先日ある質問投稿サイトで見かけた切実な相談
先日、質問投稿サイトでこのような切実な悩みを拝見しました。小さな会社を営む方が、他社のホームページを見比べながら見よう見まねで自社サイトを作り上げたのに、取引先の候補からも採用の応募からも、公開して半年経っても反応が一つも返ってこない、という内容でした。デザインはそれなりに整っていて、事業内容も理念も沿革もきちんと載っている。それでも問い合わせ欄は静まりかえったまま動かない。何が足りないのか自分でも分からず、夜中に他社のサイトを何十枚も開いては、うちと何が違うのかを探し続けている、と書かれていました。
読んでいて胸が痛くなりました。手を抜いた人の悩みではないからです。むしろ、良かれと思って手本を集め、時間をかけて丁寧に作り込んだ人ほど、この壁にぶつかります。会社のホームページを持つこと自体は、いまや当たり前の準備になりました。総務省が公表した通信利用動向調査によると、企業のホームページ開設率は89.6%に達しています。9割の会社がすでに持っている。だからこそ、持っているかどうかで差はつきません。差がつくのは、開いた人がそのまま連絡してくれるか、静かに閉じてしまうかという一点です。
この記事は、その一点だけを扱います。読み終えたときに、御社のサイトのどこを今日直せばいいのかが1か所だけはっきり決まっている。そういう状態を目指して書きます。抽象的な心構えの話はしません。反応が返らないサイトには共通の型があり、その型は先頭の一枚を差し替えるだけで崩せます。まずは、なぜ反応が返ってこないのかという構造から見ていきます。
なぜ会社のホームページから反応が返ってこないのか
反応が無いサイトを何十枚と読んでいくと、書いてある中身の良し悪し以前に、そもそも宛先がずれているという共通点が浮かびます。サイトを作るとき、私たちはつい「自分たちのことをどう説明するか」から考え始めます。何年に創業して、どんな理念を掲げ、どんな事業をやっているか。ところが開いた人が最初に知りたいのは、その会社の物語ではありません。「ここは自分の困りごとを解けるのか」という、たった一つの問いです。
この食い違いが、反応の無さの正体です。訪れた人は、自分の問いへの答えを探して画面をなぞります。3秒ほど見て、自分に関係のある言葉が見つからなければ、失礼でも何でもなく、ただ次の会社のサイトへ移ります。悪気はありません。困っているからこそ急いでいて、待ってくれる余裕が無いだけです。会社の側は丁寧に自己紹介を並べたつもりでも、来た人にとっては、自分の問いが放置されたまま相手の身の上話が続いている画面に見えています。
厄介なのは、この食い違いがアクセス解析の数字には出にくいことです。人は来ている、けれど連絡はしない。作った側は「見られてはいるのに」と首をかしげ、原因を探してデザインや配色に手を入れ始めます。実際にずれているのは見た目そのものより、先頭に置いた言葉の宛先です。反応が無いサイトには、下の表のようないくつかの型があります。自社がどれに当てはまるかを、まず一つ選んでみてください。
| 分類 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 自己紹介先行型 | 先頭が創業年や理念で埋まり、来た人の問いに触れていない | 先頭の一言を、来た人の困りごとを言い当てる文へ差し替える |
| 網羅陳列型 | 事業も強みも全部載っていて、どこを見ればよいか分からない | いちばん来てほしい人向けの入口を1本だけ太くする |
| 手本丸写し型 | 格好いい他社の言い回しを写したが、自社の客に響いていない | 手本の型は借り、中身を自社の客の言葉へ入れ替える |
| 連絡先迷子型 | 問い合わせ口が奥に隠れ、動きたい人が動けない | 各ページの本文終わりに、次の一歩を毎回置く |
見られているのに連絡が来ないという矛盾
アクセスはあるのに問い合わせがゼロ、という状態は、作った人をいちばん混乱させます。人が来ないなら集客の問題だと割り切れますが、来ているのに動かないのは、サイトの中で何かがつまずいている証拠だからです。たいていの場合、つまずきは入口の一言にあります。来た人が「これは自分の話だ」と感じられないまま、説明が進んでいくのです。
3秒で去る人を引き止める言葉の位置
