独立して事務所を構えたものの、紹介以外の相談がなかなか増えない。ポータルサイトやリスティング広告も検討しているけれど、費用に見合うのか分からない。
この記事は、そうした状況にいる弁護士の先生方と、事務所のウェブ担当の方に向けて書いています。
集客の手法を並べる記事はすでにたくさんあります。ここでは手法の前に、相談者が事務所を選ぶときに何を見ていて、弁護士の広告規制がその選び方とどう関わるのかを整理します。
読み終えたときに、事務所のホームページで最初に直す場所が1つ決まっている状態をゴールにしています。
Q&Aサイトに並ぶ、相談者側の迷い
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
投稿者は、家族の問題で弁護士に相談しようとしている方でした。周りに聞くと「弁護士なんて誰に頼んでも、ある程度結果は決まっている」と言われる。
本当にそうなのか。地図アプリの口コミを見て決めてもよいのか。
どう選べば失敗しないのか分からない、という内容です。
同じQ&Aサイトには、依頼した後の不安もたくさん投稿されていました。「依頼した弁護士から連絡が来ない」「対応が遅く感じるが、これは普通なのか」「メッセージで質問して1週間以上返事がない」。
どれも、法律の中身とは別のところで不安が膨らんでいる相談です。
ここから分かるのは、相談者は先生の力量を自分で見分けられないという事実です。見分けられないから、周りの声や口コミの星の数に頼る。
そして依頼した後は、連絡の速さや説明の分かりやすさで「この弁護士で良かったのか」を判断している。法律の専門性とは別の軸で、事務所は選ばれ、評価されています。
相談者が見ているものと、事務所が伝えているもの
事務所のホームページでよく見かける内容と、相談者が知りたい内容を並べてみます。
| 事務所がよく載せている内容 | 相談者が本当に知りたいこと | ずれが生む結果 |
|---|---|---|
| 代表弁護士の経歴と所属 | この先生は話しやすい人か | 経歴は立派だが、電話をかける勇気が出ない |
| 取扱分野の一覧 | 自分の悩みはこの事務所に相談してよいのか | 一覧が長いほど、どこに当てはまるか分からない |
| 解決事例の紹介 | 自分の場合は何から始まるのか | 他人の結果は分かるが、自分の一歩目が見えない |
| 費用の説明ページ | 最初の相談で何が起きて、いくらかかる仕組みか | 表が細かく、結局いくらになるか読めない |
| 事務所の理念 | 連絡はどのくらいで返ってくるか | 理念は伝わるが、依頼後の不安は残る |
左の列はどれも大切な情報です。ただ、相談者が最初の電話をかける前に抱えている不安には、右の列のほうが近いところにあります。
数字で見る、弁護士が増えた後の選ばれ方
背景として、弁護士の数を確認しておきます。日本弁護士連合会が公表している弁護士会別会員数によると、2026年9月1日現在の弁護士は48,057人でした。
地域によって差はありますが、相談者から見ると「選べる弁護士」が身近に増えた状態です。
選択肢が増えると、相談者は比べ始めます。ところが、比べる材料はほとんど持っていません。
法律の知識が無い人に、先生の力量を比べることはできないからです。その結果、比べやすいもの、つまり口コミの点数や、ホームページで受ける印象や、最初の電話での対応で選ぶことになります。
相談者が電話をかけるまでにかかる時間
もう1つ、見落とされがちな点があります。法律の悩みを抱えた人は、すぐには電話をかけません。
多くの場合、悩みに気づいてから実際に連絡するまでに、何日も、時には何週間も迷います。家族に話すべきか、自分で何とかできないか、費用はどれくらいかかるのか。
その間に、何度も事務所のホームページを開いては閉じています。
この「迷っている時間」にホームページが何を見せているかで、最後に電話をもらえるかどうかが決まります。迷っている人は、事務所の実績の大きさより、自分が電話をしたときの場面を思い描けるかどうかを見ています。
電話に誰が出て、最初に何を聞かれて、その後どうなるのか。その場面が思い描けない事務所には、迷いが晴れないまま連絡をためらい続けることになります。
独立した弁護士ほど陥りやすい罠
この構造の中で、独立したばかりの先生ほど陥りやすい罠があります。力量で選ばれようとして、経歴と取扱分野と解決事例を厚くする。
いわば「実力を証明する」方向に、ホームページの力を注いでしまうことです。
実力を証明したい気持ちは、専門職として自然なものです。勤務弁護士の時代に扱った事件の数や、得られた結果には誇りがあるはずです。
けれども相談者の側から見ると、その証明は比べる材料になりにくいのです。A事務所の経歴とB事務所の経歴を並べられても、どちらが自分の悩みに向いているのかは判断できません。
「実力の証明」が集客につながりにくい理由
もう1つの理由は、弁護士の広告には規制があることです。日本弁護士連合会は「弁護士等の業務広告に関する規程」と、その運用を示した「業務広告に関する指針」を定めています。
指針には、誇大又は過度な期待を抱かせる広告の例として、次の表現が挙げられています。
「当事務所ではどんな事件でも解決してみせます。」
「たちどころに解決します。」
実力を強く打ち出そうとすると、どうしてもこうした表現に近づいていきます。規制を意識して表現を抑えると、今度はどの事務所も同じような控えめな言葉になり、差が見えなくなります。
