「メルマガを送ったのに、開封が急に減った」。
「営業メールが、相手の迷惑メールフォルダに入っているらしい」。
「配信ツールの設定画面にSPFやDMARCと出てきたが、何をすればよいのか分からない」。
中小企業の担当者から、こうした相談を受ける機会が増えました。
この記事では、メールが届かなくなる原因を、受信側の要件、送信ドメイン認証、法律の3つに分けて整理します。
GmailとYahooの要件、特定電子メール法の内容は、各社と官公庁の公式資料を、2026年10月17日に開いて確かめました。
数字と期日は、公式資料に書かれている範囲だけを使っています。
法律に関わる部分は一般的な整理であり、法的助言ではありません。
個別の判断に迷うときは、総務省や消費者庁の窓口、弁護士などの専門家に相談してください。
先に結論 届くかどうかは「宛先・表示・認証・配信停止」で決まる
最初に、確認する項目ごとの結論を表にまとめます。
| 確認すること | 根拠 | 小さな会社の結論 |
|---|---|---|
| 個人用Gmailあての送信すべて | Googleのメール送信者のガイドライン | SPFかDKIMのどちらか、TLS接続、正引きと逆引きのDNS、迷惑メール率0.3%未満 |
| 1日に5,000件近く以上の送信 | 同上 | SPFとDKIMとDMARCの3つ、ワンクリックの配信停止、Fromのドメインの一致 |
| Yahoo!メール(米国のYahoo) | Yahooの送信者向け要件 | 全送信者にSPFかDKIM、大量送信者にSPFとDKIMとDMARC |
| 広告宣伝メールを送る相手 | 特定電子メール法 第3条 | 原則は事前の同意。例外は3つ |
| 広告宣伝メールの本文 | 同法 第4条 | 正式な名称、配信停止の連絡先、住所、問合せ先 |
この記事の要点は、次の3つです。
- Gmailの要件は2024年2月1日から、個人用Gmailあての送信に適用されています。
- 日本の法律では、広告宣伝メールは原則として、事前に同意を得た相手にだけ送れます。
- 対策の中心は、同意の記録、送信元の認証、配信停止の手間を減らすことの3点です。
「届かない」の原因は3つの層に分かれる
層ごとに、見る場所が違う
メールが届かないとき、原因が1つとは限りません。
相手のサーバーが拒否している場合、認証の設定が崩れている場合、そもそも送ってはいけない相手に送っている場合があります。
層を分けておくと、どこから手を付けるかが決まります。
| 層 | 起きること | 確かめる場所 |
|---|---|---|
| 受信側の要件 | 迷惑メールフォルダへの振り分け、一時的な拒否 | Postmaster Tools、返ってきたエラーコード |
| 送信ドメイン認証 | 認証に失敗し、判定が下がる | DNSの設定、配信ツールの設定画面 |
| 法律 | 措置命令の対象になりうる | 同意の記録、メール本文の表示 |
配信ツールを使っていても、責任は送る会社にある
配信ツールやメール配信サービスを使っている会社は多いはずです。
総務省と消費者庁のガイドラインは、配信事業者の位置づけを説明しています。
メールを発信する操作をせず、送信のためのシステムを提供しているだけの事業者は、法律上の「送信者」にあたりません。
つまり、同意を取ったか、本文に必要な表示があるかを確かめるのは、メールを送る会社です。
認証の設定も同じで、ツールの案内に沿って、自社のドメインのDNSに設定を足す作業が必要になります。
この記事で扱う範囲
この記事は、広告宣伝を目的としたメルマガと営業メールを中心に扱います。
注文確認やパスワードの再設定のような取引のメールは、Googleの資料でも別の扱いになっています。
迷惑メールを受け取る側の対策や、フィッシングの見分け方は、扱いません。
メールマーケティングそのものの進め方は、次の記事で整理しています。
BtoB中小企業のメールマーケティング実務 メルマガとステップメールの使い分け、シナリオ例、効果測定まで
Gmailの送信者要件
対象になるのは個人用Gmailあての送信
Googleのガイドラインは、個人用Gmailアカウントにメールを送るときの要件を定めています。
個人用Gmailアカウントとは、末尾が gmail.com または googlemail.com のアドレスです。
Google Workspaceのアドレスあての送信と、同じドメインの中のメールには、この要件は適用されない、とFAQに書かれています。
ただし、Workspaceのアカウントから送るメールでも、個人用Gmailあてなら要件を守る必要があります。
お客様や見込み客の多くが個人用Gmailを使っているなら、中小企業でも影響を受けます。
