元請けやリフォーム会社から回ってくる解体の仕事で、なんとか毎月を回している。
けれども、その取引先が引退したり、発注を絞ったりするたびに、翌月の予定表に空白ができる。
この記事は、そうした状況にいる地域の解体業者の方に向けて書いています。
施主から直接仕事を受けたい。
空き家を相続した個人の方から、ホームページや地図検索を通じて相談が来るようにしたい。
そう考えたときに、最初に何を整え、何を書けばよいのかを順番に見ていきます。
扱うのは集客の手法の一覧ではありません。
施主が解体を頼むときに怖がっていることと、解体業者が法律で施主に説明しなければならないことが、実は同じ場所を向いている。
この記事の軸はそこにあります。
読み終えたときに、自社のホームページか名刺か見積書のどこを最初に直すのか、1か所が決まっている。
そこをゴールにしています。
Q&Aサイトで見かけた、ひとりで解体を請けている方の相談
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
相談していたのは、リフォームに伴う解体を、ひとりで請けている職人の方でした。
取引先が減って、土曜日の予定が埋まらない
投稿者は、小型のトラック1台で、リフォーム前の解体や廃材の搬出、現場の雑用を請けていたそうです。
仕事をもらっていた大工さんやリフォーム業の方が引退したり、取引のしかたが変わったりして、取引先が減ってきた。
マンションの現場は土曜日に工事の許可が出にくく、土曜日の仕事も少ない。
そこで、一戸建ての仕事を増やしたいと考えていました。
名刺と地域の掲示板で、直接の仕事を探そうとしていた
投稿者が考えていた方法は2つでした。
1つ目は、名刺を作って、現場で初めて会った業者さんに渡し、そこから仕事をもらうこと。
2つ目は、地域の売買や募集の掲示板サイトで、ブロック塀の解体のような小さな工事を個人から直接募集することです。
そのうえで、名刺には屋号と名前、住所、携帯電話の番号、メールアドレスを載せれば足りるのか。
固定電話やファクスの番号も必要なのか、と尋ねていました。
ついた回答は短いものだった
回答は、名前と連絡先と業種があればよい、という短いものでした。
業者どうしで渡す名刺としては、それで間違っていません。
けれども、投稿者がもう1つ考えていた「個人から直接仕事を受ける」場面では、その答えでは足りなくなります。
この相談が教えてくれること
業者に渡す名刺と、施主に渡す名刺は、読む人が違います。
業者は、相手が現場で動ける人かどうかを見ています。
施主は、この人に家を壊させて本当に大丈夫なのかを見ています。
連絡先がそろっていても、施主が知りたい「大丈夫な理由」が1つも書かれていなければ、電話はかかってきません。
この記事では、その「大丈夫な理由」を、解体業者がもともと持っているもので組み立てていきます。
これは9割の解体業者が陥る罠です
ここで言う罠は、腕が悪いことや、値段が高いことを指していません。
元請けや工務店から仕事を受けているあいだは、それで回っていた仕組みを、そのまま施主に向けてしまうことです。
業者向けの言葉のまま、施主に話しかけている
下請けの仕事では、相手は同じ業界の人です。
「木造2階建て、内装から、重機入れて、産廃はこちらで」と言えば、話が通じます。
施主にとっては、この一文の半分も意味が分かりません。
業者向けの言葉で書かれたホームページは、施主から見ると、読んでも自分がこれから何をされるのかが分からないページになります。
安さと早さだけで比べられる場所に出ていく
施主の側から見て、解体業者を比べる物差しは多くありません。
物差しが置かれていなければ、施主は見積もりの合計と工期の短さで比べるしかなくなります。
そうなると、値段を下げられる会社が勝ち、下げた会社は次に下げた会社に負けます。
下請けで価格を叩かれてきた構造から抜けたくて直接受注を目指したのに、同じ構造に戻ってしまう。
元請けになったときに増える責任を、まだ自分のものにしていない
