「ホームページを作ったのに、問い合わせが来ない」「どこを直せばいいのか分からない」。ウェブサイトの相談で最初にいただくお困りごとは、たいていこの2つです。
特にデジタルに詳しくない方にとって、サイトの設計は正解の見えない作業に感じられます。「スーパーの売り場みたいに細かく分けたほうが親切じゃないかしら」「せっかく作ったのに、うちのサービスが伝わっていない気がする」。どちらも、よくいただくご相談です。
結論から書きます。サイト設計で効くのは、分類の細かさよりも訪れた人が迷わず目的にたどり着ける導線のほうです。そして、この導線づくりは専門知識がなくても実践できます。
この記事では、サイトの構成で悩んでいる方に向けて、次の3点を整理します。
- 訪問者が迷わないサイト設計の基本
- 集客につながる情報配置とナビゲーションの考え方
- 今日から手をつけられる具体的な直し方
なぜ「スーパーの売り場」型の分類でつまずくのか
ウェブサイトを作るとき、多くの方が最初に手をつけるのがカテゴリー分けです。扱っている商品やサービスを整理し、きれいな階層に並べる。作業としては気持ちのいい工程ですが、ここに落とし穴があります。
実店舗であれば、来店した人は棚を眺めながら歩き回れます。目的の売り場が見つからなくても、視界の端に別の商品が入り、偶然の出会いが起こります。ウェブサイトには、この「歩き回りながら眺める」という体験がありません。画面に映っているのは、常にサイトのごく一部だけです。
そのため、分類を細かくするほど、訪問者は「自分がどこにいて、目的のものがどの階層にあるか」を見失います。分類する側の頭の中では整理されていても、初めて訪れた人にはその地図が共有されていません。
Googleも検索セントラルの資料で、サイトを論理的に整理することを推奨しています。検索エンジンと利用者の双方が、ページ同士の関係を把握しやすくなるためです。ただしここで言う「論理的」とは、分類を細かくすることではありません。関連するものが近くにまとまっていて、どこにいるかが分かる状態のことです。
| サイトの状態 | 訪問者に起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| トップに全サービスが並んでいる | どれが自分向けか判断できず離れる | 入口を1つに絞り、他は下層へ送る |
| メニューが10個以上ある | 選べず、そのまま閉じる | 5つ以内にし、迷う項目は統合する |
| どのページも同じボタンで終わる | 文脈と合わず押されない | そのページの内容に続く行き先を置く |
| 階層が3段より深い | 目的のページに辿り着けない | 主要なページはトップから2回で開ける形にする |
| 現在地が分からない | 戻る場所が分からず離脱する | パンくずを置き、見出しと一致させる |
訪問者が迷わないサイト設計の基本
「この人は何をしに来たか」から逆算する
設計の出発点に置くのは、扱っている商品の分類より、訪れる人の目的のほうです。目的は、だいたい次の3つに収まります。
- このサービスが自分に合うかを確かめたい
- 費用と条件を知りたい
- 問い合わせや申し込みをしたい
この3つの目的それぞれについて、トップページから何回のクリックでたどり着けるかを数えてみてください。3回以上かかっている目的があれば、そこが最優先の改善箇所です。数えるだけの作業なので、今日のうちに終わります。
情報の整理は、階層を浅くする方向で考える
分類を増やしたくなったら、まず「この分類を見て、訪問者は自分がどこに行けばいいか判断できるか」を考えてください。判断の材料にならない分類は、階層を1段深くするだけの存在になります。
大まかな分類から始めて、ページ数が増えてきた段階で必要な分だけ細分化する。この順番で進めるほうが、最初から緻密な階層を設計するより破綻しにくくなります。サイトを作る時点では、どのページがよく読まれるかは分かりません。実際の反応を見てから整えるほうが、判断の精度が上がります。
関連する情報は同じページにまとめる
サービスの説明、料金、よくある質問がそれぞれ別のページに分かれていると、検討している人は3ページを行き来することになります。判断に必要な情報が1ページに揃っていれば、その往復がなくなります。
分けるべきか迷ったときの目安は、「その情報だけを見に来る人がいるかどうか」です。料金だけを確認しに来る人がいるなら独立したページにする価値があります。そうでないなら、サービスの説明と同じページに置いたほうが親切です。
ナビゲーションの作り方
ナビゲーションは、訪問者にとっての道しるべです。作るときに守ることは3つあります。
