商店街の一角で、あるいは郊外の道沿いで、長く店を開けてきた。
昔からのお客様は今も来てくれる。
けれど、新しいお客様の顔を見る日が、年々少なくなっている。
近くに大きな店ができ、通販で何でも届くようになり、店の前を歩く人も減った。
この記事は、そうした状況にいる地域の小売店の経営者に向けて書いています。
食品を扱う店、日用品を扱う店、文具や金物や茶葉のような専門の品を扱う店が対象です。
全国にチェーンを持つ会社の話は扱いません。
店主が自分で仕入れ、自分で店に立っている規模の店に絞っています。
小売店の集客には、飲食店や美容室にない難しさが1つあります。
売っている品物そのものは、ほかの店でも、画面の向こうでも、同じものが買えることが多い点です。
だから、品物の話だけをしていると、近くの大きな店や通販と同じ土俵で比べられてしまいます。
この記事では、その土俵から降りて、品揃えや在庫や値段とは別の「わざわざ行く理由」を、お客様が店に来る前に伝える方法を順番に見ていきます。
あわせて、店舗を取り巻く数字の変化を、国の統計で確かめられた範囲で整理します。
読み終えたときに、自分の店のサイトや地図の情報で、最初に直す場所が1つ決まっている。
そこをこの記事のゴールにしています。
店舗の集客全般に共通する考え方は、店舗の集客方法について書いた別の記事にまとめています。
服や雑貨を扱う店の方は、アパレルの集客について書いた記事のほうが近いかもしれません。
この記事は、そこから地域の小売店に絞って、来店前の伝え方を掘り下げた続きの位置づけです。
Q&Aサイトで見かけた、商店街の店を受け継いだ方の相談
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
少し前の投稿ですが、いま読んでも状況がほとんど変わっていないことに驚かされる相談でした。
20年以上続けてきた店が、移転を機に苦しくなった
投稿者は40代の男性で、名の知れた商店街で親の店を受け継ぎ、20年以上店主を続けてきた方でした。
数年前から経営が苦しくなり、家主から家賃の値上げを求められたのをきっかけに、近くの家賃の安い場所へ店を移したそうです。
ところが、移った先は人通りが少なく、売上は以前よりさらに落ちてしまった。
客数が多少減ることは覚悟していたものの、見通しが甘かったと振り返っていました。
なじみのお客様で、なんとか持っている
いまは移転前からのなじみのお客様に支えられて、店はどうにか続いている。
借金はなく、店の固定費も小さく抑えられている。
それでも、新しいお客様が来る見込みが立たず、この先の営業に自信が持てない。
投稿の後半には、店を閉じることになったらという将来への不安が、率直な言葉で綴られていました。
今の場所で売上を上げる努力をするという道ももちろんある、と本人も書いています。
ただ、何から手をつければいいのかが分からず、言葉をかけてほしいという相談でした。
回答に並んだのは、気持ちの持ち方と身の振り方だった
寄せられた回答は、気持ちの持ち方を説くものと、身の振り方を勧めるものに分かれていました。
焦らずに自分の力が育つのを待てばいい、という励まし。
過ぎたことを悩んでも仕方がないので前を向くべきだ、という叱咤。
どちらも、相談者を思っての言葉だったと思います。
けれど、「今の場所で、どうやって新しいお客様に来てもらうか」という具体的な話は、ほとんど出ていませんでした。
店を畳んで勤めに出る道を勧める回答もありました。
それも1つの選択肢ですが、借金がなく、なじみのお客様が残っている店を、打てる手を試す前に閉じてしまうのは惜しいと感じます。
この記事では、その「試す前の手」のほうを扱います。
大きなお金をかけず、店主1人でも始められて、今の場所のままで効き目を確かめられる手です。
移転や家賃の判断を、あとから責める必要はない
相談者の方は、移転を決めた自分をくり返し責めていました。
けれど、家賃の値上げを前に固定費を下げようとした判断は、経営として筋の通ったものです。
実際に、借金を抱えずに店を続けられているのは、その判断があったからとも言えます。
移転で失われたのは、前を通る人に店の価値が自然と伝わる立地です。
店の価値そのものは、何も変わっていません。
伝わる仕組みを別の形で作り直せば、店そのものが持っている理由は、今の場所でも十分に通用します。
店主1人が使える時間には限りがある
小さな店の店主は、仕入れも、陳列も、接客も、帳簿も、自分でこなしています。
集客のために毎日何時間も使う余裕は、まずありません。
だから、この記事では「毎日続けなければ効果が出ない」打ち手は勧めません。
一度書いて置いておけば、店主が店に立っている間も、店のことを伝え続けてくれる場所に絞って話を進めます。
具体的には、地図検索の登録情報と、店のサイトの数ページと、店先の貼り紙です。
どれも、週に1時間ほどの手入れで回せる範囲に収まります。
写真を撮るのも、文章を書くのも、店主の手元にあるもので足ります。
高価な機材や、専門の業者に頼む作業は前提にしていません。
店の様子をいちばんよく知っているのは店主なので、店主が自分の言葉で書いた数行のほうが、初めての人には伝わりやすいものです。
人通りが減った店で、何が起きているのか
この相談には、地域の小売店が置かれている状況が、そのまま映っています。
商店街の真ん中にあった頃は、店の前を歩く人が、看板や店先を見て入ってきてくれた。
店が何を売っているか、どんな店主がいるかは、前を通るだけで伝わっていました。
移転して人通りが減ると、その「前を通るだけで伝わる」仕組みがなくなります。
なじみのお客様は店の良さを知っているので、場所が変わっても来てくれます。
新しいお客様は、店の良さを知る機会そのものがありません。
店の前を通らない限り、どんな店主が、どんな品を、どんな気持ちで並べているのかは、外からはまったく見えないからです。
以前なら通りすがりに伝わっていたことが、今は誰にも伝わらないまま、店の中にしまわれています。
このとき足りなくなっているのは、店の前を通らない人に、店のことを先に伝える手段です。
いまの時代、その手段の中心にあるのは、地図検索の情報と、店のサイトです。
| 起きたこと | お客様の側で起きていること | 次に確かめること |
|---|---|---|
| 人通りの少ない場所へ移った | 前を通らないので、店があることを知らない | 地図検索で店の名前と場所が出るか |
| なじみのお客様だけが来る | 新しい人は、店に入る理由を知らない | 初めての人が読む言葉がどこかにあるか |
| 新しいお客様の見込みが立たない | 近所の人も、何の店か分からず通り過ぎている | 店先と地図の写真で、何の店か分かるか |
| 売上を上げる手が思いつかない | 品物の話だけでは、大きな店と比べられる | 品物以外の理由を1つ言葉にできるか |
| 先行きが不安で手が止まる | 店の側の変化が、外からは見えない | 今週1つだけ変えられる場所を決める |
これは地域の小売店の9割が入り込む落とし穴です
新しいお客様が来ない理由を、「品揃えが足りないから」「値段で負けているから」と考えるのは自然なことです。
大きな店と比べれば、品数でも値段でもかなわないのは事実だからです。
そこで、品数を増やし、特売の日を作り、チラシで安さを知らせる。
ところが、それでも新しいお客様が増えないことがよくあります。
品物と値段で比べる限り、近くの大きな店や通販のほうが、いつも一歩先にいるからです。
この記事で「9割」と書いたのは統計の数字ではありません。
小さな店の相談を受けていて、ほとんどの方が最初に「品揃え」と「値段」の話から始める、という実感を言葉にしたものです。
「知られていない」と「選ぶ理由が見えない」は、打ち手が違う
新しいお客様が来ない状態には、外から見ると区別のつかない2つの段階があります。
1つ目は、店があること自体を知られていない段階です。
2つ目は、店があることは知られているのに、行く理由が見えずに通り過ぎられている段階です。
1つ目なら、地図に店を載せる、看板を見直すといった「知らせる」打ち手が効きます。
2つ目なら、知らせる量を増やしても、通り過ぎる人が増えるだけです。
必要なのは、知った人が「行ってみよう」と思える理由を、知った瞬間に目に入る場所へ置くことです。
人通りの少ない場所へ移った店は、多くの場合この2つが同時に起きています。
だから、地図に載せることと、理由を書くことを、セットで進める必要があります。
