郵便受けにチラシが入る音は、配る側からは聞こえません。
聞こえるのは、配り終えた翌日の静かな電話です。
1,000枚か2,000枚を、足を棒にして配った。あるいは、配布業者にまとめて頼んだ。
それなのに、鳴らない。
ポスティング(チラシの各戸配布)をしたことのある店や事業所の方なら、この静けさに覚えがあるはずです。
この記事は、店舗や小さな事業所の経営者に向けて書いています。
整体院、飲食店、学習塾、リフォーム店、ハウスクリーニング、地域の工務店など、商圏が町や数駅に収まる商売が中心です。
チラシのデザインや、キャッチコピーの作り方は扱いません。
チラシの作り方は、チラシ集客の記事で書きました。
この記事で扱うのは、ポスティングという配り方そのものです。
反応率をどう考えるか、効果をどう測るか、どこへ何回配るか。
この3つに絞ります。
ポスティングの効果が分からない原因の多くは、配った記録が残っていないことにあります。
記録がなければ、効いたのか効かなかったのかを、誰も言い切れません。
あわせて、紙を受け取った人が次にとる行動も整理します。
チラシを見てすぐ電話をかける人は、実は少数派かもしれません。
スマートフォンを取り出し、店の名前を検索する人がいます。
その検索の先に何が出るかで、せっかく配った紙が問い合わせになるか、ならないかが分かれます。
数字は、官公庁が公表している資料のうち、原文を開いて確かめたものだけを使います。
業界でよく見る「反応率はおおよそ何パーセント」という数字は、公的な調査で裏が取れるものを見つけられませんでした。
そのため、この記事では断定して書きません。
読み終えたとき、次に配るチラシの束に挟む「記録の1枚」が決まっている。
それがこの記事のゴールです。
Q&Aサイトで見かけた、反応率の数字を信じてよいのかという相談
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
投稿されたのは2023年の暮れで、ポスティングの効果を調べている方からの質問でした。
ネットで調べると、反応率は0.01パーセントから1パーセントと書かれていた
質問者は、「ポスティング 効果」と検索して複数のサイトを読みました。
どのサイトにも、反応率の平均はおおよそ0.01パーセントから1パーセント程度と書かれていたそうです。
反応率は、反応した数を配った枚数で割って100を掛けるだけの計算です。
質問者はその単純さに引っかかりました。
自分も含め、大多数の人は郵便受けからまとめてゴミ箱へ入れているはずだと感じていたからです。
割合を出すだけの数字が、実態を表しているとは思えない
質問者の疑問は、次の1点に絞られていました。
配った枚数で割った割合は、本当に実態を映しているのか。
もしポスティングの効果を調べるなら、どんな方法を使えば実態に近づけるのか。
統計の考え方でも、チラシに載せたQRコードでも、工夫があれば教えてほしい。
そう結んで、質問は終わっています。
回答には、反応の定義と真偽が難しいと書かれていた
回答の1つは、計算式そのものは質問者の書いたとおりだと認めていました。
そのうえで、難しいのは「反応の定義」と「反応の真偽」だと指摘していました。
問い合わせがあれば反応なのか、購入まで進んで初めて反応なのか。
反応した人が、本当にそのチラシを見て動いたのかどうか。
この2点を測るのが難しい、という内容です。
私はこの回答を読んで、質問者の違和感はかなり正確だと感じました。
割合そのものは単純でも、分母と分子の中身が曖昧なまま計算されているからです。
この記事の前半は、その曖昧さを1つずつ潰していく作業にあてます。
反応率の数字は、商売ごとに答えが違う
質問者が見た「0.01パーセントから1パーセント」という幅は、100倍もあります。
幅がここまで広いと、自分の店に当てはめても何も言えません。
出どころの分からない平均値は、使い道がない
ポスティングの反応率には、業者や解説サイトごとにさまざまな「目安」が出回っています。