すべての送信者に求められること
2024年2月1日以降、Gmailアカウントにメールを送るすべての送信者は、次の項目を満たす必要があります。
- 送信元ドメインにSPFまたはDKIMのメール認証を設定する
- 送信元のドメインまたはIPに、有効な正引きと逆引きのDNSレコード(PTRレコード)を用意する
- メールの送信にTLS接続を使う
- Postmaster Toolsで報告される迷惑メール率を0.3%未満に保つ
- Internet Message Formatの標準(RFC 5322)に沿った形式でメールを作る
- GmailのFromヘッダーをなりすまさない
最後の項目は、見落とされやすい点です。
自社のメルマガを、gmail.comのアドレスを差出人にして配信ツールから送ると、Gmailのサーバーから出ていないのにGmailのアドレスを名乗ることになります。
差出人は、自社のドメインのアドレスにします。
1日に5,000件近く以上を送る場合の追加項目
「一括送信者」に分類されると、次の項目が加わります。
| 追加の項目 | 内容 |
|---|---|
| 認証 | SPFとDKIMの両方を設定する |
| DMARC | 送信元ドメインにDMARCを設定する。ポリシーはnoneでよい |
| ドメインの一致 | Fromのドメインが、SPFのドメインかDKIMのドメインと一致している |
| 配信停止 | マーケティングのメールと配信登録のメールは、ワンクリックで解除できる。本文に配信停止のリンクも置く |
DMARCのポリシーは、noneのまま始められると明記されています。
最初から厳しい設定にする必要はありません。
「一括送信者」はどう数えるのか
ガイドラインの本文は、Gmailアカウントに1日あたり5,000件を超えるメールを送る送信者、と書いています。
FAQは、個人のGmailアカウントに24時間以内に5,000件近く、あるいはそれ以上を送るユーザー、と書いています。
表現が少し違うので、件数が近い会社は、一括送信者として備えておくと安心です。
数え方には、次の決まりがあります。
- 同じプライマリドメインから送ったメールは、すべて合算される
- 本体のドメインとサブドメインに分けて送っても、同じプライマリドメインとして合算される
- 一度でも条件を満たすと、恒常的に一括送信者とみなされる
- ステータスに有効期限はなく、送り方を変えても外れない
まだ件数が少ない会社でも、SPF、DKIM、DMARCの3つは最初から入れておくほうが、後から慌てずに済みます。
Googleも、すべての送信者にこの3つを常に設定することを勧めています。
守れなかったときに起きること
Googleは、2025年11月から、要件を満たしていない送信元への違反措置を強化している、とFAQに書いています。
配信が中断され、一時的な拒否や永続的な拒否などの措置が取られることがあります。
FAQの表を、措置の種類で2つにまとめます。
| 要件を満たしていない内容 | 措置 |
|---|---|
| Fromと認証が一致しない、SPFとDKIMの両方で認証されていない、正引き・逆引きDNSがない、TLSで送られていない、RFC 5322に沿っていない | 一時的または永続的なエラーコード、または迷惑メールフォルダへの振り分け |
| 迷惑メール率が0.3%を超えている、DMARCがない、ワンクリックの配信停止がない、解除の依頼が48時間以内に反映されない | 配信サポートや緩和策を利用できなくなる |
エラーコードで原因を読む
メールが拒否されると、拒否のコードと理由が返されます。
先頭が4で始まるコードは一時的なレート制限、5で始まるコードはブロックを示します。
| コード | 原因 |
|---|---|
| 4.7.23 と 5.7.25 | 送信元IPのPTRレコードがない、または正引きと一致しない |
| 4.7.27 と 5.7.27 | SPF認証に失敗した |
| 4.7.29 と 5.7.29 | TLS接続を使っていない |
| 4.7.30 と 5.7.30 | DKIM認証に失敗した |
| 4.7.31 | DMARCのレコードがない、またはポリシーが指定されていない |
| 4.7.32 | FromヘッダーがSPFまたはDKIMのドメインと整合していない |
返ってきたコードを、配信ツールの担当窓口に伝えると、原因の特定が早くなります。
Yahoo!メールの要件 米国のYahooと日本のYahoo!メールは別
米国のYahooが定めた送信者要件
Yahooの送信者向けの資料は、2024年2月から要件の運用が始まり、監視しながら段階的に広げる、と説明しています。
