Googleアナリティクスのレポートに「scroll」というイベント名が並んでいるのを見て、これが何のデータなのか判断しかねている方もいるでしょう。
scrollイベントは、訪問者がページをどこまで下に読み進めたかを記録するイベントです。名前のとおりスクロールの深さを測るもので、ページ滞在時間や直帰率だけでは見えない「本文のどこで読むのをやめたか」を教えてくれます。
この記事では、GA4のscrollイベントを実務で使いたい方に向けて、次の3点を整理します。
- scrollイベントが何を記録しているか(そして何を記録していないか)
- GA4の拡張計測機能とGoogleタグマネージャー、それぞれで取れる深さの違い
- 取れた数字をどう読み、記事のどこに手を入れるか
先に結論だけ書いておきます。GA4の初期設定のまま取れるスクロールの数字は1種類だけです。
25%・50%・75%といった刻みで見たい場合は、別の設定が必要になります。この違いを知らないまま「25%のデータが出てこない」と悩む方が多いので、そこから説明します。
スクロール率とは何か
スクロール率とは、ページを開いた訪問者のうち、どれくらいの人が、ページのどこまで下に読み進めたかを示す割合です。「この記事を開いた100人のうち、90%の位置まで到達したのは38人だった」というように、位置と人数の組み合わせで読みます。
混同されやすい指標に直帰率と離脱率があります。直帰率は1ページだけ見てサイトを去った割合、離脱率は特定のページがセッションの最後になった割合です。
どちらも「ページを去ったかどうか」を測る指標で、ページの中身がどこまで読まれたかまでは教えてくれません。
この差は実務でよく効きます。たとえば直帰率が高いページでも、スクロール率が高ければ「知りたいことが全部書いてあったので、他のページを見る必要がなかった」と解釈できます。
逆に直帰率が高くスクロール率も低いなら、冒頭を読んだ時点で「探していたものと違う」と判断されています。前者は本文ではなく次の行き先の設計、後者はタイトルと書き出しの問題です。
同じ「直帰率が高い」でも、打つ手は正反対になります。
| スクロール率の水準 | この記事に起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 25%までで多くが離脱する | 冒頭が読者の探しものと違っている | タイトルと最初の3行を検索語に合わせる |
| 50%あたりで止まる | 途中の見出しで関心が切れている | 長い段落を分け、見出しを増やす |
| 75%までは届く | 内容は読まれるが、次の行動が示されていない | 読み終わりの位置に行き先を1つ置く |
| 90%以上が大半を占める | 最後まで読まれ、内容は合っている | 同じ型で次の記事を書く |
| 数字がまったく取れない | 計測の設定が入っていない | 拡張計測機能の設定を確認する |
GA4の拡張計測機能で取れるのは「90%到達」だけ
ここが最初の分かれ道です。GA4には拡張計測機能という仕組みがあり、管理画面のスイッチを入れるだけでいくつかのイベントが自動で集まります。
スクロールもその1つに含まれています。
ただし、自動で集まる深さは1種類に限られます。Googleアナリティクスヘルプの説明では、scrollイベントはユーザーがページの垂直方向90%の深さまで初めて表示したときに記録されます。
1回の表示につき1回だけ送信され、25%・50%・75%といった途中の地点は記録されません。
つまり、拡張計測機能だけを有効にしている状態では、手元にあるのは「90%まで読んだ人の数」という1点のデータです。これはこれで使える数字です。
記事単位で90%到達率を並べれば、最後まで読まれている記事とそうでない記事の差はすぐに見えます。一方で「どのあたりで脱落しているか」を特定したい場合は、この1点だけでは足りません。
拡張計測機能を有効にする手順
設定は管理画面から数分で終わります。
- GA4の画面左下の「管理」を開く
- プロパティ列の「データストリーム」を選び、対象のウェブストリームをクリックする
- 「拡張計測機能」の項目でスイッチが入っているかを確認する