私も複数の解説を読みましたが、国や公的機関が全国のポスティングの反応率を調べて公表した資料は、見つけられませんでした。
つまり、サイトごとに数字が違うのは当然のことです。
調べた時期も、業種も、反応の定義も違うからです。
だからこの記事では、反応率の平均値を載せません。
載せないほうが、読者のためになるからです。
平均値を知っても、あなたの店の今日の判断は1つも変わりません。
比べる相手は自分の前回の結果にする
同じ町で、同じ商品を、同じチラシで配っても、地区が変われば結果は変わります。
配った時期が変われば、さらに変わります。
だから、比べる相手は自分の店の前回の結果です。
この考え方を、次の表にまとめます。
| 比べる相手 | 分かること | 使いやすさ |
|---|---|---|
| 世間の平均値 | 自分の位置が高いか低いかの印象だけ | 出どころ不明なので判断に使えない |
| 他店の結果 | 商売の近さによっては参考になる | 手に入らないことが多い |
| 自分の前回の結果 | 配り方を変えて良くなったか悪くなったか | 記録さえあれば毎回使える |
| 地区ごとの結果 | どの地区に配る価値があるか | 地区を分けて配れば使える |
下の2行が、この記事の中心になります。
反応が0件でも、判断はできる
反応が0件だった場合でも、記録が残っていれば判断材料になります。
「この地区に、この時期、この枚数を配って、0件だった」と言えるからです。
その事実が積み重なると、配らないほうがよい地区が見えてきます。
逆に記録がなければ、0件だったという印象だけが残り、ポスティング全体が失敗だったことになってしまいます。
ここまでが前提です。
次の節では、反応率の計算の中身を、分母から順に見ていきます。
反応率の分母は、配った枚数とは限らない
反応率は、反応した数を分母の数で割って求めます。
多くの人は、分母に「配った枚数」を入れます。
けれども、配った枚数と、実際に誰かの目に触れた枚数は、同じ数字ではありません。
配布業者の報告が示すのは、投函した枚数である
配布を業者に頼んだ場合、報告に書かれるのは「投函した枚数」です。
郵便受けに入れた事実の報告であって、読まれた枚数の報告ではありません。
この区別を知らないと、分母の数字を過大に見積もることになります。
自分で配る場合も同じです。
投函した枚数は数えられても、受け取った人がどうしたかまでは分かりません。
つまり、反応率の分母は、最初から「届いたかもしれない数」になっています。
配れなかった家と、届く相手が違う家がある
ポスティングでは、配布禁止のステッカーが貼られた家や、チラシお断りの掲示があるマンションを飛ばします。
飛ばした分は、配布枚数に含まれません。
一方で、配布した枚数の中にも、届く相手と届かない相手が混ざっています。
たとえば、家族向けの学習塾のチラシが、一人暮らしの部屋の郵便受けに入ることがあります。
厚生労働省が2025年6月に調査し、2026年7月に公表した「2025年国民生活基礎調査の概況」によると、全国の世帯総数は5505万8千世帯で、そのうち「単独世帯」は1947万7千世帯、全世帯の35.4%を占めています。
全国で見れば、およそ3世帯に1世帯が一人暮らしという計算になります。
子ども向けの教室や、家族で食べに行く店のチラシを無差別に配れば、3世帯に1世帯は、最初から対象外の家に入る可能性があります。
もちろん、この数字は全国の平均です。
商圏の町に当てはめると、学生街なら高く、郊外の戸建てが並ぶ地区なら低いでしょう。
だからこそ、自分の町の傾向を知ったうえで、配る地区を選ぶ意味があります。
分母を2つに分けると、見える景色が変わる
私は、分母を2つ並べて記録することをすすめています。
1つは「投函した枚数」。
もう1つは「配る相手として想定した世帯の数」です。
後者は、地図を見て、自分の商売の客になりそうな家だけを数えた数です。
厳密である必要はありません。
おおよその見当で足ります。
