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ブランド認知度とは 調査会社に頼らず手元の数字で測る指標と上げる手順

2026 11/03
2026年11月3日
中野輝規
ブランド認知度とは 調査会社に頼らず手元の数字で測る指標と上げる手順

ブランド認知度を調べると、意味の解説、測定の方法、有名企業のランキングが出てきます。読み終えて残るのは、「自社も調査をしたほうがいいのだろうか」という不安ではないでしょうか。

この記事は、従業員が数名から数十名の会社の経営者と、ホームページの更新を任されたWeb担当者に向けて書きました。結論を先に書くと、小さな会社の認知度は、大がかりな調査をしなくても、手元にある4つの数字で十分に追えます。

書いてあることは、次の4点です。認知度の意味と段階、ランキングや調査の読み方、手元で測る4つの数字、認知度を上げる手順と自社サイトの受け皿です。

調べた事実は、書いた日に公式の資料を開いて確かめたものだけを使っています。総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査の報道資料と概要資料、消費者庁が2024年9月26日に公表した「No.1表示に関する実態調査報告書」を、2026年11月3日に開いて確認しました。

認知度の定義や用語の使い分けは、マーケティングの解説で共通して使われている用法に合わせた、弊社の整理です。特定の資料の引用ではありません。その場合は、本文でそのように書きます。

目次

先に答え:小さな会社は「全員に知られる」を目指さず、「選ぶ人の中で思い出される」を数える

ブランド認知度とは、ある名前(社名、商品名、サービス名)を、人がどのくらい知っているかを表す度合いです。一般には、知っている人の割合(認知率)で示されます。

ここで大切なのは、割合の「分母」を誰にするかです。日本中の人を分母にすると、小さな会社の数字はほぼゼロになります。

けれども、自社のお客様になりうる人は、日本中にはいません。たとえば、地域の工務店なら、家を建てたり直したりする予定のある、その地域の人たちです。BtoBの会社なら、特定の業種の担当者です。

小さな会社が数えるのは、この「選ぶ人の中」での認知度です。分母を絞ると、数字は一気に実感に近づきます。

次の表は、この記事全体の見取り図です。

知りたいこと 答え 詳しく書いた場所
ブランド認知度とは 名前を知っている度合い。分母は選ぶ人の範囲で考える 「認知度とは何か」の節
助成想起と純粋想起 名前を見て分かるのが助成、手がかりなしに出てくるのが純粋 「想起の段」の節
英語での呼び方 ブランド・アウェアネス。再認と再生の2つに分けて語られる 「英語での呼び方」の節
ランキングの見方 対象者と質問を見る。載っていなくても慌てない 「ランキングの読み方」の節
調査はいるか 手元の4つの数字で足りる場面が大半 「手元で測る4つの数字」の節
上げる手順 誰に、何で思い出されたいかを決めてから出会う場所を絞る 「解決策」の節

1文で言うと

小さな会社の認知度は、「全国での割合」より「選ぶ人の中での思い出されやすさ」を、月に1回、同じ方法で数えるのが現実的です。

この記事で決まるもの

読み終えたときに、次の3つが決まっている状態を目指しています。測る範囲(誰の中での認知度か)、毎月見る数字(4つのうちどれか)、認知度を上げるために最初にやる1つのことです。

先日見かけたQ&Aサイトの悩み:「認知度を上げるには、どんな方法が有効ですか」

先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。2022年に投稿された質問で、会社、ブランド、商品の認知度を上げるには、どのような方法が有効か、というものです。

質問の文は短く、業種も規模も書かれていません。それでも、「知られていないことが売上の壁になっている」という実感は、文面から伝わってきました。

寄せられた答えは、SNSの話に集まった

ある回答は、今は一般の人も企業も注目すべきはSNSだと書いていました。動画が中心のSNSは伸びを期待しやすいが、求める客層と合わない会社もある、という趣旨でした。

あわせて、顧客とのやり取りがしやすいSNSは、ファンになってもらう目的だと、伸びの勢いは期待しにくいかもしれない、とも書かれていました。

回答自体は、現場の感覚としてもっともです。ただ、質問者の会社がどんな客層を求めているのかが分からないまま、手段だけが並んでいます。

別の質問では「認知度はどうやって測っているのか」と聞かれていた

もう一つ、認知度の測り方を尋ねる質問も見つけました。2014年の投稿で、認知度や知名度は、アンケート調査で測っているのか、という内容です。

回答は、おおむねその通りだという趣旨でした。調査会社が統計の手法で割り出すこと、一度で終えずに半年や1年ごとに続けたほうが増減が分かることが書かれていました。

公開されている調査は有名なものが中心で、知りたい会社の項目がないことも多い、という注意書きも添えられていました。

2つの質問に共通する、抜けている一言

2つの質問を並べると、同じ点が抜けていることに気づきます。「誰に知られたいのか」が、どちらにも書かれていません。

手段を探す前にも、測り方を探す前にも、先に決めるべきは範囲です。誰に知られたいのかが決まれば、手段の候補は自然に絞れます。測り方も、その人たちに聞けばよいという形になります。

この記事は、この「範囲を先に決める」という順番を軸に進めます。

上位の解説が大きな会社向けに書かれている

認知度を調べると、上位に並ぶのは、大きな会社や調査会社の側から書かれた解説です。大規模な調査と、広い媒体での広告が前提になっています。

その前提を知らずに読むと、「自社には調査の予算がないから、測れない」と受け取ってしまいます。実際には、手元の数字だけで追える部分が大半です。その部分を、本記事で扱います。

認知度とは何か:名前を知っている度合いと、その分母の決め方

認知度は、名前を知っている度合いです。「知っている」の中身には、段があります。名前を聞いたことがあるだけの人もいれば、何をしている会社か説明できる人もいます。

認知度の話では、この段をひとまとめにして割合だけを見ると、判断を間違えます。段ごとに分けて数えると、次にやることが見えてきます。

認知度と知名度は、ほぼ同じ意味で使われる

認知度と知名度は、実務ではほぼ同じ意味で使われます。厳密に分ける解説もありますが、自社の数字を追うだけなら、区別しなくて構いません。

この記事では、読みやすさのために「認知度」で統一します。商品名の認知に使うときも、社名の認知に使うときも、考え方は同じです。

認知度と好意度は別の数字

名前を知っていることと、好感を持っていることは、別の話です。名前は知っていても、よい印象がなければ、選ばれる理由にはなりません。

認知度を上げる施策は、知ってもらうことだけを担当します。選ばれるかどうかは、知った後に見る情報(実績、お客様の声、料金の考え方、担当者の顔)が決めます。

この記事の後半で、名前を知った人が着く場所を整える手順も書きます。認知を上げて、受け皿が空っぽのままだと、せっかく知ってもらっても選ばれません。

分母を決めると、数字が実感に合う

分母の決め方は、簡単な3つの問いで足ります。誰に選ばれたいのか、どの地域か、どんな悩みの時に思い出されたいのか、です。

問い 答えの例(地域の工務店) 答えの例(BtoBの業務支援)
誰に選ばれたいか 築20年前後の戸建てに住む世帯 従業員50名前後の製造業の総務担当者
どの範囲か 事務所から車で30分圏内 全国。ただし特定の2つの業種
どんな悩みの時か 外壁や水回りを直したくなった時 社内の手続きを減らしたい時

この3行が書けたら、認知度を測る範囲が決まりました。「日本中の人にどれだけ知られているか」を考える必要は、ありません。

範囲を決める前に、お客様の実像を見る

3つの問いに答えられないときは、これまでのお客様を10人思い浮かべてください。どんな人で、どんな悩みで、どこで自社を知ったのかを、紙に書き出します。

書き出すと、実像は思っていたものと違うことがよくあります。想定していた客層と、実際に来ている客層がずれているときは、実際に来ている客層のほうを範囲にしたほうが、数字が現実に近づきます。

客層の捉え方そのものは、ペルソナの作り方の記事に詳しく書きました。実在する一人のお客様から始める方法です。範囲を決める作業が難しいときは、そちらを先に読んでください。

英語での呼び方:ブランド・アウェアネスと、再認、再生

認知度を英語で調べる人も多いようです。英語では、ブランド・アウェアネスと呼ばれることが一般的です。「アウェアネス」は、気づいている状態を指す言葉です。

この記事では、英語の綴りをそのまま書くのを控えて、カタカナで表記します。英語の解説を読むときに、次の対応を知っておくと便利です。

日本語 英語圏でよく使われる言い方(カタカナ) 中身
認知 アウェアネス 名前に気づいている状態の全体
助成想起 リコグニション(再認) 名前や選択肢を見せられて、知っていると分かる
純粋想起 リコール(再生) 手がかりなしに、名前が頭から出てくる

