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タグラインとは 中小企業が社名に添える一行の作り方と例文と置き場所

2026 10/27
2026年10月27日
中野輝規
タグラインとは 中小企業が社名に添える一行の作り方と例文と置き場所

社名とロゴの横に、短い一行を添えたい。名刺にも、ホームページの最上部にも入れたい。そう考えて手を付けたものの、何を書けば「それらしい一行」になるのか、見当が付かない。

この記事は、そんな状態で止まっている中小企業の経営者とWeb担当の方に向けて書きました。

結論から言うと、社名に添える一行は、お客様が「自分のための会社だ」と判断できる約束を書く場所です。会社の自慢は、ここには入れません。作る手順は6段で、置く場所は4か所に絞れます。

目次

先に答え:タグラインは、社名の横に長く置く「お客様への約束の一行」

タグラインとは、社名やロゴに添えて、その会社が誰に何を約束するのかを短くまとめた言葉です。

辞書の語義も確かめました。コトバンクに収録されている「ブランド用語集」には、タグラインについて「商品広告の結語として用いられるキャッチフレーズないしスローガンのこと」と書かれています。

この語義は広告の世界の言い方なので、中小企業の実務に引き直すと、次のようになります。

社名の横に、変えずに置き続ける一行。それが、中小企業にとってのタグラインです。

商品ごとの宣伝文句は、季節や企画に合わせて入れ替わります。社名に添える一行は、数年単位で同じものを使うので、軽い気持ちで決めると後で困ります。

次の表が、この記事で進める全体の流れです。

段 やること 出てくるもの
1 一行を読む人と、読まれる場所を決める 読み手の一文と置き場所の一覧
2 お客様が選んだ理由を、お客様の言葉で集める 言葉のメモ
3 自社にしか言えない約束を1つ選ぶ 約束の候補
4 型に当てはめて、5案ほど書く 一行の案
5 入れ替えテストと声の確認で1案に絞る 最終案
6 4か所に置き、3か月後に見直す 置いた記録

辞書の語義と、中小企業での使い方を並べる

語義と実務の使い方は、少しずれています。ずれている部分を、先に表で見ておきます。

見る点 辞書の語義 中小企業での使い方
置く場所 商品広告の結び 社名やロゴの横、名刺、ホームページの最上部
内容 キャッチフレーズないしスローガン 誰に何を約束する会社かの一行
使う期間 書かれていない 数年単位で変えない
役目 広告を締める 会社の第一印象を決める

辞書には使う期間が書かれていませんが、実務では「変えないこと」が大きな意味を持ちます。名刺を配り、封筒に刷り、看板に入れたあとで変えると、直す場所が一気に増えるからです。

4つの言葉の違いを、先に1枚で見る

似た言葉が4つあります。どれを作る話なのかを、ここで切り分けます。

言葉 役目 置く場所 変える頻度
タグライン 社名に添えて、会社の約束を伝える 社名・ロゴの横 ほとんど変えない
キャッチコピー 目を止めて、続きを読ませる 広告・ページの見出し 企画ごとに変える
スローガン 社内外に向けた標語 朝礼・壁・採用ページ 方針が変われば変える
ブランドメッセージ 会社の考え方を文章で伝える 会社案内・ブランドのページ 数年に1度見直す

この4つの違いは、後の章でもう一度、場面ごとに掘り下げます。

この記事で答える4つのこと

次の4点を、順に書きます。

  1. 社名に添える一行を作っても、問い合わせにつながらなくなる5つの症状
  2. 6段で一行を作る手順と、入れ替えテストのやり方
  3. 業種ごとの例文(架空の会社で書いたもの)
  4. ホームページの最初の一文、名刺、会社概要、メール署名への置き方

確かめた出典と、書かない範囲

公的な統計は、総務省の「令和7年通信利用動向調査」を2026年10月27日に開いて、本文を確かめた数字だけを使います。

商標の話は、特許庁の「商標制度の概要」のページを同じ日に開いて、確かめた範囲だけを書きます。一行が商標として登録できるかどうかは、個別の判断になるので、この記事では断定しません。

費用の話は書きません。実在する会社の名前も、他社が実際に使っている一行も、引用しません。

検索上位の解説は、2026年10月27日に開いて、見出しの並びを確かめました。有名企業の一行を並べて、作り方を5つ前後の段で説明する構成が目立ちました。この記事は、その段の先にある「自社の場合の置き場所」と「やめる言葉」を中心に書きます。

業種ごとの例は、よくある型として私が書いた例文です。実在する会社の一行ではありません。

検索でよく並ぶ4つの言葉の答えは、どこにあるか

「タグライン」で検索すると、「とは」「例」「英語」「作り方」という言葉が候補に並びます。この4つの答えがどこにあるかを、先に示します。

検索の言葉 知りたいこと この記事の答えの場所
とは 何のための一行か 「先に答え」の章と、違いを整理した章
例 自社の業種ではどう書くか 「業種の型で見る」の章(架空の4業種)
英語 英語の一行を添えてよいか 「英語の一行を添えるときの注意」の章
作り方 手順 「作る手順」の章と、1週間の計画の章

例については、よく知られた会社の一行を挙げる解説が多くあります。この記事では、あえてそれをしません。大きな会社の一行は、何十年分の広告費と知名度を背負って成り立っていて、社名を伏せて読むと意味が通らないものもあるからです。

中小企業の一行は、社名を知らない人が初めて目にする場面で働きます。だから、例は架空の小さな会社で作ります。

Q&Aサイトで見た「ホームページのロゴ用に、一行を英語にしてほしい」という問い

先日、Q&Aサイトでこのような悩みを拝見しました。原文は載せず、要点だけを書き直して紹介します。

質問者さんは、会社のホームページのロゴに添える一行を、英語にしたいと考えていました。ネイティブが日常会話で使うような、短く自然な言い回しにしてほしい、という依頼です。

訳す元の言葉は、「未来」と「挑戦」という大きな言葉を並べた一行でした。意味は分かりますが、どんな会社で、誰に何をするのかは、この一行からは読み取れません。

付いていた回答は、直訳に近い英文1件だった

この質問には、英文を1件示す回答が付いていました。元の言葉の単語をそのまま英語に置き換えた、直訳に近い形の英文です。

英語としての自然さは、私には判断できません。ここで取り上げたいのは、翻訳の出来より前の、元の一行のほうです。

この質問から見える3つの疑問

質問者さんの依頼の背景には、3つの疑問があると考えました。

1つ目は、「未来を拓く」のような大きな言葉の一行は、社名の横に置いて役に立つのか、という疑問です。

2つ目は、英語にすれば見栄えがするのか、という疑問です。

3つ目は、そもそも一行にいちばん入れるべきことは何か、という疑問です。

この3つに、後の章で順に答えます。

質問を、お客様の側に置き直す

ホームページのロゴの横に、この一行があるとします。初めて訪れたお客様は、社名とロゴとこの一行を、数秒のうちに目にします。

お客様が知りたいのは、「この会社は、自分の困りごとを扱っているか」です。「未来を拓く」と書かれていても、その判断はできません。

もちろん、会社の思いを込めた言葉が悪いわけではありません。ただ、思いを込める場所と、お客様が判断する場所は、分けたほうがうまくいきます。

訳す前に決めることが、先にある

英語にする作業は、元の一行が決まったあとの工程です。元の一行が、誰に何を約束するのかを言い切れていないと、どの言語に直しても、同じ曖昧さが残ります。

この記事は、訳す前の、元の一行を決める手順から書きます。英語の話は、後の章で扱います。

タグライン、キャッチコピー、スローガン、ブランドメッセージの違い

4つの言葉は、どれも「短い言葉で会社を伝える」という点が同じなので、混ざりやすいです。混ざったまま作ると、1つの一行に全部の役目を詰め込んで、どれも果たせなくなります。

一行が置かれる場面で、役目が決まる

見分け方は、その言葉が置かれる場面です。

社名の横に長く置くなら、タグラインです。ページの見出しとして目を止めるなら、キャッチコピーです。社内で共有する標語なら、スローガンです。会社の考え方を文章で語るなら、ブランドメッセージです。

