バナー広告の効果は、出す前に決める条件で変わります。条件が決まっていれば確かめられ、決まっていなければ、数字が動いても何が効いたのか判断できなくなります。
数字の読み方は3つです。表示回数は画面に出た表示で数え、クリックは入口の数字として扱い、広告を見たあとクリックせずに後日サイトで成果に至った回数(ビュースルー コンバージョン)は別枠で見ます。
この記事の事実は、2026年10月28日に筆者が自分で開いて確かめた資料にもとづきます。Google広告ヘルプ、日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の文書、総務省のページ、1998年の論文です。
営業を受けた配信網がGoogleとは限りません。Googleが公開している規則を基準の例にして、他の配信網には同じ項目を質問する形で使ってください。
営業で聞く言葉を先に整理する
営業の説明には、字面が似ていて意味の違う言葉が並びます。数の言葉、お金の言葉、成果の言葉、出し先の言葉に分けて、先に一覧にします。
数を数える言葉
最初に確認したいのは、表示回数の数え方です。
| 言葉 | 意味 | 言い方の例(筆者作成) |
|---|---|---|
| バナー広告 | 画像を使い、ウェブサイトやアプリの広告枠に出す広告。Googleの広告ヘルプでは、視覚に訴える広告をディスプレイ広告として説明している | 「御社の商品を多くの人に見せられます」 |
| インプレッション | 広告が配信されるたびに数える表示回数 | 「月に何回表示されます」 |
| 視認可能なインプレッション | 公式の基準を満たして画面に出たと判定された表示 | 「視認率は〇〇です」 |
| フリークエンシー | 一定の期間に1人のユーザーへ広告を表示する回数 | 「同じ人に何回も接触します」 |
| クリック率 | 表示のうち、クリックされた割合 | 「クリック率は良好です」 |
お金に関わる言葉
料金の単位が違えば、払う対象が変わります。見積書にどの単位が書かれているか、無効な分が請求にどう扱われるかが分かれ目です。
| 言葉 | 意味 | 言い方の例(筆者作成) |
|---|---|---|
| CPM | 表示1,000回あたりの料金の単位 | 「表示課金なのでクリックされなくても認知が取れます」 |
| vCPM(視認範囲のインプレッション単価) | 視認可能と判定された表示1,000回あたりの料金の単位 | 「見られた分だけの課金にできます」 |
| CPC | クリック1回あたりの料金の単位 | 「クリックされた分だけです」 |
| 無効なトラフィック | ユーザーの純粋な興味から生じていない、広告のクリックや表示 | 「不正は排除しています」 |
成果の言葉
成果の言葉は、クリックした人の成果と、クリックしなかった人の成果を分けて読む必要があります。
| 言葉 | 意味 | 言い方の例(筆者作成) |
|---|---|---|
| コンバージョン(略称CV) | 問い合わせや購入など、広告主が成果と決めた行動 | 「CVが取れています」 |
| ビュースルー コンバージョン | 広告を見たもののクリックせず、後からサイトで成果に至った回数 | 「広告を見た人が後日買っています」 |
出し先を決める言葉
すでにサイトへ来た人に見せる配信には、似た言葉が5つ出てきます。Googleの公式ページに沿って整理します。
| 言葉 | 意味 | 言い方の例(筆者作成) |
|---|---|---|
| リターゲティング | 営業でよく使われる言い方。一度サイトに来た人へ、あとから広告を見せる配信(筆者の整理) | 「一度来た人を追いかけます」 |
| リマーケティング | Googleの旧名称。公式ページは、「リマーケティング」が「広告主様のデータ」に変更されたと書いている | 「リマーケティングで出せます」 |
| 広告主様のデータ | リマーケティングの新しい名称。広告アカウントの画面で目にする語 | (画面表示の語) |
| データ セグメント | サイトやアプリを利用したユーザーなど、収集したデータでまとめたユーザーの集まり。広告の出し先に使う | 「サイトに来た人のリストで出します」 |
| オーディエンス セグメント | 広告の出し先にするユーザーのまとまり。旧「オーディエンス タイプ」(カスタム、購買意向、アフィニティなど)の新しい呼び名で、データ セグメントも、オーディエンス セグメントの表に並ぶ | 「興味関心のある層に出します」 |
バナー広告が効きやすい条件と効きにくい条件
