SWOT分析の表は、ひと通り埋めた。強みも弱みも機会も脅威も、付箋に書いて貼り出した。それなのに、来月から何をするのかは、少しも決まらない。
この記事は、そんな状態で止まっている中小企業の経営者とWeb担当の方に向けて書きました。
結論から言うと、4つの欄を埋めただけでは行動は決まりません。欄と欄を掛け合わせて「やること」と「やめること」を選ぶところまで進めると、ホームページの最初の一文と、載せる実績が1つずつ残ります。
先に答え:SWOT分析は、4つの欄を掛け合わせて「やること・やめること」を選ぶ道具として使う
SWOT分析とは、自社の内側にある強みと弱み、自社の外側で起きている機会と脅威を4つの欄に分けて並べ、次の一手を考える整理の方法です。
読み方は「スウォット」です。4つの言葉の頭文字を並べた名前で、欄の名前を日本語にすると、強み、弱み、機会、脅威になります。
中小企業の担当者が、4つの欄を並べただけで止まるのは珍しくありません。並べることは、分析の入口にすぎないからです。
出口は、掛け合わせた結果として「今期やること」と「今期やめること」が書き出されている状態です。その2つが決まると、ホームページに何を載せ、何を載せないかも決まります。
次の表が、この記事で進める全体の流れです。
| 段 | やること | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 1 | 外側の機会と脅威を、お客様の側で起きている変化として書く | 変化の一覧 |
| 2 | 内側の強みと弱みを、お客様に聞いた言葉で書く | 証拠つきの強みと弱み |
| 3 | 4つの欄を掛け合わせる(クロスSWOT) | 行動の候補 |
| 4 | 候補から、やること3つとやめること2つに絞る | 今期の行動 |
| 5 | 行動を、ホームページの最初の一文と載せる実績に写す | 書き換える場所 |
SWOT分析の読み方と、4つの言葉の意味
4つの言葉を、短く確認します。後の章で何度も使うので、ここで意味をそろえておきます。
| 欄 | 英語の頭文字 | 意味 | 中小企業での例 |
|---|---|---|---|
| 強み | S | 自社の内側にあって、お客様に選ばれる理由になること | 図面1枚から試作を引き受けて、3日で見積を返す |
| 弱み | W | 自社の内側にあって、選ばれる邪魔になること | 問い合わせ対応を社長1人でしている |
| 機会 | O | 自社の外側で起きていて、追い風になること | 少量で試作したい開発担当者が増えている |
| 脅威 | T | 自社の外側で起きていて、向かい風になること | 材料の値上がりで、見積の金額が合わない |
表の「英語の頭文字」の列は、読み方の確認のために入れました。記事の本文では、日本語の4つの言葉だけを使います。
内部と外部の見分け方は、自社の努力で変えられるかどうか
強みと弱みは内部、機会と脅威は外部です。この区別でつまずく人が、いちばん多い場所でもあります。
見分け方は1つです。自社が今日から努力して変えられるなら内部、変えられないなら外部です。
たとえば「人手が足りない」は、採用や仕組みで変えられるので弱みです。「地域の人口が減っている」は、自社では変えられないので脅威です。
同じ出来事でも、書き方で欄が変わります。「材料が値上がりした」は外部の脅威ですが、「値上げをお客様に説明できていない」は内部の弱みです。
迷ったときは、その一文の主語を見ます。主語が自社なら内部、主語が市場やお客様や制度なら外部です。
この記事で答える4つのこと
次の4点を、順に書きます。
- SWOT分析の表を埋めても何も決まらなくなる、5つの症状
- 4つの欄を掛け合わせて、やることとやめることを選ぶ方法
- 選んだ結果を、ホームページの最初の一文と載せる実績に写す手順
- 業種ごとの例と、3C分析やERRCグリッドとの使い分け
確かめた出典と、書かない範囲
公的な統計は、中小企業庁の「2026年版中小企業白書」を2026年10月26日に開いて、本文を確かめた数字だけを使います。
費用の話は書きません。実在する会社の名前も出しません。
検索上位の解説は、2026年10月26日に数本開いて、見出しの並びを確かめました。手順の最後に「クロスSWOTで戦略を立てる」という段を置く解説が目立ちました。この記事は、その段の先にある「何をやめるか」と「ホームページのどこに書くか」を中心に書きます。
業種ごとの例は、よくある型として私が書いた例文です。実在する会社の表ではありません。
検索でよく並ぶ4つの言葉の答えは、どこにあるか
「SWOT分析」で検索すると、「とは」「読み方」「テンプレート」「やり方」という言葉が候補に並びます。この4つに対する答えが、この記事のどこにあるかを先に示します。
| 検索の言葉 | 知りたいこと | この記事の答えの場所 |
|---|---|---|
| とは | 何をする分析か | 「先に答え」の章(4つの欄を掛け合わせて、やることとやめることを選ぶ道具) |
| 読み方 | 名前と欄の意味 | 「SWOT分析の読み方」の節(読み方はスウォット) |
| テンプレート | 書き込み用の表 | 「基本のやり方とテンプレート」の章と、後の章のクロスSWOTの表 |
| やり方 | 手順 | 全体の流れの表と、後半の「やること・やめること」の章 |
テンプレートは、4つの欄の表だけで終わりません。掛け合わせの表と、ホームページに写すための表まで、この記事の中に載せています。
表を印刷して使うなら、1枚の紙に4つの欄を書き、裏面に掛け合わせの表を書く形が扱いやすいです。会議室の壁に貼るなら、付箋に1行ずつ書いて、欄ごとに貼ります。
どちらの形でも、実際に欄を埋める時間は30分から1時間で足ります。長く時間をかけても、欄の中身が良くなるとは限らないからです。
Q&Aサイトで見た「クロスSWOT分析が分からない」という問い
先日、Q&Aサイトでこのような悩みを拝見しました。原文は載せず、要点だけを書き直して紹介します。
質問者さんは、ある大手の小売チェーンを題材にSWOT分析を済ませたところでした。4つの欄は埋まったのに、その先のクロスSWOTがどういうものか分からない、という内容でした。
つまり、4つの欄の名前も、埋め方も知っている。止まっているのは、埋めたあとの一歩です。
寄せられた回答は、掛け合わせる4通りの説明だった
この質問には、いくつか回答が付いていました。いちばん実用的だったのは、4通りの掛け合わせを短く説明した回答です。
強みと機会なら、機会をつかむために強みをどう使えるかを考える。弱みと機会なら、弱みが機会を逃す原因にならないかを考える。強みと脅威なら、強みで脅威を乗り越えられないかを考える。弱みと脅威なら、弱みが脅威を大きくしないかを考える。
もう1つの回答は、難しくてよく分からない、という短い感想でした。
質問者さんの気持ちに近いのは、おそらくこちらの感想のほうです。説明を読めば意味は分かっても、自分の会社に当てはめると、何を書けばよいのか分からなくなります。
この質問から見える2つの疑問
この質問の背景には、2つの疑問があると考えました。
1つ目は、掛け合わせて出てきた文を、どこまで具体的に書けば「行動」と呼べるのか、という疑問です。
2つ目は、掛け合わせた結果が何十行にもなったとき、どれを選べばよいのか、という疑問です。
どちらも、掛け合わせの説明だけでは答えが出ません。書き方と、選び方の両方が必要です。この記事の後半で、その2つに答えます。
質問を、中小企業の場面に置き換える
大手の小売チェーンでは、掛け合わせた結果が、そのまま出店計画や仕入れの方針になります。決める人も、動かす人も、組織の中にそろっています。
中小企業では、掛け合わせた結果を決める人は社長1人で、動かす人は数人です。何十行もの候補は、動かしきれません。
だから中小企業のクロスSWOTは、候補を減らす作業になります。減らした結果は、ホームページの最初の一文のように、お客様の目に見える場所に出てはじめて意味を持ちます。
大手企業の例と、中小企業の表は役目が違う
大手企業の分析例は、検索すればいくつも出てきます。ただ、あれは経営会議で新規事業や出店を判断するための資料です。
