「商品の魅力は伝えているはずなのに、購入に結びつかない」「説明は詳しくしているつもりだけど、響いていない気がする」。この状態で止まっている事業者の方は多いと思います。
原因は、たいてい説明の量より手前にあります。説明を読んだ人の頭の中に、映像が浮かんでいないことです。人は、自分の生活がどう変わるかを具体的に思い描けたときに買います。逆に言えば、どれだけ詳しく機能を並べても、映像が浮かばなければ判断は先送りされます。
この記事では、見込み客の頭の中に映像を作るための書き方と見せ方を、順を追って整理します。数値による効果の保証はいたしません。「◯◯を導入すると成約率が◯%上がる」といった数字は世の中に多く出回っていますが、調査主体・調査年・比較対象を確認できないものを、判断の根拠としては扱わない方針を取っているためです。
なぜ「イメージできない」と買わないのか
新しいスマートフォンを検討しているとき、「高性能です」と言われるのと、「旅行先で撮った写真が、そのままプロの作品のように仕上がります」と言われるのとでは、受け取り方がまったく違います。前者は情報ですが、後者は自分の週末の映像です。
この違いが生まれる理由はシンプルで、判断には比較が要るからです。「高性能」という言葉には、何と比べてどう高性能なのかが抜け落ちています。比べられない情報は、頭の中で保留になります。保留になった検討は、たいていそのまま忘れられます。
説明が専門用語に寄るほど、映像は消える
テレビを見に行って、「最新の映像処理技術を搭載し、応答速度が向上し、独自の補正機能が…」と説明されたとします。書かれている内容は正確でも、その場に立っている人の頭を素通りします。
同じ性能を、「家で映画を見るときに、映画館にいるのと近い感覚になります」と言い換えると、映像が立ち上がります。事実は同じで、変わったのは主語だけです。前者の主語は商品で、後者の主語はお客様の生活です。
売り手が書く文章は、放っておくと商品が主語になります。自社の商品に詳しいほど、その傾向は強くなります。書いた文章を読み返すとき、主語が商品になっていないかを確認するだけで、かなりの部分が直せます。
不安が消えないと、映像は最後まで完成しない
購入を決めるまでの間、見込み客の頭の中には常に確認事項が残っています。「本当に効果があるのか」「自分に使いこなせるのか」「失敗したらどうなるのか」。この3つが残っている限り、良い未来の映像は完成しません。
ここで多くの売り手がやってしまうのが、良い面の説明をさらに足すことです。不安が消えるのは、良い面が積み上がったときより、不安そのものに正面から答えたときです。
抽象的な言葉を、映像の浮かぶ言葉に置き換える
いちばん手早く効く作業は、自社サイトに並んでいる抽象的な言葉を、具体的な描写に書き換えることです。次の表は、その置き換えの型です。右の列は書き方の例であり、特定の会社の実績を示すものではありません。
| よくある伝え方 | 読み手の頭に残るもの | 置き換えの例 |
|---|---|---|
| 「高品質なサービスを提供します」 | 何も残らない | 「初回のヒアリングは15分。その場で作業内容が決まります」 |
| 「豊富な実績があります」 | 規模が分からず比較できない | 「同じ業種で12社、うち9社が2年目も継続」 |
| 「お客様に寄り添います」 | 態度の話で、何が起きるか分からない | 「担当が変わりません。窓口は1人です」 |
| 「スピーディーに対応」 | 早さの基準がない | 「ご連絡は当日中。作業の着手は翌営業日から」 |
| 「低価格を実現します」 | 何と比べて安いのか分からない | 「月額の下限と、上がる条件を先に出す」 |
左の列に並ぶ言葉には共通点があります。どれも、書いた側は説明したつもりになれるのに、読んだ側は何も受け取っていない、という点です。反論のしようがないほど正しく、同時に中身が空っぽです。
置き換えの作業自体は簡単です。その言葉の後ろに「たとえば?」と一度つけてみてください。答えられるなら、その答えのほうを本文に書きます。答えられないなら、その言葉の中身はまだ決まっていない状態です。
五感の言葉を1つ入れる
映像を立ち上げるもう一つの方法が、触感・音・香り・味に触れる言葉です。「肌触りが良い」より「ふわふわ」、「食感が良い」より「サクサク」。抽象度を1段下げるだけで、読んだ人の身体感覚が動きます。
この手法が効くのは、物理的な商品だけではありません。サービス業でも、「静かな部屋でお話を伺います」「電話は鳴りません」のように、その場の状態を描写できます。