場面が違うと、読む人の状態も違います。社名の横の一行は、読む人がまだ会社のことを何も知らない状態で目にします。

4つの言葉を、問いで見分ける

どの言葉を作る話か迷ったときは、次の問いで見分けます。

問い はい の場合 いいえ の場合
社名の横に置くか タグライン 次の問いへ
見出しとして目を止めたいか キャッチコピー 次の問いへ
社内で共有する標語か スローガン ブランドメッセージ

キャッチコピーの作り方は、別の記事にまとめています。「キャッチコピーの作り方 売れるサイトの見出しを5つの手順で作る」で、目を止める一言の作り方を書きました。この記事は、それとは別に、社名に添えて長く置く一行だけを扱います。

兼用してよい場面と、分けたほうがよい場面

社員が数人の会社では、社名の横の一行と、ホームページの見出しを同じ言葉にしても構いません。作る言葉を1つに減らせるからです。

分けたほうがよいのは、扱う商品やサービスが3つ以上ある会社です。社名の横の一行は全体を包む言葉にして、見出しは商品ごとに作るほうが、どちらも働きます。

ブランドメッセージとの関係

会社の考え方を文章で伝えるブランドメッセージと、社名の横の一行は、親子の関係です。ブランドメッセージが長い説明で、一行はその結論にあたります。

会社の背景や創業の話を書く方法は、「ブランドストーリーの作り方 創業の苦労話が読まれない理由と書き直し方」にまとめています。物語の側から会社を伝えたいときは、そちらを先にご覧ください。

迷ったら、いちばん長く使う場所から決める

4つのうちどれから作るか迷う場合は、いちばん長く使う場所から決めます。名刺と封筒とホームページの最上部は、数年は同じ内容のまま残ります。

見出しは何度でも差し替えられますが、名刺は刷り直すたびに手間がかかります。差し替えにくいものほど先に決めると、後の作業が軽くなります。

そのため、この記事の手順は、社名の横に置く一行を最初に作り、見出しやブランドメッセージはその一行から広げる順に組んであります。

社名の横の一行は、読み手の知識がゼロの場面で働く

ホームページの最初の画面や名刺の表面は、読み手が会社について何も知らない状態で目にする場所です。

商品ページや見積書なら、読み手はすでに会社の名前を知っています。社名の横の一行だけが、まったく知らない人に向けて働きます。

この点が、ほかの言葉との大きな違いです。ほかの言葉は、読み手が少しは興味を持っている場面で使われます。

作る前に、自社の状態を3つ確かめる

手順に入る前に、自社の今の状態を確かめます。次の表の3つに答えられると、後の段がスムーズに進みます。

確かめること 答えの例 答えられないときは
いまの社名の横に、何か言葉が添えてあるか 添えていない、または古い言葉が残っている 名刺とホームページを並べて、現状を写真に撮る
直近の依頼は、どんなお客様から来ているか 設備の担当者から、紹介で来ることが多い 問い合わせ履歴を5件読み返す
その言葉を、誰が最終的に決めるか 社長が決める 決める人と、案を出す人を分ける

3つ目の「決める人」を最初に決めておかないと、案が出るたびに全員が意見を言って、いつまでも決まらなくなります。

案を出すのは担当者1人、決めるのは社長1人。この分け方で進めた会社のほうが、早く終わります。

作る日と、決める日を分けておく

案を作る日に、そのまま決めようとすると、最初に出た案に引っ張られます。作る日と決める日は、最低でも1日あけます。

一晩置いてから読むと、言い回しの硬さや、意味の取りにくさが見えてきます。声に出して読むと、さらに分かります。

決める日は、社長と担当者が同じ部屋で、案を印刷した紙を見ながら進めます。画面の共有より、紙のほうが、同じ箇所を指して話しやすいからです。

一行に向く会社と、先に別の作業が要る会社

一行を作る作業は、どの会社にも向くとは限りません。先に別の作業を済ませたほうがよい会社があります。

会社の状態 一行を先に作ってよいか 先にやること
扱う事業が決まっていて、お客様の層も安定している 作ってよい 特になし
事業の中心が、まだ変わりそうな時期にある 少し待つ 事業の方針を先に決める
ホームページがまだなく、名刺も作っていない 作ってよい 置き場所の数が少ないので、早く決まる
お客様の声を1件も聞いたことがない 聞いてから作る 直近の5人に理由を聞く

事業の中心が変わる前に一行を作ると、数か月後に作り直すことになります。その間に名刺や封筒を刷ると、無駄が出ます。

迷う場合は、お客様の声を聞く作業だけ、先に始めておきます。声を聞く作業は、方針が変わっても無駄になりません。

社名に添える一行を作っても、問い合わせにつながらない5つの症状

一行を作って名刺に刷ったのに、反応が何も変わらない。そんな会社には、共通する症状があります。自社に当てはまるものがないか、順に確かめてください。

症状 起きていること 見つけ方
1 大きな言葉だけで、業種が分からない 業種名を伏せて読んで、何屋か当てられるか試す
2 同じ業界のどの会社にも貼れる 競合の社名に差し替えて読んで、違和感があるか試す
3 自社が主語になっている 「私たちは」を補って、自然に読めるか試す
4 名刺とホームページで言葉が違う 2つを並べて、一字一句同じか見る
5 社内の誰も、そらで言えない 社員3人に、何も見ずに言ってもらう

症状1:大きな言葉だけで、何屋か分からない

「未来」「挑戦」「想い」「絆」のような大きな言葉は、どの業種にも使えます。使えるなら、どの会社の一行にもなれるということです。

お客様が社名の横を読むのは、何屋かを確かめるためです。業種の言葉が1つも入っていないと、確かめる手がかりがありません。

特に、社名が会社の事業を表していない場合は注意が必要です。社名が「◯◯産業」や「◯◯サービス」だと、社名からも事業が読み取れません。

この場合は、一行の側に業種の言葉を入れます。「何屋か」を一行で補う役目を、一行が負うからです。

症状2:競合の社名に差し替えても通じる

作った一行の社名の部分を、競合の社名に書き換えてみます。そのまま通じてしまうなら、その一行は自社の約束になっていません。

「お客様に寄り添う」「確かな技術で」「誠実な対応」は、ほぼすべての会社が掲げられる言葉です。どれも間違いではありませんが、選ぶ理由にはなりません。

選ぶ理由になるのは、自社でなければ言えないことです。たとえば、対応の速さを数字で言える、扱う範囲を絞っている、といった事実です。

症状3:自社が主語になっている

「私たちは、最高の品質を追求します」のような一行は、主語が自社です。お客様が読むのは、自分に何が起きるかです。

主語を自社からお客様に替えると、一行の役目が変わります。「あなたの会社の◯◯を、◯◯に」という形なら、読んだ人は自分の話だと感じます。

自社が主語の一行が悪いわけではありません。ただ、社名の横という場所は、まだ会社に興味のない人が目にする場所です。そこでは、お客様の側の言葉のほうが届きます。

症状4:置いた場所ごとに、言葉が違う

ホームページでは「◯◯」、名刺では「◯◯◯」、会社案内では別の言葉。担当者が代わるたびに言葉が変わり、いつの間にか3種類になっている会社があります。

お客様は、名刺とホームページと封筒を、別々の時期に見ます。そのたびに言葉が違うと、同じ会社だと結びつきません。

同じ言葉を繰り返し見せることで、はじめて覚えてもらえます。繰り返す数が少ない中小企業ほど、言葉をそろえる価値が大きくなります。

症状5:社内の誰も、そらで言えない

社員に「うちの一行は何ですか」と聞いて、答えが返ってこない会社があります。社員が言えない言葉は、電話やメールの対応にも出てきません。

一行は、ホームページに載せて終わりではありません。社員が使う言葉になって、はじめて、お客様に届く行動になります。

5つの症状のうち、2つ以上当てはまる場合は、手順の最初から作り直すほうが近道です。

症状の根っこは、すべて「お客様が判断できる言葉」になっていないこと

5つの症状は、見た目は違っても、根っこは同じです。お客様が自分の判断に使える言葉になっていない、という点です。

業種が分からなければ、何屋かを判断できません。競合に貼れるなら、選ぶ理由を判断できません。自社が主語なら、自分に関係があるかを判断できません。

この根っこを直すと、5つの症状は同時に消えていきます。次の章以降では、それを直す手順を書きます。

大きな会社の有名な一行を手本にすると、中小企業で起きること

一行の作り方を調べると、有名な会社の一行がずらりと並んだ解説に行き当たります。手本として眺めるのは自由ですが、そのまま真似ると、中小企業では働かない理由があります。