お客様が店を選ぶ理由は、品物だけで決まっていない
地域の小売店に通い続けているお客様に、なぜこの店に来るのかを聞くと、品物の話より先に別の話が出てきます。
店主に聞けば、料理に合う品を教えてくれる。
少しだけ欲しいときに、小分けにしてくれる。
取り寄せを頼めて、届いたら電話をくれる。
前に買ったものの調子が悪いとき、見てもらえる。
どれも、大きな店や通販では手に入りにくいものです。
なじみのお客様が場所を移っても来てくれるのは、こうした理由を知っているからです。
その理由が、新しいお客様には伝わっていない
問題は、その理由を知っているのが、すでに店に来たことのある人だけだという点です。
初めての人が地図検索で店を見つけたとき、目に入るのは店の名前と、営業時間と、数枚の写真くらいです。
店のサイトがあっても、そこに書かれているのは住所と取扱品目の一覧だけ、という店が少なくありません。
それでは、初めての人が「わざわざ行く理由」を見つけられません。
結果として、近くて品数の多い大きな店や、手元に届く通販が選ばれます。
店には、選ばれる理由がちゃんとあります。
足りないのは、それを店に来る前の段階で伝える場所です。
| いまの状態 | 外から見えること | 先に手を打つ場所 |
|---|---|---|
| 店があることを知られていない | 地図検索で店名を入れても出てこない | 地図の登録情報を整える |
| 何の店か伝わっていない | 写真が外観だけで、売り場が見えない | 売り場と店主の写真を足す |
| 行く理由が伝わっていない | 取扱品目の一覧だけが並んでいる | 品物以外の理由を1つ書く |
| 来たことはあるが続かない | 一度来た人が、二度目に来ない | 次に来る理由を、帰り際に渡す |
| どこで止まっているか分からない | 新しいお客様の数を数えていない | 初めての人に、何を見て来たかを聞く |
大きな店と同じ物差しで測られると、小さな店は不利になる
お客様が店を比べるとき、手元にある物差しで比べます。
その物差しが「品数」と「値段」と「近さ」だけなら、地域の小さな店はほとんどの場面で負けてしまいます。
大きな店は仕入れの量が違い、駐車場も広く、遅くまで開いています。
通販は家から一歩も出ずに注文でき、翌日には玄関先に届きます。
同じ物差しの上で戦う限り、どれだけ努力しても差は縮まりにくいものです。
だからこそ、小さな店は物差しそのものを相手に渡す必要があります。
「この店では、こういう点で選んでほしい」という物差しを、店の側から先に示すことです。
その物差しを示す場所が、地図の情報であり、店のサイトであり、店先の貼り紙です。
なじみのお客様の言葉に、新しいお客様へ伝えることが書いてある
では、何を物差しとして示せばいいのか。
答えは、店主の頭の中より、なじみのお客様の口から出てくることが多いものです。
長く通ってくれている人が、会計のときや帰り際にふと口にする言葉を思い出してみてください。
「ここで聞くと間違いがないから」
「量を合わせてもらえるから助かる」
「先月のあれ、おいしかったよ」
こうした言葉には、その人がこの店を選び続けている理由が、そのまま入っています。
店主にとっては当たり前すぎて、わざわざ書くほどのことに思えないかもしれません。
けれど、初めての人にとっては、それこそが店に足を運ぶきっかけになる情報です。
相談者の方の店にも、移転してまで通ってくれるなじみのお客様がいました。
その人たちが何を理由に通っているのかを言葉にできれば、新しいお客様に向けて書く中身は、もう半分そろっています。
| なじみのお客様の言葉 | その裏にある、店を選ぶ理由 | 初めての人に向けた書き方の例 |
|---|---|---|
| ここで聞くと間違いがない | 店主の知識で選んでもらえる | 用途を伝えていただければ、合う品を一緒に選びます |
| 量を合わせてもらえる | 少量や小分けに応じてくれる | 1人分からでも、量を合わせてお包みします |
| 先月のあれ、おいしかった | 季節ごとの入荷を楽しみにしている | 毎月の入荷を、店先とサイトで先にお知らせします |
| 取り寄せてもらえて助かる | 置いていない品も頼める | 店にない品も、取り寄せのご相談をお受けします |
| 調子が悪いと見てもらえる | 買ったあとも面倒を見てくれる | お買い上げのあとの調整や相談も承ります |
この表の右の列は、どれも品数や値段の話をしていません。
それでも、読んだ人が「一度行ってみようか」と思える理由になっています。
この記事の後半では、こうした理由をどこに、どの順番で書けばいいかを具体的に見ていきます。
その前に、なぜ今こうした伝え方が必要になったのか、店を取り巻く数字の変化から確かめておきます。
数字を見ておくと、打ち手を選ぶときに迷いが減ります。
人通りで売れていた時代が、静かに終わった背景
相談者の方の店に限らず、地域の小売店を取り巻く環境は、この十数年で大きく変わりました。
ここでは、その変化を国の統計で確かめられる範囲に絞って見ておきます。
数字を知っておくと、自分の店だけがうまくいっていないわけではないと分かり、打ち手を落ち着いて選べるようになります。
商店街の店の7軒に1軒近くが、空き店舗になっている
中小企業庁が全国の商店街を対象に行っている商店街実態調査によると、2021年10月時点の商店街の空き店舗率は平均で13.59%でした。
単純に言えば、商店街に並ぶ店の7軒に1軒近くが、シャッターを下ろしているということになります。
空き店舗が増えると、その通りを歩く理由そのものが減ります。
買い物の途中でほかの店にも立ち寄る、という流れが細り、1軒ごとの店が自分の力で人を呼ばなければならなくなります。
相談者の方が感じていた「人通りが減った」という実感は、こうした全国的な流れの中にあります。
空き店舗が増えた理由はさまざまですが、店主の高齢化と後継ぎの不在、郊外の大型店への客足の移動が、どの地域でもよく挙げられます。
どれも、1軒の店の努力だけでは止められない流れです。
止められない流れの中で、自分の店に来てもらう理由を作り直すことが、残っている店にできる手になります。
物販の1割近くが、通販に移っている
経済産業省が2025年8月に公表した電子商取引に関する市場調査によると、2024年の物販系分野の取引のうち、通販が占める割合は9.78%でした。
物販の取引のおよそ10件に1件が、画面の上で行われている計算です。
この割合は年々少しずつ伸びています。
1割と聞くと小さく感じるかもしれません。
けれど、残りの9割の中にも、通販で値段を調べてから店に来る人や、店で品物を見てから通販で買う人が含まれています。
店と通販は、お客様の頭の中ではすでに並んで比べられています。
半分を超える世帯が、ネットで買い物をしている
総務省統計局が2026年2月に公表した家計消費状況調査によると、二人以上の世帯のうち、ネットで買い物をした世帯の割合は2025年平均で56.9%でした。
10年前の2015年は27.6%だったので、およそ2倍になっています。
つまり、店の近所に住んでいる家庭でも、半分以上は日常的に画面の向こうの店を使っています。
その人たちが店を探すときも、まず手元の画面で調べるのは自然な流れです。
地図で店を探し、写真を見て、口コミを読み、サイトを開いて、行くかどうかを決める。
この確かめる作業の中で、店のことが何も分からなければ、そこで候補から外れます。
| 統計 | 数字 | 店にとっての意味 |
|---|---|---|
| 商店街の空き店舗率(中小企業庁・2021年10月時点) | 平均13.59% | 通りを歩く理由が減り、1軒ごとに人を呼ぶ必要がある |
| 物販のうち通販が占める割合(経済産業省・2024年) | 9.78% | 品物と値段は、画面の上ですでに比べられている |
| ネットで買い物をした世帯の割合(総務省統計局・2025年平均) | 56.9% | 近所の人も、店に来る前に画面で確かめている |
| 同じ割合の10年前(2015年平均) | 27.6% | 10年でおよそ2倍に増え、確かめる習慣が定着した |
数字が示しているのは、店の外で起きている変化です。
店の中の品物や接客が悪くなったわけではありません。
お客様が店にたどり着くまでの道筋が変わったので、その道筋の上に店のことを置き直す必要が出てきました。
通販に慣れた人ほど、店で受けたいことがはっきりしている
ネットで買い物をする人が増えたことは、地域の小売店にとって悪い話ばかりではありません。