「再認」と「再生」は、記憶の研究でも使われる言葉です。本記事では、マーケティングで使われる用法に合わせて紹介しています。

英語の解説を読むときの注意

英語圏の解説は、大企業向けの広告の効果測定が前提になっていることが多いです。調査会社の大規模なパネルを使う話が中心になるため、そのまま小さな会社に当てはめると、現実とずれます。

読むなら、用語の整理だけを持ち帰ってください。測り方は、この記事の「手元で測る4つの数字」を使うほうが、実行できます。

日本語の資料と英語の資料で、段の呼び名が少しずつ違う

資料によっては、認知を「再認」と「再生」の2段で分けるものもあれば、「純粋想起」「助成想起」「知らない」の3段で分けるものもあります。呼び方が違っても、同じ段のことを指していることが大半です。

この記事では、最も広く使われている「純粋想起」「助成想起」を中心に説明します。資料を読み比べて名前が違っていたら、中身の定義を見て対応づけてください。

認知度が低いと、小さな会社では何が起きるのか

認知度の話は、大企業の広告の文脈で語られることが多いため、小さな会社には遠い話に聞こえます。けれども、現場で起きていることは、規模を問わず同じです。

ここでは、認知度が低いときに小さな会社の現場で起きやすいことを、問い合わせの流れに沿って整理します。自社のどこに当てはまるかを探しながら読んでください。

見積もりの相談に呼ばれない

お客様が比較する会社を3社ほど選ぶとき、頭に浮かんだ会社と、検索の上のほうで見かけた会社が候補に入ります。名前を知られていなければ、候補に入る前の段階で外れます。

この段階で外れても、自社には通知が来ません。「相談が来ない」という形でしか現れないため、原因が認知なのか、価格なのか、内容なのかの切り分けができないまま時間が過ぎます。

問い合わせが来ても、最初に疑われる

名前を知らない会社に問い合わせるとき、人は最初に、会社が本当に存在するかどうかを確かめます。社名で検索して、公式サイトや口コミが見つからなければ、そこで離れます。

認知度が低い会社ほど、この「確かめられる場所」の整備が重要になります。認知を上げる施策と並行して、名前を調べた人が着く場所を用意する理由は、ここにあります。

紹介が増えない

紹介は、紹介する人が自社の名前をすぐに思い出せるかどうかに左右されます。名前を聞いたことはあっても、何を頼める会社かを人に説明できなければ、紹介の場面で名前が出てきません。

認知の段階でいうと、助成想起はあっても純粋想起がない状態です。この違いは、次の章で詳しく説明します。

広告に頼ると、広告をやめた途端に数字が戻る

認知度が低いまま、広告で問い合わせを集めると、広告費を止めた時点で問い合わせも止まります。名前そのものは覚えられていないため、広告が途切れると、再び無名に戻るからです。

広告を否定する話ではありません。広告で出会った人に、名前と得意な悩みを覚えて帰ってもらう工夫がないと、広告費が使い捨てになりやすい、という話です。

症状を表にすると

ここまでの症状を、一枚の表にします。

現場で起きること 認知度との関係 まず見る場所
相談の機会が少ない 候補に入る前に外れている 指名検索の数(表示回数)
問い合わせ後に離れる 会社の実在を確かめる場所が弱い 社名で検索した時の見え方
紹介が増えない 説明できる一言が覚えられていない 既存のお客様への聞き取り
広告を止めると問い合わせが止まる 広告以外で名前に出会う場所がない 問い合わせ時の聞き取り

認知度は、売上の遅れて効く原因になる

認知度は、今月の売上に直接は表れません。名前を覚えてもらってから、実際に問い合わせが来るまでに、数週間から数か月の間が空くことがあるためです。

この時間差があるため、認知を上げる施策は、成果が見えないうちにやめてしまいがちです。測る数字を決めておくと、売上に表れる前の動きを追えます。

数か月続けても、聞き取りも指名検索も動かないなら、その施策は見直す合図です。動き始めているのに、売上だけが遅れているなら、続ける価値があります。

認知度を追わなくてよい会社もある

ここまで読んで、「うちは認知度を気にしなくても回っている」と感じた方もいるでしょう。その感覚が正しい場合もあります。

認知度を追う必要の大きさは、お客様が会社を選ぶ流れで決まります。流れを3つの型で見てみます。

悩んだ時に検索して選ばれる型

水漏れの修理、鍵の紛失、法律の相談のように、困った瞬間に検索して、上に出た会社へ電話する型です。この型では、名前を知られているかどうかより、検索結果での見え方が成約を左右します。

認知度の優先順位は下がり、検索の見え方と電話のつながりやすさが先になります。

比べて、時間をかけて選ばれる型

住宅、結婚式場、システム開発、士業の顧問契約のように、検討期間が長く、複数社を比べる型です。この型では、検討の入口に名前が出るかどうかが大切です。

名前を知らない会社は、比べる土俵に上がれません。認知度が最も効いてくるのは、この型です。

紹介で選ばれる型

取引先や知人の紹介が中心の型です。この型では、紹介してくれる人の頭に、自社の名前と得意なことが入っているかどうかが全てです。

数えるのは、不特定多数の認知度より、紹介元になりうる10人から30人の人の中での思い出されやすさです。分母が小さい分、直接聞いて確かめられます。

自社の型を決めてから、次に進む

選ばれる流れ 認知度の優先度 最初に見る数字
困って検索する 低め 検索結果での見え方、電話のつながりやすさ
比べて時間をかけて選ぶ 高い 指名検索の数、問い合わせ時の聞き取り
紹介で選ばれる 紹介元の中では高い 紹介元への聞き取り(純粋想起)

自社の売上の大半がどの型から来ているかを、直近の10件で数えてください。型が決まると、この記事の後半で選ぶ数字も決まります。

想起の段:助成想起と純粋想起は、何が違うのか

認知度を測る場面で、最もよく出てくる区別が、助成想起と純粋想起です。この2つの違いが分かると、数字の意味が変わります。

ここでの定義は、マーケティングの解説で共通して使われている用法に合わせた、弊社の整理です。

助成想起:名前を見せて、知っているかを聞く

助成想起は、手がかりを出したうえで、知っているかを尋ねる方法で測ります。たとえば、「次のうち、名前を聞いたことがある会社をすべて選んでください」と、社名の一覧を見せる形です。

名前を見れば分かる、という状態を数えるため、数字は高く出ます。社名を見た瞬間に「ああ、聞いたことがある」と感じる程度でも、数に入ります。

純粋想起:手がかりなしに、名前が出てくる

純粋想起は、手がかりなしで、頭の中から名前が出てくるかどうかを数えます。たとえば、「外壁の塗り替えを頼むなら、どの会社が思い浮かびますか」と聞いて、自由に書いてもらう形です。

名前が出るのは、頭の中に、その悩みと会社が結びついている人だけです。数字は低く出ますが、紹介や指名検索につながるのは、こちらの段です。

第一想起:最初に出てくる名前

純粋想起のなかでも、最初に挙がる名前を第一想起と呼ぶことがあります。1番目に出てくる会社は、選ばれる確率が高いと考えられています。

ただし、小さな会社が第一想起を目指す必要はありません。「自社が候補の2つか3つに入る」を、まず目標にします。

3つの段を、表で比べる

段 聞き方 数字の出方 起きていること
助成想起 社名を見せて、知っているかを聞く 高く出る 名前を見れば分かる
純粋想起 悩みだけを示して、思い浮かぶ会社を聞く 低く出る 悩みと会社が頭の中で結びついている
第一想起 純粋想起の中で最初に挙がる名前を見る さらに低い 悩みを聞かれて真っ先に浮かぶ

