予約サイトからの予約は入る。けれども手数料が重く、公式サイトからの予約はなかなか増えない。
閑散期には値下げするしかなく、泊まってくれたお客様とも次につながらない。この記事は、そうした悩みを抱える中小規模のホテルや旅館、ペンションの経営者の方と、宿のウェブ担当の方に向けて書いています。
集客の手法を並べる前に、宿泊を検討しているお客様が予約の直前に何を迷っているかを整理します。そのうえで、公式サイトのどこから直せば予約につながるのかを順番に見ていきます。
読み終えたときに、自分の宿の公式サイトで最初に直す場所が1つ決まっている状態をゴールにしています。
Q&Aサイトに並ぶ、宿泊客側の迷い
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
投稿者は、旅行の宿を探している方でした。泊まりたいホテルは決まっている。
けれども、予約サイトから申し込むのと、ホテルの公式サイトから申し込むのとで、何が違うのか分からない。料金は同じに見えるし、どちらで予約すれば損をしないのか教えてほしい、という内容です。
同じQ&Aサイトには、似た質問がいくつも並んでいました。「公式サイトで予約する場合の、ホテル側のメリットは何ですか」「ネット予約と電話予約では、それぞれ何が違いますか」「予約サイトがたくさんあるのに、なぜ公式サイトから予約した方が安いと言われるのですか」。
これらの質問から分かるのは、お客様は泊まる宿を決めたあとも、どこで予約するかで迷っているという事実です。そして、その迷いに答えている宿はあまり多くありません。
お客様は宿の公式サイトを確かめに来ているのに、そこで「なぜここで予約すればよいのか」が分からないまま、使い慣れた予約サイトに戻っていきます。
お客様が知りたいことと、公式サイトが伝えていること
宿の公式サイトでよく見かける内容と、お客様が予約の直前に知りたい内容を並べてみます。
| 公式サイトによく載っている内容 | お客様が予約の直前に知りたいこと | ずれが生む結果 |
|---|---|---|
| 客室と料理の美しい写真 | 予約サイトと何が違うのか | 写真は予約サイトでも見られる |
| 宿のこだわりと歴史 | 公式で予約すると何が良いのか | こだわりは伝わるが、予約先の決め手にならない |
| 宿泊プランの一覧 | 自分に合うプランはどれか | プランが多すぎて選べない |
| 周辺の観光地の紹介 | 到着してから翌朝まで、どう過ごせるか | 一般的な観光案内は他でも読める |
| 予約ボタン | 予約の手順は簡単か、支払いはどうなるか | 手順が見えず、慣れた予約サイトに戻る |
左の列はどれも大切な情報です。ただ、予約ボタンを押す直前のお客様の迷いには、右の列のほうがずっと近いところにあります。
数字で見る、宿泊市場の今
背景として、宿泊市場の数字を確認しておきます。観光庁が公表した宿泊旅行統計調査によると、2025年の年間値(確定値)は次のとおりでした。
「延べ宿泊者数(全体)は6億6,111万人泊、前年比+0.3%であった」
内訳を見ると、日本人延べ宿泊者数は4億8,118万人泊で前年比2.7%の減少、外国人延べ宿泊者数は1億7,992万人泊で前年比9.4%の増加でした。
全体は横ばいで、日本人のお客様は少しずつ減り、海外からのお客様が増えている。そういう市場の中で、宿どうしのお客様の取り合いが続いています。
同じ調査では、施設の種類ごとの客室稼働率も公表されています。2025年の全体の客室稼働率は61.6%でした。
施設タイプ別では、ビジネスホテルが75.3%、シティホテルが74.1%、リゾートホテルが56.9%、旅館が38.2%、簡易宿所が29.6%です。
規模の小さい宿が多い旅館や簡易宿所ほど、空いている部屋が多いことが分かります。
| 施設タイプ | 2025年の客室稼働率 | この数字から読み取れること |
|---|---|---|
| ビジネスホテル | 75.3% | 出張などの需要が安定している |
| シティホテル | 74.1% | 大規模な施設の稼働が高い |
| リゾートホテル | 56.9% | 季節による波が大きい |
| 旅館 | 38.2% | 空室を埋める工夫の余地が大きい |
| 簡易宿所 | 29.6% | 小規模な宿ほど集客に苦戦している |
さらに2026年に入ってからの速報では、4月の延べ宿泊者数が前年同月比7.2%の減少、5月が4.8%の減少でした。調査の方法が一部見直された影響もあると注記されていますが、市場全体が伸び続ける状況にはないことがうかがえます。
お客様が予約を決めるまでの行き来
お客様が宿を予約するまでの動きを、もう少し細かく見ておきます。多くのお客様は、まず予約サイトや地図アプリで、行き先の近くの宿を探します。
気になる宿が見つかると、口コミを読み、写真を眺め、候補を2つか3つに絞ります。
そのあと、候補の宿の名前で検索して、公式サイトを開きます。公式サイトで確かめたいのは、予約サイトでは分からなかったことです。
