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ホームページ制作会社の選び方 倒産リスクと契約の注意点

2026 9/18
ホームページ制作会社の選び方

「初期費用の安さ」や「デザインの見た目」だけでWeb制作会社を決めていないだろうか。ホームページは公開して終わりではなく、その後何年も運用し続ける事業資産だ。発注先の選び方を誤ると、成果につながらないサイトができるだけでなく、契約や運用の段階で深刻なトラブルに発展することがある。

この記事では、良い制作会社を見極める一般的なチェックポイントに加えて、他の解説記事があまり扱わない「制作会社が倒産・廃業した場合に発注者側に何が起きるか」という角度を厚めに扱う。参入障壁の低さから小規模な制作会社が乱立する一方、ノーコードツールや生成AIの普及で内製化が進み、価格競争に頼っていた零細事業者の淘汰も進んでいる。この構造を踏まえたうえで、失敗しない発注先の選び方を整理する。

ホームページ制作は、一度発注すれば数年単位で付き合いが続く取引だ。制作した会社が公開後の保守や改修も担うケースが多く、途中で相手を変えるにはそれなりの手間とコストがかかる。だからこそ、目先の見積金額だけでなく、その会社と長く付き合えるかどうかという視点で選定基準を組み立てておきたい。

目次

発注先の3タイプと、費用が決まる仕組み

Web制作の費用は、依頼する相手の規模や体制によって大きく変わる。費用の大部分は人件費(工数×単価)で構成されるため、何人が何工程に関わるかで、同じ「ホームページ1本」でも金額は大きく開く。

なお、この記事では金額の相場を示さない。公的機関や業界団体が公表したWeb制作費の相場調査を、執筆時点で確認できなかったためだ。金額の水準は、候補の各社が公開している料金表と、提示された見積書の内訳で確かめてほしい。ここで示すのは、金額を動かしている要因のほうになる。

フリーランスへの依頼は、関わる人数が最も少ないため、金額としては低く収まりやすい。制作者と直接やり取りできるため、意思決定や修正対応がスピーディな点がメリットだ。一方で、対応範囲が個人のスキルに依存しやすく、デザインは得意でもSEOやセキュリティの知見が薄いといったばらつきが出る。制作者本人が体調を崩したり連絡が取れなくなったりすると、プロジェクトが完全に止まってしまうという事業継続上のリスクも抱える。予算重視で、数ページ程度の簡易なサイトを作りたい個人事業主や小規模店舗に向いている。クラウドソーシングサービスを通じて依頼する場合は、過去の取引実績や評価を確認できるため、見ず知らずの相手に発注するよりは判断材料が得やすい。ただし、実際の制作品質や対応の丁寧さは評価だけでは分からない部分も多く、契約前に電話やビデオ通話で直接やり取りをして、説明の分かりやすさや質問への答え方を確かめておくと、後のミスマッチを減らせる。

中小規模の制作会社は、もっとも一般的な依頼先になる。ディレクター・デザイナー・エンジニアなど専門スタッフがチームで対応するため品質が安定しやすく、公開後の保守やマーケティング施策の提案まで一貫して任せられることが多い。会社によって得意分野(デザイン特化、システム開発特化、SEO特化など)が大きく異なるため、自社の目的と噛み合っているかを見極める必要がある。中小規模の制作会社を選ぶ際は、会社の規模そのものより、実際にプロジェクトを担当する人数と体制を確認しておきたい。営業担当者が受注し、制作は外部の協力会社やフリーランスに再委託する体制を取っている会社も少なくなく、この場合は実質的にフリーランスへ依頼するのと近いリスクを抱えることになる。誰が実制作を担当するのかを、契約前にはっきりさせておくとよい。

大手制作会社・広告代理店は、関与する職種と人数がさらに増えるため、金額も相応に上がる。大規模プロジェクトを完遂する体制や、上流の戦略立案まで対応できる強みがある一方、関与する人数が多くコミュニケーションコストが高くなりやすく、小規模なサイトでは費用対効果が見合いにくい。

