カリギュラ効果とは、禁止されたり制限されたりすると、かえってその対象への興味が強くなる心理の動きです。
「見ないでください」と書かれた箱ほど開けたくなる、あの感覚に名前が付いたものだと考えてください。
この記事は、ホームページはあるのに問い合わせが増えない中小企業の経営者とホームページの担当者に向けて書いています。
言葉の意味と由来、裏付けになる心理学の研究、そして自社サイトのどこにどう書けばよいかまでを順に扱います。
先に結論を書いておきます。
サイトで効くのは、自社が本当に抱えている制限を、理由と一緒に正直に書くことです。
作った禁止や嘘の限定は、見抜かれた時点で反発に変わります。
読み終えたときに、自社サイトのどの1か所に何を書き足すかが決まるように進めます。
カリギュラ効果とは 意味と由来
まずは言葉の意味と、名前の出どころを押さえます。
ここが曖昧なまま使うと、ただの「煽り文句」と区別がつかなくなります。
言葉の意味
カリギュラ効果は、何かを禁じられたときに「なぜ駄目なのか」「中に何があるのか」と気になり、むしろ近づきたくなる心の動きを指します。
日本の昔話にもよく出てきます。
開けてはいけない玉手箱を開けてしまう話や、のぞいてはいけない機織り部屋をのぞいてしまう話がそうです。
禁止の言葉が、そのまま「ここに大事なものがある」という合図として働いているわけです。
名前の由来
名前は、古代ローマの皇帝カリギュラを題材にした1980年公開の映画から来ています。
過激な描写を理由に、アメリカの一部の地域で上映が禁止されました。
ところが禁止の話題が広まると、かえって「どんな映画なのか見てみたい」という人が増え、隣の地域まで足を運ぶ人まで出たと言われています。
この出来事から、禁止が興味を呼ぶ現象をカリギュラ効果と呼ぶようになりました。
なお、この呼び名は日本で広まった通称です。
心理学の論文では、後で触れる「心理的リアクタンス」という言葉で研究されています。
似た言葉との違い
カリギュラ効果と混同されやすい言葉が3つあります。
どれも「制限すると欲しくなる」に近い話ですが、どこに働くかが少しずつ違います。
| 言葉 | 何が起きているか | サイトで使う場面 |
|---|---|---|
| カリギュラ効果 | 禁止や制限をきっかけに、対象への興味が強くなる | 見出しや導入で「読む理由」を作る |
| 心理的リアクタンス | 選ぶ自由を奪われそうになると、それを取り戻そうと反発する | 押しつけがましい言い方を避ける判断に使う |
| 希少性の原理 | 数が少ないものや、手に入りにくいものを高く評価する | 受付枠や対応件数の上限を正直に示す |
| シロクマ効果 | 考えないようにするほど、かえって頭から離れなくなる | 直接は使わない。「気にしないで」と書くと逆に気になる点に注意する |
シロクマ効果は、心理学者ダニエル・ウェグナーらが1987年に発表した実験が元になっています。
「シロクマのことを考えないでください」と頼まれた人ほど、シロクマを思い浮かべてしまったという結果です。
サイトの文章に置き換えると、「料金はご心配なく」と書くと、読んだ人がかえって料金を心配し始める、という形で表れます。
なぜ禁止されると欲しくなるのか 心理学の研究
カリギュラ効果は、単なる言い伝えではありません。
土台になっている研究を4つ紹介します。
どの研究も、サイトの書き方に直接つながる示唆を持っています。
選ぶ自由を守ろうとする心理的リアクタンス
アメリカの心理学者ジャック・ブレームは、1966年に心理的リアクタンスの理論を発表しました。
人は自分で選べるはずの自由が脅かされると、その自由を取り戻そうとして、禁じられた選択肢をより魅力的に感じる、という考え方です。
カリギュラ効果は、この理論の分かりやすい現れ方の1つと見なせます。
ここで押さえたいのは、反発の向かう先です。
禁止された対象が魅力的に見えるのと同時に、禁止した相手への反感も生まれます。
サイトで強い禁止の言葉を使うと、商品への興味と一緒に、会社への反感まで買ってしまうおそれがあるということです。
落書き禁止の張り紙の実験
心理学者のペネベイカーとサンダースは、1976年に大学のトイレで張り紙の実験を行いました。
一方には「どんな事情があっても、この壁に落書きをしてはいけない」という強い禁止の張り紙を、もう一方には「この壁に落書きをしないでください」という穏やかなお願いの張り紙を貼りました。