中小企業のホームページ担当者が同じ形の表を作っても、判断に使える材料にはなりません。市場の規模や競合の売上は、中小企業の手元で動かせる数字ではないからです。
動かせる数字は、自社のホームページと、お客様からの問い合わせです。この記事の表は、すべてその2つにつながるように組み直します。
SWOT分析の基本のやり方とテンプレート:4つの欄を埋めるまで
最初に、基本の手順を確認します。ここまでは、検索上位の解説とほぼ同じ流れです。違いが出るのは、埋めたあとの段からです。
手順0:分析する範囲と目的を、一文で決める
最初に決めるのは、何についての分析かです。会社全体、1つの事業、1つのサービスのどれかを選びます。
ホームページを直す目的なら、範囲は「ホームページで見込み客を集めたい事業」の1つに絞ります。複数の事業を1枚に混ぜると、強みと弱みが打ち消し合って、何も残りません。
目的は、次の形で一文にします。「(事業名)について、今期、ホームページで何を前に出し、何をやめるかを決める」。
この一文を表の上に書いておくと、後で欄に書く内容が脱線したときに、戻る場所ができます。
手順1:外側の機会と脅威から先に書く
SWOT分析の名前は、強みから始まります。ただ、書く順番は、外側の機会と脅威から始めるほうが、うまくいきます。
先に強みを書くと、「うちの強みは何だろう」と社内で考え込んで、時間だけが過ぎるからです。外側の変化を先に書くと、それに対して自社の何が強みになるのか、という見方ができます。
外側の変化は、お客様の側で起きていることとして書きます。「少量で試作したい開発担当者が増えている」は書けますが、「市場が拡大している」は、何の根拠も行動も引き出しません。
書く場所の目安は、お客様からの最近の問い合わせ、業界団体の発表、取引先との雑談です。
手順2:内側の強みと弱みは、お客様に聞いた言葉で書く
強みと弱みは、社内で話し合って決めても、半分しか見えません。お客様が実際に選んだ理由は、社内の想像と違うことがよくあるからです。
最近の契約や注文のお客様に、「なぜうちに頼んだのか」と「頼む前に心配だったことは何か」を聞きます。5人に聞けば、強みと弱みの候補がそれぞれ数個ずつ出てきます。
お客様が口にした言葉は、そのまま欄に書きます。社内の言葉に直すと、ホームページに写すときに、またお客様の言葉に戻す手間が増えます。
テンプレート:4象限の表(書き込み用)
次の表が、4つの欄を埋めるときに使う書き込み用のテンプレートです。各欄に最大5行まで、証拠か出来事を1つ添えて書きます。
| 内側と外側 | 有利なこと | 不利なこと |
|---|---|---|
| 内側(自社が変えられる) | 強み:お客様が選んだ理由を、お客様の言葉で書く。例:図面1枚から見積を返す。根拠:直近の依頼5件のうち4件 | 弱み:お客様が頼む前に心配したことを書く。例:納期の目安が書いていない。根拠:問い合わせで毎回聞かれる |
| 外側(自社が変えられない) | 機会:お客様の側で起きている追い風を書く。例:少量の試作を頼む担当者が増えている。根拠:問い合わせの内容 | 脅威:お客様の側で起きている向かい風を書く。例:材料の値上がりで見積が合わない。根拠:失注の理由 |
欄ごとの書き方のコツは、1行に「出来事」と「根拠」の2つを入れることです。根拠が書けない行は、まだ思い込みの段階なので、欄の候補として横に置いておきます。
手順3:埋めた表を、そのまま使わない
4つの欄が埋まった時点で、多くの解説は「分析完了」と書いています。実際には、ここは中間地点です。
表には、事実の一覧が並んでいるだけで、「だから何をするか」はまだ1行も書かれていません。
表を眺めて「なるほど」と感じて終わる場面は、会議でも個人の作業でもよく起きます。感想が出ただけでは、来月の予定表も、ホームページの文面も、一行も変わりません。
次の章では、この状態で止まってしまう理由を、5つの症状として整理します。
SWOT分析の表を埋めても何も決まらない5つの症状
表を埋めたのに決まらない状態は、次の5つの症状のどれかに当てはまります。自社の表を横に置いて、いくつ当てはまるか数えてください。
| 症状 | 表に出ている形 | 起きていること |
|---|---|---|
| 1 | 強みの欄が「技術力」「信頼」「丁寧な対応」で終わっている | どの会社にも書ける言葉で、お客様の選ぶ理由になっていない |
| 2 | 機会と脅威の欄が「市場の拡大」「人口減少」で終わっている | 自社の行動に結びつかない、ニュースの見出しになっている |
| 3 | 弱みの欄が、強みの裏返しになっている | 強みを言い換えただけで、新しい情報が入っていない |
| 4 | 4つの欄が、社内の会議だけで埋まっている | お客様の目から見た強みと弱みが入っていない |
| 5 | 表を埋めたあとの「次の一手」の欄が空いている | 表が資料として保管されて終わる |
症状の根っこは、すべて「行動に変えられない言葉」にある
5つの症状は、別々の問題に見えます。ただ、よく見ると同じ原因から出ています。欄に入っている言葉が、行動に変えられない言葉だということです。
「技術力」は、何をすればよいのか分からない言葉です。「図面1枚から3日で見積を返す」なら、何を守ればよいのかが分かります。
「市場の拡大」は、誰も反論しない言葉です。「少量の試作を頼む担当者が増えている」なら、ホームページに何を書けばよいのかが分かります。
欄の言葉を、行動に変えられる形に直す。それが、表を決まる表に変える最初の作業です。
自社の表を見分ける3つの質問
欄の言葉が行動に変えられるかどうかは、次の3つの質問で確かめられます。
1つ目は、「その言葉を競合のホームページに貼っても、違和感がないか」です。違和感がなければ、差がつかない言葉です。
2つ目は、「その言葉を、お客様が実際に口にしたことがあるか」です。口にした例が1件もないなら、社内の言葉です。
3つ目は、「その言葉から、明日やることを1つ書けるか」です。書けなければ、行動に変えられない言葉です。
この3つの質問は、30分で終わります。欄の1行ずつに当てて、3つとも「はい」と答えられた行だけを残します。
表を埋めた人が、次に陥りやすい行動
表が決まらないまま時間がたつと、次の行動に走る人がいます。
1つは、別の分析手法を探し始めることです。3C分析、5フォース分析、外部環境の分析と、手法を次々に増やしても、言葉の問題は残ったままです。
もう1つは、表の欄を増やすことです。「強み」を「技術の強み」「営業の強み」「人の強み」に分けて細かくするほど、行数が増えて、選ぶ作業が重くなります。
どちらも、表を完成させようとする方向に進んでいます。必要なのは完成でなく、表から1つ決めることです。
公的な調査から見える、計画を「作って終わり」にしない効果
私の感覚だけで話を進めたくはないので、中小企業庁の「2026年版中小企業白書」を開いて、経営計画に関する調査結果を確かめました。
SWOT分析の実施率を直接聞いた図表は、白書には見当たりませんでした。ここで確かめたのは、SWOT分析の結果が最終的に入る先である、経営計画の策定と運用についての調査です。
経営計画を「策定している」事業者は、約4割
白書の第2-2-47図は、経営計画の策定状況を見たものです。
中小企業庁は、この図について、「策定している」と回答した事業者は約4割にとどまり、策定していない事業者が過半数を占めていると説明しています。
計画を持っていること自体が、まだ多数派ではありません。表を作る段階で止まる会社がいても、不思議ではない数字です。
| 経営計画の策定状況 | 白書の記述 |
|---|---|
| 策定している | 約4割にとどまる |
| 策定していない | 過半数を占める |
出典は、中小企業庁「2026年版中小企業白書」第2-2-47図です。白書では、経営計画を「自社が現状から将来のあるべき姿に到達するための計画」と定義しています。
計画を現場まで浸透させた事業者は、付加価値額の変化率が高い
白書の第2-2-49図は、経営計画の社内浸透度別に、付加価値額の変化率(中央値)を見たものです。