有名な一行は、広告費と時間に支えられている

大きな会社の一行は、短い言葉自体に力があるわけではありません。テレビ、新聞、看板、ホームページなど、あらゆる場所で何十年も繰り返し見せた結果、言葉と会社が結びついています。

結びついたあとでは、一行が抽象的でも、お客様は社名から意味を補えます。社名を知っている前提で成り立っているわけです。

中小企業の一行は、この前提がありません。お客様は社名を知らないところから始まります。

手本にするなら、言葉の形でなく、働き方を見る

有名な一行を参考にするなら、使われている言葉は見ずに、一行が担っている役目を見ます。

見る点 有名な一行での働き 中小企業で真似るなら
長さ 数語で言い切っている 一息で読める長さに収める
繰り返し あらゆる場所で同じ言葉を見せる 4か所に絞って同じ言葉を置く
約束 会社全体の姿勢を表す 1つの約束に絞る
前提 社名が知られている 社名を知らない人が読む前提にする

言葉をそのまま借りることは、勧めません。借りたくなるほど立派な言葉は、たいてい自社の実態より大きすぎるからです。

大きな言葉を借りると、実態との差が出る

「業界の常識を変える」「世界を笑顔に」のような一行を、従業員10人の会社が掲げると、読み手は戸惑います。実態との差が大きいと、会社の信用に響くことがあります。

信用に響くとは、たとえば次のような場面です。一行を読んで期待したお客様が、実際の対応を見て、期待ほどではないと感じる場面です。

一行で約束したことは、守れる範囲に収めます。守れる約束のほうが、長い目で見て信用が積み上がります。

実在の一行は、ここでは引かない

この記事では、実在する会社の一行を引用しません。どれを挙げても、その会社の広告の一部を借りて説明することになり、読者の自社の話から離れてしまうからです。

代わりに、架空の小さな会社で例を作ります。読者が自分の会社に置き換えやすい大きさにそろえます。

公的な調査と特許庁のページで確かめたこと

一行の話は、感覚で語られやすい分野です。そこで、数字で確かめられる点と、制度の面で注意が必要な点を、公的な資料で確かめました。

ホームページを開設している企業は9割を超えている

総務省が2026年5月29日に公表した「令和7年通信利用動向調査」では、自社のホームページを開設している企業の割合は93.3%でした。前の年から0.1ポイントの上昇です。

調査の対象は、常用雇用者が100人以上の企業で、調査時点は2025年8月末です。つまり、従業員が100人未満の会社の数字ではありません。

それでも、この数字は一行の話に関わります。取引先やお客様が、会社を調べるときにホームページを開くのが当たり前になっているからです。

ホームページがあっても、第一印象は残る

ホームページを持っていること自体は、差になりません。差になるのは、開いた瞬間に、何屋で、誰向けの会社かが分かるかどうかです。

社名の横の一行は、その判断を助ける、数少ない場所です。ここが曖昧なままだと、ページの下のほうまで読まれる前に、閉じられる恐れがあります。

なお、この調査の数字は、一行の効果を示すものではありません。ホームページが広く使われている、という事実を確かめただけです。

数字の読み方に、注意する点

次の表に、この数字をどこまで言えるかを整理しました。

言えること 言えないこと
従業者100人以上の企業の93.3%が、ホームページを開設している 従業者100人未満の会社の開設率
前年から0.1ポイント上がっている 一行を置くと問い合わせが増えること
会社を調べる入口として、ホームページが広く使われている 一行の言葉と、問い合わせ数の関係

数字をつなげて、効果があると言い切ることはしません。一行の効果は、自社のホームページの動きで確かめるものです。

商標について、特許庁のページで確かめた範囲

一行を作ると、「商標を取るべきか」が気になる方もいます。特許庁の「商標制度の概要」のページを開いて、確かめた範囲だけを書きます。

特許庁のページによると、商標とは、事業者が、自社の取り扱う商品やサービスを他社のものと区別するために使うマークです。文字、図形、記号、立体的な形、これらを組み合わせたものなどがあります。

同じページには、商標登録を受けないまま使っている場合、先に他社が同じような商標の登録を受けていれば、その他社の商標権の侵害にあたる可能性がある、とも書かれています。

登録できるかどうかは、この記事では断定しない

社名に添える一行が、商標として登録できるかどうかは、言葉の中身や、使う商品・サービスの組み合わせで変わります。この記事では、登録できる、できないを断定しません。

特許庁のページに載っている登録できない例は、商品の産地や品質を表すだけのものなどです。自社の一行がどれに当たるかは、特許庁の相談窓口や、弁理士への相談で確かめてください。

確かなことは、1つあります。一行を決める前に、同じ業種に似た言葉がすでに使われていないかを、自分でも検索して確かめておくことです。

確かめる手順を、5分でできる形にする

自分で確かめるときは、次の順に進めます。

順 やること 見るもの
1 一行の案を、そのまま検索窓に入れる 同じ言葉の会社が出てこないか
2 業種名を足して、もう一度検索する 同業で近い言葉を使っていないか
3 気になる結果があれば、日付と会社名を控える 後で相談するときの材料

この確認で近い言葉が見つかったら、案を差し替えます。差し替えにくいほど言葉が気に入っている場合は、専門家に相談してから決めます。

公的な資料を見て決めた、この記事の3つの方針

ここまでの確認から、この記事で守る方針を3つ決めました。

方針 理由
一行の効果を、数字で約束しない 公的な資料に、一行と問い合わせ数を結ぶ数字がなかった
商標の登録可否を断定しない 特許庁のページでは、個別の言葉ごとの判断になると読み取れる
検索で近い言葉を確かめる手順を入れる 先に他社が登録している場合の注意が、特許庁のページにある

効果を数字で約束する記事は、読み手の期待だけを膨らませます。この記事は、自社で確かめる手順を渡すことに重きを置きます。

社名を伏せて読んでもらう確認を、先に1回やっておく

手順の本編に入る前に、今ある一行があるなら、その確認を1回やっておくと、後の作業の目標が見えます。

今ある一行から、社名とロゴを隠して、社外の人に読んでもらいます。そして、「何屋さんだと思いますか」「どんな人向けだと思いますか」と聞きます。

答えが当たっていれば、その一行は働いています。当たっていなければ、一行を作り直す理由が、はっきりしたことになります。

聞く相手は、取引先でも、家族でも構いません。3人に聞いて、3人とも外れたなら、それが現状です。

今ある言葉を、4か所で撮影して並べる

新しく作る前に、今、4か所にどんな言葉が載っているかを、写真に撮って並べます。ホームページの最上部、名刺の表、会社概要、メール署名の4枚です。

並べてみると、同じ会社なのに言葉がばらばらになっていることに気づく場合があります。気づいた時点で、症状4が当てはまります。

何も載っていない場所があっても構いません。空いている場所は、あとで一行を置く候補になります。

場所 今の言葉 空欄・ずれの有無
ホームページの最上部 (写真に撮って書き写す) あり・なし
名刺の表 (同上) あり・なし
会社概要 (同上) あり・なし
メール署名 (同上) あり・なし

この表は、手順1を始める前の、出発点の記録になります。3か月後の見直しのときに、同じ表をもう一度作ると、変化が目で見て分かります。

5つの症状と、手順の対応

5つの症状と、後の章の手順の対応を、先に表にしておきます。

症状 直す手順 直し方の要点
1 業種が分からない 手順4 業種か場面の言葉を、一行に入れる
2 競合に貼れる 手順3・5 事実で言い、入れ替えテストで確かめる
3 自社が主語 手順4 お客様の側の主語にする
4 場所ごとに言葉が違う 手順6 4か所を同じ言葉にそろえる
5 社員が言えない 運用の章 朝礼で伝え、応対に使う

