メニュー表を作ろうとして、まず開くのは、パソコンの画面でしょうか。それとも、文房具店の紙売り場でしょうか。
作り方を調べると、道具の話がたくさん出てきます。テンプレートの探し方、文字の大きさ、写真の入れ方、印刷の仕方です。
この記事は、飲食店やサロンなど、小さな店を営む店主に向けて書いています。
カフェ、居酒屋、美容室、ネイルサロン、整体院、エステ。お客さんが「何があるのか」「いくらなのか」を紙で確かめてから選ぶ店を思い浮かべています。
メニュー表の作り方には、操作の手順を説明する記事がたくさんあります。
その手順を覚えても、完成したメニュー表の前で、初めて来たお客さんが手を止めてしまう店は残ります。
手が止まる理由は、デザインの出来よりも、並べ方にあることがほとんどです。
この記事では、初めてのお客さんが迷わず選べる並べ方を先に決めます。
そのうえで、同じ内容を店のホームページや地図サービスにも載せて、来店する前に見てもらう方法を書きます。
メニュー表は、店の中で選んでもらう紙であり、来る前に判断してもらう材料でもあります。 紙の中身を整えると、その両方に使えます。
読み終えたときに、メニュー表の最初の1枚に何を置くかが、1つ決まっている。それがこの記事のゴールです。
Q&Aサイトで見かけた、メニュー表を自分で作りたいという質問
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
投稿されたのは2023年の春で、質問はとても短いものでした。
「飲食店などのメニュー表を自分で作る方法を教えてほしい」という内容です。
質問は一行で、どんな店かも書かれていなかった
質問の本文には、どんな店のメニューなのか、何品あるのか、誰が読むのかは書かれていませんでした。
書かれていたのは、自分で作りたいという気持ちだけです。
初めて店を開く人か、店のメニューを任された人か、文面からは分かりません。
ただ、何から手をつければいいのか分からず、まず聞いてみたという空気は伝わってきました。
回答は、テンプレートの紹介と、作る前の心構えに分かれた
寄せられた回答は、大きく2つに分かれていました。
1つは、テンプレートの載っているページを紹介する回答です。表計算の画面でテンプレートを使えばよい、という短い回答もありました。
もう1つは、質問が抽象的すぎて、どこから教えればいいのか分からないという回答です。
さらに、飲食店と関係のない人がメニューを作っても、そのとおりの料理は店では作れない、という指摘もありました。
どの回答も間違いではありません。ただ、質問者が本当に知りたかったであろう「お客さんに選んでもらえる形」の話は、そこにはありませんでした。
別の質問では、大きさや本の形に悩む声があった
同じ頃、披露宴のメニュー表の大きさを悩む質問もありました。
用紙の大きさを2つ比べて、どちらがいいかを尋ねる質問です。
回答の1つは、年配の来客は文字が小さいと読みにくいので、面積の広いほうがよいと書いていました。
また別の質問では、メニュー表を挟む本の金具をどこで買うか、という相談もありました。
作る人の関心は、大きさ、紙、金具のような、目に見える部分に集まりやすいのです。
読む人の目は、そのずっと手前で、何があるのか、自分に頼めるものはどれか、という点を探しています。
作り方の前に決める、メニュー表の役目
メニュー表を作る前に、何のために作るのかを一度決めておくと、迷いが減ります。
役目が決まっていないと、載せるものが増え続けて、紙が重くなっていきます。
初めてのお客さんは、メニュー表で頼む前に入るかを決めている
店の入口にメニューを立てている店は多く、そこで足を止めた人は、紙を見て入るかどうかを決めます。
つまり、メニュー表は、注文を受ける道具である前に、入店の判断材料です。
サロンも同じです。予約の前に料金表を見て、頼めそうな店かどうかを決める人が多くいます。
店主の作り方と、お客さんの読み方は、順番が逆になる
店主は、売りたい物から順に書き始めます。定番、人気、季節のもの、という順です。
お客さんは、自分に頼めるかどうかを先に探します。値段の幅、量、時間、初めてでも大丈夫かどうかです。
