保険代理店のホームページを作り、広告も出してみた。
それなのに、問い合わせフォームからの相談はほとんど入らない。
入ってきた相談も、資料だけ欲しい人や、すでにほかで話を聞いて比べているだけの人が多い。
この記事は、そうした状況にいる保険代理店の経営者や、独立して代理店を営む保険募集人の方に向けて書いています。
ファイナンシャルプランナーの相談業務と代理店業を兼ねている事務所も、同じ悩みを抱えていることが多いので、対象に含めています。
保険の集客には、ほかの業種にない制約があります。
保険業法と金融庁の監督指針が、広告の書き方から見込み客の紹介の受け方まで、細かく線を引いているからです。
検索で上位に並ぶ記事を読むと、この制約は「注意点」として最後に短く添えられていることがほとんどです。
この記事では順番を入れ替えます。
先に規制の中身を公的な資料で確かめ、そのうえで、規制が求めていることをそのまま集客の材料に変える方法を見ていきます。
読み終えたときに、自社のホームページで最初に書き足す場所が1つ決まっている。
そこをこの記事のゴールにしています。
書き足すといっても、大がかりな作り直しは要りません。
相談の前に、相談する人が知りたいことを先に置いていく作業です。
Q&Aサイトで見かけた、保険代理店のホームページを任された人の相談
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
相談していたのは、代理店の経営者ご本人ではありませんでした。
経営者からホームページを任された、外部の協力者と思われる方です。
経営者の方にこそ読んでいただきたい内容なので、少し詳しく紹介します。
広告費は自由に使ってよいと言われた
投稿者は、保険代理店とファイナンシャルプランニングの事務所を兼ねている会社から、ホームページの管理を頼まれたそうです。
広告費も比較的自由に使ってよいので、ウェブで集客してほしいという依頼でした。
ところが本人は、ウェブマーケティングについての知識がほとんどありません。
知りたかったのは「何をすれば報酬を請求できるか」
投稿者がいちばん知りたがっていたのは、集客の方法そのものより、報酬の決め方でした。
どんな施策を行い、どんな結果が出れば報酬を求めてよいのか。
たとえば無料相談を1件取り付けたらいくら、という決め方でよいのか。
全国的な相場も知りたい、という質問でした。
ついた回答は1件だけだった
この質問についた回答は1件だけで、広告代理店に電話すればよい、という短いものでした。
質問者が抱えていた迷いには、誰も踏み込んでいませんでした。
この相談が経営者に教えてくれること
この相談には、保険代理店の集客でつまずく形がそのまま入っています。
経営者は、集客を詳しくない人に任せ、広告費だけを預けています。
任された人は、相談件数に応じて報酬をもらう形を考えています。
ここで、保険業界の外の人が知らない論点が1つあります。
見込み客を紹介した相手に、件数や成約に応じた報酬を払う形は、金融庁の監督指針がはっきり名指しで注意を促している領域です。
詳しくは後の章で原文を引きますが、悪意が無くても、報酬の決め方ひとつで代理店の側が管理を問われる構造になっています。
集客の方法を決める前に、誰に何を条件に払うのかを決めなければいけない。
それが保険の集客の、ほかの業種と違う出発点です。
これは9割の保険代理店が陥る罠です
ここで言う罠は、法令違反のことだけを指していません。
規制に触れるような集客をしている代理店は、ごく一部のはずです。
それでも、同じ構造にはまっている代理店は少なくありません。
集客を「相談の件数」だけで測っている
ホームページや広告の成果を、問い合わせや無料相談の件数だけで測っている代理店は多いはずです。
件数で測ると、件数を増やす手段が選ばれます。
来店特典を付けたり、紹介料を上げたりする方向です。
どちらも件数は動きますが、保険の場合は動かした分だけ、規制との距離が縮まります。
規制を「守るだけのもの」と考えている
意向把握や比較推奨の説明を、面談の場で済ませる事務手続きと考えている代理店も珍しくありません。
