恐怖訴求は、読者がもともと抱えている不安を言葉にして、行動するきっかけに変える書き方です。
ただ、自社のホームページで使おうとすると「怖がらせて売るのは気が引ける」「煽っていると思われたくない」とためらう経営者の方が少なくありません。
結論から書くと、恐怖訴求が効くかどうかは、怖さの強さで決まりません。
不安を示したすぐあとに「これなら自分でもできる」と思える一手が置いてあるかどうかで、読者が問い合わせに進むか、ページを閉じるかが分かれます。
この記事では、心理学の研究で確かめられた数字と、法律が引いている線をもとに、中小企業のサイトで恐怖訴求を使うときの書き方を順番に整理します。
読み終えたときに、自社サイトのどのページのどの段落を直せばいいか、1か所決まっている状態を目指します。
恐怖訴求とは 読者の中にある不安を言い当てて行動の理由にする書き方
恐怖訴求は、心理学や広告の分野で「フィアアピール」と呼ばれてきた説得の方法です。
健康診断の受診や防災の呼びかけなど、行政の広報でも長く使われてきました。
「このままだと困ったことが起きる」という見通しを示し、その困りごとを避ける手段として商品やサービスを差し出します。
言葉の意味と、似た言葉との違い
恐怖訴求とよく混同されるのが、損失回避や煽り広告です。
3つは重なる部分がありますが、狙っている読者の心の動きが違います。
| 呼び方 | 読者の中で起きていること | サイトで使うときの扱い |
|---|---|---|
| 恐怖訴求 | 起こりうる困りごとを具体的に思い浮かべ、避けたいと感じる | 困りごとと、その避け方をセットで示す |
| 損失回避 | 同じ量なら、得るより失うほうを重く感じる | 「何もしないと失うもの」を数字で示す |
| 煽り広告 | 根拠のない不安を植え付けられ、焦って決める | 使わない。法律で取り消しの対象になる場合がある |
| 期待訴求 | 手に入る良い状態を思い浮かべ、近づきたいと感じる | 商品が「増やす」ものなら主役にする |
損失回避の考え方は、別の記事損失回避性と自社の強みばかり語るサイトの話で詳しく書いています。
この記事では、恐怖を「どう見せるか」より、「見せたあとに何を置くか」に重心を置きます。
煽りと恐怖訴求を分けるのは、不安の出どころ
煽りは、読者が持っていなかった不安を外から持ち込みます。
恐怖訴求がうまくいっているページは、読者が言葉にできずに抱えていた不安を、先回りして言い当てています。
「この会社は自分の困りごとを分かっている」と感じた読者は、そこで初めて先を読み進めます。
見分ける方法は簡単で、書いた不安をお客様に見せたときに「そうそう、それが気になっていた」と返ってくるかどうかです。
「そんなことまで心配しないといけないのか」と驚かれるなら、その不安は書き手が持ち込んだものです。
たとえば外壁塗装の会社が「放置すると家の寿命が縮みます」と書くのは、読者の多くが持っていない不安を持ち込む書き方です。
一方で「色あせたまま何年も経って、塗り替えの時期が分からなくなっていませんか」と書けば、読者がうっすら感じていた迷いを言い当てられます。
読者の中にすでにある不安を探す作業については、潜在ニーズの記事も参考になります。
恐怖訴求は本当に効くのか 研究が示した数字
「怖がらせると嫌われて逆効果になる」という声は根強くあります。
この点については、2015年に米国心理学会の学術誌に載った大規模な分析が、かなりはっきりした答えを出しています。
127本の論文、2万7,372人分のデータで確かめた結果
米国心理学会の学術誌に掲載されたイリノイ大学のタネンバウムらの分析によると、恐怖訴求の効果はかなり安定して確かめられています。
研究チームは、恐怖訴求の効果を調べた127本の論文から248の独立した標本、合計2万7,372人分のデータを集めて分析しました。
論文の要旨には、次のように書かれています(筆者訳)。
「恐怖訴求は態度・意図・行動に良い影響を与える。効かない状況はごくわずかで、逆効果になって望ましくない結果を招く状況は見つからなかった」
効果の大きさを示す数値は0.29でした。
心理学でよく使われる目安では0.2が小さい効果、0.5が中くらいの効果とされるので、その間にあたる手堅い効き目です。
1本の文章で劇的に人が動くほどの大きさではありません。