- 歯車アイコンから個別の項目を開き、「スクロール数」にチェックが入っているかを見る
拡張計測機能は既定で有効になっていることが多いため、多くの場合は確認だけで済みます。過去に誰かが個別の項目をオフにしていたケースもあるので、データが1件も出てこないときはここを最初に疑ってください。
レポートでの確認場所
データが集まっているかどうかは、「レポート」から「エンゲージメント」を開き、「イベント」の一覧でイベント名「scroll」を探します。
ここに数字が並んでいれば計測は動いています。設定した直後は反映まで時間がかかるため、すぐに確認したい場合は「リアルタイム」レポートを開き、自分でページを下まで読み進めてイベントが発生するかを見る方が早く済みます。
なお、旧世代のユニバーサルアナリティクスの解説記事には「行動」メニューからイベントを開く手順が書かれていることがあります。GA4にこのメニューは存在しないため、古い手順を探して迷わないようご注意ください。
25%・50%・75%を取りたいならGoogleタグマネージャーを使う
脱落地点を細かく知りたい場合は、Googleタグマネージャー(GTM)でスクロール深度のトリガーを組みます。GTMはサイトのコードを毎回書き換えずにタグを出し入れできる仕組みで、一度コンテナのコードを設置してしまえば、あとは管理画面の操作だけで完結します。
手順1:組み込み変数を有効にする
GTMの「変数」メニューを開き、組み込み変数の「設定」から、スクロール関連の変数にチェックを入れます。Scroll Depth Threshold(しきい値)、Scroll Depth Units(単位)、Scroll Direction(方向)の3つが該当します。
しきい値の変数を有効にしておくと、後でGA4側へ「何%地点で発生したイベントか」を数値として送れるようになります。
手順2:スクロール深度トリガーを作る
「トリガー」メニューから新規作成を選び、トリガーのタイプで「スクロール距離」を選択します。縦方向スクロール距離にチェックを入れ、割合の欄に「25,50,75,90」のようにカンマ区切りで入力します。
刻みを増やすほど細かく見えますが、その分イベントの総数も増えます。まずは4段階程度から始めるのが扱いやすいところです。
手順3:GA4イベントタグを作る
「タグ」メニューから新規作成を選び、タグの種類で「Googleアナリティクス: GA4イベント」を選択します。イベント名は拡張計測機能のscrollと区別できる名前にしておくと、後でレポートが読みやすくなります。
イベントパラメータには、先ほど有効にしたしきい値の変数を割り当てます。トリガーには手順2で作ったスクロール距離トリガーを指定します。
手順4:プレビューで確認してから公開する
GTMのプレビューモードを起動し、実際のページを下まで読み進めます。指定した割合の位置でトリガーが発火し、タグが実行されているかを画面上で追えます。
同時にGA4のリアルタイムレポートを開いておけば、データがGA4側に届いているところまで一気に確認できます。ここまで確認してから公開してください。
拡張計測機能とGTM、どちらを選ぶか
| 比較の観点 | 拡張計測機能 | Googleタグマネージャー |
|---|---|---|
| 取れる深さ | 90%到達のみ | 任意の割合を複数指定できる |
| 設定の手間 | スイッチを確認するだけ | 変数・トリガー・タグの3点を作る |
| コードの編集 | 不要 | コンテナの初回設置だけ必要 |
| 向いている場面 | 記事ごとの読了状況を横並びで見たい | 脱落地点を特定して本文を直したい |
| 注意点 | 途中の地点は分からない | 設定を誤ると数字が実態とずれる |
どちらか一方を選ぶ必要はありません。拡張計測機能はそのまま有効にしておき、改善したい記事が絞れた段階でGTMの細かい計測を足す、という順番が現実的です。
全記事に細かいスクロール計測を入れても、見る時間がなければ数字は溜まる一方になります。
スクロール率の数字をどう読むか
業界平均を探しても答えは出ない
「スクロール率は何%あれば合格ですか」という質問をよくいただきます。ここは正直にお伝えしておくと、業種やページの種類、記事の長さによって適正な水準がまったく違うため、外部の平均値を持ってきても自社の判断材料にはなりにくいのが実情です。
