GEO(生成AI検索で取り上げられやすくするための文章の書き換え)の手法は、これまで主に実験室の中で比べられてきました。2026年10月31日に公開された「Do GEO Gains Survive the Live Web? Evaluating In-the-Wild Visibility Gains of Generative Engine Optimization via LIVE-GEO」は、書き換えた商品ページを実際のウェブに公開し、市販の生成AI検索に順位をつけさせて、その差を測った論文です。
この記事は、論文を原文から読み、何を調べ、どんな数字が出て、どこまで言えるのかを整理します。数値は論文の表と本文から拾い、私が計算した値には「概算」と書きました。
合同会社謙虚は、3つのドメインを並行して運用し、何を変えると数字が動くかを測り続けています。この論文は、書き換えの効果が測り方によってどれだけ変わるかを数字で示しており、自分たちの測り方を点検するために読みました。
結論:3行で言うと
- 5つの書き換え手法のうちCOREが、3つの生成AI検索すべてで、首位率(1位になった割合)が最高でした。商品URLを渡し、価格差を±0.2%にした条件で、値は66.3〜76.3%です
- ただし2つのAI検索が同じ商品を1位に選んだブランドは、組み合わせごとに48.8〜66.3%でした。全体の傾向は残り、ブランドごとの結果は大きく入れ替わっています
- ChatGPTでは、候補URLを渡す順番を変えるだけで、COREの首位率が73.8%から93.8%まで動きました。測り方の設計が、結果の大きさを左右します
この論文の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 題名 | Do GEO Gains Survive the Live Web? Evaluating In-the-Wild Visibility Gains of Generative Engine Optimization via LIVE-GEO |
| 著者 | Runze Kong、Haibo Jin、Xucheng Yu、Xiaoqi Wang、Huimin Zeng、Haohan Wang(6人。所属はミシガン大学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校ほか) |
| 公開 | 2026年10月31日(arXiv:2611.01126 のv1、分野はcs.IR) |
| 掲載状況 | arXivのプレプリントです。arXivのコメント欄は「12 pages, 5 figures, 8 tables」で、学会名や採択の記載は確認できませんでした |
| 種類 | 評価用の基盤(ベンチマーク)の提案と、既存手法の比較実験 |
| データ・コード | 商品情報を公開サイトからダウンロードして書き換え、アップロードできる仕組みだと本文にあります。公開先のURLは、本文には書かれていませんでした |
論文はこちらで読めます。arXiv(2611.01126)。
この論文が答えた問い
実験室で測ったGEOの効果は、実際のウェブに置いたページを生成AI検索が自分で読みに行く場面でも、残るのか。
これまでのGEOの比較は、評価するAIに文章を直接渡す方式か、研究者が組んだ検索の仕組みの中で行われてきました。どちらも、競合する候補があらかじめ決まっています。
実際の生成AI検索は、中身が公開されていない仕組みでページを探し、読んで、並べます。そのため、実験室で出た伸びが現場でも出るのかは、確かめられていませんでした。
どうやって調べたのか
著者たちは、実在しない80のブランドを作り、それぞれの商品ページを実際のウェブに公開しました。商品は「best ○○」と検索されそうな、ふだん目にしない80のカテゴリ(18の商品群)に分かれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 架空の80ブランド。1ブランドにつき6商品(書き換え前の1つと、5手法で書き換えた5つ) |
| 商品どうしの違い | 仕様は同じです。違うのは説明文と、7件ある口コミの文章、そして価格のわずかな差(基準価格の±0.2%以内)だけです |