2人の報告によると、強い禁止の張り紙を貼った壁のほうが、落書きがはるかに多くなりました。
禁止の言葉が強いほど、反発も強くなったわけです。
サイトの文章で言えば、「絶対に」「何があっても」といった強い言葉で縛るほど、読む人は離れていきます。
クッキーの瓶の実験
心理学者のウォーチェルらは、1975年に学術誌『ジャーナル・オブ・パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー』で、200人の女子大学生を対象にした実験を報告しました。
この報告によると、同じクッキーでも、置かれた状況によって評価がはっきり変わりました。
瓶にクッキーがたくさん入っている場合と、少ししか入っていない場合で、同じクッキーの評価を比べたものです。
少ない瓶のクッキーのほうが、より欲しいと評価されました。
さらに、この実験には中小企業にとって見逃せない結果が2つあります。
1つ目は、最初から少なかったときより、たくさんあったものが少なくなったときのほうが、評価が高くなったことです。
2つ目は、「人気で減った」クッキーは、「手違いで減った」クッキーより高く評価されたことです。
評価を左右したのは、制限そのものより、制限の理由でした。
「依頼が多く、今月の受付は残り2件です」と書くのと、理由を書かずに「残り2件」とだけ書くのとでは、受け取られ方が変わります。
警告表示が見たい気持ちを高めた研究
心理学者のブッシュマンとスタックは、1996年に暴力的な映像に付ける警告表示の影響を調べました。
「この映像には暴力的な場面が含まれます」と事実だけを伝える表示より、「視聴には注意してください」と行動を指図する警告のほうが、かえって見たいという気持ちを高めました。
研究者はこれを「禁断の果実」の考え方で説明しています。
サイトに当てはめると、事実を伝える書き方と、読む人に指図する書き方は、まったく別の結果を生みます。
「当社は製造業の現場改善を専門にしています」は事実の提示で、「製造業以外の方はご遠慮ください」は指図です。
同じ制限でも、前者のほうが反発を生みにくくなります。
しかも前者は、製造業の人にとっては「自分のための会社だ」という合図として働きます。
制限を指図の形で書くか事実の形で書くかで、同じ情報が反発にも安心にも変わるわけです。
| 研究 | 分かったこと | 自社サイトでやること |
|---|---|---|
| ブレーム(1966年) | 自由を奪われそうになると、禁じられた側を魅力的に感じ、禁じた相手には反発する | 読む人の選ぶ自由を残した言い方にする |
| ペネベイカーとサンダース(1976年) | 強い禁止の張り紙ほど落書きが増えた | 「絶対に」「必ず」で縛る言葉を削る |
| ウォーチェルら(1975年) | 少ないものほど評価され、人気が理由で減ったものはさらに評価された | 受付の上限には、上限がある理由を添える |
| ブッシュマンとスタック(1996年) | 指図する警告は、事実だけの表示より興味を高めた | 制限は指図の形にせず、事実の形で書く |
| ウェグナーら(1987年) | 考えるなと言われるほど、そのことが頭から離れない | 「ご心配なく」と書く前に、心配の中身に答える |
中小企業のサイトで効く場面と効かない場面
カリギュラ効果は、どんな場面でも効くわけではありません。
働く条件は「読む人がすでに少し興味を持っていること」です。
まったく関心のない人に「見ないでください」と書いても、そのまま閉じられて終わります。
効きやすいのは比較検討の途中
いくつかの会社を見比べている人は、「自分に合うのはどこか」を探しています。
この段階の人に「当社が合わないのはこういう方です」と示すと、判断の材料として読まれます。
合わない条件に自分が当てはまらないと分かった人は、「ここは自分向けだ」と感じやすくなります。
効きにくいのは初めての接触と急ぎの用件
広告やSNSから初めて来た人は、まだ会社を知りません。
この人にいきなり制限を突きつけると、知らない相手に断られたように感じて離れていきます。
水道の故障のような急ぎの用件で来た人も同じです。
すぐ来てくれるかどうかだけを知りたい人に、遠回しな言い方は届きません。
この場合の制限は、「対応できる地域」と「受付の時間」をページの先頭に書くだけで足ります。
当てはまる人は安心して電話をかけ、当てはまらない人は無駄な電話をせずに済みます。