この順番のずれが、手が止まる原因の1つです。
メニュー表の最初の1枚は、初めての人が選びやすい順に作り直します。店主が売りたい順は、2枚目以降に回します。
作り方の検索で出てくる話と、この記事で扱う話
メニュー表の作り方を検索すると、出てくる話は大きく4つに分かれます。
次の表で、この記事が何を扱うかを確かめてください。
| 検索で出てくる話 | 中身 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 道具の操作 | テンプレート、文字、写真の入れ方 | 最小限にとどめる |
| デザインの雰囲気 | 色、書体、世界観 | 読みやすさの範囲だけ書く |
| 並べ方 | 順番、区切り、説明の入れ方 | 中心に書く |
| 店の外への載せ方 | ホームページ、地図サービス | 中心に書く |
道具の話は、すでに十分な情報があります。この記事は、残りの2つに紙面を使います。
初めての人が手を止める3つの場面
並べ方を決める前に、初めてのお客さんがどこで手を止めるのかを、先に整理しておきます。
何があるのかが分からない
最初に手が止まるのは、メニュー表を開いた最初の画面で、全体の姿が見えないときです。
ページをめくる枚数が多く、どこに何があるのか分からないと、お客さんは最初に見えたものを選んで終わります。
最初の1枚に、全体の地図の役目を持たせると、この場面が減ります。
自分に頼めるものが分からない
次に手が止まるのは、料理名や施術名を読んでも、中身が想像できないときです。
横文字の料理名、店独自の名前、略した名前は、常連には通じても、初めての人には通じません。
名前の下に一言の説明を添えると、頼める範囲が見えてきます。
総額がいくらか分からない
最後に手が止まるのは、合計でいくらになるのかが分からないときです。
サロンでは、基本の料金に追加の料金が足されるのかどうかが、不安として残ります。
総額の考え方を紙の上で見せておくと、この場面が減ります。
3つの場面と、直す場所を表にする
次の表は、手が止まる場面と、紙のどこを直すかをまとめたものです。
| 手が止まる場面 | お客さんの頭の中 | 直す場所 |
|---|---|---|
| 何があるのか分からない | どれを見ればいいのか | 最初の1枚の全体の案内 |
| 自分に頼めるものが分からない | これは何だろう | 名前の下の一言の説明 |
| 総額が分からない | 結局いくらになるのか | 価格の書き方と追加料金の案内 |
この3つのどれか1つでも、答えを先に紙の上に置いておくと、手が止まる時間は短くなります。
迷わず選べる並べ方の基本
並べ方で大事なのは、お客さんの視線が上から下へ、一方向に流れることです。
メニュー表を作る側は、見栄えを考えて左右にばらして置きたくなります。ところが、初めて読む人は、どこから読むのかを探すところで疲れます。
最初の1枚に、全体の案内を置く
最初の1枚には、区切りの名前を並べて、全体の姿を見せます。
飲食店なら「前菜」「主菜」「ごはん」「飲み物」のような区切りです。サロンなら「カット」「カラー」「パーマ」「ケア」のような区切りです。
区切りが多すぎると案内にならないので、目安は5つから7つです。
紙1枚の上で、指で順番に追える数に収めると、読みやすくなります。
看板になる1品を先に決める
初めてのお客さんは、迷ったときに「この店はこれ」というものを探します。
看板になる1品、または1つのコースを、最初の画面の目立つ位置に置きます。
看板には、売りたい物より先に、初めての人に最初に頼んでほしい物を選びます。値段が高すぎず、量が分かりやすく、店の特徴が出る物がよい選び方です。
区切りの中は、軽いものから重いものへ並べる
区切りの中の順番は、お客さんの負担が軽い順に並べます。
量の少ないものから多いもの、時間の短いものから長いもの、値段の低いものから高いもの、という流れです。
上から読んでいって、自分に合うところで止まれる並べ方になります。
並べ方の型を表にしてみる
次の表は、よくある並べ方の型と、向いている店をまとめたものです。
| 並べ方の型 | 向いている店 | 注意すること |
