記事の本数を増やしても問い合わせが増えない。こうした状態は、ブログという手段そのものの問題というより、検討の過程全体を設計しないまま1つの手段だけを続けていることから生じます。
コンテンツマーケティングは、買い手が判断するために必要な情報を、必要な順番で渡していく取り組みです。ブログはその入口を担う手段であり、入口の先に続きが用意されていなければ、読んだ人はそこで離れます。
この記事では、検討段階ごとに必要な情報の違い、ブログ以外に足すべき形式、既存の記事を作り直さずに増やす考え方、そして成果から逆算した設計手順を整理します。
記事を増やしても成果が伸びない構造
入口だけを広げても、出口につながらない
検索から記事にたどり着いた人の多くは、その時点ではまだ情報を集めている途中にあります。自分の状況を整理し、どのような選択肢があるのかを把握しようとしている段階です。この段階の人に申し込みだけを提示すると、判断は先送りされます。
記事を増やす取り組みは、入口を広げる作業にあたります。入口が増えれば訪問者は増えますが、そこから先に進む道が用意されていなければ、訪問者数だけが増えて問い合わせは横ばいのままになります。
検討段階ごとに必要な情報は違う
課題に気づいた段階の人が知りたいのは、自分の状況に名前がつくことです。解決策を比べている段階では、選び方の基準を求めます。依頼先を決める段階では、進め方と費用、そして担当者の人柄を確認しようとします。同じ情報を全員に渡しても、どの段階の人にも過不足が生じます。
| 検討段階 | 読み手の状態 | 向いている形式 |
|---|---|---|
| 課題に気づく | 言葉にできていない不便を抱えている | 解説記事、用語の整理 |
| 解決策を知る | 方法がいくつかあることを知った | 比較記事、判断基準の整理、動画 |
| 依頼先を選ぶ | どこに頼むかを迷っている | 事例、進め方の説明、費用の考え方 |
| 社内で通す | 自分は納得したが、決裁者の承認が要る | 持ち出せる資料、チェックリスト |
| 決める | 最後の疑問を解消したい | 個別相談、質疑の場 |
抜けている段階を探す
自社のコンテンツを一覧にして、上の表のどの段階に該当するかを振り分けてみると、偏りが見えます。多くの場合、解説記事が大量にあり、比較検討と社内共有の段階が空白になっています。空白の段階が、離脱が起きている場所です。
ブログ以外にどの形式を足すか
メール:一度接点を持った相手に届く
記事が二度目に読まれるかどうかは、読み手が再び訪れるかどうかに委ねられます。メールは、こちらから接点を作り直せる数少ない手段です。資料の請求や相談をきっかけに連絡先を得て、その後も判断材料を届けます。
広告や宣伝を含むメールを送る際は、特定電子メール法により、あらかじめ送信への同意を得た相手に送ることが原則とされています。送信者の氏名や名称、受信拒否の連絡先を表示する義務もあります。名刺交換で得た連絡先をそのまま配信対象にしてよいかは、取得時の説明の内容によって変わるため、確認しておきます。
動画・音声:手順と人柄が伝わる
操作の手順や作業の進め方は、文章より映像のほうが短時間で伝わります。また、依頼先を選ぶ段階では、話している様子から受ける印象が判断に影響します。長時間の作品を作る必要はなく、よく聞かれる質問に数分で答える形から始められます。
資料:社内で共有される形
法人向けの取引では、担当者が社内で説明する場面があります。画面上で読むだけの情報は、会議の場に持ち出しにくい形です。検討に必要な内容をまとめた資料を用意しておくと、担当者はそれを添えて稟議を進められます。チェックリストや比較表のように、自社の状況を書き込める形にすると、より使われます。
説明会・個別相談:残った疑問を直接つぶす
文章と映像で伝えられる範囲には限りがあります。個別の事情に関わる疑問は、対話を通してはじめて解けます。少人数の説明会や個別の相談を用意しておくと、最後の段階で止まっていた人が動きます。ここで受けた質問は、そのまま次の記事の材料にもなります。
交流サイト:拡散よりも、既存の関係を保つ場として
交流サイトへの投稿は、多くの人に広がることを期待して使われがちです。実際に効果が安定するのは、すでに自社を知っている人との接点を保つ用途です。更新の告知、日々の仕事の様子、質問への短い回答といった投稿が、思い出してもらうきっかけになります。
投稿した内容は時間とともに流れていくため、蓄積が必要な情報は自社のサイトに置き、交流サイトはそこへの入口として使います。この役割分担を決めておくと、投稿のたびに何を書くか迷う時間が減ります。
1つの素材を、作り直さずに使い回す
形式を変えると届く相手が変わる
新しい形式を足すと聞くと、制作の負担が増えるように思えます。実際には、すでにある記事を別の形に置き換えるだけで済む場合が多くあります。同じ内容でも、読む人と見る人、聞く人は重ならないため、形式を変えるだけで届く範囲が広がります。
