体験レッスンには来てくれる。けれども入会につながるのは一部だけで、入会しても半年ほどで辞めてしまう。
チラシを配り、SNSに投稿し、ポータルサイトの掲載も続けているのに、生徒の数は横ばいのまま。この記事は、そうした悩みを抱える習い事教室の先生と、教室を運営する会社でウェブを担当している方に向けて書いています。
集客の手法を並べるのは後にします。最初に、習い事を探している保護者や大人の生徒さんが、申し込みの直前に何を迷っているのかを整理します。
そのうえで、教室のホームページのどこから直せば、体験に来た人が迷わず入会を決め、入会した人が長く通ってくれるのかを順番に見ていきます。
読み終えたときに、自分の教室のホームページで最初に直す場所が1つ決まっている。そこをこの記事のゴールにしています。
ピアノ、英会話、書道、スイミング、ダンス、そろばん、絵画、料理。ジャンルは違っても、習い事を探す人がつまずく場所はよく似ています。
この記事では特定のジャンルに寄せず、どの教室にも当てはまる部分を中心に書き、ジャンルごとに違いが出るところだけを補足します。
Q&Aサイトに並ぶ、保護者の迷い
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
投稿者は、子どもの習い事を探している保護者の方でした。見学や体験に連れて行くと、子どもはどこでも「絶対やりたい」と言う。
先生との相性は1回の体験では分からない。いくつもの教室を見比べたほうがよいのだろうけれど、家から近いところだと選択肢はほとんどない。
遠くによさそうな教室を見つけても、通うのが負担になって続かないかもしれない。どうやって決めればよいのか、という内容です。
回答には、体験の場で先生が子どもにどう声をかけているかを見る、同じ教室に通っている家庭に話を聞く、送り迎えの負担を先に計算しておく、といった助言が並んでいました。どの回答も、体験レッスンそのものの楽しさより、その後に続けられるかどうかを確かめる方法を勧めています。
同じQ&Aサイトを見ていくと、似た相談がいくつも見つかります。「体験では楽しそうだったのに、入会して3か月で行きたがらなくなった」「月謝のほかに何がかかるのか、入ってから知った」「振替ができると聞いていたのに、実際はほとんど枠が空いていなかった」。
入会の前に知りたかったのに、どこにも書いていなかった、という後悔です。
体験の楽しさでは決められない理由
この保護者の悩みから分かるのは、体験レッスンの時間はそれだけでは判断材料にならないという事実です。子どもは新しい場所と新しい先生に会えば、たいてい楽しかったと言います。
大人の生徒さんでも、初回は先生が丁寧に教えてくれるので、ほとんどの人が満足して帰ります。
保護者が本当に知りたいのは、その楽しさが3か月後、半年後にも続くかどうかです。続くかどうかを左右するのは、毎週の送り迎えができるか、振替が本当に取れるか、発表会や検定のときに何が起きるか、先生が変わることはあるか。
こうした「通い始めてからの毎日」です。
ところが、教室のホームページの大半は、体験レッスンの楽しさを伝えることに力を注いでいます。子どもたちの笑顔の写真、先生の経歴、コースの一覧、そして「無料体験受付中」のボタン。
どれも大切な情報です。ただ、保護者が申し込みの直前に抱えている迷いには、まだ答えていません。
教室が伝えていることと、保護者が知りたいこと
教室のホームページでよく見かける内容と、保護者が申し込みの直前に知りたい内容を並べてみます。
| 教室がよく載せている内容 | 保護者が知りたいこと | ずれが生む結果 |
|---|---|---|
| 子どもたちの笑顔の写真 | うちの子の性格でも通い続けられるか | 雰囲気は伝わるが、自分の子に当てはめられない |
| 先生の経歴と受賞歴 | 先生は子どもにどう接するのか | 実績は分かるが、相性は分からない |
| コースとクラスの一覧 | うちの子はどのクラスから始めればよいか | 選択肢が多くて決められない |
| 無料体験の案内 | 入会後に月謝以外に何がかかるか | 体験には来るが、入会の段階で止まる |
| 年間の行事の写真 | 振替や休会はどこまでできるか | 楽しそうだが、続けられるかは見えない |
左の列を載せるのは正しい判断です。ただ、申し込みボタンを押す直前の迷いには、右の列のほうがずっと近いところにあります。