それでも、サービスページの1段落を書き換えるだけで得られる差としては、十分に試す価値があります。
効き目が強まった4つの条件
同じ分析では、どんなときに効き目が強まるかも調べています。
要旨に挙げられた条件を、ホームページの文章に置き換えると次のようになります。
| 研究で効き目が強まった条件 | ホームページでの意味 | 次にすること |
|---|---|---|
| 対処できるという説明が入っている | 不安のすぐあとに、読者が取れる行動が書いてある | 不安を書いた段落の直後に「まず何をすればいいか」を1文足す |
| 自分にも起こりうると感じさせる | 読者の業種・規模・状況が具体的に書いてある | 「築20年を超えた木造住宅では」のように対象を絞る |
| 起きたときの深刻さが伝わる | 困りごとの中身が数字や場面で書いてある | 「修理費が増える」を「工事が1日から3日に延びる」に変える |
| 勧める行動が1回きりで済む | 読者に求める行動が小さく、1回で終わる | 「継続して取り組む」を「まず1回点検を受ける」に変える |
4つのうち、中小企業のサイトで抜けていることが多いのは1つ目と4つ目です。
不安だけ書いて、何をすればいいかが書かれていない。あるいは、求める行動が「長いお付き合い」のように重すぎる。
「逆効果にならない」をどう読むか
研究は「逆効果になる状況は見つからなかった」と結論づけていますが、これは怖さをいくら強めてもいいという意味ではありません。
分析の対象は、健康や安全のための呼びかけが中心です。
売り手が自社の商品を勧める場面では、読者は「売りたいから怖がらせているのでは」と疑いながら読みます。
その疑いを解くのが、根拠の示し方と、次の章で扱う「自分で何とかできる感覚」です。
効くページと効かないページを分けるのは「自分で何とかできる感覚」
恐怖訴求の研究でもっとも知られている考え方の1つが、ミシガン州立大学のウィッテが提唱したモデルです。
人は怖いメッセージを受け取ると、2つのうちどちらかの反応をとると考えます。
危険に向き合うか、怖さから逃げるか
1つ目は、危険そのものに対処しようとする反応です。
メッセージを受け入れ、勧められた行動を取ります。
2つ目は、危険そのものは放っておいて「怖いという気持ち」だけをなくそうとする反応です。
目をそらす、「自分には関係ない」と言い聞かせる、送り手に反発する、といった形で現れます。
ホームページでいえば、怖い話が続いた時点でブラウザの戻るボタンを押す、という行動がこれにあたります。
読者は危険を軽く見たわけではありません。どうすればいいか分からないまま怖さだけが残ったので、その怖さから離れたのです。
ミシガン州立大学のウィッテとアレンが2000年に健康教育の学術誌で発表した分析によれば、この分かれ目を決めるのはメッセージの組み合わせです。
論文の要旨には、こう書かれています(筆者訳)。
「強い恐怖訴求と効力感を高めるメッセージの組み合わせが最も大きな行動変化を生み、強い恐怖訴求と効力感の低いメッセージの組み合わせが最も強い防衛反応を生む」
不安だけを残すと読者はページを閉じる
この結論を、もっと厳密な条件で確かめ直した研究があります。
オランダのマーストリヒト大学のピータースらは、脅威の強さと効力感の高さを両方とも操作し、実際の行動を測った研究だけを選び直して分析しました。
その結果、脅威を強める効果は効力感が高いときにだけ現れ、効果量は0.31でした。
反対に、効力感を高める効果は脅威が強いときにだけ現れ、効果量は0.71でした。
論文は「介入が効力感を高めると予備調査で確かめられたときに限って、脅威を伝える方法を使うべきだ」とまで書いています(筆者訳)。
ホームページに置き換えると、次の図のようになります。
左右で違うのは、真ん中の箱1つだけです。
同じ強さの不安を見せても、その直後に一手が書いてあるかどうかで、読者の行動は反対方向に分かれます。
脅威と効力感の組み合わせで見る4つの状態
| ページの状態 | 読者の中で起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 不安が弱く、一手もない | 読み流す。自分の話だと思わない | 対象を絞って、読者の状況を具体的に書く |
| 不安が弱く、一手はある | 「今でなくていい」と後回しにする | 放置したときに起きることを1つだけ具体的に書く |