施主から直接仕事を受けると、その解体業者は元請業者になります。
元請業者には、施主への書面での説明や、廃棄物の処理の責任、石綿(アスベスト)の事前調査の報告など、下請けのときには元請けが背負っていた義務がかかってきます。
この準備ができていないまま集客だけを先に始めると、問い合わせが来てから慌てることになります。
逆に言えば、この義務をきちんと果たせることは、それ自体が施主に見せられる安心材料です。
| 読んでいるあなたの状況 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 取引先の引退や発注減で予定が空く | 仕事の入口が数社の元請けに集中している | 施主から直接届く入口を1つ作る |
| 名刺に連絡先だけを載せている | 施主が「大丈夫な理由」を見つけられない | 登録番号と対応できる手続きを書き足す |
| ホームページが業者向けの言葉で書かれている | 施主が自分の工事の流れを想像できない | 相談から完了までの流れを施主の言葉で書く |
| 見積もりの合計だけで比べられている | 比べる物差しが値段と工期しかない | 見積書に何が含まれているかの項目を示す |
| 元請けとしての書類にまだ慣れていない | 問い合わせが来ても受けきれない | 説明書面と報告の手順を先に整える |
表のどの行に近いかを1つ決めておくと、この先の話を自社に当てはめやすくなります。
直接頼んでくる施主は、どんな人で何を怖がっているのか
施主から直接仕事を受けたいなら、まず相手の顔を具体的に思い浮かべる必要があります。
地域の解体業者に直接相談してくる個人の施主は、多くの場合、建て替えか空き家の処分のどちらかを考えています。
空き家は5年で51万戸増えている
総務省統計局が2024年9月に公表した令和5年住宅・土地統計調査(2023年10月1日現在)によると、「空き家は900万2千戸と、2018年(848万9千戸)と比べ、51万3千戸の増加で過去最多」となっています。
総住宅数に占める空き家の割合は13.8%で、こちらも過去最高でした。
このうち、賃貸用や売却用、別荘などを除いた、使い道の決まっていない空き家は385万6千戸で、総住宅数の5.9%にあたります。
相続したまま住む人がいない実家は、この数字の中に含まれています。
相続した家の前で、何から始めればよいか分からない
親の家を相続した人の多くは、解体を頼むのが人生で初めてです。
誰に頼めばよいのか、見積もりは何社から取るものなのか、相場はどう調べるのか。
最初の一歩の踏み出し方が分からないまま、何年も空き家を置いている人もいます。
2024年4月1日からは相続登記の申請が義務になり、不動産登記法では、相続で所有権を取得したことを知った日から「三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない」と定められました。
解体を考え始めるきっかけは、こうした手続きの話から来ることもあります。
遠くに住んでいて、現場に立ち会えない
相続した家と、いまの住まいが離れていることもよくあります。
工事のあいだ何度も現地に通うことはできません。
施主が怖いのは、見ていないところで何が行われているのか分からないことです。
工事の途中の写真や、終わったあとの報告が届くかどうかは、この人にとって業者を選ぶ大きな理由になります。
近所に迷惑をかけて、あとで責められたくない
解体工事には、音と揺れとほこりが伴います。
施主がその土地を離れていても、近所の人とのつきあいは親の代から続いています。
工事の前に誰が挨拶に回るのか、苦情が出たら誰が受けるのか。
ここがはっきりしない業者には、頼みにくいものです。
古い家に、石綿が使われていないかが気になる
古い建物の解体で石綿(アスベスト)が話題になることは、ニュースで知っている人が増えました。
自分の家に使われているかどうかは、施主には分かりません。
分からないものは、怖いものとして残ります。
| 施主の迷い | 答えが無いときに起きること | 解体業者が渡せるもの |