| 読む人の状態 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 何社か比べている | 自分に合う会社の条件を探している | 合わない方の条件をサービスページに書く |
| 料金で迷っている | 高いか安いかより、損をしないかを気にしている | 向いていない依頼内容を料金表の近くに示す |
| 初めてサイトに来た | 会社のことをまだ何も知らない | 制限より先に、何をする会社かを伝える |
| 急ぎで困っている | すぐ対応してもらえるかだけを知りたい | 対応できる地域と時間を、制限として先頭に書く |
| 以前に問い合わせたことがある | 前回の対応を覚えている | 受付の状況を正直に伝え、次の空き時期を示す |
カリギュラ効果の例 日常と広告と中小企業のサイト
ここからは、具体的な例を見ていきます。
日常の例、広告の例文、中小企業のサイトの例文の順です。
日常の例
「夜中にお菓子を食べてはいけない」と決めた日に限って、お菓子が頭から離れなくなる。
子どもに「この部屋に入ってはいけない」と言うと、その部屋に入りたがる。
「ここだけの話だけど」と前置きされた話ほど、よく覚えている。
どれも、禁止や制限が注意を引き寄せている例です。
テレビ番組の「この続きはコマーシャルのあとで」も、見せる前に一度止めることで、続きへの興味を高める作りになっています。
情報をいったん伏せられると、人はその中身を知りたくなります。
広告やキャッチコピーの例文
広告では、禁止の言葉を見出しに使う型がよく見られます。
「この記事は、本気で売上を変えたい方以外は読まないでください」という書き出しが典型です。
ただし、この型は見慣れた人が増えたため、使い古された印象を与えることも増えています。
読む人が「また煽りか」と感じた時点で、効果は反発に変わります。
中小企業のサイトで使える例文
中小企業のサイトで使いやすいのは、制限を事実として伝える例文です。
強い禁止の形を取らなくても、対象を絞ること自体が興味を生みます。
| 型 | 例文 | 置く場所 |
|---|---|---|
| 対象を絞る | 従業員30名までの製造業の方に向けたサービスです | トップページの最初の画面 |
| 向いていない方を示す | 1か月で結果だけを求める方には、正直に申し上げて向いていません | サービスページの後半 |
| 上限を理由とともに示す | 代表が全件を担当するため、新規のご相談は月に4社までです | 問い合わせボタンの近く |
| 先に読んでほしいことを示す | ご依頼の前に、この3つの条件だけ確認してください | 料金ページの冒頭 |
| 断る場面を示す | ご相談の内容によっては、他の専門家をご紹介することがあります | よくある質問 |
BtoBのサービスでの使い方
BtoBのサービスでは、相手の会社も取引先を慎重に選んでいます。
担当者は、社内で稟議を通すときに「なぜこの会社なのか」を説明しなければなりません。
このとき、対象が絞られている会社のほうが、説明の材料を渡しやすくなります。
「当社のような規模の製造業を専門にしている」と上司に言えるからです。
向いていない依頼が書かれていれば、担当者は自社が当てはまらないことを先に確かめられます。
結果として、問い合わせる前の不安がひとつ減ります。
表の例文に、「絶対に」「必ず」「今すぐ」はひとつも入っていません。
強い言葉を使わなくても、「誰のためのサービスか」がはっきりすれば、当てはまる人の注意は十分に集まります。
サイトに書く前に 本当の制限を棚卸しする
カリギュラ効果をサイトで使うとき、最初にやるのは、自社が実際に抱えている制限を紙に書き出すことです。
文章を考えるのはその後です。
クッキーの瓶の実験が示したとおり、評価を上げるのは制限の理由です。
理由の無い制限は、読む人に「作った制限ではないか」と疑われます。
反対に、理由のある本物の制限は、そのまま会社の姿勢の説明になります。
対応できない地域や業種や規模
出張の範囲、得意な業種、引き受けられる会社の規模は、どの会社にも必ずあります。
それでも、問い合わせを逃したくない気持ちから、これを書かずにいる中小企業は珍しくありません。
ところが書かないままだと、合わない依頼にも1件ずつ対応する手間が生まれます。
そのうえ、本当に合うお客様からは「誰にでも同じことを言う会社」に見えてしまいます。
月に受けられる件数
少人数の会社なら、同時に進められる案件の数には上限があります。