画面の上で済む買い物を通販に任せた人ほど、店に行くときには「店でしか得られないもの」をはっきり求めるようになるからです。
手に取って確かめたい。
詳しい人に相談したい。
その場で量を合わせてもらいたい。
こうした望みは、通販では満たしにくいものです。
通販に慣れた人は、店に来る理由を探しながら店を選んでいます。
その理由を店の側が先に示していれば、通販に慣れた人ほど、わざわざ足を運んでくれる見込みがあります。
人通りに頼っていた頃の「伝わり方」を書き出してみる
人通りの多い場所にあった頃、店のことはどう伝わっていたのでしょうか。
思い出してみると、店主が意識していなかった伝わり方がいくつもあったはずです。
店先に並んだ季節の品が、前を通る人の目に入っていた。
店主が常連さんと話している声が、通りまで聞こえていた。
入口から見える売り場の奥行きで、品物の幅が伝わっていた。
近所の人同士の立ち話で、「あの店の店主は詳しい」という評判が回っていた。
こうした伝わり方は、人通りがあってはじめて成り立つものです。
人通りが減った場所では、これを1つずつ、画面の上や店先の言葉に置き換えていく作業が必要になります。
| 人通りがあった頃の伝わり方 | 何が伝わっていたか | 人通りが減った今の置き換え先 |
|---|---|---|
| 店先に季節の品が並んでいた | いま何が旬で、何が入荷したか | 地図の投稿と、サイトの入荷のお知らせ |
| 常連さんとの会話が聞こえていた | 店主が相談に乗ってくれる人であること | サイトの店主紹介と、相談を受ける旨の一文 |
| 入口から売り場の奥が見えた | 品物の幅と、店の雰囲気 | 売り場の写真を、入口からの目線で撮る |
| 近所の立ち話で評判が回っていた | 信頼できる店だという評判 | 地図の口コミと、それへの店主の返事 |
| 前を通るたびに店を思い出した | 店があること自体 | 地図への登録と、店先の看板の見直し |
お客様は店に来る前に、何を確かめているのか
では、初めてのお客様は、店に足を運ぶ前に何を確かめているのでしょうか。
ここが分かると、地図やサイトに何を書けばいいかが自然と決まってきます。
1つ目は、自分の用事に合う店かどうか
お客様は、たいてい何かの用事を抱えて店を探しています。
贈り物を選びたい、いつもと違う品を試したい、壊れた道具を直したい、といった用事です。
その用事に合う店かどうかを、地図の情報と写真と、サイトの最初の画面で確かめます。
取扱品目の一覧だけでは、この確かめに答えられないことが多いものです。
「お茶」と書いてあっても、贈答用の詰め合わせを作ってもらえるのか、少量を試し買いできるのかは分からないからです。
2つ目は、入りやすい店かどうか
地域の小さな店に初めて入るのは、思っている以上に勇気がいります。
入ったら何か買わなければいけないのではないか。
詳しくない自分が質問したら、嫌な顔をされるのではないか。
常連さんばかりで、自分だけ浮いてしまうのではないか。
こうした不安は、店主の側からはなかなか見えません。
けれど、初めての人が店を候補から外す理由として、品揃えや値段と同じくらい大きな比重を占めています。
3つ目は、そこまで行く手間に見合うかどうか
人通りの少ない場所の店に行くには、わざわざ足を向ける必要があります。
車を出す、ひと駅歩く、いつもと違う道を通る。
その手間に見合うだけの理由があるかどうかを、お客様は無意識に量っています。
近くの大きな店で済むなら、そちらに行く。
通販で届くなら、それで済ませる。
その天秤を店の側に傾けるのが、品物以外の「わざわざ行く理由」です。
理由が1つはっきりしていれば、少し遠くても、人は足を向けてくれます。
地図で見て「ここなら相談できそうだ」と思えた店には、多少の手間をかけてでも行ってみたくなるものです。
| お客様が確かめること | よくある店の書き方 | 確かめに答える書き方 |
|---|---|---|
| 自分の用事に合う店か | 取扱品目の一覧だけを載せる | 「こんな用事のときに来てください」を3つ書く |
| 入りやすい店か | 何も書いていない | 見るだけでも、質問だけでも歓迎と書く |
| 行く手間に見合うか | 品数の多さや安さを書く | この店でしかできないことを1つ書く |
| 何時に行けば店主がいるか | 営業時間だけを書く | 相談しやすい時間帯を書き添える |
| 駐車や道順はどうか | 住所だけを載せる | 目印と、車を停められる場所を書く |
4つ目は、店主がどんな人か
地域の小さな店では、店主の人柄が店の印象をほとんど決めます。
初めての人は、店に入る前に、店主がどんな人かを知りたがっています。
年齢や経歴が知りたいわけではありません。
どんな気持ちで品物を選んでいるのか、お客様とどう接したいと思っているのか、という点です。
店主の顔写真が1枚あるだけで、「この人に聞けばいいのか」と入る前に想像できます。
人柄が見えないままだと、お客様は大きな店の、誰が対応しても同じ接客のほうを安心だと感じてしまいます。
確かめる場所は、地図とサイトと店先の3か所
お客様が確かめに使う場所は、大きく3つに分かれます。
地図検索の店の情報、店のサイト、そして店の前に立ったときの店先です。
この3か所で書いてあることがそろっていると、お客様は安心して次の段階に進みます。
地図には相談歓迎と書いてあるのに、店先には何の案内もない。
サイトには贈答を承りますとあるのに、地図の写真には贈答品が1枚も写っていない。
こうした食い違いがあると、お客様はどれを信じていいか分からなくなります。
3か所に同じ理由を、それぞれの場所に合った長さで書いておくことが、来店前の伝え方の基本になります。
品揃え・在庫・値段の勝負に乗ると、なぜ苦しくなるのか
新しいお客様を増やそうとするとき、多くの小売店が最初に手をつけるのは品揃えと値段です。
ここでは、その勝負に乗ったときに何が起きるかを確かめておきます。
品数を増やすほど、在庫と手間が重くなる
品揃えで大きな店に近づこうとすると、仕入れる品の種類が増えます。
種類が増えれば、売れ残る品も増え、棚の管理も、発注の手間も重くなります。
店主1人で回している店では、この手間が接客の時間を削っていきます。
本来の強みだった、お客様と話す時間が減ってしまうのです。
しかも、どれだけ品数を増やしても、大きな店の棚の広さには届きません。
値段で勝とうとすると、利幅が先に削れる
特売で人を呼ぼうとすると、利幅が削れます。
小さな店は仕入れの量が少ないので、大きな店と同じ値段をつけると、ほとんど利益が残りません。
特売の日だけ人が来て、ふだんの日には来ない、という状態にもなりがちです。
値段に惹かれて来た人は、もっと安い店が見つかればそちらに移ります。
値段で集めたお客様は、値段で離れていきます。
| 打ち手 | 一時的に起きること | 続けたときに起きること |
|---|---|---|
| 品数を増やす | 棚がにぎやかになる | 売れ残りと発注の手間が増え、接客の時間が減る |
| 特売の日を作る | その日だけ人が来る | 利幅が削れ、ふだんの日の客足が戻らない |
| 在庫を厚く持つ | 欠品が減る | 資金が品物に寝てしまい、新しい手が打てなくなる |
| チラシで安さを知らせる | 値段に反応する人が来る | もっと安い店が見つかれば、そちらに移る |
| 大きな店と同じ品を置く | 比べやすくなる | 比べられた結果、近くて広い店が選ばれる |
在庫を厚くすると、次の手が打てなくなる
欠品を減らそうとして在庫を厚く持つと、店のお金が棚の上の品物に寝てしまいます。
売れるまで現金に戻らないので、新しい取り組みに回せるお金が減ります。
季節の品や、試しに置いてみたい新しい品を仕入れる余地もなくなります。
在庫の厚さで大きな店と並ぶのは、小さな店にとって最も体力を使う勝負です。
置いていない品は取り寄せる、という仕組みを整えたほうが、お客様にとっても店にとっても無理がありません。
大きな店に寄せるほど、店の顔が見えなくなる
品揃えや値段で大きな店に近づこうとすると、店の見た目まで大きな店に似てきます。
同じような品が同じように並び、同じような値札が貼られ、同じような特売の貼り紙が出る。
そうなると、初めての人には、大きな店を小さくしただけの店に見えてしまいます。
大きな店を小さくした店なら、本物の大きな店に行ったほうが早い、と考えるのが自然です。
地域の小さな店が残っていくには、大きな店と比べられない部分を、あえて目立たせる必要があります。