開いた範囲の公式資料に、バナー広告が効く会社の割合や、効く業種を示した数字は載っていませんでした。ここから先の「効きやすい」「効きにくい」は、公式の仕組みから筆者が組み立てた見方です。
効きやすい条件(筆者の見方)
Googleの広告ヘルプは、データ セグメントについて「過去にモバイルやパソコンでお客様のブランドやサービスと接点を持ったユーザーに繰り返しアプローチします」と説明しています。すでにサイトへ来た人にもう一度見せる使い方は、公式が用途として書いているものです。
公式ページが書いているのは用途までで、効果の大きさには触れていません。
効きにくい条件(筆者の見方)
ディスプレイ ネットワークに出す再訪向けの配信は、過去30日のアクティブ ユーザー数が100人以上ないと出せません。この人数に届かない会社は、この使い方を選べません。詳しい条件は、再訪向けの配信の節に書きました。
クリック先の着地ページに問い合わせの受け皿がなければ、クリックが増えても成果の数は動きません。着地ページの見直しは、Web広告の効果が出ないとき広告費を足す前に着地ページを疑う理由に手順を書きました。
目的を持って情報を探している人は、バナーの形をした項目を見落としやすいという研究もあります。研究の中身は、バナーブラインドネスの節で確認します。
| 条件 | 見立て(筆者) | 先に確かめること |
|---|---|---|
| すでにサイトへ来た人に再度見せる | 公式が用途として説明している使い方 | データ セグメントのアクティブ ユーザー数が、過去30日で100人以上あるか |
| アクティブ ユーザー数が100人に届かない | ディスプレイ ネットワークで再訪向けの配信を出せない | 広告アカウントでデータ セグメントの人数を確認する |
| 着地ページに受け皿がない | クリックが増えても成果に変わらない | 問い合わせ導線が機能しているか |
| 目的を持って探している最中の人に出す | 見落とされやすい傾向が、1998年の研究にある | 広告が出るのが、探している最中のページか |
画面に出ていない表示にも料金は発生するか
営業が語る「月に〇万回表示」の数字は、そのまま「見られた回数」ではありません。料金が発生するかどうかは、課金の形で決まります。
Googleの広告ヘルプは、視認範囲と判断された広告インプレッションだけを支払いの対象にしたい場合の選択肢として、vCPMを挙げています。標準のインプレッション単価制が視認範囲に限っていないことは、この書き方から読み取れます(筆者の読み取り)。
インプレッションは配信の回数
Googleの広告ヘルプには「インプレッションは、広告が配信されるたびにカウントされます」とあります。配信された回数であり、人が見た回数と一致するとは限らない数字です。
日本インタラクティブ広告協会(JIAA)は2016年6月1日のステートメントで、「少なくとも広告インプレッション数を通貨とする広告取引においては、広告の視認可能性(ビューアビリティ)が重要であるとの認識に立ち」と述べています。この文書に数値の基準は載っていないため、50%・1秒といった具体的な数値は別の資料に頼ることになります。
視認可能の公式基準
Googleの広告ヘルプは、Media Rating Council(MRC)のガイドラインに沿った基準を示しています。ディスプレイ広告は「面積の 50% 以上が画面に 1 秒以上表示された場合に視認可能と見なされます」。
大きな広告には別の基準があり、「242,500 ピクセル以上の大きなサイズのディスプレイ広告の場合は、面積の 30% 以上が画面に 1 秒以上表示されると視認可能とみなされます」と書かれています。
| 広告の種類 | 画面に出る面積 | 表示時間 |
|---|---|---|
| ディスプレイ広告 | 50%以上 | 1秒以上 |
| 242,500ピクセル以上の大きなディスプレイ広告 | 30%以上 | 1秒以上 |
アクティブ ビューが保証しないこと
視認可能かどうかを判定する仕組みを、Googleはアクティブ ビューと呼びます。同じページに「アクティブ ビューは広告が視認可能かどうかを示す技術であり、その時点でユーザーが画面を見ていることを保証するものではありません」とあります。
測れない表示もあります。「すべてのインプレッションがアクティブ ビューで測定可能として見なされるわけではありません」と書かれているため、視認可能率は測定できた分に対する割合です。
営業から視認率を示されたら、測定可能率と合わせて聞くと、その数字がどの範囲の話なのか分かります。