この上限を「代表が全件を担当するため」「1社ごとに現地を見るため」といった理由と一緒に書くと、希少性と誠実さが同時に伝わります。
大事なのは、書いた数字を守ることです。
上限に達した月は、問い合わせページに「今月のご相談枠は埋まりました。来月分の受付は15日から始めます」のように、次の受付時期まで書いておきます。
枠が埋まったことを知った人の一部は、次の受付を待って問い合わせてくれます。
「月4社まで」と書いたのに、毎月10社を受けていれば、それは嘘の限定になります。
向いていないお客様
過去にうまくいかなかった案件を3件思い出してください。
3件を並べると、たいてい共通点が見つかります。
「社内に窓口になる人がいなかった」「最初から最安値の比較だけが目的だった」といった共通点が、そのまま「向いていない方」の条件になります。
社内で棚卸しを進める順番
棚卸しは、代表1人で机に向かうより、現場で問い合わせに対応している人と一緒に進めるほうが早く終わります。
最初に、直近1年の問い合わせを並べ、成約したものと成約しなかったものに分けます。
次に、成約しなかったものについて「なぜ合わなかったか」を一言ずつ書き添えます。
「遠方だった」「予算の前提が違った」「急ぎすぎていた」のように、理由の言葉が出そろえば十分です。
最後に、同じ理由が2回以上出てきたものだけを、サイトに書く制限の候補として残します。
1回しか出てこない理由まで書くと、制限が長くなりすぎて、合う人まで離れてしまいます。
| 制限の種類 | 書き方の例 | 根拠として手元に置くもの |
|---|---|---|
| 地域 | 現地調査が必要なため、車で1時間以内の地域に限っています | 実際の対応エリアの地図 |
| 業種 | 製造業と建設業のご相談を中心にお受けしています | 過去の取引先の業種の内訳 |
| 件数 | 代表が全件を担当するため、新規は月に4社までです | 月ごとの受注件数の記録 |
| 期間 | 成果が出るまで半年ほどかかるため、短期のご依頼はお受けしていません | 過去の案件の期間の実績 |
| お客様の体制 | 社内にご担当の方がいらっしゃることを前提に進めます | うまくいかなかった案件の共通点のメモ |
正直な制限が問い合わせに変わるまでの流れ
制限を書くと問い合わせが減るのではないか、と心配する方は少なくありません。
実際には、制限を書いたときに減るのは、もともと成約しにくい問い合わせです。
流れを図にすると、次のようになります。
制限を正直に書くと、合う人だけが問い合わせまで進みます。
図の要点は、制限を書いた時点で、読む人が自分で「合う」「合わない」を判断できるようになることです。
合わない人は問い合わせる前に離れ、合う人は「自分のことが書いてある」と感じたまま問い合わせボタンまで進みます。
営業の側から見ると、最初の打ち合わせで条件のすり合わせに使っていた時間が減ります。
浮いた時間を、合うお客様への提案の準備に回せるようになります。
少人数の会社ほど、この時間の差が月単位で積み上がります。
置き場所別の書き方
同じ制限でも、サイトのどこに置くかで働き方が変わります。
5つの場所ごとに、書き方の要点をまとめます。
トップページ
トップページの最初の画面では、制限を「対象の宣言」の形で書きます。
「誰のための会社か」を1文で示すだけで、当てはまる人は先を読み、当てはまらない人は早めに離れます。
ここで「向いていない方」を列挙するのは早すぎます。
初めて来た人には、まず何をする会社かを伝えるほうが先です。
サービスページ
サービスページは、比較検討中の人が最も時間をかけて読む場所です。
サービスの内容を説明し終えた後半に、「このサービスが向いている方」と「向いていない方」を並べて示します。
向いている方だけを並べるより、向いていない方を添えたほうが、説明全体が信用されやすくなります。
料金ページ
料金ページでは、料金表の直前に「ご依頼の前に確認していただきたいこと」を置きます。
料金で迷う人は、高いか安いかより、自分の依頼がその料金の範囲に入るかどうかを気にしています。
範囲外になる依頼を先に示しておくと、料金表を見たあとの「結局いくらになるのか」という不安が減ります。
問い合わせページ
問い合わせボタンの近くには、受付の状況を書きます。
「現在、来月開始分のご相談を受け付けています」のように、事実を淡々と書くのが基本です。
残り件数を書くなら、更新する担当者と頻度を決めてからにします。
半年前の「残り2件」がそのまま残っているサイトは、嘘の限定と同じ印象を与えます。