店主の好みで選んだ品の棚、季節ごとに入れ替わる一角、手書きの説明札。
こうした「この店らしさ」は、効率だけを考えると後回しにされがちですが、初めての人が店を覚えるきっかけになります。
| 大きな店に寄せた店 | 初めての人の受け止め方 | 店らしさを残した店 |
|---|---|---|
| 同じ品が同じように並ぶ | どこでも買える品だと感じる | 店主が選んだ理由が札に書いてある |
| 特売の貼り紙が目立つ | 安さだけの店だと感じる | 季節の入荷の案内が目立つ |
| 店主の姿が見えない | 誰に聞けばいいか分からない | 店主の顔と、相談歓迎の一文がある |
| 写真が外観だけ | 何の店か分からない | 売り場と手元の作業の写真がある |
小さな店が持っているのは、別の種類の強みである
品揃えや値段で比べられると不利になる一方で、小さな店には大きな店が持ちにくい強みがあります。
店主が品物のことを詳しく知っていて、お客様の用事に合わせて選べること。
お客様の顔と好みを覚えていて、次に来たときに続きの話ができること。
量や包み方や取り寄せに、その場で融通をきかせられること。
これらは、店の規模が小さいからこそ持てる強みです。
問題は、この強みが店の中でしか伝わっていないことでした。
店に一度でも来た人は、この強みを知っています。
まだ来たことのない人に、来る前の段階でどう伝えるかが、これから考えるべき課題になります。
次の章では、新しいお客様を呼ぼうとして選ばれがちな打ち手を、もう少し具体的に見ていきます。
新しいお客様を呼ぼうとして選ばれがちな打ち手と、その行き先
人通りが減った店の店主が、新しいお客様を呼ぼうとして選ぶ打ち手には、いくつかの決まった型があります。
どれも間違いとは言い切れません。
ただ、来店前に理由を伝える準備がないまま始めると、手間をかけた割に新しいお客様が増えない、という結果になりやすいものです。
ここでは、よく選ばれる打ち手を1つずつ取り上げ、何が起きやすいかを見ていきます。
チラシの枚数を増やす
最初に思いつくのは、チラシを作って近所に配ることです。
新聞の折込みや、ポスティングで、店の存在と特売の情報を知らせます。
チラシを受け取った人は、そこで店のことを知ります。
ところが、気になった人が次にすることは、手元の画面で店の名前を調べることです。
地図で場所を確かめ、写真を見て、口コミを読み、サイトがあれば開きます。
その確かめる場所で何も分からなければ、チラシで生まれた興味はそこで止まります。
チラシの枚数を増やしても、確かめる場所が空のままなら、止まる人の数が増えるだけです。
毎日の投稿を始める
写真や短い文章を発信できる仕組みで、毎日店の様子を投稿し始める店主もいます。
続けられれば、店の雰囲気が伝わる良い手です。
けれど、店主1人で毎日投稿を続けるのは、思っている以上に大変です。
忙しい時期に投稿が途切れ、そのまま止まってしまう例は少なくありません。
最後の投稿が数か月前で止まっていると、見た人は「もう営業していないのでは」と感じてしまいます。
また、投稿は時間が経つと流れていくので、初めての人が店の基本的なことを確かめる場所には向いていません。
投稿は、地図やサイトに書いた基本の情報を補うものとして使うと、無理なく続けられます。
特売や割引の企画を打つ
ポイントを倍にする日、まとめ買いの割引、開店記念の値引き。
値段で人を呼ぶ企画は、その日の客足を確かに増やします。
前の章で見たように、値段に惹かれて来た人は、もっと安い店があればそちらに移ります。
企画が終わると客足が元に戻り、また次の企画を考える、というくり返しになりがちです。
しかも、値段の企画は大きな店のほうが体力があるので、同じ土俵に乗ると長くは続けられません。
値段の企画を打つなら、その日に来た人に「次に来る理由」を渡す準備とセットにしておく必要があります。
取扱品目を増やして「何でもある店」を目指す
お客様の要望に応えようとして、取扱品目を少しずつ広げていく店もあります。
頼まれた品を置き、ついでに関連する品を置き、気がつくと何の店か分からなくなっている。
なじみのお客様にとっては便利かもしれません。
けれど、初めての人から見ると、何が得意な店なのかが見えなくなります。
「何でもある」は、大きな店がいちばん得意とする言葉です。
小さな店が同じ言葉を使っても、大きな店の品数の前ではかすんでしまいます。
店の外観や看板を新しくする
店の見た目を新しくすれば、人が入ってくれるのではないか、と考えることもあります。
看板の塗り直しや、入口の改装は、たしかに店の印象を変えます。
ただ、人通りの少ない場所では、看板を見る人そのものが少ないという問題が残ります。
外観を新しくしても、地図やサイトで店を確かめた人に理由が伝わっていなければ、来店にはつながりにくいものです。
見た目を変える前に、店の前に立つ前の段階で何が伝わっているかを確かめておくほうが、手間をかけた分が生きてきます。
地域の情報誌やネットの広告に出す
地域の情報誌に広告を載せたり、ネットの広告を出したりする手もあります。
決まった費用で、決まった数の人の目に店の名前を届けられるのが利点です。
ただし、広告を見た人の動きも、チラシと同じです。
気になった人は、広告から店の地図やサイトに飛んで、そこで行くかどうかを決めます。
確かめる場所に理由が書かれていなければ、広告の費用は「店の名前を見せた」ところで終わってしまいます。
広告を出す前に、広告を見た人がたどり着く先を整えておく。
この順番を逆にすると、同じ費用でも結果が大きく変わります。
| よく選ばれる打ち手 | その場で起きること | 来店前の準備がないときの行き先 |
|---|---|---|
| チラシの枚数を増やす | 店の存在を知る人が増える | 画面で確かめた先で止まり、来店につながらない |
| 毎日の投稿を始める | 店の雰囲気が伝わる | 途切れると「営業していないのでは」と思われる |
| 特売や割引の企画 | その日だけ客足が増える | 企画が終わると戻り、値段の勝負から抜けられない |
| 取扱品目を増やす | なじみのお客様には便利になる | 何が得意な店か分からなくなる |
| 外観や看板を新しくする | 前を通る人の印象が変わる | 前を通る人が少なく、効き目が見えにくい |
| 情報誌やネットに広告を出す | 店の名前を見る人が増える | たどり着いた先で理由が見つからず、費用が残らない |
どの打ち手も、行き着く先は同じ場所
ここまでの打ち手を並べてみると、共通していることがあります。
どの打ち手で店を知った人も、最後は地図やサイトで店を確かめてから、行くかどうかを決めているという点です。
チラシを見た人も、投稿を見た人も、口コミで聞いた人も、確かめる場所は同じです。
だから、確かめる場所に理由が書いてあれば、どの打ち手の効き目も上がります。
逆に、確かめる場所が空のままなら、どれだけ入口を増やしても、来店の手前で止まり続けます。
チラシ1枚、広告1回にかける手間と費用を考えると、確かめる場所を整えないまま入口を増やすのは、穴の開いた桶に水を注ぐようなものです。
先に穴をふさげば、同じ量の水でも桶に残るようになります。
打ち手を増やす前に、まず確かめる場所を整える。
この順番を守るだけで、同じ手間でも結果が変わってきます。
「何でもあります」「品揃え豊富」と書くと、なぜ選ばれないのか
店のサイトや地図の紹介文で、よく見かける言葉があります。
「品揃え豊富」「何でもそろいます」「お気軽にお立ち寄りください」といった言葉です。
どれも嘘はなく、店主の気持ちもこもっています。
けれど、初めての人に向けた言葉としては、ほとんど何も伝えていません。
どの店にも当てはまる言葉は、読み飛ばされる
「品揃え豊富」は、近くの大きな店にも、通販の店にも、同じように書かれています。
どの店にも当てはまる言葉は、読む人の目を素通りしていきます。
読む人が知りたいのは、「この店は、ほかの店と何が違うのか」という一点です。
その問いに答えていない言葉は、どれだけ丁寧に書いても、店を選ぶ材料になりません。
「お気軽にお立ち寄りください」も同じです。
気軽に立ち寄れるかどうかは、言葉より、立ち寄ったときに何が起きるかが分かることで決まります。
店主にとっての当たり前が、いちばん伝わっていない
店のことをよく知っている店主ほど、自分の店の強みを当たり前だと感じています。
毎朝市場で品物を選んでいること。
お客様の好みを覚えていること。