表示から成果までの流れ
ここまでの数字を、広告が配信されてから成果になるまでの流れに並べると、どこの数をどの言葉で呼ぶかが見えます。
営業の数字を受け取ったら、表示、画面に出た表示、クリック、成果のどこで数えた数字かを、先に確かめます。
課金の形で、お金を払う対象が変わる
同じ「月額いくら」でも、表示に払うのか、見られた表示に払うのか、クリックに払うのかで、確かめる数字が変わります。
表示回数に払う課金(CPM)
表示1,000回あたりの料金で払う形です。クリックされたかどうかに関わらず、表示に対して料金が発生します。
画面に出たかどうかが料金の条件に入っているとは、公式ページに書かれていません(筆者の読み取り)。
見られた表示にだけ払う課金(vCPM)
Googleの広告ヘルプは「視認範囲と判断された広告インプレッションだけをお支払いの対象としたい場合は、視認範囲のインプレッション単価をご利用いただけます」と説明しています。
選べる条件も書かれています。入札戦略として選択できるのは、「ディスプレイ ネットワークのみ」のキャンペーンでインプレッション単価制を選んでいる場合です。
同じページには、視認される価値の高い表示は、従来のインプレッション単価より高い入札のほうが獲得しやすいとも書かれています。見られた分だけの課金にすると、単価の水準が変わる可能性があります。
クリックやコンバージョンに払う課金
ディスプレイ広告の説明ページには、「目標アクション単価に基づく入札を使用するディスプレイ キャンペーンでは、クリック数の代わりにコンバージョン数に対してお支払いすることもできます」とあります。
成果に近い単位で払う形も用意されています。営業に「表示課金しかできないのか」を聞く根拠になります。
| 課金の形 | 払う対象 | 確かめる数字 | 契約前に聞くこと |
|---|---|---|---|
| CPM | 表示(インプレッション)。視認範囲に限るとは書かれていない | 視認可能率、測定可能率 | 視認率のレポートが出るか |
| vCPM | 視認可能と判定された表示 | 視認範囲のインプレッション数 | どの配信面で選べるか |
| CPC | クリック | クリックの質、無効なクリックの除外 | 無効なクリックの扱い |
| コンバージョン課金 | 成果 | 成果の定義と計測の正しさ | 成果の定義を誰が決めるか |
クリックの数字は入口として読む
クリックは、広告と自社サイトの接点を数える数字です。成果の手前にある数字として扱います。
クリックから成果までの途中を見る
クリックが増えても、問い合わせフォームにたどり着く人が少なければ、成果の数は動きません。クリックの先でどこまで進んだかを、計測で確かめます。
問い合わせ完了を数える設定は、GA4で問い合わせ完了を計測する設定手順に書きました。広告を出す前に、ここを整えておくと、クリックの先が見えます。
無効なクリックの扱い
Googleは無効なクリックを、意図的な不正トラフィックや誤クリック、重複クリックなど、ユーザーの純粋な興味によるものではないクリックと定義しています。「Google で無効と判断されたクリックは、レポートと請求の対象から自動的に排除されるため、これらのクリックに対する請求は発生しません」とも書かれています。
後から見つかった分については、別のページに「無効なトラフィックに対する払い戻しは行われません」とあります。請求書の作成後に検出された分は、「妥当かつ可能な場合にクレジットが発行されます」という扱いです。
誤クリックと自動審査の範囲
無効なクリックの定義には、ダブルクリック時の2回目のクリックなど、広告主様にとって価値のない偶発的なクリックも含まれます。
自動システムによる審査は、「過去 60 日間に発生したトラフィックを対象としています」。自動で除外されず、影響が出ていると思われる場合は、手動調査をリクエストできます。調査の対象も過去60日間に限られるため、不審な動きに気づいたら、その期間内に申し出るのが安全です(筆者の提案)。
| 場面 | 公式の扱い |
|---|---|
| 請求書の作成前に無効と判断 | 請求の対象から自動的に排除される |
| 請求書の作成後に無効と判断 | 妥当かつ可能な場合にクレジットが発行される。払い戻しは行われない |
| 自動システムで検出されなかった疑い | 手動調査をリクエストできる。調査の対象は過去60日間 |
ビュースルー コンバージョンをどう扱うか
クリックしなかった人の後日の成果を数えるのが、ビュースルー コンバージョンです。計測期間が長いほど回数が多くなるため、読み方を間違えると、効果を実際より大きく見積もります。