| 不安が強く、一手がない | 怖さを打ち消そうとして目をそらす | 不安の直後に、小さく1回で済む行動を置く |
| 不安が強く、一手もある | 危険に向き合い、行動を考え始める | 一手を問い合わせや予約につなげる導線を確かめる |
表の3行目が、中小企業のサイトでもっとも多く見かける状態です。
「放っておくと大変なことになります」と書いたまま、その段落が終わっています。
中小企業のサイトで起きがちな恐怖訴求の失敗
恐怖訴求そのものを避けているサイトより、使い方がずれているサイトのほうが多いという印象です。
よく見かける失敗を4つの型に分けました。
| 失敗の型 | ページで起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 不安の置きっぱなし | 怖い話で段落が終わり、問い合わせボタンまで距離がある | 不安の直後に「まずはここだけ確認してください」を置く |
| 誰にでも当てはまる不安 | 「時代に取り残されます」など、読者が自分の話と思えない | 業種・築年数・従業員数など、対象を1つに絞る |
| 根拠のない不安 | 「9割の会社が失敗しています」と出典なしで書いている | 出典を書けない数字は消し、自社で確かめた事実に置き換える |
| 重すぎる一手 | 不安のあとに求める行動が「年間契約」や「全面改修」 | 無料点検や写真の送付など、1回で終わる行動を入口にする |
不安の置きっぱなしは、ボタンの位置で起きる
文章自体はよく書けているのに、問い合わせボタンがページの最下部にしかないケースがあります。
不安を感じた瞬間から行動できる場所までの距離が長いほど、読者は途中で「怖さを打ち消す」側に流れます。
誰にでも当てはまる不安は、誰にも届かない
「変化の激しい時代に対応できていますか」のような書き出しは、読者のほぼ全員に当てはまります。
当てはまる範囲が広いほど、読者は「自分の話」と感じにくくなり、読み流します。
「従業員10人以下で、経理を社長が兼ねている会社では」のように対象を絞ると、当てはまらない人は離れますが、当てはまる人の読む力は強くなります。
根拠のない数字は、信頼を一気に削る
「放置すると修理費が3倍になります」のような数字は、出どころが書かれていないと、読者には脅しに見えます。
自社の施工記録から言えることがあれば、「当社がこの2年で受けた依頼のうち」と範囲を明記して書きます。
範囲を示せない数字は、使わないほうが安全です。
一手が重いと、不安は行動に変わらない
不安をうまく言い当てても、その直後に求める行動が「まずは年間のご契約を」では、読者の足は止まります。
研究で効き目が強まったのは、1回きりで済む行動を勧めたときでした。
無料の点検、写真の送付、確認項目の一覧など、読者が今日中に終えられる大きさまで一手を小さくします。
恐怖を作らない 読者の中にすでにある不安を探す方法
恐怖訴求でいちばん大事なのは、不安を新しく作らないことです。
書き手が考えた怖い話より、お客様がすでに口にしている不安のほうが、読者の心にまっすぐ届きます。
問い合わせと電話で出た言葉を集める
最初に当たるべき材料は、過去の問い合わせメールと電話のメモです。
「こんなことを聞いていいのか分からないのですが」と前置きされた質問には、たいてい読者が言葉にしにくい不安が隠れています。
失注したときの理由を振り返る
見積もりまで進んだのに決まらなかった案件は、不安を解消しきれなかった記録でもあります。
「もう少し考えます」と言われたときに何を気にしていたかを、営業担当に1件ずつ聞いてみてください。
直近の10件ほどを振り返るだけでも、同じ不安が何度も出てくることに気づくはずです。
検索されている言葉を確かめる
グーグルの検索窓に自社の商品名やサービス名を入れると、候補の言葉が表示されます。
「〇〇 失敗」「〇〇 後悔」「〇〇 やめたほうがいい」のような候補が出ていれば、それが読者のすでに持っている不安です。
| 材料の出どころ | 見つかる不安の例 | 次にすること |
|---|---|---|
| 問い合わせメール | 「途中で追加料金を請求されないか」 | 同じ質問が3件以上あれば、サービスページの冒頭近くで答える |
| 電話のメモ | 「頼んだら断りにくくなるのでは」 | 相談だけで終わってよいことを、ボタンの近くに書く |
