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【LLMO論文解説】AIエージェントが読めるサイトは明確に薦められる割合が1.9倍|1,056社・37,927回の調べものを比較(プレプリント)

2026 10/03
2026年10月3日
中野輝規
AIエージェントが読めるサイトは明確に薦められる割合が1.9倍

AIに調べものを任せると、AIは検索結果を並べるだけで終わらず、ページを開いて読んでから答えを組み立てます。そのとき、事業者の自社サイトをAIが取得して読めるかどうかで結果が変わるのかを調べたのが、2026年9月に公開された論文「AX is the New AEO」です。

この記事は、その論文を原文から読み、何を比べて、どんな数字が出たのかを整理します。「1.9倍」「41%」といった数字が、何と何を比べた値なのかも分かります。

合同会社謙虚は、3つのドメインを並行して運用し、何を変えると数字が動くかを測り続けています。この論文は、外部での言及と自社サイトの読みやすさのどちらを先に確かめるかを考える材料になります。

目次

結論:3行で言うと

  • AIエージェント(人の代わりに検索し、ページを取得して読むAI)に、1,056の事業者について37,927回の調べものをさせた研究です。サイトをエージェントが読める事業者は、明確に薦められる回答の割合が20%、読みにくい事業者は11%でした(約1.9倍)
  • エージェントは、サイトを読めなくても約99%の場面で答えを出しました。誤った内容が増えるというより、聞かれた事実が回答から抜ける形で差が出ています
  • 著者は4人とも同じ民間企業の所属で、「読めるかどうか」の点数は著者の所属企業が作った採点の仕組みです。対象は英語中心で、日本語のサイトが含まれるかは書かれていません

この論文の基本情報

項目 内容
題名 AX is the New AEO
著者 Ido Finder、Assaf Elovic、Gad Shalev、Liad Yosef(4人とも同じ民間企業の研究部門)
公開 2026年9月28日(第1版)。私が読んだのは9月29日の第2版です
arXiv番号 arXiv:2609.34951(分野はcs.AI、副分野はcs.IR)
掲載・採択 arXivのプレプリント。備考欄は「17ページ、図11」だけで、学会や雑誌の記載は見当たりませんでした
種類 産業界の実証研究(論文の自称は統制実験。読みやすさを割り当てておらず、似た条件の事業者を組にして比べているため、弊社は観察研究と読みました)
データ・コード 分析コードと、加工済みデータの一部をコード共有サイトで公開すると記載(著者の所属企業のリポジトリ)

論文はこちらで読めます。arXiv(2609.34951)。

題名のAXは「エージェント体験」の略で、サイトを訪れたエージェントにとっての扱いやすさを指します。AEOは「回答エンジン最適化」の略で、論文はGEOと同じ意味としてまとめて扱っています。

この論文が答えた問い

知名度や外部での言及が同じくらいの事業者どうしで、自社サイトをエージェントが読めるかどうかは、回答の中身・薦められ方・費用を変えるのか。

論文によると、これまでのAEOの助言は、掲示板やまとめ記事など自社サイトの外に言及を増やし、AIに拾われやすくするというものでした。

しかし著者は、拾われた後にもう1段階あると述べます。エージェントは検索と取得を何度か繰り返し、そこで読んだものから回答を作るからです。

サイトが読めないとき、エージェントは第三者のページや競合のページで代用します。その代用がどれくらい起き、何を失うのかを測った、というのが論文の位置づけです。

なお、論文は関連研究としてGEO原論文と2026年のサーベイ論文を引いています。どちらも「拾われる段階」の研究として紹介されています。

どうやって調べたのか

対象は、著者の所属企業が持つデータベースから選ばれた実在の事業者1,056です。読める群と読みにくい群が528ずつで、業種は12分類あります。

各事業者は、次の4つの物差しで測られました。1つ目が比べたい要因で、残りの3つは両群でそろえた条件です。

物差し 役割 測り方 読める群/読みにくい群の平均
読みやすさの点数 比べたい要因 著者の所属企業の採点の仕組み(0〜1点)。0.65以上を「読める」、0.50以下を「読みにくい」と定義 0.737/0.319
知名度 そろえた条件 世界のアクセス順位(上位100万件の一覧)の対数 5.10/5.11
AIの事前知識 そろえた条件 道具を使わせずにAIへ質問し、ブランドをどれだけ知っているかを0〜1点で採点 0.332/0.332
外部での言及(AEOの代わりの指標) そろえた条件 第三者サイト・百科事典・掲示板での言及の広さと、見つけやすさの点数(これも著者の所属企業の採点の仕組みの一部) 0.322/0.327、0.326/0.313