|---|---|---|
| 料理の流れ順 | 居酒屋、レストラン | 飲み物を最後に置くと見落とされる |
| 量が軽い順 | カフェ、定食屋 | 看板を最初の画面に別枠で置く |
| 時間が短い順 | 美容室、整体院 | 追加の時間と総額を同じ場所に書く |
| 初回向けと通常向け | サロン、エステ | 初回の条件を紙の隅に小さく書かない |
| 人気順 | 品数の多い店 | 人気の根拠を自分で確かめてから書く |
どの型を選んでも、最初の1枚に全体の案内を置くことは同じです。
名前の下に、一言の説明を添える
名前だけを並べたメニュー表は、常連にとって読みやすく、初めての人にとって謎かけになります。
初めての人は、名前から中身を想像できない
店独自の名前は、店主の愛着が詰まっています。ただ、その名前を初めて見る人は、何が出てくるのか、何をされるのかを想像できません。
「特製」「こだわり」「おまかせ」のような言葉は、中身を教えてくれません。
名前の下に、材料、量、時間、仕上がりを短く書くと、頼める範囲が見えます。
説明は1行で、見たことを書く
説明は、1行で収まる長さにします。
読んだ人が、頭の中に絵を描ける言葉を選びます。「ふわふわ」「しっとり」のような曖昧な形容より、「焼いてからだしに浸す」「根元から毛先まで整える」のような、やることを書きます。
食べ物の説明では、使っていない材料を使っているように見せないことが、次の章で書く法律の面でも大切です。
横文字や略した言葉には、日本語を添える
横文字や略した言葉は、初めての人が最も戸惑います。
専門用語を残すなら、横に小さく日本語で意味を添えます。
サロンの施術名は特にそうです。同じ名前でも店ごとに中身が違うので、時間と内容を一緒に書いておくと、お客さんは安心して選べます。
名前と説明の書き方を表にする
次の表は、名前の書き方を直すときの例です。
| 直す前の書き方 | お客さんが感じること | 直した書き方 |
|---|---|---|
| 特製ランチ | 何が付くのか分からない | 主菜とごはんと汁物の組み合わせと書く |
| おまかせコース | 何をされるのか分からない | 内容と所要時間を並べて書く |
| 当店おすすめ | 何がよいのか分からない | おすすめする理由を一言書く |
| 初回限定 | 自分は対象なのか分からない | 初めての人が対象と書く |
説明を足すと紙が重くなりそうに見えます。足した分だけ、他の言葉を引くと、紙の重さは変わりません。
道具は何でもよい、パソコンでもスマホでも手書きでも
メニュー表の作り方を調べる人は、パソコンで作るのか、スマホで作るのか、アプリを入れるのかと迷います。
結論を書くと、どの道具でも構いません。
変えるたびに作り直さなくて済む形を選ぶ
メニュー表は、一度作って終わりではありません。値段、品、時期のメニューは何度も変わります。
変えるたびに最初から作り直さなくて済む形を選ぶことが、道具選びで最も大事です。
文字を打ち直せば済む形で作っておき、元のデータをなくさないようにします。
手書きにも向いている店がある
手書きは、小さな店では強い味になります。ただし、字が読みやすいことが条件です。
手書きにした場合は、店内の紙とは別に、文字として打ち直したものも用意しておきます。理由は、次の章で書く店の外への載せ方で必要になるからです。
道具ごとの向き不向きを表にする
| 道具 | 向いている店 | 気をつけること |
|---|---|---|
| パソコン | 品数が多く、たびたび変わる店 | 元のデータを1か所に保管する |
| スマホ | 写真を撮ってすぐ直したい店 | 文字が小さくなりすぎないよう確認する |
| 手書き | 品数が少なく、世界観を出したい店 | 店の外用に打ち直した文字も持つ |
| 印刷会社に頼む | 冊子や厚い表紙が必要な店 | 中身の変更が出たときの手順を決める |
どの道具を使っても、最初の1枚の案内と、名前の下の説明が整っていれば、お客さんは迷いません。
価格は、税込の合計で書く
お客さんが最後に確かめるのは、合計でいくらになるのかです。