その結果、ホームページには取扱保険会社の名前と「無料相談受付中」しか書かれていない、という状態になります。
相談する側から見ると、その代理店が自分の話をどう聞いてくれるのかが、相談する前には何も分からないままです。
誰に何を払っているかを把握していない
紹介をくれた知人へのお礼、提携先からの見込み客の受け取り、ウェブの集客を請け負う業者への成果報酬。
それぞれの支払いが、件数や成約と結びついていないかを、経営者自身が一覧で把握できているでしょうか。
把握できていない状態で件数を追うと、知らないうちに紹介する側が商品の説明まで踏み込む形ができあがります。
| 読んでいるあなたの状況 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 広告を出しても相談が入らない | 相談する前に、相談後の流れが見えていない | 相談の当日に何を聞き、何を渡すかをページに書く |
| 相談は入るが比べられて終わる | 取扱会社の数や無料しか違いが伝わっていない | 商品を絞り込む基準と、推奨の理由の示し方を書く |
| 集客を外部に任せ成果報酬で払っている | 紹介する側が説明に踏み込む形になりやすい | 報酬の条件と、紹介する側の役割の範囲を書面で決める |
| 来店特典や景品で人を集めている | 特別利益の提供との線引きを自社で説明できない | 特典を外しても来たくなる中身を先に作る |
| 紹介頼みで新規が細っている | 紹介者が説明できる材料を持っていない | 紹介者がそのまま渡せる案内のページを作る |
表のどの行に近いかを1つ決めておくと、この先の話を自社に当てはめやすくなります。
保険の集客がほかの業種より難しい理由
飲食店や美容室なら、写真と値段と口コミで比べてもらえます。
保険は、そのどれもが比べる材料になりにくい商品です。
保険は「欲しくて探す」商品になりにくい
保険は、困ったことが起きる前に入っておくものです。
病気になってから医療保険を探しても、条件が合わなくなっていることがあります。
そのため、結婚や出産、住宅の購入といった節目で、誰かに声をかけられて初めて考え始める人が少なくありません。
生命保険文化センターが2024年度に行った「生命保険に関する全国実態調査」によると、直近に加入した契約の情報をどこから得たかという問いに、「生命保険会社の営業職員」と答えた世帯が44.8%で最も多くなっています。
次いで「保険代理店」が12.9%、「友人・知人」が12.6%、「家族・親類」が11.5%でした。
人から聞いて入る商品だということが、数字にもそのまま出ています。
代理店経由の加入は全体の15.7%
同じ調査で、直近の加入契約をどの経路で結んだかを見ると、「生命保険会社の営業職員」が56.7%を占めています。
「保険代理店の窓口や営業職員」は15.7%でした。
「インターネットを通じて」は5.9%で、前回の調査の4.0%から1.9ポイント増えています。
ネットで申し込む人は増えていますが、全体から見ればまだ少数です。
代理店の集客は、限られた割合を、営業職員や通信販売と取り合う形になっています。
| 直近の加入契約の経路 | 割合(2024年度調査) | 代理店にとっての意味 |
|---|---|---|
| 生命保険会社の営業職員 | 56.7% | 定期的な訪問で関係を保つ相手が最大の競合になる |
| 保険代理店の窓口や営業職員 | 15.7% | 代理店どうしで、この割合を分け合っている |
| 通信販売 | 7.8% | 手間のかからなさで選ばれる層が一定いる |
| インターネットを通じて | 5.9% | 前回から1.9ポイント増え、ネットで決める人が育っている |
出典は生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」です。
加入した人が代理店に満足している点
同じ調査では、加入した経路のどこに満足しているかも聞いています。