商品の背景にある物語を書く
機能の一覧より、その機能が生まれた経緯のほうが記憶に残ります。理由は、物語には理由と感情が含まれているからです。
書き方の型は決まっています。「誰が、どんな場面で困っていて、何をきっかけに、どう解決したか」。この4点を順に書くだけで物語になります。
- 誰が:開発した人、あるいは最初に困っていたお客様
- どんな場面で困っていたか:抽象的な課題ではなく、その日その場所で起きた具体的な出来事
- 何をきっかけに:転機になった一言や、気づいた瞬間
- どう解決したか:試したことと、失敗したことの両方
この4点目に失敗を入れるかどうかで、読まれ方が変わります。うまくいった話だけを並べると宣伝になり、読み手は身構えます。途中でつまずいた箇所を書くと、同じ課題を抱えている人が自分の話として読み始めます。
物語の材料は、社内に揃っています。自社の創業の経緯、お客様から実際に言われた一言、対応に苦労した案件。どれも、他社には書けない中身です。
写真と動画で、言葉が届かない部分を埋める
文章で描写できる範囲には限界があります。サイズ感、質感、動きの速さ。この3つは、文字で書くより見せたほうが早く伝わります。
商品単体の写真だけでは足りない
白い背景に商品だけが写っている写真は、商品の形を伝えますが、生活の中での姿を伝えません。使っている場面の写真を1枚足すだけで、読み手は自分の生活に置き換え始めます。
家具なら実際に部屋に置いた状態、調理器具なら使っている手元、サービス業なら打ち合わせをしている机の上。「これを買ったら自分の家や職場はどうなるか」を想像する材料を渡すことが目的です。
複数の角度から撮ることも有効です。正面だけでなく、背面、側面、素材のアップ。買う前に確かめたい箇所は、たいてい正面以外にあります。
動画は短く、1つのことだけ見せる
動画を作るとき、あれもこれも入れたくなりますが、長くなるほど最後まで見られなくなります。1本につき伝えることを1つに絞り、短くまとめるほうが届きます。
見せるべきは、使っている最中の様子です。商品の紹介ではなく、その商品を使って何かが解決していく過程。掃除機なら、汚れていた床がきれいになるまでの一連の動きです。
機材は、手元のスマートフォンで構いません。画質より、何が起きているかが分かることのほうが効きます。
画像にも文字情報をつける
画像には代替テキスト(alt属性)を設定してください。画像が表示できないときに代わりに読まれるテキストで、音声読み上げを使う方にも届きます。ここには、画像に写っているものを説明する言葉を入れます。
あわせて、ファイルサイズの圧縮も済ませておきます。表示が遅いページは、内容を読まれる前に閉じられます。
見込み客の不安を、先回りして消す
良い未来の映像を作るのと同じくらい大事なのが、悪い未来の映像を消すことです。不安は、書いてはじめて消えます。書かないままでいると、読み手が自分で最悪の想像を埋めます。
よくある質問を、逃げずに書く
サイトに載せる質問は、答えやすいものではなく、実際に聞かれて答えにくかったものを選んでください。「他社と何が違うのか」「うまくいかなかったらどうなるのか」「思ったより高いのですが」。この手の質問に正面から答えているページは、それだけで信頼の材料になります。
答えるときは、できないことも書きます。対応できない範囲、向いていない状況、断っている案件の種類。制約を先に出すと、残りの部分の説得力が上がります。
お客様の声は、掲載の許可を取ってから使う
使った人の言葉は、売り手の説明より強く働きます。ただし、掲載には必ず本人の許可を取ってください。実名で出してよいか、会社名まで出してよいか、写真は使えるか。ここは毎回、個別に確認する項目です。
許可が取れない場合は、匿名にしたうえで業種と規模だけを書く方法があります。作り話で埋めることだけは避けてください。実在しない体験談は、それが露見したときに、他のすべての記述の信頼まで持っていきます。
情報を足しすぎると、かえって決まらない
不安を消そうとして説明を足し続けると、今度は別の問題が起きます。選択肢と情報が増えすぎて、判断そのものができなくなる状態です。
1つのページで伝えることは、1つに絞ってください。そのページを読んだ人に取ってほしい行動が2つ以上あるなら、ページを分けます。「資料請求もできますし、お電話でもご相談いただけますし、来店予約も可能です」と並べると、どれも選ばれにくくなります。
減らす順番にも目安があります。