読みやすさの点数が見ているのは、JavaScriptを動かさずに取得して残る本文の量、構造化データ、llms.txtなどの機械向けの入口、料金ページへ到達できるか、利用者の指示で動くエージェントをボット対策が通すか、などです。

0.50〜0.65の中間の事業者は、最初から対象外です。規模が最大級の数百サイトも、比べる相手がいないという理由で外されています。

質問は1事業者につき3種類(料金・機能・導入手順)で、ひな形にその事業者のドメインを入れて作られました。

例は「予算に合うサービスを探しています。{ドメイン}にどんなプランがあり、いくらか調べてくれますか」という形です。

これを4種類のエージェント実行環境で3回ずつ走らせています。使われたモデルは、claude-sonnet-4-6、claude-haiku-4-5、gpt-5.4、gpt-5.4-miniの4つです。

主な指標は次のとおりです。

  • 自社ページ由来の割合:エージェントが取得した内容、または完成した回答のうち、その事業者のページから来た部分
  • 明確な推薦:開発元の違う2つのAIが、質問と回答だけを見て0〜4点で採点し、両方が最高点を付けた回答
  • 事実の正確さ:サイトに実際に載っている事実と1つずつ照合(正解1、やや粗い正解0.5、誤りと言及なしは0)。照合できたのは131事業者・2,499回答・31,127事実

回答の材料と推薦の判定はAIによる自動採点で、採点役には事業者がどちらの群かを知らせていません。2つの採点役が1点差以内で一致したのは、回答の88%でした。

結果

エージェントは、記憶よりも「いま読んだもの」で答える

完成した回答のうち、モデルが学習で覚えた知識から来た部分は7〜10%でした。これは、サイトが読めても読めなくても同じ水準です。

サイトで行き止まりになった調べものの約99%で、エージェントはそのまま答えを出しています。足りない分は、ウェブ検索で埋めていました。

回答の材料 読める群 読みにくい群
その事業者のページ 78% 58%
ウェブ検索の結果 12% 25%
外部のサイト 3% 7%
学習で覚えた知識 7% 10%

薦められ方と費用の差

比べた項目 読める群 読みにくい群 比
明確に薦める回答の割合 20.4% 10.6% 1.93倍
薦めるには弱すぎる回答の割合 5.0% 12.4% 2.45倍
「サイトを確認できなかった」と断る回答 3.6% 15.9% 4.39倍
自社サイトだけを根拠にした回答の割合 77.8% 55.5% 1.40倍
1回あたりのウェブ検索の回数 2.16回 3.38回 1.57倍
サイト側で止められた割合 15.8% 33.5% 2.12倍
1回あたりの費用(米ドル) 0.068 0.079 1.16倍

数値は原文の表7から拾いました。事業者ごとに平均してから群を比べた値で、いずれも並べ替え検定のp値は0.0001未満と報告されています。

  • 「1.9倍」は、明確に薦める回答の割合が20%と11%という比です。差としては約10ポイントで、読める群でも約8割の回答は「明確な推薦」に届いていません
  • 実行環境による差が大きく、明確な推薦の割合は、読める群の値で、いちばん低い環境が5%、高い環境が36%でした。向きは4つとも同じです
  • 業種別では、IT基盤の2.5倍から顧客対応の1.2倍まで幅があります
  • 要旨の「64%高い」は、自社サイトを根拠にできた回答1件あたりの費用です。実行環境ごとには11%〜93%の幅があり、1回あたりの費用の差は16%でした
  • 外部での言及の2指標は、読みやすさをそろえると、根拠・推薦・費用のどれとも確かな関連が見られませんでした(偏相関は-0.04〜+0.10)。読みやすさの点数は+0.62、+0.41、-0.27です