| 分母の種類 | 数え方 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 投函した枚数 | 配布の報告やメモに書かれた枚数 | 配った作業の量を知る |
| 想定した世帯数 | 客になりそうな家の概数 | 配る相手が合っていたかを知る |
| 反応のあった世帯数 | 問い合わせや来店の件数 | 結果を知る |
投函した枚数が多いのに想定した世帯が少なければ、配る場所が広すぎたということです。
反応の件数が同じでも、この見方をすると、次に絞る方向が見えてきます。
反応とは何を指すのかを、先に決めておく
質問者が引っかかったもう1つの点は、反応の定義でした。
何を数えるかを決めずに配ると、配ったあとで数字が揃わなくなります。
問い合わせ、来店、予約、購入のどこまでを数えるか
反応には、いくつもの段階があります。
電話がかかってきた。
店に来た。
予約をした。
商品を買った。
どの段階を成果にするかで、数字は大きく変わります。
飲食店なら、チラシのクーポンを持って来店した件数が分かりやすい基準です。
リフォーム店なら、見積もりの依頼が1件あれば、それだけで十分な成果になることがあります。
自分の商売で「ここまで来たら成功」と言える段階を、配る前に1つ決めてください。
成果の段階は、1つだけ主役にして、残りは補助にする
主役を決めたうえで、ほかの段階も記録しておきます。
主役を1つにするのは、判断をぶらさないためです。
補助の数字は、なぜ主役の数字が伸びないのかを考えるときの材料になります。
| 商売の例 | 主役にする成果 | 補助として記録する成果 |
|---|---|---|
| 整体院 | 初回の予約 | 電話の問い合わせ、来店 |
| 飲食店 | クーポンを持った来店 | 電話での席の問い合わせ |
| 学習塾 | 体験授業の申込 | 資料の請求、電話 |
| リフォーム店 | 見積もりの依頼 | 現地調査の相談 |
表のとおり、主役は商売ごとに違います。
どれが正解というものはなく、あなたが「お客様として会える段階」はどこかで決めます。
反応の真偽は、聞き方で変わる
質問者は、「弊社をどこで知りましたか」という問いに、適当に答える人が多いのではないかと書いていました。
私も、その懸念はもっともだと思います。
そこで、聞き方に工夫を入れます。
自由に答えてもらうより、選択肢を用意して選んでもらうほうが、答えが揃います。
選択肢には、チラシ、知人の紹介、検索、通りがかり、その他を並べます。
さらに、チラシ限定の割引や特典を用意すれば、特典を使った事実が記録になります。
中小企業基盤整備機構が運営する情報サイトのJ-Net21は、ポスティングの効果測定について次のように書いています。
「ポスティングを行うチラシに割引券をつけたり、チラシを持参することによる特典などを付与したりすることで、ポスティングによる具体的な反響を知ることができます。」
割引券や持参特典があれば、チラシ経由の反響が数字で分かります。
ただし、特典を使わない人もいます。
だからこの数字は、実際の反響の下限だと考えてください。
実際はそれより多いかもしれない。
そのくらいの余裕を持って読むのが、現実的な見方です。
同じ家に2回入ったチラシは、1件として数える
配る回数を増やすと、分母の数え方でも迷いが出ます。
同じ家に3回配ったとき、分母は3回分の枚数にするのか、1世帯として数えるのか。
私は、記録を2段に分けるやり方をすすめています。
1段目は、配った延べ枚数です。
2段目は、チラシを1枚でも入れた家の数です。
反応があったときは、何回目のチラシを見た人なのかを、可能なら聞き取っておきます。
ここまで残せば、「1回目より3回目のほうが反応が多い」といった傾向も、あとから確かめられます。
回数をかけて配る価値があるのかどうか。
その判断も、この記録がなければ、ただの勘になってしまいます。
紙を見た人が最初にすることは、電話とは限らない
ここからは、面談や問い合わせにつながる角度で書きます。
ポスティングの効果が見えにくい理由の1つは、紙を見た人の行動が、紙の上では完結しないことにあります。