公式の定義
Googleの広告ヘルプによると、ディスプレイ キャンペーンでは「広告が表示されてもクリックしなかったユーザーが後からコンバージョンに至った回数を測定できます」。
ディスプレイ ネットワーク広告と動画広告では、コンバージョンにつながった最後のインプレッションが関連付けられると書かれています。
数字に入る条件と入らない条件
広告主の他の広告を操作したユーザーの成果は、自動的に除外されます。「サイト間の Cookie を許可しないブラウザからのビュースルー コンバージョンはレポートできません」という記述もあり、計測できないブラウザの分は数字から抜け落ちます。
| 項目 | 公式ページの記述 | 読み方 |
|---|---|---|
| 列の扱い | 一部のキャンペーンを除き「レポート専用」。[コンバージョン] 列には含まれない | クリック経由の成果と分けて見る |
| 他の広告との関係 | 他の広告を操作したユーザーの成果は自動的に除外 | クリックなどの操作をした人の成果は、ビュースルーに含まれない |
| ブラウザ | サイト間のCookieを許可しないブラウザの分はレポートできない | 実際の成果より少なく出る場合がある |
| 計測期間 | コンバージョン アクションの作成・変更時に設定。期間が長いほど回数は多くなる | 期間を変えると数字も変わるので、比較は同じ期間で行う |
計測期間の設定
ウェブ広告の計測期間は、コンバージョン アクションを作成または変更するときに設定します。公式ページの例では、30日を選ぶと、広告が表示されてから30日以内の分が数えられます。
ウェブ広告の既定値は、このページに書かれていません。24時間という既定値の記述はアプリ向けの機能の項にあるもので、ウェブ広告の話ではありません。
営業から期間を示されたら、ウェブ向けのコンバージョン アクションに、その期間を設定しているかを聞きます。
ビュースルーを見るときの3点(筆者の提案)
公式の機能説明とは別に、筆者は次の3点を勧めます。1点目は、ビュースルーとクリック経由の成果を分けて並べること。2点目は、計測期間を契約前に決めて変えないこと。
3点目は、同じ時期の他の施策(検索広告や紹介など)の動きと並べて見ることです。他の施策が動くと効果が混ざるため、出稿期間中は他の施策を変えないのが前提になります(出す前に決める測り方の節)。
同じ人に何回見せるか(フリークエンシー)
「何回見せれば覚えてもらえるか」は営業がよく語る話題ですが、公式資料に回数の答えはなく、仕組みの説明だけがあります。
公式が書いている仕組み
Googleの広告ヘルプは、フリークエンシーを「一定の期間に 1 人のユーザーに対してお客様のディスプレイ広告や動画広告を表示する回数です」と説明しています。上限を決める機能が、フリークエンシー キャップです。
ディスプレイ キャンペーンについて、「フリークエンシー キャップの算定に使用されるのは、視認範囲のインプレッションのみです」とあります。画面に出ていない表示は、上限の数から外れます。
設定には順番の注意があります。「ディスプレイ キャンペーンのフリークエンシー キャップは、キャンペーンを作成した後でのみ設定できます」。
公式が示していないこと
開いたページには、最適な回数や、何回から逆効果になるかを示した数字は載っていませんでした。回数の目安として語られる数字にも、今回開いたページでは公式の根拠を確認できませんでした。
回数の数え方にも限界があります。デフォルトではサードパーティの Cookie が使われ、使えない場合はファースト パーティの Cookie で「表示回数が概算されます」と書かれています。
営業が「同じ人に〇回届く」と言ったときは、その回数をどの仕組みで数えたのかを聞いてください。
バナーブラインドネスの研究は何を示したか
「バナーは見られない」という話は、1998年の研究から広まりました。研究の中身と、当てはまる範囲を確認します。
論文は英語です。以下の結果は、筆者が日本語に訳して書いたもので、鉤括弧は使っていません。
パイロット研究:6人の参加者
Rice UniversityのBenwayとLaneは、ウェブサイトの利用実験の論文で、目立つ項目を見落とす現象を「バナーブラインドネス」と名づけました。最初の実験は、論文自身が予備実験(パイロット研究)と位置づける小規模なものです。
参加者は、ウェブの経験が豊富な社会人6人でした。男女3人ずつで、年齢は20代後半から30代後半です。