|---|---|---|
| 何から始めればよいか分からない | 相談そのものを先送りにする | 相談から完了までの流れを1枚で示す |
| 現場に立ち会えない | 見えないところでの手抜きを疑う | 工程ごとの写真と完了の報告 |
| 近所に迷惑をかけたくない | 安い業者を選んでも不安が残る | 挨拶回りと苦情の受け方を先に書く |
| 石綿が使われていないか心配 | 調べた情報で不安が膨らむ | 事前調査の進め方と説明の書面 |
| 見積もりの中身が分からない | 合計の安さだけで決める | 何が含まれているかを項目で示す |
5つの迷いのうち、いまの自社のホームページや名刺で答えているものがいくつあるかを数えてみてください。
元請けになると、施主に対して何をしなければならないのか
施主から直接仕事を受けると、法律上の立場が変わります。
下請けのときには元請けが背負っていた説明と記録の義務が、自分にかかってきます。
解体工事業の登録と、現場の標識
建設業の許可を持たずに解体工事を営む場合は、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)にもとづき、営業する区域の都道府県知事の登録を受ける必要があります。
登録は5年ごとの更新です。
同じ法律の第33条は、解体工事業者は営業所と現場ごとに「商号、名称又は氏名、登録番号その他主務省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない」と定めています。
現場で掲げている登録番号は、そのままホームページや名刺に載せられる信用の材料です。
床面積80平方メートル以上の解体は、届出と書面での説明が要る
建設リサイクル法の施行令では、建築物の解体工事のうち、解体する部分の床面積の合計が80平方メートル以上のものを届出の対象にしています。
届け出るのは発注者、つまり施主で、工事に着手する日の7日前までに都道府県知事へ出します。
そして第12条で、施主から直接請け負おうとする業者は、届け出る事項を「記載した書面を交付して説明しなければならない」とされています。
施主が自分で届出の書き方を調べる必要がないように、業者が書面で説明する決まりになっているわけです。
廃棄物を処理する責任は、元請けにかかる
廃棄物の処理及び清掃に関する法律では、建設工事が何段階かの請負で行われる場合、施主から直接請け負った元請業者を、工事で出る廃棄物の「事業者」として扱います。
下請けのときは元請けの名前で出ていた産業廃棄物の管理票(マニフェスト)も、元請けになれば自社の責任で回すことになります。
さらに建設リサイクル法の第18条では、再資源化が終わったら、元請業者がその旨を発注者に書面で報告することになっています。
石綿の事前調査と、その結果の説明
大気汚染防止法の第18条の15は、解体等工事の元請業者に、石綿を含む建材があるかどうかの事前調査を義務づけています。
そのうえで、調査の結果を「記載した書面を交付して説明しなければならない」相手として、発注者を挙げています。
2022年4月1日からは、解体部分の床面積が80平方メートル以上の建築物の解体などで、調査結果を都道府県等へ報告することが必要になりました。
2023年10月1日からは、建築物の事前調査は、建築物石綿含有建材調査者などの資格を持つ人が行うことになっています。
| 元請けになると増えること | 根拠になる法律 | 施主から見るとどう映るか |
|---|---|---|
| 解体工事業の登録と標識の掲示 | 建設リサイクル法 第21条・第33条 | 登録番号のある業者に頼める安心 |
| 届出事項の書面での説明 | 建設リサイクル法 第12条 | 届出の書き方を自分で調べなくてよい |
| 再資源化の完了の書面報告 | 建設リサイクル法 第18条 | 廃材がどう処理されたかが分かる |
| 廃棄物の事業者としての責任 | 廃棄物処理法 第21条の3 | 不法投棄に巻き込まれる心配が減る |