実力の証明で差をつけようとするほど、規制と横並びの間で身動きが取れなくなるわけです。
差がつくのは、力量の手前にある部分
では、どこで差がつくのか。Q&Aサイトの相談者たちが気にしていたのは、力量の手前にある部分でした。
この先生は話を聞いてくれそうか。連絡はきちんと返ってくるか。
最初の相談で何が起きて、費用はどういう仕組みで決まるのか。
こうした情報は、事実をそのまま書けば伝わります。誇張する必要も、他の事務所と比べる必要もありません。
規制の内側で、正直に書くほど相談者の不安が減っていく領域です。
| 相談者の不安 | 規制に触れずに答える方法 | 答えたときに起きること |
|---|---|---|
| 話しやすい先生か | 先生ご本人の言葉で、最初の相談の進め方を書く | 電話をかける前に人柄が伝わる |
| 連絡は返ってくるか | 連絡の目安と、窓口になる人を書く | 依頼後の不安が先に和らぐ |
| 何から始まるのか | 相談から受任までの流れを順番に書く | 自分の一歩目が見える |
| 費用の仕組み | 何に費用がかかり、いつ説明するかを書く | 相談前の心理的な壁が下がる |
| 自分の悩みを扱っているか | 取扱分野を絞り、相談例を添える | 自分ごととして読める |
この記事の後半では、表の真ん中の列を、事務所のホームページのどこにどう置けばよいかを具体的に見ていきます。その前に、なぜ多くの事務所サイトが左の列、つまり実力の証明に偏ってしまうのか、業界の構造から確認しておきます。
事務所サイトが「実力の証明」に偏る業界の構造
弁護士事務所のホームページが似た顔つきになる理由は、集客を取り巻く仕組みの側にあります。仕組みそのものが、どの事務所も同じ方向へ引っぱっています。
ここでは3つの仕組みを取り上げます。
ポータルサイトの掲載枠が作る「横並び」
弁護士を探す人向けのポータルサイトは、相談者にとって便利な入口です。地域と分野を選べば、複数の事務所が一覧で表示されます。
ただ、その一覧で事務所が見せられる情報は限られています。事務所名、所在地、取扱分野のアイコン、代表弁護士の写真、そして解決事例の見出しが数件。
どの事務所も同じ枠の中に収まるので、相談者には違いが見えにくくなります。
掲載枠の形式に慣れると、事務所の側も「この枠を埋めるもの」がホームページの中身だと考えるようになります。取扱分野を増やし、解決事例を増やし、経歴を整える。
ポータルの掲載ページを大きくしたようなサイトが、こうして増えていきます。
さらに、ポータルから来る相談者は、最初から複数の事務所を比べるつもりで一覧を見ています。一覧の中で差が見えなければ、判断の材料は立地と費用の印象くらいしか残りません。
制作会社のひな形が、士業全般の定番構成になっている
事務所のホームページを制作会社に頼むと、士業向けのひな形をもとに作られることが多くあります。トップに事務所の外観か代表の写真、その下に「選ばれる理由」、取扱分野、解決事例、費用、事務所概要、アクセス、お問い合わせ。
この並びは、税理士事務所や司法書士事務所でもほぼ同じです。
ひな形が悪いわけではありません。必要な情報は一通りそろっています。
問題は、並び順が事務所の都合で決まっている点です。事務所が伝えたい順に並んでいて、相談者が不安を感じる順には並んでいない。
最初の電話をかける直前に知りたい「この先生は話しやすいか」「連絡は返ってくるか」が、ページの奥か、どこにも無いところに置かれています。
| ひな形の定番要素 | 置かれている位置 | 相談者が知りたい順番 |
|---|---|---|
| 事務所の外観写真 | 最初の画面 | 後回しでよい |
| 選ばれる理由 | 最初の画面の下 | 規制上、書ける内容が限られる |
| 取扱分野の一覧 | 中段 | 自分の悩みが対象か、早めに知りたい |
| 相談の流れ | 下段か、別ページ | 最初の画面の近くで知りたい |
| 連絡の目安 | 書かれていないことが多い | 依頼後の不安の中心 |
右端の列を見ると、相談者が早く知りたいものほど、ひな形では後ろに置かれていることが分かります。
広告代理店が「件数」で成果を測る
リスティング広告やポータルの有料枠を広告代理店に任せると、成果は多くの場合「問い合わせ件数」で報告されます。件数は分かりやすい指標ですが、弁護士業務にとって大切なのは、受任につながる相談かどうかです。
件数を増やすいちばんの近道は、広い言葉で広告を出し、入口のハードルを下げることです。「無料相談」「すぐに相談」といった言葉で入口を広げれば、件数は増えます。
一方で、受任につながらない相談や、事務所の取扱分野から外れた相談も増えます。先生の時間は、そうした相談の対応で埋まっていきます。
指針には、しかるべき相談体制が整っていないのに直接対応してもらえると誤解させる表現の例として、「24時間365日相談対応」が挙げられています。
弁護士が1人しかいない事務所で、常時電話で直接対応できるかのように書く場合です。件数を追う広告の文言は、こうした表現と隣り合わせになりやすい点にも注意が必要です。
紹介に頼ってきた事務所が見落としていること
独立前の人脈から紹介が続いている事務所ほど、ホームページを「名刺代わり」と考えがちです。紹介された人は事務所の名前をすでに知っているので、サイトは所在地と連絡先が分かれば足りる、という考え方です。
ところが、紹介された人もまた迷っています。知人から名前を聞いたとしても、その先生に自分の悩みを話してよいのか、費用はどのくらいの仕組みなのか、紹介者の手前で断りにくくならないか。