参加者は24回の検索課題を行い、うち4回は、赤いバナーに入っている近道をクリックしないと達成できない課題でした。その4回の成功率は約58%、バナーを使わない課題の成功率は94%でした。
論文は、この実験が調べたのは赤い長方形のバナーという限られた範囲だけだと述べています。
広告バナーの実験:72人の学生
6人の実験とは別の、2つ目の実験の話です。参加者は心理学専攻の学部生72人で、平均年齢は20歳弱でした。
後半では、広告バナーを置いた検索課題を24回行い、終了後のアンケートで広告を見たかを尋ねました。広告を見たと答えたのは、参加者の20%でした。論文は割合だけを示していて、人数は書いていません。
当てはめられる範囲(筆者の見方)
この研究は1998年のもので、課題は「目的の項目を探すこと」でした。参加者は社会人6人と学部生72人で、今の中小企業の見込み客を代表と見るには、条件が違いすぎます。
筆者は、この研究が示すのは、目的を持って探している人はバナーの形をした項目を見落としやすい、という傾向だと読んでいます。広告全般が効かない根拠としては弱い、というのが筆者の判断です。
| 実験 | 参加者 | 課題 | 結果(筆者訳) | 読み方 |
|---|---|---|---|---|
| パイロット研究 | 社会人6人(20代後半〜30代後半) | 24回の検索課題。うち4回はバナーの近道を使う課題 | バナーを使う課題の成功率は約58%、使わない課題は94% | 少人数の予備的な結果 |
| 広告バナーの実験 | 学部生72人 | 検索課題24回の間に広告を表示 | 広告を見たと答えたのは参加者の20% | 1998年の学生が対象で、現在の広告にそのまま当てはまらない |
配信先の質を確かめる
画面に出ても、出た場所が悪ければ、広告主の印象まで傷つけることがあります。公式資料に書かれた範囲で、配信先の確かめ方を整理します。
除外設定とレポートの限界
Googleの広告ヘルプには、配信先を除外する機能があります。ただし、「ディスプレイ ネットワークは常に変化しているため、カテゴリを除外しても、関連するページが完全に除外されるとは限りません」と書かれています。
配信先を確認するレポートにも限界があります。「広告が表示された場所」レポートについて、「このレポートは、お客様の広告のプレースメントをすべて網羅しているわけではありません」とあり、「広告が数回しか表示されていないプレースメントは、レポートに含められません」とも書かれています。
業界団体のガイドライン
JIAAは2019年4月に、ブランドセーフティガイドラインを制定しています。目的は「不適切な広告掲載先をコントロールし、反社会的勢力などへの広告費の流失を防ぎ、掲載先の品質と広告主ブランドの安全性を保つ」ことと書かれています。
2021年4月21日には、無効トラフィック対策ガイドラインを制定しました。「広告配信における無効なトラフィック(IVT)を排除し、取引の信頼性を確保するための標準的な原則や実施すべき具体的な対策をまとめた」ものです。
営業を受けた会社がこの2つのガイドラインに沿った運用をしているか、質問できます。
| 確認する場所 | 出典の記述 | 営業に聞くこと |
|---|---|---|
| 除外設定 | (Google)カテゴリを除外しても関連ページが完全に除外されるとは限らない | 除外できる範囲と、除外したあとの確認方法 |
| 配信先レポート | (Google)すべてのプレースメントを網羅してはいない | 配信先の一覧を、期間を区切って出せるか |
| ブランドセーフティ | (JIAA)ガイドライン、2019年4月 | ガイドラインに沿った運用をしているか |
| 無効トラフィック | (JIAA)ガイドライン、2021年4月21日 | 無効な分の扱いと、クレジットの条件 |
再訪向けの配信に必要な条件
すでにサイトへ来た人に見せる配信は、用語表で見たデータ セグメントを使います。出せる条件と、規制との関係を確認します。
配信には最低人数がある
オーディエンス セグメントの説明ページには、「Google ディスプレイ ネットワークをターゲットとする場合、過去 30 日間のアクティブ ユーザー数が 100 人以上であることが必要です」とあります。
同じページは、アクティブ ユーザー数をサイトまたはアプリを利用したユーザーの数と説明し、Google アナリティクスで見る合計ユーザー数とは異なると書いています。サイトの訪問者数がそのまま当てはまるとは限らないため、広告アカウントのデータ セグメントで人数を確認してください。
外部送信規律との関係