郵便受けから台所のテーブルまで
チラシを手に取った人が、その場で電話をかけるとは限りません。
台所のテーブルに置いて、夕食の後に見返す。
家族に「ここ、どうかな」と見せる。
スマートフォンで、店の名前を調べる。
この流れのどこかで、気持ちが離れていくと、問い合わせは0件のままです。
つまり、配る側の失敗は、紙のあとの数十分に隠れていることがあります。
店名を検索したとき、何が出るか
総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査の結果では、スマートフォンを保有している世帯の割合は91.8%でした。
調査の要点には、「スマートフォンの保有状況について、世帯の保有割合が91.8%となり、引き続き9割を上回っている」と書かれています。
10世帯のうち9世帯以上にスマートフォンがあるのですから、チラシを見た人が店名を検索することは、特別な行動ではありません。
そのとき、検索結果に何が出るか。
地図に店が出るか。営業時間は合っているか。メニューや料金の案内は読めるか。
ここで情報が見つからなければ、人はそのまま閉じてしまいます。
チラシを見た人は、検索の先で、あなたの店を確かめにきています。
受け皿の作り方は、別の記事に譲る
検索した先の受け皿サイトの作り方は、チラシ集客で受け皿サイトを整える記事で詳しく書きました。
この記事では、ポスティングの効果測定にどう関わるかだけを扱います。
配った紙の数と、検索された回数。
この2つを並べると、ポスティングの効き目が見えてくるからです。
店名の検索回数を、ポスティングの手がかりにする
QRコードを載せれば、読み取った人は数えられます。
けれども、QRコードを使わず、店名を自分で打ち込む人も大勢います。
その人たちを数える方法が、店名の検索回数です。
Search Consoleで、店名の表示回数を見る
自社のホームページがある場合、Googleの無料ツールのSearch Consoleで、検索された言葉ごとの表示回数を確認できます。
店名や屋号で検索された回数は、「クエリ」の一覧で見つかります。
配布の前の2週間と、配布の後の2週間を並べてみてください。
配布の前に比べて、店名の検索が増えていれば、紙を見て調べた人がいる可能性があります。
あくまで可能性です。
同じ時期に口コミサイトで紹介されたなど、別の要因が重なることもあるからです。
それでも、「配ったあとに店名の検索が動いたか」を毎回見ておくと、反応が0件の配布でも、紙が読まれていたかどうかを推し量れます。
Googleビジネスプロフィールで、電話と経路の件数を見る
店舗型の商売なら、Googleビジネスプロフィールの管理画面でも、似たことが分かります。
地図上での閲覧数、電話ボタンの押された回数、経路を調べた回数が、日ごとに確認できます。
ポスティングの前後で、これらの数字が動いたかを見ます。
| 見る場所 | 分かること | 配布との関係の読み方 |
|---|---|---|
| Search Consoleの店名クエリ | 店名で検索された回数 | 配布後に増えれば、紙で知った人がいる可能性 |
| ビジネスプロフィールの電話回数 | 地図から電話された回数 | 電話の問い合わせの増減を補う |
| ビジネスプロフィールの経路回数 | 来店のために道順を調べた回数 | 来店の前触れとして読む |
| チラシ専用のQRコード | 紙から直接ページを開いた人数 | 紙の効果を直接数える |
この4つのうち、QRコードだけが「紙から来た」と言い切れる数字です。
ほかの3つは、傍証として使います。
傍証は、単独では決め手にならない
傍証の数字は、動いたからといって、ポスティングの成果だと断定してはいけません。
同じ月に、季節の要因やテレビでの紹介が重なれば、検索は増えます。
私は、傍証を「見る習慣」として使うことをすすめています。
毎回の配布で、同じ項目を同じ期間で見る。
そのうちに、自分の店の「いつもの揺れ幅」が分かってきます。