配信停止ヘッダーの要件の運用は、2024年6月からです。
Gmailと似た内容ですが、数字と用語が少し違います。
| 区分 | 求められること |
|---|---|
| すべての送信者 | SPFかDKIMを実装する。迷惑メール率を0.3%未満に保つ。正引きと逆引きのDNSを用意する。RFC 5321と5322に従う |
| 大量送信者 | SPFとDKIMの両方を実装する。DMARCのポリシーを公開する(最低限none)。FromのドメインをSPFかDKIMのドメインと一致させる |
| 大量送信者の配信停止 | List-Unsubscribeヘッダーでワンクリック解除に対応する。本文に見えるリンクも置く。解除は2日以内に反映する |
Yahooは、大量送信者の件数の基準を公表しない、とFAQで答えています。
なりすまされたメールの件数も、判断に使う対象に含まれます。
日本のYahoo!メールとの関係
Yahooの資料には、この要件はYahoo Mailが運営するドメインとブランドに適用される、と書かれています。
日本のYahoo!メールについては、別の会社であり、計画は分からない、とも書かれています。
日本のYahoo!メールを運営するLINEヤフーのヘルプには、別の説明があります。
メール送信者に、送信ドメイン認証への対応を推奨する内容です。
SPFかDKIM、またはDMARCの認証を導入していないメールや、判定がクリアでないメールは、迷惑メールと判定したり受信を拒否したりする場合がある、と書かれています。
この説明の時点は、2024年12月と書かれています。
日本のYahoo!メールあてにも、米国の要件と同じ水準で認証を整えておくと、実務では迷いません。
なお、日本のYahoo!メールのDMARCの説明ページには、DMARCレポートの送信には対応していない、という注記があります。
DMARCのレポートを受け取る設定をしても、日本のYahoo!メールの分は届かない点を、頭に入れておきます。
送信ドメイン認証の設定は、この順番で進める
最初に、誰がどのメールを送っているかを書き出す
認証の設定で最初に必要なのは、自社のドメインを使ってメールを送っている場所の一覧です。
たとえば、社員のメールソフト、メルマガの配信ツール、問い合わせフォームの自動返信、請求書や予約の通知の仕組みが挙がります。
一覧にない送信元が、後から認証に失敗する原因になります。
SPF 送信できるサーバーを宣言する
SPFは、ドメインのDNSに、そのドメインのメールを送ってよいサーバーを書いておく仕組みです。
TXTレコードで公開し、レコードは必ず v=spf1 で始まります。
Googleのヘルプには、次の注意が書かれています。
- 1つのドメインに設定できるSPFレコードは1つだけで、複数あると迷惑メール扱いになることがある
- DNSの参照(include、a、mxなど)は最大10回まで。入れ子の参照も数える
- 配信ツールを増やしたら、そのツールのドメインを、同じレコードに足す
DKIM 署名で、改ざんされていないことを示す
DKIMは、送信側がメールに電子署名を付け、受信側が検証する仕組みです。
配信ツールの多くは、DNSに登録する値を設定画面に表示します。
その値をDNSに登録し、ツールの画面で有効にします。
鍵の長さについて、GoogleもYahooも、1,024ビット以上を求めています。
どちらも、可能なら2,048ビットを勧めています。
DMARC まず、監視から始める
DMARCは、SPFやDKIMで認証できなかったメールを、受信側がどう扱うかを送信側が指示する仕組みです。
DMARCに合格するには、SPFかDKIMの少なくとも一方で認証され、認証されたドメインがFromのドメインと一致している必要があります。
Googleは、導入の手順を次のように勧めています。
- 最初の1週間は、ポリシーをnoneにする。メールは通常どおり届く
- 日次のレポートを見て、送信元の問題を洗い出す
- 問題がないと分かったら、ごく一部のメールからquarantineに切り替える
- 必要に応じて、割合を増やす。rejectも選べる
報告を受け取るメールアドレスは、ruaというタグで指定します。
DNSに入れる値の形
DNSに登録するレコードの形を、架空のドメイン example.jp で示します。
下の値は例です。実際の値は、配信ツールと自社のドメイン管理画面の案内に従ってください。
| 種類 | 名前の例 | 値の例 |
|---|---|---|
| SPF(TXT) | example.jp | v=spf1 include:spf.mail.example.jp ~all |
