AI検索は、回答の末尾や文中に「出典」のリンクを付けます。では、そのリンク先は、これまでのGoogle検索の結果と同じサイトなのでしょうか。
2025年12月に公開された論文「Source Coverage and Citation Bias in LLM-based vs. Traditional Search Engines」は、この問いを大規模なデータで調べています。
調べたのは、ChatGPT、Gemini、Perplexity、Grok、Google AI Mode、Copilotの6つのAI検索と、GoogleとBingの2つの従来検索です。55,936件の質問を入れて、出てきた出典を比べました。
この記事では、原文を読んだうえで、出典の数と偏り、サイトの人気、信頼度と安全性、選ばれやすいサイトの特徴を整理します。数値は原文の表と本文から拾っています。
合同会社謙虚は、3つのドメインを並行して運用し、何を変えると数字が動くかを測り続けています。この論文は、AI検索がどんなサイトを出典に選ぶのかを、8つの検索サービスで同じ条件で測っているので、自社の測り方を考える材料になります。
結論:3行で言うと
- AI検索は1回の回答で示す出典が少なく(平均で約4件、従来検索は約10件)、それでも両方を合わせたドメインの37%は、AI検索にだけ出ていました
- 出典の質は、従来検索より良いとは言えませんでした。信頼度、政治的な中立性、安全性のいずれでも、AI検索の優位は示されていません
- AI検索だけが引用したサイトには、人気順位が低め、外部リンクが多め、文章が読みやすいという傾向がありました。ただし、観測された相関にとどまり、原因は今後の検証待ちです
この論文の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 題名(原題) | Source Coverage and Citation Bias in LLM-based vs. Traditional Search Engines |
| 著者 | Peixian Zhang、Qiming Ye、Zifan Peng、Kiran Garimella、Gareth Tyson(5名。所属は香港科技大学(広州)とラトガース大学) |
| 公開日 | 2025年12月10日(arXivの第1版) |
| arXiv番号 | 2512.09483(分野はcs.CLとcs.CY) |
| 掲載・採択の状況 | 2026年11月5日に確認した時点で、arXivのコメント欄と掲載誌の欄は空でした。採択の事実は確認できませんでした |
| 種類 | 観測研究(AI検索の出力を集めて比べる。研究者は対象のページに手を加えていません) |
| データ・コード | 本文に「データは研究用に公開する」とありますが、公開先のURLは見当たりませんでした。コードの公開は、記載が見つかりませんでした |
論文はこちらで読めます。arXiv(2512.09483)、DOI(arXivが付与したもの)。
この論文が答えた問い
AI検索は、従来の検索と比べて、どんなサイトを出典に選び、その出典の質はどうなのか。
従来の検索は、順位つきのリンクの一覧を返します。AI検索は、複数の情報を要約して答え、根拠として少数のリンクを添えます。
読者がたどるのはその少数のリンクだけなので、何が選ばれるかが情報の見え方を左右します。論文は、次の3つの問いを立てました。
- AI検索の出典は、従来検索の結果とどう違うか
- 出典の質(信頼度、政治的な偏り、安全性)は、従来検索と比べてどうか
- どんな特徴のサイトが、AI検索に引用されやすいか
どうやって調べたのか
米国で話題のキーワードを2025年7月16日から8月10日まで毎日集め、そこから作った質問とあわせて、8つの検索サービスに入れました。ブラウザを自動で操作し、画面に表示された出典だけを記録しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| AI検索(6つ) | ChatGPT(gpt-5.0-instant)、Gemini(2.5-flash)、Perplexity(Sonar)、Grok(3.0)、Google AI Mode、Copilot。最後の2つはバージョン非公開 |
| 従来検索(2つ) | GoogleとBingの1ページ目。広告は印を付けて区別 |
| 質問の数 | 55,936件。トレンドのキーワード13,112件、関連質問40,543件、議論を呼ぶ質問2,281件(内訳の合計は私の計算で、総数と一致) |
| 集めた量 | 重複を除いて124,287ドメイン、1,418,733のリンク(論文の記載) |
| サイトの評価 | 人気はアクセス人気の順位表、信頼度と政治傾向は民間のニュース評価サイトの採点、安全性はセキュリティ検査サービスの判定 |
用語を2つだけ整理します。ドメインは、サイトの住所の部分(例:example.com)です。
ジニ係数は、偏りを表す0から1の数字で、1に近いほど少数のドメインに出典が集中していることを示します。