揺れ幅を超える動きがあったときだけ、効果の可能性を考える。
こうすると、偶然の増減に振り回されずにすみます。
受け皿の窓口を1つに揃える
ポスティングの反応が散らばると、数えられなくなります。
チラシの電話番号、ホームページの問い合わせフォーム、ビジネスプロフィールの電話ボタン。
入口が3つあると、どの入口に何件来たかが、別々の場所に残ります。
チラシ専用の入口を1つだけ用意する
そこで、チラシにだけ載せる入口を、1つ用意します。
電話なら、チラシ専用の番号や、「チラシを見た」と伝えると受けられる特典。
ホームページなら、チラシ専用の短い案内ページ。
入口が専用であれば、そこに来た件数が、そのままチラシの反応になります。
専用の入口の例
| 商売の例 | チラシ専用の入口 | 数え方 |
|---|---|---|
| 整体院 | チラシ限定の初回案内ページ | ページを開いた回数と予約の件数 |
| 飲食店 | 持参で使えるクーポン | 回収した枚数 |
| 学習塾 | 体験授業の専用申込ページ | 申込の件数 |
| リフォーム店 | 無料点検の専用電話番号 | かかってきた件数 |
専用の入口は、作るのに手間がかかりそうに見えます。
けれども、案内ページは1枚で足ります。
クーポンなら紙を切るだけです。
この小さな準備が、ポスティングの効果を語れるかどうかを決めます。
面談につなげたいなら、問い合わせの先も整えておく
チラシ経由の問い合わせが入ったとき、そこで待っている人が最初に聞かれることは決まっています。
どこで知ったか。何に困っているか。いつ頃を考えているか。
この3つを聞く流れが、電話でもフォームでも揃っていれば、ポスティング経由の問い合わせが、商談や面談に進みやすくなります。
逆に、聞き取りがばらばらだと、せっかくの反応が記録にも残らず、次の配布に生かせません。
配る範囲は、広げる前に狭く試す
反応が薄いと、多くの人は「もっと広く配ろう」と考えます。
枚数を増やせば、反応も増えるはずだという発想です。
けれども、広げる前にやることがあります。
町を区画に分けて、最初は小さく配る
商圏を、いくつかの区画に分けます。
小学校区、町丁目、駅からの距離など、自分が把握しやすい単位で構いません。
最初の配布では、区画ごとに同じチラシを同じ枚数ずつ配り、反応を区画別に記録します。
こうして比べると、同じチラシでも、反応の出る区画と出ない区画があることが分かります。
中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21は、地区ごとの違いについて次のように書いています。
「地区ごとに撒くチラシを変えることができれば、ポイントカードなどによる顧客情報の収集を行っていなくても、どのような地区で特に効果が高いのかということを知ることもできます。」
会員カードがなくても、地区を分けて配れば、効く地区が見えてくるということです。
小さな店ほど、この方法が使いやすいと思います。
小さな町では、対象の世帯数を先に数える
Q&Aサイトには、人口が5000人ほどの町でポスティングを考えている方の相談もありました。
適当に配っても効果がなさそうで、どう配ればよいのか迷っているという内容です。
回答の1つは、人口をそのまま配れる枚数と考えてはいけないと指摘していました。
世帯の数で考えるべきだ、という趣旨です。
私も同じ考えです。
人口が5000人の町でも、1世帯あたりの人数を考えれば、配れる家は人口より少なくなります。
さらに、その中で客になりそうな家となると、もっと絞られます。
小さな町では、「全戸に配る」ことが、そのまま範囲の全体になります。
その代わり、同じ家に繰り返し届けることができます。
範囲を決める目安を、表にまとめる
| 町の状況 | 範囲の考え方 | 回数の考え方 |
|---|---|---|
| 人口が少ない町 | 全戸に配るのを基本にする | 間隔をあけて繰り返す |
| 住宅が密集した市街地 | 区画に分けて、反応の出る区画を探す | 反応の出た区画に絞って再度配る |