- 言葉を、訪問者が使う言葉にそろえる:社内用語やサービス名だけのメニューでは、初めて来た人に中身が伝わりません。「ソリューション」より「できること」のほうが、迷わず押せます。
- 項目を絞る:メニューが多いほど親切に見えますが、選択肢が増えるほど人は選べなくなります。迷う項目は統合し、5つ前後に収めてください。
- 現在地と戻り道を示す:どのページからでもトップに戻れるようにし、下層ページにはパンくずリストを置きます。Googleも、URLの構成が検索結果にパンくずリストとして表示され、利用者が結果の有用性を判断する助けになると説明しています。
スマートフォンでの見え方を基準にする
サイトを作るときはパソコンの画面で作業しますが、見られているのは多くの場合スマートフォンです。作業した画面での見え方だけを確認して公開すると、実際の読者が見ている画面とずれたまま運用することになります。
確認の手順は単純です。公開前に自分のスマートフォンでサイトを開き、トップページから問い合わせまでを実際に指で操作してみてください。文字が小さくて読めない、ボタンが近すぎて押し間違える、画像が重くて表示に時間がかかる。こうした問題は、この5分で全部見つかります。
集客につながるサイト構造の型
ここからは、実際にどう組み立てるかを型として示します。業種を問わず使える形です。
型1:入口を1つに絞る
トップページで複数のサービスを横並びにすると、訪問者は「どれが自分向けか」の判断から始めることになります。この判断は面倒なので、多くの人はそこで離れます。
主力のサービスを1つ決め、トップページはそれだけを語る形にしてください。他のサービスは、下層のページに置いて、必要な人だけがたどり着ける形にします。取り扱いを減らすという話ではありません。見せる順番を決めるという話です。
型2:ページごとに行き先を1つ置く
どのページを読み終えても同じボタンが出てくるサイトは、文脈とボタンの中身が噛み合いません。料金を見ていた人と、導入事例を読んでいた人では、次にやりたいことが違います。
各ページの内容と地続きの行き先を1つだけ置いてください。行き先が複数並ぶと、訪問者は選べずにそのまま離れます。1つに絞る狙いは、選択肢を奪うことより、迷いを取り除くことにあります。
型3:階層は2段までで届かせる
主要なページは、トップから2回のクリックで開ける位置に置いてください。3段以上の階層に置かれたページは、存在していても実質的に見られていない状態になりがちです。
階層が深くなってしまう場合は、下層に置いたページへの入口を、関連する記事の本文中からも張ってください。メニューからしか行けないページより、文脈の中でリンクされているページのほうが押されます。
型4:現在地を常に示す
下層ページには、そのページがサイトのどこに位置するかを示すパンくずリストを置きます。このとき、パンくずに表示される名称と、ページの見出しの言葉をそろえてください。ここがずれていると、訪問者は自分がどこにいるのか分からなくなります。
よく見かける失敗の形
相談を受けるサイトで繰り返し目にする形を、4つ挙げます。どれも直し方まで含めて単純なので、当てはまるものがあれば今日から着手できます。
自社の組織図がそのままメニューになっている
事業部や部署の区分けをそのままメニューにしているサイトは、意外と多くあります。社内では共有されている区分けでも、初めて訪れた人にとっては意味を持ちません。訪問者は「自分の困りごとがどの部署の担当か」を知らないまま来ています。
直し方は、メニューの言葉を「困りごと」に置き換えることです。部署名で分けるかわりに、「こんなときに」「はじめての方へ」といった、訪問者の状況を表す言葉で入口を作ります。中の構成を変えなくても、入口の名前を変えるだけで押される率が変わります。
トップページに情報を全部載せている
「せっかく来てくれたのだから、伝えられることは全部伝えたい」という気持ちは分かります。ただ、長いトップページは、読む人にとっては「どこを読めばいいか分からないページ」になります。
トップページの役割は、全部を伝えることではなく、次に行くべき場所を示すことです。詳しい説明は下層のページに置き、トップでは「誰の、何を解決するのか」と「次にどこを見ればよいか」の2点に絞ってください。
同じような内容のページが複数ある
サイトを長く運用していると、似た内容のページが増えていきます。新しい担当者が過去のページの存在を知らずに作った、キャンペーンごとに似たページを量産した、といった経緯で起こります。