| 石綿の事前調査と結果の説明 | 大気汚染防止法 第18条の15 | 家に石綿があるかを書面で知れる |
表の右の列は、どれも前の節で見た施主の迷いに対応しています。
法律が元請けに求めていることは、施主がいちばん知りたいことを、書面で先に渡しなさいという決まりでもあるわけです。
直接受注を目指すときに、よくやってしまう打ち手
施主から仕事を取ろうと決めたとき、最初に思いつく手はだいたい決まっています。
どれも間違いとは言い切れませんが、順番を誤ると、下請けのときより苦しくなることがあります。
「地域最安」「即日見積もり」を大きく書く
いちばん分かりやすい打ち出し方は、安さと早さです。
けれども、施主が比べる物差しを自分から安さに絞ることになります。
安さで選んだ施主は、次に安い見積もりが来ればそちらへ移ります。
追加の費用が出たときにもめやすいのも、安さで選ばれた現場です。
一括見積もりや紹介の仕組みだけに頼る
複数の業者から見積もりを集める仕組みに登録すれば、問い合わせは届きます。
ただし、施主は最初から何社かを並べて比べるつもりで来ています。
自社の説明を読んで選んでもらう前に、見積もりの合計で順番がつきます。
仕組みに払う手数料と値下げの両方で、手元に残る分が細っていきます。
入口の1つとして使うのは構いませんが、そこだけに頼ると、取引先が元請けから仕組みの運営会社に替わっただけになります。
名刺とチラシを、業者向けの中身のまま配る
冒頭の相談者のように、名刺を作って配るのは自然な一歩です。
けれども、業者に渡すための名刺を、そのまま施主に渡しても効き目は薄くなります。
施主は名刺を受け取ったあと、家に帰ってから、この業者で大丈夫かを確かめようとします。
そのときに検索しても何も出てこない、出てきても業者向けの言葉しか書かれていない。
そこで相談は止まります。
施工事例の写真を、更地の写真だけで並べる
解体業者のホームページでよく見かけるのが、工事前と更地になったあとの2枚の写真です。
業者には仕事の確かさが伝わりますが、施主はそれを見ても、自分の家の工事がどう進むのかは分かりません。
施主が知りたいのは、その2枚のあいだに何があったのかです。
挨拶回り、養生、石綿の調査、分別しながらの解体、廃材の搬出、完了の報告。
ここを見せていないと、写真の数がいくら多くても安心にはつながりません。
補助金を「必ず使える」と書く
老朽化した空き家の解体に補助を設けている自治体はあります。
ただし、対象になる建物や、申請してよい時期は自治体ごとに違います。
制度によっては、交付が決まる前に契約や着工をすると対象から外れることもあります。
「補助金が使えます」と言い切って、使えなかったときに責められるのは業者です。
ホームページを作って、そのまま置いておく
ホームページを作ったことで、集客の準備が終わったと感じてしまうことがあります。
会社の住所と電話番号と施工事例が数件だけ載ったページは、施主が検索で見つけても、比べる材料になりません。
施主は同じ地域の解体業者のページを何社か開き、自分の不安に答えてくれているページで手を止めます。
更新が何年も止まっているページは、いまも営業しているのかという別の不安まで生みます。
| よくある打ち手 | そのあとに起きること | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 安さと早さを大きく書く | 安さで比べる施主ばかりが来る | 工事の流れと説明の手厚さを書く |
| 一括見積もりだけに頼る | 手数料と値下げで利益が細る | 入口の1つにとどめ、自社の説明の場を持つ |
| 業者向けの名刺を施主に渡す | 家に帰ってから確かめる材料が無い | 登録番号と相談の窓口を載せた名刺にする |
| 更地の写真だけを並べる | 工事の途中が想像できない | 途中の工程の写真と説明を足す |
| 補助金を言い切る | 使えなかったときに信頼を失う | 市区町村の窓口で一緒に確かめると書く |