依頼先 関わる体制 向いているプロジェクト 主なリスク
フリーランス 1人が全工程を担う 数ページ程度の簡易なサイト 本人が止まると全部止まる
中小規模の制作会社 職種ごとに担当が分かれる 一般的なコーポレートサイト・採用サイト 再委託で実質1人体制のことがある
大手制作会社・代理店 戦略から運用まで多数が関与 大規模サイト、全社的なブランディング 小規模案件では費用が見合わない

見積もりを比較する際、見落とされがちなのが「ディレクション費」だ。プロジェクト全体の進行管理や要件定義、各担当者への指示出しにかかる費用だ。この費用が極端に安い、あるいは計上されていない見積もりは、自社の課題を深く理解するヒアリングを省いた機械的な作業体制であるサインかもしれない。逆に、ディレクション費の説明を求めたときに、担当する業務内容を具体的に答えられる会社は、進行管理の体制がしっかりしていると判断してよい。見積書に並ぶ項目を1つずつ「これは誰が、何をする費用か」と質問してみることが、実務的な見極め方になる。

良い制作会社を見極めるチェックポイント

実績の質と得意領域の適合性

実績の数の多さより、自社の業界・業種に近い実績があるか、求める機能(EC・予約システム・採用強化など)での成功事例を持っているかを見たい。実績として掲載されているサイトが、現在も実際に稼働しているかも確認しておきたい。既に閉鎖されていたり他社にリプレイスされていたりする場合、その成果物がクライアントの長期的な事業貢献に至らなかった可能性を示している。優れた制作会社は、「どんな課題に対して、どんな施策を講じ、どんな成果(問い合わせ増加や採用達成など)につながったか」という因果関係を説明できる。

商談の場で実績を紹介された際は、担当者に「その実績で、公開後どのくらいの期間でどんな変化がありましたか」と踏み込んで質問してみるとよい。制作した瞬間の話しかできない会社と、公開後の数字の変化まで把握している会社とでは、公開後の運用にどれだけ責任を持っているかの姿勢が違う。前者は「作って終わり」、後者は「作った後まで見届ける」という体制の違いが、実際の成果に表れやすい。

提案力とコミュニケーションの質

要望をそのまま形にするだけの御用聞きではなく、事業課題を解決する提案ができるかを見極めたい。初回ヒアリングで、自社の事業内容やターゲット層、競合との差別化要因を深く理解しようとする姿勢があるかどうかが試金石になる。専門用語に偏らず、非エンジニアの経営者にも分かりやすく説明できるかも重要だ。制作は数ヶ月から半年以上に及ぶことが多く、コミュニケーションの齟齬は納品物の質やスケジュールの遅延に直結する。

初回の商談で提示される「提案書」の質も、見極めの材料になる。競合サイトの分析や、想定されるターゲット層の課題を独自の視点で示している提案書は、その会社が本気で自社のビジネスを理解しようとしている証拠だ。逆に、どの業種にも当てはまるような一般論だけで構成された提案書は、テンプレート的な営業トークの域を出ていない可能性がある。複数社から提案を受ける場合は、この提案書の具体性の差を比較するだけでも、各社の実力差がかなり見えてくる。

見積もりの透明性と公開後の運用体制

優良な制作会社は、「Web制作一式100万円」のような曖昧な項目ではなく、ディレクション費・デザイン費・コーディング費・システム開発費などを細分化して提示する。修正対応が何回まで無料か、どんな仕様変更で追加費用が発生するかも明記されているのが望ましい。加えて、サイトは公開してからが運用の本番だ。プラグインのアップデートや定期バックアップ、公開後の改善提案まで含めたサポート体制があるか、専任のWeb担当者がいない場合に誰がどう更新するのかを、契約前に確認しておきたい。

見積書の項目数が極端に少ない場合も注意したい。「ホームページ制作費一式:50万円」のような1行だけの見積もりは、後になって「フォームの設置は別料金だった」「スマートフォン対応は追加費用が必要」といった想定外の請求を招きやすい。ページ数、機能、対応デバイス、修正回数まで具体的に記載された見積もりを提示できる会社は、それだけプロジェクトの全体像を正確に見積もれているということでもある。