| 元の素材 | 置き換え先 | 主に届く相手 |
|---|---|---|
| 解説記事1本 | 要点をまとめた短い動画 | 文章を読む時間が取りにくい人 |
| よくある質問の記事 | 質疑形式の資料 | 社内で共有する必要がある人 |
| 手順を説明した記事 | 書き込み式のチェックリスト | 自分で進めたい人 |
| 複数の記事 | 順番に届くメール | すでに接点を持っている人 |
| 個別相談で受けた質問 | 新しい記事、説明会の題材 | 同じ疑問を持つ検討中の人 |
使い回す順番を決めておく
すべての記事を他の形式にする必要はありません。問い合わせにつながっている記事、検討段階の後半に対応する記事から順に置き換えます。訪問者数が多いだけの記事を先に手がけると、作業量のわりに変化が出ません。
成果から逆算して設計する手順
手順1:達成したい状態を1つに絞る
問い合わせを増やすのか、既存客との関係を保つのか、採用の応募を得るのか。目的が複数あると、判断のたびに基準が揺れます。期間を区切って1つに絞り、その期間の施策はその目的で評価します。
手順2:いまある接点を棚卸しする
記事、資料、メール、動画、対面の機会をすべて書き出し、検討段階に振り分けます。この作業で、空白の段階と、重複している段階が同時に見えます。重複しているものは、統合するか役割を分けます。
手順3:空白の段階を1つだけ埋める
空白がいくつも見つかっても、一度に埋めようとすると全部が中途半端になります。出口に近い段階から1つ選び、そこを埋めてから次に進みます。多くの場合、比較検討の段階を埋めると変化が早く出ます。
手順4:段階ごとに別の指標で測る
入口の記事を問い合わせ数で評価すると、成果が出ていない記事だと判断してしまいます。入口は訪問者数と次のページへの遷移、中間は資料の請求や動画の視聴、出口は相談の申し込みというように、担っている役割に合った指標で見ます。
| 担っている役割 | 見る指標 |
|---|---|
| 入口を広げる | 検索からの流入、次のページへ進んだ割合 |
| 判断材料を渡す | 資料の請求数、動画の視聴完了 |
| 社内で通してもらう | 資料の再ダウンロード、複数名からのアクセス |
| 決めてもらう | 相談の申し込み数、成約率 |
続けられる分担にする
素材を出す人と、形にする人を分ける
文章を書く作業を現場の担当者に任せると、本業が忙しい時期に止まります。現場が担うのは、事実と経験を話すところまでにして、文章や資料に整える作業は別の担当や外部に渡す。この分担にすると、素材の供給が途切れにくくなります。
更新の頻度を、維持できる水準に置く
週に何本という目標を先に決めると、内容の薄い記事で本数を満たす形になりがちです。月に1本でも、検討段階の空白を埋める内容であれば成果につながります。維持できる頻度を先に決め、その範囲で質を上げるほうが、長い期間で見たときの蓄積は大きくなります。
公開した後の手入れを予定に入れる
公開した記事は、時間とともに内容が古くなります。制度の変更や料金の改定があった箇所を放置すると、信頼を損なう要因になります。半年に一度、公開済みのものを見直す時間をあらかじめ確保しておくと、新規の制作と更新の両方が回ります。
よくある質問
人手が限られている場合、どこから手をつけるか
新しい形式を足す前に、すでに問い合わせにつながっている記事の先を整えます。その記事を読んだ人が次に何を知りたいかを考え、その内容へのリンクを1本置く。これだけで、既存の流入から取りこぼしていた人を拾えます。
動画や資料を作る予算が取れない場合は
最初から制作費をかける必要はありません。相談の場で使っている説明資料や、社内で使っている手順書を、外部向けに整えるところから始められます。すでに実務で使われているものは、内容の実用性が確かめられている点で有利です。
成果が出るまでにどのくらいかかるか
検索からの流入は、公開から数か月単位で積み上がります。一方、すでに接点のある相手へのメールや、既存記事への導線追加は、比較的短い期間で反応が出ます。長い時間がかかる施策と、短期で結果が見える施策を並行させると、途中で止まりにくくなります。
まとめ
コンテンツマーケティングの成果は、記事の本数ではなく、検討の過程に必要な情報がそろっているかで決まります。入口の記事、比較のための基準、社内で共有できる資料、疑問を解く対話。このどこかが空いていれば、そこで検討は止まります。
新しい形式を作る前に、いまある記事と資料を検討段階に振り分けてみてください。空白の段階が1つ見つかれば、次に何を作るべきかが決まります。
参考:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」関連情報
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