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【LLMO論文解説】GoogleのAI回答は7か国から229か国へ、日本は33%から59%|243か国・約284万件の実測(プレプリント)

2026 11/06
2026年11月6日
中野輝規
GoogleのAI回答は7か国から229か国へ、日本は33%から59%

「AIが検索結果の上に答えを出す」という変化は、どこまで広がっているのでしょうか。その広がりを、同じ質問を2024年と2025年に打ち直して測った論文があります。

2026年2月にarXivで公開された「The Rise of AI Search: Implications for Information Markets and Human Judgement at Scale」です。

この記事は、その論文を原文から読み、何を調べて何が分かったのかを整理します。数値は、論文の本文と図に書かれた値を拾いました。

図の値を読み取ったものには、そのように書いています。

合同会社謙虚は、3つのドメインを並行して運用し、何を変えると数字が動くかを測り続けています。この論文は、AIの答えが出る場面そのものがどれだけ増えたかを測っているため、対策の前提を確かめる材料になります。

目次

結論:3行で言うと

  • 同じ質問を打ち直した結果、GoogleのAIによる答え(AI Overviews)が出る国は、2024年の7か国から、2025年には229か国に広がりました
  • 日本では、質問のうちAIの答えが出た割合が33.3%から59.3%になりました(英語の質問での結果です)
  • AIの答えに付く出典は、従来の検索結果と比べて、アクセスの多い上位サイトに寄り、内容のばらつきが小さく、評価が付いたサイトの集計では、低信頼(中程度を含む)と中道・右寄りの割合が高めでした

この論文の基本情報

項目 内容
題名 The Rise of AI Search: Implications for Information Markets and Human Judgement at Scale
著者 Aral、Li、Zuoの3人。所属はマサチューセッツ工科大学
公開 2026年2月13日(初版)。確認した版は2026年2月18日のv2
arXiv 2602.13415(分野はcs.CY、コンピュータと社会)
掲載・採択 arXivのプレプリント。arXivのコメント欄・ジャーナル欄に掲載先の記載はありません
種類 大規模な実測調査と、政策への提言を合わせた論文
データ・コード 公開すると本文にありますが、公開先の欄は「未定」と書かれていました

論文はこちらで読めます。arXiv(2602.13415)、DOI。

査読を経たものかどうかは、arXivの記載から確認できる範囲では不明です。書式は学術誌向けの体裁ですが、掲載先は不明です。

この論文が答えた問い

GoogleのAIによる答えは、世界のどこで、どんな質問に、どれだけ出ているのか。そして、AIの答えに付く出典は、従来の検索結果とどう違うのか。

AI検索の利用状況を調べた従来の研究は、人々の検索のしかたが変わったことと、Google側の仕様が変わったことを区別できませんでした。そこで論文は、同じ質問を2024年と2025年にもう一度打つ方法を選びました。

どうやって調べたのか

調べたのは、Googleの検索結果に表示される「AI Overviews」(AIOと略されます)です。ほかのAI検索サービスは対象外です。

項目 内容
質問 実際の利用者の検索や質問を集めた9つのデータから無作為に11,372問。英語以外は除外
質問の形 疑問文7,560問、言い切りの文(叙述の形)2,360問、サイトや名前を探す質問1,452問
話題 7分類。多い順に、インターネット・技術・メディア3,421問、一般知識2,467問、ビジネス・金融・雇用2,137問、生活2,017問、健康808問、買い物448問、新型コロナ74問
国 2024年は、AIOが使えた7か国(米国、英国、インド、メキシコ、ブラジル、日本、インドネシア)。2025年は243か国
実施時期 2024年10月8日〜11月8日(7か国)、2025年8月28日〜9月5日(同じ7か国)、2025年10月14日〜11月13日(243か国)
取得の方法 検索結果を取得するサービスの「地域」の設定を国ごとに変えて、AIOの有無と中身を記録
結果の総数 約284万件(論文は2,843,000件と記載)