| 集合住宅が多い地区 | 配布の許可と表示を確認する | 戸建てとは別に記録する |
| 商圏が広い郊外 | 店から近い順に区画を並べる | 近い区画から優先する |
表は目安であり、町ごとに事情は違います。
最初の1回は、必ず区画を分けて、記録を残してください。
回数は、反応が出るまで待つ前に決めておく
ポスティングは、1回で結論を出さないほうがよいと私は考えています。
けれども、「何回続けるか」を決めずに続けると、やめ時を失います。
1回目の結果を見てから、2回目の方針を決める
2回目の配布までに、1回目の記録を集計します。
反応のあった区画、まったくなかった区画、回答に多かった言葉。
それを見て、2回目に配る場所を決めます。
反応がなかった区画に、もう一度同じチラシを入れる前に、チラシの内容や配る時期を変える余地がないかを考えます。
間隔は、商売の周期に合わせる
配る間隔は、商売の利用周期に合わせるのが筋です。
美容院や整体院のように、数週間から数か月で利用する商売なら、私の目安は、1か月から2か月おきです。
引っ越しや大きな修繕のように、数年に一度の商売なら、間隔はもっと長くて構いません。
大事なのは、「次に必要になったときに思い出してもらえる」頻度で届けることです。
ただし、短い間隔で何度も入れると、迷惑に感じる人が出ます。
受け取る側の気持ちも考えて、間隔を決めてください。
回数ごとの記録の取り方
| 配布の回 | 記録する内容 | 判断すること |
|---|---|---|
| 1回目 | 区画ごとの枚数と反応 | 効く区画と効かない区画を分ける |
| 2回目 | 反応の出た区画に絞った結果 | 絞ったほうが反応の割合が上がるか |
| 3回目 | 内容を変えた区画との比較 | 内容の違いで差が出るか |
| 4回目以降 | 反応の推移 | 続けるか、休むか、やめるか |
台帳は1枚で足りる
ここまでの話を、実際の記録に落とします。
必要なのは、大げさな管理表ではありません。
台帳に書く項目は8つで足りる
J-Net21は、記録の大切さについて次のように述べています。
「どのような条件でポスティングを行ったかということをきちんと記録に残し、定期的に集計するようにしましょう。」
条件を記録し、定期的に集計する。
この2つが、効果測定の出発点です。
私は、台帳の項目を次の8つに絞ることをすすめています。
| 項目 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 配布日 | 配った日付と曜日 | 土曜日の午前 |
| 区画 | 町丁目や小学校区 | 駅の北側 |
| 投函枚数 | 実際に入れた枚数 | 業者の報告の数 |
| 想定世帯 | 客になりそうな家の概数 | 戸建て中心 |
| チラシの種類 | 内容を区別する名前 | 初回案内の版 |
| 入口 | 専用の電話やページ | 初回案内のページ |
| 反応の数 | 主役の成果の件数 | 予約の件数 |
| 気づき | 配った人や受けた人の所感 | 夕方に反応が多い |
表計算ソフトでも、ノートでも構いません。
大事なのは、配布のたびに同じ形で書くことです。
気づきの欄が、数字に出ない手がかりを残す
最後の「気づき」の欄は、後から読み返すと意外に役立ちます。
配った人が「この通りはお断りの表示が多かった」と書いておけば、その区画の反応が低い理由の説明になります。
電話を受けた人が「問い合わせの多くは年配の方だった」と書いておけば、次のチラシの文字の大きさを考えるきっかけになります。
数字の隣に、人の言葉を残しておく。
それだけで、台帳が使える記録になります。
やめる基準を、配る前に書いておく
台帳を付けても、いつやめるかが決まっていないと、迷いが残ります。
反応が出ないまま続けると、時間も手間もかさみます。
3つの問いに答えて、続けるかを決める
次の3つを、配布のたびに確かめてください。
| 問い | はいの場合 | いいえの場合 |
|---|---|---|