保護者は右の列の答えを探して、体験の場で先生に質問し、帰り道に口コミを検索し、同じ教室に通う家庭に話を聞いています。その答えが最初からホームページに書いてあれば、保護者は迷う時間を短くできます。
大人向けの教室でも同じずれが起きます。大人の生徒さんが知りたいのは、仕事で休む週があっても置いていかれないか、自分の年齢から始めても恥ずかしくないか、途中でやめたくなったときにどうすればよいか、といった点です。
先生の受賞歴を読んでも、この迷いは消えません。
国の調査で見る「学ぶ人」の数
習い事の需要そのものが減っているわけではありません。総務省統計局が5年ごとに行っている社会生活基本調査の令和3年の結果には、次の一文があります。
「『学習・自己啓発・訓練』の行動者率は39.6%で、5年前より2.7ポイント上昇」
この調査は、10歳以上の人が過去1年間に何らかの学習や自己啓発をしたかどうかを尋ねたものです。2020年10月から2021年10月という、外出を控える動きが強かった期間の結果であるにもかかわらず、学ぶ人の割合は5年前より増えていました。
数にすると、10歳以上の人のおよそ10人に4人が、何かしら学んでいたことになります。
学ぶ人は減っていないのに、自分の教室には生徒が集まらない。この差は、学びたい人が教室を選ぶ段階で、自分の教室が候補から外れていることから生まれています。
学びたい人は、どこで教室を選んでいるか
習い事を探す人の多くは、スマートフォンで「地域名と習い事のジャンル」を検索し、地図に出てきた教室を順番に見ていきます。ポータルサイトで条件を絞り込む人もいれば、SNSで教室の日常を眺めてから決める人もいます。
どの入口から来ても、最後に確かめに来る場所は、たいてい教室のホームページです。
| 入口 | そこで分かること | ホームページで確かめたいこと |
|---|---|---|
| 地図検索 | 場所と口コミの点数 | 口コミに書かれていたことが本当か |
| ポータルサイト | 月謝の目安と体験の有無 | 体験のあとに何が起きるか |
| SNS | 教室の雰囲気と先生の人柄 | 通い始めてからの毎週の流れ |
| 知人の紹介 | 先生の評判 | 自分の家庭の条件で通えるか |
| チラシ | 教室の存在と体験の案内 | どのクラスから始めればよいか |
入口はばらばらでも、最後に確かめたいことは似ています。保護者は、通い始めてからの毎日を具体的に思い浮かべられるかどうかで、申し込むかどうかを決めています。
入口のほうを増やす工夫は、ほとんどの教室がすでに取り組んでいます。一方で、最後に確かめに来る場所であるホームページは、何年も前に作ったままという教室が少なくありません。
入口をいくら広げても、確かめに来た人の迷いに答えられなければ、体験の申し込みは増えず、増えても入会には届きません。
なぜ教室のホームページは、申し込み前の迷いに答えないのか
保護者の迷いに答えていないホームページが多いのは、先生の怠慢から来るものとは限りません。教室のホームページが作られるときの流れそのものに、迷いへの答えが抜け落ちやすい仕組みがあります。
作る人が「教室の中」しか見ていない
教室のホームページを作るとき、制作を担当する人は先生に話を聞きます。先生が話すのは、自分の指導方針、これまでの生徒の成果、コンクールや検定の実績、教室の設備です。
先生にとって、これらは誇りであり、長年積み上げてきたものです。制作する側は、その話をきれいな写真と文章にまとめます。
こうしてできあがったホームページは、教室の中から外を見た内容になります。「私たちはこういう教室です」という説明は丁寧でも、「あなたの家庭の条件で通えますか」という問いには答えていません。
保護者が知りたいのは、自分の子どもを入れたときに何が起きるかです。教室の自己紹介を読み終えても、その問いの答えは見つかりません。
先生の頭の中には、保護者からよく聞かれる質問の答えがすべて入っています。体験の場で何度も同じ質問に答えているはずです。
それなのに、その答えがホームページには書かれていない。聞かれたら答えればよい、と考えているうちに、聞く前に離れていく保護者の存在が見えなくなります。
月謝や規約を「書かないほうがよい」と考えてしまう