「保険代理店の窓口や営業職員」で加入した人では、「相談に迅速に対応してくれる」が27.8%、「保障内容の説明や手続きの対応が良い」が26.7%、「商品知識や保障見直しの提案力が良い」が22.8%でした。
代理店が選ばれた理由は、説明と提案の中身にあります。
ところが、その説明と提案の中身は、相談する前のホームページからはほとんど見えません。
選ばれる理由と、ホームページに書いてあることが、ずれているわけです。
規制は集客のどこにかかっているのか
ここからは、保険の集客にかかっている規制を、集客の場面ごとに見ていきます。
法令の条文や監督指針の文言は、金融庁が公開している「保険会社向けの総合的な監督指針」から引いています。
自社の取扱商品や所属保険会社のルールでさらに細かい定めがあることも多いので、最終的な判断は所属保険会社の担当部署に確かめてください。
保険募集と「募集関連行為」の線引き
監督指針は、契約見込み客の発掘から契約の成立までの流れのうち、保険募集に当たらない部分を「募集関連行為」と呼んでいます。
その例として、監督指針はこう書いています。
「保険商品の推奨・説明を行わず契約見込客の情報を保険会社又は保険募集人に提供するだけの行為」
一方で、同じ箇所には、保険募集に当たり得る行為も挙げられています。
「業として特定の保険会社の商品(群)のみを見込み客に対して積極的に紹介して、保険会社又は保険募集人などから報酬を得る行為」
見込み客の名前を伝えるだけなら募集関連行為で、特定の商品を勧めて報酬を得れば募集に近づく。
紹介する側が登録を受けた保険募集人でなければ、後者は許されません。
紹介料の決め方に向けられた注意
冒頭の相談に直接かかわるのが、この部分です。
監督指針は、募集関連行為を第三者に任せる場合の留意点として、支払う手数料の設定にも触れています。
「保険募集人が、高額な紹介料やインセンティブ報酬を払って募集関連行為従事者から見込み客の紹介を受ける場合、一般的にそのような報酬体系は募集関連行為従事者が本来行うことができない具体的な保険商品の推奨・説明を行う蓋然性を高めると考えられることに留意する。」
報酬が件数や成約と強く結びつくほど、紹介する側は相手を説得したくなります。
説得しようとすれば、商品の話に踏み込みます。
監督指針はその流れを見越して、払う側の代理店に慎重な設定を求めています。
景品や特典は「特別利益の提供」との線引き
保険業法第300条第1項第5号は、保険契約者や被保険者に対して、保険料の割引や割戻しその他の特別の利益を提供することを禁じています。
監督指針は、サービスや物品の提供がこれに当たらないかを見る観点として、次のように書いています。
「当該サービス等の経済的価値及び内容が、社会相当性を超えるものとなっていないか。」
あわせて、換金性の程度などから実質的に保険料の割引や割戻しになっていないか、契約者間の公平を著しく損なっていないかも挙げています。
来店や相談の特典、紹介のお礼の品を考えるときは、この3つの観点に照らして説明できるかどうかが分かれ目になります。
景品の上限そのものは景品表示法でも定められているので、消費者庁の公表している基準もあわせて確かめておくと安心です。
比較表示と「公平・中立」の表示
保険業法第300条第1項第6号は、契約内容について他の保険と比べて誤解させるおそれのある表示を禁じています。
金融庁の監督指針によると、この表示には「インターネット等による広告」も含まれます。
そのうえで監督指針は、抵触し得る例として、客観的事実に基づかない数値の表示や、長所だけをことさらに強調する表示を挙げています。
乗合代理店がよく使う「公平・中立」という言葉にも注意が書かれています。
「単に『公平・中立』との表示を行った場合には、『保険会社と顧客との間で中立である』と顧客が誤解するおそれがある点に留意する。」
代理店は保険会社のために契約の代理や媒介をする立場にあります。
その立場を誤解させる表示は、ホームページの見出し1つでも起こり得ます。