白書は、この結果について「この調査結果から一概にはいえない」と断ったうえで、計画を作るだけで止めた事業者と比べたうえで、次のように書いています。「従業員に広く浸透させている事業者は、付加価値額の増加を実現している可能性がある」。
私はこの一文を、次のように読みました。計画を作ることよりも、計画が現場の人に届いているかどうかが、結果と重なっている。
ただし、これは回答の比較です。浸透させたから増えたと決められる資料ではありません。白書自身も「一概にはいえない」と書いています。
社内の浸透度の内訳
白書の第2-2-48図は、経営計画の社内浸透度を聞いたものです。
白書の記述では、「現場担当者まで」浸透していると回答した事業者は約3割、「管理職まで」と回答した事業者は約4割、「役員まで」と「経営者のみ」と回答した事業者はそれぞれ約2割でした。
| 浸透している範囲 | 白書の記述 |
|---|---|
| 現場担当者まで | 約3割 |
| 管理職まで | 約4割 |
| 役員まで | 約2割 |
| 経営者のみ | 約2割 |
経営者の頭の中だけにある計画は、2割にあたる事業者で止まっています。SWOT分析の表を社長のパソコンにしまっておく状態は、この「経営者のみ」に近い形です。
見直しを続けている事業者が約8割
白書の第2-2-51図は、策定後の進捗管理・評価と見直しの実施状況です。
白書は、「計画の進捗管理・評価と計画の見直しを行っている」と回答した事業者が約8割を占めると説明しています。
白書の記述では、見直しまで行う事業者が約8割で、進捗管理だけの事業者と、どちらも行っていない事業者は、それぞれ約1割でした。表を1回作って終わりにするより、見直しの機会を最初から予定に入れておくほうが、この調査の結果に近い運用です。
白書の数字から、この記事で使う3つの方針
白書の調査から、この記事の手順に取り入れたことを3つ書きます。
1つ目は、表をホームページという見える場所に写すことです。表が社長の頭に閉じていると、「経営者のみ」の状態から出られません。
2つ目は、決めたことを社内に説明する材料を、表1枚と一文に絞ることです。白書では、計画が現場担当者まで浸透している事業者に有効だった取組を聞いており、「経営層による説明」の割合が最も高いと説明しています。
3つ目は、見直しの日付を最初に決めておくことです。次の見直しは、3か月後など、手帳に書ける日にします。
表が3か月で使われなくなる理由
SWOT分析の表は、作った直後は会議で話題になります。3か月後には、保存したフォルダの場所さえ思い出せなくなることがよくあります。
理由は、表の更新と、日々の仕事の間に接点がないからです。表が仕事の入口に置かれていないので、開く理由が生まれません。
ホームページは、毎日誰かが開く場所です。表の結論をホームページの最初の一文や実績に写しておくと、ページを開くたびに結論を見ることになります。ホームページが、表の見張り役になるわけです。
| 表の置き場所 | 開く頻度 | 表の結論が仕事に反映される度合い |
|---|---|---|
| 社長のパソコンのフォルダ | 年に1回あるかないか | ほとんど反映されない |
| 会議の資料 | 会議のたび | 会議の中だけで反映される |
| ホームページの最初の一文と実績 | お客様が開くたび | お客様の目に毎日触れる |
表を作る人と、決める人を分ける
小さな会社では、表を作る人と、決める人が同じ社長ということがあります。この場合、作りながら迷い、迷いながら決められずに止まります。
担当者が表を作り、社長が決める形に分けると、作業が進みやすくなります。担当者は候補を並べ、社長は候補を3つとやめることを2つに絞ります。
社長が1人で全部やる場合でも、作る日と決める日を別の日に分けるだけで、頭の切り替えができます。作った表を一晩置いて、翌朝に決める流れです。
表を完成させる前に、1つ試す
表が完璧になるのを待たず、候補の段階で1つ試すほうが、学びは早く得られます。
たとえば、強みと機会の掛け合わせから出た一文を、ホームページの最初の一文の候補として1週間だけ置いてみます。反応が変わらなければ、別の候補に差し替えます。
表の外で試した結果は、次に表を見直すときの、いちばん確かな材料になります。
3C分析・ERRCグリッドとの使い分け:どれを先に使うか
同じ自社サイトの記事では、3C分析とERRCグリッドも扱っています。名前が似ていて、迷う人が多いので、使い分けを整理します。
| 分析 | 答えが出る問い | 出口になるもの |
|---|---|---|
| 3C分析 | お客様と競合を踏まえて、一番上で何を約束するか | トップページの最初の一文 |
| ERRCグリッド | 提供する内容のうち、何を取り除き、減らし、増やし、加えるか | 選ばれる理由になる提供内容の組み替え |
| SWOT分析 | 今期、自社は何をやり、何をやめるか | やること3つ、やめること2つと、載せる実績 |
3C分析は、ホームページの一番上の約束を決める道具です。詳しい手順は、「3C分析のやり方と例 表を埋めたのに決まらない人がHPの最初の一文を決める手順」に書きました。
ERRCグリッドは、提供する内容を組み替える道具です。取り除くことと、減らすことを決める点が特徴です。手順は、「ERRCグリッドとは 中小企業がやめることから決めて選ばれるサイトにする手順」にまとめています。
SWOT分析だけにできる仕事は、外側の変化を行動に結びつけること
3C分析にも、ERRCグリッドにも、「機会」と「脅威」に当たる欄はありません。
SWOT分析にだけある外側の変化の欄が、今期の優先順位を決める根拠になります。たとえば、材料の値上がりという脅威があるから、少量の試作という強みを前に出し、大量の見積はやめる、という判断ができます。
3C分析では、その判断の根拠になる外側の変化を拾えません。
3つの分析を使う順番
ホームページを新しく作る、または作り直すときは、次の順番が使いやすいです。
- SWOT分析で、今期のやること・やめることを決める
- 3C分析で、トップページの最初の一文を決める
- ERRCグリッドで、提供内容の組み替えを決める
ただし、この順番は目安です。最初の一文だけ直したいなら、3C分析だけで足ります。提供内容を整理したいなら、ERRCグリッドだけで足ります。
3つを全部やる必要はありません。今困っていることに合う1つを選んでください。
迷ったときの選び方
どの分析を選ぶか迷ったときは、自社の困りごとを次の表に当ててください。
| 今の困りごと | 選ぶ分析 | 理由 |
|---|---|---|
| ホームページの一番上に何を書くか決まらない | 3C分析 | 顧客と競合から、一番上の約束を決められる |
| 提供しているものが多すぎて、売りが見えない | ERRCグリッド | 取り除くことと減らすことを決められる |
| 来期に何をするか、何を手放すかが決まらない | SWOT分析 | 外側の変化を踏まえて、優先順位をつけられる |
| 値上げや新サービスの判断が必要 | SWOT分析 | 脅威と機会を並べて、判断の根拠にできる |
SWOT分析を、先にやらなくてよい場面
開業したばかりで、お客様の声がまだ集まっていない場合は、SWOT分析を先にやる必要はありません。強みと弱みの根拠になるお客様の言葉が、手元にないからです。
この場合は、最初のお客様10人分の声が集まるまで、3C分析で一番上の約束だけを決めておきます。声が集まった時点で、SWOT分析に進みます。
逆に、すでに数年続いている会社で、売上の中身が変わってきた場合は、SWOT分析から始めるのが合っています。何が変わったのかを、外側の欄で確かめられるからです。
どちらの場面でも、判断の基準は同じです。手元にあるお客様の言葉の量で、先に使う分析を選びます。
声が少ないうちに表を埋めても、欄に入るのは想像だけになります。想像で埋めた表は、後で根拠を探す手間のほうが大きくなります。
よくある間違ったSWOT分析の進め方と、その末路
表が決まらない原因は、症状の根っこにある言葉の問題だけではありません。進め方にも、つまずきやすい点が5つあります。
間違い1:強みを、社内の自慢の一覧にする