| DMARC(TXT) | _dmarc.example.jp | v=DMARC1; p=none; rua=mailto:dmarc@example.jp |
Googleは、SPFの末尾に ~all を使うことを勧めています。
ドメインの管理画面によっては、名前の欄に自社のドメインが自動で付きます。
登録の後に、形が正しいかを必ず見直します。
ワンクリックの配信停止を実装する
ヘッダーに2行を足す
GmailもYahooも、マーケティングのメールには、ワンクリックで解除できる仕組みを求めています。
仕組みの中心は、メールのヘッダーに足す2つの行です。
| ヘッダー | 入れる内容 |
|---|---|
| List-Unsubscribe-Post | List-Unsubscribe=One-Click という固定の文字 |
| List-Unsubscribe | 配信停止のためのHTTPSのURL |
受信者が受信画面の解除ボタンを押すと、受信側のサーバーが、そのURLに向けてPOSTという形の要求を自動で送ります。
仕様を定めたRFC 8058には、守るべき点が書かれています。
- List-UnsubscribeにはHTTPSのURLを1つ含める
- メールには有効なDKIM署名を付け、2つのヘッダーも署名の対象にする
- URLは、受信者とリストを特定できる情報を含む
- 配信停止のURLは、リダイレクトを返さない
GoogleとYahooは、ヘッダーとあわせて、本文に目に見える配信停止のリンクを置くことも求めています。
配信停止の対象になるメール
ワンクリックの解除が必要なのは、マーケティングや配信登録のメールです。
パスワードの再設定、予約の確認、フォーム送信の確認のようなトランザクションのメールは、対象から除かれます。
どちらに当たるかは、業界や規制によって変わり、メールの性質は受信者が判断する、とGoogleは説明しています。
迷ったときは、配信停止の手段を付けておくほうが、迷惑メールの報告を減らせます。
Yahooも、法律で義務づけられていないメールでも、苦情が多いなら解除の手段を足すことを勧めています。
解除の依頼は、2日以内に反映する
Googleのガイドラインは、登録解除のリクエストを48時間以内に処理するよう求めています。
Yahooは、解除を2日以内に反映するよう求めています。
配信ツールを複数使っている会社は、配信停止の依頼が、すべてのツールの配信リストに反映される流れを作ります。
1つのツールで止めたつもりでも、別のツールから届き続けるのは、よくある失敗です。
Gmailの画面では、解除のボタンやリンクは、Googleの自動チェックを通ったメールにだけ、送信者名の横に表示されます。
ヘッダーを正しく入れても、すぐに表示されない場合があります。
迷惑メール率を見張る
Postmaster Toolsを使う
迷惑メール率は、Postmaster Toolsで確かめられます。
Postmaster Toolsは、個人用Gmailあての送信について、迷惑メール率、認証、配信エラーなどのデータを見られるGoogleの道具です。
使うには、DKIMかSPFに使っているドメインを追加し、DNSに確認用のレコードを登録して、ドメインの所有権を証明します。
証明が済むまで、データは表示されません。
コンプライアンスステータスのダッシュボードでは、送信者の要件を満たしているかを見られます。
表示は、リアルタイムではありません。
通常は24時間以内に更新されますが、移動平均のため、設定を直しても反映に数日かかる場合があります。
Googleは、7日経ってから最新の状態を見るよう案内しています。
メールの数が少ないと、「データが見つかりません」と表示され、評価されません。
迷惑メール率の目安
Googleは、ユーザーが報告した迷惑メール率を0.1%未満に抑え、決して0.3%以上にしないよう求めています。
0.1%を超えると、受信トレイへの配信に悪影響が出始めると、FAQに書かれています。
0.3%を超えている間は、一括送信者は緩和の申し立てができません。
7日連続で0.3%未満を保てば、申し立てができるようになります。
迷惑メール率を下げる近道は、配信を希望した人にだけ送り、解除しやすくすることです。
Googleのガイドラインも、受信者がメールの配信を許可していることを確認し、登録前にアドレスの持ち主を確かめるよう勧めています。
古い画面は廃止の予定
Googleは、以前のPostmaster Toolsの画面(v1)は最終的に廃止される予定で、新しい画面(v2)への移行を勧めています。
サポートの終了は延期されており、時期は追って知らせる、とヘルプに書かれています。
なお、ドメインとIPの評価のダッシュボードは廃止されます。