2つ以上当てはまる会社は、順番に進めるだけで、ほとんどの症状が消えます。

社外の人に聞くときの、聞き方の決まり

社外の人に一行を見せるときは、聞き方を決めておきます。聞き方が違うと、返ってくる答えがぶれるからです。

見せるのは、社名とロゴを隠した一行だけです。聞くのは、「何屋だと思うか」「誰向けだと思うか」の2つに限ります。

「いい言葉ですか」と聞くと、相手は遠慮して「いいと思います」と答えます。感想を求める質問は、判断の材料になりません。

答えは、その場で書き留めます。あとで思い出して書くと、当たった答えだけが残りやすくなります。

聞き方 返ってくる答え 使えるか
何屋だと思うか 業種の名前 使える。当たったかどうか分かる
誰向けだと思うか お客様の像 使える。相手の言葉が足りているか分かる
いい言葉だと思うか 感想 使えない。遠慮が混ざる

3人に聞いて、答えがそろえば、その一行は読み手に伝わっています。答えがばらけたら、言葉が曖昧だった証拠です。

よくある間違った作り方と、その末路

一行の作り方には、つまずきやすい型があります。ここでは、5つの間違いと、その末路を書きます。自社の進め方と見比べてください。

間違い やってしまうこと 起きる末路
1 社内の会議で、全員の希望を入れる 長くて誰の言葉でもない一行になる
2 辞書やコピー集から、きれいな言葉を探す 他社と似た一行になる
3 制作会社に任せきりにする 社員が使わない言葉になる
4 先に英語にしてしまう 日本語の意味が曖昧なまま残る
5 気に入らなくなるたびに変える 覚えてもらう前に、言葉が変わる

間違い1:全員の希望を、1つの一行に入れる

会議で案を募ると、営業は営業の言葉を、製造は製造の言葉を入れたがります。全員の意見を取り入れると、一行に言葉が6つも7つも詰め込まれます。

そうなった一行は、読み手が覚えられません。覚えられない言葉は、社名の横に置いても、読み飛ばされます。

起きる末路

長くなった一行は、名刺では小さな文字になり、ホームページのスマートフォン表示では2行に折り返されます。見た目が崩れ、結局あまり使われなくなります。

一行に入れる約束は、1つだけです。ほかの約束は、ページの本文に回します。

間違い2:きれいな言葉を、探してくる

言葉集やコピー集から、響きのよい言葉を拾う進め方があります。響きはよくても、自社の事実が入っていません。

きれいな言葉は、きれいなだけに、ほかの会社も選びます。同じ地域に、似た一行を掲げる会社が複数並ぶことになります。

探す先は、自社のお客様の口です。言葉集に答えはありません。直近のお客様が、なぜ自社を選んだのか。その言葉のほうが、他社に真似されません。

間違い3:制作会社に任せきりにする

ホームページを作り直す際に、制作会社が一行を提案してくれる場合があります。提案は参考になりますが、任せきりにすると、社員が使わない言葉になります。

自社の仕事の細かい事情は、外の人には分かりにくいものです。お客様が実際に口にする言葉は、社内にしかありません。

制作会社には、お客様の言葉を集めた資料を渡します。そのうえで案を作ってもらうと、言葉が自社に近づきます。

間違い4:先に英語にしてしまう

ロゴの雰囲気に合わせて、先に英語の一行を作る進め方があります。見た目は整いますが、日本語で何を約束するのかが決まっていません。

Q&Aサイトの質問のように、日本語の元の言葉が曖昧なまま英語にすると、英語も曖昧になります。読み手が日本のお客様なら、その曖昧さは伝わらないままです。

日本語の一行が決まってから、必要なら英語を添えます。順番を逆にしないことが、ここでの結論です。

間違い5:気に入らなくなるたびに変える

数か月たつと、社内の人は一行を見慣れて、飽きます。新しい言葉に変えたくなりますが、お客様はその時期に、やっと言葉を覚え始めたところです。

社内の見慣れと、お客様の覚えるスピードは、ずれています。社内が飽きた頃が、お客様に届き始めた頃だと考えてください。

変えるときの基準は、後の章の「見直すとき」の表で決めておきます。気分では変えない、と先に決めておくと、続けやすくなります。

5つの間違いの共通点は、お客様の言葉が入っていないこと

5つの間違いは、どれも「社内の都合で言葉を決めている」という点が同じです。会議の都合、響きの都合、制作の都合、見た目の都合、飽きの都合です。

お客様の都合は、どこにも入っていません。一行を読むのはお客様なので、お客様の言葉を材料にするところから始めます。

英語の一行を添えるときの注意

検索の候補には、「タグライン 英語」という言葉も並びます。英語の一行を添えたい会社は、確かに多くあります。

英語を添えてよい場面と、添えなくてよい場面

英語を添えるかどうかは、お客様が誰かで決まります。

お客様 英語の一行 考え方
国内の取引先が中心 添えなくてよい 日本語の一行を磨くほうが届く
海外の取引先がいる 添える意味がある 取引先の言語で意味が通る形にする
海外のお客様を増やしたい 添える意味がある 英語のページ全体とセットで考える
見た目を整えたいだけ 添えなくてよい 意味の通らない飾りは、信用を下げることがある

見た目のためだけの英語は、読める人には意味の薄さが伝わります。読めない人には、何も伝わりません。

直訳を避ける3つの理由

日本語の一行を単語ごとに英語へ置き換えると、不自然になることがあります。日本語は主語を省く言語なので、英語にするときに主語を補う必要があるからです。

大きな言葉の一行ほど、この問題が目立ちます。「未来を拓く」のような言葉は、何を拓くのか、誰の未来なのかが、日本語の中でも曖昧だからです。

質問者さんが求めていたのは、ネイティブが日常で使う自然な言い回しでした。それを満たすには、日本語の意味を、先に具体的にする必要があります。

英語の一行を作る手順

英語の一行は、次の順に作ります。

順 やること ポイント
1 日本語の一行の意味を、短い文で説明し直す 誰に何をする会社かを、主語つきで書く
2 その説明を、英語を使う人に見せる 国内の取引先に、英語が分かる人がいればお願いする
3 候補を2〜3案もらい、意味のずれを確かめる 日本語に訳し戻して、元の意味と合うか見る
4 ネイティブの確認を受ける 言い回しが不自然でないか見てもらう

日本語の説明を先に作るのは、翻訳する人が意味を取り違えないようにするためです。説明が具体的なほど、翻訳の質が上がります。

日本語の一行と並べて置くときの決まり

日本語と英語を並べて置く場合は、決まりを1つ作ります。「日本語が主、英語は従」と決めて、日本語を大きく、英語を小さく置きます。

どちらも同じ大きさにすると、読み手がどちらを読めばよいか迷います。主従を決めるだけで、見た目が整います。

名刺では、表に日本語、裏に英語にする方法もあります。裏面を英語にすると、表の文字量を減らせます。

英語の一行を、検索で確かめる

英語の一行を決める前に、その言葉を検索して、すでに他の会社が使っていないかも確かめます。英語は日本語より使う人の数が多いので、似た言葉が見つかる可能性も高くなります。

先に使っている会社が見つかった場合は、商標の面でも気になります。この記事の前の章で書いたとおり、特許庁のページには、先に他社が登録している場合の注意が書かれています。

迷ったら、日本語の一行だけで始めて、必要になったときに英語を足します。英語は後からでも足せますが、一度配った名刺の言葉は取り消せません。

一行に入れない言葉のリスト

作る手順に入る前に、入れないほうがよい言葉を整理しておきます。入れない言葉を先に決めると、案の質が上がります。

入れない言葉は、3種類に分けられる

入れない言葉は、次の3種類に分けられます。

種類 例 入れない理由
誰でも言える言葉 誠実、安心、信頼、品質 競合に貼れる
大きすぎる言葉 未来、世界、革新 何屋か分からない
証明できない言葉 日本一、最高、業界初 根拠が示せないと、信用を下げる