人がサイトに留まるか去るかを決めるのは、最初のひと画面です。スクロールする前に見える範囲に、来た人の問いへの答えの入口があるかどうか。ここに自社の沿革を置くと、答えは画面の下へ押しやられ、たどり着く前に人は去ります。答えを先頭へ、自己紹介を後ろへ。順番を入れ替えるだけで、同じ材料でも反応は変わります。
会社案内で終わるサイトが抱える構造的な欠陥
反応が返らないサイトの多くは、紙の会社案内をそのまま画面に移し替えた作りになっています。表紙に社名とロゴ、めくると代表挨拶、次に沿革、事業内容、会社概要、地図。この流れは、すでに取引が決まった相手に手渡すパンフレットとしては正しい順番です。相手はもう会社を選び終えていて、確認のために読むからです。ところがサイトに来る人は、まだ選んでいる途中です。順番が逆なのに、同じ構成を使い回してしまっている。ここに構造的な欠陥があります。
会社案内型のサイトは、書いてあることの一つ一つは間違っていません。理念も沿革も事実です。問題は、それらが「相手が知りたい順」から外れ「自分が語りたい順」で並んでいることです。来た人からすれば、自分の問いに関係のある情報が、関係のない情報の山の下に埋もれています。掘り出す手間をかけてくれる人は、よほど御社に興味のある一部だけです。残りの人は掘る前に去ります。
下の表は、会社案内型のサイトで先頭近くを占めがちな要素と、来た人にとっての優先度のずれを整理したものです。どれも載せてはいけない情報ではありません。置く場所が先頭では早すぎる、というだけです。
| 分類 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 代表挨拶 | 先頭に長い挨拶があり、来た人の問いが後回しになる | 挨拶は会社紹介ページへ移し、先頭は困りごとの言い当てにする |
| 沿革の年表 | 創業からの歩みが上位にあり、いま頼めるかが読み取れない | 年表は下層へ。先頭では今できることを短く示す |
| 理念の羅列 | 抽象的な言葉が並び、具体的な仕事の中身が見えない | 理念は事例の裏づけとして添え、単独で先頭に置かない |
| 受賞や実績の一覧 | 実績は並ぶが、来た人の悩みとの結びつきが無い | 実績は「あなたと同じ悩みをこう解いた」形に言い換える |
紙の会社案内をそのまま画面に移した弊害
紙の会社案内は、渡す相手と渡す場面が決まっています。すでに会っていて、名刺を交換した後に手渡すものです。だから自己紹介から始めても失礼になりません。サイトはその前提が崩れています。相手はまだ御社を知らず、選ぶかどうかを迷っている段階で開いています。同じ中身でも、置く順番と入口の一言を変えないと、紙の作法はそのまま欠陥になります。
理念や沿革が読み手の問いに答えない理由
理念や沿革が無駄だという話ではありません。それらは、来た人が「この会社は信頼できそうだ」と感じ始めた後で効いてきます。順番が大事です。まだ困りごとが解けるかどうかも分からない段階で理念を読まされても、読み手には受け取る準備ができていません。答えが先、背景は後。この順序を守るだけで、同じ理念が生きてきます。
他社の例を真似た会社サイトが売れない本当の理由
手本を集めて真似ること自体は、悪い手ではありません。むしろ、ゼロから考えるより早く形になります。問題は、真似る対象を「見た目」や「言い回し」に絞ってしまうことです。格好いいトップの一文、洗練された配色、余白の取り方。それらを写しても反応が出ないのは、写した相手と自社とで、来る人の顔が違うからです。同じ言葉でも、宛先が違えば刺さりません。
たとえば、大手ブランドのサイトにある「未来を、共に。」のような一言は、すでにその会社を知っている人に向けて書かれています。名前も実績も知られているから、抽象的な言葉でも成り立ちます。無名の中小企業が同じ一言を先頭に置くと、来た人には何の会社かすら伝わりません。手本の言葉は、手本の会社の文脈の上でだけ機能しています。文脈を持ち帰らずに言葉だけ持ち帰ると、宛先の無い手紙になります。
売れているサイトを真似るなら、写すべきは表面の言葉よりも、その裏にある「誰の何に答えているか」という設計です。下の表は、他社の例を真似たときに起きがちなことと、代わりに持ち帰るべきものを並べたものです。
| 分類 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| キャッチコピーの流用 | 大手風の抽象的な一言を先頭に置き、何屋か伝わらない | 自社の客が使う具体的な言葉で、困りごとを名指しする |