もう1つの理由は、月謝や入会金、振替の規約、退会の手続きといった情報を、ホームページに載せないほうがよいと考える教室が多いことです。
料金を先に見せると比べられる、規約を細かく書くと堅い印象になる、体験に来てもらってから説明すればよい。こうした考えから、ホームページには「詳しくはお問い合わせください」とだけ書かれます。
ところが、保護者の側から見ると、書かれていない情報は不安の種になります。聞きにくいことほど、ホームページで先に確かめたいものです。
問い合わせのフォームに「月謝以外に何がかかりますか」と書き込むのは、気が引ける行為です。確かめられないまま、次の教室のホームページへ移っていきます。
| 教室が伏せがちな情報 | 伏せる理由 | 保護者の受け取り方 |
|---|---|---|
| 月謝以外にかかる費用 | 比べられたくない | 入会後に何を請求されるか分からない |
| 振替の条件と枠の数 | 細かく書くと堅くなる | 休んだら損をするかもしれない |
| 休会と退会の手続き | 辞める話を先にしたくない | 一度入ったら抜けにくいのでは |
| 発表会や検定の頻度 | 行事の負担を知られたくない | 親の出番がどれくらいあるのか |
| 先生の交代の有無 | 決まっていないことは書けない | 体験の先生が教えてくれるとは限らない |
右の列を読むと、伏せたことで生まれる不安のほうが、書いたことで生まれる心配より大きいことが分かります。伏せられた情報は、保護者の頭の中で悪いほうへ想像されます。
教室の運営と集客が別の人の仕事になっている
先生が1人で教室を運営している場合、レッスンと準備で毎日が埋まり、ホームページを見直す時間はほとんど残りません。何年か前に知り合いの制作会社に作ってもらったまま、情報が古くなっていることもよくあります。
複数の教室を運営している会社の場合は、また別の問題が起きます。ホームページを管理するのは本部のウェブ担当で、保護者と直接話すのは各教室の先生です。
保護者がどこで迷っているのかという情報は、先生の頭の中にあります。けれども、その情報が本部のウェブ担当まで届く仕組みがありません。
ウェブ担当は、アクセス数や問い合わせの数を見ながら、どこを直せばよいか分からないまま、新しいキャンペーンの告知を追加していきます。
ポータルサイトとSNSが、教室を「比べられる存在」にする
習い事を探す人の入口として、ポータルサイトとSNSの存在は大きくなりました。どちらも教室を知ってもらうきっかけとしては役に立ちます。
ただ、そこだけに頼ると、教室は比べられる側に立たされ続けます。
ポータルサイトの一覧では、違いが消える
習い事のポータルサイトでは、同じ地域の教室が一覧で並びます。保護者は、月謝の目安、体験の有無、曜日と時間、口コミの点数といった条件で絞り込み、上から順に見ていきます。
このとき、教室の違いは、一覧に表示される項目の中でしか比べられません。
先生の人柄や、子どもへの声のかけ方、長く通っている生徒の様子は、一覧には表示されません。表示されるのは、数字で比べられる項目だけです。
そうなると、月謝が少しでも安い教室、体験が無料の教室、口コミの点数が高い教室が選ばれやすくなります。どの教室も体験を無料にし、初月を割り引き、違いが見えなくなっていきます。
ポータルサイトの掲載そのものが悪いわけではありません。問題は、ポータルサイトで知ったあとに確かめに来る自分のホームページが、一覧と同じ情報しか載せていないことです。
一覧で比べたうえで確かめに来た保護者に、一覧では伝わらなかった違いを見せる場所が、どこにもありません。
SNSの投稿は、雰囲気は伝えても条件は伝えない
SNSは、教室の日常や先生の人柄を伝えるのに向いています。レッスン中の様子、発表会の舞台裏、季節の作品。
投稿を見て教室を知り、雰囲気が気に入って体験を申し込む人もいます。
ただし、SNSの投稿は流れていきます。1年前に書いた振替の説明や、半年前に紹介した入会までの流れは、新しく教室を知った人の目にはまず届きません。
保護者が申し込みの直前に確かめたい条件は、SNSの流れの中からは探しにくいのです。雰囲気に惹かれて体験に来たものの、帰り道に条件を調べてみたら家庭の事情に合わず、入会を見送る。
こうしたことが起きるのは、条件を確かめられる場所がSNSの外にないからです。
| 入口 | 得意なこと | 苦手なこと | 補う場所 |