頼まれれば量を合わせて包むこと。
店主にとっては日々の仕事の一部なので、わざわざ書くほどのことに思えません。
けれど、初めての人にとっては、そうした日々の仕事こそが、店に来る理由になります。
大きな店では、誰が品物を選んだのかも、誰に聞けばいいのかも分からないことが多いからです。
| よく見る言葉 | 読む人の受け止め方 | 置き換えの例 |
|---|---|---|
| 品揃え豊富 | どの店も同じことを言っている | 店主が毎朝選んだ品だけを並べています |
| 何でもそろいます | 大きな店のほうが多そうだ | 店にない品も、取り寄せのご相談をお受けします |
| お気軽にお立ち寄りください | 本当に気軽に入れるのか分からない | 見るだけ、聞くだけでも大歓迎です |
| 安心の品質 | 何をもって安心なのか分からない | 産地と作り手を、札に書いて並べています |
| 地域密着 | 具体的に何をしてくれるのか分からない | ご近所なら、重い品をお届けします |
「地域密着」は、地域で何をしているかで書く
地域の小売店の紹介文で、とくによく見かけるのが「地域密着」という言葉です。
店主にとっては誇りを込めた言葉ですが、読む人には中身が見えません。
地域密着を伝えたいなら、地域で実際にしていることを、そのまま書いたほうが伝わります。
店主にとっては日常の一部でも、外から見ると、その町の店にしかできないことばかりです。
大きな店が真似しにくいのも、こうした地域の暮らしに根づいた仕事です。
近所の学校の行事に合わせて品物を用意していること。
地元の農家や作り手から仕入れている品があること。
足の悪いお年寄りの家に、重い品を届けていること。
町内の祭りの日に、店先で何かを振る舞っていること。
どれか1つでも具体的に書いてあれば、読む人は「この店は、この町の暮らしの中にある店なんだ」と受け取ります。
書く言葉は、店主の口ぐせから拾える
置き換えの言葉は、ゼロから考える必要はありません。
店主がふだんお客様にかけている言葉の中に、もう答えがあります。
「これは今朝入ったばかりですよ」
「少しでよければ分けますよ」
「お使いの物があれば持ってきてください、合うか見ますから」
こうした口ぐせを、そのままサイトや地図の紹介文に書けば、店主の人柄ごと伝わります。
かしこまった宣伝の文章より、店主の話し言葉のほうが、初めての人には店の様子を想像しやすいものです。
写真も同じで、棚全体より一角を写したほうが伝わる
言葉だけでなく、写真にも同じことが言えます。
売り場の全体を引いて撮った写真は、品数が多いことは伝わりますが、どの店も似たような見た目になります。
それより、店主がとくに力を入れている一角や、季節の品が並ぶ棚を寄って撮った写真のほうが、店の個性が伝わります。
1つの棚に、店主の手書きの説明札が添えられている写真があれば、「この店では品物の話を聞けそうだ」と想像してもらえます。
地図の写真が外観と全体だけなら、寄って撮った写真を2枚足すところから始めてみてください。
店主の顔と仕事ぶりを隠したままにしてしまう
地域の小さな店のサイトや地図の情報で、いちばん多い欠けがあります。
店主の顔と、店主が何をしている人なのかが、どこにも出てこないことです。
店主が出ると、売り込んでいるようで気が引ける
店主が自分の顔を出さない理由を聞くと、恥ずかしいから、という答えが多く返ってきます。
自分を前に出すと、売り込んでいるように見えて気が引ける、という声もあります。
その気持ちはよく分かります。
けれど、初めての人の側から見ると、店主の顔が見えないことは、入りにくさの大きな原因になっています。
誰が店にいるのか分からない店に、1人で入るのは勇気がいるからです。
顔を出す目的は、入る前の不安を消すことだと考えると、少し気が楽になるかもしれません。
仕事ぶりの写真は、言葉より多くを伝える
店主の顔写真に加えて、店主が仕事をしている様子の写真があると、伝わる量が一気に増えます。
品物を量っている手元、お客様と話しながら品物を見せている場面、仕入れた品を棚に並べているところ。
こうした写真は、「この店では、こういうことをしてくれる」という説明を、言葉なしで伝えてくれます。
大きな店の売り場の写真と並べたとき、違いがいちばんはっきり出るのも、この人の手が写った写真です。
立派な写真である必要はありません。
手元の電話で撮った、明るい場所の写真で十分です。
| 欠けているもの | 初めての人に起きること | 足すもの |
|---|---|---|
| 店主の顔写真 | 誰がいるか分からず、入りにくい | 店先や売り場に立つ店主の写真を1枚 |
| 仕事ぶりの写真 | 何をしてくれる店か想像できない | 量る、包む、相談に乗る場面の写真 |
| 店主のひとこと | どんな気持ちで店をしているか分からない | 品物を選ぶときに大切にしていることを数行 |
| 相談を受ける旨 | 質問してもいいのか分からない | 用途を伝えてもらえれば一緒に選ぶと書く |
| 店を続けてきた年数 | 信頼できる店か判断できない | 何年この場所で、どんな品を扱ってきたか |
顔を出すのがどうしても難しいときの代わり
事情があって、顔写真を出すのがどうしても難しい店主もいると思います。
その場合は、手元の写真と、店主の言葉で代わりにできます。
品物を包んでいる手、量りに品物をのせている手、説明札を書いている手。
手元の写真でも、そこに人がいて、手をかけて仕事をしていることは十分に伝わります。
そこに、品物を選ぶときに大切にしていることを店主の言葉で数行添えれば、人柄はかなりの部分まで伝わります。
大切なのは、顔そのものを見せることより、入る前に「どんな人がいる店か」を想像できる材料を置くことです。
店の歴史は、なじみのお客様との時間として書く
長く続いてきた店には、それだけで初めての人に伝わる重みがあります。
ただ、創業の年と代替わりの経緯を並べるだけでは、読む人には少し遠い話に聞こえます。
店の歴史を書くなら、なじみのお客様と過ごしてきた時間として書くと伝わりやすくなります。
親子2代で通ってくれている家族がいること。
毎年同じ季節に、同じ品を買いに来てくれる人がいること。
そうした話は、初めての人に「この店は長く信頼されてきた」と感じてもらう材料になります。
相談者の方の店も、20年以上の時間の中で、移転してまで通ってくれるお客様を育ててきました。
その時間そのものが、新しいお客様に向けて語れる、店のいちばんの財産です。
「売れるサイトはみな謙虚」を、地域の小売店に当てはめる
ここまで、新しいお客様が来ない理由が、店の中身より「来店前の伝わり方」にあることを見てきました。
ここからは、その伝わり方をどう直せばいいかを具体的に見ていきます。
私たちは、この状態を直す考え方を「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいます。
最初に置くのは、店の紹介より読む人の用事
謙虚という言葉には、店が自分のことを語る前に、読む人の用事と不安に先に答える、という意味を込めています。
多くの店のサイトは、店の紹介から始まります。
創業の年、店主のあいさつ、取扱品目の一覧。
どれも大切な情報ですが、初めての人が最初に知りたいことではありません。
初めての人が最初に知りたいのは、「自分のこの用事を、この店で済ませられるか」です。
だから、サイトの最初の画面と、地図の紹介文の書き出しには、読む人の用事を置きます。
店の紹介は、その用事に答えたあとで十分に間に合います。
店が先に一歩下がると、読む人が前に出てくる
店のことを語る量を減らすと、伝わる量も減るように感じるかもしれません。
実際には逆のことが起きます。
店が自分の話を控えて、読む人の用事に答える言葉を先に置くと、読む人は「自分のための店だ」と感じて、続きを読んでくれます。
続きを読んでくれれば、店の歴史や店主の想いも、自然と目に入ります。
最初から店の話ばかりだと、読む人は自分に関係のない話だと感じて、画面を閉じてしまいます。
足すより先に、引くものを決める
謙虚なサイトを作るとき、最初にするのは、言葉を足すことより、引くことです。
どの店にも当てはまる言葉、読む人の用事に関係のない情報、店主しか分からない言い回し。
こうしたものを引いていくと、残った言葉に、店らしさがはっきり浮かんできます。
小さな店のサイトは、ページの数が少なくても構いません。
用事に答えるページが3つか4つあれば、初めての人が来店を決めるには十分です。