よくある質問
よくある質問には、「お断りすることはありますか」という質問を1つ入れます。
答えには、断る場面と、その場合にどうするかを書きます。
「他の専門家をご紹介します」と添えると、断る理由が読む人のための判断だと伝わります。
| 置き場所 | 読む人の状態 | 書く内容 |
|---|---|---|
| トップページ | 会社のことを初めて知る | 誰のための会社かを1文で示す |
| サービスページ | 他社と比べている | 向いている方と向いていない方を並べる |
| 料金ページ | 料金の範囲に入るかを気にしている | 範囲外になる依頼を料金表の前に示す |
| 問い合わせページ | 問い合わせるか迷っている | 受付の状況を事実として書く |
| よくある質問 | 断られないか不安に思っている | 断る場面と、その場合の対応を書く |
「こんな方には向いていません」の書き方
カリギュラ効果を中小企業のサイトで最も素直に使える形が、「向いていない方」の一覧です。
ただし書き方を間違えると、読む人を見下しているように受け取られます。
守ることは3つです。
1つ目 相手の人柄を書かず依頼の条件を書く
「すぐに諦める方」「人任せの方」のように、相手の人柄を決めつける書き方は反発を生みます。
書くのは、依頼の条件です。
「1か月以内に結果が必要なご依頼」「社内に窓口の方を置けないご依頼」のように、依頼の側を主語にします。
2つ目 理由を1文添える
向いていない理由が書かれていないと、ただ断られたように感じます。
「成果が出るまで半年ほどかかるため」のように理由を1文添えると、読む人は納得したうえで自分を当てはめられます。
3つ目 断ったあとの行き先を示す
合わなかった人を、そのまま放り出さないようにします。
「この場合は、こういう探し方をおすすめします」と一言添えるだけで、その人は会社に悪い印象を持たずに離れます。
こうした対応は、紹介や口コミの形で後から返ってくることがあります。
| 避けたい書き方 | 読む人が感じること | 書き直した例 |
|---|---|---|
| すぐに結果を求める方はお断りします | 自分が責められている | 成果が出るまで半年ほどかかるため、短期のご依頼には向いていません |
| 本気でない方はご遠慮ください | 本気かどうかを試されている | 月に1回、1時間の打ち合わせのお時間をいただける方に向いています |
| 安さだけで選ぶ方は対象外です | 見下されている | 料金の安さを最優先される場合は、他の選択肢のほうが合うことがあります |
| 絶対に冷やかしはやめてください | 問い合わせること自体が怖い | ご相談の段階でも、お気軽にお問い合わせください |
逆効果になる使い方
カリギュラ効果は、使い方を誤ると、会社の信用を削る方向に働きます。
よく見かける失敗を3つ挙げます。
強すぎる禁止の言葉
落書き禁止の張り紙の実験のとおり、強い禁止は強い反発を生みます。
「絶対に読まないでください」「本気の方以外は閉じてください」という書き出しは、反発と一緒に、会社への警戒心も生みます。
特にBtoBのサイトでは、取引先として信用できるかどうかを見られています。
煽りの強い言葉は、その判断で不利に働きます。
嘘の限定と期限
いつ見ても「残りわずか」、毎月末に「本日まで」と書かれているサイトは、何度か訪れた人にすぐ見抜かれます。
見抜かれた時点で、そのサイトに書かれた他の情報まで疑われるようになります。
さらに、次の節で触れるとおり、法律に触れるおそれも出てきます。
読む人を試す言い方
「この先を読める人だけが成功します」のように、読む人を試す言い方も避けます。
心理的リアクタンスの研究が示すとおり、自由を奪われそうになった人は、言った相手に反発します。
読む人が自分の意思で選べる余地を、言葉の中に残しておくことが大切です。
逆のカリギュラ効果 勧められるほど離れる
カリギュラ効果には、裏返しの形もあります。
禁止されると欲しくなるのと同じ仕組みで、強く勧められるほど、人は離れたくなります。
ページのあちこちに「今すぐお問い合わせを」「必ずご相談ください」と並べたサイトがこれにあたります。
読む人から見れば、選ぶ自由を急かされている状態です。
問い合わせボタンは、読む人が判断を終えたあとに目に入る場所へ、落ち着いた言葉で置くほうが押されやすくなります。