|---|---|---|---|
| ポータルサイト | 条件で絞り込ませる | 教室ごとの違いを見せる | 自分のホームページの教室紹介 |
| SNS | 雰囲気と人柄を伝える | 条件を探しやすく置く | ホームページの「通い方」のページ |
| 地図検索 | 近さと口コミを示す | 口コミの中身を確かめさせる | 保護者の声と先生の返答 |
| チラシ | 地域の人に存在を知らせる | 入会後の毎日を伝える | 体験から入会までの流れのページ |
どの入口にも得意なことと苦手なことがあります。苦手なことを補う場所は、どれも自分のホームページです。
入口を増やすほど、最後に確かめに来る場所の役目は重くなります。
比べられる土俵に上がり続けると、残るのは値下げ
比べられる土俵の上では、違いを見せる手段が値段と特典しか残りません。体験を無料にし、入会金を無料にし、初月の月謝を割り引く。
どれも一時的には申し込みを増やします。ただ、同じ地域のほかの教室も同じことを始めれば、差はまた消えます。
こうして値下げを続けた教室は、生徒の数が増えても、手元に残るものが増えません。しかも、値段で選んだ生徒さんは、もっと条件のよい教室が見つかれば移っていきます。
比べられる土俵に上がり続ける限り、この流れからは抜け出せません。抜け出すには、比べられる前に、自分の教室を選ぶ理由を保護者に渡しておく必要があります。
体験の特典を増やすと、何が起きるか
生徒が集まらないとき、最初に手を付けやすいのが体験レッスンの特典です。体験を無料にする、体験の回数を2回に増やす、体験当日に入会すれば入会金をなしにする。
どれもすぐに始められて、申し込みの数は目に見えて増えます。
体験の数は増えても、入会の数は増えない
特典で増えるのは、主に「とりあえず試してみる」人です。子どもがいくつもの教室の体験を回っている家庭や、近所で無料の体験があれば行ってみようという家庭が、申し込んでくれます。
体験の予約表は埋まり、先生も手応えを感じます。
ところが、入会の数は体験ほどには増えません。特典に惹かれて来た人は、ほかの教室の特典とも比べています。
体験の日には楽しそうにしていても、帰り道には次の教室の体験の予定を立てています。先生は体験のたびに準備をし、同じ説明を繰り返し、終わったあとに入会の返事を待ちます。
体験の数が増えるほど、先生の時間は削られ、入会の数は思ったほど伸びません。
当日入会の特典は、迷っている人を遠ざける
体験当日に入会すれば特典がある、という仕組みもよく見かけます。その場で決めてもらえれば、帰り道に迷われる心配がない、という考えです。
ただ、保護者の多くは、家に帰って家族と相談し、送り迎えの予定を確かめてから決めたいと考えています。当日に決めるよう促されると、慎重な保護者ほど身構えます。
決めきれずに特典を逃した保護者は、改めて申し込むときに損をした気分になり、そのまま別の教室に移っていくこともあります。慎重に選ぶ家庭ほど、長く通ってくれる傾向があります。
その家庭を当日入会の特典で遠ざけてしまうのは、もったいない話です。
| よくある特典 | 集まる人 | 起きやすいこと |
|---|---|---|
| 体験の無料化 | とりあえず試す人 | 体験の数は増え、入会の割合は下がる |
| 体験の回数を増やす | 決めきれない人 | 決める時期が先送りになる |
| 当日入会の特典 | その場で決められる人 | 慎重な家庭が身構えて離れる |
| 入会金の免除 | 条件を比べている人 | 退会のハードルも下がり、早く辞める |
| 紹介者への謝礼 | 謝礼に関心のある人 | 紹介の数は増えるが、合わない家庭も来る |
特典そのものが悪いわけではありません。特典で集まる人と、長く通ってくれる人が、必ずしも同じではないという点を押さえておく必要があります。
SNSの毎日投稿と、広告の上乗せ
特典の次によく選ばれるのが、SNSの投稿を増やすことと、広告を出すことです。どちらも教室を知ってもらう人の数を増やす手段です。
毎日の投稿が、先生の時間を奪う
SNSを毎日更新すれば集客につながる、という話はよく耳にします。先生はレッスンの合間に写真を撮り、夜に文章を考えて投稿します。
最初の数週間は反応があり、フォロワーも少しずつ増えます。
けれども、投稿の反応と体験の申し込みは、同じようには増えません。投稿に「いいね」をくれる人の多くは、すでに教室を知っている生徒さんや保護者、同業の先生たちです。