質問の形(疑問文・言い切りの文・名前を探す質問)と話題は、GPT-4o-miniというAIモデルに分類させています。

AIOの出典を従来の検索結果と比べるために、論文は4つの物差しを使いました。

  • 内容のばらつき:文を数値のベクトルに変換し、同じ結果の中の文どうしの意味の離れ具合の平均を出します。AIOは1文または1項目ごと、従来の検索は結果ごとの説明文を1要素とします
  • サイトの人気順位:ドメイン名の問い合わせ回数で並べた、上位100万ドメインの公開ランキングと照合します。上位1,000、上位1,000位〜100万位、100万位より下(ランキングに無いものを含む)の3段階に分けます
  • 情報源の信頼度:第三者のメディア評価データベースの評価です。高・中・低の3段階のうち、中と低をまとめて「低信頼」と扱います
  • 政治的な傾き:同じデータベースの評価です。右(右・やや右)、中道(偏りが最も少ない・科学寄り)、左(やや左・左)の3群に分けます

信頼度と政治的な傾きの定義

この2つの評価は、第三者が付けたものです。論文は、9,200を超える報道媒体を評価した第三者のデータベースの値を、そのまま使っています。

事実報道の評価は、4つの要素を重みづけして決められています。誤りと判定された事実確認40%、情報源の質25%、透明性25%、一方に偏った内容10%です。

政治的な傾きは、-10(極端に左)から+10(極端に右)の点数です。経済政策の立場35%、社会的な価値観35%、ニュース報道のバランス15%、論説の偏り15%から計算されています。

評価が付いたドメインは、従来の検索結果で20.8%、AIOの出典で18.7%です。残りの約8割は、評価のないドメインです。

疑わしい情報源・陰謀論・風刺の分類は、中道・右・左のどれにも当てはまらないため、集計から除外されています。このグループは全体の0.5%未満でした。

結果

AIの答えが出る国は、7か国から229か国へ

2024年にAIOが出た国は7か国でした。2025年には229か国まで広がり、新しく加わったのは222か国です。

本文は、フランス、トルコ、イラン、中国、キューバにはAIOが出なかったと書いています。要旨には、イランを除いた4か国が挙がっています。

2025年にAIOが出た国の多くは、質問の55〜70%でAIOを受け取りました。ソマリアとアイスランドは、それぞれ8.3%と7.4%でした。

2024年から出ていた7か国でも、割合は増えた

同じ質問を打ち直しているため、この増加は、利用者の検索のしかたではなく、Google側の変更によるものだと論文は述べています。次の表は、図1Cに書かれた値です。

国 2024年 2025年 相対的な増加(論文の値)
米国 41.8% 67.0% +60.2%
インド 41.4% 63.8% +54.1%
ブラジル 32.7% 59.6% +82.1%
日本 33.3% 59.3% +77.8%
インドネシア 33.6% 59.1% +76.1%
メキシコ 33.9% 58.8% +73.3%
英国 39.8% 57.4% +44.2%

数字は、英語の質問のうち、AIOが出た割合です。「相対的な増加」は、2024年の割合を基準にした増え方です。

日本についての結果

日本は、2024年から調査対象に含まれた7か国のひとつです。質問のうちAIOが出た割合は、2024年の33.3%から2025年の59.3%になりました。

増加の大きさ(相対)は、7か国のうち2番目です。

数字は、同じ質問のうちAIOが出た割合です。2024年は10月8日〜11月8日の調査です。

2025年の値が8〜9月と10〜11月のどちらの調査かは、論文に書かれていません。

ここで注意が必要です。論文が使った質問は、英語以外を除外したものでした。

日本語の質問での結果は、論文に載っていません。

日本に限った、出典の信頼度や政治的な傾きの結果も、論文に載っていません。示されているのは、全体をまとめた値です。

質問の形と話題による違い

2025年の243か国全体では、疑問文の60%、言い切りの文の37%、名前を探す質問の12%でAIOが出ました。

2024年から出ていた7か国の話題別の結果は、次のとおりです(図1F)。

話題 2024年 2025年
一般知識 55.8% 79.8%
健康 51.4% 73.0%
ビジネス・金融・雇用 37.9% 64.1%
インターネット・技術・メディア 30.1% 55.0%
生活 25.7% 48.4%
買い物 4.7% 15.1%
新型コロナ 1.2% 65.6%