| 構成の丸写し | 手本のページ順をそのまま並べ、自社の来客と合っていない | 順番は借り、各段の中身を自社の客の関心順に入れ替える |
| 装飾の模倣 | 余白や写真の雰囲気は似たが、伝える中身が薄い | 見た目より先に、来た人の問いへの答えを言葉で固める |
| 実績表現の借用 | 他社の実績アピールの形を真似て、自社の文脈が抜けている | 自社の客が抱く不安に、自社の実績を結びつけて語る |
宛先が違えば同じ言葉でも刺さらない
言葉が刺さるかどうかは、言葉そのものより宛先で決まります。同じ「安心の品質」という一言でも、価格で迷っている人と、納期で迷っている人とでは、受け取り方がまるで違います。手本のサイトが誰に向けて書いているかを見ずに言葉だけを写すと、自社の来客の悩みとずれます。真似るなら、まず相手の来客の顔を想像するところから始めます。
手本を借りるなら型より問いを借りる
持ち帰る価値があるのは、手本のサイトが立てている問いです。「この会社は、来た人のどんな不安に、どの順番で答えているか」。この設計だけを借りて、答えの中身は自社の客の言葉で埋め直す。そうすれば、見た目が似ていなくても、反応の出るサイトに近づきます。型は借りても、問いへの答えは自分の現場から取ってくる。ここを取り違えないことです。
よくある間違った解決策と その先で待っている末路
反応が無いと気づいたとき、たいていの会社が最初に手をつけるのは見た目の刷新です。デザイン会社に頼んで配色を変え、写真を差し替え、動きのある演出を足す。作り直した直後は気分が上がります。けれど、しばらくしても問い合わせは増えません。当然です。ずれていたのは見た目よりも、先頭に置いた言葉の宛先だったからです。手をつけた場所が的から外れていると、労力をかけるほど徒労感だけが積もります。
次に多いのが、情報の盛り込みです。反応が無いのは情報が足りないせいだと考えて、事業内容を細かく書き足し、よくある質問を増やし、実績を並べる。ところが情報を足すほど、来た人はどこを見ればよいか分からなくなります。選択肢が増えると人は選べなくなり、選べないと動きを止めます。親切のつもりの盛り込みが、来た人の判断を重くしていきます。
3つ目の袋小路は、広告で人を増やす手です。サイトの中で人が止まっている状態のまま、入口の人数だけ増やしても、止まる人が増えるだけです。費用をかけて集めた人が、先頭の一言で去っていく。これがいちばん静かに効いてくる末路です。下の表に、よくある解決策とその先を整理します。
| 分類 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| デザイン刷新 | 見た目を新しくしたが、先頭の言葉の宛先は元のまま | 配色より先に、先頭の一言が誰の何に答えるかを決める |
| 情報の盛り込み | 要素を足すほど、どこを見ればよいか分かりにくくなる | いちばん来てほしい人の一歩に関係ない要素を下層へ退ける |
| 広告で流入増 | 止まる構造のまま人数だけ増え、去る人が増える | 先に先頭の一言を直し、止まりを解いてから流入を足す |
| 演出の追加 | 動く演出で読み込みが重くなり、答えが遠のく | 演出を減らし、来た人の答えを最短で見える位置に置く |
デザイン刷新に逃げると起きること
見た目の刷新は、成果が出なくても「新しくなった」という達成感が残るため、着手しやすい選択です。だからこそ落とし穴になります。刷新のたびに、原因から遠い場所で時間と労力が消えていきます。配色や写真に不満が無いのに反応が出ないなら、直すべきは見た目の外にあります。まず言葉の宛先を疑う。ここを飛ばして見た目に逃げると、同じ刷新を何度も繰り返すことになります。
情報を足すほど伝わらなくなる仕組み
人は選択肢が多いほど決めにくくなります。サイトも同じで、載っている要素が多いほど、来た人は自分の問いへの答えを見つけにくくなります。良かれと思って足した質問集や実績一覧が、答えへの道をふさぐことがあります。足すより退ける。いちばん来てほしい人の一歩に関係ない要素を下層へ移すだけで、答えが浮き上がってきます。
そもそも会社のホームページに来る人は誰なのか
反応の出るサイトを作る前に、はっきりさせておくべきことがあります。誰が来るのか、です。会社のサイトに来る人は、大きく分けて取引先の候補、発注を判断する担当者、そして採用の応募を考えている人です。この3者は、抱えている不安がまるで違います。取引先の候補は「この会社と組んで大丈夫か」を、発注担当は「頼んで失敗しないか」を、採用候補は「入って後悔しないか」を気にしています。