電気通信事業法の外部送信規律は、2023年6月16日に施行されました。総務省のFAQは、問1-6で「外部送信規律はターゲティング広告自体を規制するものではありません」と答えています。
問1-12と問1-13は、小売業者が自社のウェブサイトで商品を売る場合を扱っていて、「本来業務である小売業の遂行の手段として電気通信を用いているに過ぎず」、外部送信規律は適用されないと答えています。複数の店舗や出品者の商品を扱える場を提供するサービスは、問1-14で対象とされています。
自社サイトの内容によって扱いが変わりうるため、判断が必要なときはFAQ原文を確認してください。
ブランドリフト調査の対象にバナー広告は入っていない
ブランドリフト調査は、広告が商品やブランドに対するユーザーの認識にどう影響しているかを確認する、Googleの仕組みです。公式ページを見ると、使える場面が限られています。
公式ページが示す対象
Googleの広告ヘルプには、「ブランドリフト調査を設定するには、動画キャンペーン、オーディオ キャンペーンまたはデマンド ジェネレーション キャンペーンを運用する必要があります」とあります。バナー広告(ディスプレイ キャンペーン)は、この一覧にありません。
「ブランド効果測定は、一部の Google 広告アカウントではご利用いただけません」とも書かれており、利用には担当者への問い合わせが必要です。設定画面には、最小予算額の要件を満たしているかが表示されるとも書かれています。
小さな会社の代わりの確かめ方(筆者の提案)
公式の測定を使えない場合は、次の方法で認知の動きを見ることができます。どれも他の要因が混ざるため、断定の根拠にはせず、傾向を見る目安にしてください。
| 方法 | やること | 注意 |
|---|---|---|
| 知ったきっかけの質問 | 問い合わせフォームに「何で知ったか」の欄を置く | 回答は自己申告で、広告以外の理由も混ざる |
| 会社名・商品名の検索 | 出稿の前後で、Search Consoleの会社名・商品名の検索の表示回数を比べる | 他の施策や季節の動きと切り分けにくい |
| 電話や面談での聞き取り | 初回の連絡で「どこで知ったか」を尋ねて記録する | 件数が少ないうちは偏りが大きい |
出す前に決める測り方
効果を確かめられるかどうかは、出稿前の準備でほぼ決まります。決めるのは、目的、比べる期間、見る数字、止める線の4つです。見る数字は、この節の最後の表に目的別で示します。
目的を1つに決める
バナー広告は、認知、再訪の促進、問い合わせの獲得など、複数の目的に使えます。目的が混ざると、どの数字で判断するかが定まらなくなります。契約前に1つに絞ってください。
比べる期間と基準を決める
出稿前の数週間の問い合わせ数と、出稿中の数週間の問い合わせ数を比べるのが基本です。同じ長さの期間で、同じ曜日構成になるように揃えます。
広告以外の動き(季節、他の宣伝、価格改定)が同じ時期に入ると、効果が混ざります。出稿期間中は、他の施策を変えないでおきます。ビュースルーの節で、他の施策の動きと並べて見ると書いたのも同じ理由です。
止める線を先に決める
「出稿期間が終わった時点で、〇〇の数字が増えていなければ継続しない」という線を、契約前に文章で決めておきます。止める線がないと、数字が悪くても「もう少し様子を見ましょう」で延びていきます。
| 目的 | 主に見る数字 | 補助で見る数字 | 判断に使えない数字 |
|---|---|---|---|
| 認知 | 視認可能なインプレッション、会社名・商品名の検索の増減 | 測定可能率、フリークエンシー | クリック数だけ |
| 再訪の促進 | 再訪した人の問い合わせ数 | ビュースルー コンバージョン(別枠) | 表示回数だけ |
| 問い合わせの獲得 | 問い合わせ完了の数と、1件あたりの広告費 | クリック数、クリックの先での離脱 | ビュースルー コンバージョンだけ |
営業を受けたときに聞く質問
ここまでの内容を、その場で聞ける質問に変えます。質問は数字に関するものと、配信と契約に関するものに分けました。
数字に関する質問
| 質問 | 聞く理由 | 根拠 |
|---|---|---|
| 表示回数は、視認可能な表示を数えたものですか | 視認可能かどうかで、数字の意味が変わる | 広告ヘルプ「視認性とアクティブ ビュー レポートの指標について」 |
| 測定可能率はどれくらいですか | 測れない表示もあり、視認可能率は測定できた分に対する割合 | 同上 |