助成想起だけ高いのは、危ない状態

名前は知られているのに、何をしている会社かは知られていない、という状態があります。助成想起は高く、純粋想起は低い、というパターンです。

この状態では、名前を見かけても、問い合わせにつながりません。何の会社かが伝わっていないため、悩みが起きても思い出されないからです。

この場合に直すべきは、名前を広めることより、「この悩みなら、この会社」という結びつきを作ることです。結びつきを作る手順は、後半で書きます。

純粋想起が高く、助成想起が低いことは、まず起きない

純粋想起で名前が出るなら、名前を見せたときにも当然、知っていると答えるはずです。理屈の上では、純粋想起が助成想起を上回ることは、基本的にありません。

調査の結果で、そうなっていたら、質問の聞き方や対象者の選び方に問題がある可能性が高いです。数字の矛盾を見つけたら、質問文を読み返してください。

自社の段を知るための、質問例

段を知るのに、大がかりな調査は要りません。次の質問を、お客様や取引先に聞くだけで、おおよその位置が分かります。

知りたい段 質問の例 答え方
助成想起 「当社の名前を、以前から聞いたことがありましたか」 はい/いいえ/覚えていない
純粋想起 「〇〇(悩み)で人に聞かれたら、どこを紹介しますか」 自由に書く
説明できるか 「当社が何をしている会社か、一言で言うと」 自由に書く

3つ目の「説明できるか」は、教科書には出てきませんが、小さな会社では最も役に立つ質問です。お客様が自社を一言で説明できるかが、紹介の数を決めるからです。

助成想起の数字は、高く出やすい

名前を見せて聞く形は、「聞いたことがある気がする」という曖昧な記憶まで数えてしまいます。実際には知らない名前でも、社名の響きが一般的だと、知っていると答える人が出ます。

そのため、助成想起の数字は、水準そのものより、前回との差を見ます。同じ聞き方で、同じ範囲の人に聞いた前回と比べて、増えたか減ったかを確かめます。

純粋想起は、聞き方で数字が変わる

手がかりなしに聞く形でも、聞き方で結果は変わります。「外壁の塗り替え」と聞くのと、「外壁の色選びで失敗したくない時」と聞くのとでは、思い浮かぶ会社が違います。

悩みの言葉は、お客様が実際に口にした言葉に合わせます。自社が付けた分類名で聞くと、お客様の頭の中の言葉とずれて、名前が出にくくなります。

認知の階段:知らない人から、選ぶ人までを5段で見る

認知度を段で考えると、次の一手が見えます。ここでは、弊社の整理として、5段の階段を示します。学術的に定まった区分ではありません。

5段の階段

段 状態 自社サイトでの受け皿
1 名前を知らない なし。出会う場所を作る段階
2 名前を見たことがある 検索で出る社名、SNSの投稿
3 何をしている会社か言える トップページの一文、サービスの説明
4 悩みが起きた時に思い出す 悩み別のページ、事例
5 比べた末に選ぶ 実績、お客様の声、料金の考え方、問い合わせ窓口

段1から段2:出会う回数を増やす

名前を知らない人に、まず名前を見てもらう段階です。ここで効くのは、見かける回数と、見かける場所の数です。

1度見ただけで覚える人は少なく、複数の場所で繰り返し見かけて、はじめて「聞いたことがある」になります。

段2から段3:何の会社かを一言で伝える

名前を見たことがある人に、何の会社かを知ってもらう段階です。名前と一緒に、一言の説明を必ず添えます。

「〇〇株式会社」とだけ出ていると、名前は覚えられても、何の会社かは覚えられません。「外壁の塗り替えを、見積書1枚で説明する〇〇株式会社」のように、名前と一言をセットで見せ続けます。

段3から段4:悩みと結びつける

何の会社かを言える人に、悩みが起きた時に思い出してもらう段階です。ここは時間がかかります。悩みが起きるタイミングは、本人にしか分からないからです。

悩みの言葉で書かれた情報(悩み別のページ、事例、質問への答え)を、検索やSNSで出会える場所に置いておきます。その悩みが起きた時に、検索の候補や記憶から、自社が出てきます。

段4から段5:選ばれる理由を見せる

思い出してもらえた人に、選ぶ理由を見せる段階です。ここは、自社サイトの出番です。実績、お客様の声、進め方、料金の考え方を載せて、迷いを減らします。

認知度の話題では、ここまで語られることが少ないです。けれども、小さな会社では、この段の整備が最も早く成果に表れます。

自社がどの段で止まっているかを見つける

自分の会社の問題は、どの段の間にあるでしょうか。次の簡単な診断で、おおよその見当がつきます。

状況 止まっている可能性が高い段
問い合わせが少ない 段1から段2(出会いが少ない)
見積もりまでは来るが、成約が少ない 段4から段5(選ぶ理由が弱い)
紹介が少ない 段3から段4(悩みと結びついていない)
検索すると社名は出るが、問い合わせにつながらない 段2から段3(何の会社かが伝わっていない)

診断は、あくまで目安です。次の「手元で測る4つの数字」で、より確かな見当をつけてください。

調査で測る方法:調査会社が何をしているのか

認知度の測り方の解説では、アンケート調査が最初に出てきます。仕組みを知っておくと、調査の結果を読むときにも、自分で小さな調査をするときにも役立ちます。

ここでは、一般的な認知度調査の仕組みを、特定の会社や商品に触れずに説明します。

調査の基本の形

一般的な認知度調査は、次の流れで進みます。調べたい範囲の人から、無作為に回答者を選び、質問を出して答えてもらい、割合を計算します。

回答者の数、選び方、質問の文面、選択肢の並べ方で、結果は変わります。結果の数字だけでなく、聞き方が公開されているかどうかが、数字を信じてよいかの分かれ目です。

質問の形は、大きく2つ

質問の形 例 測れるもの
自由に書いてもらう 「〇〇の悩みで思い浮かぶ会社を、3つまで書いてください」 純粋想起
一覧から選んでもらう 「次の会社のうち、聞いたことがあるものをすべて選んでください」 助成想起

一覧から選ぶ形は答えやすい分、一覧に載っていない会社の認知度は測れません。自由に書く形は、記入の手間があるため、答えが少なくなりがちです。

選択肢の並べ方が結果を動かす

一覧から選ぶ形では、並べる会社の数や順番で、結果が動くことが知られています。自社の名前が一覧の最初にあるか、最後にあるかで、選ばれる割合が変わることがあります。

実際、消費者庁の報告書は、調査で自社の選択肢を有利になるよう上位に並べることを、不適切な例として扱っています。この点は、「認知度No.1」と書く場面の節で改めて触れます。

回答者の選び方が最も大切

誰に聞くかが、結果を最も大きく左右します。自社のお客様だけに聞けば、認知度は当然高く出ます。社員や取引先に聞けば、さらに高くなります。

広く公開する数字としては使えませんが、自社の中で変化を見る目的なら、問題ありません。この使い分けが、小さな会社が調査をうまく使う鍵です。

調査会社に頼むと何が手に入るのか

調査会社に頼むと、無作為に選んだ多数の回答者から、同じ質問で定期的に集めた数字が手に入ります。競合との比較ができるのは、大きな利点です。

一方で、1回の調査に手間と費用がかかるため、小さな会社が毎月回す性質のものではありません。費用の話はここでは書きません。見積もりの内容は、依頼先ごとに違うためです。

調査をしないほうがいい場面

次の場面では、調査に費用をかけても、結果を使い切れないことが多いです。

場面 理由
認知度が低いことが自明で、手を打つ前の段階 低い数字を確認しても、やることは変わらない
自社のお客様の範囲が決まっていない 分母が決まらず、数字の読み方が定まらない
受け皿のページがまだ整っていない 認知が上がっても、成果につながらない

数字を測る前に、範囲と受け皿を決めたほうが、結果を生かせます。

ランキングの読み方:載っていないことを、慌てる必要はない

「ブランド認知度 ランキング」と検索する人は多いようです。ランキングを見て、自社の位置を知りたい、競合と比べたい、という気持ちはよく分かります。

ここでは、ランキングを見るときの読み方を整理します。特定のランキングや調査会社の名前は、この記事では出しません。

ランキングに載るのは、調査の対象にされた名前だけ

公開されているランキングは、調査する側が選んだ名前の中での順位です。選ばれた名前の一覧に載っていない会社は、順位がつきません。

小さな会社が載っていないのは、認知度が低いとは限りません。そもそも調査の対象に入っていないだけです。順位が無いことに、意味を読み込まないでください。

ランキングを見るときの、5つの確認

ランキングを見るときは、順位より先に、次の5点を確認します。

確認すること 見る理由
誰に聞いた調査か 年代や地域が偏っていると、自社のお客様の感覚と合わない
何人に聞いたか 回答数が少ないと、順位が簡単に入れ替わる
どう聞いたか 助成想起か純粋想起かで、数字の意味が変わる
どの名前が一覧にあったか 載っていない名前の認知度は分からない
いつ調べたか 古い数字では、今の状況とずれる