3つ目の「日本一」「最高」「業界初」は、景品表示法などの面でも根拠が求められる言葉です。自社の判断だけで掲げず、根拠が示せないなら、使わないのが無難です。

誰でも言える言葉は、事実で置き換える

「誠実な対応」と書きたいときは、誠実さがどう見えるかを事実で書きます。たとえば、「見積は3営業日以内に返します」のように、数字で言える形にします。

「確かな技術」なら、「図面1枚から試作を引き受けます」のように、仕事の範囲を言い切ります。

事実に置き換えると、その分、長くなります。長くなった言葉は、後の段で削って、一行の長さに収めます。

言葉を削る順番

一行に収まらないときは、次の順に削ります。

削る順 削る対象 理由
1 形容する言葉 「確かな」「質の高い」は、なくても意味が通る
2 2つ目以降の約束 一行には約束を1つだけ入れる
3 会社の名前の繰り返し 社名は横にすでにある

削ったあとに、残った言葉が「誰に」「何を」を含んでいるかを確かめます。含んでいなければ、削りすぎです。

書き直しの前後を、架空の一行で見る

言葉を事実に置き換える作業を、架空の一行で見てみます。会社名は伏せ、業種だけを示します。

業種(架空) 書き直す前の一行 書き直した後の一行 変えた点
町の電気工事店 暮らしの未来を灯します 停電や不具合に、当日うかがいます 大きな言葉を、行動に替えた
社会保険労務士事務所 人と組織の可能性を拓く 従業員30人までの就業規則を、専門に見ます 対象と範囲を入れた
洋菓子店 心を込めた最高のひとくち 誕生日の小さなケーキを、前日までに予約で 場面を入れた
部品加工の会社 技術で世界をつなぐ 図面1枚から、試作を3日で返します 数字を入れた

書き直した後の一行は、前の一行より長くなっています。長さは、後の段で削ります。

ここで見てほしいのは、書き直した後の一行が、どれも「いつ」「誰に」「何を」のどれかを含んでいる点です。

書き直した一行を、そのまま使わない

表の「書き直した後」の一行も、そのまま使うことは勧めません。各社の事実に合わせて、自社の言葉に直してから使います。

たとえば、「当日うかがいます」と書いたなら、実際に当日うかがえる体制が必要です。守れない約束は、信用を下げます。

一行に入れる約束は、今の体制で守れる範囲に収めます。これができる会社だけが、一行を長く使い続けられます。

作る前に、社内で合意しておくこと

作り始める前に、社内で次の2点を合意しておくと、後から揉めません。

1つ目は、一行を作ったら、名刺とホームページの両方に載せることです。片方だけに載せると、症状4の「言葉が違う」状態になります。

2つ目は、決めた一行を、最低でも1年は変えないことです。社内の見慣れと、お客様の覚えるスピードは違うので、1年は様子を見ます。

この2つを、決める日の最初に確認しておきます。

制作会社に頼む場合は、先に資料を渡す

ホームページの作り直しなどで、制作会社に一行の案を頼む場合は、先に資料を渡します。資料があるほど、案が自社に近づきます。

渡す資料 中身 渡す理由
お客様の言葉のメモ 選んだ理由と、頼む前の心配 案の材料になる
入れない言葉のリスト 誰でも言える言葉、大きすぎる言葉 同じ提案を繰り返されない
守れる約束の範囲 今の体制で言い切れること 守れない約束の提案を防ぐ
置き場所の一覧 4か所と、それぞれの長さの目安 長すぎる案を防ぐ

資料を渡さずに頼むと、きれいな言葉の案が何本も返ってきます。そのうち、社内で選べる案は、ほとんど残りません。

決めるのは自社です。案を採用する前に、入れ替えテストと、社外の人への確認を、自社の手で行います。

悩んだときの、いちばん小さな試し方

一行が決まらないまま時間が過ぎてしまう場合は、いちばん小さな範囲で試します。ホームページの最上部と、メール署名の2か所だけに置き、反応を見ます。

試した一行が合わなければ、2か所の差し替えだけで済みます。名刺や看板を刷り直すより、はるかに軽く済みます。

試す期間は、1〜2か月が目安です。その間に、社外の人から言葉への感想をもらい、本採用するかを決めます。

試す場合も、同じ言葉を2か所に置いて、言葉をそろえます。2か所で別の言葉にすると、どちらが読まれたのか、確かめられなくなるからです。

本採用を決めたら、名刺と会社概要にも同じ言葉を入れます。

作ったあとに起きやすい、小さな食い違い

一行が決まったあとに、社内で起きやすい食い違いがあります。早めに知っておくと、対処が楽になります。

食い違い 起きる場面 対処
営業が、一行と違う言葉で説明する 商談の冒頭 一行を説明の最初の言葉にする
新しい社員が、一行を知らない 入社直後 入社時の資料に一行を載せる
取引先が、一行を別の言い方で紹介する 紹介を受けるとき 紹介の際に、一行を添えて渡す

食い違いは、一行が悪いから起きるわけではありません。言葉を共有する仕組みが、まだ整っていないだけです。

一行の長さを、置き場所から逆算する

長さは、最初に決めておくと迷いません。置き場所の中でいちばん狭い場所を基準にします。

名刺の社名の下に収まる一行は、おおよそ、1行に収まる長さです。折り返さずに読める長さであれば、ほかの場所にもそのまま使えます。

基準の長さに収まらない場合は、一行の中の約束を1つに絞り直します。長さに合わせて文字を小さくすると、読みにくくなるからです。

どうしても長い版が必要な場合は、短い版と長い版の2種類を作ります。短い版を名刺と署名に、長い版を会社概要に使います。

2種類の言葉は、同じ約束から作ります。約束が違うと、お客様は別の会社の話だと受け取ります。

版 使う場所 作り方
短い版 名刺・メール署名 約束だけを残し、形容する言葉を削る
長い版 会社概要・ホームページの最上部 短い版に、対象や範囲を足す

解決策:「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、社名の横の一行を書き換える

ここまでの症状と間違いは、どれも、会社が言いたいことから一行を作っていたことが原因でした。

「売れるサイトはみな謙虚」の考え方では、順番を逆にします。会社が言いたいことを一度引いて、お客様が知りたいことに先に答える言葉を、社名の横に置きます。

謙虚とは、会社を小さく見せることではない

誤解されやすいので、先に断っておきます。謙虚とは、会社を卑下したり、小さく見せたりすることではありません。

主役はお客様です。自慢を言わず、お客様の困りごとに先に答えます。

自社の強みを隠すわけでもありません。強みは、お客様の言葉に直して、事実として書きます。

一行に当てはめる、3つの問い

謙虚な一行かどうかは、3つの問いで確かめます。

問い はいと答えられる一行 いいえの場合の直し方
主語は、お客様の側になっているか 「あなたの◯◯を、◯◯に」の形 自社が主語なら、お客様の困りごとに置き換える
自慢を言っていないか 事実や数字で言い切っている 「最高」「No.1」のような言葉を外す
競合の社名に差し替えると、嘘になるか 自社にしか言えない 競合にも言えるなら、事実で言い換える

3つ全部に「はい」と答えられる一行が、社名の横に置ける一行です。

書き換えの全体の流れ

書き換えは、次の順に進みます。

手順 やること 出てくるもの
1 お客様の言葉を集める 言葉のメモ
2 自社にしか言えない約束を選ぶ 約束の候補
3 型に当てはめて案を作る 5案
4 入れ替えテストと声の確認 1案
5 4か所に置く 名刺・ホームページ・会社概要・メール署名
6 3か月後に見直す 見直しの記録

この流れを、次の章で1段ずつ詳しく書きます。

社名の横の一行を作る手順:6段で決める

手順1:読む人と、読まれる場所を決める

最初に決めるのは、誰が、どこで、その一行を読むかです。読む人は、最近のお客様の中から、1人の典型を選びます。

読まれる場所は、4か所に絞ります。ホームページの最上部、名刺、会社概要、メール署名です。この4か所が、社名と一行が並んで見える場所だからです。

次の表のように、読む人の状態を、場所ごとに書き出します。

場所 読む人の状態 一行に求められること
ホームページの最上部 検索から来て、何屋かを確かめている 業種と、誰向けかが分かる
名刺 会ったあとに、思い出そうとしている 何をしてくれる人かを、思い出せる
会社概要 取引を始めるかを、慎重に見ている 約束の範囲が、はっきりしている
メール署名 毎回、目にしている 短くて、覚えやすい