正確さ:間違いよりも「抜け」が増える

正確さは、同じ事業者・同じ実行環境・同じ質問の種類の中で、自社サイトだけから作られた回答と、それ以外の回答(外部の情報を使った回答と、サイトを読まなかった回答)を比べています。対象は90事業者の196組です。

比べた範囲 サイトから作った回答 外部も使った回答 差 p値
全体 48.3% 34.3% +14.0ポイント(相対で+41%) 0.0001未満
料金の質問 60.4% 36.9% +23.5ポイント 0.0001未満
機能の質問 45.6% 38.8% +6.8ポイント 0.018
導入手順の質問 23.9% 23.5% +0.4ポイント 0.87
聞かれた事実を1つも含まない回答 6.7% 25.0% 3.7倍 0.0001未満
  • 事実ごとに見ると、誤って述べた割合は4%から6%に増えただけで、まったく触れなかった割合が29%から45%に増えました
  • 差が大きいのは料金の質問です。導入手順の質問では差が出ていません
  • 実行環境別では、検索の少ない環境で差が大きく(48.3%と10.0%)、検索の多い2つの環境では差が確かめられていません(p=0.051と0.39)
  • 読める群と読みにくい群をそのまま比べた正確さは51.7%と49.8%で、有意な差は出ませんでした(p=0.52)

論文自身が書いている限界

  • 内容の量がそろっていない。エージェントを止めるサイトは、公開している情報も少ないかもしれないと論文は認めています。根拠と推薦の差は事業者どうしの比較なので、この可能性を除けていません
  • 正確さは一部でしか採点していない。照合できたのは131事業者で、群どうしの差はこの規模では有意になっていません
  • 範囲が限られる。対象はSaaS(ネット経由で使う業務ソフト)とネット通販が多く、英語中心です。質問も事実を調べる種類に限られ、購入などの操作は扱っていません

論文は、サイトの読みやすさを実際に改善して前後を測る介入研究があれば決着がつく、とも書いています。

原文を読んで気づいた点

  • 著者の所属と物差しの出どころ。4人とも同じ民間企業の所属で、読みやすさの点数はその企業が運用している採点の仕組みです。論文も「独立した指標としてではなく、この研究の道具として報告する」と明記しています。利益相反についての独立した記載は、原文に見当たりませんでした
  • 結論と事業の関係。「読みやすさに投資すべきだ」という結論は、著者の所属企業が測っている領域と重なります。数値を疑う根拠が原文にあるわけではありませんが、第三者が別の物差しで再現した結果はまだ示されていません
  • 質問にドメインが入っている。エージェントは最初から「この事業者について調べて」と指示されています。数ある事業者の中から候補に挙がるかどうかは、この実験の範囲外です。論文も、見つけてもらう段階は固定したと書いています
  • 外部での言及に効果なし、の範囲。上の設計のため、この結論は「名指しで調べられた後」の段階に限られます。候補に入る段階での働きは測られていません
  • 似た数字が3種類ある。要旨の「78%対56%」は自社サイトだけを根拠にした回答の割合、本文の「78%対58%」は完成した回答の文章に占める割合、「0.776対0.549」は取得した文字数に占める割合です。別々の指標なので、引用するときは区別が要ります
  • 回数の端数。1,056事業者×3質問×3回×4環境は38,016回になります(私の概算)。報告は37,927回で、差の89回についての説明は見当たりませんでした
  • 無作為化した実験とは違う。論文は「統制実験」と呼んでいますが、サイトの読みやすさを研究者が割り当てたわけではありません。似た条件の事業者を組にして比べた観察です
  • 日本語での検証はなし。日本の事業者や日本語のサイトが含まれるかどうかは書かれていません
  • 査読。arXivのプレプリントで、査読を経たという記載は確認できませんでした