紹介された人ほど、こうした気遣いを抱えています。名刺代わりのサイトでは、その気遣いに答えられません。
紹介が途切れたときに困るのは、こうして紹介の受け皿を整えてこなかった事務所です。
事務所の側から見えにくい、相談者の比べ方
事務所の側からは、相談者がどのように比べているかが見えにくいものです。相談者は、検索結果に並んだ事務所のサイトを3つか4つ開き、それぞれの最初の画面だけを見比べて、残す事務所を決めていきます。
最初の画面で「自分の悩みを扱っていそうか」「話しやすそうか」が分からなければ、その事務所は候補から外れます。
事務所の側から見ると、相談者は一度サイトを訪れたのに、何も言わずに去っていったことになります。問い合わせフォームにも電話にも記録が残らないので、何が理由で外されたのかは分かりません。
多くの事務所が「アクセスはあるのに相談が来ない」と感じる背景には、この見えない比べ方があります。最初の画面で外されないことが、すべての施策の前提になります。
規制が「横並び」を強める仕組み
弁護士の広告規制は、相談者を守るための大切なルールです。そのうえで、集客の面から見ると、規制は事務所どうしの横並びを強める方向に働きます。
比較と専門の表示が控えられている
規程では、特定の弁護士や事務所と比較した広告が禁じられています。指針はさらに、専門分野の表示について次のように述べています。
「客観性が担保されないまま専門家、専門分野等の表示を許すことは、誤導のおそれがあり、国民の利益を害し、ひいては弁護士等に対する国民の信頼を損なうおそれがあるものであり、表示を控えるのが望ましい」
一般の商売なら「地域で一番」「専門店」と打ち出せるところを、弁護士は使えないか、使うべきでないとされています。そのため、どの事務所も「得意分野」「取扱分野」「積極的に取り組んでいる分野」といった言葉に落ち着きます。
指針自体も、豊富な経験が無いが取り扱いたい分野については「積極的に取り組んでいる分野」と表示することが望ましいとしています。
同じ言葉が並ぶと、相談者は何で選ぶか
言葉が横並びになると、相談者に残る判断材料は、言葉以外のものになります。写真の雰囲気、ページの読みやすさ、そして最初の電話やメールへの反応です。
| 相談者が比べるもの | 規制との関係 | 事務所が工夫できる余地 |
|---|---|---|
| 専門性の表示 | 控えるのが望ましいとされる | ほとんど無い |
| 他事務所との比較 | 禁じられている | 無い |
| 解決事例 | 架空や脚色は禁じられる | 事実を丁寧に書く余地はある |
| 相談の流れと連絡の目安 | 事実を書く限り問題になりにくい | 大きい |
| 先生ご本人の言葉 | 誇大な表現を避ければ書ける | 大きい |
表の下の2行が、この記事で扱う領域です。規制の内側で、事実を書くほど差がつく。
ここに手を付けている事務所は、まだ多くありません。
相談者の「分からない」は、規制では消えない
規制は、事務所が相談者を誤解させることを防ぎます。けれども、相談者の「どの先生に頼めばいいか分からない」という迷いまでは消してくれません。
その迷いに答えるのは、事務所自身の仕事です。
Q&Aサイトで「誰に頼んでも同じなのか」と尋ねていた相談者に必要なのは、この事務所に連絡したら次に何が起きるのかという具体的な見通しです。その見通しを、相談者が迷う順番に並べて見せることが、事務所サイトの本来の役割になります。
相談が増えないときに選ばれがちな遠回り
紹介以外の相談が伸びないとき、多くの事務所が次の4つのどれかに手を伸ばします。どれも一定の効果はありますが、相談者の迷いに答えていないまま進めると、手間と費用のわりに受任が増えない、という結果になりやすいものです。
それぞれの中身と、行き着きやすい結末を見ていきます。
遠回り1 リスティング広告の予算を増やす
検索広告は、今まさに弁護士を探している人に届く手段です。予算を増やせば表示回数が増え、クリックも増えます。
ここまでは確かです。
問題は、クリックした相談者が着地するページです。広告の文言で「相談しやすさ」を打ち出していても、着地したページが取扱分野の一覧と経歴だけだと、相談者は電話をかける前に迷い始めます。
迷った相談者は、ブラウザの戻るボタンで検索結果に戻り、次の事務所の広告を押します。広告費は、迷わせたまま他の事務所へ送り出すために使われることになります。
予算を倍にしても、着地したページで迷う割合が同じなら、電話の数は倍にはなりません。先に直すべきは、広告の予算より、着地したページで相談者が迷う場所のほうです。
さらに、広告の文言を強くして入口を広げると、取扱分野から外れた相談も入ってきます。事務所で受けられない相談の電話に、先生や事務員の時間が取られていきます。
件数だけを見ると成果が出ているように見えるので、この状態に気づくのが遅れがちです。
遠回り2 ポータルサイトの有料枠を増やす
ポータルサイトで上位に表示される枠を買えば、一覧の上のほうに事務所が出ます。相談者の目に留まる回数は増えます。
ただ、ポータルの一覧は、もともと比べるための画面です。上位に出ても、相談者は下の事務所とも見比べます。
比べる材料がどの事務所も似ていれば、決め手は立地や費用の印象になり、有料枠の効果は思ったほど伸びません。
もう1つの問題は、ポータル経由の相談が増えるほど、事務所の集客がポータルの仕組みに左右されるようになることです。掲載料の改定や、表示ルールの変更があるたびに、相談の数が揺れます。