最初の間違いは、強みの欄を、社内で自慢できることの一覧にしてしまうことです。創業年数、設備の数、資格の数など、社内から見て誇らしいことが並びます。
これらは事実でも、お客様が選ぶ理由とは限りません。創業40年という事実を、お客様が選ぶ理由として挙げた例は、直近の依頼を振り返っても、ほとんどないのが普通です。
起きる末路
自慢の一覧をホームページに写すと、会社概要のような一番上になります。お客様は自分の用件に答えているか分からず、数秒で離れます。
間違い2:機会と脅威を、ニュースの見出しで書く
2つ目の間違いは、外側の欄を、ニュースの見出しで埋めてしまうことです。「少子高齢化」「物価高」「人手不足」といった言葉が並びます。
見出しは正しくても、自社のお客様にどう関係するのかが書かれていません。そのため、掛け合わせの段階で、何を掛け合わせればよいのか分からなくなります。
見出しを、お客様の側の出来事に翻訳します。「物価高」なら、「見積を取ったお客様が、金額の理由を聞いてくる回数が増えた」のように書きます。
間違い3:弱みを、書かずに飛ばす
3つ目は、弱みの欄が空白か、軽い内容で終わることです。社内の会議で弱みを挙げるのは、言いにくいからです。
弱みが見えていない表は、掛け合わせたときに、強みと機会の組み合わせしか出てきません。強みと機会の組み合わせは、気持ちのよい案が並ぶだけで、実行に必要な「手放すこと」が出ません。
弱みは、お客様が頼む前に心配したことから拾うと、書きやすくなります。社内の反省会にならず、お客様の声として書けるからです。
競合調査の落とし穴は、別の記事でも整理しています
外側の欄を埋めるときに、競合ばかりを見て、目の前のお客様を見なくなる落とし穴については、「BtoB競合調査の罠:他社ばかり見て「目の前の顧客の現実」を見ていない経営者たち」で書いています。
間違い4:4つの欄を埋め終わってから、結論を考える
4つ目は、4つの欄を完璧に埋めてから、結論を考えようとすることです。欄を埋める作業が長引くほど、結論を考える時間は残らなくなります。
欄を埋めるのは、結論を出すための材料集めです。材料が揃う前に、結論の形を決めておくと、必要な材料が見えてきます。
結論の形とは、「今期やること3つ、やめること2つ」です。この形を先に表の下に書いておき、欄を埋めながら、空欄に入るものを探していきます。
間違い5:やることだけを増やして、やめることを決めない
最後の間違いは、掛け合わせの結果として、やることだけが増えていくことです。「新サービスを始める」「SNSを強化する」「ホームページを刷新する」と、前向きな案ばかりが並びます。
人手と時間は限られているので、やることを足したら、同じ量だけ何かを手放さないと、全部が中途半端になります。
やめることを決めないまま始めた施策は、数か月で止まります。誰かの時間が、従来の仕事と新しい仕事に引き裂かれるからです。
5つの間違いを避ける、書き始め前の確認
5つの間違いは、書き始める前の確認で、かなり防げます。次の表を、表づくりの最初の日に開いてください。
| 確認すること | 間違いとの関係 | 確認の仕方 |
|---|---|---|
| 分析する事業は1つに絞れているか | 全体にかかる | 事業名を表の上に書く |
| お客様の言葉を5件分、手元に用意したか | 間違い1・3 | 直近の問い合わせや注文のメモを見る |
| 外側の欄に、お客様の側の出来事を書く予定か | 間違い2 | 見出しで書かないと決める |
| 表の下に、結論の形を書いたか | 間違い4・5 | 「やること3つ、やめること2つ」と書く |
| 見直しの日を手帳に書いたか | 全体にかかる | 3か月後の日付を書く |
社長に弱みを言いにくいときの聞き方
弱みの欄は、社内で言いにくい内容が集まる場所です。社長の前で、担当者が率直に書けないことがあります。
聞き方を変えると、書きやすくなります。「うちの弱みは何か」と聞かずに、「お客様が頼む前に心配していたことは何か」と聞きます。
お客様の心配は、社内の誰の責任でもありません。責任の話にならないので、率直な言葉が出ます。
出てきた心配を、そのまま弱みの欄に書きます。直し方は、掛け合わせの段階で考えます。
外側の欄を埋める時間は、1時間で足りる
外側の欄は、調べ始めると終わりがありません。業界の統計、行政の発表、競合の動きと、調べる対象はいくらでも広がります。
時間を1時間に区切り、お客様の側の出来事に絞って書くと、欄は十分に埋まります。新しく調べずに、すでに知っていることを書き出す作業です。
直近の問い合わせの内容、失注の理由、お客様が口にした値段への反応。この3つを見るだけでも、機会と脅威が数行ずつ出てきます。
失注の理由は、特に使えます。断られた理由には、外側で起きている変化が、お客様の言葉でそのまま入っているからです。
失注の記録が残っていなければ、今日から1行ずつメモを始めてください。3か月続けると、次の表の材料になります。
担当者がつまずく本当の理由は、表を終わらせようとすること
5つの間違いに共通しているのは、表を終わらせようとしていることです。表が埋まれば仕事が終わった気持ちになり、次の一歩が止まります。
表の目的は、表を完成させることではありません。ホームページの最初の一文と、載せる実績を決めることです。その一歩手前で止まっているから、決まらないのです。
表に3週間かけた担当者の、よくある経過
よくある経過を、一例として書きます。実在する会社の話は使わず、起きやすい流れをまとめた例です。
1週目に、担当者が4つの欄の下書きを作ります。社内の会議で出た意見を、そのまま並べます。
2週目に、社長が欄の言葉の細かい部分に意見を出します。「技術力」を「高い技術力」に直すなど、言葉の調整が続きます。
3週目に、表が完成します。ところが、来月に何をするのかは、表のどこにも書かれていません。
間違いが続いたときに、ホームページ側に出る兆候
表が行動に変わらない状態が続くと、ホームページに次の兆候が出ます。
| 兆候 | ホームページに出る形 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 強みが並んでいるだけ | 「高い技術力」「丁寧な対応」が一番上に並ぶ | 競合のページに貼っても違和感がないか読む |
| 外側の変化に触れていない | 3年前と同じ文面が載っている | 最終更新日と、最近の問い合わせ内容を並べる |
| 弱みを隠している | 納期や条件の説明がない | 問い合わせで毎回聞かれることを数える |
| やめたことが残っている | 受けていない仕事がサービス一覧に載っている | 直近1年で受けていない項目を探す |
| 載せる実績が古い | 実績の日付が数年前で止まっている | 直近1年の実績が1件でもあるか見る |
間違いが続くと、社内で起きること
ホームページに兆候が出るころ、社内でも次のことが起きます。
営業は、ホームページの内容とは別の資料を作り始めます。ホームページが、営業の場面で役に立たなくなるからです。
現場は、表の結論を知らないまま、これまでどおりの仕事を続けます。表が、現場に届いていないからです。
社長は、「分析はしたのに」と感じて、別の手法や外部の講座を探し始めます。この時点で、最初の表は、誰からも開かれなくなります。
業種の型で見る:よくあるSWOT分析の表(書き換える前)
ここからは、4つの業種の型を使います。まず、書き換える前の表を見ます。どれも、実際の相談でよく見かける形をもとに、私が書いた例文です。
製造業の型(小ロットの金属加工)
| 欄 | 書かれている内容 | 問題点 |
|---|---|---|
| 強み | 高い技術力、創業30年の実績、最新の設備 | どの工場にも書ける |
| 弱み | 人手不足、営業力の不足 | 何をすれば直るのか分からない |
| 機会 | ものづくり市場の拡大 | 自社の行動に結びつかない |
| 脅威 | 材料の値上がり、競合の増加 | 対処する方向が書かれていない |
士業の型(相続の手続き)
| 欄 | 書かれている内容 | 問題点 |
|---|---|---|