| ホームページを作って放置する | 比べる材料にならず素通りされる | 施主の迷いに答える説明を足していく |
名刺に何を書けばよいのか、という問いへの答え
ここで、冒頭の相談に戻ります。
業者に渡す名刺なら、回答者の言うとおり、名前と連絡先と業種で足ります。
施主にも渡すつもりなら、もう少し書き足した方がよいものがあります。
施主が名刺の裏で確かめたいこと
施主は名刺を受け取ったあと、その場では読まずに持ち帰ることが多いものです。
家族に相談するときに、名刺を見せながら「この人に頼もうと思う」と話します。
そのときに家族から聞かれるのは、ちゃんとした業者なのか、何をどこまでやってくれるのか、の2つです。
名刺の裏に、この2つへの答えが小さくでも書いてあれば、話が前に進みます。
固定電話とファクスは、なくても困らない
相談者が気にしていた固定電話とファクスについては、個人の施主から見て、無いことが不安の理由になる場面は多くありません。
それよりも、携帯電話がつながらないときにどうすればよいか、折り返しはいつごろか、が書いてある方が安心です。
業者向けに、図面をファクスで送りたいという取引先がいる場合だけ、そちらで考えれば足ります。
名刺から、もう少し詳しい説明へつなぐ
名刺に書ける量はわずかです。
全部を名刺に詰め込もうとせず、詳しい説明はホームページや1枚の案内に任せます。
名刺には、そこへたどり着くための入口を載せておきます。
| 名刺に載せるもの | 業者に渡すとき | 施主に渡すとき |
|---|---|---|
| 屋号と名前、携帯電話、メール | 載せる | 載せる |
| 解体工事業の登録番号 | あれば載せる | 必ず載せる |
| 対応できる工事の範囲 | 業種だけで足りる | 木造の家、ブロック塀、内装など具体的に |
| 相談から完了までの流れの案内先 | 無くてもよい | ホームページか案内の紙へつなぐ |
| 折り返しの目安 | 無くてもよい | 「その日のうちに折り返します」など |
同じ名刺を2種類作る必要はありません。
表面は業者にも通じる内容にして、裏面に施主向けの一言と案内先を載せれば、1枚で両方に使えます。
「売れるサイトはみな謙虚」を解体業に当てはめる
ここまでで、施主が怖がっていることと、元請けが法律で求められていることが、同じ場所を向いていると分かりました。
では、それをどうやってホームページや名刺に落とし込むのか。
その土台にしているのが、「売れるサイトはみな謙虚」という考え方です。
主役は施主で、解体業者は案内役という順番
この考え方では、ページの主役を自社に置きません。
主役は、相続した家の前で立ち止まっている施主です。
解体業者の役割は、その人が迷わずに次の一歩を踏み出せるよう、道筋と根拠を示す案内役になることです。
「創業◯年」「重機◯台」といった自社の紹介は、案内役としての信用を支える材料として、あとから添えれば足ります。
約束を小さくして、説明を厚くする
「どこよりも安く」「最短で更地に」と大きく約束すると、施主はその約束を物差しにして比べます。
約束を小さくするかわりに、何をどの順番で、誰が説明するのかを厚く書きます。
法律で決まっている書面の説明は、どの元請業者も果たすべきものです。
それでも、施主に向けて先に分かりやすく書いている会社は多くありません。
決まりを守っていることを、施主の言葉で先に見せる。 それだけで、安さを競う会社との違いがはっきりします。
ホームページに書くのは、相談から完了の報告までの流れ
まずは、ホームページの中身を施主の順番に並べ替えます。
相談から完了までを、施主がすることと業者がすることに分けて書く
初めての人がいちばん知りたいのは、自分がいつ何をすればよいのかです。
相談の電話、現地の下見と石綿の事前調査、見積もりと書面での説明、契約と届出、近所への挨拶、工事、完了の報告と書類の受け渡し。
この流れを、施主がすることと業者がすることの2列に分けて書くと、施主は自分の出番がどれだけ少ないかが分かります。