この表を埋めると、一行に必要な長さと内容が見えてきます。

手順2:お客様の言葉を、5件集める

直近のお客様5人に、「なぜうちに頼んだのか」と「頼む前に心配だったことは何か」を聞きます。電話でも、対面でも、メールでも構いません。

お客様が口にした言葉は、そのままメモします。社内の言葉に直すと、お客様には通じない言葉に戻ってしまうからです。

聞く相手がいない場合は、問い合わせメールの最初の1〜2行を、5件読み返します。そこに書かれた言葉が、お客様の言葉です。

集めた言葉の仕分け方

集めた言葉は、次の3つに仕分けます。

仕分け 例 一行での使い方
選んだ理由 見積が早かった、図面1枚でも受けてくれた 約束の材料にする
心配だったこと 納期が読めない、連絡が遅いのでは 心配を消す言葉にする
困りごと 急な不具合で、仕事が止まった 一行の主語に使う

同じ言葉が3人以上から出たら、それが一行の中心になる言葉です。

手順3:自社にしか言えない約束を、1つ選ぶ

仕分けた言葉から、約束を1つだけ選びます。選ぶ基準は、次の4つの問いです。

問い 確かめ方
お客様が、実際に口にした言葉か メモに残っているか見る
今の体制で、守れる約束か 現場に確かめる
競合の社名に差し替えると、嘘になるか 競合のページを見る
1年後も、同じ約束を守れるか 人員と仕事量を考える

4つとも「はい」になる約束だけを残します。2つ以上の約束が残った場合は、お客様が最も多く口にしたものを選びます。

手順4:型に当てはめて、5案を書く

約束が決まったら、言葉にします。型を使うと、短時間で5案ほど書けます。

型 形 向いている会社
状況型 「◯◯のときに、◯◯します」 急な対応を売りにする会社
数字型 「◯◯を、◯日で返します」 早さを約束できる会社
範囲型 「◯◯だけを、専門に見ます」 扱う範囲を絞っている会社
相手型 「◯◯の担当者のための、◯◯」 お客様の職種がはっきりしている会社

4つの型を1つずつ当てはめて4案、残りの1案は自由に書きます。合計5案を、1枚の紙に並べます。

手順5:入れ替えテストと、声の確認で1案に絞る

5案を、2つの確認で絞ります。

1つ目は、入れ替えテストです。案の中の社名を競合の社名に差し替えて、読んでみます。違和感なく通じてしまう案は、落とします。

2つ目は、声の確認です。声に出して読み、一息で言えるか、舌がもつれないか、電話で口にできるかを見ます。

社名に添える一行を決めて4か所に置くまでの流れ言葉を集めるお客様5人選ぶ約束を選ぶ1つだけ書くテストで絞る社名を替える決める4か所に置く同じ言葉で

入れ替えテストの読み方

入れ替えテストで落ちる案は、たいてい次の特徴があります。

落ちる案の特徴 例(架空) 直し方
形容する言葉だけで作られている 確かな技術と誠実な対応 仕事の範囲を言い切る
業種が入っていない 暮らしを支える 業種や場面の言葉を足す
約束が複数入っている 早く、安く、丁寧に 1つに絞る

落ちた案を捨てずに、「何が足りないか」を1行ずつメモしておくと、次の案の質が上がります。

手順6:4か所に置き、3か月後に見直す

最終案が決まったら、4か所に同じ言葉を置きます。置き方は、次の章で詳しく書きます。

置いたあとは、3か月後の日付を手帳に書きます。見直す日を決めておくと、気分で変えることを防げます。

業種の型で見る:集めた言葉から一行になるまで

架空の会社で、手順1から手順5までの流れを見ます。実在する会社の話ではありません。

町の電気工事店の型

お客様5人の言葉は、次のとおりでした。「夜中に停電して、すぐ来てくれた」「連絡すると、その日のうちに見てくれた」。

仕分けると、選んだ理由は「当日対応」、困りごとは「急な不具合」です。

案 型 入れ替えテスト
電気の不具合に、当日うかがいます 状況型 当日対応できない競合なら嘘になる。残す
暮らしの未来を灯します 自由 どの会社にも通じる。落とす
ご連絡から、半日で現場へ 数字型 体制を確かめて、守れるなら残す

最終案は、「電気の不具合に、当日うかがいます」でした。当日対応は、現場の2人体制で守れる範囲だと確かめてから決めています。

社会保険労務士事務所の型

お客様の言葉は、「就業規則を作りたかったが、大きな事務所は敷居が高かった」「小さな会社の事情を分かってくれた」でした。

仕分けると、選んだ理由は「小さな会社に慣れている」、心配だったことは「敷居の高さ」です。

案 型 入れ替えテスト
従業員30人までの就業規則を、専門に見ます 範囲型 大きな事務所なら嘘になる。残す
人と組織の可能性を拓く 自由 何屋か分からない。落とす
小さな会社の、就業規則の相談窓口 相手型 残す

最終案は、「従業員30人までの就業規則を、専門に見ます」でした。扱う範囲を絞ったことで、依頼する側が自分に合うか判断しやすくなります。

洋菓子店の型

お客様の言葉は、「誕生日に、小さなケーキを頼めた」「前日の予約で間に合った」でした。

選んだ理由は「小さなサイズ」と「前日予約でよい」、困りごとは「急な誕生日」です。

案 型 入れ替えテスト
誕生日の小さなケーキを、前日までのご予約で 状況型 大きなケーキだけの店なら嘘になる。残す
心を込めた最高のひとくち 自由 自慢になっている。落とす
2人で食べきれる、誕生日のケーキ 相手型 残す

最終案は、「2人で食べきれる、誕生日のケーキ」でした。お客様が口にした「小さなケーキ」を、読む人が想像しやすい形に直しています。

部品加工の会社の型

お客様の言葉は、「図面1枚から試作を受けてくれた」「見積が3日で返ってきた」でした。

選んだ理由は「少量の試作を受ける」と「見積の早さ」、心配だったことは「少量だと断られないか」です。

案 型 入れ替えテスト
図面1枚から、試作の見積を3日で返します 数字型 少量を断る競合なら嘘になる。残す
技術で世界をつなぐ 自由 大きすぎる。落とす
試作を頼みたい開発担当者のための、小ロット加工 相手型 長いが、会社概要用に残す

最終案は、ホームページの最上部には「図面1枚から、試作の見積を3日で返します」を、会社概要には相手型の長い案を使う形にしました。場所ごとの長さに合わせる考え方は、次の章で扱います。

4つの例に共通する形

4つの最終案には、共通点があります。どれも、業種か場面の言葉と、守れる約束を、1つずつ含んでいます。

もう1つの共通点は、競合の社名に差し替えると、嘘になる部分があることです。嘘になる部分こそが、その会社にしか言えない部分です。

書いた一行を、そのまま信じない

最後に、できあがった一行を、そのまま信じないことを勧めます。社内の人は、自社のことをよく知っているので、一行を読んでも、足りない情報を無意識に補ってしまうからです。

確かめる相手は、社外の人です。取引先でも家族でも構いません。社名を隠して一行だけを見せ、何屋かを聞きます。

当たらなければ、案に戻ります。当たるまで、手順3か手順4をやり直します。

つまずいたときの戻り先

手順を進めて、うまくいかない場合は、どの手順に戻るかを決めておきます。

つまずきの内容 戻る手順 やり直すこと
5案がどれも似た言葉になる 手順2 お客様の言葉を、もう3件集める
入れ替えテストで全案が落ちる 手順3 約束を選び直し、事実に置き換える
声に出すと長すぎる 手順4 形容する言葉と、2つ目の約束を削る
社外の人が何屋か当てられない 手順3 業種や場面の言葉を、一行に足す
社内で意見が割れる 手順1 決める人を1人に絞る