| 強み | 豊富な経験、親身な対応、資格 | 依頼する人の選ぶ理由が見えない |
| 弱み | 知名度が低い、事務所が小さい | 弱みの裏返しで、新しい情報がない |
| 機会 | 高齢化に伴う相続の増加 | 依頼者の悩みの言葉が入っていない |
| 脅威 | 競合事務所の増加、報酬の低下 | 相手を数えただけで、対応が書かれていない |
飲食店の型(地域の洋食店)
| 欄 | 書かれている内容 | 問題点 |
|---|---|---|
| 強み | 本格的な味、居心地のよい店内、地元の食材 | 来店の決め手が分からない |
| 弱み | 席数が少ない、駅から遠い | 予約や送迎でどう補うかが書かれていない |
| 機会 | 外食需要の回復 | 全店に当てはまる追い風で、差がつかない |
| 脅威 | 食材費の上昇、人手不足 | 値段や営業時間の判断に結びつかない |
工務店の型(地域のリフォーム)
| 欄 | 書かれている内容 | 問題点 |
|---|---|---|
| 強み | 地元密着、丁寧な施工、アフターフォロー | 他社も同じ言葉を使っている |
| 弱み | 広告費が少ない、ホームページが古い | 直す優先順位が書かれていない |
| 機会 | 住宅の老朽化、補助制度の活用 | 問い合わせにどう結びつくか見えない |
| 脅威 | 大手の参入、職人の高齢化 | 自社にできる対応が書かれていない |
4つの表に共通する問題
4つの表は、業種が違っても、同じ形で止まっています。
強みの欄には、どの会社にも書ける言葉が並び、機会と脅威の欄には、ニュースの見出しが並んでいます。弱みの欄は、強みの裏返しか、直し方の見えない一言で終わっています。
そして、どの表にも、「だから何をするか」の欄がありません。
前の章の3つの質問を、4つの表に当てはめる
前の章で書いた3つの質問を、4つの表の強みの欄に当てはめます。
| 型 | 競合に貼っても違和感がないか | お客様が口にした言葉か | 明日の行動を書けるか |
|---|---|---|---|
| 製造業 | ない(どの工場にも貼れる) | 口にした例がない | 書けない |
| 士業 | ない(どの事務所にも貼れる) | 「親身」は聞くが、具体がない | 書けない |
| 飲食店 | 一部ある(本格的な味は貼れる) | 一部ある | 書けない |
| 工務店 | ない(どの工務店にも貼れる) | 口にした例がない | 書けない |
4つの型とも、3つの質問のどれかで落ちています。次の章で、この表を書き換えます。
各業種の型で、欠けているもの
書き換える前の表に欠けているものを、業種ごとに短く整理します。
製造業の型には、小ロットという選ばれる理由を示す数字が欠けています。何個から受けるのか、何日で返すのかが書かれていません。
士業の型には、依頼者が検索する言葉が欠けています。手続きの名前でなく、「何から手を付けたらよいか分からない」という悩みの言葉です。
飲食店の型には、来店の場面が欠けています。誰が、どんな日に、何を目当てに来るのかが書かれていません。
工務店の型には、実績の中身が欠けています。どんな工事を、どのくらいの期間で終えたのかが書かれていません。
4つの型に共通して欠けているのは、お客様の言葉と、数字や日数のような確かめられる事実です。次の章では、この2つを欄に入れていきます。
欠けているものが分かれば、直す場所が決まります。直す場所が見えない状態が、いちばん時間を使います。見えたあとの作業は、意外なほど短く終わります。表を最初から作り直す必要はなく、欄の言葉を差し替えるだけで進められます。
解決策:「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、4つの欄を書き換えて掛け合わせる
ここまでの原因は、欄に入れる言葉の種類と、埋めたあとに結論を出さないことにありました。解決策は、4つの欄の言葉を、ホームページを開く人の側に寄せて書き換え、掛け合わせて、やることとやめることを選ぶことです。新しい手法を足す必要はありません。
その軸にするのが、私が「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいる考え方です。
謙虚とは、会社を小さく見せることではない
謙虚という言葉は、控えめに振る舞うことだと受け取られがちです。ここでの意味は違います。
会社が言いたいことを一度引いて、お客様が知りたいことに先に答える。この順番を守ることを、謙虚と呼んでいます。
SWOT分析に当てはめると、会社の自慢を欄から引いて、お客様が選んだ理由と心配したことを入れる作業になります。さらに、やることを足す前に、やめることを先に決める作業にもなります。
引き算の基準は、3つの問い
欄に書く言葉と、残す行動を選ぶときは、次の3つの問いを順に当てます。
1つ目は、お客様がその言葉を実際に口にするかどうかです。口にしない言葉は、社内の整理の言葉なので、欄から引きます。
2つ目は、競合のページにも同じ言葉が書かれているかどうかです。書かれているなら、お客様から見て違いにならないので、一番上には置きません。
3つ目は、自社がその言葉の裏づけを、1つでも出せるかどうかです。出せないなら、約束にならないので、欄に残しません。
書き換えの全体の流れ
書き換えは、5つの段で進めます。上から順に、1つの段の結果が次の段の入口になります。
| 段 | やること | 欄に書く形 | 目安の時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 外側の機会と脅威を、お客様の側の出来事で書く | 出来事と根拠で各3行 | 1時間 |
| 2 | 内側の強みと弱みを、お客様の言葉と数字で書く | 言葉と根拠で各3行 | 1時間 |
| 3 | 4つの欄を掛け合わせる | 行動の候補を8行まで | 30分 |
| 4 | やること3つとやめること2つに絞る | 動詞で終わる5行 | 30分 |
| 5 | ホームページの最初の一文と載せる実績に写す | 一文と実績1件 | 1時間 |
以降、1つずつ説明します。業種の型は、前の章で見た4つを引き続き使います。
外側の機会と脅威、内側の強みと弱みを、お客様の言葉で埋める
外側の機会と脅威を、お客様の側の出来事で埋める
外側の欄は、先に書きます。ニュースの見出しは使わず、お客様の側で起きている出来事を書きます。
見出しを出来事に翻訳する3つの型
集めた言葉は、次の3つの型のどれかに当てはまります。型ごとに1行ずつ書くと、欄が偏りません。
| 型 | 書く内容 | 例(製造業の型) |
|---|---|---|
| 依頼の変化 | 問い合わせの内容が変わったこと | 1個だけの試作を相談する担当者が増えた |
| 断られた理由 | 失注の理由に出てきた外側の事情 | 材料費の上がった分を説明できず、見積で断られた |
| 比べられ方の変化 | お客様が比べる相手や基準が変わったこと | 量産工場でなく、小さな工房と比べる人が出てきた |
機会と脅威は、同じ出来事の表と裏でもある
1つの出来事が、機会にも脅威にもなる場合があります。
「材料の値上がり」は、量産の見積を苦しくする脅威です。一方で、少量の試作を急いで頼む人にとっては、金額より納期と融通が選ぶ理由になる、という機会にもなります。
どちらの欄に書くか迷ったら、両方に書いて構いません。掛け合わせの段階で、それぞれ別の行動として整理されるからです。
外側の欄でつまずきやすい点
外側の欄では、書く量がふくらみがちです。1つの欄に5行以上書いたら、減らす合図です。
減らすときは、先ほどの3つの問いのうち、「お客様の口から出た言葉かどうか」で選びます。社内で拾ったニュースの話は、後回しにします。
内側の強みと弱みを、お客様の言葉と数字で埋める
次に、内側の欄です。強みと弱みは、お客様の言葉と、数字の両方で書きます。
強みは、選ばれた理由を3件分集める
強みの欄は、直近の依頼のうち3件分について、「なぜ頼んだのか」を聞いて埋めます。聞く相手がいない場合は、受付の記録や、メールの最初の1〜2行を見ます。
集めた言葉を、事実に言い換えます。
| 社内の言い方 | お客様の言い方 | 事実に言い換えた形 |