新しく教室を探している保護者に届く投稿は、そのうちのわずかです。数か月続けたころには、ネタを探すことが負担になり、投稿の間隔が空いていきます。
投稿が止まると、何も起きていない教室に見えてしまうという心配も出てきます。
毎日の投稿を続けられる教室は、それで構いません。ただ、続けられないのに続けようとして、レッスンの準備や生徒さんへの声かけに使う時間が削られるなら、本末転倒です。
生徒さんが辞めない理由をつくるのは、SNSの投稿より、毎週のレッスンの質のほうです。
広告を出すと、受け皿の穴が広がる
地図検索の広告やSNSの広告を出すと、教室のホームページを見に来る人は増えます。ここで起きるのが、受け皿の穴の問題です。
ホームページが保護者の迷いに答えていない状態で広告を出すと、見に来た人は答えを見つけられずに帰っていきます。広告費をかけて連れてきた人が、同じ場所で同じように離れていく。
見に来る人の数が増えたぶん、離れていく人の数も増えます。広告の配信を止めると、見に来る人の数は元に戻り、手元には何も残りません。
| 手段 | 増えるもの | 増えないもの | 先に整えるもの |
|---|---|---|---|
| SNSの毎日投稿 | 既存の生徒さんの反応 | 新しい保護者からの申し込み | 投稿から飛んだ先のページ |
| 地図検索の広告 | ホームページを見る人 | 体験の申し込み | 保護者の迷いへの答え |
| SNSの広告 | 教室を知る人 | 教室を選ぶ理由 | 通い方と費用の説明 |
| ポータルサイトの上位掲載 | 一覧で目に入る回数 | 他の教室との違い | 教室ごとの違いの説明 |
広告も投稿も、人をホームページに連れてくる手段です。連れてきた人が迷わず申し込める状態をつくるのが先で、人を連れてくるのはその後です。
ホームページを作り直すという選択
集客がうまくいかないとき、ホームページを丸ごと作り直そうと考える教室もあります。デザインが古い、スマートフォンで見にくい、写真が昔のまま。
作り直せば生徒が集まるのではないか、という期待です。
見た目を新しくしても、迷いは消えない
作り直しで新しくなるのは、たいてい見た目です。写真は明るくなり、文字は読みやすくなり、スマートフォンでも崩れずに表示されるようになります。
それ自体はよいことです。
ただ、載せている内容が以前と同じなら、保護者の迷いは消えません。先生の経歴、コースの一覧、笑顔の写真、無料体験のボタン。
並べ方が新しくなっただけで、月謝以外の費用も、振替の条件も、入会までの流れも、相変わらず書かれていない。作り直しに時間をかけたのに、申し込みの数が変わらないという結果になりがちです。
作り直しの前に、足りない答えを数える
作り直しを考える前に、まず今のホームページに書かれていない答えを数えてみてください。体験の場で保護者によく聞かれる質問を10個書き出し、そのうちいくつの答えがホームページに載っているかを確かめます。
| よく聞かれる質問 | ホームページに答えがあるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 月謝以外に何がかかるか | ない教室が多い | 費用の内訳を1ページにまとめる |
| 振替はどこまでできるか | 規約の中に埋もれている | 通い方のページで先に説明する |
| どのクラスから始めればよいか | コース一覧だけ | 年齢と経験別の案内を置く |
| 体験のあと何が起きるか | 書いていない | 体験から入会までの流れを図にする |
| 辞めるときはどうするか | 書いていない | 休会と退会の手順を短く書く |
答えのない質問が半分以上あるなら、作り直すより先に、答えを書き足すほうが早く効きます。見た目を整えるのは、答えがそろってからでも遅くありません。
売れるサイトはみな謙虚という考え方
ここまで見てきた問題には、共通する原因があります。教室のホームページが、教室の側から語られていることです。
先生の実績、教室のこだわり、コースの豊富さ。どれも教室が伝えたいことで、保護者が確かめたいこととは順番が違います。
私たちは、この順番を入れ替えることを「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいます。主役の座を、教室から保護者と生徒さんへ譲るということです。