ここは、店の好みで決められない、決まりのある部分です。
値段を前もって見せる場合は、税込の価格を示す
国税庁の消費税の解説ページ(総額表示の案内)には、値段を前もってお客さんに見せるときは、消費税額と地方消費税額を含めた価格を表示することを義務付けている、という内容が書かれています。
原文では「消費税額(地方消費税額を含む。)を含めた価格(税込価格)を表示することを義務付けるもの」とされています。
同じページには、この決まりは値段を前もって表示する場合に当てはまり、値段を示さない場合や、口頭で伝える値段には当てはまらないとも書かれています。
店頭の看板、チラシ、紙のメニュー表は、前もって見せる表示にあたります。
税抜の価格を並べるときも、税込の合計を一緒に示す
同じ国税庁のページには、認められる表示の例が並んでいます。
税込の価格だけを書く形、税込と添えて書く形、税抜の価格を書いたうえで税込の価格を併記する形などです。
税抜の価格を小さく添えること自体は、構いません。大事なのは、お客さんが払う合計が、紙の上で一目で分かることです。
税率や金額は変わることがあるので、書く前に、国税庁のページで最新の案内を確かめてください。
追加の料金は、同じ場所に書いておく
サロンのように、基本の料金に追加の料金が足される店では、追加の条件を同じ場所に書きます。
「長さによって追加」「薬剤によって追加」と、基本の料金から離れた場所に小さく書くと、会計のときにお客さんが驚きます。
驚きは、次の来店を遠ざけます。
価格の書き方を表にしておく
| 場面 | お客さんが知りたいこと | 紙に書くこと |
|---|---|---|
| 飲食店の料理 | 払う合計 | 税込の価格を大きく書く |
| 飲み物の追加 | 席料や通し代の有無 | 最初の1枚に条件を書く |
| サロンの施術 | 追加の料金が出る条件 | 基本の料金と同じ行に条件を書く |
| コースや回数券 | 全体でいくらか | 回数と総額を並べる |
書いたことは全部、景品表示法の対象になる
メニュー表は、自由に書いてよい紙に見えます。実は、書いたことが実際と違うと、法律の対象になる紙です。
店内・店頭のメニューも、インターネットの表示も対象
消費者庁が公表した「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」(2014年3月28日公表、2016年4月1日に一部改定)には、こう書かれています。
「店内・店頭のメニューや料理名の表示、陳列物、説明も表示に該当し、景品表示法の対象となる。」
この文書は、広告の媒体についても「パンフレット、説明書面、ポスター、看板、インターネットをはじめとして、対象範囲はあらゆるものに及ぶ」と書いています。
つまり、紙のメニュー表に書いたことと、ホームページや地図サービスに載せたことは、同じ扱いで見られます。
判断の基準は、お客さんが受ける印象
同じ文書は、表示が問題になるかどうかを「表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識が基準となる」と説明しています。
料理名だけでなく、写真や文言を含めたメニュー全体から、お客さんがどう受け取るかで判断されます。
店主に悪意がなくても、判断は変わりません。文書には、不当な表示を行った者の故意や過失は問わない、とはっきり書かれています。
例に挙がっているのは、成形肉を使った料理名
文書の質問と回答には、牛の成形肉を焼いた料理を「ビーフステーキ」や「ステーキ」と表示するのは問題になる、という例があります。
お客さんは「ステーキ」と読めば、生肉の切り身を焼いた料理を思い浮かべるからです。
成形肉を使うなら、料理名の近くに「成形肉使用」のように、はっきり書く必要があるとされています。
一方で、「ハンバーグステーキ」のように、全体の表示から生肉の切り身とは受け取られない場合は、問題にならないとも書かれています。
迷ったときの動き方
実際に使っている材料と、メニュー表の言葉が合っているかどうかは、店主が一番よく知っています。
書く前に、仕入れた材料の名前を見て、メニューの言葉が同じ意味になっているかを確かめます。
