じ地域・同じ規模の同業者3社を比べる相手にする |
| 表を作って終わる | サイトも営業の話し方も変わらない | 増やす欄の要素を1つ、今週中にサイトへ書く |
| やめたことを隠す | 顧客が以前のサービスを期待して問い合わせてくる | やっていないことを理由と一緒に明記する |
| 毎月作り直す | 変更が多すぎて効果が測れない | 見直しは3か月に1回にする |
比べる相手を大手にしてしまう
業界の標準を決めるときに、大手の会社を基準にすると、取り除く要素がほとんど見つかりません。
大手は資源が多く、あらゆる要素を高い水準で提供しているからです。
中小企業が比べるべきは、同じ地域、同じ規模で、顧客が実際に比べている同業者です。
顧客に「ほかにどこと比べましたか」と聞けば、比べる相手は自然に決まります。
表を作って終わってしまう
ERRCグリッドを作った満足感で、実際の変更が何も起きないことがあります。
表を作った日のうちに、増やす欄の要素を1つ、サイトのどこに書くかまで決めておくと、この失敗は防げます。
営業担当者がいる会社なら、初回の商談で話す順番も、増やす欄の要素から始めるように変えます。
やめた後に元へ戻したくなる
取り除く欄の要素をやめてしばらくすると、以前の顧客から「前はやってくれたのに」と言われることがあります。
その声が1件か2件なら、個別に事情を説明して対応すれば足ります。
同じ声が毎月何件も続くなら、その要素は顧客にとって価値があったということなので、減らす欄に移して残します。
戻すかどうかは、声の大きさより件数で判断してください。
ERRCグリッドについてよくある質問
ERRCグリッドとSWOT分析は何が違いますか
SWOT分析は、自社の強み・弱みと、外部の機会・脅威を整理するための表です。現状を把握するのに向いています。
ERRCグリッドは、業界が競っている要素ごとに、取り除く・減らす・増やす・付け加えるのどれを選ぶかを決める表です。何を変えるかを決めるのに向いています。
SWOT分析で整理した強みを、ERRCグリッドの増やす欄の候補にする、という順番で組み合わせることもできます。
ERRCグリッドとブルーオーシャン戦略は同じものですか
ブルーオーシャン戦略は、競争の激しい既存市場から離れ、新しい市場空間を作るための考え方全体を指します。
ERRCグリッドは、その考え方を実行するために使う道具の1つです。戦略キャンバスや、新しい市場を探す6つの見方なども、同じ考え方の中で使われる道具です。
中小企業が最初に使うなら、戦略キャンバスで業界の当たり前を並べ、ERRCグリッドで4つの欄を埋める、という2つの道具の組み合わせで十分です。
従業員が数人の会社でも使えますか
使えます。むしろ人数が少ない会社ほど、1つやめたことで浮く時間の割合が大きく、効果が見えやすくなります。
5人の会社で1人が週に5時間使っていた業務をやめれば、会社全体の仕事時間の数%が浮きます。100人の会社で同じことをしても、全体に占める割合はその20分の1です。
社長1人で作る場合も、顧客への聞き取りだけは省かないでください。
取り除く欄に入れる要素がどうしても見つかりません
比べる相手が大手になっているか、顧客への聞き取りがまだできていない可能性があります。
同じ規模の同業者3社のサイトを並べ、どこも書いている決まり文句を探してください。そのうち、顧客から一度も評価されたことがないものが、取り除く欄の候補です。
ERRCグリッドはどのくらいの頻度で見直せばよいですか
3か月に1回を目安にしてください。
見直しのときは、表を一から作り直す必要はありません。前回の4つの欄を見ながら、問い合わせの文面や顧客の声に変化があった要素だけを動かします。
同業者が自社と同じ打ち出し方を始めた場合も、見直しの合図です。その要素は横並びに戻りつつあるので、次に増やす要素を探します。
サイトに反映してから問い合わせの文面に変化が出るまでには、ある程度の期間が必要です。毎月作り直すと、どの変更が効いたのかが分からなくなります。
まとめ やめることを1つ決めるところから始める
ERRCグリッドは、業界が当たり前に競ってきた要素を、取り除く・減らす・増やす・付け加えるの4つに振り分ける表です。
2004年の論文で示された108社の調査では、既存の延長線上の立ち上げは売上の62%を占めながら利益は39%にとどまり、新しい市場を狙った立ち上げは売上の38%で利益の61%を生んでいました。
同業者と同じ物差しで少しだけ上回る努力は、手間の割に報われにくいということです。
中小企業がERRCグリッドを使うときは、取り除く・減らすを先に決め、浮いた時間を増やす・付け加えるに回します。
4つの欄が埋まったら、増やす欄の要素を1つ、ホームページの見出しの直下に書いてください。
そのうえで3か月、問い合わせの文面に変化があるかを確かめます。
今日できる点検 ERRCグリッドの準備を5つの項目で確かめる
最後に、今日のうちに確かめられる項目を表にまとめました。上から順に進めれば、ERRCグリッドを作る準備が整います。
| 点検する項目 | 確かめ方 | 当てはまったときに次にすること |
|---|---|---|
| 同業者と同じ決まり文句を使っていないか | 自社と同業者3社のトップページを並べて読む | 重なった言葉を取り除く欄の候補に書く |
| サービス一覧が10項目を超えていないか | サービスページの項目を数える | 依頼の多い3〜5項目を減らす欄の基準にする |
| 顧客が比べている点を把握しているか | 最近の顧客1人に「ほかにどこと比べたか」を聞く | 答えに出た要素を増やす欄の候補に書く |
| 同業者がどこも答えていない質問はないか | 問い合わせの文面から、よく聞かれる質問を拾う | 同業者のサイトに答えがない質問を付け加える欄の候補にする |
| やめたことをサイトに書いているか | よくある質問と料金ページを読む | 「当社が行っていないこと」を理由と一緒に書く |
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