調査の概要が公開されていないランキングは、数字として使わないほうが安全です。

自分の業界のランキングを探しても見つからない理由

ランキングが公開されるのは、調査費用を回収できる見込みのある分野に偏ります。消費者向けの有名な商品や、広告の出稿が多い業種が中心になりやすいです。

地域の工務店、士業の事務所、BtoBの専門会社のように、お客様の範囲が狭い分野は、公開のランキングがほとんどありません。ランキングが見つからないのは普通のことです。

代わりに見るもの:同じ悩みで比べられる会社の中での位置

小さな会社にとって意味があるのは、全国でのランキングより、自社と同じ悩みで比べられる数社の中での位置です。

比べられる会社を、お客様に聞いて3社ほど挙げます。それぞれの社名を検索して、検索結果の見え方、口コミ、公式サイトの充実度を見比べると、自社の位置が見えてきます。

ランキングを、自社サイトの載せ方に使う場合の注意

ランキングの結果を、自社のホームページに載せたくなることがあります。載せる場合は、調査の主体、時期、対象、質問の内容を、読者が確かめられる形で一緒に書く必要があります。

根拠が示せない順位の掲載は、読者の信頼を下げるだけでなく、景品表示法の面でも問題になることがあります。この点は、後半の節で消費者庁の資料に沿って書きます。

認知度の指標:何を数えればいいのか

認知度の指標は、調べると何十個も出てきます。小さな会社が全部を追う必要はありません。

ここでは、指標を3つのグループに分けて、それぞれの使い所を整理します。

調査で測る指標

調査で測る指標は、質問への答えの割合で表します。

指標 中身 小さな会社での使い方
助成想起率 名前を見せて、知っていると答えた人の割合 既存のお客様の範囲内で、変化を見る
純粋想起率 手がかりなしに、名前が出た人の割合 紹介元になりうる10人から30人に聞く
第一想起率 最初に名前が挙がった人の割合 目標にしない

行動で測る指標

行動で測る指標は、人が実際にとった動きの数です。調査と違い、質問に答えてもらう手間が要りません。

指標 中身 見る場所
指名検索の数 社名や商品名を含む検索の回数 Search Console
直接の訪問 検索を経由せず、アドレスや保存から来た訪問 アクセス解析
問い合わせ時の申告 どこで知ったかの答え 問い合わせフォーム、電話の聞き取り

外から見える指標

外から見える指標は、SNSの言及、口コミの数、取材や掲載の数などです。自社でコントロールしにくいものの、状況の変化を知る手がかりになります。

小さな会社が毎月見るなら、行動で測る指標から1つか2つに絞るのが現実的です。次の章で、具体的に何を、どう数えるかを書きます。

指標の選び方:選ぶ流れの型に合わせる

先ほど書いた、お客様が会社を選ぶ流れの型で、見る指標を決めます。

選ばれる流れ 見る指標の候補
困って検索する 直接の訪問、問い合わせ時の申告
比べて時間をかけて選ぶ 指名検索の数、問い合わせ時の申告
紹介で選ばれる 純粋想起(紹介元への聞き取り)

数字を見るときの約束

どの指標も、同じ方法で、同じ時期に、毎月続けて測って、はじめて意味を持ちます。月によって聞き方や見る画面が変わると、数字の増減が本当の変化なのか、測り方の違いなのかが区別できません。

測り方は、最初に1枚のメモに書いておきます。聞く相手、聞く質問、見る画面、集計の期間を書いておけば、担当者が変わっても同じ測り方を続けられます。

手元で測る4つの数字:調査会社に頼まず、毎月同じ方法で数える

ここからが実践です。小さな会社が、費用をかけずに、毎月同じ方法で追える4つの数字を紹介します。

4つは、段の違う認知を、別々の角度から見ます。全部を同時に始める必要はありません。自社の選ばれる流れに合わせて、1つか2つから始めてください。

4つの数字の全体像

数字 何を見るか 認知の段 手間
1 問い合わせ時の聞き取り 問い合わせの前から社名を知っていたか 段2から段3 小さい
2 指名検索の数 社名や商品名を含む検索の回数 段3から段4 小さい
3 紹介元への一言質問 悩みを聞かれて自社を思い出すか 段4(純粋想起) 中くらい
4 AIへの質問での名前の出方 AIが悩みの質問に自社を挙げるか 段4から段5 中くらい

数字1:問い合わせ時の聞き取り

最も手軽で、最も情報量が多いのが、問い合わせてくれた人への聞き取りです。「どこでお知りになりましたか」という質問は、大半の会社がすでに使っています。

認知度を見るなら、もう一歩踏み込んで、問い合わせの前から社名を知っていたかどうかも聞きます。

聞き方 選択肢の例
問い合わせ前の認知 以前から社名を知っていた/検索して初めて知った/紹介で知った/覚えていない
知った場所 検索/SNS/紹介/広告/展示会や紙の資料/その他(自由記入)
思い出したきっかけ 自由に書いてもらう

選択肢を作るときは、「その他(自由記入)」を必ず残します。自社が想定していなかった出会い方が、そこから見つかります。

問い合わせフォームに質問を足すなら、必須にしないでください。必須にすると、離脱が増える可能性があります。電話や面談なら、会話の最後に自然に聞けば足ります。

数字1の読み方

月ごとに、問い合わせの件数と、「以前から社名を知っていた」の件数を並べます。件数が少ないうちは、割合より件数のまま見ます。

「以前から知っていた」が少しずつ増えているなら、問い合わせの前に名前を覚えてもらえている証拠です。増えていないのに問い合わせが増えているなら、検索や広告で、その場で初めて出会った人が増えています。

良し悪しを決める数字ではありません。自社の成長がどの経路で起きているかを知る数字です。

数字2:指名検索の数

指名検索は、社名や商品名を含む検索です。名前を覚えている人が、あらためて検索したことを示すため、認知度の行動での表れだと考えられます。

数え方の詳細は、既存の記事に詳しく書きました。指名検索でLLMOの効果を測る方法では、Search Consoleでの抜き出し方、正規表現の作り方、数字が小さく出る理由を扱っています。この記事では、重複を避けて、認知度の数字としての使い方だけを書きます。

認知度の数字として使うときの要点は、3つです。社名の表記ゆれ(略称、英字、旧社名)を先に洗い出すこと、既存のお客様の検索を分けて考えること、件数が小さいうちは増減の方向だけを見ることです。

数字2の読み方

指名検索の表示回数が増えていれば、名前が検索の場に出ていることを示します。クリックが増えていれば、実際に探している人が増えています。

表示回数が増えてもクリックが増えないときは、社名を調べても、自社サイトが目立たない可能性があります。検索結果の見え方を確かめてください。

数字3:紹介元への一言質問

紹介が中心の会社では、これが最も大切な数字です。紹介元になりうる人(取引先、既存のお客様、同業の知人)に、一つだけ質問をします。

「〇〇(自社が得意な悩み)で人に相談されたら、どこを勧めますか」と聞きます。ここで、自社の名前が自然に出るかどうかを見ます。

聞く人数は、10人から30人で足ります。小さな会社の紹介元は、顔が見える範囲にいるからです。多くを聞こうとせず、同じ質問を同じ人たちに、半年に1回ほど繰り返します。

数字3の読み方

自社の名前が出た人数を数えます。出なかった人には、「当社が何をしている会社か、一言で言うと」と重ねて聞いてみてください。

ここで返ってくる一言が、自社の伝わり方そのものです。思っていた言葉と違う言葉が返ってきたら、それが、伝えたいことと伝わっていることのずれです。ずれの言葉は、ホームページのトップの一文を直す材料になります。

数字3を使う時の注意

自社のお客様や知人にだけ聞いた結果は、世の中全体の認知度を表しません。自社の中で変化を見る材料にとどめ、外に向けた数字(「認知度〇割」など)として載せてはいけません。

この点は、後半の「認知度No.1」の節で、消費者庁の資料に沿って書きます。

数字4:AIへの質問での名前の出方

もう一つ、最近加わったのが、AIに悩みを質問して、自社の名前が挙がるかを見る方法です。AIの回答は、人が情報を探す入口の一つになりつつあります。

見方は、悩みの質問を3つから5つ用意して、社名を入れずに質問します。回答に自社の名前が出るか、出たときにどう説明されているかを記録します。

AIの回答は、同じ質問でも毎回変わります。1回の結果で判断せず、複数回の傾向で見ます。詳しい手順と、1回の結果を信じてはいけない理由は、AI検索での自社ブランド表示確認にまとめました。