立ち会いが必要な場面と、立ち会わなくてよい場面も、ここで分けておきます。
代わりに進める手続きと、施主が出す手続きを分ける
床面積80平方メートル以上の解体の届出は、法律上は施主が出すものです。
実際には、委任を受けて業者が書類をまとめる形がよく取られています。
どこまでを業者が引き受け、どこから先は施主ご本人の手続きになるのかを書いておきます。
建物を取り壊したあとの滅失登記は、不動産登記法で「滅失の日から一月以内」に申請することになっている、施主側の手続きです。
業者が代わりに出すものではありませんが、取り壊しを証明する書類を渡すことと、申請の期限があることを伝えるだけで、施主の手間は大きく減ります。
石綿の事前調査を、怖がらせずに説明する
石綿の話は、書き方を誤ると施主を怖がらせるだけになります。
調査は法律で決まった手順であること、資格を持つ人が行うこと、結果は書面でお渡しすること。
この順に淡々と書けば、施主にとっては「この会社はきちんと調べてくれる」という材料になります。
石綿が見つかったときに工程と費用がどう変わるのかも、金額を書かずに、変わる項目だけを先に示しておきます。
見積書に何が含まれているかを、項目で見せる
費用の見せ方で、合計の金額を前に出す必要はありません。
施主が不安なのは、あとから追加が出ることです。
建物の取り壊し、廃材の分別と運搬と処分、養生や足場、ブロック塀や庭木などの付帯物、地中から物が出てきたときの扱い。
どの項目が見積もりに入っていて、どの項目が現地を見るまで決まらないのかを書いておくと、比べる物差しが合計の安さから中身の確かさに移ります。
近所への挨拶と苦情の受け方を、先に書く
工事の前に誰が、どの範囲の家に、どんな案内を持って挨拶に回るのか。
工事中に苦情が出たら、誰が受けて、施主にはどう報告するのか。
遠くに住んでいる施主ほど、この一節で手を止めます。
| ホームページの項目 | 施主のどの迷いに答えるか | 書くときの注意 |
|---|---|---|
| 相談から完了までの流れ | 何から始めればよいか分からない | 施主の出番と業者の出番を分ける |
| 代わりに進める手続きの範囲 | 届出や登記が分からない | 施主ご本人の手続きは期限だけ伝える |
| 石綿の事前調査の進め方 | 家に石綿があるか心配 | 法律の手順として淡々と書く |
| 見積書の項目 | あとから追加が出るのが怖い | 金額は出さず、含まれるものを示す |
| 挨拶回りと苦情の窓口 | 近所に迷惑をかけたくない | 誰が受けて、どう報告するかまで書く |
| 登録番号と完了の報告 | 見えないところが不安 | 写真と書面で何を渡すかを書く |
下請けの仕事を続けながら、直接受注へ移る順番
元請けからの仕事を急にやめる必要はありません。
いまの売上を支えている仕事を続けながら、施主から届く入口を少しずつ太くしていきます。
1つ目は、元請けになったときの書類を先にそろえる
最初にするのは集客ではありません。
解体工事業の登録や建設業の許可の範囲を確かめ、施主への説明書面、石綿の事前調査の段取り、廃棄物の管理票の回し方を、元請けとして回せるように整えます。
この準備が終わっていれば、問い合わせが来た日にそのまま受けられます。
2つ目は、小さな工事から直接受ける
ブロック塀や物置、内装だけの解体のように、規模の小さな工事から施主と直接やりとりします。
冒頭の相談者が考えていたのも、この入口でした。
小さな工事で、説明のしかたや報告の出し方を自分の型にしていきます。
3つ目は、その記録をホームページの説明に変える
小さな工事で施主から聞かれたこと、喜ばれたこと、困ったことを書き留めておきます。
施主から聞かれた質問は、そのままホームページに書くべき項目です。
施主の許可を得られたものは、途中の工程の写真と一緒に事例として載せます。
4つ目は、空き家の相談を受けられる形にする
流れと手続きの説明がそろったら、相続した空き家の解体の相談を受ける入口を作ります。