会社案内型のサイトが反応を取りこぼすのは、この3者の不安に一つも先回りしていないからです。自己紹介はしているのに、来た人がいちばん知りたい「私は大丈夫か」には触れていない。信頼設計とは、この不安に先回りして答えを置いておくことです。誰が来るかを1人に絞り、その人の不安を書き出し、先頭にその答えを置く。順序はこれだけです。
| 分類 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 取引先の候補 | 組んで大丈夫かを測りたいのに、判断材料が見当たらない | 取引の進め方と過去の対応事例を、先頭近くで見せる |
| 発注の担当者 | 頼んで失敗しないか不安なのに、進め方が書かれていない | 依頼から納品までの流れと、想定される不安への答えを置く |
| 採用の応募候補 | 入って後悔しないかを知りたいのに、実際の働き方が見えない | 仕事の中身と一日の流れを、飾らず具体的に書く |
| 既存の取引相手 | 連絡先や更新情報を探しに来たのに、奥に隠れている | 問い合わせ口と最新情報を、迷わず届く位置に固定する |
取引先候補と発注担当と採用候補は不安が違う
同じサイトを開いても、3者が見ている場所は違います。取引先の候補は会社の姿勢を、発注担当は仕事の進め方を、採用候補は働く人の顔を見ています。全員に一度に応えようとすると、どの不安にも中途半端になります。だからこそ、いちばん来てほしい1人を決めることが先決です。1人に深く応えるサイトは、結果としてほかの2者にも信頼を渡します。
いちばん来てほしい一人を決める
3者のうち、いま御社がいちばん増やしたいのは誰でしょうか。取引を増やしたいのか、発注を受けたいのか、人を採りたいのか。ここを決めないまま作り始めると、サイトは全員向けの薄い自己紹介に落ち着きます。1人を決めれば、先頭に置く言葉も、見せる事例も、次の一歩の誘い方も、自然と定まります。迷いが消えるぶん、作る手も速くなります。
売れるサイトはみな謙虚 という考え方
反応の出るサイトには、派手さとは別の共通点があります。自分の話を控えめにして、来た人の不安に先回りしている点です。この姿勢を、私たちは「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいます。謙虚とは、遠慮して自社の強みを隠すことではありません。主役の座を来た人に譲り、その人が迷わず次の一歩へ進めるように、自分の言葉を引き算することです。
会社案内型が「私たちはこういう会社です」と語るのに対し、信頼設計型は「あなたの困りごとに、こう答えます」と始めます。使っている部品はほとんど同じです。事業内容も、会社概要も、問い合わせ口も、どちらのサイトにもあります。違うのは、いちばん上に置く一枚だけです。ここを来た人の不安への答えに差し替えると、下に続く同じ部品が一斉に意味を持ち始めます。
次の図は、会社案内型と信頼設計型を並べたものです。下の3枚はまったく同じで、先頭の1枚だけが入れ替わっています。作り直しは要りません。差し替えるのは、いちばん上の一枚です。
謙虚とは自分の話を引き算すること
引き算は勇気の要る作業です。時間をかけて書いた理念や沿革を先頭から下げるのは惜しく感じます。けれど、全部を見せようとするほど、いちばん伝えたい一言がぼやけます。来た人の不安への答えを一つだけ先頭に残し、あとは下層へ譲る。減らすことで、残した一言が際立ちます。謙虚なサイトが強いのは、この引き算に踏み込めているからです。
主役を来た人に譲るとページはこう変わる
主語を「私たち」から「あなた」へ移すだけで、同じ内容の文章がまるで違う顔になります。「私たちは丁寧な対応を心がけています」を「はじめての依頼でも、進め方を最初にご説明します」へ。前者は自己評価で、後者は来た人の不安への答えです。主役を譲ると、書く言葉が自然と相手の困りごとへ向き、反応の芽が生まれます。
来た人の不安に先回りする信頼設計の作り方
信頼設計は、才能や予算の問題ではありません。手順の問題です。まず、いちばん来てほしい1人を決めます。次に、その人が連絡する前に抱く不安を、思いつく限り書き出します。「本当に対応してもらえるのか」「うちの規模でも頼めるのか」「話が違ったらどうなるのか」。そして、その不安の一つ一つに、サイトの言葉で先に答えを置いていきます。これだけです。