セキュリティとパフォーマンスへの配慮

WordPressなどのCMSを使ったサイトは、サイバー攻撃の標的になりやすい。SSL化の標準対応、ログイン画面の保護、不要なプラグインの排除、脆弱性対応の定期的なアップデート計画といった基本的なセキュリティ対策に、制作会社がどれだけ意識を向けているかは、公開後の事故リスクに直結する。表示速度への配慮も同様に重要で、遅いサイトはユーザーの離脱を招くだけでなく、検索エンジンからの評価にも影響する。商談の場で、画像の圧縮やキャッシュ活用など、パフォーマンス最適化への具体的なアプローチを質問してみると、その会社の技術力の深さが見えてくる。

セキュリティ対策は、公開時だけでなく公開後も継続的に必要になる領域だ。CMSやプラグインには日々新しい脆弱性が発見されており、放置すれば改ざんや情報漏洩の入り口になる。保守契約にこうした定期アップデートが含まれているか、含まれていない場合は誰がいつ対応するのかを、契約の段階で明確にしておきたい。「公開して終わり」の一括請負契約だけで済ませてしまうと、公開後の脆弱性対応が誰の責任なのか曖昧なまま放置されるリスクがある。

「安さ」だけで選んだ場合に起きるトラブル

相場より不自然に安い制作会社を選ぶことは、短期的な節約に見えて、結果的に大きな損失を招くことがある。初期費用が数万円〜十数万円と極端に安い場合、そこには明確な理由がある。

薄利多売で成り立たせるために、既存のテンプレートを使い回すのが典型的なパターンだ。自社のブランドや事業構造に合わないデザインを当てはめられるため、競合との差別化ができない没個性なサイトになりやすい。用意した画像やテキストを指定の枠に流し込むだけの作業になるため、ユーザーを迷わず問い合わせや購買に導く動線設計もなされない。結果として、公開はされたが誰にも見られず成果につながらないサイトが完成する。運用開始後に「フォームの項目をカスタマイズしたい」といった要望を出しても、テンプレートの仕様上対応できなかったり、無理な改修に高額な費用を請求されたりする。

もう1つの罠が、隠れたランニングコストだ。「初期費用無料」を謳う業者の中には、月額の保守費用を相場より高く、しかも長期間(3〜5年など)の解約不可契約で結ばせるビジネスモデルがある。仮に月額3万円を5年間払い続ければ、総額は180万円に達し、中規模のオリジナルサイトを1本作れる金額を上回る。初期費用の安さだけで比較せず、数年単位の総所有コストで判断したい。

契約をめぐる食い違いは、決まった形で起きる。口頭での説明と契約書の記載がずれていた、想定していなかった追加費用を後から請求された、という2つだ。どちらも、その場で書面を確かめておけば防げる種類のものになる。事業者を狙った「ホームページの長期リース契約」のように、極端な安さや無料を入口にして、長期の解約不可契約へ誘導する売り方もある。契約を急かされたときほど、いったん持ち帰り、月額・契約期間・中途解約の条件の3つを書面で確認したい。その場で判断を求める相手とは、時間を置いて構わない。

制作会社が倒産・廃業した場合に起きるリスク

比較記事ではあまり扱われないが、経営者が警戒すべき重大なリスクが、発注先の制作会社が倒産・廃業した場合の事業継続リスクだ。企業の信用調査を手がける調査会社が2026年7月に公表した集計によれば、ソフトウェア開発やホームページ制作を含む「情報サービス業」の2026年上半期(1〜6月)の倒産件数は、前年同期比18.5%増の166件にのぼり、上半期としては2017年以降の10年間で最多、5年連続の増加となっている。倒産した企業のうち、負債1億円未満が147件(88.5%)、従業員5人未満が135件(81.3%)を占めており、淘汰が進んでいるのは主に小規模・零細の事業者だ。ノーコードツールや生成AIの普及によって単純なサイト構築の内製化が進み、低価格競争に頼っていた事業者が競争力を失っていることが背景にある。

数字の内訳を読むと、増えているのは小規模な事業者の倒産だと分かる。ただし、委託先がある日突然事業を停止するという事態そのものは、相手の規模を問わず起こりうる。規模が大きいから安心という読み方は、しないほうがよい。

この背景には、ノーコード・ローコードツールの進化や生成AIの普及によって、単純なサイト構築の内製化が進んでいるという構造変化がある。テンプレートを流し込むだけの制作で利益を出していた小規模事業者ほど、この変化の影響を強く受けやすい。逆に言えば、価格の安さだけを売りにしている制作会社ほど、事業の継続性という観点では慎重に見極める必要があるということだ。安さの裏にある事業モデルの持続可能性まで含めて判断する視点を持ちたい。