ここで初めて、地図検索の情報や、地域の相談窓口とのつながりに手をかけます。
| 段階 | やること | 終わったと判断する目安 |
|---|---|---|
| 書類をそろえる | 登録、説明書面、石綿調査、管理票の段取り | 問い合わせが来たら当日に受けられる |
| 小さな工事を直接受ける | ブロック塀や内装の解体を施主から受ける | 説明と報告の型が決まっている |
| 記録を説明に変える | 聞かれたことと途中の写真をまとめる | ホームページに流れと質問への答えが載っている |
| 空き家の相談の入口を作る | 相続した家の解体の相談を受ける | 施主から直接の問い合わせが月に1件以上届く |
この順番を飛ばして、いきなり空き家の相談を広く集めようとすると、元請けとしての準備が追いつかなくなります。
地域の施主に見つけてもらうために整える場所
説明の中身がそろったら、施主がその説明にたどり着く道を整えます。
解体は地域の仕事なので、遠くの人に広く知られる必要はありません。
地図検索に出る会社の情報を、施主向けに書き直す
施主が「近くの解体業者」を探すとき、検索結果の上の方には地図と会社の一覧が並びます。
ここに載っている会社の紹介文や写真が、業者向けの言葉のままになっていないかを確かめます。
対応している地域、相談から完了までの流れの案内、登録番号を、ホームページと同じ言葉でそろえておきます。
施主からの口コミに返信するときも、工事の内容と、どう報告したかを短く添えると、次に読む施主の安心材料になります。
相続や空き家の相談が集まる窓口を知っておく
空き家を相続した人は、解体業者より先に、別の窓口に相談していることがよくあります。
市区町村の空き家の相談窓口、相続の手続きを扱う士業の事務所、土地の売却を相談する不動産会社などです。
そうした窓口の人が、施主に「解体の流れはこのページが分かりやすい」と案内できる説明を持っておくと、紹介が生まれやすくなります。
営業の言葉を並べるより、施主の迷いに答える1枚の案内を持って挨拶に行く方が、相手も紹介しやすくなります。
自治体の解体の補助は、窓口で一緒に確かめる
老朽化した空き家の解体に補助を設けている市区町村では、施主からその制度について聞かれることがあります。
制度の有無や条件は、自治体ごとに、また年度ごとに変わります。
ホームページには、制度の中身を断定して書かず、「お住まいの市区町村の制度を、契約の前に一緒に確かめます」と書いておけば足ります。
放置された空き家に起きることを、脅さずに伝える
空家等対策の推進に関する特別措置法は、2023年12月13日に改正法が施行され、放置すれば特定空家になるおそれのある「管理不全空家等」という区分ができました。
市町村長から勧告を受けると、地方税法の規定により、その敷地は固定資産税の住宅用地の特例から外れます。
この話は、施主を急がせる材料に使うと逆効果になります。
迷っている施主に、制度として何が決まっているかを淡々と伝え、判断は施主に任せます。
| 見つけてもらう場所 | 施主がそこで確かめたいこと | 整えること |
|---|---|---|
| 地図検索の会社情報 | 近くて、ちゃんとした会社か | 対応地域と登録番号と流れの案内 |
| 口コミへの返信 | 実際の対応はどうだったか | 工事の内容と報告のしかたを添える |
| 空き家や相続の相談窓口 | どこに頼めばよいのか | 紹介しやすい1枚の案内を渡しておく |
| 補助制度の問い合わせ | 自分の家は対象になるのか | 契約前に一緒に窓口で確かめると書く |
| 空き家を放置したときの話 | このままでよいのか | 制度の事実だけを伝え、急がせない |
よくある質問
Q1. 解体工事業の登録だけで、施主から直接仕事を受けてよいのでしょうか
建設業の許可が要らない規模の解体工事であれば、営業する都道府県の解体工事業の登録で請け負うことができます。
規模の大きな工事を受けるときは建設業の許可が必要になるため、自社が受けられる範囲を先に確かめておきます。
