「AIが検索結果の上に答えを出す」という変化は、どこまで広がっているのでしょうか。その広がりを、同じ質問を2024年と2025年に打ち直して測った論文があります。
2026年2月にarXivで公開された「The Rise of AI Search: Implications for Information Markets and Human Judgement at Scale」です。
この記事は、その論文を原文から読み、何を調べて何が分かったのかを整理します。数値は、論文の本文と図に書かれた値を拾いました。
図の値を読み取ったものには、そのように書いています。
合同会社謙虚は、3つのドメインを並行して運用し、何を変えると数字が動くかを測り続けています。この論文は、AIの答えが出る場面そのものがどれだけ増えたかを測っているため、対策の前提を確かめる材料になります。
結論:3行で言うと
- 同じ質問を打ち直した結果、GoogleのAIによる答え(AI Overviews)が出る国は、2024年の7か国から、2025年には229か国に広がりました
- 日本では、質問のうちAIの答えが出た割合が33.3%から59.3%になりました(英語の質問での結果です)
- AIの答えに付く出典は、従来の検索結果と比べて、アクセスの多い上位サイトに寄り、内容のばらつきが小さく、評価が付いたサイトの集計では、低信頼(中程度を含む)と中道・右寄りの割合が高めでした
この論文の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 題名 | The Rise of AI Search: Implications for Information Markets and Human Judgement at Scale |
| 著者 | Aral、Li、Zuoの3人。所属はマサチューセッツ工科大学 |
| 公開 | 2026年2月13日(初版)。確認した版は2026年2月18日のv2 |
| arXiv | 2602.13415(分野はcs.CY、コンピュータと社会) |
| 掲載・採択 | arXivのプレプリント。arXivのコメント欄・ジャーナル欄に掲載先の記載はありません |
| 種類 | 大規模な実測調査と、政策への提言を合わせた論文 |
| データ・コード | 公開すると本文にありますが、公開先の欄は「未定」と書かれていました |
論文はこちらで読めます。arXiv(2602.13415)、DOI。
査読を経たものかどうかは、arXivの記載から確認できる範囲では不明です。書式は学術誌向けの体裁ですが、掲載先は不明です。
この論文が答えた問い
GoogleのAIによる答えは、世界のどこで、どんな質問に、どれだけ出ているのか。そして、AIの答えに付く出典は、従来の検索結果とどう違うのか。
AI検索の利用状況を調べた従来の研究は、人々の検索のしかたが変わったことと、Google側の仕様が変わったことを区別できませんでした。そこで論文は、同じ質問を2024年と2025年にもう一度打つ方法を選びました。
どうやって調べたのか
調べたのは、Googleの検索結果に表示される「AI Overviews」(AIOと略されます)です。ほかのAI検索サービスは対象外です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 質問 | 実際の利用者の検索や質問を集めた9つのデータから無作為に11,372問。英語以外は除外 |
| 質問の形 | 疑問文7,560問、言い切りの文(叙述の形)2,360問、サイトや名前を探す質問1,452問 |
| 話題 | 7分類。多い順に、インターネット・技術・メディア3,421問、一般知識2,467問、ビジネス・金融・雇用2,137問、生活2,017問、健康808問、買い物448問、新型コロナ74問 |
| 国 | 2024年は、AIOが使えた7か国(米国、英国、インド、メキシコ、ブラジル、日本、インドネシア)。2025年は243か国 |
| 実施時期 | 2024年10月8日〜11月8日(7か国)、2025年8月28日〜9月5日(同じ7か国)、2025年10月14日〜11月13日(243か国) |
| 取得の方法 | 検索結果を取得するサービスの「地域」の設定を国ごとに変えて、AIOの有無と中身を記録 |
| 結果の総数 | 約284万件(論文は2,843,000件と記載) |
質問の形(疑問文・言い切りの文・名前を探す質問)と話題は、GPT-4o-miniというAIモデルに分類させています。
AIOの出典を従来の検索結果と比べるために、論文は4つの物差しを使いました。