戻ることは、失敗ではありません。一行は、4か所に置いたあと、数年は変えにくい言葉です。作る段階で何度か戻るほうが、あとで直す手間より小さくなります。

特に、社内で意見が割れる場合は、案の良し悪しを争うより、お客様の言葉に戻ります。お客様が口にした言葉に近い案を選ぶと決めておくと、議論が短くなります。

型を選ぶときの目安

4つの型は、会社の強みの種類で選べます。

会社の強み 向く型 一行の例(架空)
対応の速さ 状況型・数字型 水まわりのつまりに、当日うかがいます
扱う範囲の狭さと深さ 範囲型 小さな店舗の帳簿だけを、専門に見ます
お客様の職種への理解 相手型 工務店の経理担当者のための、月次の相談窓口
小さな規模ならではの融通 状況型・相手型 1人からの注文を、断らずに受けます

自社の強みが、どの種類に近いかを、お客様の言葉から判断します。社内で考えた強みを型に当てはめると、お客様の言葉とずれる場合があります。

型を決めたら、その型で3案、ほかの型で1案、自由に1案という配分で書くと、比べやすくなります。

型に当てはめた案は、そのまま使わず、必ず声に出して読みます。読みにくい箇所は、言葉を削ります。

一行を作る人数と、役割分担

作業は、3人までで進めるのが現実的です。人数が増えるほど、意見の調整に時間がかかります。

役割 担当 やること
案を出す人 Web担当または総務の1人 お客様の言葉を集め、5案を書く
確かめる人 現場の責任者 約束が今の体制で守れるかを確かめる
決める人 社長 2案から1案を選ぶ

役割を分けると、案を出す人が、全員の意見の板ばさみになりません。確かめる人がいることで、守れない約束が一行に入るのを防げます。

決める人が社長1人でない会社は、決める人を事前に決めておきます。決める人が決まっていない会社は、最終案が決まる日が、なかなか来ません。

お客様に聞くときの、質問の文面

お客様の言葉を集める手順2では、質問の文面が結果を左右します。聞き方の例を、電話とメールに分けて示します。

方法 質問の文面(例) 注意すること
電話 「今後の参考にしたいので、数分だけよろしいですか。最初に連絡をくださったとき、どんなことでお困りでしたか」 相手の話を遮らず、使った言葉をそのまま書き取る
メール 「次の2点を、短くお教えください。1 うちにご連絡をくださった理由、2 連絡する前に心配だったこと」 返信しやすいように、質問は2つまでにする
対面 「うちを選んだ決め手は、何でしたか」 答えにくそうなら、「ほかに候補はありましたか」と続ける

質問は、短く、答えやすい形にします。「当社の強みは何だと思いますか」のように、評価を求める質問は、答える側が身構えます。

聞く相手には、お礼を伝えます。そして、聞いた言葉を使って一行を作ることを、あらかじめ断っておくと安心されます。

決めた一行を、4か所に置く:ホームページの最初の一文、名刺、会社概要、メール署名

一行が決まっても、置き方を間違えると、働きません。4か所は、それぞれ読む人の状態が違うので、置き方も変えます。

置く場所 置き方 気をつけること
ホームページの最上部 社名とロゴの真横か真下に置く 画像の中に文字を埋め込まず、文字として置く
名刺 社名の下に、小さめの文字で置く 裏面に回さず、表に置く
会社概要 社名の直下に置く 約束の範囲を、本文で補う
メール署名 社名の上か下に1行で入れる 毎回同じ言葉にする

ホームページの最上部は、文字として置く

ホームページの最上部には、社名とロゴの横に一行を置きます。ここで大切なのは、画像の中に文字を埋め込まないことです。

画像の文字は、検索エンジンや音声で読み上げる機能に、伝わりにくくなります。文字として置くと、同じ言葉が検索の結果にも反映されやすくなります。

スマートフォンで見たときに、折り返しても読める長さかも確かめます。2行に折り返される一行は、見た目の収まりが悪くなります。

ホームページの最初の一文との関係

社名の横の一行と、ホームページの最初の一文は、別のものです。一行は社名に添えて長く置く言葉で、最初の一文は、お客様の状況から始まる文です。

最初の一文の決め方は、「3C分析のやり方と例 表を埋めたのに決まらない人がHPの最初の一文を決める手順」に書きました。一行を決めたあとに、最初の一文を考えると、言葉の役割が混ざりません。

2つの言葉は、同じ約束から出発させます。社名の横の一行が結論で、最初の一文がその説明、という関係になります。

名刺は、表面に置く

名刺は、会った人が、あとから思い出すための道具です。社名の下に一行があると、会ったあとに名刺を見返したときに、何をしてくれる人かを思い出せます。

裏面に置くと、見返したときに読まれない可能性があります。表に置くほうが、効果が出やすくなります。

文字の大きさは、社名より小さく、役職や氏名より目立つ程度にします。

会社概要は、約束の範囲を補う

会社概要のページは、取引を始めるかどうかを慎重に見る人が読みます。ここでは、社名の直下に一行を置き、その下に、約束の範囲を短く書きます。

たとえば、一行が「図面1枚から、試作の見積を3日で返します」なら、その下に「対応する材料」「対応できる数量の目安」を足します。範囲が分かると、問い合わせるかどうかを判断しやすくなります。

会社概要には、一行の長い版を使っても構いません。短い版との2種類を持っておくと、場所に合わせて使い分けられます。

メール署名は、いちばん見られる場所

メールの署名は、1日に何度も目にされる場所です。取引先に、毎回同じ言葉を見せられます。

署名に入れる一行は、短いほうが収まりがよくなります。長い版しかない場合は、署名用に短くした版を作っておきます。

署名を変える作業は、社員全員の協力が必要です。一斉に切り替える日を決めて、全員の署名を同じ日に変えます。

そのほかの置き場所は、あとから足す

封筒、請求書、見積書、看板、車のロゴなどにも、一行を置けます。ただし、最初から全部に置こうとすると、印刷物の切り替えが大変です。

最初は4か所だけに置き、そのほかは、刷り直すタイミングで足します。

置き場所 足すタイミング
封筒・請求書 在庫がなくなって、刷り直すとき
見積書の様式 様式を見直すとき
看板・車のロゴ 塗り直しや張り替えのとき
採用ページ ページを更新するとき

置き場所ごとの長さを、先に決めておく

置き場所によって、収まる長さが違います。最終案を決める前に、4か所に入る文字数の目安を確認しておきます。

名刺は、社名の下の1行に収まる長さです。メール署名は、1行に収める長さです。ホームページの最上部は、スマートフォンでも折り返さない長さです。

いちばん短い場所に合わせて、基準の一行を作ります。長い場所には、同じ約束を少し長くした版を使います。

運用:一行を変えるとき、変えないとき

一行は、置いて終わりではありません。置いたあとの運用で、効果が変わります。

変えるときの基準は、3つ

一行を変えてよいのは、次の3つの場合に限ります。

変える場合 例 変えないで済む場合
扱う事業が変わった 事業の中心が別の分野に移った 一部のサービスが増えただけ
約束が守れなくなった 当日対応の体制がなくなった 一時的に人手が足りないだけ
同じ言葉を他社が使い始めた 検索で、同業が同じ一行を使っている 似た言葉が1件あるだけ

気分や見慣れでは、変えません。基準を満たさない限り、最低でも1年は同じ言葉を使います。

社員に、そらで言えるようにしてもらう

一行を決めたら、社員全員に伝えます。朝礼で一度読み上げるだけでも、言葉は定着します。

電話の応対や、メールの文面で、一行の約束を自然に口にできるようになると、一行は会社全体の行動になります。

社員が一行を言えないなら、一行が長すぎるか、約束が社内の現実と合っていないかのどちらかです。

反応は、問い合わせの言葉で確かめる

一行の効果を確かめるには、問い合わせの内容を読みます。一行の言葉が、問い合わせメールに出てきたら、読み手に届いている印です。

「当日うかがえると書いてあったので」のような言葉が増えたら、その約束が、選ぶ理由になっています。

数字の変化だけを見ると、一行の影響を切り分けられません。ホームページには、ほかにも複数の要素が影響するからです。

3か月後の見直しで、見ること

3か月後に、次の3点を見直します。

見ること 確かめ方 結果の使い方
4か所の言葉が、同じになっているか 名刺・ホームページ・会社概要・署名を並べる ずれがあれば、直す
問い合わせに、一行の言葉が出ているか 直近の問い合わせを5件読む 出ていなければ、置き場所を見直す
社員が、一行を言えるか 3人に聞く 言えなければ、朝礼で伝え直す