登録は営業する都道府県ごとに必要なので、隣の県の工事を受けるときも確認が必要です。
Q2. 料金をホームページに載せないと、問い合わせが来ないのではないでしょうか
解体の費用は、建物の構造や立地、残っている家財、石綿の有無で大きく変わります。
合計の目安を出すより、見積書に何が含まれるか、現地を見るまで決まらないものは何かを示した方が、施主はあとからの追加を心配せずに相談できます。
見積もりを出すまでの流れと、見積もりは無料かどうかをはっきり書いておくことの方が、問い合わせの数に効きます。
Q3. 地域の掲示板サイトで、個人から直接募集してもよいのでしょうか
小さな工事の入口として使うことはできます。
その場合も、登録番号と、どこまでを請け負うのか、廃材をどう処理するのかを、募集の文章に書いておきます。
廃材の処理が曖昧な募集は、施主から見て不法投棄の心配と区別がつきません。
Q4. 石綿の事前調査の資格を、自社で持っていないと直接受注はできませんか
建築物の事前調査は、2023年10月1日から資格を持つ人が行うことになっています。
自社に資格者がいない場合は、調査を外部の有資格者に頼む段取りを決めておけば、元請けとして工事を受けることはできます。
ホームページには、誰が調査を行い、結果をどう説明するのかを書いておきます。
Q5. 下請けの仕事を減らしてでも、直接受注に切り替えるべきでしょうか
急に切り替える必要はありません。
元請けとしての書類と段取りを先に整え、小さな工事から直接受けていけば、下請けの仕事を続けながら移ることができます。
取引先が1社減っても予定表が空かない状態を、少しずつ作っていきます。
まとめ
施主から直接仕事を受けたい解体業者が最初に整えるのは、広告や一括見積もりの登録より前の、施主への説明です。
空き家は2023年10月1日現在で900万2千戸と過去最多になり、相続した家の解体を初めて頼む施主は増えています。
その施主が怖がっているのは、何から始めればよいか分からないこと、見えないところで何が行われるか分からないこと、近所に迷惑をかけることです。
建設リサイクル法や大気汚染防止法が元請業者に求めている書面での説明と報告は、その不安にそのまま答える中身になっています。
名刺には登録番号と案内先を、ホームページには相談から完了の報告までの流れを、見積書には含まれる項目を書く。
Q&Aサイトの相談者が考えていた名刺と小さな工事の募集は、この順番で中身を足せば、施主から直接届く入口に変わります。
より詳しい考え方や、ほかの業種での例は、合同会社謙虚のトップページでもご紹介しています。
今日できる点検
最後に、今日のうちに確かめられることを表にまとめます。
| 点検すること | 確かめ方 | できていなかったら |
|---|---|---|
| 名刺に登録番号が載っているか | 手元の名刺の表と裏を読む | 裏面に登録番号と案内先を足す |
| ホームページに流れが書いてあるか | 施主の目で相談から完了までを追う | 施主の出番と業者の出番に分けて書く |
| 石綿の事前調査の説明があるか | 「石綿」「アスベスト」でページ内を探す | 誰が調べ、どう説明するかを書く |
| 見積書の項目が分かるか | 最近の見積書を施主の立場で読む | 含まれるものと現地で決まるものを分ける |
| 挨拶回りと苦情の窓口が書いてあるか | ページ内で「近所」「挨拶」を探す | 誰が回り、誰が受けるかを書く |
| 元請けの書類を回せるか | 説明書面と管理票の手順を書き出す | 問い合わせの前に手順を整える |
いま公開しているホームページを開き、相続した家を前にした施主の目で、上から読んでみてください。
自分が何をすればよくて、この会社が何をしてくれるのかが分かるかどうか。
分からなかった場所があれば、そこが最初に直す場所です。
次の休みの日までに、その1か所だけ書き換えてみてください。
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