ある発注担当者が、面談でこう漏らしたことがあります。「御社が何をしてくれる会社なのか、3分読んでも分かりませんでした」。厳しい言葉ですが、これは責める材料ではありません。むしろ宝の地図です。来た人がどこでつまずいたかを、正確に教えてくれているからです。信頼設計とは、こうした一言を集めて、つまずきの場所に先回りで答えを置いていく地道な作業です。特別な発想は要りません。
下の表は、来た人がよく抱く不安と、それに先回りする答えの置き方を並べたものです。自社に当てはまる行から、一つずつ手をつけてください。
| 分類 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 対応してもらえるか | 問い合わせて無視されないか不安で、手が止まっている | 返信の目安と、初回の流れを先頭近くに明記する |
| 自分の規模でも頼めるか | 小さい依頼だと断られそうで、連絡をためらっている | 対応できる依頼の幅を具体例で示し、迷いを消す |
| 話が違わないか | 依頼後に条件が変わる不安があり、決めきれない | 進め方と、想定される変更への対応をあらかじめ書く |
| 相談だけでもよいか | まだ決めていないのに問い合わせてよいか迷っている | 相談だけでも歓迎だと、問い合わせ口のそばに添える |
不安を書き出してから答えを置く順番
いきなり文章を書き始めると、また自己紹介に戻ってしまいます。順番を守ってください。先に不安を書き出し、後から答えを置く。この順にすると、書く言葉が最初から来た人の側を向きます。不安のリストは、実際に問い合わせてきた人や、断られた場面の記憶から拾うのが確実です。想像だけで埋めず、現場で聞いた言葉を材料にします。
実際に聞いた言葉を材料にする
いちばん強い材料は、来た人が実際に口にした言葉です。「思っていたより気軽に頼めた」「最初に流れを説明してくれて安心した」。こうした声は、来た人の不安がどこにあったかを裏返しで教えてくれます。声をそのまま拾い、その裏にある不安に先回りする。作り話の美辞麗句より、現場の一言のほうが、次に来る人の心を動かします。
取引先の候補が抱く不安に先回りする
取引先の候補がいちばん気にするのは、組んだ後に困らないかという一点です。品質は保たれるのか、連絡は取りやすいのか、何かあったときに逃げないか。この不安は、実績の数を並べるだけでは消えません。数より、過去にどんな困りごとをどう解いたかという具体的な話のほうが効きます。同じ立場の人が、同じ悩みをこう乗り越えた、という筋道が見えると、候補は自分の未来を重ねられます。
先頭の一言も、取引先候補に向けるなら「実績多数」のような自己評価から離します。「はじめての取引でも、進め方を最初に共有します」のように、相手の不安に直接触れる言葉に変えます。実績は、その言葉の裏づけとして後から差し出せば十分です。順番は、答えが先、証拠は後です。
実績の数より対応の事例を見せる
実績の件数は、来た人にとっては他人事の数字です。心を動かすのは、自分と似た状況の事例です。同じ規模、同じ業種、同じ困りごと。そこにどう向き合い、どんな結果になったかを一つ丁寧に見せるほうが、百件の数字より信頼を運びます。事例は多くを載せず、来てほしい人に近いものを厳選します。
取引の進め方を先に開示する
取引先の候補は、始まった後の見通しが立たないことを恐れています。だから、依頼から取引開始までの流れを先に開示するだけで、不安が大きく減ります。何を用意すればよいか、いつ何が決まるか。手の内を先に見せることは、弱さの露呈には見えず、むしろ誠実さの表れとして受け取られます。
発注を判断する担当者の不安に先回りする
発注担当は、社内で決裁を通す立場にいます。だから彼らの不安は二重です。自分が失敗しないか、そして上司にどう説明するか。この2つに答えるサイトは強い味方になります。進め方が明確で、想定される問題への備えが書かれていれば、担当者はその内容をそのまま社内の説明材料に使えます。サイトが、担当者の代わりに社内を説得してくれる状態を作るのが理想です。
ここでも先回りが効きます。「よくある質問」を、来た人の実際の不安から作るのです。飾りの質問を並べず、決裁の場で必ず聞かれることを先に載せます。納期は守れるか、途中で条件が変わったらどうなるか、対応の窓口は誰か。担当者が知りたいことに先に答えておくと、問い合わせの前に信頼が積み上がります。