見直しの結果、言葉そのものを変える必要があるかどうかは、先ほどの「変えるときの基準」で判断します。

分析の表と、一行の関係

SWOT分析や3C分析の表を作っている会社では、その結果を一行に写せます。表の最後に残った「やること」の中から、約束を1つ選びます。

SWOT分析の進め方は、「SWOT分析のやり方とテンプレート 表を埋めても決まらない人がやること・やめることを決める手順」にまとめています。表を作ったあとの行動に、一行を含められます。

表を作っていない会社は、この記事の手順だけで、一行を作れます。

一行を載せたあとの、電話とメールでの使い方

一行を置いたあとは、電話やメールの応対でも、同じ約束を口にします。名刺に「当日うかがいます」と書いてあるのに、電話で「確認して折り返します」と答えると、言葉と行動がずれます。

応対の台本の最初の一言を、一行の約束に合わせておくと、ずれが減ります。台本は長くする必要はなく、最初の返答と、最後の確認の2か所だけで足ります。

場面 一行の約束を使う場所 例(架空の電気工事店)
電話の最初 要件を聞いたあとの返答 「本日の訪問ができるか、すぐ確認します」
メールの返信 最初の2行 「ご連絡ありがとうございます。本日中の訪問を調整します」
見積の提出 添え書き 「当日の対応範囲は、次のとおりです」

社員が、約束どおりに動けたと感じる場面が増えるほど、一行は会社の言葉として定着します。

問い合わせ窓口の返信文にも、同じ約束を入れる

ホームページの問い合わせフォームに届いた最初の自動返信にも、一行の約束を入れておきます。自動返信は、お客様が必ず読む、最初の文面だからです。

たとえば、一行が「電気の不具合に、当日うかがいます」の会社なら、自動返信に「本日中にうかがえるかを、担当者が確認してご連絡します」と入れます。

約束と返信が合っていると、お客様は、ホームページで読んだ内容が本当だったと感じます。この小さな一致が、次の問い合わせにつながります。

場所 入れる内容 確かめること
自動返信メール 一行の約束に沿った、次の動き 返信の時間が、約束と合っているか
問い合わせ完了ページ 約束の範囲と、連絡の目安 守れる範囲だけを書いているか
担当者の最初の返信 一行と同じ言い回し 言葉が一行とずれていないか

1週間で一巡させる計画

作る日と決める日を分けると、1週間で一巡できます。

日 やること 出てくるもの
1日目 読む人と、置く場所を決める 読み手の一文と、場所の一覧
2日目 お客様5人の言葉を集める 言葉のメモ
3日目 約束を1つ選び、型に当てはめて5案を書く 5案
4日目 入れ替えテストをして、2案に絞る 2案
5日目 何もせず、頭を冷ます なし
6日目 社外の人3人に見せて、1案に決める 最終案
7日目 4か所への置き方を決め、切り替える日を決める 置き方の一覧

5日目に何もしない日を置くのは、作る頭と決める頭を切り替えるためです。

最初の1か月で、変える場所は2か所だけ

最初の1か月は、ホームページの最上部とメール署名の2か所だけを切り替えます。名刺は、刷り直すタイミングで入れ替えます。

2か所に絞ると、切り替えの手間が少なく、反応も確かめやすくなります。

よくある質問

Q. タグラインとは、何のために置くものですか。

社名やロゴに添えて、その会社が誰に何を約束するのかを、短く伝えるために置きます。初めて会社を知った人が、何屋かを確かめる手がかりになります。

辞書では「商品広告の結語として用いられるキャッチフレーズないしスローガン」と説明されますが、中小企業では、社名の横に長く置く一行として使います。

Q. キャッチコピーやスローガンとは、どう違いますか。

置く場所と、変える頻度が違います。社名の横に長く置くなら、この記事で書いた一行です。ページの見出しで目を止めるなら、キャッチコピーです。社内の標語なら、スローガンです。

兼用しても構いませんが、扱う商品が3つ以上ある会社は、分けたほうが働きます。

Q. 英語の一行は、添えたほうがよいですか。

お客様が国内の取引先中心なら、添えなくて構いません。海外の取引先がいる場合は、添える意味があります。

添えるときは、日本語の意味を具体的にしてから、英語を使う人に確認してもらいます。見た目のためだけの英語は、信用を下げることがあります。

Q. 商標登録は、したほうがよいですか。

特許庁のページによると、商標登録を受けないまま使っていて、先に他社が同じような商標を登録していれば、侵害にあたる可能性があります。ただし、一行が登録できるかどうかは、個別の判断になるので、この記事では断定しません。

決める前に検索して、近い言葉が使われていないかを確かめます。迷う場合は、特許庁の相談窓口や弁理士に相談してください。

Q. 作ったあと、何年くらい使えばよいですか。

最低でも1年は同じ言葉を使います。お客様が覚え始めるのは、社内が見慣れて飽きる頃よりも遅いからです。

変える場合は、「変えるときの基準」の3つの場合に当てはまるかを確かめてから決めます。

まとめ

社名に添える一行は、お客様が自分のための会社かどうかを判断する場所です。会社の自慢は、ここには入れません。業種か場面の言葉と、守れる約束を、1つずつ入れます。

作る手順は6段です。お客様の言葉を集め、約束を1つ選び、型で5案を書き、入れ替えテストで1案に絞り、4か所に置き、3か月後に見直します。

総務省が2026年5月に公表した「令和7年通信利用動向調査」によると、従業者100人以上の企業の93.3%が自社のホームページを開設しています。ホームページを持つこと自体は差にならず、開いた瞬間に何屋かが伝わるかどうかが、差になります。この数字は、100人以上の企業の調査であり、一行の効果を示すものではありません。

商標については、特許庁のページで確かめた範囲に限って書きました。登録できるかどうかは個別の判断になるので、決める前に、自分でも検索して近い言葉がないかを確かめてください。

「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、会社が言いたいことを一度引き、お客様が知りたいことに先に答える言葉を、社名の横に置いてください。

今日できる点検

点検すること 確かめ方 結果の使い方
今の一行から社名を隠して、何屋か分かるか 社外の人3人に見せて聞く 当たらなければ、作り直す
一行の社名を競合に差し替えると、嘘になる部分があるか 競合の名前で読む なければ、事実で言い換える
主語が、お客様の側になっているか 「あなたの」を補って読む 自社が主語なら、書き直す
約束が1つに絞られているか 約束の数を数える 複数なら、1つに削る
今の体制で、約束が守れるか 現場に確かめる 守れないなら、範囲を狭める
名刺とホームページの言葉が同じか 2つを並べて見る 違えば、どちらかにそろえる
社員が、そらで言えるか 社員3人に聞く 言えなければ、朝礼で伝える
見直す日が、手帳に書いてあるか 3か月後の日付を確認する なければ、今日書く

社名の横の一行を、公開前に3人に見せる

最終案を4か所に置く前に、もう一度、社外の3人に見せます。社名を隠した状態で一行だけを見せ、何屋か、誰向けかを聞きます。

この確認は、手順5の確認と同じ内容です。ただ、案が1つに絞られたあとで見せると、最初とは違う感想が返ってくる場合があります。

聞くこと 当たっている場合 外れている場合
何屋だと思うか そのまま置く 業種の言葉を足す
誰向けだと思うか そのまま置く 相手の言葉を足す
約束は何だと思うか そのまま置く 約束を1つに絞り直す

3人とも当てていれば、置いてよい状態です。1人でも外れた場合は、外れた理由を聞いて、言葉を直します。

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合同会社謙虚 代表社員。20代から、売る言葉だけを仕事にしてきました。電話営業で受話器を握っていた時代から、数千社のWEB集客に関わったいままで。詳しいプロフィールはこちら

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