では、制作会社と連絡が取れなくなった場合、発注者にはどんな被害が及ぶのか。3つのリスク構造を整理する。

ドメイン・サーバーの契約名義トラブル

もっとも致命的なのが、自社サイトのドメインやレンタルサーバーの契約名義が、発注者ではなく制作会社のままになっているケースだ。専門知識がないことを理由に、ドメイン取得からサーバー契約、毎年の更新費用の支払いまでを制作会社に丸投げしている中小企業は少なくない。制作会社が倒産して連絡が途絶えると、更新手続きが行われなくなり、有効期限切れとともに自社サイトが突然インターネット上から消滅する。さらに、失効したドメインが第三者に取得され、これまで積み上げてきたブランド名や検索評価を悪用した不正サイトが運営されるという二次被害に発展することもある。ドメインを自社や別会社に移管しようとしても、現管理者(倒産した制作会社)の承認や認証鍵が必要になり、破産手続きに入り音信不通になった相手からこれを取得するのは極めて難しい。専門機関への申し立てや弁護士を通じた交渉が必要になり、解決までに数ヶ月と相応の費用がかかることもある。

このリスクを避ける方法はシンプルだ。ドメインは自社名義で取得し、レンタルサーバーの契約者情報も自社にしておく。制作会社に手続きを代行してもらうこと自体は問題ないが、契約の当事者は必ず自社にする。管理画面へのログイン情報は、担当者個人のメモではなく、社内で共有できる形で保管しておく。この一点を守るだけで、倒産リスクの中でもっとも被害の大きいパターンをほぼ回避できる。

ソースコード・ログイン情報の喪失

サイトを構成するソースコードデータや、CMSの管理者権限を自社で保有していない場合、制作会社の倒産と同時にサイトの更新や修正が一切できなくなる。新しい制作会社に保守を引き継ごうとしても、サーバーへのアクセス情報やデータベースのログイン情報が発注者側に残されていなければ、内部構造にアクセスして改修することができない。結果として、見た目だけをコピーして作り直すか、最悪の場合は要件定義からゼロベースで作り直すことになり、過去に投じた制作費用が無駄になるだけでなく、再構築のための追加コストと時間が発生する。

この対策も難しいものではない。制作会社に「納品後、ソースコード一式とログイン情報一式を書面またはデータで引き渡してもらう」ことを、契約時にあらかじめ条件として盛り込んでおけばよい。多くの誠実な制作会社は、この要望を伝えれば快く応じてくれる。逆に、この要望に難色を示したり、理由を明確にせず拒否したりする会社は、それ自体が警戒すべきサインだと考えてよい。

前払い金が返還されないリスク

保守費用やサーバー代・ドメイン代を年間一括で前払いしている場合、途中で制作会社が倒産すると、サービスが提供されないまま残存期間分の前払い金が返還されない可能性がある。この前払い金は法的には破産手続きにおける一般の無担保債権として扱われ、税金や労働債権が優先して弁済されるため、発注者が配当を受けられる可能性は低く、事実上戻ってこないことが多い。この観点からは、複数年分をまとめて前払いする契約より、月払いや年払いでも短めのサイクルで支払う契約のほうが、万が一の際の損失を小さく抑えられる。長期契約で割引を提示された場合も、割引額と、相手の事業継続性に対するリスクを天秤にかけて判断したい。

これらのリスクを避けるには、ドメイン・サーバーの契約名義を必ず自社にしておくこと、そしてソースコード一式と管理者権限のアカウント情報を、納品時や保守契約開始時に確実に受け取っておくことが欠かせない。

ドメイン・サーバー 名義が制作会社のまま →更新停止で サイトが突然消滅 ソースコード ログイン情報を 自社が持っていない →更新・引き継ぎ不可 前払い金 保守費用等の 残存期間分 →返還されない