新型コロナの質問は、2024年にはAIOがほぼ出ていませんでした。2025年には約66%に増えています。

論文はこれを、プラットフォーム側の方針の転換を映したものだと解釈しています。方針の理由は、論文自身による検証の対象外です。

AIOに出典のリンクが付いた割合は、新型コロナ以外の質問で92%、新型コロナの質問で50%でした。

AIの出典は、従来の検索結果とどう違うか

次の表は、図2のグラフから私が読み取った概算です。論文本文は、数値を文章で挙げていません。

物差し 従来の検索 AIOの出典・答え
内容のばらつき(全質問の平均、図2C) 約0.63 約0.45
上位1,000サイトの割合(図2D) 約0.075 約0.10
上位1,000位〜100万位の割合(図2D) 約0.715 約0.70
100万位より下の割合(図2D) 約0.21 約0.20
低信頼の割合(図2E) 約0.103 約0.111
高信頼の割合(図2E) 約0.103 約0.102
中道の割合(図2F) 約0.151 約0.160
左の割合(図2F) 約0.043 約0.040
右の割合(図2F) 約0.008 約0.009

論文は、この図の読み方を次のようにまとめています。

  • AIOの答えは、従来の検索結果より内容のばらつきが小さく、これを「ひとつの声で答えている」ことの表れとしています
  • AIOは、アクセスが多い上位1,000サイトを、従来の検索より多く参照しています。人気順位が下の長い尾にあたるサイトは、AIOのほうが少なめでした
  • 評価が付いたサイトの集計で、AIOは高信頼のサイトが少なく、低信頼(中程度を含む)のサイトが多めでした
  • 政治的な傾きでは、AIOは左が少なく、中道と右が多めでした

私が図を見た範囲では、差が最も大きいのは内容のばらつきです。信頼度や傾きの差は、縦軸の目盛りで0.01前後と小さく見えます。

図2Eと2Fの縦軸は、高と低(または左・中道・右)を足すと約0.2になり、評価が付いたドメインの割合(約2割)とほぼ重なります。

評価が付いたサイトの内訳ではなく、検索結果のドメイン全体に占める割合と読めます。ただし、論文は分母を明記していません。

論文自身が書いている限界

この論文は、限界を述べる独立した節を持っていません。調査方法の説明の中に、次の記述があります。

  • 人気順位は、正確なアクセス数が信頼できる形で得られないため、順位で代用しました
  • 政治的な傾きの分類から疑わしい情報源・陰謀論・風刺を除いたのは、これらを混ぜると左右中道の区別ができなくなるためです
  • プラットフォームの方針変更のうち、この調査で測れたのは一部です。測れなかった変更は、公開されないままになると論文は述べています

原文を読んで気づいた点

ここからは、論文が書いていない、私が原文を読んで気づいた点です。

  • 調べたのはGoogleだけです。論文の題名は「AI Search」ですが、結果はAIOのものです
  • 質問はすべて英語です。日本の結果も、英語の質問に地域の設定を日本にして得たものです
  • 質問の数が、箇所によって違います。要旨は24,000問、本文は同じ12,000問を2回、調査方法は11,372問と書いています。11,372問を2回で22,744回になり、24,000とは合いません
  • 結果の総数の数え方に、あいまいな点があります。284万件は11,372問×(7+243)か国の計算です。2024年の7か国と2025年10〜11月の243か国を足した形に見え、2025年8〜9月の7か国の結果が含まれるのかは明記されていません
  • 「2025年」の7か国の値は、どの時期のものか不明です。2025年の7か国の調査は、8〜9月と10〜11月の2回あります
  • 新型コロナの結果の範囲に、書き方の揺れがあります。本文は「世界で1%から66%」と書きますが、図1Fは、2024年に出ていた7か国の値(1.2%と65.6%)です
  • 「低信頼」には、中程度が含まれます。論文は、中と低をまとめて「低信頼」と呼んでいます。図では、高信頼の割合の差は小さく見えます
  • 評価が付いたのは約2割です。信頼度と傾きの結果は、評価が付いたサイトだけに基づいています
  • 人気順位の説明が、箇所によって違います。図2Dの説明文は「訪問数」で測ったとありますが、調査方法はドメイン名の問い合わせ回数による順位です
  • 統計的な検定の方法は、確認できた範囲で記述が見つかりませんでした。本文には「有意に」とありますが、検定の種類や数値は本文にも付録にもありませんでした
  • 内容のばらつきの比べ方に、違いがあります。AIOは1つの答えの中の文、従来の検索は別々のページの説明文が単位です。単位が違うものを比べています
  • 因果関係は、検証の範囲外です。クリックの減少や出版社への影響は、論文が引用した別の調査の話で、この調査では測っていません
  • AIOが多く出た理由は、論文の検証の範囲外です。論文は、方針の変更がありうると述べるにとどまります