| 集客の場面 | かかっている主な規律 | ホームページで先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 見込み客の紹介を受ける | 監督指針の募集関連行為の定め | 紹介者の役割を「つなぐまで」と書いて決める |
| 紹介料や成果報酬を払う | 手数料の設定への注意 | 件数や成約に強く連動させない条件にする |
| 来店や相談の特典を出す | 保険業法第300条第1項第5号 | 特典が無くても来たくなる中身を先に書く |
| 保険会社や商品を比べて見せる | 保険業法第300条第1項第6号 | 比べる基準と、比べていない範囲も書く |
| 「公平・中立」と名乗る | 監督指針の立場の表示の定め | 誰の代理として何をするのかを言い切る |
相談が入らない代理店がやりがちな3つの手
ここからは、相談が入らないときに多くの代理店が選ぶ手を見ていきます。
どれも件数を一時的に動かすことはできます。
問題は、その後に何が残るかです。
広告、比較の見せ方、集客イベントの順に取り上げ、最後に紹介の頼り方にも触れます。
1つ目は広告費を増やして相談枠を埋めること
広告を出しても相談が入らないと、まず広告費を増やそうと考えます。
表示される回数が増えれば、問い合わせの件数も多少は増えます。
ただ、広告の文面で言えることは、保険の場合とても限られています。
「保険料が安くなる」「いちばん得なプランが見つかる」といった言葉は、比較表示や誤認の表示の観点から使いにくい言葉です。
結果として、広告の文面はどこも「無料相談」「何社でも比較」に寄っていきます。
文面が同じなら、選ばれる理由は表示される回数と順番だけになり、費用をかけた代理店が一時的に勝ち、やめれば元に戻ります。
来てくれた人が「比べに来た人」ばかりになる
無料と比較だけを打ち出した広告で来る人は、比べに来た人です。
別の代理店でも同じ話を聞き、いちばん条件の良さそうなところに決めます。
面談の時間はかかるのに、成約に結びつかない相談が増えていきます。
担当者の疲れがたまり、次の相談の質も落ちていきます。
広告の管理画面で見える数字は、問い合わせの件数までです。
その先で、何件が比べるだけで終わったのかは、面談の記録を見返さないと分かりません。
件数が増えた月ほど成約の割合が下がっていないか、一度並べて確かめてみてください。
2つ目は比較ランキングや「中立」を前面に出すこと
乗合代理店が他との違いを出そうとするとき、よく使われるのが比較の見せ方です。
「人気ランキング」「おすすめ順」「中立の立場でお選びします」。
どれも、読む人にとっては分かりやすい言葉です。
ランキングの根拠を説明できるか
監督指針は、比較推奨販売を行う乗合代理店に対して、推奨の理由を分かりやすく説明することを求めています。
特に、商品をさらに絞り込んで勧める場合について、こう書いています。
「商品特性や保険料水準などの客観的な基準や理由等について、説明を行っているか。」
ランキングの並び順を、この基準で説明できるかどうか。
できないなら、ホームページに載せたランキングは、面談で説明する推奨理由と食い違う材料になります。
推奨の理由が手数料に見えたとき
監督指針は、推奨の理由を客観的に装いながら、実際には手数料の高い商品に誘導することのないよう注意も促しています。
相談する側も、そこは気にしています。
「結局、代理店がもうかる商品を勧められるのではないか」という不安です。
ランキングや「中立」の言葉は、この不安を消すどころか、かえって疑いを強めることがあります。
3つ目は景品や来店特典で集客イベントに人を集めること
保険の集客イベントやマネーセミナーは、一度に多くの人と会える手段です。
人を集めるために、来場特典や景品を用意する代理店も少なくありません。
景品目当ての人は、保険の話を聞きに来ていない
景品で集まった人は、景品を受け取りに来た人です。
セミナーの後に個別相談へ進む人の割合は、景品の価値を上げても思うほど増えないはずです。
むしろ、景品の価値を上げるほど、前の章で見た「社会相当性」との距離が縮まります。
セミナーの中で商品を勧めてしまう
もう1つの落とし穴は、セミナーの内容です。