- まず、なくても意味が通る修飾語を削る。「非常に」「とても」「業界でも屈指の」は、ほとんどの場合なくても成立します
- 次に、社内向けの情報を削る。自社の沿革や受賞歴は、読み手の判断材料としては後ろのほうです
- 最後に、選択肢を削る。プランが5つあるなら3つに、ボタンが3つあるなら1つに
削る作業は、足す作業より効果が出るのが早い傾向があります。すでにあるページで試すなら、こちらから始めるほうが確実です。
色の使い方も、情報の一部として扱う
色は、言葉より先に読み手に届きます。だからこそ、色数を絞ることが先決です。
サイト全体で使う色を3色程度に決め、そのうち1色を「ここを押してほしい」という場所だけに使ってください。強調したい箇所が増えるたびに色を足していくと、どこが重要なのか判別できなくなります。目立たせる色は、目立たせない場所に使わないことで初めて機能します。
あわせて、文字と背景のコントラストを確保してください。薄い灰色の文字は洗練されて見えますが、読みにくい環境では内容が届きません。
検索から見つけてもらうための書き方
どれだけ良いページを作っても、たどり着いてもらえなければ読まれません。ここで押さえておくべき点は、数えるほどです。
まず、見出しの階層を正しく組みます。記事のタイトルがh1、大見出しがh2、その下がh3。文字を大きくしたいという理由で見出しタグを使うと、構造が壊れます。
次に、検索結果に出る説明文(メタディスクリプション)を用意します。Googleは本文から自動生成することもあるため必ずそのまま出るとは限りませんが、書いておく価値はあります。冒頭に結論を置き、本文の内容と食い違わないようにしてください。説明文と本文がずれていると、クリックした人がすぐ離れます。
キーワードは、自社が使っている言葉ではなく、お客様が検索窓に打ち込む言葉で選びます。業界用語で書かれたページは、その業界の人しか見つけられません。実際にお客様から受けた質問の言い回しを、そのまま使うのが確実です。
なお、Googleは公式ドキュメントで、有用で信頼性が高く、ユーザーを第一に考えたコンテンツを作るよう説明しています。同じドキュメントには、検索エンジンのために書いていないかを確かめる自己点検の質問も並んでいます。この記事でお伝えしてきた「読み手の頭に映像を作る」という方向は、そこで示されている考え方と重なります。
よくある質問
商品を具体的にイメージしてもらうには、何から手をつければいいですか
自社サイトの文章から、抽象的な言葉を1つ選んで書き換えるところからです。「高品質」「豊富な実績」「お客様第一」といった言葉に「たとえば?」とつけ、答えられる内容に置き換えます。1ページ分でも、読み手の受け取り方は変わります。
形のないサービスは、イメージしてもらうのが難しいのですが
形がない分、手順と時間を書いてください。「初回はここまで進みます」「ご連絡からここまでが何日です」「この場面では、こちらからこう動きます」。受け取るものを描写できないときは、起きる出来事を時系列で描写すると映像が立ちます。
まだ実績が少なく、お客様の声もありません
実績の代わりになるのは、考え方と手順の開示です。どういう基準で仕事を受けているか、どこまでを担当し、どこからは対応しないか。判断の基準を先に見せることは、件数を示すのとは別の形の材料になります。あわせて、最初のお客様に感想をいただき、掲載の許可を取るところから始めてください。
数字を使って説得したいのですが、どう扱えばいいですか
自社で実測した数字だけを使ってください。他社の記事で見かけた統計を引用するときは、調査主体・調査年・比較対象の3つを確認し、揃わないものは使わないという線を引くことをおすすめします。裏の取れない数字は、指摘されたときに他の記述の信頼まで巻き込みます。
まとめ:顧客のイメージ形成を助け、購入につなげる
売れない原因が説明不足にあることは、あまりありません。多くの場合、説明は足りていて、映像が足りていません。
やることは4つです。抽象的な言葉を具体的な描写に置き換えること。商品が生まれた経緯を物語として書くこと。使っている場面を写真や動画で見せること。そして、良い面を足すより先に、不安に正面から答えること。
どれも、新しい予算なしで始められます。いま公開しているページの文章を読み返し、主語が商品になっている箇所を探すところから始められます。そこを、お客様の生活が主語になるように直す。その1歩が、いちばん効きます。
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