この論文から、言えること・言えないこと

言えること 言えないこと
名指しで調べさせた場合、著者の点数で「読める」とされた事業者は、明確に薦める回答の割合が高かった(20%と11%) サイトを読みやすくすれば推薦が1.9倍になる、という因果
読めないサイトでも、エージェントは外部の情報で答えを作った 名指しされていない質問で、候補に選ばれやすくなるかどうか
自社サイトだけから作られた回答は、聞かれた事実の抜けが少なかった(料金の質問で差が大きい) 読める群のほうが回答が正確だ、という群どうしの差(有意差なし)
名指しの調べものでは、外部での言及の広さは結果と確かな関連がなかった 外部での言及や従来のSEOが不要だ、ということ(論文も、見つけてもらうことは今も重要だと述べています)
英語中心のSaaS・ネット通販での結果である 日本語のサイトや、地域の店舗・士業などでも同じ結果になること

中小企業の視点で、どう受け取るか

ここからは論文の主張とは別の、私の読み取りです。

1. 料金・サービス内容・手続きは、自社ページに文字で置く。

論文で差がいちばん大きかったのは料金の質問でした。画像だけの料金表や、ボタンを押すと出てくる説明は、エージェントに届いているかを一度確かめる価値があります。

2. ボット対策の設定を、自分の目で見ておく。

読みにくい群では、調べものの33.5%がサイト側で止められていました(通信のエラーと、機械の閲覧を止める仕組みの両方を含みます)。

セキュリティの仕組みが、利用者の代わりに来たエージェントまで止めている場合があります。通すかどうかは事業者が決めることですが、知らずに止めている状態は避けたいところです。

3. 「外部の言及は効かない」とは受け取らない。

この研究は、会社名を知っている人がAIに調べさせる場面だけを扱っています。名前を知られる前の段階は別の話で、サーベイ論文が整理した「段階ごとに別の変数がある」という見方と合わせて読むのがよさそうです。

4. 点数そのものを目標にしない。

読みやすさの点数は著者の所属企業の物差しで、0.65という線も研究のための区切りです。日本語の中小企業のサイトで同じ差が出るかは、まだ誰も確かめていません。

よくある質問

AX(エージェント体験)は、AEOやGEOと何が違うのですか

論文の整理では、AEOやGEOは「AIに拾われる段階」を扱い、AXは「拾われた後に、サイトを取得して読む段階」を扱います。

著者は置き換えを主張しているわけではなく、回答エンジン最適化を「見つけてもらうためのSEO」と「読んでもらうためのAX」に分けて考える、と結論で述べています。

「AX is the New AEO」の1.9倍は、競合より選ばれやすくなるという意味ですか

そこまでは示されていません。1.9倍は、ある事業者を名指しで調べさせたときに、回答がその事業者を明確に薦めた割合の比(20%と11%)です。

複数の候補から1社を選ぶ場面は測られていません。また、点数の高い事業者と低い事業者を比べた結果で、同じサイトを改善して前後を測った結果とは別のものです。

llms.txtを置けば、エージェントが読めるサイトになりますか

論文の点数では、llms.txtは確認項目の1つにすぎません。ほかに、JavaScriptなしで残る本文の量、構造化データ、料金ページへの到達、ボット対策の設定などが見られています。

論文は、llms.txtは広く置かれているものの、読んだエージェントのうち掲載ページを取得しに行くのは3分の1だ、という外部の報告も引いています。どの項目がどれだけ効いたかの内訳は、この論文では報告されていません。

まとめ:今日できる1つのこと

この論文は、名指しで調べられたときに、自社サイトを読めるかどうかで回答の材料と薦められ方が変わると報告しました。ただし、物差しは著者の所属企業のもので、英語中心で、弊社の読みでは観察研究です。

今日できることは1つです。自社の料金ページかサービス紹介ページを、ブラウザのJavaScriptを切った状態で開いてみてください。

料金やサービス内容が文字で残っていれば、エージェントにも届きやすい状態です。空白になるなら、そこが最初に確かめる場所になります。

この論文は、LLMO論文の一覧の一本です。ほかの論文の解説も、順次公開しています。

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この記事を書いた人

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合同会社謙虚 代表社員。20代から、売る言葉だけを仕事にしてきました。電話営業で受話器を握っていた時代から、数千社のWEB集客に関わったいままで。詳しいプロフィールはこちら

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