書いた言葉は、なじみのお客様に読んでもらう
紹介文やサイトの言葉を書いたら、公開する前に、なじみのお客様の誰かに読んでもらうのがおすすめです。
店主が書いた言葉は、どうしても店主の目線になりがちです。
なじみのお客様に「この店のこと、これで合ってますか」と聞くと、思いがけない答えが返ってきます。
「それより、あの取り寄せのことを書いたほうがいいよ」
「店主さんの説明が丁寧なのが、いちばんの理由だけどね」
お客様の目から見た店の良さは、店主が思っているものと少し違うことがあります。
その違いこそが、初めての人に伝えるべき中身です。
| よくある店のサイト | 読む人に起きること | 謙虚に組み直したサイト |
|---|---|---|
| 最初の画面が店名と外観の写真 | 何ができる店か分からない | 最初の画面に「こんな用事のときに」を置く |
| 店主のあいさつが長い | 自分に関係ある話か分からない | あいさつは短く、仕事ぶりの写真を添える |
| 取扱品目がずらりと並ぶ | どれが得意か分からない | 店主がとくに力を入れている品を3つに絞る |
| 「品揃え豊富」の言葉 | どの店も同じに見える | 店にない品は取り寄せる、と書く |
| 行き方が住所だけ | 着けるか不安になる | 目印と、車を停める場所を書く |
来店前に伝える「わざわざ行く理由」を、6つの型で考える
では、品揃えや在庫や値段のほかに、どんな理由を伝えればいいのでしょうか。
地域の小売店が持っている「わざわざ行く理由」は、おおむね6つの型に分けられます。
自分の店がどの型に当てはまるかを考えると、書く中身が決まってきます。
1つ目は、店主が選んでくれること
用途や好みを伝えると、店主が合う品を選んでくれる。
これは、大きな店や通販ではなかなか得られない体験です。
茶葉の店なら、飲む時間や一緒に食べるお菓子に合わせて選ぶ。
金物の店なら、使う場面と手の大きさに合わせて道具を選ぶ。
書くときは、「どんな用途を伝えてもらえれば、何を選べるのか」を具体的に示します。
2つ目は、量や形を合わせてくれること
1人分だけ欲しい、贈り物用に詰め合わせてほしい、使いやすい大きさに切ってほしい。
こうした細かな要望に、その場で応えられるのは小さな店の強みです。
大きな店では決まった量と決まった包装でしか買えない品も、小さな店なら合わせてもらえる。
単身の方や、お年寄りの家庭にとっては、それだけで通う理由になります。
3つ目は、試せること
味見ができる、手に取って重さを確かめられる、実際に使って具合を見られる。
通販では確かめられないことを、店で確かめられるのは大きな理由になります。
試せることを書いておくと、「買うかどうか決めていないけれど、確かめに行ってもいい」と思ってもらえます。
この一歩が、初めての人の来店のハードルを大きく下げます。
4つ目は、季節や入荷の楽しみがあること
その季節にしか入らない品、決まった時期に届く作り手の品、店主が見つけてきた珍しい品。
いつ行っても同じではない、という楽しみは、なじみのお客様を店に呼び続けてきた理由の1つです。
これを初めての人に伝えるには、入荷の予定を先に知らせておくことです。
「来月の半ばに、毎年人気の品が入ります」と書いてあれば、その時期に合わせて足を運ぶ理由になります。
5つ目は、買ったあとも面倒を見てくれること
道具の調整や手入れ、修理の受付、使い方の相談。
買ったあとに困ったとき、持っていけば見てもらえる店は、それだけで信頼を集めます。
通販で買った品は、困ったときに誰に聞けばいいか分からないことが多いからです。
買ったあとの面倒見を書いておくと、値段だけでは比べられない安心を伝えられます。
6つ目は、取り寄せや届けに応じてくれること
店に置いていない品を取り寄せてくれる、重い品を家まで届けてくれる、取り置きをしてくれる。
こうした融通は、なじみのお客様が当たり前に使っているのに、初めての人には知られていないことの代表です。
書いておくだけで、「品数が少ないのでは」という不安を、そのまま安心に変えられます。
| 理由の型 | 初めての人に伝わること | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 店主が選んでくれる | 詳しくなくても大丈夫 | 用途をお聞かせいただければ、合う品を一緒に選びます |
| 量や形を合わせてくれる | 少しだけでも頼める | 1人分からでも、量を合わせてお包みします |
| 試せる | 買うと決めずに行ってよい | 味見や試し使いができる品を、いつも用意しています |
| 季節や入荷の楽しみがある | 行く時期に理由がある | 毎月の入荷予定を、このページでお知らせします |
| 買ったあとも見てくれる | 困ったときに頼れる | お買い上げの品の調整や手入れの相談を承ります |
| 取り寄せや届けに応じる | 品数の少なさを気にしなくてよい | 店にない品の取り寄せと、ご近所への配達を承ります |
6つ全部を書かなくていい
この6つの型を、全部そろえる必要はありません。
自分の店で、なじみのお客様がいちばん喜んでくれている型を1つか2つ選び、それを前に出します。
全部を並べると、また「何でもある店」に戻ってしまいます。
1つの理由がはっきり伝わる店のほうが、初めての人の記憶に残ります。
「あの茶葉の店は、選んでもらえる店」「あの金物屋は、研いでもらえる店」と、ひと言で覚えてもらえる状態を目指してください。
ひと言で覚えてもらえれば、なじみのお客様が誰かに店を紹介するときも、その言葉で伝えてもらえます。
自分の店の型を見つけるための問い
どの型を前に出すか迷ったときは、次の問いに順番に答えてみてください。
なじみのお客様が、会計のときにいちばんよく口にする言葉は何か。
大きな店や通販で買ったあとに、困って店に相談に来た人は何に困っていたか。
ほかの店では断られたけれど、この店では引き受けた頼みごとは何か。
この問いの答えに、店の「わざわざ行く理由」が隠れています。
答えが6つの型のどれに当たるかを見れば、前に出す型が自然と決まります。
答えが思いつかないときは、1週間だけ、お客様にかけられた言葉を紙に書き留めてみてください。
1週間分を見返すと、同じ種類の言葉がくり返し出てきているはずです。
初めてのお客様が、来店を決めてまた来るまでの流れ
来店前に理由を伝える準備ができたら、初めての人がどんな順番で店とつながっていくのかを、流れで確かめておきます。
流れのどこかで途切れていると、せっかく書いた理由が来店や再来店につながりません。
地図で店を見つけた人が、サイトで理由を読む
流れの入口は、多くの場合、地図検索です。
近くの店を探している人が、地図の上で店の名前と写真を見つけます。
そこで気になった人が、店のサイトを開いて、わざわざ行く理由を確かめます。
この段階で理由が見つかれば、「一度行ってみよう」と来店を決めてくれます。
店に来た人が、書いてあったことを確かめる
来店した人は、サイトに書いてあったことが本当かどうかを、店で確かめます。
相談に乗ってくれると書いてあったなら、店主に声をかけてみる。
量を合わせてくれると書いてあったなら、少しだけ頼んでみる。
書いてあったことがその通りだと分かると、初めての人は安心し、店への信頼が生まれます。
その信頼は、次に誰かに店のことを話すときの、いちばんの材料にもなります。
「書いてある通りに、ちゃんと相談に乗ってくれたよ」という一言は、どんな宣伝よりも強く伝わります。
逆に、書いてあることと店での対応が違うと、その時点で信頼が崩れます。
書くのは、店で実際にしていることだけにしておきます。
帰り際に、次に来る理由を持ち帰ってもらう
初めての来店で終わらせないためには、帰り際に「次に来る理由」を渡しておくことです。
来月の入荷の予定を書いた小さな紙、取り寄せの相談を受けたときの控え、手入れの時期の目安。
持ち帰った紙を家で見返したとき、もう一度店のことを思い出してもらえます。
二度目の来店は、一度目より気軽です。
三度目になれば、その人はもう、なじみのお客様の入口に立っています。
| 流れの段階 | 店がしておくこと | 途切れたときに起きること |
|---|---|---|
| 地図で店を見つける | 店名、写真、紹介文を整える | 店があることに気づかれない |
| サイトで理由を読む | わざわざ行く理由を1つ書く | 行く理由が見つからず、大きな店に行く |
| 店で確かめる | 書いたことを、そのまま店でする | 書いてあることと違い、信頼が崩れる |