信頼度と政治傾向は、ニュースサイトを評価する民間サイトの採点を使っています。信頼度は-10(最も低い)から10(最も高い)、政治傾向は-10(左)から10(右)の目盛りです。
安全性は、2社以上のセキュリティ検査が「危険」と判定したドメインを、危険なドメインと数えています。
結果
出典の数と、偏り
AI検索は、1回の回答に載せる出典が少ないことが分かりました。URLの平均は4.3件(従来検索は10.3件)、ドメインの平均は3.4件(同7.3件)です。
Grokは回答の82%、Geminiは38%で、外部サイトの出典が1件もありませんでした。
ドメインの偏りを示すジニ係数は、AI検索の6つすべてが従来検索より低めでした。ただし、統計的に差があると確認されたのは一部です。
| 検索 | ジニ係数 | 人気順位の平均 | 人気順位の中央値 |
|---|---|---|---|
| Google(従来) | 0.87 | 41,428 | 746 |
| Bing(従来) | 0.89 | 48,125 | 2,412 |
| AI Mode | 0.85 | 43,119 | 1,809 |
| ChatGPT | 0.85 | 40,442 | 713 |
| Copilot | 0.86 | 69,054 | 3,912 |
| Gemini | 0.77 | 64,121 | 3,805 |
| Grok | 0.76 | 42,847 | 2,507 |
| Perplexity | 0.83 | 48,208 | 1,362 |
人気順位は数字が小さいほど人気が高く、大きいほど人気が低いサイトです。出典はAI検索のほうが偏りが小さく、人気の低いサイトも含まれやすい、というのが論文の見立てです。
- ジニ係数の差が統計的に確かめられたのは、GeminiとGrok(GoogleとBingの両方に対して)と、ChatGPT(Googleに対してのみ)です。残りの3つは、差があるとは言えませんでした
- 人気順位の平均が従来検索より低い(数字が大きい)のは、CopilotとGeminiが目立ちます。ChatGPTだけは、GoogleとBingの両方より人気の高いサイトを引用していました
従来検索との重なり
AI検索と従来検索の出典ドメインを合わせると、両方に出てきたものが38%、AI検索だけに出たものが37%でした。残りは従来検索だけ(私の概算で約25%、100-38-37)です。
割合の分母は、両者を合わせたドメイン全体と読めます(図4の3区分が合計100%になるため、という私の推定です)。論文の冒頭には「AI検索の出典の37%が従来検索に無い」という書き方もあり、分母の書き方は揺れています。
同じ会社が運営する検索どうしでも、出典のドメインは30%以上違いました。
重なったドメインに限ると、AI検索がよく引用するのは、従来検索で1位だったサイトでした。1位の割合はBingで23.27%、Googleで14.53%です。
信頼度と政治傾向
信頼度と政治傾向は、ニュース評価サイトに採点があるドメインだけが対象です。採点がついたのは、各検索のドメインのうち9%から29%でした(論文の付録C)。
| 検索 | 信頼度の平均 | 信頼度の中央値 | 政治傾向の平均 | 政治傾向の中央値 |
|---|---|---|---|---|
| Google(従来) | 2.54 | 4.36 | -0.53 | -0.20 |
| Bing(従来) | 4.38 | 6.30 | -1.18 | -0.70 |
| AI Mode | 3.23 | 4.73 | -1.02 | -0.70 |
| ChatGPT | 2.48 | 3.08 | -0.63 | 0.00 |
| Copilot | 2.79 | 4.36 | -0.97 | -0.20 |
| Gemini | 2.16 | -0.55 | -0.73 | 0.00 |
| Grok | 3.17 | 4.73 | -1.25 | -2.40 |
| Perplexity | 2.95 | 4.36 | -1.20 | -0.20 |
- 信頼度の平均が最も高いのはBing(4.38)で、AI検索の6つはどれもそれを下回りました。Googleを上回ったのは、AI ModeとGrokとCopilotとPerplexityです
- Geminiは、引用の41%が百科事典サイト1つに集中し、回答の62%が評価対象のドメイン1つだけを引用していました。信頼度の平均と中央値は、8つの中で最も低い値です
- 政治傾向は、8つすべてが平均でマイナス(左寄り)でした。従来検索も同じです。論文は、Geminiが引用したドメインの6.4%が、左寄りの強い側(極左を含む、-5未満)に入ると報告しています
- Grokは、回答ごとの政治傾向が0(中立)になった回答が16%にとどまり、AI検索6つの中で最も中立性が低い結果でした
安全性
125,555のドメインのうち、危険と判定されたのは439(0.36%)でした。AI検索は出典が少なくても、危険なドメインが混ざる点は従来検索と同程度でした。
| 検索 | 危険なドメインの割合 | 危険ドメインの平均数(1回答あたり) |
|---|---|---|