新しい画面には、コンプライアンスのダッシュボードがあります。
Yahooの苦情フィードバックループ
米国のYahooには、受信者が迷惑メールとして報告したときに、送信者へ通知が返る仕組みがあります。
大量に送る会社は、自社のドメインを登録して、苦情を監視するよう、Yahooは案内しています。
配信サービスを使っている場合は、配信会社が登録を代行していることが多い、とされています。
登録の状況を、配信会社に確かめます。
特定電子メール法 広告宣伝メールを送るときの決まり
対象になるメールの範囲
特定電子メール法は、営利を目的とする団体と、営業を営む個人が送る広告宣伝のメールを対象にしています。
自社の営業についても、他社の営業についても、広告や宣伝を行うための手段として送るメールが「特定電子メール」です。
総務省と消費者庁のガイドラインは、対象になる例と、ならない例を挙げています。
| 区分 | ガイドラインの例 |
|---|---|
| 対象になる | 営業上のサービスや商品を広告するウェブサイトへ誘導することが、送信の目的に含まれるメール |
| 対象になる | SNSへの招待や懸賞の当選通知を装って、営業目的のウェブサイトへ誘導するメール |
| 対象にならない | 取引条件の案内や料金請求の知らせで、広告も誘導も含まないメール |
| 対象にならない | 広告も誘導も含まない、時候のあいさつ |
| 対象にならない | 政治団体、宗教団体、NPO法人、労働組合などの非営利団体が送るメール |
総務省のページには、電話番号を宛先にするSMSなども電子メールの通信方式とされ、広告宣伝のSMSも原則として対象になる、と書かれています。
事業者あての営業メールも、この法律の対象に含まれます。
事業者どうしのメールには、後で説明する「公表アドレス」の例外が用意されています。
原則は「事前の同意」 オプトイン
法第3条第1項は、送信者は次の者以外に特定電子メールを送ってはならない、と定めています。
最初に挙げられているのが、あらかじめ送信を求める旨、または送信に同意する旨を通知した者です。
ガイドラインは、同意が得られたといえる条件を2つ挙げています。
- 通常の人間が、広告宣伝メールが送られることを認識できる形で説明されている
- 賛成の意思表示があったといえる
同意の取り方で、失敗しやすい点
ガイドラインは、適切とはいえない同意の取り方を、具体的に挙げています。
- 利用規約の中の記載が、極めて小さい文字や目立たない色で書かれている
- 規約が長く、画面を何度もスクロールしないと見つからない場所に書かれている
- 「関連サイトから広告メールが送信されます」とだけ書き、送信者を特定していない
送信者が誰かを、受信者が分かる形で示すことが大切です。
展示会や広告媒体を通じて集めたアドレスには、特に注意が必要です。
第三者を通じて同意を取るとき、別の特定の送信者から送られる旨が表示されていなければ、同意の通知にはあたらないと、ガイドラインは述べています。
チェックボックスとダブルオプトイン
同意のチェックボックスに、あらかじめチェックが入っている状態を「デフォルトオン」と呼びます。
ガイドラインは、デフォルトオンかオフかだけで同意の有無が決まるわけではない、と説明しています。
それでも、受信者の意思がより明確になるのはデフォルトオフです。
可能な場合は、デフォルトオフを勧めています。
「ダブルオプトイン」は、登録されたアドレスに確認のメールを送り、本人の操作があって初めて同意を確定する方法です。
なりすましによる登録を防ぎたい場合や、同意の有無を後で証明したい場合に、ガイドラインは実施を勧めています。
確認のメールには、広告宣伝の内容を入れません。
ただし、メルマガの購読のように、簡単な登録を求められるサービスでは、ダブルオプトインが負担になる場合もある、とも書かれています。
同意がなくても送れる3つの例外
例外の一覧
法第3条第1項の第2号から第4号は、同意の通知がなくても送れる相手を定めています。
| 例外 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| アドレスの通知 | 第2号 | 書面などで、自分のメールアドレスを送信者に通知した者。名刺の交換が典型 |
| 取引関係 | 第3号 | 広告に係る営業を営む者と、取引関係にある者 |
| アドレスの公表 | 第4号 | ウェブサイトなどでアドレスを公表している団体、または営業を営む個人 |
名刺を受け取った相手に、営業メールを送ってよいか
アドレスの通知は、名刺などの書面で行うのが原則です。
ただし、通知の相手方となる送信者が特定されている必要があります。