契約前に確認すべき法務項目

著作権の帰属

サイトのソースコード・デザイン・写真などの著作権は、原則として実際に創作した側(制作会社)に帰属する。費用を全額支払ったとしても、契約書に「著作権を発注者に譲渡する」という明文規定がなければ、著作権は制作会社側に残ったままだ。所有権(納品データへの支配権)と著作権(複製・改変・公衆送信できる権利)は別の権利であり、「お金を払ったのだから自社のものだ」という認識は法的には誤りになりうる。著作権が制作会社に残っていると、後から自社でデザインを一部変更したり、別の制作会社にリニューアルを依頼したりする際に、元の制作会社から権利侵害を主張されるリスクがある。

特に注意したいのが、著作権法27条(翻訳権・翻案権等)と28条(二次的著作物の利用に関する権利)だ。これらの権利は、契約書に特掲(具体的に明記)されない限り、譲渡人(制作会社)側に留保されたものと推定される(著作権法61条2項)。単に「著作権を譲渡する」と書くだけでは不十分で、「著作権法27条・28条に定める権利を含む」という一文を契約書に加える必要がある。

なお、すべての制作会社が著作権の完全な譲渡に応じるとは限らない。独自に開発したテンプレートやシステムの一部を複数の顧客に横展開して運用している制作会社は、その部分の著作権を譲渡すると自社のビジネスモデルが成り立たなくなるため、譲渡を拒否することがある。この場合、少なくとも「自社サイトの範囲内で自由に改変・複製・公衆送信できる利用許諾」を契約書で明確にしておけば、実務上の支障はほとんどない。著作権の帰属先そのものより、「自社が将来どこまで自由に触れるか」を具体的に取り決めておくことのほうが実用的な場合もある。

著作者人格権の不行使特約

著作権(財産権)は譲渡できるが、作品への思い入れを保護する「著作者人格権」(公表権・氏名表示権・同一性保持権)は、性質上他人に譲渡できない権利だ。そのため、発注者が将来サイトを自由に改修したり、クレジット表記を変更したりする際にトラブルにならないよう、「受託者は著作者人格権を行使しない」という不行使特約を契約書に盛り込んでおく必要がある。

契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)

2020年の民法改正で、請負契約における「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に再編された。納品物が契約内容に適合しない場合、発注者は修補・代金減額・契約解除・損害賠償を請求できる。ただし判断の基準は「発注者の主観的な期待通りか」ではなく「契約(要件定義書・仕様書)で合意した内容に客観的に適合しているか」だ。対応ブラウザやレスポンシブのブレイクポイントなどを事前に文書で定義しておかなければ、納品後に不適合を主張するのは難しくなる。実務上は、この責任を問える期間を「検収完了日から3〜6ヶ月以内」のように契約で限定するのが一般的で、この期間が自社の動作確認に十分な長さかどうかも契約前に確認しておきたい。

検収の基準についても、事前にすり合わせておく必要がある。「見た目に問題がなければ検収完了」という曖昧な合意のまま進めると、公開後にスマートフォンでの表示崩れや、特定のブラウザでの不具合が見つかった際に、それが契約不適合にあたるのかどうかで意見が食い違いやすい。対応すべきブラウザの種類とバージョン、画面サイズの範囲を、要件定義書の段階で具体的にリストアップしておくことが、検収時の認識のズレを防ぐ最も確実な方法だ。

契約解除時の取り決め

倒産リスクや関係悪化による中途解約に備え、契約終了時にソースコード・デザインの編集可能な元データ・各種ID/パスワード・運用マニュアルを遅滞なく引き渡す義務を契約書に明記しておきたい。経済産業省・IPAが公表している「情報システム・モデル取引・契約書」も、こうした条項を整備する際の参考になる。

失敗しない相見積もりとRFPの活用

1社だけに声をかけるのではなく、複数社から見積もりと提案を受ける相見積もりが基本になる。ただし口頭で曖昧な要望を伝えるだけでは、各社が異なる前提で提案を作るため、公平な比較ができない。これを防ぐのが「RFP(提案依頼書)」だ。

相見積もりの社数は3〜5社程度が目安とされる。少なすぎると比較の材料が不足し、多すぎると各社が「当て馬」と判断してエース級の担当者をつけず、提案の質が下がりやすい。RFPには、なぜ今サイトを作る・作り直すのか、達成したい数値目標、ターゲット層、必須の機能要件、予算の上限額、公開希望日とその理由を盛り込む。専門知識がなくても、自社の課題と条件を文書化するだけで、各社から返ってくる提案の質は大きく変わる。比較する際は、金額だけでなく、課題認識の深さ、提案の妥当性、見積もりの透明性、契約条件の明確さを総合的に見たい。