| 失注の理由 | 「工事中に仕事が止まるのが怖い」 | 作業の日数と、止まる範囲を具体的に書く |
| 検索候補 | 「ホームページ制作 後悔」 | 後悔の中身を記事で取り上げ、避け方まで書く |
| 口コミや評価 | 「対応が遅かった」という他社への不満 | 自社の連絡の速さを、時間で示す |
集めた不安は、出てきた回数の多い順に並べます。
上から1つだけ選び、その不安に答える段落をサービスページに書くところから始めると、手が止まりません。
集めた言葉は、言い換えずにそのまま使うのがこつです。
お客様の言葉は、書き手の言葉より読者の頭の中の言葉に近いからです。
恐怖と期待のどちらを主役にするか
人を行動に向かわせる感情は恐怖だけではありません。
より良くなりたい、もっと楽になりたいという期待も、同じくらい強い動機になります。
大切なのは、1つのページの中でどちらを主役にするかを決めることです。
判断の目安は、商品が「守る」か「増やす」か
商品やサービスが、損失や危険から読者を守るものなら、恐怖を主役にします。
読者の売上や時間、暮らしの質を増やすものなら、期待を主役にします。
| 商品の性質 | 読者が感じていること | 主役にする感情と書き方 |
|---|---|---|
| 守る(防犯・修理・保守) | 今あるものを失いたくない | 恐怖を主役に。起きうる被害を具体的に書き、点検を一手にする |
| 守る(税務・法務の手続き) | 期限や罰則で困りたくない | 恐怖を主役に。期限の日付を示し、確認方法を一手にする |
| 増やす(集客・販促) | 今より良い結果を出したい | 期待を主役に。変化の姿を書き、恐怖は脇役に回す |
| 増やす(教室・研修) | できることを増やしたい | 期待を主役に。受講後の1日を書き、体験を一手にする |
| 守りも増やしもする(住宅改修) | 傷みも心配だが、快適にもしたい | ページを分ける。修理は恐怖、改装は期待を主役にする |
両方を同じ強さで書くと、どちらも弱くなる
1つのページで「放置すると危険です」と「暮らしがもっと快適になります」を同じ強さで並べると、読者はどちらの気持ちで読めばいいか迷います。
脇役の感情は1〜2文にとどめ、主役の感情に段落の大半を使います。
期待訴求でも「一手」は必要
期待を主役にする場合も、構造は恐怖訴求と同じです。
手に入る姿を見せたあとに、そこへ近づくための小さな一手を置かないと、読者は「いつか」と後回しにします。
集客支援の会社なら「問い合わせが毎週届くようになった姿」を描いたあとに、「今のサイトで直す場所を1つお伝えします」という一手を置きます。
期待を主役にしたページでも、一手の大きさの考え方は恐怖訴求とまったく同じです。
ホームページのどこに、どれくらい書くか
恐怖訴求は、サイトのすべてのページで同じ強さで使うものではありません。
読者がどこから来て、どの段階にいるかで、ふさわしい強さが変わります。
| ページ | 読者がいる段階 | 恐怖訴求の扱い |
|---|---|---|
| トップページ | まだ自社を知らない | 弱めに。困りごとを1文で言い当て、すぐ解決の姿に移る |
| サービス紹介ページ | 比較しながら読んでいる | 中くらい。放置した場合の流れを具体的に書き、一手を添える |
| ブログ記事 | 悩みを検索してたどり着いた | 強めでもよい。原因と避け方まで丁寧に書く |
| 料金ページ | 頼むかどうか決めかけている | 使わない。追加費用への不安を消すことに集中する |
| 問い合わせフォームの周り | 送るかどうか迷っている | 使わない。「相談だけでも大丈夫」と安心させる |
問い合わせの直前で不安を強めると、読者はかえって手を止めます。
決める直前の読者に必要なのは、怖さより安心です。
ブログ記事は恐怖訴求を使いやすい場所
「雨漏り 放置」「申告 期限 過ぎた」のような言葉で検索してくる読者は、すでに不安を自覚しています。
こうした読者には、起きうることを正直に書いたうえで、自分で確かめる方法と、相談すべき目安を示すと喜ばれます。
記事の最後で、関係するサービスページへ案内すると、読者は無理なく次のページに進めます。
トップページで強い不安を出さない理由
トップページには、まだ自分の困りごとをはっきり自覚していない読者も来ます。
そこでいきなり強い不安を見せると、自覚のない読者には押し付けに映り、会社そのものの印象が下がります。