- 内容のばらつき:文を数値のベクトルに変換し、同じ結果の中の文どうしの意味の離れ具合の平均を出します。AIOは1文または1項目ごと、従来の検索は結果ごとの説明文を1要素とします
- サイトの人気順位:ドメイン名の問い合わせ回数で並べた、上位100万ドメインの公開ランキングと照合します。上位1,000、上位1,000位〜100万位、100万位より下(ランキングに無いものを含む)の3段階に分けます
- 情報源の信頼度:第三者のメディア評価データベースの評価です。高・中・低の3段階のうち、中と低をまとめて「低信頼」と扱います
- 政治的な傾き:同じデータベースの評価です。右(右・やや右)、中道(偏りが最も少ない・科学寄り)、左(やや左・左)の3群に分けます
信頼度と政治的な傾きの定義
この2つの評価は、第三者が付けたものです。論文は、9,200を超える報道媒体を評価した第三者のデータベースの値を、そのまま使っています。
事実報道の評価は、4つの要素を重みづけして決められています。誤りと判定された事実確認40%、情報源の質25%、透明性25%、一方に偏った内容10%です。
政治的な傾きは、-10(極端に左)から+10(極端に右)の点数です。経済政策の立場35%、社会的な価値観35%、ニュース報道のバランス15%、論説の偏り15%から計算されています。
評価が付いたドメインは、従来の検索結果で20.8%、AIOの出典で18.7%です。残りの約8割は、評価のないドメインです。
疑わしい情報源・陰謀論・風刺の分類は、中道・右・左のどれにも当てはまらないため、集計から除外されています。このグループは全体の0.5%未満でした。
結果
AIの答えが出る国は、7か国から229か国へ
2024年にAIOが出た国は7か国でした。2025年には229か国まで広がり、新しく加わったのは222か国です。
本文は、フランス、トルコ、イラン、中国、キューバにはAIOが出なかったと書いています。要旨には、イランを除いた4か国が挙がっています。
2025年にAIOが出た国の多くは、質問の55〜70%でAIOを受け取りました。ソマリアとアイスランドは、それぞれ8.3%と7.4%でした。
2024年から出ていた7か国でも、割合は増えた
同じ質問を打ち直しているため、この増加は、利用者の検索のしかたではなく、Google側の変更によるものだと論文は述べています。次の表は、図1Cに書かれた値です。
| 国 | 2024年 | 2025年 | 相対的な増加(論文の値) |
|---|---|---|---|
| 米国 | 41.8% | 67.0% | +60.2% |
| インド | 41.4% | 63.8% | +54.1% |
| ブラジル | 32.7% | 59.6% | +82.1% |
| 日本 | 33.3% | 59.3% | +77.8% |
| インドネシア | 33.6% | 59.1% | +76.1% |
| メキシコ | 33.9% | 58.8% | +73.3% |
| 英国 | 39.8% | 57.4% | +44.2% |
数字は、英語の質問のうち、AIOが出た割合です。「相対的な増加」は、2024年の割合を基準にした増え方です。
日本についての結果
日本は、2024年から調査対象に含まれた7か国のひとつです。質問のうちAIOが出た割合は、2024年の33.3%から2025年の59.3%になりました。
増加の大きさ(相対)は、7か国のうち2番目です。
数字は、同じ質問のうちAIOが出た割合です。2024年は10月8日〜11月8日の調査です。
2025年の値が8〜9月と10〜11月のどちらの調査かは、論文に書かれていません。
ここで注意が必要です。論文が使った質問は、英語以外を除外したものでした。
日本語の質問での結果は、論文に載っていません。
日本に限った、出典の信頼度や政治的な傾きの結果も、論文に載っていません。示されているのは、全体をまとめた値です。
質問の形と話題による違い
2025年の243か国全体では、疑問文の60%、言い切りの文の37%、名前を探す質問の12%でAIOが出ました。
2024年から出ていた7か国の話題別の結果は、次のとおりです(図1F)。
| 話題 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 一般知識 | 55.8% | 79.8% |
| 健康 | 51.4% | 73.0% |
| ビジネス・金融・雇用 | 37.9% | 64.1% |
| インターネット・技術・メディア | 30.1% | 55.0% |
| 生活 | 25.7% | 48.4% |
| 買い物 | 4.7% | 15.1% |
| 新型コロナ | 1.2% | 65.6% |