| やりがちな使い方 | 起きること | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 「絶対に」「必ず」で禁止する | 反発と警戒心が生まれる | 事実の形で対象を示す |
| 常に「残りわずか」と表示する | 見抜かれて他の情報まで疑われる | 実際の受付状況を、更新日と一緒に書く |
| 毎月「本日まで」と期限を作る | 期限が信用されなくなる | 本当に期限のあるものだけに期限を書く |
| 読む人を試す言い方をする | 見下されたと感じて離れる | 選ぶ余地を残した言い方にする |
| 理由なしに件数を絞る | 作った制限に見える | 件数を絞る理由を1文添える |
法律の線引き 景品表示法と特定商取引法
嘘の限定や期限は、信用を落とすだけで済まない場合があります。
中小企業でも、一般の消費者を相手にするなら景品表示法の対象になります。
景品表示法の有利誤認表示
景品表示法の第5条第2号は、事業者が次のような表示をすることを禁じています。
「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」
これを有利誤認表示と呼びます。
実際にはいつでも同じ条件で買えるのに「今月限り」と書くのは、取引条件を実際より有利に見せる表示にあたるおそれがあります。
期限や数量の限定を書くなら、その限定が事実であることを示せる記録を残しておきましょう。
特定商取引法の最終確認画面
通信販売で申込みを受ける場合は、特定商取引法の第12条の6も関わります。
2022年6月に施行されたこの規定は、申込みの最終確認画面で、分量や価格、申込みの期間などを表示することを求めています。
条文は、それらの事項について「人を誤認させるような表示」をしてはならないとも定めています。
申込み画面に根拠のない「残り時間」の表示を置くのは、この点からも避けるべきです。
| 表示の例 | 問題になりうる点 | 安全な書き方 |
|---|---|---|
| いつでも買えるのに「今月限り」 | 取引条件を実際より有利に見せている | 本当に終わるものだけに期限を書く |
| 数が減らないのに「残り3点」 | 事実と違う数量の表示になる | 在庫や受付数と連動させるか、書かない |
| 根拠のない「通常価格」との比較 | 比べる価格が実在しない | 実際に販売していた価格だけを比べる |
| 申込み画面の作られた残り時間 | 申込みの期間を誤認させる | 期限がある場合だけ、日付で示す |
個別の表示が違反にあたるかどうかは、事実関係によって判断が変わります。
迷う表示があれば、消費者庁が公表している景品表示法の考え方を確認するか、専門家に相談してください。
特に、価格の比較や期限つきの値引きは、表示の根拠を後から求められることがあります。
いつ、どの条件で、何件受けたのかを記録しておけば、根拠を問われたときにそのまま示せます。
効果の測り方
制限を書き足したら、その結果を数字で確かめます。
見るのは問い合わせの数だけでは足りません。
問い合わせの中身がどう変わったかまで見て、はじめて判断できます。
アクセス解析で見ること
GA4では、制限を書いたページの「問い合わせボタンのクリック数」を、書き足す前の4週間と後の4週間で比べます。
ページを見た人の数で割った割合で比べると、季節による増減の影響を受けにくくなります。
Search Consoleでは、そのページがどんな言葉で検索されているかを確認します。
検索の言葉と、書いた「対象の宣言」がずれていないかを見ておきます。
問い合わせの中身で見ること
数字以上に大事なのが、問い合わせの中身です。
書き足す前後で、「最初の打ち合わせまで進んだ割合」と「成約した割合」を比べます。
問い合わせの総数が少し減っても、成約の数が保たれていれば、制限は狙いどおりに働いています。
書いた制限を見直す時期
制限は、一度書いたら終わりにしないようにします。
人が増えれば受けられる件数は変わりますし、新しい業種の実績ができれば対象も広がります。
3か月に1回、問い合わせの記録と書いた制限を見比べ、実態とずれていないかを確かめてください。
ずれたまま放置すると、本物だった制限が、いつの間にか嘘の限定に変わってしまいます。
| 見る数字 | 見る場所 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 問い合わせボタンのクリック率 | GA4のイベント | 書き足す前の4週間と後の4週間で比べる |