自分の事務所の入口を、他社の画面に預けている状態です。
遠回り3 取扱分野を増やして「何でも受ける」形にする
相談を増やしたいとき、取扱分野を増やすのは自然な発想です。離婚、相続、交通事故、債務整理、労働問題、企業法務、刑事事件と並べれば、どの悩みを持つ人にも当てはまりそうに見えます。
ところが、相談者の側から見ると、一覧が長い事務所ほど「自分の悩みに本当に詳しいのか」が分からなくなります。7つの分野が同じ大きさで並んでいると、どれも同じくらいの熱量で扱っている印象になり、決め手になりません。
指針が専門分野の表示を控えるよう求めている以上、「この分野に強い」とはっきり書くことも難しい。そうなると、分野を増やすほど、事務所の輪郭はぼやけていきます。
遠回り4 解決事例を増やし、結果を大きく見せる
解決事例は、相談者にとって参考になる情報です。事務所としても、実績を見せられる数少ない場所なので、つい増やしたくなります。
気をつけたいのは、見せ方です。指針は、事実に合致していない広告の例として、架空の事例を記載することに加えて、「表示されたとおりの解決ができなかった事例を脚色して記載すること」も挙げています。
また、誤導のおそれのある表現として、他の事件の結果を例に挙げて、同じような結果をもたらすと思わせる表現も示されています。
結果を大きく見せようとするほど、この線に近づいていきます。
加えて、相談者は他人の結果を読んでも、自分の場合に何が起きるかは分かりません。結果の大きさより、相談の最初に何を聞かれ、どんな順番で進んだのかが書いてある事例のほうが、相談者の迷いを減らします。
無料相談を入口にするときの落とし穴
入口の壁を下げるために、初回の相談を無料にする事務所は少なくありません。相談者の心理的な負担を下げる工夫として、それ自体は理にかなっています。
気をつけたいのは、無料という言葉だけが前に出て、その後の流れが見えない場合です。相談者の中には「無料のあとに何が起きるのか」を警戒する人もいます。
相談したら依頼を断りにくくなるのではないか、帰り際に契約を迫られるのではないか。無料を打ち出すなら、あわせて「相談のあと、その場で依頼を決める必要はありません」「費用が発生する前に、必ず書面でご説明します」と書き添えておくと、無料という言葉が安心として届きます。
また、無料相談の枠を広げすぎると、先生の時間が相談対応で埋まり、受任した依頼者への連絡が後回しになります。無料相談は、時間と枠を決めたうえで、事務所が無理なく続けられる形で設けてください。
4つの遠回りの共通点
4つの遠回りを、かけるものと、一時的に増えるものと、残らないものに分けて並べてみます。
| 遠回り | かけるもの | 一時的に増えるもの | 残らないもの |
|---|---|---|---|
| 広告予算を増やす | 毎月の広告費 | クリックと電話 | 着地ページでの安心感 |
| ポータルの有料枠 | 掲載料 | 一覧での表示回数 | 事務所独自の入口 |
| 取扱分野を増やす | 分野ごとのページ作成 | 当てはまる相談者の幅 | 事務所の輪郭 |
| 解決事例を増やす | 執筆と確認の手間 | 実績の見た目 | 自分の一歩目の見通し |
右端の列は、どれも相談者が電話をかける直前に必要としているものです。4つの遠回りは、入口を広げたり、見た目を厚くしたりしますが、電話をかける直前の迷いには手を付けていません。
遠回りを続けた事務所で起きやすいこと
遠回りを1年ほど続けた事務所で起きやすい変化を、時期ごとに整理しておきます。
| 時期 | 事務所の中で起きていること | 見えてくる兆し |
|---|---|---|
| 最初の3か月 | 広告とポータルで電話が増える | 件数の報告に手応えを感じる |
| 4か月目から6か月目 | 取扱分野外の相談と、比較中の相談が増える | 相談の割に受任が伸びない |
| 7か月目から9か月目 | 相談対応で先生の時間が埋まる | 依頼者への連絡が遅れがちになる |
| 10か月目から12か月目 | 口コミに連絡の遅さが書かれる | 紹介と新規の両方が鈍る |
最後の段は、冒頭のQ&Aサイトで見た「連絡が来ない」という相談とつながっています。相談の件数を追うほど先生の時間が削られ、依頼者への連絡が遅れ、その体験が口コミとして残る。
件数を増やすための施策が、回り回って選ばれにくさを生むことがあります。
4つの遠回りに共通する思い込み
4つの遠回りの根っこには、同じ思い込みがあります。「相談者は、事務所を知りさえすれば連絡してくる」という思い込みです。
この考え方に立つと、知ってもらう回数を増やすこと、つまり広告、ポータル、分野、事例を増やすことに力が向かいます。
実際には、相談者は事務所を知ったあとも長く迷っています。知ってもらう回数を増やしても、迷いが晴れなければ連絡は来ません。
知ってもらう施策と、迷いを晴らす施策は、別のものとして考える必要があります。そして、迷いを晴らす施策の中心にあるのが、事務所のホームページの最初の画面です。
件数の代わりに見ておきたい指標
広告代理店の報告が件数中心になりやすいことは前に触れました。事務所の中では、件数とあわせて次の指標を月に1度見ておくと、遠回りに早く気づけます。
どれも特別な道具は要らず、相談の記録簿があれば数えられるものです。
| 指標 | 数え方 | 読み方 |
|---|---|---|