|---|---|---|
| 高い技術力 | 1個からでも受けてくれた | 直近1年の依頼のうち、1個の試作が全体の6割 |
| 丁寧な対応 | 図面が不完全でも相談に乗ってくれた | 図面なしの相談から着手した件数 |
| 迅速な納期 | 来週までに欲しいと言えた | 見積の返答は2営業日以内 |
数字は、手元の記録から数えられる範囲で構いません。数えられないものは、強みの欄に書かないでおきます。
弱みは、頼む前に心配されたことから拾う
弱みの欄は、「頼む前に、何が心配だったか」を聞いて埋めます。
出てくる答えは、実力の話よりも、情報が足りない話が目立ちます。納期の目安が載っていない、金額の見当が付かない、断られたときの対応が分からない、といった内容です。
情報が足りない弱みは、ホームページに書くだけで直せます。このタイプの弱みは、掛け合わせの段階で、すぐに行動に変わります。
4つの欄を掛け合わせて、行動の候補を8つ作る(クロスSWOT)
4つの欄が埋まったら、掛け合わせます。クロスSWOTと呼ばれる作業で、ここからが本番です。
掛け合わせの4通りと、それぞれの問い
掛け合わせは、4通りあります。それぞれに、1つずつ問いを立てます。
| 掛け合わせ | 問い | 行動の向き |
|---|---|---|
| 強み×機会 | 機会をつかむために、強みをどう前に出すか | 前に出す(攻める) |
| 強み×脅威 | 脅威に負けないために、強みのどこを見せるか | 見せる(差をつける) |
| 弱み×機会 | 弱みが原因で、機会を逃していないか | 直す・補う |
| 弱み×脅威 | 弱みが脅威を大きくしていないか | 手放す・断る |
書き方の決まり:1つの掛け合わせに、行動を最大2つ
掛け合わせの結果は、動詞で終わる行動の形に書きます。1つの掛け合わせに書く行動は、最大2つまでです。
| 書き方 | 例 | 評価 |
|---|---|---|
| 状況の説明 | 試作の需要が増えており、当社の小ロット対応が活きる | 行動が書かれていない |
| 動詞で終わる形 | トップページの最初の一文に、1個から試作を受けると書く | 行動として使える |
4通りに2つずつ書くと、行動の候補は最大8つになります。8つを超えたら、書きすぎです。
製造業の型で見る、掛け合わせの実例
小ロットの金属加工の型で、掛け合わせを実際に書いてみます。
| 掛け合わせ | 行動の候補 |
|---|---|
| 強み(1個から受ける)×機会(少量の試作を頼む担当者の増加) | トップの最初の一文に「1個の試作から受ける」と書く。試作の実績を1件載せる |
| 強み(見積は2営業日以内)×脅威(材料の値上がりで見積が合わない) | 見積の返答日数を載せる。値上がり分の説明を見積の書式に入れる |
| 弱み(納期の目安が載っていない)×機会(急ぎの試作の相談) | 納期の目安を、試作の種類別にページへ載せる |
| 弱み(問い合わせ対応が社長1人)×脅威(大量の見積依頼への対応が追いつかない) | 大量生産の見積依頼は受けないと書く。問い合わせフォームの項目を減らす |
4行目は、やることでなく、やめることの形です。弱みと脅威の掛け合わせは、手放す行動が出やすい場所です。
やること3つ、やめること2つに絞る
掛け合わせで出た行動の候補は、そのままでは実行できません。やることを3つ、やめることを2つに絞ります。
絞る基準は、4つの問い
候補を絞るときは、次の4つの問いを使います。
1つ目は、お客様の口から出た言葉に基づいているかどうかです。
2つ目は、今期のうちに着手できるかどうかです。半年以上かかる案は、今期の候補から外します。
3つ目は、証拠を1つ出せるかどうかです。件数、日数、写真、お客様の言葉のどれかです。
4つ目は、ホームページに書けるかどうかです。書けない行動は、お客様に伝わらないので、優先順位を下げます。
やめることを先に決める理由
やることよりも先に、やめることを決めます。やめることが決まっていないと、やることを足すだけで、全体が重くなるからです。
| やめることの種類 | 例(製造業の型) | 決める根拠 |
|---|---|---|
| 受けない仕事 | 大量生産の見積依頼 | 弱み×脅威の掛け合わせ |
| 載せないこと | 「何でもお任せください」という一文 | 競合に貼っても違和感がない |
| 続けないこと | 反応のない展示会の出展 | 断られた理由に一度も出てこない |
やめることは、ホームページの上では「受けていない」と書く、または何も書かないという形で現れます。何も書かないことも、お客様への約束の1つです。
絞り込んだ結果を、5行で書く
絞り込んだ結果は、次の形の5行にします。
| 区分 | 書き方 | 例 |
|---|---|---|
| やること1 | 動詞で終える | トップの最初の一文に、1個からの試作を書く |
| やること2 | 動詞で終える | 試作の実績を1件、写真と日数つきで載せる |
| やること3 | 動詞で終える | 納期の目安を、試作の種類別に載せる |
| やめること1 | 「やめる」で終える | 大量生産の見積依頼を受けるのをやめる |
| やめること2 | 「やめる」で終える | 「何でもお任せください」の一文を載せるのをやめる |
この5行が、SWOT分析の最終的な成果物になります。4つの欄の表は、この5行を出すための材料です。
5行を、ホームページの最初の一文と載せる実績に写す
5行が決まったら、ホームページに写します。写す場所は、最初の一文と、載せる実績の2か所です。
掛け合わせの種類で、写す場所が決まる
掛け合わせの4通りは、ホームページの上で、それぞれ書く場所が決まります。
| 掛け合わせ | ホームページで書く場所 | 書く内容 |
|---|---|---|
| 強み×機会 | トップページの最初の一文 | お客様の困りごとに、強みで答える一文 |
| 強み×脅威 | 載せる実績 | 脅威があっても結果が出た事例と、数字 |
| 弱み×機会 | よくある質問と条件の説明 | お客様が心配する点への先回りの答え |
| 弱み×脅威 | 受けない仕事の明記 | 対応できる範囲の線引き |
最初の一文の組み立て方
強み×機会の行動から、最初の一文を組み立てます。形は、次の3つの部分です。
困っているお客様の状況、その状況に応える強み、確かめられる事実。この3つを、1文に入れます。
| 部分 | 製造業の型での例 |
|---|---|
| お客様の状況 | 試作を1個だけ頼める先が見つからない方へ |
| 強み | 図面1枚から、1個の試作を受けます |
| 確かめられる事実 | 見積は2営業日以内にお返しします |
3つをつなげると、「試作を1個だけ頼める先が見つからない方へ。図面1枚から受けて、見積は2営業日以内にお返しします」という一文になります。
3C分析の記事で扱った最初の一文は、顧客と競合から導きました。ここでは、同じ一文を、外側の変化と自社の強みの掛け合わせから導いています。出発点が違っても、同じ形の一文に行き着くことは、珍しくありません。
載せる実績は、脅威を乗り越えた1件を選ぶ
載せる実績は、数をそろえるより、1件の選び方が大切です。強み×脅威の行動から、選ぶ1件が決まります。
脅威が「材料の値上がりで見積が合わない」なら、値上がりの中で受注できた1件を選びます。そこに、納期、金額の決め方、お客様の言葉を添えます。
金額そのものを載せなくても、金額の決め方の説明は載せられます。見積の内訳をどう伝えたかが、お客様の不安に答えるからです。
実績1件に載せる項目
| 項目 | 書く内容 | 製造業の型での例 |
|---|---|---|
| お客様の状況 | 依頼する前の困りごと | 試作を1個だけ頼める先が見つからなかった |
| 脅威 | 当時あった向かい風 | 材料費が上がり、他社で見積が合わなかった |
| 自社がしたこと | 具体的な行動 | 図面の相談から着手し、材料の代案を出した |
| 結果 | 数字か日数 | 見積から納品まで、日数を書く |
| お客様の言葉 | 一言の感想 | 許可を得て、原文のまま載せる |