5,000字の解説記事と、300字で用件が済む料金ページでは、90%到達率が同じ数字になるはずがありません。
実務で役に立つのは自社の過去との比較のほうです。同じサイトの同じ種類の記事を10本並べて、90%到達率の高い順に並べ替える。
上位3本と下位3本を実際に読み比べる。ここまでやると、自社の読者にとって何が効いているかが具体的に見えてきます。
外から持ってきた平均値には、この具体性がありません。
スクロール率が高ければ良い記事、とは限らない
スクロール率の解釈で一番の落とし穴がここです。最後まで読まれている状態と、探しものが見つからずに読まされている状態は、数字の上では同じ顔をしています。
見分ける手がかりは、他の指標との組み合わせにあります。90%到達率が高いのに問い合わせが1件も発生していないページは、読み終えた読者が次にどこへ行けばよいかを示せていない可能性があります。
逆に、90%到達率が低くてもコンバージョンが発生しているページは、必要な情報が上のほうに集まっている良い状態かもしれません。
スクロール率は行動指標と並べて初めて意味を持つ数字だと考えてください。
検索順位との関係を短絡させない
スクロール率や滞在時間が伸びれば検索順位が上がる、という説明を見かけることがあります。ここは慎重に扱うべきところです。
Googleは検索セントラルで、自社のランキングシステムが「ユーザーにメリットをもたらすことを目的として作成された、有用で信頼できる情報」を上位に掲載するよう設計されていると説明していますが、滞在時間やスクロール率といった個別の行動指標をランキング要因として公表しているわけではありません。
実務的な受け止め方としては、順位を上げるためにスクロール率を追いかけるのではなく、読者が最後まで読める記事かどうかを点検する道具として使うのが妥当です。読み通せる記事を積み上げた結果として評価が付いてくる、という順序で考えたほうが、施策を誤りにくくなります。
スクロール率が低いページの直し方
25%地点で落ちている場合
冒頭で読者の期待と記事の中身がずれています。検索結果から来た読者は、タイトルで期待した答えが最初の数行にあるかどうかを確かめています。
ここで「まず前提から説明します」と始めると、答えを探している読者は引き返します。結論を先に置き、その根拠を後ろに回す構成へ組み替えてください。
タイトルと書き出しで使っている言葉が、実際の検索語と一致しているかも同時に確認します。
50%前後で落ちている場合
本文の途中で読む理由が切れています。多いのは、見出しの間隔が長すぎて、どこまで読めば終わるのかが見えないケースです。
長い段落を2つか3つに割る、見出しを増やして先の見通しを与える、表や箇条書きで説明を圧縮する。この3つだけでも改善することが多いところです。
スマートフォンで自分の記事を開いて、指で送りながら読んでみると、文字の壁になっている箇所はすぐ見つかります。
75%までは届くのに成果が出ない場合
本文は読まれているので、問題は読み終わりにあります。読み終えた読者が次に何をすればよいかが示されていないと、そのままタブを閉じます。
記事の内容と地続きの行き先を1つだけ置いてください。行き先が複数あると選べずに離脱します。
また、記事の結論と行き先の中身がずれていると、読者は押す理由を見つけられません。
記事ごとのスクロール率を並べて見る方法
イベント一覧の画面では、サイト全体のscrollイベント数が1つの数字で表示されます。これだけでは、どの記事が読まれていてどの記事が読まれていないかが分かりません。
記事単位で比べるには、もうひと手間かけます。
探索レポートで記事別に集計する
GA4の「探索」メニューから空白の探索を作り、行にディメンションの「ページパス」を、値に指標の「イベント数」を置きます。
そのうえで、フィルタにイベント名がscrollである条件を加えると、記事ごとのscrollイベント数が一覧になります。同じ表に「表示回数」を並べておくと、表示回数に対する90%到達の比率をその場で計算できます。
比率まで出したら、表示回数の多い順ではなく比率の低い順に並べ替えてください。表示回数が多くて比率が低い記事は、直したときの影響がいちばん大きい記事です。