分からないときは、文書に書かれている消費者庁表示対策課の相談窓口に、事前に聞くこともできます。
景品表示法の見方を表にする
| 確かめる点 | 問題になりやすい書き方 | 直し方 |
|---|---|---|
| 材料の名前 | 実際と違う高級な名前を使う | 実際の材料の名前を書く |
| 産地や銘柄 | 日によって変わるのに名前を固定する | 仕入れの日ごとに書き換える |
| 写真 | 実物と大きく違う盛りつけを載せる | 実際に出す形で撮る |
| 加工の有無 | 手作りに見せて既製品を使う | 実際の作り方を書く |
アレルギーの案内は、確かめた範囲だけ書く
食物アレルギーのある人は、メニュー表を、命に関わる情報として読みます。
ここは、店の側が慎重に書く部分です。
消費者庁の文書は、飲食店にも情報提供を求めている
先ほどの消費者庁の文書には、食品表示法でアレルゲンの表示が義務付けられているのは、容器包装された食品であり、「飲食店等のメニュー表示には直接適用されるものではない」と書かれています。
そのうえで、こう続いています。
「アレルギー表示といった食品を摂取する際の安全性に関する情報を適切に消費者に伝えることは極めて重要です。」
飲食店等でも、アレルゲンを含む原材料の把握に努めること、調理の場での意図せざる混入の状況を踏まえること、注文を受けるときにアレルギーの有無を確認することなどが求められる、と書かれています。
消費者庁は、外食事業者への調査も始めている
消費者庁のアレルギー表示のページには、2026年9月30日付で、外食・中食事業者を対象にした、食物アレルギーの情報提供に関する実態調査アンケートを開始した、というお知らせがあります。回答の締切は2026年10月29日です。
また、同じページには、2026年4月1日に特定原材料としてカシューナッツを追加した、という記載があります。
対象になる品目は見直されることがあるので、案内を作るときは、消費者庁のページで最新の品目を確かめてください。
案内に書くのは、確かめた事実だけにする
店が自分で確かめていない内容を、アレルギーの案内に書いてはいけません。
「うちは卵を使っていない」と書いて、仕入れた調味料に卵が含まれていたら、取り返しがつきません。
確かめていないことは、「確認できません。お申し付けください」と書きます。注文のときに、店の人が直接聞くほうが、安全です。
アレルギーの案内の考え方を表にする
| 場面 | 書いてよいこと | 書かないこと |
|---|---|---|
| 材料を確かめた料理 | 含む材料の名前 | 確かめていない除外の表現 |
| 材料を確かめていない料理 | 確認できない旨と声かけの案内 | 使っていないという断定 |
| 調理の場の混入 | 同じ場所で調理している事実 | 混入しないという約束 |
同じ内容を、店のホームページと地図サービスにも載せる
お客さんの多くは、店に着く前に、メニューや料金を探します。
探す場所は、店のホームページか、地図サービスの店のページです。そこで見つからなければ、お客さんは別の店のページに移ります。
来店前のお客さんは、紙の外でメニューを探している
店の入口でメニュー表を見るお客さんは、すでに店の前まで来ています。
一方、来店前のお客さんは、検索結果の上で、行くかどうかを決めようとしています。
その人が見るのは、店の紙より先に、画面の中の文字と写真です。
紙の写真を貼っただけでは、読まれにくい
メニュー表を写真に撮って、そのままホームページに貼る店があります。
写真は、小さな画面で文字が読みづらく、検索にも拾われにくくなります。
紙と同じ内容を、文字として打ち直して載せます。写真は、雰囲気を伝える補助として使います。
手書きのメニューこそ、文字に打ち直す
手書きの味のあるメニューは、店の中では強い武器です。
ただ、画面の上では、手書きは読みにくくなります。
打ち直した文字と、手書きの写真を並べておくと、雰囲気と読みやすさの両方が残ります。
紙と画面で、内容と順番を揃える
紙のメニュー表と、ホームページと、地図サービスの店のページで、名前、説明、価格、順番を揃えます。