業種の型で見る:書き換えた後の表と、最初の一文
4つの業種の型を、書き換えた後の形で見ます。前の章の表と、同じ型です。
製造業の型(小ロットの金属加工)
| 区分 | 書き換えた後 |
|---|---|
| 強み(根拠つき) | 図面1枚から1個の試作を受ける。直近1年の依頼のうち、試作が6割 |
| 弱み(根拠つき) | 納期の目安がページにない。問い合わせの冒頭で毎回聞かれる |
| 機会 | 1個だけの試作を相談する担当者が増えた |
| 脅威 | 材料費の上昇分を説明できず、見積で断られた |
| やること | 最初の一文に試作を書く。実績を1件載せる。納期の目安を載せる |
| やめること | 大量生産の見積を受けない。「何でもお任せください」を載せない |
| 最初の一文 | 試作を1個だけ頼める先が見つからない方へ。図面1枚から受けます |
士業の型(相続の手続き)
| 区分 | 書き換えた後 |
|---|---|
| 強み(根拠つき) | 初回の面談で、手続きの順番を1枚にまとめて渡す。直近の依頼者全員に実施 |
| 弱み(根拠つき) | 事務所の場所が分かりにくい。初回の来所で道に迷う方が多い |
| 機会 | 親の家の片付けを機に、手続きを調べ始める人が増えた |
| 脅威 | 手続きの名前で検索して、一覧の中から選ばれる |
| やること | 最初の一文に悩みの言葉を書く。手続きの順番を1枚で載せる。地図と入口の写真を載せる |
| やめること | 「豊富な経験」だけの紹介文をやめる。資格の羅列をやめる |
| 最初の一文 | 親が亡くなり、何から始めればよいか分からない方へ。最初の1か月の順番をお渡しします |
飲食店の型(地域の洋食店)
| 区分 | 書き換えた後 |
|---|---|
| 強み(根拠つき) | 家族連れの来店が週末の半分以上。取り分けしやすい盛り付けが好評 |
| 弱み(根拠つき) | 席数が少なく、予約なしだと入れない日がある |
| 機会 | 家族の集まりに使える店を探す人が増えた |
| 脅威 | 食材費の上昇で、ランチの値段が据え置けない |
| やること | 最初の一文に家族の集まりを書く。予約の取り方を最上部へ置く。取り分けの写真を載せる |
| やめること | ランチの値引きをやめる。「本格的な味」だけの紹介をやめる |
| 最初の一文 | 家族の集まりに、取り分けしやすい洋食を。予約は前日までにお願いします |
工務店の型(地域のリフォーム)
| 区分 | 書き換えた後 |
|---|---|
| 強み(根拠つき) | 工事中の連絡を毎日1回送る。直近の工事全件で実施 |
| 弱み(根拠つき) | 工事の期間の目安がページにない |
| 機会 | 古い家の水回りを、まとめて直したい人が増えた |
| 脅威 | 大手の見積と比べられ、金額だけで判断される |
| やること | 最初の一文に水回りの工事期間を書く。毎日の連絡の様子を実績で載せる。期間の目安を載せる |
| やめること | 受けない工事を明記する。「地元密着」だけの紹介をやめる |
| 最初の一文 | 水回りのリフォームを、工事中は毎日連絡しながら進めます。期間の目安は工事ごとに載せています |
4つの一文に共通する形
4つの一文は、業種が違っても、同じ形になっています。お客様の状況から始まり、自社のできることを1つ述べ、確かめられる事実で終わります。
会社の名前や、「私たちは」で始まる文は、入っていません。主語がお客様の側にあるのが、謙虚な書き方の特徴です。
書いた一文を、そのまま信じない
書いた一文は、公開する前に2つの方法で確かめます。
1つ目は、実際のお客様1人に読み聞かせて、自分のことだと感じるかどうかを聞くことです。
2つ目は、営業と現場の担当者に読んでもらい、実際にできているかを確認することです。できていない約束は、一文から外します。
約束を外すことも、謙虚の一部です。できないことを書かないほうが、問い合わせ後のずれが減ります。
決めたあとの進め方:1週間の計画と、3か月後の見直し
5行が決まり、ホームページの最初の一文と実績の案が出たら、次は動かす番です。動かし方を、短い計画にします。
1週間に分けて進める場合の計画
表を作る作業を、1週間に分けると、無理なく進みます。
| 日 | やること | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 1日目 | 分析する事業と目的を一文で決める。お客様の言葉を5件分集める | 目的の一文と言葉のメモ |
| 2日目 | 外側の機会と脅威を、1時間で書く | 外側の欄の各3行 |
| 3日目 | 内側の強みと弱みを、言葉と数字で書く | 内側の欄の各3行 |
| 4日目 | 4つの欄を掛け合わせて、行動の候補を8つまで書く | 行動の候補 |
| 5日目 | 作った表を置いて、何もしない | 頭を冷ます時間 |
| 6日目 | 3つの問いと4つの問いで、やること3つ、やめること2つに絞る | 5行 |
| 7日目 | 最初の一文と、載せる実績の案を書く | 一文と実績の下書き |
5日目に何もしない日を置くのは、作る頭と決める頭を切り替えるためです。一晩置くだけでも、候補の見え方が変わります。
社長と先に合意しておくこと
表を作る前に、社長と合意しておくことが2つあります。
1つ目は、やめることを決めたら、実際にやめることです。やめると決めた仕事を、あとから「やはり受ける」と戻すと、表の結論が信用されなくなります。
2つ目は、最初の一文に入れる約束は、営業と現場が守れる範囲に限ることです。守れない約束は、問い合わせ後のずれになります。
最初の1か月で、変えるのは2か所だけにする
5行が決まっても、最初の1か月で変えるのは、最初の一文と、実績1件の2か所だけにします。
一度に全ページを書き換えると、どの変更が反応に効いたのか、後から分からなくなります。2か所だけなら、反応が変わったときに、原因を絞れます。
残りの行動は、反応を見ながら、翌月以降に1つずつ足します。足すときも、同じ週に変えるのは1つか2つまでです。変更の記録は、日付と変えた内容の2行だけで足ります。やめることは、2か所の変更と同じ週に始めてかまいません。
社内への共有は、表1枚と一文で足りる
白書の調査では、経営計画が現場担当者まで浸透している事業者に有効だった取組として、「経営層による説明」が最も多く挙げられています。
説明の材料は、長い資料を作らず、表1枚と一文で足ります。表は「やること3つ、やめること2つ」の5行、一文はホームページの最初の一文です。
説明は、社長が自分の言葉で、数分で行います。資料を配って終わりにしないことが、浸透に有効な取組と重なります。
最初の一文は、候補を3つ書いて1つに絞る
強み×機会の行動から、最初の一文の候補を3つ書きます。1つだけ書くと、思い入れが邪魔をして、直せなくなるからです。
3つの候補は、お客様の状況の書き方を変えて作ります。たとえば、困りごとから始める形、場面から始める形、質問から始める形です。
| 候補の形 | 製造業の型での例 |
|---|---|
| 困りごとから | 試作を1個だけ頼める先が見つからない方へ。図面1枚から受けます |
| 場面から | 開発の途中で、急に1個だけ試作が必要になったとき。見積は2営業日以内に返します |
| 質問から | 1個だけの試作を、断られたことはありませんか。当社は図面1枚から受けます |
3つのうち、最もお客様の言葉に近い1つを選びます。選ぶ基準は、直近の問い合わせの最初の1行と見比べて、似ているかどうかです。
ホームページ以外にも、同じ5行を使う
決めた5行は、ホームページ以外の場所にも使えます。同じ5行を使うと、お客様が見る場所ごとに言うことが食い違うのを防げます。
| 使う場所 | 写すもの | 注意すること |
|---|---|---|
| 名刺や会社案内 | 最初の一文 | 肩書きや紹介文より先に置く |
| 営業資料の1枚目 | 最初の一文と実績1件 | 会社の沿革より前に置く |
| 採用の案内 | やめることを含む5行 | 受けない仕事を伝えると、応募者の期待とずれにくい |