訪問者から見れば、どれを読めばよいか分からない状態です。検索エンジンの側も、同じ問いに対してどのページを出すべきか判断しかねます。まずは既存のページを一覧にして、内容が重なっているものがないかを確認してください。重なっているページは、内容の厚いほうに統合し、統合元から統合先へ転送を設定するのが基本です。
問い合わせフォームの項目が多すぎる
導線を整えてフォームまで来てもらえても、入力項目が10個以上並んでいると、そこで手が止まります。営業側が欲しい情報を全部聞こうとすると、こうなりがちです。
最初の接点で必要な項目は、名前と連絡先と用件くらいです。残りは、返信のやり取りの中で伺えば済みます。フォームの項目数は、数えて減らすだけの作業なので、着手の負担も小さいところです。
今日からできる3つのステップ
ステップ1:訪問者の動きを数字で見る
アクセス解析を入れているなら、どのページがよく見られていて、どのページで離脱が多いかを確認してください。感覚で改善箇所を探すより、数字で当たりをつけるほうが早く進みます。
合わせて、問い合わせフォームにたどり着いた人が、直前にどのページを見ていたかも確認します。成果につながっているページが分かれば、他のページをその形に寄せるという判断ができます。
ステップ2:実際に使ってもらう
数字では分からないことは、人に触ってもらうと見えます。社内の人でも、家族でも構いません。「このサイトで、料金を調べて問い合わせまでしてみてください」と頼み、横で操作を見てください。
このとき、口を出さずに黙って見るのがコツです。迷った箇所、押し間違えた箇所、戻ろうとした箇所。3人に見てもらえば、直すべき箇所はほぼ出そろいます。高価なツールを使うより、この方法のほうが具体的な発見があります。
ステップ3:1箇所ずつ直して、期間を置く
改善点が複数見つかっても、一度に全部直さないでください。同時に変えると、どの変更が効いたのか分からなくなります。
1箇所直したら、1ヶ月ほど数字を見てから次に進みます。地味な進め方ですが、何が効いたかが記録として残るため、2年目以降の改善速度が変わります。なお、訪問者数が少ないサイトで2つの案を比べると、差が出たように見えても偶然の範囲に収まることがあります。件数が十分に溜まるまでは、比較よりも「明らかにおかしい箇所を直す」ことを優先してください。
よくある質問
SEOと使いやすさ、どちらを優先すべきですか
分けて考える必要のない問いです。Googleは検索セントラルで、自社のランキングシステムは検索順位の操作を目的としたコンテンツではなく、ユーザーにメリットをもたらすことを目的として作成された有用で信頼できる情報を上位に表示するよう設計されている、と説明しています。訪問者にとって分かりやすいサイトを作ることが、そのまま検索エンジンへの対応にもなります。
ページ数は多いほうがよいですか
数より、1ページずつに存在意義があるかどうかです。似た内容のページが複数あると、訪問者はどれを読めばよいか迷い、検索エンジン側もどのページを出すべきか判断しかねます。増やす前に、既存のページで重複しているものがないかを確認してください。
デザインを変えれば問い合わせは増えますか
見た目より、書いてある内容と導線のほうが先に効きます。何をしている会社で、誰の何を解決できて、いくらかかるのか。この3点が分かりにくいサイトは、デザインを新しくしても問い合わせの件数は動きにくいところがあります。
写真やレビューは載せたほうがよいですか
判断材料になるものは載せる価値があります。ただし、お客様の声を掲載する場合は、必ず本人から掲載の許諾を取ってください。実名や写真を出す範囲も、その都度確認が必要です。許諾が取れないときは、無理に埋めず空けておくほうが安全です。
メニューはいくつまでが適切ですか
5つ前後を目安にしてください。厳密な上限があるわけではありませんが、項目が増えるほど1つあたりが選ばれにくくなります。削れない事情がある場合は、主要な5つを上段に置き、残りをフッターに回すという分け方もあります。
まとめ
サイト構造で大事なのは、分類の細かさではなく、訪れた人が迷わず目的にたどり着けるかどうかです。入口を絞り、階層を浅くし、各ページに行き先を1つ置き、現在地を示す。この4つで、ほとんどのサイトは見違えます。
そして、直す順番を決める材料は、自分の感覚より実際の訪問者の動きのほうです。数字で当たりをつけ、人に触ってもらって確かめ、1箇所ずつ直す。この進め方なら、専門知識がなくても着実に前に進めます。
まずは今日、自分のスマートフォンで自社サイトを開き、トップページから問い合わせまでを実際に操作してみてください。そこで引っかかった箇所が、最初に直すべき場所です。
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