言葉が違うと、お客さんは別の店を見ているように感じます。
「見るだけでも歓迎です」のような、気持ちを伝える一言も、紙と画面で同じにします。
内容がずれると、法律の面でも問題が出る
前の章で書いたとおり、消費者庁の文書は、紙のメニューもインターネットの表示も同じように対象と書いています。
紙の値段を直して、ホームページの値段をそのままにしておくと、画面を見て来たお客さんとの間でずれが生まれます。
ずれは、店への信頼を下げます。直す日には、紙、ホームページ、地図サービスを、同じ日にまとめて直します。
載せる場所と、載せる内容を表にする
| 載せる場所 | お客さんの状況 | 載せる内容 |
|---|---|---|
| 店の入口 | 通りがかりで足を止めた人 | 看板の1品、値段の目安、見るだけでよい旨 |
| 店のホームページ | 調べてから決める人 | 全体の案内、説明つきの一覧、税込の価格 |
| 地図サービスの店のページ | 近くで探している人 | 看板の1品、営業時間、メニューの要点 |
| 予約の画面 | 日時を決める人 | 所要時間、総額、追加の条件 |
次の図は、紙と画面が同じ答えを出す流れを示している
次の図は、店の入口で足を止めた人と、画面で調べた人が、同じ答えにたどり着く流れです。
図のとおり、紙とホームページに同じ言葉があると、どちらから入ったお客さんも同じ安心にたどり着きます。
売れるサイトはみな謙虚
売れるサイトはみな謙虚、というのが、私たちが経営者の方との面談でお伝えしている考え方です。
あれもこれもと足していくのをやめ、お客さんが次の一歩に進むために要らないものを引いていくと、サイトは売れる形に近づきます。
メニュー表も、足すより引くほうが読みやすくなる
メニュー表も、ホームページと同じです。
品数を増やしたくなる気持ちは分かりますが、品数が増えるほど、初めての人は選べなくなります。
出ない日がある品、頼まれない品を、思い切って引きます。
引くと、店の特徴が前に出る
品を引くと、残った品が店の特徴になります。
何屋なのかが紙から伝わり、初めてのお客さんは、頼む物を決めやすくなります。
引いた品は、予約のときや、常連への声かけで出せばよいのです。
経営者の面談でも、先に答える順番の相談が多い
経営者の方との面談で、ホームページの話をするとき、まず確かめるのは、初めて来た人が最初に見る場所に何が置かれているかです。
メニュー表の最初の1枚と、ホームページの最初の画面は、同じ役目を持っています。
どちらも、何屋で、何が頼めて、いくらくらいかを、先に答える場所です。
外国からのお客さんには、画面で先に見せる
近くに観光の人が多い店では、外国語のメニューを考える人もいます。
ここでも、来店前に画面で見てもらう工夫が効きます。
訪日客の人数は、確定値で約4,268万人
日本政府観光局が公表している「年別 訪日外客数、出国日本人数の推移」によると、2025年(令和7年)の訪日外客数は42,683,301人でした。確定値です。
前の年の36,870,148人から、15.8%増えています。
これだけの人が日本を訪れているので、店の近くにも、外国から来た人が歩いている可能性があります。
言葉の分からない町で店を選ぶ人は、入る前に、画面で中身を確かめたいと考えます。
全部を訳さず、看板の1品と案内だけを訳す
外国語を全部載せようとすると、手が止まります。
最初の1枚の区切りの名前と、看板の1品、アレルギーの案内の一文だけでも、外国語を添えておくと、入りやすくなります。
訳した言葉は、店で使っている実際の料理の説明と、意味が合っているかを確認します。
絵や写真が、言葉の壁を越えることがある
外国語の文字より先に、写真や絵が役に立つ場面があります。
実際に出す料理の写真を、名前の横に置くと、言葉が通じなくても、頼む物を指さして伝えられます。
ここでも、写真は実際に出す形で撮ることが、景品表示法の面で大切です。
業種ごとの、最初の1枚に置くこと
同じメニュー表でも、業種によって、最初に答えるべきことは変わります。
飲食店は、看板の1品と、量の目安を置く
飲食店で初めての人が知りたいのは、何が看板で、一人で食べきれる量かどうかです。