「第三者からメールを送ることがあります」のような表示では、送信者が特定されず、通知とは扱われない、とガイドラインは述べています。
取引関係の範囲
ガイドラインは、取引関係を、明示の拒否がなければ広告が送られることを許容していると、社会通念上認められる関係と説明しています。
一度の購入だけでは、継続的な関係とはいえない場合があります。
以後の購入が予定されているなら、外形的に判断して取引関係にあたる場合もある、とされています。
公表アドレスへの営業メール
事業者どうしの営業では、ウェブサイトで公開されている問い合わせ先のアドレスに、広告宣伝のメールを送る場面があります。
ガイドラインは、このような営業は実態として行われており、一定の範囲でビジネスの慣習としても認められている、と説明しています。
ただし、アドレスと併せて、特定電子メールの送信を拒否する旨がウェブ上に書かれている場合は、公表の例外にあたりません。
拒否の文言の例として、ガイドラインは「特定電子メール」「広告メール」などの語と、「拒否」「お断り」などの語を組み合わせたものを挙げています。
営業メールを送る前に、相手のサイトに拒否の表示がないかを、必ず確かめます。
営業を営んでいない個人のアドレスには、この例外は使えません。
自社の案内に、同じ表示を置く方法
営業メールを受け取りたくない会社は、問い合わせ先のアドレスのすぐ近くに、送信を拒否する旨を書いておくことができます。
迷惑メール相談センターのページにも、同じ趣旨の説明があります。
自社のサイトに表示を置くかどうかは、営業メールの受け取り方の方針とあわせて決めます。
同意の記録と、本文の表示
同意を証する記録を残す
法第3条第2項は、同意の通知を受けた者について、同意があったことを証する記録を保存する義務を定めています。
ガイドラインによると、保存する内容は次のどちらかです。
- アドレスごとに、同意を取得した時期や方法などの状況を示す記録
- 宛先にできるアドレスを区別できる記録と、同意を取得したときの定型的な内容(ウェブなら、同意を取る画面の構成)
保存期間は、そのアドレスへの特定電子メールの送信をしないこととなった日から、1か月を経過する日までです。
措置命令を受けた場合は、別の定めがあります。
ガイドラインは、受信者とトラブルになったときに説明できるよう、最低限の記録を持つことも勧めています。
実務では、次の項目を一緒に残しておくと、後で慌てません。
| 残すもの | 例 |
|---|---|
| 登録した日時 | フォームの送信日時 |
| 取得した経路 | 登録フォームの名前、展示会の名前 |
| 同意を取ったときの画面 | 同意の文言とチェックボックスが映る画面の写し。文言を変えたら版を分けて保管 |
| 配信停止の日 | 停止の依頼を受けた日と、配信リストから外した日 |
本文に入れる5つの表示(法第4条)
法第4条は、広告宣伝メールの本文に、一定の事項を正しく表示することを求めています。
ガイドラインが整理した表示事項と、置く場所は次のとおりです。
| 項目 | 内容 | 置く場所 |
|---|---|---|
| 送信者の名称 | 責任を負う者の氏名または名称 | 受信者が容易に分かる任意の場所 |
| 配信停止の連絡先 | メールアドレスまたはURL | 受信者が容易に分かる任意の場所 |
| 配信停止の連絡ができる旨 | 「配信停止はこちら」のような一言 | 連絡先の直前か直後 |
| 送信者の住所 | 送信責任者の住所 | 任意の場所。リンク先でもよい |
| 苦情や問合せの窓口 | 電話番号、メールアドレス、URLのいずれか | 任意の場所。リンク先でもよい |
送信者の名称には、注意が必要です。
ガイドラインは、サービスを提供しているサイトの名前、サービス名、屋号、ブランド名では、送信者名を表示したことにならないと明記しています。
正式な氏名か名称を書きます。
メールの最初か最後に書くことが推奨されています。
リンク先に書く場合も、何度もクリックしないとたどり着けない作りは、表示として不適当です。
電話番号も載せることが、望ましいとされています。
配信停止の申し出を受けたら
法第3条第3項は、同意を得た相手や例外の相手であっても、特定電子メールを送らないよう求める通知を受けたら、その意思に反して送ってはならないと定めています。
通知の方法に決まった形はなく、メールなど任意の方法で足ります。
ガイドラインは、受信者が簡単に配信停止できる方法を用意することを勧めています。
たとえば、受信者ごとに違うURLを本文に置き、クリックして開く画面で停止できるようにする方法です。
複数のメールを配信しているなら、画面で選べるようにしたうえで、すべてをまとめて止める設定も用意します。