| 分類 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 失敗の回避 | 選んで失敗しないかを測る材料が、サイトに見当たらない | 進め方と、問題が起きたときの対応を具体的に書く |
| 社内への説明 | 上司に説明する言葉を、担当者が自分で作る手間がある | そのまま社内資料に使える形で、要点を整理して見せる |
| 比較のしやすさ | 他社との違いが分からず、判断が止まっている | 自社が得意な条件と、向かない条件を正直に示す |
| 窓口の明確さ | 誰に何を聞けばよいか分からず、問い合わせをためらう | 相談窓口と、最初のやり取りの流れを明記する |
決裁を通しやすくする材料を置く
発注担当が動けない理由の多くは、社内の壁です。自分は良いと思っても、上司を説得できる材料が手元に無い。ならば、その材料をサイトが用意します。進め方の図、想定される不安への答え、対応できる条件の範囲。これらを整理して置くだけで、担当者は御社を社内で推しやすくなります。
よくある質問を来た人の言葉で作る
質問集は、埋め草の場所になりがちです。そこを、来た人の実際の不安をぶつける場に変えます。決裁の場で必ず出る問い、断られた理由、迷った点。それらを質問の形にして、正直に答える。飾らない一問一答ほど、読み手は自分の不安と重ねて、安心して次の一歩へ進みます。
採用の応募を考える人の不安に先回りする
採用候補がサイトで探しているのは、待遇の数字よりも、入った後の景色です。どんな人と働くのか、一日はどう流れるのか、失敗したときにどう扱われるのか。会社案内型のサイトは、ここにほとんど答えません。理念と沿革は載っていても、働く人の顔と日々の中身が見えないからです。応募をためらう人の背中を押すのは、飾らない具体です。
ここでも謙虚さが効きます。良いことばかり並べたサイトは、かえって信じてもらえません。大変なところも正直に書き、それでもここで働く理由を添える。等身大の言葉は、来た人に「ここは自分をごまかさない会社だ」という安心を渡します。採用の不安に先回りするとは、都合の悪い部分にも先に触れておくことです。
働く人の顔と一日の流れを見せる
採用候補は、自分がそこにいる姿を想像したがっています。だから、働く人の顔と、一日の流れを具体的に見せます。朝はどう始まり、誰と何を話し、どんな瞬間にやりがいを感じるか。抽象的な「風通しの良い職場」より、具体的な一日の描写のほうが、候補の想像を助けます。
良い面だけを並べない正直さ
採用のサイトで良い面だけを並べると、入社後の落差で人は辞めます。それより、大変な面も正直に書いておくほうが、長く残る人が集まります。忙しい時期があること、覚えることが多いこと。そのうえで、それを支える仕組みや、乗り越えた先の景色を添える。正直さは、遠回りに見えて、いちばん確かな信頼の作り方です。
自社サイトを数字と実測で点検する
信頼設計は感覚だけで進めると迷子になります。だから、数字で確かめる習慣を添えます。とはいえ難しい分析は要りません。来た人がどのページで去っているか、問い合わせ口までたどり着いた人が何割か。この2つを見るだけで、つまずきの場所が浮かびます。GoogleのSearch ConsoleやGA、クラリティといった無料の分析ツールで十分に足ります。
数字を見るときの順番も、答えが先です。まず、いちばん来てほしい人が最初に開くページを決め、そのページで人がどれだけ残っているかを見ます。先頭で去る人が多いなら、直すのは先頭の一言です。奥まで進んで問い合わせ口の手前で去るなら、直すのは次の一歩の誘い方です。数字は、どこを直すかを1か所に絞るための道具です。
| 分類 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 先頭での離脱 | 最初のひと画面で去る人が多く、答えに届いていない | 先頭の一言を、来た人の困りごとの言い当てに変える |
| 途中での離脱 | 読み進めた先で去り、次の一歩が見えていない | 本文の終わりごとに、次の行動への誘いを1つ置く |
| 問い合わせ手前での離脱 | 入力欄の前で止まり、書く負担に手が止まっている | 入力項目を減らし、相談だけでもよいと添える |
| 特定ページへの集中 | 一部のページに人が集まり、答えが置けていない | 集まるページの先頭に、来た人の不安への答えを足す |
離脱の位置から直す場所を1つに絞る