教室は、迷っている家庭の道案内をする立場に回ります。
主役を、通う家庭の側に置く
主役を入れ替えると、ホームページの最初の画面に置くものが変わります。これまでは「実績のある先生が丁寧に指導します」と書いていた場所に、「初めての習い事でも、3か月後に続けられているかを一緒に確かめます」と書く。
先生の実績は消さずに、その下に置き直します。
保護者がホームページを開いて最初に知りたいのは、この教室がうちの子に合うかどうかです。合うかどうかを判断する材料を先に渡し、そのうえで先生の実績を見せれば、実績は「この先生なら任せられる」という安心の裏付けとして読まれます。
同じ情報でも、置く順番で受け取られ方が変わります。
教室は道案内に回る
道案内に回るというのは、保護者が次に何をすればよいかを、教室の側が先回りして示すことです。体験に申し込む前に確かめること、体験の当日に見てほしいところ、体験のあとに家族と相談するときの材料。
こうした道筋を、教室の側から差し出します。
「うちの教室を選んでください」と頼むより、「どの教室を選ぶにしても、ここを確かめてください」と伝えるほうが、保護者は耳を傾けてくれます。
確かめる項目を示した教室が、その項目に一番よく答えているなら、選ばれるのは自然な流れです。売り込まなくても、確かめた結果として選ばれる。
それが謙虚なサイトの考え方です。
体験の前に答えておく5つのこと
では、具体的に何をホームページに書けばよいのか。体験の場で保護者によく聞かれる質問をもとに、体験の前に答えておきたい項目を5つに絞りました。
1. 月謝以外にかかるもの
教材、発表会の参加、検定の受験、季節の行事、年に1度の更新。月謝のほかにかかるものを、項目の名前と発生する時期だけでも一覧にしておきます。
細かな金額まで書けない場合は、「年に何回、どの時期に発生するか」だけでも十分に役立ちます。
保護者が一番おそれているのは、入会してから知らなかった出費が次々に出てくることです。先に一覧を見せておけば、その不安は小さくなります。
一覧を載せた教室は、隠しごとをしない教室として受け取られます。
2. 休んだときの振替
振替ができるかどうか、どの曜日や時間に振り替えられるか、月に何回までか、どれくらい前に連絡すればよいか。規約の中に埋もれがちなこの情報を、通い方のページの最初に置きます。
子どもは急に熱を出しますし、大人は急な残業が入ります。休んだら損をするのか、それとも取り戻せるのか。
ここが分かるだけで、共働きの家庭や仕事を持つ大人の生徒さんは、ぐっと申し込みやすくなります。
3. どのクラスから始めればよいか
コースの一覧を載せるだけでは、初めての人は選べません。年齢、経験の有無、目指したいことの3つから、どのクラスが合うかを案内する表を置きます。
「迷ったら体験のときに先生と決められます」と一言添えておけば、選べないことが申し込みの足止めになりません。
4. 体験から入会までの流れ
体験の申し込みから、体験の当日、入会の手続き、初回のレッスンまで、何が起きるかを順番に示します。とくに大切なのは、体験のあとに返事をする期限と、その場で決めなくてよいことを明記することです。
図のように、体験の申し込みから入会の返事までの各段階で、教室の側が何を約束するかを並べておくと、保護者は安心して次の段階へ進めます。体験のあとに家族で相談する時間を約束する教室は、慎重な家庭から選ばれます。
5. 辞めたくなったときの手順
休会や退会の手順を、入会の前に書いておくことをためらう先生は多いはずです。けれども、辞めるときの手順が見えていると、保護者は安心して入会できます。
いつまでに、どうやって伝えればよいか。数行で済む内容です。
辞めやすい教室ほど、長く通ってもらえます。保護者にとって「いつでも抜けられる」という安心は、「とりあえず始めてみよう」という決断を後押しします。
| 答えておく項目 | 置く場所 | 保護者の変化 |
|---|---|---|
| 月謝以外にかかるもの | 費用のページの冒頭 | 入会後の出費をおそれずに済む |
| 休んだときの振替 | 通い方のページの冒頭 | 共働きでも通えると分かる |
| どのクラスから始めるか | コース一覧の上 | 選べないまま離れることがなくなる |