量が分かりにくい品には、「二人で分けられる」「ひとりで一皿」のような一言を添えます。
飲み物の最初の一杯や、席料のような条件は、最初の1枚に書いておきます。
美容室は、時間と追加の条件を置く
美容室で初めての人が知りたいのは、かかる時間と、追加の料金が出る条件です。
髪の長さによる差、薬剤による差を、同じ行の中に書きます。
初めての人向けの流れも、1行添えておくと、予約の電話がしやすくなります。
整体院やエステは、初回の流れと合わなかったときの案内を置く
整体院やエステで初めての人が気にするのは、何をされるのか、無理に勧められないか、です。
初回の流れを矢印で見せ、「合わないと感じたら、その場で伝えてください」と書いておきます。
断れることが紙に書いてあるだけで、予約の電話はずっとかけやすくなります。
ネイルやまつげのサロンは、持ち込みと追加の案内を置く
ネイルやまつげのサロンでは、デザインの持ち込み、オフの有無、追加のパーツで、料金が変わります。
最初の1枚に、基本の料金に含まれるものと、含まれないものを分けて書きます。
業種ごとの最初の1枚を表にする
| 業種 | 最初の1枚に置くこと | 初めての人の不安 |
|---|---|---|
| 飲食店 | 看板の1品、量の目安、席料の有無 | 頼みすぎないか |
| 美容室 | 所要時間、追加の条件、初回の流れ | 総額が分からない |
| 整体院、エステ | 初回の流れ、断れる旨 | 無理に勧められないか |
| ネイル、まつげ | 基本に含まれる範囲、追加の条件 | 当日に料金が増えないか |
やりすぎて逆効果になること
メニュー表は、直し始めると熱が入ります。熱が入りすぎて、逆効果になる直し方があります。
説明を足しすぎて、紙が文章だらけになる
名前の下に一言の説明を、と書きましたが、全部の品に長い説明を付けると、紙は読む物に変わります。
お客さんは、メニューを読む前に、選ぼうとして紙を開いています。
説明は1行までとし、長く伝えたい品だけ、別の枠に入れます。
看板の品を並べすぎて、看板が分からなくなる
看板が大事だからと、3つも4つも目立たせると、どれも目立たなくなります。
最初の画面で目立たせるのは、1品か、1つのコースです。
写真を盛りすぎて、実物と差が出る
写真は、実物より少し良く見せたくなります。
実物と大きく違う写真は、前の章で書いた景品表示法の面でも、お客さんの信頼の面でも、リスクになります。
実際に出す形を、実際の器で撮ります。
誰も頼まない品を残して、紙が重くなる
昔から載せている品を、惰性で残していないでしょうか。
数か月頼まれていない品は、いったん外して、必要なときに口頭で出す形に変えます。
逆効果を避けるために、表で確かめる
| やりすぎの形 | 起きること | 抑える方法 |
|---|---|---|
| 長い説明 | 読み疲れて選べない | 説明は1行までにする |
| 看板が多すぎる | どれが看板か分からない | 最初の画面に1品だけ置く |
| 盛りすぎた写真 | 実物との差で信頼を失う | 実際に出す形で撮る |
| 品数を残しすぎる | 初めての人が選べない | 頼まれない品を外す |
直したあとの3週間に見ること
メニュー表を直したら、直しっぱなしにせず、3週間だけ様子を見ます。
3週間という長さは、私の目安です。常連と初めての人が、ひと通り来店する長さを想定しています。
見る数字は、初めての人の注文と、聞かれた回数
見るのは、2つに絞ります。
初めての人が最初に頼んだ品と、お客さんから「これは何ですか」と聞かれた回数です。
聞かれた回数が減ったら、説明が届いているということです。
聞かれたことは、その日のうちに紙の隅に書き留める
お客さんから聞かれたことは、その日のうちにメモに残します。
3週間分のメモを並べると、紙のどこが分かりにくいのかが見えてきます。
3週間後に、次に直す場所を1つ決める
3週間後に、メモを読み返して、次に直す場所を1つだけ決めます。
1回で全部を直そうとすると、何が効いたのか分からなくなります。
直した日は、紙、ホームページ、地図サービスの3つを同じ日に揃えます。