| 取扱分野内の相談の割合 | 相談のうち、事務所で受けられる分野のものを数える | 下がっているなら、入口の文言が広すぎる |
| 相談から受任までの割合 | 初回相談のうち、受任に至った件数を数える | 下がっているなら、比べる前提の相談が増えている |
| 初回の折り返しまでの時間 | 問い合わせから最初の連絡までの時間を記録する | 延びているなら、相談対応で手が回っていない |
| サイトを読んで来た相談の数 | 最初の連絡で「サイトを読んで」と言われた件数 | 増えているなら、サイトが迷いに答え始めている |
4つ目の指標は、件数の報告には表れません。けれども、事務所のサイトが相談者の迷いに答えているかどうかを最も素直に表す数字です。
相談の「中身」を記録してみる
遠回りに入っているかどうかを確かめる簡単な方法があります。最初の電話やメールで、相談者がどんな言葉を使っているかを1か月だけ記録してみてください。
「無料で聞けるところを探している」「何件か当たっている」という言葉が多いなら、比べる入口から来る相談が中心です。「ホームページで先生の説明を読んで」「相談の流れが書いてあったので」という言葉が出てくるなら、事務所のサイトが相談者の迷いに答え始めている証拠です。
後者の言葉が増えていくことを、件数とは別の目安にしてください。
売れるサイトはみな謙虚という考え方を事務所サイトに当てはめる
ここからは、事務所のホームページをどう直すかを具体的に見ていきます。土台にするのは、合同会社謙虚が「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいる考え方です。
売れるサイトはみな謙虚、という言葉の意味は3つにまとめられます。事務所の自慢を前に出すより、相談者の迷いに先回りして答えること。
相談者を主役にして、事務所は案内役に回ること。そして、足すより先に引き算をすること。
この考え方は、弁護士の広告規制とよく噛み合います。規制が控えるよう求めているのは、誇大な表現、他との比較、根拠の薄い専門の表示でした。
謙虚なサイトは、そもそもそうした自慢で勝負しません。事実を、相談者の迷う順に並べることで勝負します。
規制の内側で差をつけるには、この方向がいちばん素直です。
相談者の迷いの順番に、トップページを並べ替える
最初にやるのは、相談者が電話をかけるまでに抱く迷いを、順番どおりに書き出すことです。事務所ごとに細部は違いますが、おおむね次のような順番になります。
| 迷いの順番 | 相談者の心の中 | トップページで答える場所 | 載せる中身 |
|---|---|---|---|
| 1 | 自分の悩みは弁護士に相談することなのか | 最初の画面 | よく受ける相談の例を3つほど、相談者の言葉で |
| 2 | この先生は話しやすいか | 最初の画面 | 先生ご本人の写真と、最初の相談での進め方を一言 |
| 3 | 連絡したら次に何が起きるか | 最初の画面のすぐ下 | 問い合わせから受任までの流れと、連絡の目安 |
| 4 | 費用はどういう仕組みか | 流れの次 | 何に費用がかかり、いつ書面で説明するか |
| 5 | この事務所で大丈夫か | 後半 | 経歴、事務所の取り組み、事実に基づく事例 |
経歴と事例は消しません。5番目に移します。
多くの事務所サイトで最初に置かれている情報を、相談者の迷いが一段落したところへ下げる。この並べ替えが、引き算の最初の一手です。
相談者の言葉は、過去の相談記録から集める
相談例を書くとき、机の上で考えると、どうしても法律用語に引っぱられます。いちばん確かな材料は、過去の相談の記録です。
最初の電話やメールで、相談者がどんな言葉で悩みを語っていたかを振り返ってみてください。「どうしたらいいか分からない」「このままで大丈夫なのか」「相手と直接話したくない」。
こうした言葉は、同じ悩みを持つ次の相談者が検索窓に打ち込む言葉とも重なります。
記録から10件ほど言葉を拾い、個人が特定されないように言い回しを整えれば、相談例の材料は十分にそろいます。事務員の方が電話を受けたときにメモしている言葉も、貴重な材料になります。
連絡してから受任までの流れを1枚の図で見せる
3番目の「連絡したら次に何が起きるか」は、文章より図のほうが伝わります。下の図は、その一例です。
図の本体は、矢印の上に書いた小さな約束です。「目安を明記」の部分には、実際に守れる折り返しの目安を書きます。「当日中」が難しければ「翌営業日の正午まで」でかまいません。指針が誤解を招く例として挙げていた「24時間365日相談対応」のような、体制を超えた約束は書かないでください。守れる範囲の約束を、正直に書くことが前提です。
流れの図を作るときは、箱の数を4つか5つに抑えてください。実際の手続きはもっと細かく分かれていますが、相談者が最初に知りたいのは大まかな順番です。
細かい手続きは、初回相談で口頭と書面で説明すれば足ります。図の中に専門用語が入る場合は、「受任」を「依頼するか決める」と言い換えるなど、相談者の言葉に直しておきます。
図の下には、事務所の実際の体制に合わせて、窓口になる人の名前を添えます。先生が1人の事務所なら「最初のお電話は事務の誰々がお受けし、その日のうちに先生から折り返します」のように書きます。
誰が何をするのかが具体的に書いてあるほど、相談者は電話の場面を思い描きやすくなります。
右端の「持ち帰ってもよい」という一言も大切です。初回相談のあとに、その場で依頼を決めなくてもよいと分かっていれば、相談者は電話をかけやすくなります。
