検索結果の上部にAI Overviews(AIによる概要)が出るようになってから、自社サイトへのクリックが減った。そう感じているウェブ担当者は多いはずです。この変化は感覚だけの話ではなく、公開されている調査でも数字として確認できます。
この記事では、クリック率の変化について確認できた数値、Googleが公式に述べている対策の考え方、そして中小企業が限られた時間で取り組める施策を整理します。出典をたどれない数字は載せず、確認できたものだけを扱います。
クリック率はどれだけ落ちているのか
SEOとAI検索の分析ツールを提供する企業が2026年7月に公表した調査では、日本の情報収集型キーワードについて、AIによる概要が表示された場合の検索1位のクリック率が実測9.0%でした。AIによる概要が無かった場合に想定される数値は24.1%で、差は62.7%の減少にあたります。
同じ調査の2025年12月時点の数値は38%の減少でした。半年で24.7ポイント悪化した計算になります。米国では想定14.4%に対して実測4.5%で、68.8%の減少でした。日本は米国よりまだ緩やかですが、差は縮まりつつあります。
| 地域と時点 | 想定されるクリック率 | 実測のクリック率 | 減少幅 |
|---|---|---|---|
| 日本・2025年12月 | 公表なし | 公表なし | 38%減 |
| 日本・2026年6月 | 24.1% | 9.0% | 62.7%減 |
| 米国・2026年6月 | 14.4% | 4.5% | 68.8%減 |
同じ調査元が30万件のキーワードを対象に行った別の集計でも、AIによる概要が表示されるキーワードでは検索1位のクリック率が58%低い水準にとどまっていました。比較に使われたのは2023年12月と2025年12月の検索パフォーマンスデータです。
この数字をどう受け止めるか
ここで読み取るべきは、順位を上げる努力の価値が消えたということではありません。読み取るべきは、順位1位が持つ意味が変わったという点です。以前は1位を取ればクリックが付いてきました。いまは1位を取ったうえで、AIの回答の中で名前が出るかどうかが次の分かれ目になります。
中小企業にとっては、この変化は必ずしも不利に働くとは限りません。広告費で上位を買い続ける体力勝負から、質問に対して具体的に答えているかどうかの勝負へ、比重が移りつつあるからです。自社が実際にやっている仕事の中身を、そのまま言葉にできる会社には出番があります。
Googleが公式に「不要」と述べていること
Googleは検索セントラルの公式ドキュメント「Google 検索のAI機能とウェブサイト」の中で、AI機能に表示されるための追加要件や特別な最適化は存在しないと明記しています。新しい機械可読ファイルやAI向けのテキストファイル、専用のマークアップを作る必要も無いとされています。
| よく聞く施策 | Googleの公式見解 |
|---|---|
| AI専用のファイルを設置する | 新しい機械可読ファイルやAIテキストファイルの作成は必要ない |
| AI向けの専用マークアップを足す | AI機能に出るための特別なマークアップは必要ない |
| 従来のSEOをやめて書き換える | SEOのベストプラクティスはAI機能でも引き続き有効 |
| 表示範囲を自分で制御したい | nosnippet、data-nosnippet、max-snippet、noindexで調整する |
つまり、AI検索への対応として新しく覚えるべき技術要素は、思われているほど多くありません。従来から言われてきた「読む人の疑問に正面から答える」という原則の比重が上がった、と捉えるのが実態に近いといえます。
1つの質問が裏で分解される「クエリファンアウト」
同じ公式ドキュメントで、GoogleはAI OverviewsとAI Modeが「クエリファンアウト」という手法を使う場合があると説明しています。1つの質問を複数の関連する検索に分解し、サブトピックや複数の情報源をまたいで調べたうえで、1つの回答を組み立てる仕組みです。Googleはこれにより、従来より幅広く多様なリンクを提示できるとしています。
この仕組みが意味するのは、1本の記事で1つのキーワードだけを狙う作り方の効きが弱まるということです。たとえば「業務用エアコンの入れ替え費用」という質問の裏側では、工事期間、補助金の有無、既存配管の流用可否、業者の選び方といった小さな問いが同時に走っています。そのどれかに答えているページが、回答の材料として拾われます。