監督指針は、金融商品説明会での一般的な保険商品の仕組みや活用法の説明は、基本的に保険募集にも募集関連行為にも当たらないと考えられる例に挙げています。
裏を返せば、説明会の場で特定の商品を推奨したり説明したりすれば、その場は保険募集になり得ます。
登録を受けた募集人が、意向把握などの手順を踏んで行う必要が出てきます。
会場にいる全員に向けて特定の商品を勧める話し方は、手順を飛ばしやすくなります。
セミナーは、仕組みの説明に徹したほうが、かえって個別相談につながりやすくなります。
話を聞いた人が、自分の場合はどうなるのかを知りたくなるからです。
紹介に頼り切ったまま、紹介者に何も渡していない
保険代理店の新規の多くは、既存のお客様や知人からの紹介です。
紹介は今も強い経路ですが、頼り方を間違えると細っていきます。
紹介者が説明できる材料が無い
紹介してくれる人は、保険の専門家ではありません。
「いい人だから一度会ってみて」としか言えないと、紹介された側は身構えます。
紹介者が困らずに渡せる材料が無いまま、紹介の数だけを期待していないでしょうか。
お礼の仕方が紹介の質を変える
紹介へのお礼を、紹介した件数や成約に応じた品物や金銭にすると、紹介する側の動き方が変わります。
紹介者が相手を説得しようとし始めると、前の章で見た「募集関連行為」の範囲を越えていく恐れがあります。
紹介を増やしたいなら、お礼の額を上げる方向より、紹介する人の手間を減らす方向で考えたほうが安全です。
| よくある手 | 一時的に起きること | 後に残ること |
|---|---|---|
| 広告費を増やす | 問い合わせの件数が少し増える | 比べに来た人ばかりになり、やめると元に戻る |
| ランキングを載せる | 分かりやすさで目に留まる | 推奨理由と食い違い、手数料への疑いを招く |
| 「中立」を掲げる | 安心感が伝わったように見える | 立場の誤解を生み、面談で説明し直すことになる |
| 景品付きの集客イベント | 会場が埋まる | 個別相談へ進む人が増えず、特別利益との線が近づく |
| 紹介料を上げる | 紹介の件数が増える | 紹介者が説明に踏み込み、管理の負担が増える |
どの手も、件数を増やす方向にだけ力を入れています。
相談する人の不安を減らす方向には、何も動いていません。
売れるサイトはみな謙虚という考え方を保険代理店に当てはめる
合同会社謙虚では、ホームページの改善を「売れるサイトはみな謙虚」という考え方で進めています。
主役は相談する人で、代理店はその人が迷わず次の一歩に進めるよう道を整える案内役に回る、という考え方です。
保険代理店のホームページに当てはめると、話はとても具体的になります。
相談する人が抱えている不安は、だいたい次の2つにまとまります。
「自分の話をちゃんと聞いてもらえるのか」と「代理店の都合で商品を決められないか」です。
規制が求めていることは、相談する人の不安への答えになっている
ここで、前の章で見た規制を思い出してください。
意向把握は、相談する人の話を聞いてから提案することを求めています。
比較推奨の説明は、なぜその商品を勧めるのかを、客観的な基準で示すことを求めています。
どちらも、相談する人が抱えている2つの不安に、そのまま答える内容です。
規制が面談で求めていることを、相談の前にホームページで見せてしまえばいい。
それが、この記事で提案する集客の軸です。
面談の中身を先に見せても、相談の価値は減らない
相談の中身をホームページに書くと、来てもらえなくなるのではないかと心配される方もいます。
実際には、書けるのは手順と基準までです。
その人に合う保障の組み立ては、話を聞かなければ決められません。
手順と基準が見えている代理店に、相談する人は安心して自分の事情を話しに来ます。
相談の前に、意向把握の入口をホームページに置く
監督指針は、意向把握の方法の例として、事前に顧客の意向を把握する場合には「アンケート等により把握することが考えられる」と書いています。
この「アンケート」を、相談予約のフォームの前に置きます。