簡単に止められない場合、受信者は止めずに迷惑メールフィルターで拒否し続けることがあります。
そうなると、広告が届かないだけでなく、通信事業者の設備にも負担がかかる、とガイドラインは説明しています。
Gmailが求めるワンクリックの配信停止と、法律が勧める簡単な配信停止は、同じ方向を向いています。
違反したらどうなるか
法第7条により、総務大臣と内閣総理大臣は、第3条または第4条を守っていないと認めるときに、措置命令を出せます。
対象は、一時に多数の者へ送る特定電子メールなどの送信で、電子メールの送受信上の支障を防ぐために必要と認められる場合です。
送信を委託した会社が、同意の受領や記録の保存などの業務の一部を行い、その会社に責めに帰すべき事由があるときは、委託した会社にも命令が出ます。
アドレスの偽装など送信者情報を偽る送信は、第5条で禁止されています。
第5条や措置命令に違反した場合の罰則は、第34条から第37条に定められています。
内容には拘禁刑と罰金があり、法人も罰金の対象です。
金額と詳しい条件は、e-Gov法令検索で最新の条文を読んでください。
特定商取引法との違い
迷惑メール相談センターは、2つの法律の違いを次のように整理しています。
| 項目 | 特定電子メール法 | 特定商取引法 |
|---|---|---|
| 所管 | 総務省と消費者庁 | 経済産業省と消費者庁 |
| 目的 | メールの送受信上の支障を防ぐ | 商取引での消費者保護と、取引の公正 |
| 規制の相手 | 広告宣伝メールの送信者、または送信を委託した者 | 販売業者と、電子メール広告受託事業者 |
この記事では、特定商取引法のメール広告に関する規定の中身までは確かめていません。
通信販売などに当たる商品を扱う会社は、消費者庁と経済産業省の案内を、別に読んでください。
確かめた公式資料
この章は、次の3つの資料から書いています。
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)
特定電子メールの送信等に関するガイドライン(総務省・消費者庁)
ガイドラインは平成20年11月に策定され、確かめたPDFの表紙の日付は平成23年8月です。
条文は、2025年6月1日施行の改正を反映した現行のものを確かめました。
送信ボタンを押す前の確認表
5つの層を、順に確かめる
ここまでの内容を、配信の前に使える確認表にまとめます。
宛先から始めて、表示、認証、配信停止、監視の順に見ます。
| 順番 | 確認すること | 見る場所 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 宛先 | 全員が、同意か例外のどれかに当てはまる | 配信リストと同意の記録 | 特定電子メール法 第3条 |
| 1 宛先 | 同意を取ったときの画面と日時を残している | 同意の記録 | 同法 第3条第2項 |
| 2 表示 | 正式な名称、配信停止の連絡先、住所、問合せ先が本文にある | メール本文のフッター | 同法 第4条 |
| 3 認証 | SPF、DKIM、DMARCがDNSに入っている | DNSの管理画面、配信ツールの設定画面 | Googleの送信者のガイドライン |
| 3 認証 | 差出人が自社のドメインのアドレスになっている | 配信ツールの差出人の設定 | 同上 |
| 4 配信停止 | ワンクリックの解除と、本文の解除リンクがある | ヘッダーの設定、本文 | Google、Yahooの要件 |
| 4 配信停止 | 解除の依頼が、2日以内にすべての配信リストへ反映される | 配信ツールの運用手順 | 同上 |
| 5 監視 | 迷惑メール率とエラーコードを定期的に見ている | Postmaster Tools、配信ツールの配信結果 | 同上 |
見直す頻度
DNSの設定は、配信ツールを足したり変えたりしたときに見直します。
迷惑メール率は、配信のたびに見るより、月に一度の定例にすると続きます。
同意の記録は、登録フォームの文言を変えたときに、版を分けて保管します。
売れるサイトはみな謙虚 届く相手にだけ送る
「売れるサイトはみな謙虚」は、大きく見せる言葉を足すより、訪れた人が迷う要素を引いたほうが、次の一歩につながるという考え方です。
メールの配信にも、同じ向きの考え方が当てはまります。
宛先を、引き算する
読者の数を大きく見せたくて、同意のない相手まで配信リストに入れると、迷惑メールの報告が増えます。
報告が増えると、同意をくれた人にも届きにくくなります。
反応のない人を、配信リストから外す。
こうして宛先を絞るほうが、届く確率も、読まれる確率も上がります。