| 比べた5手法 | CORE、C-SEO、E-GEO、AgenticGEO、Statistics Addition。いずれも公開されているプロンプトやコードから再現したと書かれています |
| 生成AI検索(3つ) | ChatGPT(GPT-6)、Gemini(3.6 Thinking)、Grok(Expertモード)。ウェブの画面から使っています |
| 文章を直接渡す評価器(5つ) | GPT-4o、DeepSeek-V4-Pro、Kimi K2.6、Claude Sonnet 5.5、Qwen2.5-3B-Instruct。ウェブにはつながらず、書き換え後の文章をそのまま読みます |
| 質問 | 「best ○○」。6商品のページを開いて読んでから、1位から6位までの順位を返させます |
| 主な指標 | 首位率(1位になった割合)、平均順位、スピアマンの順位相関(2つの順位表の似かたを-1から1で表す値)の平均、同じ商品が1位になった割合 |
5つの手法のうち、COREは以前の記事で解説した、AIの返す順位を見ながら文章を直していく手法です。E-GEO、AgenticGEO、C-SEO Bench(論文はその中の「内容の改善」の手法を、C-SEOと呼んでいます)も、それぞれ別の記事で解説しました。
Statistics Additionは、GEO原論文にある、文章に統計を足す手法です。
条件は、次の4種類を動かしています。
- 商品URLを6本渡すか、ブランドのページ1本だけ渡すか
- 候補URLの並び順
- 手法名を伏せた別名に置き換えるか(名前の影響を見るため)
- 価格を同額にするか、±0.2%の差をつけるか
書き換えた説明文の数字は、仕様と食い違っていないかを、JEVという検査モデルで確かめています。これを「数値の忠実性チェック」と呼びます。
結果
1. 手法の順位は、おおむね同じ方向に出た
商品URLを渡し、価格差を±0.2%にした条件では、8つの評価器のうち7つでCOREの首位率が最高でした。生成AI検索3つでの値は次のとおりです。
| 評価器 | COREの首位率 | COREの平均順位 |
|---|---|---|
| ChatGPT | 76.3% | 1.74 |
| Grok | 67.5% | 2.21 |
| Gemini | 66.3% | 2.01 |
| DeepSeek(文章を直接渡す) | 82.5% | 1.34 |
| GPT-4o(同上) | 57.5% | 2.25 |
| Kimi(同上) | 56.3% | 2.64 |
| Qwen(同上) | 23.8% | 2.96 |
| Claude(同上、n=78) | 2.6% | 5.56 |
- 生成AI検索3つでの、COREと2番手の手法との首位率の差は、56〜66ポイントです(論文の表1の差の列では56.2〜66.3)
- Claudeだけは逆で、書き換え前の商品が44.9%で首位、E-GEOが41.0%でした。COREは平均順位では5手法の中で最下位でした。ClaudeのAPIは80ブランド中2ブランドで回答を拒否したため、n=78です
- Qwenは小型のモデルで、COREは首位でしたが、手法どうしの差はほとんど開いていません
2. ブランドごとの首位は、AIによって入れ替わった
全体では同じ傾向でも、1つ1つのブランドで見ると、AIによって選ぶ商品が違いました。
| 比べた2つ | 順位相関(平均) | 同じ商品が1位 |
|---|---|---|
| ChatGPTとGrok | 0.48 | 66.3% |
| ChatGPTとGemini | 0.37 | 57.5% |
| GrokとGemini | 0.32 | 48.8% |
| DeepSeekとChatGPT | 0.50 | 66.3% |
| ClaudeとChatGPT | -0.22 | 9.0% |
- 文章を直接渡す評価器のうち、生成AI検索に最も近かったのはDeepSeekでした。ChatGPTとの一致は、生成AI検索どうしの一致と同程度です
- Claudeは、3つの生成AI検索すべてと負の相関(-0.31から-0.22)でした。理由は論文に書かれていません
- 論文は、全体の傾向の一部は実際のウェブでも残る一方、ブランドごとの伸びの多くは残らないとまとめています
3. 候補URLの順番と、名前の隠し方で、首位率が動いた