売り込まれるのではないかという不安を、先に取り除いておく役割があります。
先生ご本人の言葉は「実績」より「進め方」を書く
代表の先生の紹介では、経歴に加えて、最初の相談をどう進めるかを本人の言葉で書き添えます。相談者が知りたいのは、この先生の前で自分がどう振る舞えばよいかです。
| 書く項目 | 書き方の例 | 相談者に伝わること |
|---|---|---|
| 最初に聞くこと | まず、いちばん困っていることから順にお話しください | 話がまとまっていなくても大丈夫だ |
| 持ってきてほしいもの | 手元にある書類やメッセージの記録があれば、そのままお持ちください | 準備の不安が減る |
| 相談の中でやること | 取れる手段を並べて、それぞれの見通しと負担をお伝えします | 押し付けられずに選べる |
| 依頼しなくてもよい場面 | 先生が入らなくても解決できそうなときは、そうお伝えします | 正直な人だと感じる |
4行目の「依頼しなくてもよい場面」は、謙虚なサイトの考え方がいちばん表れる部分です。規制は誇大な期待を抱かせる広告を禁じていますが、この一文はその逆で、期待を正確な大きさに整えます。
相談者には誠実さとして伝わります。
取扱分野は「絞って、相談例を添える」
取扱分野は、すべて並べる代わりに、事務所として力を入れている分野を2つか3つに絞って前に出します。専門と書くことは控えるとしても、指針が問題ないとしている「得意分野」や「積極的に取り組んでいる分野」という言葉は使えます。
そのうえで、それぞれの分野に相談者の言葉で相談例を添えます。「相続」とだけ書くより、「親が亡くなり、兄弟で実家をどうするか話がまとまらない」と書いたほうが、相談者は自分のことだと気づきます。
力を入れていない分野は、ページの下のほうに一覧でまとめておけば十分です。
相談例の書き方の見本
相談例は、法律用語を使わずに、相談者が家族や友人に話すときの言葉で書きます。書き方の違いを並べておきます。
| 分野 | 法律用語で書いた場合 | 相談者の言葉で書いた場合 |
|---|---|---|
| 相続 | 遺産分割協議に関するご相談 | 兄弟で実家をどうするか話がまとまらない |
| 離婚 | 財産分与と親権に関するご相談 | 離婚を考えているが、子どもと家のことが心配 |
| 労働問題 | 未払い残業代請求のご相談 | 残業代が払われていない気がするが、証拠があるか分からない |
| 企業法務 | 契約書のリーガルチェック | 取引先から届いた契約書にそのまま判を押してよいか不安 |
右の列の書き方なら、相談者は自分の悩みと同じ言葉を見つけて「ここに相談してよいのだ」と気づけます。法律用語での分類は、その下に小さく添えておけば十分です。
費用は「金額表」より「仕組みと説明の時期」
費用のページは、細かい表を載せるだけで終わらせないようにします。相談者が知りたいのは、最初の相談でどこまで費用がかかり、依頼するときにはいつ、どんな形で説明を受けられるのかという仕組みです。
指針は、報酬について曖昧又は不正確な表現を誤導のおそれがある例として挙げています。費用を安く見せる言葉で入口を広げるより、「受任の前に、見積もりを書面でお渡しし、ご納得いただいてから契約します」と手順で説明するほうが、規制の面でも、相談者の安心の面でも筋が通ります。
解決事例は「結果」より「最初の一歩」を中心に
解決事例は、結果の大きさを強調する書き方を避け、相談の最初に何が起きたかを中心に書き直します。どんな悩みで相談が来たのか、初回の相談で何を確認したのか、どんな選択肢を示したのか、相談者は何を決めたのか。
この順番で書けば、事実から外れずに、相談者が自分の一歩目を思い描ける事例になります。
もちろん、依頼者の許可と守秘義務への配慮が前提です。個人が特定されないよう、事情を一般化したうえで書いてください。
企業からの相談を増やしたい事務所の場合
ここまでは個人の相談者を中心に書いてきました。企業法務や顧問契約を増やしたい事務所でも、考え方は同じです。
ただ、企業の担当者が迷うポイントは少し違います。
企業の担当者が確かめたいこと
企業の担当者は、社内で稟議を通す立場にいることが多く、上司に説明できる材料を探しています。相談しやすい人柄に加えて、どんな業種の相談を受けてきたか、連絡の窓口はどうなるか、顧問契約で何をどこまで頼めるのか、といった点を確かめます。
| 担当者の迷い | 事務所サイトで答える場所 | 載せる中身 |
|---|---|---|
| 自社の業種の相談を受けてもらえるか | 企業向けページの冒頭 | 相談を受けてきた業種と、よくある相談の例 |
| 社内でどう説明すればよいか | 企業向けページの中段 | 顧問契約で頼める範囲と、頼めない範囲 |
| 急ぎの相談にどう対応してもらえるか | 流れの図の近く | 連絡の窓口と、急ぎの場合の連絡方法 |
| 契約の前に何が決まるか | 費用の仕組みのページ | 範囲と費用を書面で示す時期 |
企業向けページも「頼めない範囲」を書く
企業向けのページでも、頼めない範囲を書いておくことが信頼につながります。たとえば、事務所の体制では対応が難しい分野や、他の専門家と連携して進める分野を正直に書いておく。
担当者は、社内で説明するときに「ここまでは頼める、ここから先は別に手配する」と言えるようになり、稟議が通りやすくなります。
地図アプリの口コミとの向き合い方