トップページでは困りごとを1文で言い当てる程度にとどめ、詳しい話はサービスページに任せます。
恐怖訴求の文章を組み立てる4つの順番
ここまでの内容を、1つの段落の組み立て方にまとめます。
サービスページの1つのブロックを、次の順番で書いてみてください。
1つ目 読者の状況を言い当てる
最初の1文で、読者が「自分のことだ」と思える状況を書きます。
例として「築15年を過ぎて、天井のしみが少しずつ広がっていませんか」のように、場面が浮かぶ書き方にします。
2つ目 放置したときに起きることを具体的に書く
次に、そのままにした場合の流れを書きます。
「大変なことになる」とまとめず、「柱の内側まで水が回ると、張り替える範囲が天井だけで済まなくなる」のように、何がどう変わるかを書きます。
3つ目 根拠を添える
書いた見通しに、根拠を1つ添えます。
公的機関の資料があれば名前を出し、なければ「当社で点検した住宅では」と範囲を明記した自社の事実を使います。
4つ目 小さく1回で済む一手を置く
最後に、読者が今日できる行動を1つだけ示します。
「写真を1枚送っていただければ、急ぐ必要があるかどうかをお伝えします」のように、負担が小さく、1回で終わる行動にします。
研究で効き目が強まった「1回きりの行動」は、この部分にあたります。
4つをつなげた段落の例
住宅の修理会社のサービスページなら、4つの順番をつなげると次のような段落になります。
「築15年を過ぎて、天井のしみが少しずつ広がっていませんか。」
「しみの裏で柱の内側まで水が回ると、張り替える範囲が天井だけで済まなくなることがあります。」
「当社がこの2年で点検した住宅でも、しみに気づいてから半年以上経っていた家ほど、工事の範囲が広がっていました。」
「まずはしみの写真を1枚送ってください。急ぐ必要があるかどうかを、2営業日以内にお伝えします。」
3つ目の文に入れる自社の事実は、実際の記録で確かめられる範囲に限ってください。
確かめられない場合は、3つ目の文を省いても、残りの3文で段落は成り立ちます。
業種別 恐怖訴求の書き方の例
同じ順番でも、業種によって言い当てる不安と一手の中身が変わります。
代表的な業種で例を示します。
| 業種 | 読者がすでに持っている不安 | 置く一手 |
|---|---|---|
| 住宅の修理・塗装 | 雨漏りが広がって、直す範囲が増えるのではないか | 写真を送るだけの無料診断 |
| 税理士・社労士 | 手続きの期限を過ぎて、追加の負担が出るのではないか | 自社が対象かどうかを確かめる項目の一覧 |
| 製造業の部品加工 | 今の仕入れ先が止まったら、生産が止まるのではないか | 図面1枚からの試作相談 |
| ホームページ制作 | 作り直しても、また問い合わせが来ないのではないか | 今のサイトの直す場所を1つ伝える面談 |
| 学習塾・教室 | このままでは、志望校に届かないのではないか | 現在地を確かめる1回の体験 |
健康や身体にかかわる業種は特に慎重に
整体や美容、健康食品などは、身体への不安を扱うため、医薬品医療機器等法などの規制が別にかかります。
効果を言い切る表現は避け、業界団体や所管の行政機関が出している指針を必ず確認してください。
BtoBの読者は「社内での立場」を気にしている
企業の担当者が読者の場合、会社の損失と同じくらい「選んで失敗したら自分の責任になる」ことを気にしています。
導入の実例や、途中でやめられる条件を書くと、この不安がやわらぎます。
担当者は、読んだページを上司に見せて説明することもあります。
放置した場合の影響を、社内の説明にそのまま使える形で、期間や範囲を添えて書いておくと、担当者の背中を押せます。
越えてはいけない線 法律が定める「不安をあおる」行為
恐怖訴求と、法律で問題になる「不安をあおる」行為の間には、条文ではっきりした線が引かれています。
消費者契約法が取り消しの対象にしている行為
消費者契約法の第4条第3項第5号は、社会生活上の経験が乏しい消費者の不安について、次のように定めています。
「その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること」
この号は2018年の法改正で加わったもので、進学や就職、結婚、容姿などに関する不安が対象として挙げられています。