ChatGPTでは、価格を同額にしてURLの並び順だけを変えると、COREの首位率は次のように動きました。
| 条件(ChatGPT、価格は同額) | COREの首位率 |
|---|---|
| 書き換え前の商品が先頭の順 | 73.8% |
| シャッフルした順(LIVE-GEOの標準) | 82.5% |
| 同じ設定でもう一度測った結果 | 83.8% |
| その逆順 | 93.8% |
| 手法名を別名に置き換えた条件 | 76.3% |
- 逆順では、COREのURLが先頭に並びます。先頭に近い位置が有利に働いた可能性は、私の読み取りです。論文は理由を説明していません
- 同じ文章・同じ順番でもう一度測ると、順位の相関は0.85、同じ商品が1位になったブランドは80.0%でした。繰り返しには強く、見せ方の違いには弱いという結果です
- Grokでは、2つの固定順でCOREの首位率が37.5%と50.0%、Geminiでは23.8%と28.8%でした。Geminiの固定順では、首位率の最高はCOREではなく、E-GEOの30.0%という条件もありました
- 価格差を同額から±0.2%に変えると、ChatGPTのCOREは82.5%から76.3%、Geminiは82.5%から66.3%に動きました。それでも首位の手法はCOREのままです
- ブランドのページ1本から商品を探させると、ChatGPTのCOREは46.3%でした。商品URLを6本渡した76.3%より、30.0ポイント低い値です
4. 数字の食い違いを印づけると、順位はどう変わったか
JEVは、書き換えた400件の説明文のうち、86件に「数字が仕様に裏づけられていない」という印をつけました。
印の内訳は、Statistics Additionが80件すべて、AgenticGEOが3件、E-GEOが2件、COREが1件、C-SEOが0件です。
- Statistics Additionの指示は、説得力のある統計を求め、仮の数字も許す内容でした。論文は、「熱の保持が18%向上」のような、仕様にない数字が多いと述べています
- 印のついた商品を、印のない商品の後ろに並べ直すと、Statistics Additionの首位率は並べ替えを行ったすべての条件で0%になりました。ChatGPTのCOREは82.5%から86.3%に上がっています
- 検査モデルの確かめ方は2つです。既存の数値検証用データから選んだ194件では、正解ラベルと176件(90.72%)で一致しました。人間3人が説明文50件を見た多数決とは、50件すべてで一致しています
論文自身が書いている限界
この論文には、限界だけをまとめた独立の節がありません。本文と表の注記から、著者たち自身が書いている制約や取り決めを拾います。
- 候補の並び順で結果が変わることは、著者が自分で示しています。そのため、LIVE-GEOは並びをブランドごとにランダムにして、同じ順番を繰り返しの測定で保つ設計にしています
- Claudeは2ブランドで回答を拒否したため、n=78で集計しています
- 数値のチェックは助言の印にとどまり、商品の却下や文章の削除はしません
- 差の区間は、検定を何本もかけたときの補正をしていないと、表の注記にあります
- 人手の確認では、4人目のレビュアーを後から除いています。含めると一致の度合い(カッパ係数)は0.96から0.53に下がり、多数決の結果は変わらないと書かれています
原文を読んで気づいた点
- 査読の有無:arXivのプレプリントで、学会名の記載は確認できませんでした。査読を経た結果とは、まだ言えません
- 日本語の検証:質問や指示文は英語で示され、日本語での実験は書かれていません
- 実際の検索との違い:架空のブランドと珍しいカテゴリで、6つの商品がすべて同じサイトにあります。URLは評価側から渡されるか、ブランドのページから辿ります。そのため、検索でページが見つかるかどうかや、実在ブランドの知名度は、この実験に含まれていません。クリックや売上も測っていません
- 自動採点:順位はAIの出力です。人手で確かめたのは、数値のチェックの50件だけです
- 手法の間の条件:COREだけが、ChatGPTで観測した順位を最適化に使う最終段階を経ています。COREの先行研究の著者陣(参考文献13)と、この論文の著者が重なってもいます。5手法の首位率の差は、手法そのものの強さに加え、最適化にかけた手間の差も含むと考えられます。これは私の読み取りです