この論文から、言えること・言えないこと

言えること 言えないこと
同じ英語の質問で、AIOが出る国は2024年の7か国から2025年の229か国に増えた 日本語の質問で、AIOがどれだけ出るか
日本では、英語の質問でAIOが出る割合が33.3%から59.3%になった 日本のサイトが、AIOに出典として載りやすくなったか
AIOの出典は、従来の検索結果より上位サイトに寄り、内容のばらつきが小さい傾向がある ほかのAI検索サービスにも、同じ傾向があるか
評価が付いた出典の集計で、AIOは低信頼(中程度を含む)と中道・右寄りの割合が、従来の検索より高めだった 個別のサイトが載るために、何をすればよいか
方針の違いが、国・話題によるAIOの出方の差につながっている可能性 AIOがアクセスやクリックを減らすかどうか(この調査では測っていない)

中小企業の視点で、どう受け取るか

ここからは、論文の主張とは別の、私の読み取りです。

自社の検索結果に、AIの答えが出る前提で考える

日本でも、英語の質問の約6割にAIOが出るという結果です。日本語の質問での割合は分かりませんが、検索の画面にAIの答えが載ることを、前提のひとつに置く根拠にはなります。

質問の形による出方の違いを、自社の調べに使う

疑問文でAIOが出やすく、名前を探す質問では出にくいという結果でした。自社の名前で検索される場面と、悩みを疑問の形で検索される場面では、AIの答えの出方が違う可能性があります。

出典の傾向は、自社のジャンルで確かめる

AIOの出典は上位のサイトに寄る傾向がありました。長い尾にあたる小さなサイトにとって、この傾向は気になる結果です。

ただし、この結果は全質問の平均です。自社の分野で、どのサイトが引用されているかは、実際に検索して確かめるのが確実です。

評価の付いたサイトに限った傾向だと理解する

信頼度や政治的な傾きの結果は、第三者のデータベースで評価が付いた約2割のサイトに限られます。中小企業のサイトの多くには、評価が付いていない可能性があります。

この結果から、自社サイトの扱いを推し量るのは難しいでしょう。

よくある質問

The Rise of AI Searchの論文では、AI Overviewsはどの国で表示されましたか

2024年は、米国・英国・インド・メキシコ・ブラジル・日本・インドネシアの7か国でした。2025年には229か国で表示されています。

表示されなかった国として、本文はフランス、トルコ、イラン、中国、キューバを挙げています。

The Rise of AI Searchの論文で、日本のAI Overviewsはどう変わりましたか

英語の質問のうち、AI Overviewsが出た割合が33.3%から59.3%になりました。日本は、調査対象の7か国に最初から含まれています。

日本語の質問の結果は、論文に載っていません。

The Rise of AI Searchの論文で、AI Overviewsの出典は何が違いましたか

従来の検索結果と比べて、内容のばらつきが小さく、アクセスの多い上位サイトに寄っていました。評価が付いた出典の集計では、低信頼(中程度を含む)と中道・右寄りの割合が高めでした。

この評価は、論文の著者ではなく、第三者のデータベースによるものです。

まとめ:今日できる1つのこと

自社が狙う質問を、疑問の形で5つ書き出して、Googleで検索してみてください。AIの答えが出るか、出る場合は、どのサイトが出典に並ぶかを記録しておきます。

この論文が示した「AIの答えが出る場面は増えている」という傾向を、自社の分野で確かめる最初の一歩になります。

この論文は、LLMO論文の一覧の一本です。ほかの論文の解説も、順次公開しています。

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この記事を書いた人

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合同会社謙虚 代表社員。20代から、売る言葉だけを仕事にしてきました。電話営業で受話器を握っていた時代から、数千社のWEB集客に関わったいままで。詳しいプロフィールはこちら

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