| 料金は何に対して発生しますか | 表示、視認可能な表示、クリック、成果で確かめる数字が変わる | 広告ヘルプ「視認範囲のインプレッション単価について」ほか |
| ビュースルーは何日で数えますか | 期間が長いほど回数が増える | 広告ヘルプ「ビュースルー コンバージョンについて」 |
配信と契約に関する質問
| 質問 | 聞く理由 | 根拠 |
|---|---|---|
| 配信先の一覧を、期間を区切って出せますか | 配信先レポートはすべてを網羅していない | 広告ヘルプ「『広告が表示された場所』レポートについて」 |
| 無効なクリックの扱いを書面でもらえますか | 払い戻しは行われず、クレジットでの調整になる。条件がある | 広告ヘルプ「無効なトラフィックについて」 |
| JIAAのガイドラインに沿っていますか | ブランドセーフティと無効トラフィックの指針がある | JIAAのガイドライン(2019年4月、2021年4月21日) |
| 止める条件を契約書に入れられますか | 様子見で延びるのを防ぐ | 筆者の提案 |
予算が小さいときに決める順番
予算が小さいと、試して外れたときの影響が大きくなります。ここからは筆者の見方で、決める順番を示します。
決める順番(筆者の見方)
最初に、問い合わせ完了を数えられるかを確かめます。次に、目的、比べる期間、見る数字、止める線の4つを文章にします。最後に、少額で期間を区切って出します。
どれかが決まらなければ、その手前で止めます。
ほかの広告との比較
検索広告の少額での始め方は、BtoB中小企業のためのGoogle 広告「検索広告」入門にまとめました。広告の種類全体の整理はウェブ広告の種類を型で理解し自社に合う1つから始める選び方にあります。
「試す」と呼べる条件
少額で試すこと自体は、選択肢のひとつです。試したと言えるのは、4つの条件を先に決めた場合です。
4つが決まらないまま出すと、結果が出ても、続けてよいかを判断する材料が残らなくなります。決まらないなら、出さない判断も選べます。
よくある質問
Q. バナー広告は無駄ですか
A. 無駄と決める根拠は、開いた範囲の公式資料にありませんでした。効果は、出す条件と測り方で変わります。効きやすい条件と効きにくい条件、出す前に決める測り方の2つの節を見て、先に決めてから判断してください。
Q. クリック率が低いと失敗ですか
A. クリックは入口の数字です。認知を目的にした出稿で、クリック率だけで成否を決めるのは早計です。自社の出稿前後の数字と比べて判断します。
Q. ビュースルー コンバージョンが多ければ成功ですか
A. 多いこと自体は、成功の根拠になりにくい数字です。一部のキャンペーンを除きレポート専用の列で、計測期間の設定でも数が変わります。クリック経由の成果と分けて見てください。
Q. リターゲティングは規制されて出せなくなりますか
A. 総務省のFAQは、外部送信規律がターゲティング広告自体を規制するものではないと答えています(問1-6)。自社サイトで自社の商品を売る場合の扱いは、再訪向けの配信の節に書きました。
Q. 認知を目的に出すとき、何を見ればよいですか
A. 視認可能なインプレッションと、会社名・商品名の検索の増減を見ます。ブランドリフト調査の公式ページの対象にバナー広告は入っていないため、代わりの方法(知ったきっかけの質問など)を併用します。
まとめ
バナー広告の効果は、条件を決めて出せば確かめられます。決めないで出せば、判断の根拠が手元に残らなくなります。
数字の読み方は、冒頭の3つです。表示回数は視認可能な表示で数え、クリックは入口の数字として扱い、ビュースルー コンバージョンは別枠で見ます。出す前に決めるのは、目的、比べる期間、見る数字、止める線の4つです。
筆者の見方では、営業を受けた場合に、4つの条件を書面にできるなら、少額で試すことは選択肢になります。決められないなら、出さない判断も選べます。
今日できる点検
| 点検項目 | 今日確認すること |
|---|---|
| 営業を受けている | 表示回数が視認可能な表示か、測定可能率はいくらかを聞く |
| 出稿を検討している | 目的を1つに決め、比べる期間と止める線を文章にする |
| 問い合わせの計測 | 問い合わせ完了を数える設定があるか確認する |
| 再訪向けの配信 | 広告アカウントのデータ セグメントで、過去30日のアクティブ ユーザー数が100人以上か確認する |
| すでに出稿している | 配信先、無効なクリック、ビュースルーの期間を確認する |
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