数字4の読み方

自社の名前が出るようになれば、悩みと自社の結びつきが、世の中の情報の中でできてきたことを示す手がかりになります。ただし、出ないからといって、すぐに悪い状態とは言い切れません。

AIがどの情報を基に答えるかは、公式に細かく示されていません。数字4は、補助的な目安として、他の3つと一緒に見てください。

4つの数字の使い分け

自社の流れ 最初に始める数字 次に足す数字
困って検索する 数字1 数字2
比べて時間をかけて選ぶ 数字2 数字1
紹介で選ばれる 数字3 数字1
どれも当てはまる 数字1 数字2、数字3
認知度は、選ぶ人の中で数える名前を見る出会う場所覚える一言を知る名前に添える言える悩みと結ぶ思い出される選ぶ理由を見る実績と声

名前に出会う場所と、名前で調べる場所:総務省の調査で確かめた数字

認知度を上げる手順の前に、人がどこで名前に出会い、どこで名前を調べているのかを、公的な調査で確かめておきます。

総務省は、2026年5月29日に令和7年通信利用動向調査の結果を公表しました。調査時点は令和7年8月末で、個人の調査は、6歳以上の約4万3千人が対象です。

インターネット利用者の利用目的

報道資料によると、インターネットの利用目的・用途では、「SNS(無料通話機能を含む)の利用」の割合が82.3%と最も高くなっています。

概要資料の図表では、そのほかの項目も確認できました。インターネット利用者(回答数34,322)のうち、電子メールの送受信が78.2%、検索サービスの利用が77.5%、動画投稿・共有サイトの利用が63.6%、ホームページやブログの閲覧、書き込み、または開設・更新が56.5%でした。

利用目的(複数回答) 割合(令和7年)
SNSの利用(無料通話機能を含む) 82.3%
電子メールの送受信 78.2%
検索サービスの利用 77.5%
動画投稿・共有サイトの利用 63.6%
ホームページやブログの閲覧、書き込み、または開設・更新 56.5%

出典は、総務省が公表した令和7年通信利用動向調査(インターネット利用者からの回答、複数回答)です。

この数字から言えること、言えないこと

SNSの利用が最も高く、検索サービスの利用がそれに近い水準にあることは、確かめられました。これは、インターネットを使う人の大半が、SNSと検索の両方に日常的に触れている、という事実を示しています。

一方で、この調査は、人が会社の名前をどこで知ったかを聞いたものではありません。「SNSで名前を知る人が多い」と断定することは、この数字からはできません。

そこで、この記事では、次のように整理します。人が日常的に触れている場所には、SNSと検索がある。名前に出会う場所の候補として、その2つを考える。実際に自社のお客様がどこで知ったかは、数字1の問い合わせ時の聞き取りで確かめる。

出会う場所の使い分け

場所 役割 自社でやること
SNS 名前を見かける回数を増やす 悩みに答える投稿を、名前と一言の説明つきで続ける
検索 名前を調べた人を受け止める 社名で検索した時に、公式の情報が最初に出る状態にする
紹介 信頼のある人から名前を伝える 紹介元が説明できる一言を渡す
メールやチラシ すでに知っている人に思い出してもらう 既存のお客様へ、季節ごとに連絡する

場所を増やすより、選んで続ける

出会う場所は多いほど良い、と考えがちです。けれども、小さな会社が全部を同時に運営すると、どれも中途半端になります。

自社のお客様が実際に使っている場所を、数字1で確かめて、2つか3つに絞ります。絞った場所で、名前と一言の説明を、同じ形で見せ続けます。

出会う場所ごとの、名前の見せ方

出会う場所が決まったら、場所ごとに、名前の見せ方を整えます。名前と一言の説明をセットにする点は共通で、置く位置と形が少しずつ変わります。

場所 名前を見せる位置 添える一言の置き方
検索結果 ページの題と、説明文の先頭 題の中に、悩みの言葉と一緒に入れる
SNS プロフィール欄と、投稿の署名 プロフィールの1行目に一言を書く
紹介 名刺、パンフレット、メールの署名 名前の直後に、一言を置く
現場や店舗 看板、車両、制服 名前の近くに、悩みの言葉を小さく添える

見せ方を整える作業は、一度やれば、その後の手間がほとんどかかりません。更新のたびに考え直さなくて済むよう、署名やプロフィールの文面は、1つのファイルにまとめておくと便利です。

月に1回の記録表:同じ項目を、同じ順番で書く

4つの数字は、記録をつけてこそ意味を持ちます。難しい表は要りません。次の表を、表計算ソフトに作ってください。

記録表の項目

月 問い合わせ件数 以前から社名を知っていた件数 指名検索の表示回数 指名検索のクリック数 紹介元の聞き取り(名前が出た人数/聞いた人数) AIの回答で名前が出た回数/質問した回数 気づいたこと
〇月

記録のコツ

  • 毎月の同じ日に、同じ順番で書く
  • 数字の横に、その月にやった施策を一言書く
  • 件数が少なくても、空欄にせず「0」と書く

「気づいたこと」の欄が、最も大切です。数字だけを並べても、次の行動は決まりません。数字の変化と、その月の出来事を結びつけて、仮説を一言書きます。

3か月ごとの見直し

月の数字は上下します。3か月分をまとめて、方向を見るのが現実的です。3か月続けて増えている数字は、効いている施策の手がかりです。

3か月続けて動かない数字は、その施策か、測り方を見直す合図です。見直しの方針は、次の章で書く「認知度を上げる手順」の中で扱います。

記録表の使い方を、架空の工務店で通してみる

数字が揃った後の読み方を、架空の例で示します。実在の会社は使わず、読み方を見せるための想定にしています。数字も、仮の値です。

前提:従業員8名の地域の工務店

築20年前後の戸建ての外壁と水回りの改修を、事務所から車で30分圏内で請け負っている想定です。選ばれる流れは「比べて時間をかけて選ぶ」型です。

最初に始めた数字は、数字2の指名検索と、数字1の問い合わせ時の聞き取りです。

3か月の記録

月 問い合わせ 以前から社名を知っていた 指名検索の表示 その月の施策
1か月目 6件 1件 40回 記録を始めた
2か月目 7件 1件 45回 施工事例のページを2つ公開
3か月目 6件 3件 70回 事例の写真に社名の入った看板を写した

読み取ったこと

問い合わせの件数は、ほぼ横ばいです。けれども、「以前から社名を知っていた」が1件から3件に増え、指名検索の表示も40回から70回に増えました。

件数が少ないため、偶然の可能性も残ります。それでも、3か月目の施策(事例の写真に社名を入れた)が、名前の覚えられ方に効いた可能性を、仮説として置けます。

次の1か月にやること

仮説を確かめるために、次の月も同じ施策を続けます。さらに、施工事例の本文の先頭に、社名と一言の説明を足して、名前と悩みの結びつきを強めます。

1か月で結論を出さず、3か月続けて動きを見ます。これが、小さな会社の数字との付き合い方です。

数字が動かない時の見直し先

動かない数字 疑うこと 見直す先
以前から知っていた件数 名前に出会う場所が少ない 出会う場所の使い分けの表
指名検索の表示 名前と一言の説明が一緒に見られていない 施策に社名と一言を足す
指名検索のクリック 検索結果で自社サイトが目立たない 社名での検索結果の見え方
紹介元の聞き取り 説明できる一言が渡っていない トップページの一文、名刺の一言

見直しは、一度に全部を直さず、1つずつ進めます。どの変更が効いたのかが分からなくなるからです。

数字を取り違えやすい点

4つの数字には、それぞれ取り違えやすいところがあります。記録をつける前に、一度確認してください。

数字 取り違えやすい点 防ぎ方
問い合わせ時の聞き取り 答える人が、聞かれて初めて思い出した言葉を選ぶ 選択肢に「覚えていない」を入れる
指名検索 自社の担当者が自分で検索した分が混ざる 担当者の検索は数に入れない習慣にする
紹介元への質問 親しい人ほど、遠慮して自社の名前を挙げる 自由に書いてもらい、選択肢を見せない
AIへの質問 質問文を変えると、回答が変わる 質問文を固定して、毎回同じものを使う