| 体験から入会までの流れ | 体験申し込みボタンの上 | その場で決めなくてよいと分かる |
| 辞めたくなったときの手順 | よくある質問の中 | 抜けられる安心で入会を決められる |
体験の当日から入会までをつなぐ
ホームページで迷いに答えたら、次は体験の当日から入会までの間をつなぎます。ここが切れていると、せっかく体験に来てくれた家庭が、帰り道のうちに気持ちを変えてしまいます。
体験の当日に渡すもの
体験の最後に、ホームページと同じ内容を1枚の紙にまとめて渡します。費用の一覧、振替の条件、クラスの案内、入会の手順。
家に帰って家族と相談するとき、手元に紙があれば話が早く進みます。相談の場にいなかった家族にも、同じ情報が伝わります。
紙の最後には、ホームページの該当ページへの案内と、返事の期限、質問があったときの連絡先を書いておきます。後から疑問が出てきたときに、どこを見ればよいかが分かります。
返事を待つ間にすること
体験のあと、返事を待つ間に教室から何もしないと、保護者の中で体験の記憶は薄れていきます。反対に、何度も連絡すると、せかされているように感じさせます。
おすすめは、体験の翌日か翌々日に、1度だけ短い連絡をすることです。体験に来てくれたお礼と、当日の子どもの様子で先生が気づいたこと、質問があればいつでも受け付けること。
この3つを伝えるだけで十分です。とくに、先生が気づいた子どもの様子は、保護者にとって何よりうれしい情報です。
「この先生はうちの子をちゃんと見てくれていた」と感じてもらえれば、入会の決め手になります。
| 時期 | 教室がすること | 避けること |
|---|---|---|
| 体験の当日 | 費用と通い方をまとめた紙を渡す | その場での入会を促す |
| 翌日から翌々日 | お礼と子どもの様子を1度だけ伝える | 何度も連絡して返事をせかす |
| 返事の期限まで | 質問に丁寧に答える | 期限を過ぎたら特典がなくなると伝える |
| 入会が決まったら | 初回のレッスンまでの流れを送る | 手続きの書類だけを送る |
| 見送りになったら | お礼を伝え、また来られる道を残す | 理由を問い詰める |
見送りになった家庭にも、丁寧にお礼を伝えます。時期をずらして戻ってくる家庭もありますし、知り合いに「感じのよい教室だった」と話してくれることもあります。
入会した生徒さんが辞めない教室の見せ方
集客の話をしていると、新しい生徒さんを増やすことばかりに目が向きます。けれども、教室の生徒数を決めるのは、入ってくる人の数と辞めていく人の数の差です。
入会した生徒さんが半年で辞めてしまうなら、いくら体験を増やしても生徒数は積み上がりません。
辞める理由は、入会の前に芽を出している
生徒さんが辞めるときの理由として、よく聞くのは「思っていたのと違った」という言葉です。振替がこんなに取りにくいとは思わなかった。
発表会の準備がこんなに大変だとは思わなかった。練習の宿題がこんなに出るとは思わなかった。
どれも、入会の前に知っていれば、覚悟して入れたことです。あるいは、合わないと分かって入会を見送れたことです。
入会の前に答えておくことは、集客のためであると同時に、辞めていく生徒さんを減らすためでもあります。体験の前に答えておく5つのことは、そのまま辞める理由を先回りして消す作業になっています。
通っている家庭の声を、迷っている家庭に届ける
長く通っている家庭が、入会を決めた理由や、続けられている理由を話してくれるなら、それはどんな宣伝文句より説得力があります。ホームページに保護者の声を載せるときは、「楽しく通っています」という感想より、「最初はこういう心配があったけれど、実際にはこうだった」という形の声を選びます。
迷っている保護者は、自分と同じ心配を抱えていた家庭がどうなったかを知りたがっています。心配と、その後の実際が書かれた声は、迷いに直接答えてくれます。
載せるときは、必ずご本人の許可を取り、名前を出すかどうかも確かめてください。
| 保護者の声の書き方 | 読んだ人の受け取り方 | 迷いへの効き目 |
|---|---|---|
| 楽しく通っています | よかったですね、で終わる | 小さい |
| 先生がやさしいです | どの教室も同じことを書いている | 小さい |
| 人見知りで心配だったが、3回目から自分で教室に入れた | うちの子も同じだ | 大きい |