| 次の理由を持ち帰る | 入荷予定や手入れの目安を渡す | 一度きりで終わり、二度目が来ない |
業種ごとに、何を前に出すかを決める
同じ地域の小売店でも、扱う品によって前に出す理由は変わります。
ここでは、食品、日用品、専門の品の3つに分けて、書き方の違いを見ておきます。
食品を扱う店は、季節と目利きを前に出す
青果、鮮魚、精肉、茶葉、乾物、菓子などを扱う店では、季節の移り変わりと、店主の目利きが大きな理由になります。
今の時期においしいものは何か、どう食べるといいか、どれくらいもつか。
こうした話を、店主に聞けるのが食品の店の強みです。
サイトや地図には、季節ごとの入荷の予定と、店主のおすすめの食べ方を短く書いておきます。
食べ方の一言があるだけで、料理に迷っている人が「聞きに行ってみよう」と思えます。
日用品を扱う店は、手間を減らすことを前に出す
洗剤や紙類、台所の小物、ちょっとした工具などを扱う店は、品物だけ見ると大きな店や通販と重なりやすい業種です。
ここでは、お客様の手間を減らすことを理由として前に出します。
重い品やかさばる品を届ける、いつも使っている品を覚えておいて切れる頃に声をかける、使い方の分からない品を説明する。
とくにお年寄りの家庭や、車を持たない家庭にとっては、こうした手間の肩代わりが通う理由になります。
専門の品を扱う店は、相談と買ったあとの面倒見を前に出す
文具、金物、陶器、釣り具、楽器、手芸用品など、専門の品を扱う店では、店主の知識そのものが最大の理由です。
選び方の相談、使い方の説明、買ったあとの調整や修理。
通販で同じ品が買えても、困ったときに持っていける店があることには、値段では測れない価値があります。
サイトには、受けられる相談の種類と、買ったあとに頼めることを具体的に書いておきます。
| 業種 | 前に出す理由 | 地図やサイトに書くこと |
|---|---|---|
| 食品を扱う店 | 季節の入荷と、店主の目利き | 今月の入荷予定と、おすすめの食べ方の一言 |
| 日用品を扱う店 | お客様の手間を減らすこと | 配達の範囲と、使い方の説明を受ける旨 |
| 専門の品を扱う店 | 相談と、買ったあとの面倒見 | 受けられる相談の種類と、調整や修理の受付 |
| 贈答品を扱う店 | 用途に合わせた詰め合わせ | 予算と相手を伝えてもらえれば組むと書く |
| 地元の品を扱う店 | 作り手とのつながり | 作り手の名前と、仕入れている理由を書く |
どの業種でも、書くのは店で実際にしていることだけ
業種ごとに前に出す理由は違っても、守ることは1つです。
店で実際にしていることだけを書く、という点です。
できないことや、たまにしかしないことを書くと、初めての人が来たときに期待とのずれが生まれます。
「配達します」と書いたのに、忙しい日は断ってしまう。
「相談に乗ります」と書いたのに、混んでいる時間は話を聞けない。
こうしたずれは、書かなかった場合より大きく信頼を損ないます。
条件があるなら、その条件も一緒に書いておきます。
「ご近所に限り、平日の午後に配達します」
「混み合う夕方を避けていただくと、ゆっくりご相談に乗れます」
条件まで書いてあると、読む人は「正直な店だ」と受け取り、かえって安心してくれます。
地図検索の情報と口コミを、来店前の入口として整える
人通りの少ない場所にある店にとって、地図検索の店の情報は、いまや店先の看板と同じくらい大事な入口です。
ここでは、地図の情報と口コミの扱い方を、店主1人でもできる範囲で見ておきます。
地図の情報は、まず基本の項目を正しくそろえる
最初に確かめたいのは、店の名前、住所、電話番号、営業時間、定休日が正しく載っているかどうかです。
移転した店では、古い住所や古い営業時間が残っていることがよくあります。
相談者の方の店のように場所を移した場合は、とくに念入りに確かめておく必要があります。
古い場所の情報が残っていると、探してくれた人が前の場所に行ってしまい、そのまま二度と探してくれなくなるからです。
営業時間を変えたときや、臨時の休みがあるときも、その都度直しておきます。
紹介文には、わざわざ行く理由を1つ書く
地図の店の情報には、店の紹介文を書く欄があります。
ここに、前の章で選んだ「わざわざ行く理由」を、短い言葉で書いておきます。
取扱品目を並べるだけで終わらせず、読む人の用事に答える一文から始めるのがこつです。
「用途をお聞かせいただければ、合う茶葉を一緒に選びます」
「1人分からでも、量を合わせてお包みします」
こうした一文が、地図の上で店を見つけた人の手を止めさせます。
写真は、売り場と店主の手元を足す
地図に載っている写真が、外観の1枚だけという店は少なくありません。
外観だけでは、店の中で何が起きるのかが分かりません。
売り場の一角を寄って撮った写真、店主が品物を量ったり包んだりしている手元の写真、季節の品が並ぶ棚の写真。
この数枚を足すだけで、初めての人が店の中を想像しやすくなります。
写真は季節が変わるごとに入れ替えると、店がいまも元気に営業していることも伝わります。
口コミには、すべてに店主の言葉で返す
地図の口コミには、良いものにも悪いものにも、店主の言葉で返事をしておきます。
良い口コミへの返事は、書いてくれた人へのお礼であると同時に、これから来る人への案内にもなります。
「次は来月の入荷の頃に、ぜひまたお越しください」と添えれば、読んだ人にも次の楽しみが伝わります。
厳しい口コミには、言い訳をせず、事実を確かめたうえで、直せることは直したと書きます。
返事の丁寧さは、初めての人が「この店主なら安心して話せそうだ」と感じる材料になります。
月に1度、入荷の知らせを載せる
地図の店の情報には、短い知らせを載せられる欄もあります。
毎日の更新は要りません。
月に1度、来月の入荷の予定や、季節の品の知らせを1つ載せるだけで十分です。
最新の知らせが新しい日付になっているだけで、見た人は「この店はいまも営業している」と安心できます。
知らせの文面は、店先に貼る紙と同じものを使えば、書く手間も1回で済みます。
店先の貼り紙にも、地図と同じ理由を書く
地図で店を知った人が実際に店の前に立ったとき、店先に同じ理由が書いてあると、迷わず扉を開けられます。
「見るだけ、聞くだけでも大歓迎です」
「1人分からお包みします」
地図で読んだ言葉と同じ言葉が店先にあると、初めての人は「ここで合っている」と確かめられます。
入口の扉が閉まっていて中が見えにくい店ほど、店先の一言が入りやすさを大きく左右します。
| 地図の項目 | よくある状態 | 整えたあとの状態 |
|---|---|---|
| 住所と営業時間 | 移転前の情報が残っている | 今の場所と、今の営業時間になっている |
| 紹介文 | 取扱品目の一覧だけ | わざわざ行く理由が一文目にある |
| 写真 | 外観の1枚だけ | 売り場の一角と、店主の手元の写真がある |
| 口コミへの返事 | 何も返していない | すべてに店主の言葉で返している |
| 最新の投稿 | 何か月も前で止まっている | 月に1度、入荷の知らせを載せている |
なじみのお客様を、新しいお客様への案内役にする
相談者の方の店を支えていたのは、移転してまで通ってくれるなじみのお客様でした。
その人たちは、店にとって最も心強い味方であると同時に、新しいお客様を連れてきてくれる案内役にもなり得ます。
口コミを書いてほしいと、素直に頼む
なじみのお客様の多くは、店のことを気に入っていても、地図に口コミを書くことまでは思いつきません。
だから、店主の側から素直に頼んでみます。
「移転して、新しいお客様に見つけてもらうのに苦労しているんです」と事情を話せば、喜んで書いてくれる人は少なくありません。
口コミの書き方を書いた小さな紙を用意しておくと、慣れていない人でも書きやすくなります。
なじみのお客様の言葉で書かれた口コミは、店主が書くどんな紹介文よりも、初めての人に信頼されます。
お客様の言葉を、許しを得てサイトに載せる
なじみのお客様が店について話してくれた言葉は、本人の許しを得たうえで、サイトに載せることもできます。
名前を出さず、「近所にお住まいの方」「親子2代でお越しの方」といった書き方にすれば、載せることを了承してもらいやすくなります。
載せる前には、必ず本人に文面を見せて、確認してもらうようにします。
店主が自分で「相談に乗ります」と書くより、お客様が「ここで聞くと間違いがない」と話している言葉のほうが、初めての人にはずっと響きます。