新型コロナの質問は、2024年にはAIOがほぼ出ていませんでした。2025年には約66%に増えています。
論文はこれを、プラットフォーム側の方針の転換を映したものだと解釈しています。方針の理由は、論文自身による検証の対象外です。
AIOに出典のリンクが付いた割合は、新型コロナ以外の質問で92%、新型コロナの質問で50%でした。
AIの出典は、従来の検索結果とどう違うか
次の表は、図2のグラフから私が読み取った概算です。論文本文は、数値を文章で挙げていません。
| 物差し | 従来の検索 | AIOの出典・答え |
|---|---|---|
| 内容のばらつき(全質問の平均、図2C) | 約0.63 | 約0.45 |
| 上位1,000サイトの割合(図2D) | 約0.075 | 約0.10 |
| 上位1,000位〜100万位の割合(図2D) | 約0.715 | 約0.70 |
| 100万位より下の割合(図2D) | 約0.21 | 約0.20 |
| 低信頼の割合(図2E) | 約0.103 | 約0.111 |
| 高信頼の割合(図2E) | 約0.103 | 約0.102 |
| 中道の割合(図2F) | 約0.151 | 約0.160 |
| 左の割合(図2F) | 約0.043 | 約0.040 |
| 右の割合(図2F) | 約0.008 | 約0.009 |
論文は、この図の読み方を次のようにまとめています。
- AIOの答えは、従来の検索結果より内容のばらつきが小さく、これを「ひとつの声で答えている」ことの表れとしています
- AIOは、アクセスが多い上位1,000サイトを、従来の検索より多く参照しています。人気順位が下の長い尾にあたるサイトは、AIOのほうが少なめでした
- 評価が付いたサイトの集計で、AIOは高信頼のサイトが少なく、低信頼(中程度を含む)のサイトが多めでした
- 政治的な傾きでは、AIOは左が少なく、中道と右が多めでした
私が図を見た範囲では、差が最も大きいのは内容のばらつきです。信頼度や傾きの差は、縦軸の目盛りで0.01前後と小さく見えます。
図2Eと2Fの縦軸は、高と低(または左・中道・右)を足すと約0.2になり、評価が付いたドメインの割合(約2割)とほぼ重なります。
評価が付いたサイトの内訳ではなく、検索結果のドメイン全体に占める割合と読めます。ただし、論文は分母を明記していません。
論文自身が書いている限界
この論文は、限界を述べる独立した節を持っていません。調査方法の説明の中に、次の記述があります。
- 人気順位は、正確なアクセス数が信頼できる形で得られないため、順位で代用しました
- 政治的な傾きの分類から疑わしい情報源・陰謀論・風刺を除いたのは、これらを混ぜると左右中道の区別ができなくなるためです
- プラットフォームの方針変更のうち、この調査で測れたのは一部です。測れなかった変更は、公開されないままになると論文は述べています
原文を読んで気づいた点
ここからは、論文が書いていない、私が原文を読んで気づいた点です。
- 調べたのはGoogleだけです。論文の題名は「AI Search」ですが、結果はAIOのものです
- 質問はすべて英語です。日本の結果も、英語の質問に地域の設定を日本にして得たものです
- 質問の数が、箇所によって違います。要旨は24,000問、本文は同じ12,000問を2回、調査方法は11,372問と書いています。11,372問を2回で22,744回になり、24,000とは合いません
- 結果の総数の数え方に、あいまいな点があります。284万件は11,372問×(7+243)か国の計算です。2024年の7か国と2025年10〜11月の243か国を足した形に見え、2025年8〜9月の7か国の結果が含まれるのかは明記されていません
- 「2025年」の7か国の値は、どの時期のものか不明です。2025年の7か国の調査は、8〜9月と10〜11月の2回あります
- 新型コロナの結果の範囲に、書き方の揺れがあります。本文は「世界で1%から66%」と書きますが、図1Fは、2024年に出ていた7か国の値(1.2%と65.6%)です
- 「低信頼」には、中程度が含まれます。論文は、中と低をまとめて「低信頼」と呼んでいます。図では、高信頼の割合の差は小さく見えます
- 評価が付いたのは約2割です。信頼度と傾きの結果は、評価が付いたサイトだけに基づいています
- 人気順位の説明が、箇所によって違います。図2Dの説明文は「訪問数」で測ったとありますが、調査方法はドメイン名の問い合わせ回数による順位です
- 統計的な検定の方法は、確認できた範囲で記述が見つかりませんでした。本文には「有意に」とありますが、検定の種類や数値は本文にも付録にもありませんでした