| 主役の成果が1件でもあったか | 続ける価値がある | 次の問いへ進む |
| 入口に来た人に、共通点はあったか | その共通点に合う区画へ絞る | 配る相手が合っていない可能性 |
| 台帳の気づきに、直せる点があるか | 直して次の回に試す | 配る手段そのものを見直す |
3つとも「いいえ」なら、その配り方は一度休みます。
休むのは失敗ではありません。
ほかの手段に手間を回すための判断です。
区画ごとに、やめる区画と続ける区画を分ける
全体で見れば反応が薄くても、1つの区画だけ反応が出ていることがあります。
その場合は、配布全体をやめずに、反応の出た区画に絞って続けます。
反応の出なかった区画は、チラシの内容を変えて1回だけ試し、それでも出なければ外します。
これが、台帳を付ける最大の利点です。
全部をやめるか、全部を続けるかという二択にならず、区画単位で判断できます。
業者に頼むか、自分で配るかで、記録の取り方が変わる
最後に、配る人による違いにふれます。
業者に頼むか、自分で配るか。
どちらにも利点があり、記録の取り方が違います。
業者に頼むときは、報告の項目を先に伝える
業者に配布を頼むときは、区画別の枚数と配布日の報告を頼んでおきます。
さらに、お断りの表示で配れなかった家の数も聞いておくと、分母の把握に役立ちます。
契約の前に、この報告をもらえるかを確かめてください。
報告の形式が決まっていない業者の場合は、こちらから台帳の形を渡すのが早いです。
自分で配るときは、会話が記録になる
自分で配ると、配っている最中に声をかけられることがあります。
Q&Aサイトの回答にも、自分で配ると質問をその場で受けられるという体験談がありました。
そうした会話は、数字には出ませんが、台帳の気づき欄に残す価値があります。
自分で配る手間は大きいですが、町の様子が分かるという利点があります。
どの家にお断りの表示があるか、どの通りに空き家が多いか。
次の配布計画に直接使える情報が、足で集まります。
ポスティングを続けるか、別の手段に移るかの境目
ここまで読むと、ポスティングは手間のかかる手段だと感じた方もいるでしょう。
その感覚は正しいと思います。
手間に見合う相手かどうかを、台帳で見極めるのが、この記事の主題でした。
台帳が示す3つの状況
台帳を2回、3回と重ねると、結果は3つの状況に分かれます。
| 台帳の状況 | 意味すること | 次の動き |
|---|---|---|
| 特定の区画だけ反応が続く | その区画に客になる人が多い | 反応の出る区画を中心に配る |
| どの区画も反応が薄く、入口への来訪も少ない | 紙が読まれていない可能性 | 内容か時期を変えて1回だけ試す |
| 入口への来訪はあるが、成果につながらない | 紙のあとの受け皿に課題 | 検索結果と案内ページを直す |
2つ目と3つ目では、直す場所が違います。
2つ目は紙の側、3つ目は紙のあとの側です。
どちらなのかを見分けられるのも、入口を専用にして数えているからです。
紙のあとに課題があるときは、受け皿から直す
3つ目の状況では、配る枚数を増やしても、成果は増えません。
紙を見て店に関心を持った人が、検索の先で情報を見つけられないからです。
営業時間が古い、場所が分かりにくい、料金や流れが書かれていない。
そうした点は、すぐに直せます。
紙の枚数を増やす前に、受け皿を整える。
私が伴走しているコンサルティング「売れるサイトはみな謙虚」でも、最初に見るのは、訪れた人が迷わず次の一歩に進めるかどうかです。
ポスティングで来た人も、その点は変わりません。
この順番を守ると、同じ枚数のチラシでも、成果の出方が変わってきます。
よくある質問
Q1. 配ってすぐ反応がないのは、失敗でしょうか
配った翌日に電話が鳴らなくても、失敗とは言い切れません。
チラシをいったん手元に置き、必要になった日に思い出して連絡する人もいます。
Q&Aサイトの回答にも、冷蔵庫に貼られたチラシから、時間をおいて連絡が来ることがあるという体験談がありました。