限られた時間で手を入れる順番を決めるとき、この並べ替えがそのまま優先順位になります。
Search Consoleのデータと突き合わせる
スクロール率が低い記事について、Google Search Consoleでその記事が実際にどの検索語で表示されているかを確認します。
想定していた検索語と、実際に表示されている検索語がずれている記事は、内容そのものより見出しの言葉を直すほうが早く効きます。
読者は検索語の答えを探して来ているので、本文の中にその言葉が見当たらないと、冒頭で引き返します。
この2つを突き合わせる作業は、慣れれば1記事あたり数分で終わります。スクロール率という数字だけを眺めていても改善案は出てきませんが、検索語と並べた瞬間に「読者が探していたもの」と「記事が答えているもの」の差が具体的に見えるようになります。
計測するときの注意点
ページの長さで数字は動く
スクロール率は「ページ全体に対する割合」で測るため、同じ内容でもページが短いほど到達率は上がります。長い記事と短い記事を同じ土俵で比べると、長い記事が不当に低く見えます。
比較するときは、文字数の近い記事どうしで並べてください。
ページ下部の読み込みに注意する
画像の遅延読み込みや、スクロールに応じて要素を追加する仕組みが入っていると、ページの高さが途中で変わります。高さが変わると、GTMが計算しているしきい値の位置もずれます。
動的に伸びるページでスクロール計測を行う場合は、プレビューモードでの確認を特に丁寧に行ってください。
刻みを増やしすぎない
5%刻みのような細かい設定も技術的には可能ですが、イベント数が膨れ上がる割に、読み取れる示唆はあまり変わりません。25・50・75・90の4点で、脱落地点を絞り込むには十分です。
スクロール率に関するよくある質問
GA4の初期設定で25%のデータが取れないのはなぜですか
拡張計測機能のscrollイベントが、ページの垂直方向90%まで到達したときだけ記録される仕様のためです。25%・50%・75%を取得したい場合は、Googleタグマネージャーでスクロール深度のトリガーを作成してください。
scrollイベントは1回の閲覧で何回記録されますか
拡張計測機能の場合、1回のページ表示につき1回だけ記録されます。読者が上下に何度もスクロールしても、90%到達時の1回だけが送信されます。
スクロール率の目安はどれくらいですか
外部の平均値を基準にするより、自社サイトの同じ種類のページを並べて相対的に見るほうが実用的です。ページの長さと目的によって適正な水準が変わるため、汎用的な合格ラインを示すことは難しいところがあります。
スクロール率が上がれば検索順位も上がりますか
Googleは滞在時間やスクロール率といった行動指標をランキング要因として公表していません。スクロール率は順位を動かす手段としてではなく、記事が読み通せているかを確認する点検の道具として使ってください。
ヒートマップツールとの使い分けを教えてください
スクロール率は「どこまで読まれたか」を数値で示し、ヒートマップは「どこが見られ、どこが押されたか」を画面上の位置で示します。数値で脱落地点を絞り込み、その箇所をヒートマップで視覚的に確かめる、という順番で組み合わせると無駄が少なくなります。
まとめ
GA4のscrollイベントは、拡張計測機能をオンにすれば「90%到達」という1点のデータが自動で集まります。脱落地点を細かく追いたい場合は、Googleタグマネージャーでスクロール深度のトリガーを作り、任意の割合を指定します。
この2つの違いを押さえておけば、「25%のデータが出てこない」という最初のつまずきは避けられます。
そして数字が取れた後が本題です。業界平均を探すより、自社の記事を並べて上位と下位を読み比べるほうが、次に直す箇所は早く見つかります。
スクロール率は順位を動かすための数字ではなく、書いた記事が本当に読み通せているかを教えてくれる点検の道具です。設定は数分で終わります。
まずは自社の記事が、どこで読者を手放しているかを確かめるところから始めてみてください。
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