紹介してくれた人に、きちんとお礼を伝える
なじみのお客様が、家族や知り合いを連れてきてくれることがあります。
そうしたときは、紹介してくれた人に、次に来店したときにきちんとお礼を伝えます。
特別な値引きや景品を用意する必要はありません。
店主が覚えていて、言葉でお礼を伝えることが、何よりの返礼になります。
その気持ちが伝われば、また誰かを連れてきてくれるきっかけになります。
紹介で来た人には、紹介してくれた人の名前を出して「いつもお世話になっています」と伝えると、初めてでも打ち解けやすくなります。
紹介した人と、紹介された人の両方が気持ちよく過ごせる店は、自然と人が人を呼ぶようになります。
| 頼みごと | なじみのお客様への伝え方 | 新しいお客様に起きること |
|---|---|---|
| 地図への口コミ | 移転の事情を話し、書き方の紙を渡す | 店の良さを、お客様の言葉で知る |
| サイトへの声の掲載 | 名前を出さない形で、文面を確認してもらう | 店主の言葉より信頼できる材料が増える |
| 知り合いの紹介 | 頼むより、連れてきてくれたらお礼を伝える | 信頼できる人の紹介で、入りやすくなる |
| 写真の協力 | 店で話している場面を撮らせてもらう | 店の雰囲気が、写真から伝わる |
新しいお客様が増えたかどうかを、店主が確かめる方法
地図やサイトを整えたら、その効き目を確かめておきたいものです。
難しい分析の道具は要りません。
店主1人でも続けられる、簡単な確かめ方を紹介します。
初めての人に、何を見て来たかを聞く
いちばん確かなのは、初めて来てくれた人に「何を見て来てくださったんですか」と聞くことです。
地図で見つけたのか、サイトを読んだのか、知り合いに聞いたのか。
答えを紙に書き留めておくと、どの入口が効いているかが見えてきます。
会計のついでに一言聞くだけなので、お客様にも負担になりません。
地図の店の情報で、見られた回数を確かめる
地図検索の店の情報には、店の情報が見られた回数や、電話や道順の検索がされた回数を確かめられる画面があります。
紹介文や写真を整えた前と後で、この回数を比べてみます。
月に1度、同じ日に数字を書き留めておくだけで、変化が分かります。
数字が増えていれば、店のことを確かめに来る人が増えているということになります。
3か月は同じ形で続けてから判断する
紹介文や写真を整えても、すぐに新しいお客様が増えるとは限りません。
地図の情報が多くの人の目に触れるまでには、ある程度の時間がかかるからです。
少なくとも3か月は同じ形で続けて、そのあいだの数字と、初めての人に聞いた答えを見比べてください。
3か月たっても変化がなければ、紹介文の一文目を別の理由に差し替えてみます。
一度に全部を変えると、何が効いたのかが分からなくなるので、変えるのは1か所ずつにします。
| 確かめること | やり方 | 分かること |
|---|---|---|
| 初めての人の数 | 会計のときに、初めてかどうかを聞いて数える | 新しいお客様が増えているか |
| 何を見て来たか | 初めての人に一言聞いて、紙に書き留める | どの入口が効いているか |
| 地図の見られた回数 | 月に1度、地図の管理画面の数字を書き留める | 店を確かめる人が増えているか |
| 二度目の来店 | 前に来た人の顔を覚え、二度目を数える | 次に来る理由が伝わっているか |
よくある質問
Q. 店のサイトを持っていません。地図の情報だけでも効果はありますか?
地図の情報だけでも、整える意味は十分にあります。
人通りの少ない場所の店では、地図の情報が最初の入口になることが多いからです。
まずは地図の基本の項目と紹介文と写真を整えてください。
そのうえで、わざわざ行く理由をもう少し詳しく伝えたくなったら、数ページのサイトを用意すると、地図から来た人が確かめる場所ができます。
Q. 大きな店と同じ品を扱っています。それでも書けることはありますか?
同じ品を扱っていても、書けることはあります。
品物が同じでも、選び方の相談、量の合わせ方、買ったあとの面倒見は、店によって違うからです。
品物の説明はほどほどにして、「この店で買うと何が違うのか」を書いてください。
なじみのお客様に、なぜこの店で買うのかを聞いてみると、書く中身が見つかります。
Q. 値段をサイトに書いたほうがいいですか?
品物の値段を全部載せる必要はありません。
値段だけが並んでいると、大きな店や通販と比べる材料にしかならないことがあるからです。
ただし、配達や取り寄せに追加の費用がかかるかどうかは、初めての人が気にする点なので、分かるように書いておきます。
費用がかからないなら、そのこと自体が来店の理由になります。
Q. 文章を書くのが苦手です。何から書けばいいですか?
書くのが苦手な方は、店主の口ぐせを書き出すところから始めてください。
お客様にふだんかけている言葉を、そのまま紙に書いてみます。
「今朝入ったばかりですよ」「少しでよければ分けますよ」といった言葉が、そのまま紹介文の一文になります。
かしこまった文章にする必要はありません。
話し言葉のほうが、店主の人柄が伝わります。
書いたものは、なじみのお客様に読んでもらい、店の様子と合っているかを確かめてから載せると安心です。
Q. 移転したばかりで、なじみのお客様も減ってしまいました
移転したばかりの店は、まず地図の住所と営業時間が、今の場所のものになっているかを確かめてください。
前の場所の情報が残っていると、探してくれた人が迷ってしまいます。
そのうえで、前の場所の近くに住んでいたなじみのお客様に、新しい場所の案内を手渡しや郵便で届けます。
道順と目印、車を停められる場所を書いた案内があれば、場所が変わっても足を運んでもらいやすくなります。
まとめ
地域の小売店に新しいお客様が来なくなった背景には、人通りの減少と、お客様が店に来る前に画面で確かめるようになった変化があります。
店の良さはそのままでも、それが伝わる道筋が変わりました。
国の統計でも、商店街の空き店舗率は平均で13.59%、ネットで買い物をする世帯は56.9%にのぼっています。
この流れの中で、品揃えや在庫や値段の勝負に乗ると、大きな店や通販のほうがいつも一歩先にいます。
小さな店が前に出すべきなのは、店主が選んでくれること、量を合わせてくれること、試せること、季節の楽しみ、買ったあとの面倒見、取り寄せや届けといった「わざわざ行く理由」です。
その理由を、地図とサイトと店先の3か所で、お客様が店に来る前に伝えておきます。
書く中身は、なじみのお客様の言葉の中に、もう入っています。
Q&Aサイトの相談者の方の店にも、移転してまで通ってくれるお客様がいました。
その人たちが店に通い続ける理由を言葉にすることが、今の場所で新しいお客様を迎える最初の一歩になります。
今日できる点検
最後に、今日のうちに自分の店で確かめられることを表にまとめました。
全部を一度に直す必要はありません。
いちばん気になった1か所から始めてください。
| 点検する場所 | 確かめること | 直すときの方向 |
|---|---|---|
| 地図の基本の項目 | 住所、営業時間、定休日が今のものか | 違っていれば今日のうちに直す |
| 地図の紹介文 | わざわざ行く理由が一文目にあるか | 読む人の用事に答える一文から始める |
| 地図の写真 | 外観だけになっていないか | 売り場の一角と、店主の手元の写真を足す |
| 口コミへの返事 | 返していない口コミが残っていないか | すべてに店主の言葉で返す |
| サイトの最初の画面 | 店の紹介から始まっていないか | 「こんな用事のときに」を先に置く |
| 店主の顔と仕事ぶり | どんな人がいる店か分かるか | 顔写真か手元の写真と、ひとことを載せる |
| よく使っている言葉 | 「品揃え豊富」「地域密着」で済ませていないか | 店で実際にしていることに置き換える |
| 帰り際に渡すもの | 次に来る理由を持ち帰ってもらえているか | 入荷予定や手入れの目安を書いた紙を用意する |
点検してみて、どこから手をつければいいか迷ったときは、地図の紹介文から始めてください。
地図の紹介文は、チラシを見た人も、口コミで聞いた人も、最後に目を通す場所だからです。
次に店を開ける前に、なじみのお客様がいちばんよく口にする言葉を思い出し、それを紹介文の一文目に書いてみてください。
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