| 問い合わせフォームの説明 | 受けない仕事の明記 | 対応できない相談が、先に分かるようにする |
場所ごとに言うことが違うと、お客様は「結局この会社は何をする会社なのか」と感じます。5行を共通の軸にすると、その迷いを減らせます。
1人で事業をしている場合の進め方
従業員のいない事業者は、表を作る人も、決める人も、動かす人も自分です。このとき、足りなくなるのは時間です。
1日で全部やろうとせず、午前に外側と内側の欄、午後に掛け合わせと絞り込み、翌日にホームページの一文と実績、と分けると進みます。
お客様の言葉を集める手間は、直近の依頼のメールを読み返すだけで済みます。聞き取りが難しければ、メールの最初の2行を見るだけでも、欄の材料は集まります。
やめることを決めるのは、1人の場合に最も効果が出ます。受けない仕事を明記するだけで、時間の使い方が変わるからです。
表を見直さなくてよい場合
見直しの日が来ても、表を書き直さなくてよい場合があります。3か月前と比べて、外側の変化も、やめたことも、実績も変わっていない場合です。
この場合は、見直しの結果として「変更なし」と1行だけ記録します。記録を残すと、次の見直しで、何も変わっていない期間の長さが分かります。
変更がないのに表を書き直すと、言葉だけが変わり、お客様への約束が揺れます。変えるのは、変わったことがあるときだけです。
反応は、数週間単位で見る
最初の一文を変えても、翌日に反応が変わるとは限りません。見る期間は、数週間単位にします。
見る数字は、ホームページ経由の問い合わせの件数と、問い合わせの文面の変化です。数が増えなくても、書かれている相談の内容が変わっていれば、一文は届き始めています。
| 見る場所 | 変化の例 | 判断 |
|---|---|---|
| 問い合わせの件数 | 変わらない | 数週間は様子を見る |
| 問い合わせの文面 | 最初の一文の言葉が、そのまま書かれている | 届いている |
| 問い合わせの内容 | 受けない仕事の相談が減った | やめることが効いている |
| 電話や面談の最初の質問 | 納期や条件の質問が減った | 先回りの説明が効いている |
一文が効かなかったとき、どの欄を見直すか
数週間たっても反応が変わらないときは、表のどの欄が原因かを探します。
最初に疑うのは、強みの欄です。強みの言葉が、お客様の口から出たものか、もう一度確かめます。次に疑うのは、機会の欄です。お客様の側の変化が、思い込みでなかったかを、直近の問い合わせで確かめます。
行動の欄は、最後に疑います。行動の中身が正しくても、欄の言葉がずれていると、一文は届かないからです。
3か月後の見直しで、見るのは3点
見直しの日は、最初に手帳へ書いた3か月後にします。見る点は、次の3つです。
| 見る点 | 確かめ方 |
|---|---|
| 外側の変化が、まだ続いているか | 直近の問い合わせと失注の理由を読む |
| やめると決めたことを、実際にやめているか | 受けた仕事の一覧を見る |
| 一文と実績が、実際にできているか | 営業と現場に確認する |
白書の第2-2-51図は、経営計画の進捗管理・評価と見直しの実施状況を聞いたものです。中小企業庁は、「計画の進捗管理・評価と計画の見直しを行っている」と回答した事業者が約8割を占めると説明しています。見直しは、特別な作業でなく、計画の一部として扱われています。
よくある質問
Q. SWOT分析とは、何をするためのものですか。
自社の強みと弱み、外側の機会と脅威を整理して、次の行動を決めるための方法です。中小企業では、整理で終わらせず、「今期やること」と「やめること」を選ぶところまで進めると、使える表になります。
整理の段階だけなら、紙1枚で30分あれば終わります。時間をかけるべきなのは、そのあとの掛け合わせと絞り込みです。
Q. SWOT分析の読み方を教えてください。
読み方は「スウォット」です。強み、弱み、機会、脅威の4つの言葉の英語の頭文字をつないだ名前で、日本語では4つの欄の名前として覚えれば足ります。
会議で使うときは、頭文字を口にするより、強みと弱みは自社の内側、機会と脅威は外側、と日本語で言うほうが、同席者に伝わりやすくなります。
Q. 強みが思いつかない場合は、どうすればいいですか。
社内で考え込むより、最近のお客様3人に「なぜうちに頼んだのか」を聞くほうが早く埋まります。お客様が口にした言葉が、そのまま強みの候補になります。聞く相手がいない場合は、問い合わせメールの最初の1〜2行を読み返してください。
強みの欄に1行も書けなくても、問題はありません。お客様の言葉を3件集める間は、空欄のままにして、先に外側の欄を進めます。
Q. SWOT分析のテンプレートは、無料で使える形がありますか。
この記事の中に、4つの欄を書き込む表、掛け合わせの表、ホームページに写す表を載せています。紙に写して使えます。専用の様式を探す前に、この3つの表で足りるかどうかを試してください。
表の形に正解はありません。欄の見出しが4つ並んでいて、各欄に根拠を書く場所があれば、手書きのノートでも十分に使えます。
Q. 3C分析やERRCグリッドとは、どう使い分けますか。
ホームページの最初の一文を決めたいなら3C分析、提供内容を組み替えたいならERRCグリッド、今期の優先順位ややめることを決めたいならSWOT分析を選びます。全部を使う必要はなく、今の困りごとに合う1つで足ります。
3つの使い分けは、本文の「3C分析・ERRCグリッドとの使い分け」の表にまとめています。迷ったら、その表の「今の困りごと」の列から選んでください。
まとめ
SWOT分析は、4つの欄を埋める作業で終わらせると、何も決まりません。欄を掛け合わせて、「やること3つ、やめること2つ」を選び、ホームページの最初の一文と載せる実績に写して、はじめて仕事の成果になります。
欄に書く言葉は、お客様の口から出た言葉と、数字や日数のような確かめられる事実に絞ります。自慢や、ニュースの見出しは、引き算の対象です。
中小企業庁が2026年4月に公表した「2026年版中小企業白書」によると、経営計画を「策定している」と回答した事業者は約4割にとどまり、策定していない事業者が過半数を占めました。同じ白書は、「従業員に広く浸透させている事業者は、付加価値額の増加を実現している可能性がある」とも書いています。いずれも回答の比較で、原因を示す資料ではありません。
表を作る日と、決める日と、ホームページに写す日を分けて、1週間で一巡させてください。完璧な表を目指すより、5行を先に決めて、反応を見ながら直すほうが、結果に近づきます。
「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、会社が言いたいことを一度引き、お客様が知りたいことに先に答える順番へ、表を組み直してください。
今日できる点検
| 点検すること | 確かめ方 | 結果の使い方 |
|---|---|---|
| 強みの欄が、お客様の言葉で書かれているか | 直近の依頼の理由を3件聞いて、欄と見比べる | 食い違う行は、お客様の言葉に直す |
| 強みの欄の言葉が、競合のページに貼れないか | 競合のページに差し替えて読む | 貼れるなら、事実や数字に言い換える |
| 機会と脅威の欄が、ニュースの見出しで終わっていないか | お客様の側の出来事になっているか読む | 見出しなら、直近の問い合わせから拾い直す |
| 弱みの欄に、頼む前の心配が入っているか | 問い合わせで毎回聞かれることを数える | 入っていなければ、行を足す |
| 掛け合わせの結果が、動詞で終わっているか | 各行の最後の言葉を見る | 状況の説明なら、行動に書き直す |
| やることが3つ、やめることが2つに絞れているか | 5行になっているか数える | 多ければ、4つの問いで絞る |
| トップページの最初の一文が、お客様の状況から始まっているか | 一番上の一文を読む | 会社の紹介なら、強み×機会の一文に差し替える |
| 見直しの日が手帳に書かれているか | 3か月後の日付があるか見る | なければ、今日書く |
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