どの数字も、完全に正確ではありません。完全に正確な数字を目指すより、同じ測り方で、方向を見ることを優先してください。

件数が少なすぎて、動きが読めないとき

従業員が少ない会社は、問い合わせの件数も少なく、月に数件ということもあります。この場合は、月ごとの比較をやめて、半年から1年の合計で比べます。

比べる単位を長くすると、偶然の揺れが小さくなります。短期間の増減に一喜一憂せず、長い目で傾向を見るのが、小さな会社の数字の読み方です。

解決策:「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、認知度を上げる5つの手順

ここからが、この記事の本題です。測る方法が分かったところで、認知度を上げる手順を説明します。

土台に置くのは、「売れるサイトはみな謙虚」という考え方です。ウェブサイトから要素を引き算して、訪れた人が迷わず次の一歩に進める形に組み直す、という考え方を指します。

認知度に当てはめると、「全員に知られたい」という欲を引き算することになります。知られたい人、思い出されたい悩み、見せる場所を、それぞれ絞っていく作業です。引く作業だと考えてください。足す作業とは逆の向きです。

謙虚とは、知られたい範囲を小さく決めること

名前を広く知らせたい、という気持ちは自然です。けれども、小さな会社が全方向に発信すると、どの人にも中途半端にしか届きません。

謙虚に作るとは、自社が選ばれる範囲の、ある悩みを持つ人にだけ、確実に思い出される形を作ることです。範囲が小さいほど、数字も変化も実感できます。

5つの手順の全体像

先に、全体を表で示します。

手順 やること 引き算するもの 所要の目安
1 知られたい範囲を決める 「みんなに」という範囲 1時間
2 思い出されたい悩みを1つに絞る 「何でもできる」という見せ方 半日
3 名前と一言の説明を、セットにする 名前だけの露出 半日
4 出会う場所を2つか3つに絞る 全部の場所への発信 1日
5 名前で調べた人の受け皿を整える 何を見ればいいか分からない画面 数日

手順1:知られたい範囲を決める

最初の手順は、先ほど書いた分母の決め方です。誰に選ばれたいのか、どの範囲か、どんな悩みの時か、の3つの問いに答えます。

答えを1枚のメモにまとめて、社内で共有してください。担当者によって範囲の捉え方が違うと、施策がばらばらになります。

手順1のつまずき:範囲が広すぎる

「うちは誰でもお客様になりうる」と感じる会社は少なくありません。その場合は、これまでの成約の上位10件を並べて、共通点を探してください。

共通点が見つかれば、それが範囲の核です。核の周りに、近い人たちを足していけば、範囲は自然に決まります。範囲の決め方で迷う場合は、誰に売るかを絞る手順の記事が参考になります。

手順2:思い出されたい悩みを1つに絞る

次に、範囲の中の人が、どんな悩みを持った時に、自社を思い出してほしいのかを決めます。1つに絞ります。

何でも相談できる、と見せたくなる気持ちはよく分かります。けれども、悩みを広く言うほど、どの悩みにも思い出されなくなります。「外壁の塗り替えなら当社」のように、1つの悩みと名前が結びつくほうが、思い出されやすくなります。

手順2の進め方:お客様の口から出た言葉で書く

悩みは、お客様が実際に口にした言葉で書きます。自社が付けたサービス名は使いません。問い合わせの記録から、最初の一言を10件拾ってください。

自社の言葉とお客様の言葉がずれていると、検索でも、紹介の場面でも、思い出されにくくなります。強みを言葉にする方法は、強みの言い切り方の記事にまとめました。

手順3:名前と一言の説明を、セットにする

名前だけを見せても、覚えられません。名前に、一言の説明を必ず添えて、見せ続けます。

一言の型は、「誰の、どんな悩みを、どうやって解決する会社か」です。型の例を、表にします。

型 例(地域の工務店) 例(BtoBの業務支援)
〇〇の悩みなら、□□ 外壁の色選びの失敗を防ぐ、〇〇塗装 経費精算の差し戻しを減らす、□□
〇〇を、△△にする □□ 見積もりを1枚で説明する 〇〇工務店 月次の締めを3日短くする □□

一言は、短いほど覚えられます。20字から30字を目安にして、名刺、トップページ、SNSのプロフィール、メールの署名に同じ言葉を載せます。

手順3の落とし穴:場所ごとに言葉を変える

名刺では「住まいの総合サポート」、ホームページでは「外壁塗装の専門店」、SNSでは「地域密着の工務店」と、場所によって違う説明が出ていると、受け取る側は同じ会社だと気づきません。

言葉を揃えるだけで、見かけた回数が積み重なります。揃える作業は、費用がかかりません。

手順4:出会う場所を2つか3つに絞る

名前に出会う場所は、先ほどの表のように、複数あります。全部をやろうとせず、自社のお客様が実際にいる場所を、2つか3つに絞ります。

絞り方は、数字1の聞き取りの結果を見ます。「どこで知りましたか」の答えで上位に来た場所と、まだ使っていないが、お客様が日常的に使っている場所を、候補にします。

手順4で選ぶ場所の基準

基準 確かめること
お客様がいるか 聞き取りの結果、紹介元の話
続けられるか 週にかけられる時間と、担当者の負担
一言の説明を添えられるか 名前と説明をセットで出せる場所か
測れるか 数字1から数字4のどれかで、効果を確かめられるか

続けられない場所は、選ばないでください。更新が止まったアカウントは、名前に出会った人に、よくない印象を与えます。

手順5:名前で調べた人の受け皿を整える

ここが、認知度の話で最も抜けやすく、最も効果が出やすい手順です。名前を知った人は、まず検索して、公式の情報を探します。

その時に着く場所が整っていないと、せっかく知ってもらっても、問い合わせにつながりません。受け皿の整え方は、次の章で詳しく書きます。

自社サイトの受け皿:社名で検索した人が着く場所に、何を置くか

社名を検索した人は、会社の実在、得意なこと、実績、問い合わせの方法の4つを確かめようとしています。この4つに、短い言葉で答えられる場所を用意します。

社名で検索した時の見え方を確かめる

最初にやることは、自社の社名をそのまま検索して、結果の1ページ目を見ることです。何が、どの順番で出てくるでしょうか。

公式サイトが1番目に出ているか、会社名と別の会社の情報が混ざっていないか、古い情報が目立っていないかを見てください。見え方の確認は、検索結果の画面を保存して、毎月比べると変化に気づけます。

受け皿に置く4つの要素

要素 載せる内容 置き場所
会社の実在 所在地、代表者名、設立、連絡先 会社概要のページ
得意なこと 一言の説明と、扱う悩みの一覧 トップページ
実績 施工事例、導入事例、お客様の声 事例のページ
問い合わせの方法 電話、フォーム、受付時間 全ページの同じ位置

トップページの最初の一文

トップページの最初に見える一文は、手順3で決めた一言と同じ言葉にします。名刺やSNSで見た言葉と、サイトの言葉が同じだと、同じ会社だと気づいてもらえます。

画像だけで文字が入っていないトップページは、文字を読む人にも、検索にも伝わりません。最初の一文は、必ず文字で書いてください。

会社概要のページは、読む人が確かめたいことの順に並べる

会社概要は、社名の由来や理念から始める会社が多いようです。けれども、名前を調べた人が最初に確かめたいのは、実在と連絡先です。

所在地、代表者名、連絡先、事業の内容を先に置き、理念や沿革は後に回します。ブランドの物語を載せる場合の考え方は、ブランドストーリーの作り方に書きました。

事例のページは、悩み別に並べる

事例は、悩み別に並べます。年代順には並べません。悩みで調べた人が、自分と同じ悩みの事例を見つけやすくなるからです。

事例には、お客様の悩み、自社が提案したこと、結果、お客様の言葉を載せます。写真に社名や車両名が写っていれば、見かけた回数を増やす材料になります。

社名の検索の数を調べる

言葉ごとの検索の数を道具で調べたいときは、キーワードプランナーが使えます。道具の使い方と数字の読み違えは、キーワードプランナーの使い方で整理しました。

自社の社名の検索は、Search Consoleに、実際の回数が残ります。自社サイトに来た検索の実測は、推定の数字より確かな手がかりです。

受け皿が整ったかを確かめる表

確かめること 合格の目安
社名で検索して、公式サイトが1ページ目に出る 1番目か2番目に出る
トップページの最初の一文が、名刺と同じ言葉 同じ言葉になっている
会社概要に所在地、代表者名、連絡先がある 3つとも載っている
事例が悩み別に並んでいる 悩みの見出しで探せる
問い合わせの窓口が全ページにある 同じ位置に載っている