冒頭の相談者は、地図アプリの口コミで事務所を選んでよいか迷っていました。相談者の多くが口コミを参考にしている以上、事務所としても無視はできません。
ただし、口コミの扱いには注意が必要です。
口コミの数を増やすより、返信で人柄を見せる
指針は、お客様の声として、実在の依頼者が関与していない文章を載せることを、事実に合致していない広告の例に挙げています。口コミを集めるために事務所が文章を用意したり、依頼者以外に書いてもらったりすることは避けてください。
事務所ができることは、書かれた口コミに誠実に返信することです。守秘義務があるので、事件の中身には触れられません。
それでも、丁寧な言葉で感謝を伝え、指摘があれば改善の姿勢を示すことはできます。口コミを読む相談者は、点数と同じくらい、返信の文面から事務所の人柄を読み取っています。
連絡の遅さを指摘されたときは、サイトの約束を見直す
口コミで連絡の遅さを指摘されたら、それは事務所サイトの約束を見直す合図です。書いてある目安が実態に合っていないのか、窓口の分担が曖昧なのか。
原因を確かめて、守れる目安に書き直すか、体制を整えます。口コミへの返信で謝るだけで終わらせず、サイトの約束まで直すことで、次の相談者の不安が減っていきます。
引き算で残すものと外すもの
トップページで残すものと外すものを分けておきます。
| 区分 | 具体的な要素 | 理由 |
|---|---|---|
| 最初の画面に残す | 相談例、弁護士の写真と一言、流れの図、連絡先 | 迷いの1番目から3番目に直結する |
| 下の段に移す | 経歴、所属、取扱分野の全一覧、事務所の理念 | 大切だが、電話の前に最初に知りたいことではない |
| 外してよい | 意味の薄い装飾写真や、抽象的な標語 | 最初の画面で相談例と流れを埋もれさせる |
| 書かない | 体制を超えた対応の約束、結果を大きく見せる表現 | 規制に触れるうえ、相談者の信頼も損なう |
足すより外すほうが勇気がいります。それでも、最初の画面で伝えることを絞ると、残った相談例と弁護士の言葉と流れの図が、相談者の目にはっきり入るようになります。
紹介の受け皿としての事務所サイト
ここまでの話は、検索や広告から来る相談者を想定していました。けれども、独立して間もない事務所にとって、いちばん大きな入口は今も紹介のはずです。
以前の依頼者、知人、他の士業の先生、取引先の経営者。紹介はありがたい入口ですが、紹介された人もまた、電話をかける前に事務所のホームページを確かめます。
紹介した人は、たいてい「話をよく聞いてくれる先生だった」「連絡がきちんとしていた」と人柄や対応を伝えています。紹介された人がホームページを開いたとき、そこに先生ご本人の言葉と、相談の流れと、連絡の目安が書いてあれば、紹介者の言葉がそのまま裏付けられます。
経歴と取扱分野の一覧しか無ければ、紹介の熱は一段下がってしまいます。
謙虚なサイトへの直しは、新しい相談者のためだけの作業ではありません。紹介という事務所のいちばん太い入口を、取りこぼさないための作業でもあります。
依頼が終わった後の約束も書いておく
事件が終わった後の連絡についても、ホームページに書いておくと役に立ちます。たとえば相続の手続きが終わった依頼者に、「翌年の確定申告の時期に、気になることがないか一度ご連絡します」と約束しておく。
企業の依頼者であれば、「契約書の見直しの時期に、ご案内をお送りします」と書いておく。
こうした小さな約束は、依頼者の記憶に事務所を残します。次に困りごとが起きたとき、あるいは知人から相談を受けたとき、最初に思い出してもらえる事務所になります。
他の士業からの紹介を受けやすくする
税理士、司法書士、社会保険労務士といった他の士業の先生からの紹介も、事務所にとって大切な入口です。紹介する側の先生は、自分の顧客を安心して任せられるかどうかを見ています。
紹介した顧客から「連絡が遅い」と言われれば、紹介した先生の信用にも傷がつくからです。
紹介する側の先生が安心できるように、事務所サイトには、紹介を受けたときの進め方も書いておくとよいでしょう。紹介者への報告をどうするか、顧客の同意を得たうえで経過を共有するのか。
こうした手順が見えていると、他の士業の先生は紹介しやすくなります。
今日からできる点検
ここまでの内容を、今日のうちに事務所のホームページを開いて確かめられる形にまとめました。上から順に確かめて、最初に「いいえ」になった行が、最初に直す場所です。
| 点検する場所 | 確かめること | いいえだった場合に今日やること |
|---|---|---|
| トップの最初の画面 | 相談者の言葉で書いた相談例があるか | よく受ける相談を3つ、相談者が言いそうな言葉で書き出す |
| トップの最初の画面 | 先生ご本人の写真と、相談の進め方の一言があるか | 最初の相談で何から聞くかを2文で書く |
| 最初の画面のすぐ下 | 問い合わせから受任までの流れがあるか | 4段階の流れと、守れる折り返しの目安を書く |
| 費用のページ | 費用の仕組みと、書面で説明する時期が書いてあるか | 受任前に見積もりを書面で渡す手順を1段落で書く |
| 問い合わせフォームの上 | 送ったあと誰から、いつ連絡が来るか書いてあるか | 窓口の名前と目安を1行足す |
| 広告の文言 | 体制を超えた対応や、結果を約束する表現が無いか | 該当する文言を外し、所属弁護士会の窓口で確認する |
6行すべてを一度に直す必要はありません。1週間に1行ずつ進めれば、1か月半で最初の画面の役割が入れ替わります。