- 測定の範囲:同じ条件の繰り返しはChatGPTでしか確かめていません。Geminiはブランドのページ1本の条件を測っていません。生成AI検索は、論文の時点のウェブ画面での結果です
この論文から、言えること・言えないこと
| 言えること | 言えないこと |
|---|---|
| この実験の範囲では、COREの首位率が、3つの生成AI検索で最高だった | COREがどのサービス・どの業種でも一番効く |
| 全体の傾向は似ていても、ブランドごとの1位はAIによって入れ替わった | 1つのAIで首位になれば、ほかのAIでも首位になれる |
| ChatGPTでは、候補の並び順だけでCOREの首位率が73.8%から93.8%まで動いた | 実際の検索で、上位に出る順番が同じように動く |
| 仕様にない数字を足した説明文は、印をつけて後ろに回すと首位率が0%になった | 実際のAIが、根拠のない数字を同じように下げる |
| 文章を直接渡す評価器の結果は、評価器ごとに大きく違った | 文章を直接渡す方式の結果で、生成AI検索の結果を代用できる |
| 架空ブランド80社・5手法・8評価器の範囲で、上のことが確かめられた | 日本語や実在の企業のページでも、同じことが起こる |
中小企業の視点で、どう受け取るか
ここからは論文の主張とは別の、私の読み取りです。
- 1回の結果で効果を判断しない。この論文では、同じ設定の繰り返しは安定しましたが、候補の並びや名前の見え方を変えると、首位率が20ポイント動きました。自社の書き換えを測るときも、条件を変えた複数回の結果で見る方が安全です
- 1つのAIの結果を、ほかのAIに持ち込まない。3つの生成AI検索が選ぶ1位は、ブランドごとに半分近く違いました。測る対象のAIは、自社のお客様が実際に使うものに絞るのが現実的です
- 根拠のない数字は、足さない。この実験では、仕様に裏づけのない数字を足した説明文が、印づけの後にほぼ最下位(平均順位5.95〜5.96)へ回りました。実際のAIが同じ扱いをするかは未確認ですが、数字は自社の実績や仕様の範囲で書く方針は、読み手に対しても安全です
- 手法名で選ばず、自社の測定で選ぶ。英語・架空ブランド・自動採点の結果なので、日本語のページで同じ順位になるかは分かりません。小さく試して、同じ質問を同じ手順で測り直すのが確実です
よくある質問
LIVE-GEOは、なぜ実在しない架空のブランドを使ったのですか
論文は、既存のブランドやページの影響を減らすためだと説明しています。ふだん目にしない80のカテゴリを選び、1カテゴリに1ブランドを置いています。
同じブランドの商品は仕様が同じなので、順位の差は説明文と口コミの違いから生まれます。
その代わり、実在ブランドの知名度や、既存ページの評価といった要素は、この実験では扱えていません。
LIVE-GEOで比べた5つのGEO手法のうち、首位率が最高だった手法はどれですか
商品URLを渡し、価格差を±0.2%にした条件では、ChatGPT、Grok、Geminiのすべてで、COREの首位率が最高でした(66.3〜76.3%)。ただし、Claudeでは書き換え前の商品が首位で、Geminiの一部の固定順ではE-GEOが最高でした。
COREだけが最終段階でChatGPTの順位を最適化に使っている点にも、注意が必要です。
LIVE-GEOの数値の忠実性チェックは、誤った数字を自動で直しますか
直しません。JEVが印をつけるだけで、文章の削除や商品の却下、順位の自動変更はしません。
印のついた商品を後ろに並べ替える方法は、利用者が自分で選ぶ使い方として紹介されています。
論文の実験では、この並べ替えを行った条件を、通常の条件とは別に集計しています。
まとめ:今日できる1つのこと
自社の主力商品に関する質問を1つ決めて、同じAIに、候補の並びを変えながら3回聞いてみてください。
毎回同じ商品が1位に出るかを記録すれば、自社の測り方がどれだけ安定しているかが分かります。
この論文は、LLMO論文の一覧の一本です。ほかの論文の解説も、順次公開しています。
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