Googleのガイドラインも、メールを開封していない人の配信登録を解除することを、検討するよう勧めています。
配信停止を、隠さない
解除のリンクを小さく、目立たなくする工夫は、一見すると配信数を守るように見えます。
ところが、解除の手段が見つからない人は、迷惑メールとして報告します。
解除しやすいメールは、開封率やクリック率の改善にもつながる、とGoogleは説明しています。
配信停止の場所を分かりやすく置くことは、数字を守る行動にもなります。
名乗りを、正式にする
送信者の名称は、サービス名や屋号でなく、正式な名称で書きます。
住所と問合せ先も、本文にそのまま載せます。
読み手は、誰から届いたメールかが分かると、安心して内容を読めます。
登録の流れや同意の取り方は、次の記事でも整理しています。
BtoB中小企業のホワイトペーパーの作り方 テーマ決めから構成、同意の取り方、GA4計測まで
よくある質問
Q1. 送る件数が少ないので、Gmailの要件は関係ありませんか
関係があります。
個人用Gmailあてに送るすべての送信者に、SPFまたはDKIM、TLS接続、迷惑メール率0.3%未満などの要件が適用されます。
1日に5,000件近く以上を送る一括送信者になると、SPFとDKIMとDMARCの3つが必須になります。
件数が少なくても、3つとも入れておくと、後で慌てません。
Q2. 配信ツールを使っていれば、認証はツールが済ませてくれますか
ツールの案内に従って、自社のドメインのDNSに設定を足す作業が必要です。
一括送信者の要件に、Fromのドメインと認証されたドメインの一致があるためです。
ツールが案内する、自社のドメインでの認証設定を、必ず済ませます。
Q3. 自分のgmail.comのアドレスで、お客様に一斉送信してもよいですか
おすすめしません。
Gmailのサーバーから送っていないのに、FromにGmailのアドレスを入れると、なりすましとして扱われます。
差出人は、自社のドメインのアドレスにします。
Q4. 展示会で名刺を交換した相手に、営業メールを送ってよいですか
名刺などの書面でアドレスを通知した相手は、同意がなくても送れる例外の1つです。
ただし、通知の相手が特定されている必要があります。
送るときは、本文に必要な表示を入れ、配信停止の申し出があったら、その意思に従います。
Q5. 事業者あての営業なら、同意は不要ですか
不要になる場合がありますが、条件があります。
ウェブサイトで公表されているアドレスは、例外にあたります。
ところが、送信を拒否する旨が併記されていれば、例外にあたりません。
送る前に、相手のサイトに拒否の表示がないかを確かめます。
Q6. 一度商品を買ってくれたお客様には、メルマガを送ってよいですか
取引関係にある者への送信は、例外の1つです。
ただし、一度の購入だけでは、継続的な関係とはいえない場合があるとされています。
購入のときに、メルマガの案内を示して同意を取るほうが、安全です。
Q7. DMARCは、最初から厳しい設定にしないといけませんか
いいえ、noneから始められます。
GoogleもYahooも、最低限のポリシーとしてnoneを認めています。
Googleは、noneで1週間ほど報告を見て、問題がなければ、少しの割合のquarantineに進める手順を勧めています。
Q8. 同意の記録は、いつまで残せばよいですか
法律上の保存期間は、そのアドレスへの特定電子メールの送信をしないこととなった日から、1か月を経過する日までです。
措置命令を受けた場合は、別の定めがあります。
トラブルに備えて、説明に必要な記録を持っておくことも、ガイドラインは勧めています。
まとめ
メールが届かない原因は、受信側の要件、送信ドメイン認証、法律の3つの層に分かれます。
個人用Gmailあての送信には、2024年2月1日から要件が適用され、2025年11月から違反措置が強化されています。
Yahooにも、同じ水準の要件があります。
日本の法律では、広告宣伝メールは原則として事前の同意が必要で、例外は3つです。
本文には、正式な名称、配信停止の連絡先、住所、問合せ先を入れます。
宛先を絞り、配信停止を分かりやすく置くことが、届く状態を守る近道です。
今日できる点検
次の4つは、今日から始められます。
- 自社のドメインでメールを送っている場所を、すべて書き出す
- 配信リストの登録経路を調べ、同意の記録がない宛先に印を付ける
- 最新のメルマガを開いて、正式な名称、住所、配信停止の連絡先が載っているかを確かめる
- Postmaster Toolsに送信ドメインを追加し、コンプライアンスの状態を見る
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