広告の文言の行だけは、規制に関わるので、気づいた時点で早めに手を付けてください。
ホームページ以外の入口にも同じ約束を置く
事務所のサイトを直したら、同じ約束をほかの入口にもそろえておきます。相談者は複数の入口を行き来しながら迷っているので、入口ごとに言っていることが違うと、かえって不安が増えるからです。
ポータルの掲載ページと広告の文言
ポータルサイトの掲載ページにも、相談の流れと連絡の目安を同じ言葉で書いておきます。掲載枠の中で書ける文字数は限られていますが、「初回相談のあと、その場で依頼を決める必要はありません」という一文だけでも、一覧の中で目に留まるきっかけになります。
広告の文言も、サイトの約束と食い違わない範囲にそろえてください。
電話の最初のひと言
電話に出る事務員の方の最初のひと言も、サイトの約束と合わせておきます。サイトに「最初に、いちばん困っていることから伺います」と書いたなら、電話でも同じ順番で話を聞く。
サイトに書いた折り返しの目安を、電話口でも伝える。サイトで読んだとおりのことが電話でも起きると、相談者は「書いてあったとおりの事務所だ」と感じ、信頼が一段深まります。
冒頭の相談者にとって、何が助けになるか
冒頭のQ&Aサイトの相談者は、「弁護士は誰に頼んでも同じなのか」「口コミで決めてよいのか」と迷っていました。この迷いに対して、事務所ができることは、他の事務所より優れていると主張することとは別のところにあります。
相談者の立場で、自分の悩みがこの事務所の相談例に書いてあり、先生がどんなふうに話を聞いてくれるかが分かり、電話をしたら何が起きるかが分かる。
そこまで見えていれば、相談者は口コミの点数だけに頼らずに、自分で選ぶことができます。相談者が自分で選べる材料を渡すことが、事務所にとってのいちばん誠実な集客になります。
事務所の側にとっての利点
相談者が自分で選べる材料を渡すことは、事務所の側にも利点があります。サイトを読んで流れや費用の仕組みを理解したうえで連絡してくる相談者は、初回相談での説明に時間がかかりません。
事務所の取扱分野や進め方に納得して来ているので、受任に至る割合も上がりやすくなります。
反対に、何も分からないまま比べる前提で来た相談者には、初回相談の多くを基本的な説明に使うことになります。サイトで先に答えておけることを答えておくのは、先生の時間を守ることにもつながります。
1件の相談にかける時間が減れば、そのぶん依頼者への連絡に時間を回せます。連絡がきちんと返ってくる事務所という評判は、こうした時間の使い方から生まれていきます。
よくある質問
Q. 顔写真を載せると、かえって依頼が減ることはありませんか
写真が不利に働くことは考えにくいです。相談者が不安に感じているのは「どんな人が相手なのか分からない」ことなので、写真と一言があるだけで電話の前の壁は下がります。
写真の出来栄えにこだわる必要はなく、落ち着いた表情で相談者のほうを向いた写真であれば十分です。
Q. 取扱分野を絞ると、ほかの相談が来なくなりませんか
絞るのは最初の画面で前に出す分野だけです。その他の分野は、ページの下に一覧で残しておけば、必要な相談者はたどり着けます。
前に出す分野を絞ることで、その分野で悩む相談者が「ここは自分の悩みを扱っている」と気づきやすくなり、結果として相談の質が上がります。
Q. 連絡の目安を書くと、守れなかったときに問題になりませんか
守れる範囲の目安を書くことが大前提です。「当日中」が難しければ、「翌営業日の正午までに」「2営業日以内に」と余裕を持たせてかまいません。
目安が書いてあること自体が相談者の安心につながるので、短さを競う必要はありません。万が一遅れる場合の連絡方法も添えておくと、より丁寧です。
Q. 解決事例はどこまで書いてよいのでしょうか
依頼者の許可を得たうえで、個人が特定されない形に事情を一般化し、事実に合致した範囲で書くことが基本です。結果の大きさより、相談の最初に何を確認し、どんな選択肢を示したかを中心に書くと、規制の面でも、相談者の役に立つという面でも無理がありません。
表現に迷うときは、所属弁護士会の窓口に確認してください。
Q. ホームページを作り直さないと、この変更はできませんか
作り直しは要りません。今のトップページの最初の画面に、相談例と弁護士の一言と流れの図を足し、経歴や事務所の外観写真を下へ移すだけで始められます。
更新の仕組みが分からない場合は、制作を依頼した会社に「最初の画面の入れ替え」として頼めば、全面的な作り直しよりずっと小さな作業で済みます。
まとめ
弁護士の数が増え、相談者の選択肢は広がりました。けれども相談者は先生の力量を比べられないので、口コミの点数やホームページの印象、最初の電話の対応で事務所を選んでいます。
日本弁護士連合会の指針は、誇大な表現、他の事務所との比較、根拠の薄い専門の表示を控えるよう求めており、実力を前に出すほど、どの事務所も似た言葉に落ち着いていきます。
差がつくのは、力量の手前にある部分です。相談者の言葉で書いた相談例、先生ご本人の言葉、問い合わせから受任までの流れと連絡の目安、費用の仕組みと説明の時期。
どれも事実をそのまま書けば伝わり、規制の内側で相談者の迷いを減らせる情報です。広告の予算を増やす前に、トップページの最初の画面を相談者の迷いの順番に並べ替えるところから始めてください。
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