この行為で困惑して結んだ契約は、消費者があとから取り消せます。
条文の中で線を引いているのは「裏付けとなる合理的な根拠」があるかどうかです。
根拠のある見通しを示すことと、根拠なく不安をあおることは、法律の上でも別物として扱われています。
景品表示法が求める「合理的な根拠」
景品表示法の第7条第2項では、消費者庁が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、出せなければ不当な表示とみなされます。
「この工事をしないと家が倒れる」のような断定は、根拠を出せなければこの規定にかかるおそれがあります。
BtoBの取引でも同じ考え方で書く
消費者契約法が守るのは個人の消費者で、事業者どうしの契約は対象外です。
ただし、個人事業主が事業のためでなく個人として契約する場面では、消費者として扱われることがあります。
それでも、根拠のない不安で決めさせた取引は、解約や悪い評判として返ってきます。
| 書こうとしている表現 | 法律や信頼の面で起きること | 次にすること |
|---|---|---|
| 根拠のある見通し(公的資料や自社記録つき) | 問題になりにくい。読者の判断材料になる | 出典の名前と範囲を本文に書く |
| 根拠のない断定(「必ず壊れます」) | 景品表示法の不実証広告の規定にかかるおそれ | 「〜の場合は〜することがあります」と条件を付けて書き直す |
| 経験の少ない人の不安につけ込む勧誘 | 消費者契約法で取り消しの対象になりうる | 使わない。対象者の状況に合わせた説明に切り替える |
| 霊感など実証できない知見による不安 | 消費者契約法第4条第3項第8号で取り消しの対象 | 使わない |
この記事の内容は一般的な整理です。
個別の表現が法律に触れるかどうかは、弁護士や消費生活センター、所管の行政機関に確認してください。
書き換えの例 前と後
ここまでのルールで、実際の文章を書き換えてみます。
| 書き換え前 | 何が足りないか | 書き換え後 |
|---|---|---|
| 放っておくと大変なことになります | 何が起きるかが書かれていない | しみが広がると、天井だけでなく柱の内側まで張り替えが必要になることがあります |
| 9割の会社がホームページで失敗しています | 根拠がなく、脅しに見える | 問い合わせが月に1件もないサイトでは、連絡先がページの最下部にしかないことがよくあります |
| 今すぐご契約ください | 一手が重すぎる | まずは写真を1枚送ってください。急ぐ必要があるかどうかをお伝えします |
| 時代に取り残されないために | 誰にでも当てはまり、自分の話に思えない | 来年の申告から書式が変わる個人事業主の方へ |
| 手遅れになる前に | 不安だけで段落が終わっている | 今の状態を確かめる項目を5つ用意しました。1つでも当てはまれば、ご相談ください |
書き換え後の文は、どれも怖さそのものは弱くなっています。
怖さを足して説得力を上げようとするより、具体さを足すほうが、読者の受け取る重みは増します。
そのかわり、読者が「自分の話だ」と思える具体さと、次に取る行動がはっきりしました。
恐怖訴求が効いているかを確かめる方法
文章を書き換えたら、効いているかどうかを数字で確かめます。
月の訪問が少ないサイトでは、2つの案を同時に出して比べる方法は結果が出るまでに時間がかかりすぎます。
書き換える前と後の4週間ずつを比べる方法が現実的です。
比べる期間には、大型連休や繁忙期が片方だけに入らないよう気をつけます。
季節で問い合わせが増える業種なら、前の年の同じ時期の数字も並べておくと、書き換えの効果と季節の影響を見分けやすくなります。
| 見る数字 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 書き換えた段落まで読まれた割合 | 手前で離脱していれば、冒頭の言い当てが外れている | 最初の1文を、お客様の言葉に差し替える |
| 問い合わせボタンのクリック数 | 読まれているのに押されなければ、一手が重い | 一手を写真送付や確認項目など、より小さな行動に変える |
| 問い合わせの中身 | 「とりあえず話を聞きたい」が増えれば、安心が伝わっている | 増えた質問をサービスページに追記する |