予約フォームに質問を足すだけでは足りない
予約フォームの項目を増やすと、入力の手間が増えて離脱が増えます。
質問は、相談する人が自分の状況を整理する手助けとして見せます。
答えた内容を当日の面談で使うことも、あわせて書いておきます。
質問は「保険の話」より前の事情から聞く
いきなり希望の保険の種類を聞くと、相談する人は答えに詰まります。
暮らしの変化や、気になっていることから聞くほうが答えやすくなります。
| 入口で聞くこと | 相談する人にとっての意味 | 面談での使い方 |
|---|---|---|
| 最近あった暮らしの変化 | 自分が何を考えればよいか整理できる | 保障を考えるきっかけを確かめる |
| いま入っている保険の有無 | 証券を探しておけばよいと分かる | 重なりや足りないところを一緒に見る |
| 気になっていること | 言いにくい不安を先に伝えられる | 最初の10分でその話から入る |
| 相談で決めたくないこと | 当日に契約を迫られないと分かる | 当日は情報の整理までにとどめる |
| 公的な保障を知っているか | 遺族年金や高額療養費の話が出ると分かる | 公的保障を先に確かめてから話す |
公的な保障の話は、監督指針も意向把握の方法の中で触れています。
公的年金の受取試算額などの公的保険制度についての情報提供を適切に行うよう求めているので、面談の流れに入れておくと、そのまま規制への対応にもなります。
取扱保険会社と、商品を絞り込む基準を先に書く
乗合代理店のホームページでよく見かけるのが、取扱保険会社のロゴを並べただけのページです。
並んだロゴの数は、相談する人にとって判断の材料になりにくい情報です。
絞り込みの基準を言葉にする
監督指針は、顧客の意向に沿って商品を絞り込み、さらに代理店の判断で絞り込む場合には、その基準や理由を説明するよう求めています。
その基準を、ホームページに書いておきます。
「保険料の水準を優先するのか、保障の範囲を優先するのかを、最初にお客様と決めます」といった書き方です。
客観的な基準で絞り込まない場合も、その理由を書く
監督指針は、客観的な基準によらずに商品を絞り込む場合には、特定の保険会社との資本関係や事務手続き、経営方針上の理由も含めて説明するよう求めています。
特定の保険会社の商品を中心に扱っているなら、それも理由とあわせて書いておきます。
隠していたことが面談で分かるより、最初から書いてあるほうが、相談する人の信頼は残ります。
| ホームページの書き方 | 相談する人の受け止め方 | 書き直すとしたら |
|---|---|---|
| 取扱保険会社のロゴだけを並べる | 数が多いことしか分からない | 絞り込みの基準を1段落で添える |
| 「中立の立場で」とだけ書く | 誰の代理なのかが曖昧になる | 保険会社の代理として案内すると書く |
| 「最適なプランをご提案」と書く | 誰にとって最適なのかが分からない | 何を優先して選ぶかを最初に決めると書く |
| 一部の会社を中心に扱っている | 書いていないと後で不信につながる | 中心に扱う理由も含めて書いておく |
保険の集客イベントは、仕組みの説明に徹して組み直す
サジェストにも「保険 集客イベント」が並ぶように、イベントやセミナーを使った集客を考える代理店は多いはずです。
組み直すときの軸は、会場では仕組みの説明に徹し、個別の話は別の場に分けることです。
テーマは暮らしの節目で決める
「医療保険の選び方」より「出産前に確かめたいお金の制度」のほうが、まだ保険を考えていない人にも届きます。
節目のテーマなら、公的な制度の説明から入れるので、商品の推奨に踏み込まずに話を組み立てられます。
個別相談への進み方を会場で押し付けない
セミナーの最後に、個別相談の申し込み用紙を配って回収する形は、参加者を身構えさせます。
申し込みは後日、ホームページの入口から受け付ける形にしておきます。
前の章で作った意向把握の入口が、ここでそのまま使えます。
| イベントの組み立て | よくある形 | 組み直した形 |