| Google(従来) | 0.23% | 1.05 |
| Bing(従来) | 0.42% | 1.33 |
| AI Mode | 0.25% | 1.07 |
| ChatGPT | 0.32% | 1.01 |
| Copilot | 0.34% | 1.03 |
| Gemini | 0.26% | 1.56 |
| Grok | 0.34% | 1.11 |
| Perplexity | 0.23% | 1.02 |
割合で見ると、AI検索の多くはGoogleとBingの間に収まりました。1回答あたりの数では、Geminiだけが両方を上回っています(Googleの約1.5倍と、論文は書いています)。
危険なドメインが出た質問は、芸能、人と社会、金融、スポーツの4分野で半分を超えました。身近な話題でも出るということです。
AI検索に選ばれやすいサイトの特徴
最後に、AI検索だけが引用したドメインと、従来検索だけに出たドメインを見分ける予測モデルを作り、何が効いているかを調べました。最も精度が高かったのはXGBoostという手法で、重み付きF1値(予測の当たり具合を表す指標)は0.758でした。
見分けに強く効いたのは、次の3つです(論文のSHAP値という寄与度。括弧内の数字)。
- 人気順位(0.923)。順位の数字が大きい(人気が低い)ほど、AI検索の側に傾きます
- 外部へのリンクの数(0.799)。多いほどAI検索の側に傾きます
- .comのドメインであること(0.623)
ページそのものの特徴も、1万URLを無作為に取り出して比べています。AI検索の出典は、文章が読みやすく(読みやすさの指数は24.15で、従来検索は12.32)、HTMLのタグの階層がやや深い(階層の平均は16段で、従来検索は15段)傾向がありました。
どの差も統計的には有意ですが、分布の差の大きさを示す値は0.02から0.10と小さいものです。論文自身も、タグ数と階層の差を「控えめな増加」と述べています。
論文自身が書いている限界
この論文には「限界」の節が見当たりません。結論の「今後の課題」の中で、次の2点に触れています。
- 画面に表示された出典だけを分析しており、AIが裏で取得した情報や内部の順位づけは、調べる範囲の外
- 広告や有料掲載が出典の選ばれ方に与える影響と、GEO(生成AI向けの最適化)の影響は、今後の課題としている
付録には、評価に使った外部データの対応率も書かれています。ニュース評価サイトの採点は9%から29%、人気順位は45%から57%のドメインにしかつきませんでした。
原文を読んで気づいた点
- 日本語での検証は、行われていません。質問は米国のトレンドから作られ、英語です。信頼度と政治傾向の採点も米国の媒体が中心で、日本のサイトに当てはまるかは、これから確かめる段階です
- 2025年7月から8月の1回の記録です。AI検索は頻繁に作り替えられるため、いまのサービスの振る舞いは、変わっている可能性があります。AI ModeとCopilotは、バージョンも非公開です
- 採点は外部のデータに頼っています。信頼度や安全性は民間サービスの採点・判定を使っています。論文が人手で照合したのは、サイトの分類と安全性の判定で、100件ずつの抜き取りです(一致度は92%と86%)。信頼度と政治傾向の採点は、評価サイトの審査員が付けたものとして、照合されていません。また、採点がつくのはニュース系のごく一部です
- 「多様性が高い」という要約は、一部の検索にしか言えません。ジニ係数の差が確かめられたのは、6つのうち3つです。GeminiとGrokの偏りの低さは、そもそも出典の数が少ないことも影響しているかもしれないと、論文自身が述べています
- 特徴の分析は、相関の分析です。予測モデルは「AI検索だけ」と「従来検索だけ」のドメインを見分けるもので、従来検索側の見分け精度は低めでした(F1が0.45)。サイトを変えると引用が増えるかは、これから試される段階です
- 査読の有無は確認できませんでした。コメント欄に学会名などの記載はなく、arXivのプレプリントとして読むのが安全です。書式は学会論文に近い体裁ですが、それだけでは採択の根拠になりません
- 論文の中で数字が食い違う箇所があります。次の5点です
- ドメインの総数:冒頭は124,287、安全性の節は125,555と書かれています
- 危険と判定されたドメイン:本文は439(0.36%)、付録の閾値の説明は646(0.4%)と書かれています
- 人気順位の表(表2):差の列の一部は、平均値から引き算した値と食い違います。例えばGrokの対Googleは、表が+418.98、平均から計算すると約+1,419(概算)です
- 人気の低さの本文:「CopilotとGeminiは両方の従来検索より22,000超高い」とありますが、表の平均で計算すると、対Bingは約20,900と約16,000(概算)です
- 外部リンクの説明:冒頭は「信頼できる出典への外部リンクが多い」と要約しますが、第6章で測ったのは外部リンクの数だけです
私の見るかぎり、どれも論文の主な結論の向きを変えるものではありません。数字の書き間違いや、要約の言い回しの揺れとみられます。