- 内容のばらつきの比べ方に、違いがあります。AIOは1つの答えの中の文、従来の検索は別々のページの説明文が単位です。単位が違うものを比べています
- 因果関係は、検証の範囲外です。クリックの減少や出版社への影響は、論文が引用した別の調査の話で、この調査では測っていません
- AIOが多く出た理由は、論文の検証の範囲外です。論文は、方針の変更がありうると述べるにとどまります
この論文から、言えること・言えないこと
| 言えること | 言えないこと |
|---|---|
| 同じ英語の質問で、AIOが出る国は2024年の7か国から2025年の229か国に増えた | 日本語の質問で、AIOがどれだけ出るか |
| 日本では、英語の質問でAIOが出る割合が33.3%から59.3%になった | 日本のサイトが、AIOに出典として載りやすくなったか |
| AIOの出典は、従来の検索結果より上位サイトに寄り、内容のばらつきが小さい傾向がある | ほかのAI検索サービスにも、同じ傾向があるか |
| 評価が付いた出典の集計で、AIOは低信頼(中程度を含む)と中道・右寄りの割合が、従来の検索より高めだった | 個別のサイトが載るために、何をすればよいか |
| 方針の違いが、国・話題によるAIOの出方の差につながっている可能性 | AIOがアクセスやクリックを減らすかどうか(この調査では測っていない) |
中小企業の視点で、どう受け取るか
ここからは、論文の主張とは別の、私の読み取りです。
自社の検索結果に、AIの答えが出る前提で考える
日本でも、英語の質問の約6割にAIOが出るという結果です。日本語の質問での割合は分かりませんが、検索の画面にAIの答えが載ることを、前提のひとつに置く根拠にはなります。
質問の形による出方の違いを、自社の調べに使う
疑問文でAIOが出やすく、名前を探す質問では出にくいという結果でした。自社の名前で検索される場面と、悩みを疑問の形で検索される場面では、AIの答えの出方が違う可能性があります。
出典の傾向は、自社のジャンルで確かめる
AIOの出典は上位のサイトに寄る傾向がありました。長い尾にあたる小さなサイトにとって、この傾向は気になる結果です。
ただし、この結果は全質問の平均です。自社の分野で、どのサイトが引用されているかは、実際に検索して確かめるのが確実です。
評価の付いたサイトに限った傾向だと理解する
信頼度や政治的な傾きの結果は、第三者のデータベースで評価が付いた約2割のサイトに限られます。中小企業のサイトの多くには、評価が付いていない可能性があります。
この結果から、自社サイトの扱いを推し量るのは難しいでしょう。
よくある質問
The Rise of AI Searchの論文では、AI Overviewsはどの国で表示されましたか
2024年は、米国・英国・インド・メキシコ・ブラジル・日本・インドネシアの7か国でした。2025年には229か国で表示されています。
表示されなかった国として、本文はフランス、トルコ、イラン、中国、キューバを挙げています。
The Rise of AI Searchの論文で、日本のAI Overviewsはどう変わりましたか
英語の質問のうち、AI Overviewsが出た割合が33.3%から59.3%になりました。日本は、調査対象の7か国に最初から含まれています。
日本語の質問の結果は、論文に載っていません。
The Rise of AI Searchの論文で、AI Overviewsの出典は何が違いましたか
従来の検索結果と比べて、内容のばらつきが小さく、アクセスの多い上位サイトに寄っていました。評価が付いた出典の集計では、低信頼(中程度を含む)と中道・右寄りの割合が高めでした。
この評価は、論文の著者ではなく、第三者のデータベースによるものです。
まとめ:今日できる1つのこと
自社が狙う質問を、疑問の形で5つ書き出して、Googleで検索してみてください。AIの答えが出るか、出る場合は、どのサイトが出典に並ぶかを記録しておきます。
この論文が示した「AIの答えが出る場面は増えている」という傾向を、自社の分野で確かめる最初の一歩になります。
この論文は、LLMO論文の一覧の一本です。ほかの論文の解説も、順次公開しています。
この記事に書いたことを、そのまま御社のページに
生成AIに引用されるページを、お話しいただくだけでお作りします。お時間をいただくのは初回15分のヒアリングだけです。まず1ページ、無料でお作りします。
OKが出るまで、何度でも直します。事実が違う、言い回しが硬い、この話は入れないでほしい。どれも遠慮なくおっしゃってください。何度お直ししても、追加の料金はいただきません。
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