| 商談からの成約 | 不安で焦って来た人は、あとで断ることがある | 成約率が下がったら、不安を弱め根拠を増やす |
問い合わせの数より、中身を見る
不安を強めた直後は、問い合わせの数が増えることがあります。
ただ、焦って連絡してきた人は、冷静になると契約を見送ることも多いので、成約までの流れを合わせて見てください。
グーグルアナリティクスで見る場所
Googleアナリティクスでは、ページごとのスクロールの深さや、ボタンのクリックをイベントとして記録できます。
設定が難しければ、まずは問い合わせ内容を書き換えの前後で並べて読むだけでも、変化はつかめます。
書き換えの前は「料金を知りたい」だけだった問い合わせに、「写真を送ればいいですか」という具体的な質問が混ざり始めたら、一手が読者に届いている合図です。
恐怖訴求についてよくある質問
恐怖訴求を使うと、会社のイメージが悪くなりませんか
根拠のある見通しを示し、すぐあとに対処法を書いていれば、読者は「親切に教えてくれた」と受け取ることが多いです。
イメージが悪くなるのは、根拠のない不安を強く打ち出したまま、対処法を示さない場合です。
どのくらい怖く書けばいいですか
研究では、深刻さや自分にも起こりうる感覚が強いほど効き目が強まりました。
ただし、それは一手が示されている場合に限られます。怖さを強める前に、一手が書けているかを確かめてください。
恐怖訴求と期待訴求は、どちらが効きますか
商品が損失から守るものなら恐怖、何かを増やすものなら期待が向いています。
同じ会社でも、サービスごとに向き不向きが変わることがあります。
どちらが優れているかより、1つのページでどちらを主役にするかを決めることのほうが大切です。
BtoBの会社でも恐怖訴求は使えますか
使えます。企業の担当者は、会社の損失に加えて、自分の選択が失敗することへの不安も抱えています。
導入の流れや途中でやめられる条件を示すと、その不安に答えられます。
どのページから直せばいいですか
いちばんよく読まれているサービス紹介ページから始めるのがおすすめです。
不安を書いている段落を1つ探し、その直後に一手があるかどうかを確かめてください。
一手が無ければ1文足し、問い合わせボタンが離れていれば段落のすぐ下に移します。
この2つだけなら、制作会社に頼まなくても管理画面から直せることがほとんどです。
まとめ
恐怖訴求は、読者の中にすでにある不安を言い当て、行動の理由に変える書き方です。
127本の論文をまとめた分析では、態度・意図・行動のいずれにも効果があり、対処できるという説明が入ったときに効き目が強まりました。
反対に、不安だけを強めて一手を示さないと、読者は危険から目をそらし、ページを閉じます。
厳密な条件で選び直した6本の研究でも、脅威を強める効果は、読者が「自分で対処できる」と感じられるときにだけ現れていました。
商品が守るものか増やすものかで主役の感情を決め、根拠を添え、小さく1回で済む一手を不安のすぐ下に置く。
法律が引いている線も「裏付けとなる合理的な根拠」があるかどうかなので、根拠を示す書き方は、そのまま読者からの信頼にもつながります。
今日できる点検
最後に、自社のサイトで今日確かめられる項目を表にまとめました。
1つでも「いいえ」があれば、そこが最初に直す場所です。
| 点検する場所 | 確かめること | 「いいえ」だったときにすること |
|---|---|---|
| サービス紹介ページ | 不安を書いた段落の直後に、読者が取れる行動が書いてあるか | 写真送付や確認項目など、1回で済む一手を1文足す |
| 不安を示す文 | 誰に起きる話か、対象が1つに絞られているか | 業種・築年数・規模など、条件を1つ書き足す |
| 数字や断定 | 出典か、自社記録の範囲が書かれているか | 書けない数字は消し、範囲を示せる事実に置き換える |
| 問い合わせボタン | 不安を書いた段落から、スクロールせずに見える位置にあるか | 段落のすぐ下にボタンかリンクを置く |
| 料金ページとフォームの周り | 不安を強める文が入っていないか | 安心させる文に入れ替える |
| 主役の感情 | 1つのページで恐怖と期待のどちらを主役にするか決まっているか | 商品が守るか増やすかで決め、脇役の感情は1〜2文に減らす |
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