|---|---|---|
| テーマ | 特定の商品や保険の種類 | 結婚や出産などの暮らしの節目 |
| 人の集め方 | 来場特典や景品 | テーマそのものと、話す内容の予告 |
| 会場での話 | おすすめの商品の紹介 | 公的制度と保険の仕組みの説明 |
| 個別相談への進み方 | その場で申し込み用紙を回収 | 後日ホームページの入口から予約 |
| 当日に渡すもの | 商品のパンフレット | 自分の状況を整理できる書き込み用紙 |
紹介者がそのまま渡せる案内のページを作る
紹介を増やすために、お礼を上げる方向より先に、紹介する人の手間を減らします。
いちばん効くのは、紹介者がそのまま相手に送れる案内のページです。
紹介者に説明させない
紹介者が保険の中身を説明しなくて済むように、ページの側に説明を持たせます。
紹介者の役割は「このページを見てみて」と送るところまでにしておきます。
そうしておけば、紹介者が商品の推奨や説明に踏み込む場面そのものが生まれにくくなります。
案内のページに載せること
| 載せること | 紹介された人が知りたいこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 相談で何をするのか | 行ったら何をされるのか | 暮らしの変化と今の保険を一緒に整理します |
| 当日に決めないこと | 契約を迫られないか | 当日は整理まで。お申し込みは持ち帰って決めていただけます |
| 誰の代理なのか | 中立なのか、どこかの会社寄りなのか | 取扱保険会社の代理として案内し、選ぶ基準を最初に決めます |
| 準備するもの | 何を持っていけばよいか | 今の保険証券があればお持ちください |
| 紹介者に伝わること | 相談内容が紹介者に知られないか | ご相談の内容を紹介者の方にお伝えすることはありません |
最後の行は、紹介ならではの不安です。
知人の紹介で来た人ほど、家計や健康の話が紹介者に伝わることを気にしています。
集客を外部に任せる前に、報酬の決め方を確かめる
冒頭の相談に戻ります。
ホームページの管理や広告の運用を外部に任せること自体は、ごく普通のことです。
気をつけたいのは、報酬の決め方と、任せる相手の役割の範囲です。
広告の掲載と、見込み客の紹介は扱いが違う
金融庁の監督指針によれば、保険会社や保険募集人の広告を掲載する行為だけなら、基本的に保険募集にも募集関連行為にも当たらないと考えられる例に挙げています。
一方で、見込み客の情報を集めて代理店に渡す形になれば、募集関連行為として代理店の側に委託先の管理が求められます。
同じ「ウェブ集客の外注」でも、どちらの形なのかで、代理店が確かめるべきことが変わります。
確かめておきたい項目
| 確かめること | なぜ確かめるのか | 決めておく形 |
|---|---|---|
| 相手の役割は広告の運用か、見込み客の紹介か | 紹介なら募集関連行為として管理が要る | 契約書に役割の範囲を書く |
| 報酬は件数や成約に連動するか | 連動が強いほど説明に踏み込む恐れが増す | 作業量や運用の範囲で決める形を検討する |
| 広告の文面は誰が確認するか | 比較や誤認の表示は代理店の責任になる | 公開前に代理店と所属保険会社の確認を通す |
| 見込み客の個人情報の扱い | 監督指針が第三者提供の同意取得に触れている | 同意の取り方と保管の方法を決める |
| 相手が商品の説明をしていないか | 無登録の者による募集は禁じられている | 問い合わせへの返答の範囲を決めておく |
冒頭の相談者が考えていた「無料相談を1件取り付けたらいくら」という形は、決める前にこの表で確かめておきたい形の典型です。
よくある質問
Q1. 保険代理店はホームページで保険料の安さを打ち出してはいけないのでしょうか
保険料の水準そのものに触れることが、すぐに禁じられているわけではありません。
ただし、保険業法第300条第1項第6号は、他の保険と比べて誤解させるおそれのある表示を禁じています。