この記事の数値は、表に載っている値をそのまま使い、差は平均値から自分で計算した場合に「概算」と書いています。
この論文から、言えること・言えないこと
| 言えること(論文の設定で確認された) | 言えないこと(論文では確認されていない) |
|---|---|
| AI検索の出典は、従来検索より少なく、両方を合わせたドメインの37%はAI検索にだけ出ていた | 日本語の質問や日本のサイトでも同じ割合になること |
| 出典の信頼度、政治的な中立性、安全性で、AI検索が従来検索を上回るとは示されなかった | AI検索の出典が、従来検索より劣ること(Bingより低い一方、Googleを上回る検索もある) |
| AI検索だけが引用するドメインは、人気順位が低め、外部リンクが多め、文章が読みやすい傾向があった | サイトをそう作り替えると引用されること |
| 重なったドメインでは、従来検索で1位のサイトがよく引用された | 従来検索で1位になれば、AI検索で引用されること |
| 2025年7月から8月の6つのAI検索では、危険なドメインも出典に出ていた | いまのAI検索で同じ割合になること |
中小企業の視点で、どう受け取るか
ここからは、論文の主張とは別の、私の読み取りです。
1. 従来検索の順位と、AI検索の出典は、別々に測るのが安全です。重なりは4割弱でした。
従来検索での順位を整える作業は、引き続き意味を持つと考えます。ただ、AI検索の出典は別の集合なので、見え方は別に確かめる必要があります。
2. 知名度が低くても、候補から外れるとは限りません。人気順位の低いドメインが、AI検索の側に傾いていました(ChatGPTは例外です)。
小さな会社のサイトが引用されやすいという保証とは、別の話です。
3. 読みやすさや構造の改善は、費用の小さい改善として扱います。差は小さく、因果は確認待ちです。
引用される保証としてではなく、読者にも読みやすいページにするついでの作業と位置づけるのが妥当だと考えます。
4. 引用されたあとの質も、見張る必要があります。出典の質は、従来検索を上回りませんでした。
自社が引用されたかどうかだけでなく、引用先が自社の正しいページか、要約が事実と合っているかも、定期的に確かめるのが現実的です。
この論文は、英語の質問と米国のデータです。日本語で同じ傾向かどうかは、自社の質問で測って初めて分かります。
関連する論文として、GEO原論文の解説では、すでにAIに渡されたページの書き換え効果を扱いました。サーベイ論文の解説と合わせて読むと、今回の「出典に選ばれる前の段階」の位置づけが分かります。
よくある質問
AI検索の出典は、Googleの検索結果と同じドメインになりますか
この論文の測定では、同じではありませんでした。両方を合わせたドメインのうち、両方に出たのは38%で、37%はAI検索だけに出ていました。
ただし、2025年7月から8月の米国の質問での結果です。
Source Coverage and Citation Biasの論文は、小さな会社のサイトが引用されやすいという意味ですか
その読み方は、飛躍があります。人気順位が低いドメインが、AI検索の出典に含まれやすい傾向は見られました。
ただし、人気の低いサイトの中でどんなサイトが選ばれるかは、論文の対象外です。
ChatGPTのように、人気の高いサイトを多く引用する検索もありました。
AI検索に引用されやすいサイトの特徴(読みやすさ、HTML構造、外部リンク)は、サイトを直せば引用が増えるという意味ですか
その読み方も、飛躍があります。論文が示したのは、引用されたサイトと、されなかったサイトの間にある傾向の違いです。
サイトを変えて引用が増えたかどうかは、検証の対象外です。
差の大きさも小さいものでした。読みやすいページは読者のためにもなるので、取り組む価値はありますが、効果は保証されません。
まとめ:今日できる1つのこと
自社の事業でよく聞かれる質問を3つ選び、Googleと、お使いのAI検索の1つに入れてください。出典に出たドメインを、表に書き出します。
自社のサイトが出ているか、出ていないなら、代わりにどんなサイトが出ているかが分かります。まずはそれが、AI検索での自社の見え方を知る最初の一歩です。
この論文は、LLMO論文の一覧の一本です。ほかの論文の解説も、順次公開しています。
この記事に書いたことを、そのまま御社のページに
生成AIに引用されるページを、お話しいただくだけでお作りします。お時間をいただくのは初回15分のヒアリングだけです。まず1ページ、無料でお作りします。
OKが出るまで、何度でも直します。事実が違う、言い回しが硬い、この話は入れないでほしい。どれも遠慮なくおっしゃってください。何度お直ししても、追加の料金はいただきません。
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ページを増やしても問い合わせが来ないなら、原因はページの外にあります。その場合は、下の入口からご相談ください。
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