| ページが表示された検索の言葉 | Search Console | 対象の宣言と検索の言葉がずれていないかを見る |
| 打ち合わせまで進んだ割合 | 自社の問い合わせ記録 | 上がっていれば、合う人が残っている |
| 成約した件数 | 自社の受注記録 | 総数が減っても保たれていれば成功 |
| 合わない依頼の件数 | 自社の問い合わせ記録 | 減っていれば、制限が読まれている |
よくある質問
カリギュラ効果と心理的リアクタンスは同じものですか
重なる部分は大きいものの、同じものではありません。
心理的リアクタンスは、1966年にジャック・ブレームが示した「自由を奪われそうになると取り戻そうとする」反発全体を指す学術用語です。
カリギュラ効果は、その中でも「禁止された対象への興味が強くなる」という一面を指す、日本で広まった通称です。
BtoBのサイトでもカリギュラ効果は使えますか
使えます。
むしろ、取引先を慎重に選ぶBtoBのほうが、「対象を絞る」「向いていない依頼を示す」という形が受け入れられやすい傾向があります。
強い禁止の言葉は信用を損なうので、事実の形で書くことが前提です。
向いていない方を書くと問い合わせが減りませんか
総数は減ることがあります。
減るのは主に、もともと成約しにくかった問い合わせです。
打ち合わせまで進む割合と成約の数を一緒に見て判断してください。
総数が大きく減ったときは、制限の書き方が強すぎないかを見直します。
「お断りします」を「向いていません」に変えるだけで、戻ることもあります。
「限定」や「残りわずか」はどこまで書いてよいですか
事実である範囲なら書けます。
大事なのは、限定の根拠を記録しておくことと、表示を最新の状態に保つことです。
更新する人と頻度を決められないなら、残り件数は書かず、受付の状況だけを書くほうが安全です。
キャッチコピーに禁止の言葉を使ってもよいですか
使うこと自体は禁じられていません。
ただし、禁止の言葉の後に続く中身が期待を下回ると、読む人の落胆は大きくなります。
ただ、「絶対に読まないでください」のような型は見慣れた人が多く、煽りと受け取られやすくなっています。
中小企業のサイトなら、「従業員30名までの製造業の方へ」のように、対象を絞る形のほうが信用を損なわずに注意を集められます。
まとめ
カリギュラ効果は、禁止や制限によって、かえって興味が強くなる心の動きです。
土台には、ブレームの心理的リアクタンスの理論や、落書き禁止の張り紙、クッキーの瓶の実験などの研究があります。
研究から分かるのは、強い禁止ほど反発を生み、制限は理由と一緒に示したときに評価が上がるということです。
中小企業のサイトで使うなら、作った禁止や嘘の限定は使わず、自社が本当に抱えている制限を、理由と一緒に事実の形で書きます。
対象の地域、得意な業種、受けられる件数、向いていない依頼の条件は、どの会社にもあるはずです。
それを隠したまま「どなたでも歓迎」と書くより、正直に書いたほうが、合うお客様からの信用は厚くなります。
書いた制限は3か月ごとに実態と見比べ、嘘の限定に変わっていないかを確かめ続けてください。
まずはサービスページに「向いていない依頼」を3つ、理由と一緒に書き足すところから始めてください。
今日できる点検
最後に、今日のうちに自社サイトで確かめられることを表にまとめます。
上から順に見て、当てはまらなかった行が、次に直す場所です。
| 点検すること | 見る場所 | 当てはまらなかったときにすること |
|---|---|---|
| 誰のための会社かが1文で書かれているか | トップページの最初の画面 | 対象の業種や規模を1文で書き足す |
| 向いていない依頼が理由と一緒に書かれているか | サービスページの後半 | 過去にうまくいかなかった案件の共通点から3つ書く |
| 「絶対に」「必ず」で縛る言葉がないか | サイト全体の見出しと導入 | 事実の形に書き直す |
| 限定や期限の表示が事実と合っているか | 料金ページと問い合わせページ | 根拠のない表示を消すか、根拠の記録を残す |
| 断る場面とその後の対応が書かれているか | よくある質問 | 「お断りすることはありますか」の質問を足す |
| 書き足す前の数字を控えてあるか | GA4と問い合わせ記録 | 直近4週間のクリック率と打ち合わせの割合を記録する |
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