| 共働きで振替が心配だったが、月2回まで取れて続けられている | うちの条件でも通える | 大きい |
| 発表会の準備が不安だったが、家での練習は週2回で足りた | 親の負担が見える | 大きい |
よくある質問
Q. 習い事の集客で、最初に手を付けるべきことは何ですか
体験の場で保護者によく聞かれる質問を書き出し、その答えがホームページにあるかどうかを確かめることです。答えのない質問が見つかったら、その答えを書き足すところから始めます。
チラシや広告、SNSの投稿を増やすのは、その後で構いません。
Q. 月謝をホームページに載せると、比べられて不利になりませんか
比べられることは避けられません。載せていない場合、保護者はほかの教室と比べる前に、問い合わせる手間を嫌って離れていきます。
月謝を載せたうえで、その月謝で何が受けられるのか、ほかに何がかかるのかをはっきり書いておけば、値段だけで比べられることは減ります。
Q. 体験を無料にしないと、申し込みが来ないのではありませんか
無料にするかどうかより、体験のあとに何が起きるかを示すことのほうが、申し込みへの影響は大きいと考えています。体験のあとにその場で入会を迫られないこと、返事の期限があること、家族と相談する時間があること。
これが伝われば、慎重な保護者も申し込みやすくなります。
Q. SNSは続けたほうがよいですか
続けられるなら続けてください。ただし、投稿から飛んだ先のページで、保護者の迷いに答えられるようにしておくことが先です。
投稿の頻度を上げるより、投稿の最後に「通い方のページ」や「体験から入会までの流れ」への案内を添えるほうが、申し込みにつながりやすくなります。
Q. 先生が1人の小さな教室でも、同じやり方で効きますか
小さな教室ほど効きやすいと考えています。先生が1人の教室は、先生の人柄と丁寧さが一番の強みです。
その強みは、保護者の迷いに先回りして答える姿勢として、ホームページの上でも伝わります。大きな教室と同じ量の広告を出す必要はありません。
今日できる点検
自分の教室のホームページを開いて、次の項目を確かめてください。当てはまらない項目が見つかったら、そこが最初に直す場所です。
| 点検する項目 | 確かめ方 | 当てはまらないときに直すこと |
|---|---|---|
| 月謝以外にかかるものが書いてあるか | 費用のページを開く | 項目名と発生する時期を一覧にする |
| 振替の条件がすぐ見つかるか | トップから2回の操作で届くか試す | 通い方のページの冒頭に移す |
| 初めての人がクラスを選べるか | 家族に選んでもらう | 年齢と経験別の案内の表を置く |
| 体験のあとの流れが書いてあるか | 体験申し込みボタンの周りを見る | その場で決めなくてよいと明記する |
| 辞めるときの手順が書いてあるか | よくある質問を読む | 休会と退会の手順を数行で書く |
| 保護者の声に心配とその後が書いてあるか | 声のページを読む | 心配と実際が書かれた声に差し替える |
6つの項目のうち、1つでも直せば、保護者の迷いは1つ減ります。全部を一度に直す必要はありません。
体験の場で一番よく聞かれる質問から、1つずつ書き足していってください。
まとめ
習い事を学ぶ人の割合は、国の調査で見ても増えています。生徒が集まらないのは、学びたい人がいないからとは限りません。
学びたい人が教室を選ぶ段階で、自分の教室のホームページが迷いに答えられていない。つまずきはそこで起きています。
体験の特典を増やす、SNSの投稿を毎日続ける、広告を出す、ホームページを作り直す。どれも、保護者の迷いに答えるという土台がないままでは、効果が長続きしません。
先に、月謝以外の費用、振替の条件、始めるクラス、体験から入会までの流れ、辞めるときの手順を、ホームページに書いてください。
主役を教室の側から、通う家庭の側へ移す。教室は道案内に回り、迷っている家庭が確かめたいことに先に答える。
そうして選ばれた生徒さんは、思っていたのと違ったという理由で辞めることが少なくなります。体験の場で一番よく聞かれる質問を1つ選び、その答えを今日、ホームページに書き足すところから始めてみてください。
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