よくある質問
Q1 パソコンが苦手でも、メニュー表は作れますか
作れます。手書きでも、印刷会社に頼んでも構いません。
ただし、店の外に載せるために、文字として打ち直したものを1つ持っておいてください。スマホで打ち込んだメモでも十分です。
Q2 値段は、税込と税抜のどちらで書けばよいですか
国税庁の消費税の解説ページには、値段を前もって見せる場合は、税込の価格を表示することが義務付けられている、と書かれています。
税抜の価格を小さく添えるのは構いませんが、お客さんが払う合計は、必ず紙の上で分かるようにします。
Q3 アレルギーの案内は、どこまで書けばよいですか
確かめたことだけを書きます。
消費者庁の文書は、飲食店等でも、アレルゲンを含む原材料の把握に努めること、注文を受けるときにアレルギーの有無を確認することなどが求められる、と書いています。
確かめていない料理には、確認できない旨を書き、店の人に声をかけてもらう案内を添えます。
Q4 ホームページが無い店は、何から始めればよいですか
地図サービスの店のページに、メニューの要点と営業時間を、文字で載せるところから始められます。
ホームページを作る場合も、最初の1枚の案内と、看板の1品、価格の書き方の3つを、先に決めてから作ります。
Q5 メニュー表の写真と、本物が少し違ってもよいですか
実物と大きく違う写真は避けます。
消費者庁の文書は、写真を含めた表示全体から、お客さんが受ける印象を基準に判断すると書いています。
実際に出す形と器で、撮り直すのが安全です。
まとめ
メニュー表の作り方で最も大事なのは、道具の選び方より、初めてのお客さんが迷わず選べる並べ方です。
この記事で書いたことを、順番に整理します。
- 手が止まる場面は、全体が分からない、中身が分からない、総額が分からないの3つ
- 最初の1枚に全体の案内を置き、看板になる1品を先に決める
- 名前の下に1行の説明を添え、横文字には日本語を添える
- 価格は、税込の合計がひと目で分かるように書く
- 書いたことは、紙もインターネットも景品表示法の対象になる
- 紙、ホームページ、地図サービスの内容と順番を、同じ日に揃える
冒頭の質問で、投稿者が知りたかったのは、作り方でした。回答は、テンプレートの紹介と、抽象的すぎるという指摘に分かれていました。
店主が知っておきたいのは、紙を作る手順の手前にある、お客さんの読み方です。
店名の決め方については、店名の決め方の記事で別に書きました。店名と同じく、メニュー表も、画面の上で見つかることが最初の一歩です。
今日できる点検
次の表の上から順に、今日の営業が終わるまでに、できるところまで進めてください。
| 点検すること | やること | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 最初の1枚 | 区切りの名前だけを、5つから7つに絞って書き出す | 10分 |
| 看板の1品 | 初めての人に最初に頼んでほしい物を1つ決める | 5分 |
| 名前の説明 | 横文字や略した名前に、日本語の一言を添える | 15分 |
| 価格の書き方 | 税込の合計がひと目で分かるか、紙を見直す | 10分 |
| 材料の確認 | 仕入れた材料の名前と、メニューの言葉を照らす | 20分 |
| 店の外の確認 | 店名で検索して、ホームページと地図サービスの内容を紙と見比べる | 10分 |
ここまでできれば、メニュー表の半分には答えが出ています。
全部を今日終える必要はありません。看板の1品だけでも決めておくと、紙の並べ方が一気に定まります。
決めた1品が、初めてのお客さんが最初に目にする言葉になります。
出典は、消費者庁「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」(2014年3月28日、2016年4月1日一部改定)、消費者庁のアレルギー表示のページ、国税庁の総額表示に関する消費税の解説ページ、日本政府観光局「年別 訪日外客数、出国日本人数の推移」です。
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