受け皿を整えた直後に、確かめておくこと

受け皿を整えたら、実際に使う人の目で、一度通して確かめます。社内の人は、自社のサイトの構造を知っているため、迷いに気づけません。

家族や知人に頼んで、「社名で検索して、何をしている会社か、どこへ連絡すればいいかを、1分で説明してください」と試してもらいます。説明に詰まった場所が、直すべき場所です。

試す内容 見るところ 直す先
社名で検索してもらう どのページに着いたか 検索結果の見え方、ページの題
何の会社かを言ってもらう 一言の説明が出てくるか トップページの最初の一文
連絡先を探してもらう 何回の操作で見つけたか 全ページの問い合わせの位置

試すのは3人で足ります。同じところで3人とも詰まったなら、そこは確実に直す必要があります。

最初の3か月の進め方:1か月ごとに1つの手順だけ進める

5つの手順を一度に始めると、手が回りません。3か月に分けて、1か月に1つか2つずつ進めてください。

時期 進める手順 月末に確かめること
1か月目 手順1と手順2 範囲と悩みを1枚のメモにまとめたか
2か月目 手順3と手順4 一言の説明を、名刺とサイトの両方に入れたか
3か月目 手順5 社名で検索した時の見え方を、画面で保存したか

記録表をつけ始めるのは、1か月目からです。手順を進める前の数字が残っていれば、3か月後に比べられます。

避けたい進め方

認知度を上げたい気持ちが強いほど、起きやすい進め方の失敗があります。

避けたい進め方 起きること
一言の説明を決めずに、発信を始める 名前だけが流れて、何の会社か残らない
受け皿を整える前に、広告で人を集める 調べた人が離れて、広告費が使い捨てになる
数字を取らずに、感覚で成果を判断する 効いた施策と効かなかった施策の区別がつかない
1か月で結論を出す 偶然の揺れを、施策の成果と読み違える

「認知度No.1」と書く前に:消費者庁の資料で確かめた考え方

認知度が高まると、ホームページに「認知度No.1」「地域で一番知られている」と書きたくなります。ここは、慎重に扱う必要があります。

消費者庁は、2024年9月26日に「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しました。公表文書には、「顧客満足度 No.1」などの表示が、合理的な根拠に基づかず事実と異なる場合、実際のものよりも著しく優良だと一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となる、と書かれています。

報告書が扱っているのは、主観的評価によるNo.1表示

報告書が中心に扱うのは、「顧客満足度」や「コスパが良いと思う」のような、第三者の主観的評価を指標とするNo.1表示です。認知度そのものを名指しした報告書ではありません。

認知度は、人の主観に基づく調査で測る点で近い性質があります。そのため、同じ4つの観点で点検できる、というのは弊社の整理です。報告書の言葉そのままではありません。

合理的な根拠に必要な4つの観点

報告書は、調査結果が合理的な根拠と認められるために、少なくとも次の4点を満たす必要がある、としています。

観点 報告書の言葉 認知度の調査に当てはめた例(弊社の整理)
1 比較する商品等が適切に選定されていること 同じ分野の主要な会社を含めて比べたか
2 調査対象者が適切に選定されていること 無作為に選んだ人か。自社のお客様だけではないか
3 調査が公平な方法で実施されていること 自社の名前を選択肢の最上位に置いていないか
4 表示内容と調査結果が適切に対応していること 「地域で一番」と書くなら、その地域の人に聞いたか

報告書が、不適切な例として挙げているもの

報告書には、不適切な例がいくつも挙げられています。認知度の調査と近いものを抜き出します。

自社の商品等を継続的に購入している顧客だけを調査対象者にする場合、調査対象者として自社の社員や関係者を選ぶ場合は、合理的な根拠に基づいているとはいえず、景品表示法上問題となるおそれがある、とされています。

回答を自社に有利に誘導する場合も、例が挙げられています。自社の商品等を選択肢の最上位に固定して選ばれやすくする場合や、自社が1位になるまで調査を繰り返す場合です。

手元の4つの数字は、外向きの表示には使わない

ここまでの話から、手元で測る4つの数字の使い道が決まります。自社のお客様、紹介元、問い合わせてくれた人への聞き取りは、自社の中で変化を見るための数字です。

この数字を根拠に、「認知度〇割」「地域No.1」とホームページに載せることは、避けてください。報告書が不適切な例とする調査の形に近いからです。

外向きに数字を載せたい時

外向きに数字を載せる場合は、公平に設計した調査が必要です。比べる会社の選び方、回答者の選び方、質問文を、事前に決めておく必要があります。

その調査は、小さな会社が自力で行うには手間がかかります。載せたい内容が本当に必要か、実績や事例の数字(施工件数、継続率など、数えられる事実)で代えられないかを、先に検討してください。個別の表示が適切かどうかは、消費者庁の窓口や専門家に確かめてください。

認知度の代わりに載せられる、数えられる事実

数えられる事実なら、調査を設計しなくても、自社の記録から示せます。ただし、数字の定義と時期は、読み手が確かめられる形で書いてください。

載せたい印象 代わりに載せる事実の例 書き添えること
地域で信頼されている 施工件数、お取引の年数 数えた期間、数え方
リピートされている 継続して依頼してくださっているお客様の数 対象の期間
名前が知られている 取材や掲載の実績 掲載先と日付

「一番」「No.1」の語を使わなくても、読み手には十分に伝わります。数えられる事実を丁寧に並べるほうが、信頼もされやすくなります。

つまずきやすい点と、業種ごとの見方

手順を進めていくと、進めた会社の大半が、似たところでつまずきます。先にいくつか知っておくと、遠回りが減ります。

よくあるつまずき1:認知度が上がったのに、問い合わせが増えない

名前の露出が増えて、指名検索も増えたのに、問い合わせが増えないことがあります。この場合は、認知の階段の、段4から段5の間で止まっている可能性が高いです。

名前は覚えられていても、選ぶ理由が見えていません。受け皿の4つの要素、特に実績とお客様の声を点検してください。

よくあるつまずき2:指名検索が増えたのに、社名が別の意味で調べられていた

社名が一般的な言葉に近い場合、指名検索の数に、無関係な検索が混ざることがあります。同じ名前の別の会社や、普通の単語としての検索です。

Search Consoleで検索の言葉の一覧を見て、本当に自社を探している検索だけを数えているかを確かめてください。混ざりが大きい場合は、「社名と地域」「社名と事業」のような組み合わせの検索に絞って数えます。

よくあるつまずき3:担当者が変わって、測り方が変わる

担当者が代わると、聞き方や見る画面が変わって、数字がつながらなくなります。測り方のメモを1枚残して、引き継ぎの資料に入れてください。

測り方のメモには、聞く相手、質問文、見る画面、集計の期間の4つを書きます。

よくあるつまずき4:広告で名前を広げようとして、受け皿が追いつかない

広告で名前に出会う人は増えても、受け皿が整っていないと、問い合わせにつながりません。順番としては、受け皿を先に整え、その後で出会う場所を増やしたほうが、成果が出やすいです。

広告を使う場合も、名前と一言の説明をセットで見せる点は変わりません。

よくあるつまずき5:社長の名前ばかりが先に知られる

社長個人の発信が活発な会社では、社長の名前は知られていても、会社の名前や事業が知られていないことがあります。純粋想起の質問をすると、この状態が表れます。

社長の名前に、会社名と一言の説明を必ず添えて見せる習慣をつけると、会社名と事業が一緒に覚えられます。

業種ごとに、最初に見る数字を変える

業種の例 選ばれる流れ 最初に見る数字 受け皿で特に整えるもの
地域の工務店、リフォーム 比べて時間をかけて選ぶ 指名検索の数、問い合わせ時の聞き取り 施工事例、お客様の声
飲食店、美容室 検索や口コミで選ぶ 問い合わせ時の聞き取り(予約の経路) 営業時間、場所、写真
士業、コンサルティング 紹介と検索の両方 紹介元への一言質問、指名検索 得意な悩みの一覧、対応の流れ
BtoBの製造業、専門サービス 比べて時間をかけて選ぶ 指名検索、紹介元への一言質問 事例、導入の流れ、担当者の顔
通信販売 検索で比べて選ぶ 指名検索、問い合わせ時の聞き取り 商品ページ、返品の条件