安さだけを強調して保障の違いを示さない表示は、監督指針が挙げる「長所のみをことさらに強調」する表示に近づきます。
安さを伝えるなら、何を優先して選ぶかを最初に決めるという手順とあわせて書くほうが安全です。
Q2. 相談に来た人へのプレゼントはやめたほうがよいのでしょうか
監督指針は、サービスや物品の提供について、社会相当性を超えていないか、実質的に保険料の割引や割戻しになっていないか、契約者間の公平を著しく損なっていないかという観点を示しています。
一律にやめる必要があるとは書かれていません。
ただ、プレゼントで来た人は保険の相談を目的に来ていないことが多いので、集客の手段としての効き目も見直す価値があります。
Q3. 紹介をくれたお客様にお礼をしてもよいのでしょうか
お礼をすること自体を禁じる定めは、この記事で見た範囲にはありません。
気をつけたいのは、お礼が紹介の件数や成約に強く結びつく形になっていないかです。
紹介者が相手を説得しようとし始めると、募集関連行為の範囲を越えるおそれが出てきます。
形を決める前に、所属保険会社の担当部署に確かめてください。
Q4. 乗合代理店です。「公平・中立」と書いてはいけないのでしょうか
監督指針は、単に「公平・中立」と表示すると、保険会社と顧客の間で中立であると誤解されるおそれがあると注意しています。
また、各保険会社の間で公平・中立を掲げる場合には、資本関係や手数料の水準などを推奨の理由として考えないよう求めています。
書くなら、何と何の間で中立なのかと、絞り込みの基準をあわせて書くことが前提になります。
Q5. ファイナンシャルプランナーの相談業務と代理店業を兼ねています。ホームページは分けるべきでしょうか
分けるかどうかより、相談する人が「いまどちらの立場で話を聞いてもらっているのか」を分かるようにすることが先です。
家計の相談の流れで保険の話に移るときに、そこから代理店としての案内になると分かる書き方にしておきます。
相談の入口で立場の違いを説明しておけば、面談の途中で説明し直す手間も減ります。
まとめ
保険の集客は、規制がある分だけ、ほかの業種の集客方法をそのまま持ち込むと行き詰まります。
広告費を増やしても、ランキングや特典で目を引いても、相談する人の不安はそのまま残ります。
その不安は「話を聞いてもらえるか」と「代理店の都合で決められないか」の2つでした。
意向把握と比較推奨の説明は、この2つの不安への答えになっています。
規制が面談で求めていることを、相談の前にホームページで見せる。
それが、規制の内側でできる、いちばん確かな集客の手です。
報酬の決め方と紹介の受け方は、集客の方法を選ぶ前に決めておきます。
より詳しい考え方や、ほかの業種での例は、合同会社謙虚のトップページでもご紹介しています。
今日できる点検
最後に、今日のうちに確かめられることを表にまとめます。
| 点検すること | 確かめ方 | できていなかったら |
|---|---|---|
| 相談で何をするかが書いてあるか | 予約ページを初めての人の目で読む | 当日の流れと決めないことを書き足す |
| 絞り込みの基準が書いてあるか | 取扱保険会社のページを開く | 何を優先して選ぶかを1段落で添える |
| 「中立」「おすすめ順」の言葉が無いか | ページ内で言葉を探す | 誰の代理かと基準の説明に置き換える |
| 特典やプレゼントの中身 | 社会相当性などの観点で説明できるか考える | 特典を外しても来たくなる中身を先に書く |
| 外部に払っている報酬の条件 | 契約書で件数や成約との連動を確かめる | 役割の範囲と報酬の形を見直す |
| 紹介者に渡せるページがあるか | 紹介者が送れるページを探す | 案内のページを1枚作る |
いま公開している予約ページを開き、初めて相談する人の目で上から読んでみてください。
自分の話を聞いてもらえるのか、商品をどう選ぶのかが、相談する前に分かるかどうか。
分からなかった場所があれば、そこが最初に書き足す場所です。
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