そのため、反応を見る期間は、配布直後だけでなく、数週間先まで取っておきます。
台帳には、配布日と反応の日付を両方書いておくと、反応までの日数が分かります。
Q2. 反応率は何パーセントあれば合格ですか
全国に通用する合格ラインを、公的な資料で確認することはできませんでした。
そのため、この記事では数字を示しません。
合格かどうかは、あなたの店の採算で決まります。
1件の成果から得られる利益と、配布にかけた手間や費用を比べて、続ける価値があるかを判断してください。
まずは自分の前回の結果を基準にして、それを超えたかどうかで見るのが現実的です。
Q3. 業者に頼むのと自分で配るのは、どちらが効果的ですか
効果はどちらが高いとは言えません。
配布の質は、配る人の丁寧さと、お断りの表示を守る姿勢で決まります。
業者に頼む場合は、区画別の報告をもらえるかを確かめます。
自分で配る場合は、時間がかかる代わりに、町の様子と反応の声を直接得られます。
商圏が狭いうちは自分で、広がったら業者へ、という進め方も考えられます。
Q4. ホームページがない店でも効果測定はできますか
できます。
クーポンの回収枚数や、チラシ専用の電話番号を使えば、ホームページがなくても数えられます。
QRコードを載せる場合は、読み取った先に、営業時間と場所が分かる案内があれば足ります。
地図で店名を検索したときに情報が出るよう、Googleビジネスプロフィールを整えておくと、紙を見て調べた人の受け皿にもなります。
Q5. 同じ地区に何回まで配ってよいですか
回数の上限を決める公的な基準はありません。
目安は、反応の記録が語ってくれます。
2回目、3回目で反応が伸びる区画は続け、伸びない区画は外します。
ただし、お断りの表示がある家には配らないでください。
トラブルを避けるためにも、表示は守る前提で台帳を付けます。
まとめ
ポスティングの効果が見えない原因は、チラシの出来より先に、配った記録が残っていないことにあります。
この記事でお伝えした内容を、4つに整理します。
反応率の世間の平均は、公的な調査で裏が取れる数字を見つけられませんでした。
比べる相手は、自分の前回の結果です。
分母は、投函した枚数と、想定した世帯数の2つを分けて記録します。
反応は、主役の成果を1つ決めて数えます。
紙を見た人は、店名を検索して確かめにきます。
総務省の調査ではスマートフォンを持つ世帯が91.8%ありますから、検索の先の情報を整えておくことが、配った紙を問い合わせにつなげます。
配る範囲と回数は、区画に分けて小さく試し、台帳を見て決めます。
中小企業基盤整備機構のJ-Net21が述べるとおり、条件を記録し、定期的に集計することが効果測定の出発点です。
次に配るチラシを手に取る前に、まず台帳の1枚目を作ってください。
そこに、配る日と区画と入口の名前を書くだけで、ポスティングは「やってみた」から「確かめられる」ものに変わります。
今日できる点検
最後に、今日の短い時間でできる点検をまとめます。
上から順に、1つずつ確かめてください。
| 点検する場所 | 確かめること | 次にすること |
|---|---|---|
| 主役の成果 | 予約、来店、見積もりなど、数える段階を1つ決めたか | 紙に書いて、チラシの束と一緒に置く |
| チラシ専用の入口 | クーポン、専用の電話、専用のページのどれかがあるか | 1つだけ用意する |
| 台帳の1枚目 | 配布日、区画、枚数、入口、反応数を書く欄があるか | 8項目の表を印刷して使う |
| 店名の検索結果 | スマートフォンで店名を打つと、地図と営業時間が出るか | 出ない項目を直す |
| 配布前の数字 | 店名の検索回数や電話の件数を控えたか | 配布の2週間前の数字を残す |
| お断りの表示 | 配らない家の一覧を作ったか | 業者にも自分にも共有する |
| 次の配布計画 | 区画を分けて小さく配る日を決めたか | 日付を台帳に書く |
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