認知を広げたい時の、広告の置き場所

広告を使うこと自体を、否定する理由はありません。使う場合は、先ほどの手順の中のどこに当たるかを決めてから使います。

広告は、手順4の「出会う場所」の一つとして考えます。出会いの場所を増やす役割で、受け皿は広告とは別に整えます。広告の運用方法は、この記事では扱いません。

半年たったら、数字の見方を一段上げる

3か月ごとの見直しを2回重ねたら、半年分の記録が手元に残ります。この段階で、見る視点を一つ上げます。

見る視点 問い 答えの出し方
経路の変化 名前を知った場所の割合が、変わったか 問い合わせ時の聞き取りを、半年分まとめて集計する
段の変化 助成想起と純粋想起の差が、縮まったか 紹介元への質問で、名前が出た人数を比べる
成約への影響 以前から社名を知っていた人は、成約しやすいか 成約と失注を、聞き取りの答えで分けて数える
受け皿の効き 事例を見た人は、問い合わせに進んだか アクセス解析で、事例のページから問い合わせへの動きを見る

件数が少ない会社でも、半年分を合わせれば、傾向が見えてきます。成約への影響の行は、まず記録をつけるだけで構いません。結論は、1年分がたまってから出します。

社内で共有するときの伝え方

認知度の話は、「もっと知られたい」という漠然とした願いになりやすく、社内で共有しにくいテーマです。共有するときは、数字と、次の行動をセットで伝えます。

たとえば、朝礼や月次の会議で、次のように伝えます。「今月、以前から社名を知っていた問い合わせは3件でした。先月より2件増えました。来月は、施工事例の本文に社名と一言を入れます」。数字、解釈、次の一手の順に並べるだけで、共有が進みます。

取引先や協力会社を巻き込む

紹介で選ばれる会社では、取引先や協力会社が、自社の名前を人に伝える役割を持っています。この人たちに、自社を説明する一言を渡しておくと、紹介の場面で名前が出やすくなります。

渡し方は簡単です。名刺の裏、請求書の端、メールの署名に、手順3で決めた一言を入れます。相手が自社を説明するときに、そのまま使える言葉を用意しておく、という考え方です。

認知が上がった後に起きること

認知が上がると、問い合わせの質が変わることがあります。名前を知っている人からの問い合わせは、比較の段階を進んでいて、話が早く進む傾向があります。

反対に、名前だけを知っていて、何の会社かを誤解している人からの問い合わせも増える可能性があります。誤解が多いと感じたら、一言の説明と、トップページの最初の一文を見直す合図です。

認知度の施策が、かえって逆効果になる場合

名前を広めても、対応の品質が追いつかなければ、悪い評判が先に広まります。受付の返信の遅さ、見積もりの分かりにくさ、納期の連絡漏れなど、日々の対応の穴が残っていると、名前が知られるほど評判が下がります。

認知を広げる施策の前に、問い合わせから納品までの流れに穴がないかを、一度点検してください。対応の質は、認知度の施策のなかで最も効果が大きく、最も地味な部分です。

小さな会社が最初の1か月でやること

ここまでの内容が多く感じられたら、最初の1か月は、次の2つだけに絞ってください。1つ目は、名前に添える一言の説明を決めること。2つ目は、問い合わせの聞き取りを始めることです。

この2つは、費用も特別な道具も要りません。一言の説明が決まれば、名刺、サイト、SNSの文面を揃える作業が自然に始まります。聞き取りが始まれば、翌月には最初の数字が手元に残ります。

残りの手順は、2か月目以降に1つずつ足していけば間に合います。最初から完璧を目指すより、小さく始めて、数字を見ながら足していく進め方のほうが、続きます。続けた会社だけが、半年後に比べられる記録を持てます。

よくある質問

Q1:助成想起と純粋想起は、どちらを測ればいいですか

小さな会社では、純粋想起を優先します。紹介や指名検索につながるのは、悩みを聞かれて名前が出る段だからです。

ただし、名前を知られているかの確認として、助成想起も簡単に聞けます。問い合わせてくれた人に、「以前から社名を知っていましたか」と聞く程度なら、負担になりません。

Q2:認知度と知名度は、何が違いますか

実務では、ほぼ同じ意味で使われます。厳密に分ける解説もありますが、自社の数字を追う目的であれば、区別する必要はありません。

大切なのは、どちらの言葉を使う場合でも、「誰の中での割合か」を決めておくことです。

Q3:認知度は、何%あれば十分ですか

「この数字なら十分」という決まった基準は、確かめられませんでした。認知度は、分母の決め方、質問の聞き方、業種によって変わるからです。

自社の数字を、自社の過去と比べて、増えているかどうかを見ることを勧めます。他社の数字との比較は、聞き方が同じ場合に限ります。

Q4:ランキングに載るには、どうすればいいですか

ランキングは、調査する側が選んだ名前の一覧の中で作られます。載るための方法を、この記事で確かめることはできませんでした。

小さな会社は、ランキングに載ることを目標にせず、手元の4つの数字を追うほうが、実行しやすいです。

Q5:調査会社に頼む価値は、ありますか

自社と同じ悩みで比べられる会社が多く、全国や広い地域で選ばれる商品を扱う会社なら、価値があります。広い範囲の人に、公平な条件で聞けるからです。

選ばれる範囲が狭い会社は、手元の数字で足りる場面が大半です。依頼する場合は、回答者の選び方、質問文、選択肢の並べ方を、事前に確かめてください。費用は依頼先で異なるため、この記事では書きません。

まとめ:小さな会社の認知度は、範囲を決めて、同じ方法で数え続ける

ブランド認知度は、名前を知っている度合いです。小さな会社が追うのは、選ぶ人の中での思い出されやすさです。日本中の割合は追いません。

内容 要点
認知度とは 名前を知っている度合い。分母は選ぶ人の範囲で決める
想起の段 名前を見て分かるのが助成想起、手がかりなしに出るのが純粋想起
英語での呼び方 カタカナでアウェアネス。再認と再生の2つで語られる
ランキング 調査の対象に入った名前だけが載る。載っていなくても慌てない
手元の4つの数字 問い合わせ時の聞き取り、指名検索、紹介元への質問、AIへの質問
上げる手順 範囲、悩み、名前と一言、出会う場所、受け皿の5つ
数字の外向きの使い方 手元の数字を「認知度No.1」の根拠にしない。消費者庁の資料に沿って点検する

認知度は、上げる施策より先に、測り方と受け皿を決めると、成果につながりやすくなります。名前を覚えてもらった後に着く場所が整っていれば、小さな会社でも、出会いが問い合わせに変わります。

「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、知られたい範囲を絞り、思い出されたい悩みを1つに決めて、同じ言葉で見せ続けてください。

今日できる点検

最後に、今日の1時間でできる点検を表にします。上から順に、1行ずつ進めてください。

点検する場所 見ること はい/いいえ
範囲 誰の、どの範囲の、どんな悩みの時に思い出されたいかを、1枚にまとめたか
一言の説明 名前に添える20字から30字の言葉が、1つに決まっているか
名刺とサイト 名刺、トップページ、SNSのプロフィールで、同じ言葉を使っているか
社名の検索 社名で検索して、1ページ目の見え方を画面で保存したか
問い合わせの聞き取り 「以前から社名を知っていたか」を、直近の問い合わせで聞いたか
指名検索 Search Consoleで、社名を含む検索の表示回数を見たか
紹介元 10人に、悩みを聞かれたら勧める会社を尋ねる日を決めたか
受け皿 会社概要に、所在地、代表者名、連絡先が載っているか
外向きの表示 「認知度」「No.1」などの表現を、根拠のないまま載せていないか

「いいえ」が付いた行が、今週の候補です。そのうち、手が動かしやすい行を1つ選び、今週中に済ませます。

点検の結果の読み方

「いいえ」の数によって、次にやることが変わります。

「いいえ」の数 状態 次にやること
0から2 測り方と受け皿が、ほぼ整っている 記録表をつけ始めて、3か月後の見直しの日を決める
3から5 一部の手順が抜けている 範囲と一言の説明から決める
6以上 認知度を測る前の準備が足りない まず範囲を1枚にまとめて、問い合わせの聞き取りを始める

行の数を気にしすぎる必要はありません。1つ直すと、周りの行も進めやすくなります。

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合同会社謙虚 代表社員。20代から、売る言葉だけを仕事にしてきました。電話営業で受話器を握っていた時代から、数千社のWEB集客に関わったいままで。詳しいプロフィールはこちら

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