RFPを作成する過程そのものにも意味がある。「自社のサイトで何を実現したいのか」を文書に落とし込む作業は、多くの場合、社内で一度もきちんと言語化されてこなかった問いに向き合う機会になる。担当者が1人で作るのではなく、経営者や現場の担当者を交えて内容をすり合わせておくと、提案を受けた後の社内の意思決定もスムーズに進みやすい。RFPは制作会社に見せるための書類であると同時に、自社の考えを整理するための道具でもある。

ホームページ制作会社選びについてよくある質問

相見積もりを取るのは失礼にあたりますか

失礼にはあたらない。むしろ一般的な進め方だ。ただし各社に同じ条件(RFP)を提示しないと、比較そのものが成立しなくなる点には注意したい。

今契約している制作会社が倒産しそうか、事前に見分ける方法はありますか

確実な方法はないが、連絡のレスポンスが急に遅くなる、担当者が頻繁に変わる、支払い条件の変更を求められるといった兆候が出ることがある。心当たりがある場合は、早めにドメイン・サーバーの名義とソースコードの所在を自社で確認しておきたい。

既にドメインやサーバーが制作会社名義になっています。今からできることは

制作会社が健全に営業している間であれば、名義変更の相談をすることができる。応じてもらえない場合でも、少なくとも管理画面のログイン情報とAuthCode(移管用の認証鍵)を控えておくことで、いざという時の対応がしやすくなる。

保守契約を別の会社に切り替えることはできますか

できる。ただし切り替え先の会社が既存のサイトの構造を理解し、問題なく引き継げるかどうかは、ソースコードやログイン情報が手元にあるかに大きく左右される。切り替えを検討する段階になって初めて情報が揃っていないことに気づくケースが多いため、保守契約を結んでいる間から、これらの情報を定期的に確認しておく習慣をつけておきたい。

フリーランスに依頼する場合、事業継続リスクにどう備えればよいですか

契約時に、ソースコードとログイン情報を都度受け取れる体制にしておくことが基本になる。加えて、もしもの場合に引き継げる別の担当者や会社の候補を、事前に1つ把握しておくと安心だ。

発注前に確認しておきたい点検表

タイミング 確認項目
比較検討時 RFPを作成し、複数社に同一条件で提示したか
比較検討時 実績サイトが現在も稼働しているか確認したか
契約前 著作権(27条・28条含む)の譲渡が明記されているか
契約前 著作者人格権の不行使特約が入っているか
契約前 契約不適合責任を問える期間が明記されているか
契約前 契約終了時のデータ引き渡し義務が明記されているか
契約時 ドメイン・サーバーの契約名義が自社になっているか
納品後 ソースコード一式・管理者権限を受け取ったか

まとめ:安さより、続けられる関係を選ぶ

Web制作会社選びで見るべきは、初期費用の安さや見た目の綺麗さだけではない。実績の質、提案力、見積もりの透明性、そして公開後も長く付き合える体制があるかを、総合的に見極める必要がある。

特に見落とされがちなのが、発注先が倒産・廃業した場合のリスクだ。ドメインやサーバーの名義、ソースコードとログイン情報の所在を自社が把握しているかどうかで、万が一のときの被害の大きさは大きく変わる。契約書の著作権や契約不適合責任の条項とあわせて、この記事のチェックリストを発注前に確認しておくことが、長く安心して使えるホームページへの近道になる。

すでに制作会社と契約し、運用を始めている場合も、今からできることはある。管理画面のログイン情報を確認し、ドメイン・サーバーの契約者名義を調べ、ソースコード一式が手元にあるかを棚卸しする。この記事のチェックリストは、これから発注する人だけでなく、今のパートナーとの関係を見直したい人にとっても、確認の出発点になるはずだ。

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この記事を書いた人

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合同会社謙虚 代表社員。20代から、売る言葉だけを仕事にしてきました。電話営業で受話器を握っていた時代から、数千社のWEB集客に関わったいままで。詳しいプロフィールはこちら

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