対策は単純です。中心となるテーマについて、読む人が抱く周辺の疑問を洗い出し、それぞれに答えるページを揃えていきます。1本の長大な記事より、関連する問いに個別に答えるページ群のほうが、この仕組みとは相性が良くなります。
見出しの直下に結論を置く
AIが回答を組み立てるとき、参照するのは記事の一部分です。見出しで問いを立て、その直下で問いに直接答える。この順番になっているページは、必要な部分だけを切り出して使いやすい形になります。
やり方を具体的に書くと、見出しを疑問の形にして、次の1文か2文で答えを言い切ります。前置きや背景説明は答えのあとに回します。「〜については以下で解説します」という書き出しは、答えを先送りにする分だけ不利になります。
箇条書きや比較表も同じ理由で有効です。条件によって答えが変わる話は、文章で長々と場合分けするより、表で並べたほうが読む人にもAIにも伝わります。
ブランド名が語られる場所を増やす
AIの回答に社名や商品名が出るには、自社サイト以外の場所でも名前が語られている状態が有利に働きます。自社サイトだけが唯一の情報源という状態は、AIから見ると裏付けが取りにくい状態だからです。
中小企業が現実的にできることとして、業界団体のサイトへの掲載、地域メディアの取材対応、取引先や導入先での紹介記事、動画プラットフォームでの解説投稿などが挙げられます。いずれも数を追う話ではなく、自社の専門領域とセットで名前が語られる機会を作る、という考え方です。
逆に避けたいのは、実体のない言及を人工的に作ることです。Googleは自作自演の投稿や購入した紹介記事について、検索のスパムポリシーの対象になると示しています。効果が不確かなうえに、手間と費用に見合いません。
中小企業が今日から着手できる順番
| いまの状態 | 今日やること | かかる時間の目安 |
|---|---|---|
| 見出しの直下が前置きから始まっている | 直近の記事1本で、見出し直下を結論から書き直す | 30分 |
| 主力サービスの周辺の疑問を書いていない | お客様から実際に受けた質問を10個書き出す | 20分 |
| 自社名がどこで語られているか把握していない | 自社名で検索し、自社サイト以外の掲載先を数える | 15分 |
| ページの表示速度を測ったことがない | 主要な3ページの表示速度を計測ツールで確認する | 15分 |
| AI検索経由の訪問を区別していない | 解析ツールで参照元にAIサービスが含まれるか確認する | 20分 |
5つ全部でも2時間ほどです。順番に意味があり、上から順に手を付けると、次に何を直すべきかが自然に見えてきます。
AI Overviews対策についてよくある質問
クリックが減るなら、記事を書く意味は残っていますか
残っています。AIが回答を組み立てる材料は、ウェブ上に書かれた文章です。書いていない情報は、AIの回答にも出てきません。クリック数という1つの指標が下がっただけで、書く目的そのものが消えたわけではないという整理になります。
AI向けの専用ファイルを置けば対策になりますか
Googleは公式ドキュメントで、AI機能に表示されるために新しい機械可読ファイルやAIテキストファイルを作る必要は無いと明記しています。そこに時間を使うより、記事の中身と書き方を整えるほうが確実です。
検索順位を上げる作業はもう無駄になりますか
無駄になりません。Googleは従来のSEOのベストプラクティスがAI機能でも引き続き有効だとしています。ただし1位のクリック率は以前の水準には戻りにくくなっており、順位に加えて「AIの回答に引用される書き方」を足す必要があります。
効果はどうやって確認すればよいですか
指名検索の推移と、解析ツールでのAIサービス経由の参照元を見ます。どちらもすぐには動かないため、月単位で並べて傾向を見る形になります。週単位の上下で判断すると、誤った結論に飛びつきやすくなります。
まとめ
日本の検索1位のクリック率は、AIによる概要が表示される場面で62.7%低い水準まで下がっています。半年前の38%から急に進んだ数字です。一方でGoogleは、AI機能のために特別な技術対応は不要だとし、従来のSEOの基本が引き続き有効だと述べています。
やることは3つに絞れます。見出しの直下で問いに答える書き方に変えること。周辺の疑問に答えるページを揃えること。自社サイト以外で名前が語られる機会を作ること。どれも新しい技術の習得を必要とせず、今日から手を付けられます。
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