点検の目的は、直す場所を1か所に絞ることです。あちこち同時に手を入れると、何が効いたのか分からなくなります。いちばん人が去っている場所を1つ見つけ、そこだけを直す。変化を見て、また次の1か所へ進む。この一歩ずつの積み重ねが、遠回りに見えていちばん速い道です。
問い合わせ手前で止まる人を見つける
問い合わせ口までたどり着いたのに、送信せずに去る人は、あと一歩の人です。ここを取りこぼすのは惜しい。入力項目が多すぎないか、相談だけでも歓迎だと伝わっているか、送った後にどうなるかが書かれているか。手前で止まる人の負担を一つずつ外すと、あと一歩が一歩になります。
よくある質問
会社のホームページは今の時代でも本当に必要ですか
必要かどうかは、来てほしい人がどこで御社を探すかで決まります。取引先の候補や採用の応募が検索で会社を確かめる以上、そこに答えが無ければ機会を逃します。総務省が公表した通信利用動向調査で企業の開設率が89.6%に達している今、無いこと自体が不安の材料になります。ただし、持つだけでは足りません。開いた人の不安に答えるサイトである必要があります。
他社の例を真似て作るのはやめたほうがよいですか
真似ること自体は有効な近道です。やめるべきは、見た目や言い回しだけを写すことです。手本から借りる価値があるのは、そのサイトが誰のどんな不安に、どの順で答えているかという設計です。設計を借りて、答えの中身は自社の客の言葉で埋め直せば、真似は強い味方になります。宛先を持ち帰らずに言葉だけ持ち帰ると、反応は出ません。
デザインを新しくすれば反応は増えますか
配色や写真に不満が無いのに反応が出ないなら、見た目を変えても増えにくいです。ずれているのは、先頭に置いた言葉の宛先である場合がほとんどだからです。まず、いちばん来てほしい人の不安に先頭の一言が答えているかを確かめます。そこを直してから見た目を整えるほうが、同じ労力でも成果につながります。
小さな会社でも信頼設計はできますか
むしろ小さな会社ほど効きます。信頼設計に必要なのは予算や規模よりも、来た人の不安を書き出して先回りする手間だけだからです。現場で聞いた一言を材料にできる分、小さな会社のほうが素早く動けます。先頭の一枚を差し替えるところから、今日にでも始められます。
何から手をつければ迷わずに済みますか
3つの手順に絞ってください。いちばん来てほしい人を1人だけ決める、その人の不安を3つ書き出す、先頭の一言をその答えに変える。この順で進めれば、迷う場面がほとんど無くなります。全ページを一度に直す必要はありません。先頭の1か所からで十分です。
まとめ 今日直す一箇所を決める
会社のホームページから反応が返ってこないのは、手抜きのせいではありません。丁寧に作った人ほど、自己紹介を先頭に置き、他社の見た目を写し、情報を盛り込んでしまいます。ずれているのは見た目そのものより、先頭に置いた言葉の宛先です。開いた人はまだ御社を選んでいる途中で、自分の困りごとへの答えを探しています。その答えが先頭に無ければ、静かに次のサイトへ移ります。
直し方は単純です。いちばん来てほしい1人を決め、その人の不安を書き出し、先頭の一言をその答えに差し替える。会社案内型と信頼設計型の違いは、いちばん上の一枚だけでした。作り直しは要りません。今日できるのは、その一枚を書き換えることです。下の表を見ながら、御社が今日直す一箇所を一つだけ選んでください。それが決まれば、この記事は役目を果たしたことになります。
| 分類 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 先頭の一言 | 創業年や理念が先頭にあり、来た人の問いに触れていない | いちばん来てほしい人の困りごとを言い当てる一文へ変える |
| 来客の想定 | 全員に向けた薄い自己紹介になっている | 取引先か発注担当か採用候補か、来てほしい1人を決める |
| 不安への答え | 相手の不安に先回りする言葉が置かれていない | その人の不安を3つ書き出し、答えを先頭近くに置く |
| 次の一歩 | 問い合わせ口が奥にあり、動きたい人が動けない | 本文の終わりごとに、相談だけでも歓迎だと添えて誘う |
| 点検の習慣 | 反応が無い理由を感覚で探し、直す場所が定まらない | 離脱の位置を分析ツールで確かめ、直す一箇所に絞る |
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