本当に自分の旅に合う宿なのか、公式で予約すると何か違うのか、宿の人はどんな人たちなのか。ここで答えが見つかれば、お客様はそのまま公式サイトで予約します。
見つからなければ、予約サイトに戻って、ポイントのたまる方で予約します。
この行き来の中で、公式サイトは「最後に確かめられる場所」になっています。最後に確かめに来たお客様を迷わせないことが、直接の予約を増やすいちばんの近道です。
宿の側から見えにくい、お客様の離れ方
公式サイトを訪れたお客様が予約をせずに離れていくとき、宿の側にはほとんど記録が残りません。電話もかかってこず、問い合わせのメールも届かない。
お客様は静かに画面を閉じて、予約サイトに戻っていきます。
アクセス解析の数字を見ると、公式サイトにはそれなりの人数が訪れているのに、予約の件数は伸びていない、という状態がよく見られます。
この差の中に、迷ったまま離れていったお客様がいます。どこで迷ったのかは数字だけでは分かりませんが、最初の画面で答えるべき迷いに答えていない限り、この差は縮まりません。
訪れた人数を増やす前に、訪れた人が迷わずに進めるかどうかを確かめる必要があります。
予約サイトに頼る宿が陥る罠
こうした市場の中で、中小規模の宿の多くは予約サイトに頼っています。予約サイトは、宿を探す多くのお客様が最初に開く場所なので、掲載しない選択は現実的ではありません。
問題は、予約サイトに頼りきりになると、宿の側で決められることが少しずつ減っていくことです。
手数料は予約サイトの仕組みで決まります。掲載順位を上げるには、割引やポイントの上乗せが必要になります。
閑散期に部屋を埋めようとすると、値下げで他の宿と競うことになります。そして、予約サイト経由のお客様とは、宿泊が終わると連絡を取る手段が限られます。
次の旅行で思い出してもらう機会を、自分の宿で作りにくいのです。
公式サイトを「予約サイトの縮小版」にしてしまう
予約サイトに頼っている宿ほど、公式サイトを予約サイトの縮小版のように作りがちです。客室の写真、料理の写真、プランの一覧、予約ボタン。
予約サイトの掲載ページとほとんど同じ内容が並んでいます。
お客様から見ると、同じ内容なら使い慣れた予約サイトで予約したほうが楽です。会員のポイントもたまり、支払いの手順も慣れています。
公式サイトで予約する理由が見つからなければ、お客様は予約サイトに戻ります。公式サイトが予約サイトの縮小版である限り、直接の予約は増えにくいのです。
「公式サイト最安値」だけでは決め手にならない
公式サイトで予約してもらうために、「公式サイトが最安値」と打ち出す宿も増えました。値段の差は分かりやすい決め手ですが、多くの宿が同じことを言うようになると、お客様にとっては当たり前の情報になります。
Q&Aサイトでも「最近は公式サイト最安値宣言が当たり前で、予約サイトも同じ値段で売っていることが多い」という投稿が見られました。
値段だけで公式サイトを選んでもらおうとすると、結局は値段の競争に戻ります。公式サイトで予約してもらう理由は、値段とは別のところにも用意しておく必要があります。
| お客様の迷い | 公式サイトが答えられること | 答えたときに起きること |
|---|---|---|
| 予約サイトと何が違うのか | 公式だけで伝えられる滞在の中身を書く | 公式で予約する理由ができる |
| 自分に合うプランはどれか | 旅の目的別に、おすすめを絞って示す | 迷わずに選べる |
| 到着から翌朝までどう過ごすか | 滞在の流れを時間に沿って書く | 泊まる場面が思い描ける |
| 予約の手順は簡単か | 予約から到着までの流れを見せる | 慣れていない公式サイトでも安心して進める |
この記事の後半では、表の真ん中の列を、公式サイトのどこにどう置けばよいかを具体的に見ていきます。
宿の公式サイトが予約サイトの縮小版になる理由
多くの宿の公式サイトが似た顔つきになる理由は、宿泊業の集客を取り巻く仕組みの側にあります。ここでは4つの仕組みを取り上げます。
予約サイトの掲載ページが「見本」になっている
宿の経営者やスタッフは、毎日のように予約サイトの管理画面と掲載ページを見ています。写真の枚数、プランの並べ方、口コミの点数。
予約サイトで成果を出すための工夫を積み重ねるうちに、その掲載ページが「宿の見せ方の見本」になっていきます。
公式サイトを作り直すときも、この見本が頭にあるので、予約サイトと同じ要素を同じ順番で並べてしまいます。結果として、お客様は予約サイトと公式サイトを行き来しても、違いを見つけられません。
公式サイトにしかない情報が無ければ、予約する場所としての決め手も生まれません。
予約エンジンの画面が、公式サイトの外にある
多くの宿は、公式サイトの予約ボタンを押すと、予約エンジンと呼ばれる別の画面に移る仕組みを使っています。予約エンジンは便利な道具ですが、画面の見た目や手順は、宿の公式サイトとつながっていないことがあります。
お客様から見ると、公式サイトの予約ボタンを押した途端に、見慣れない画面に切り替わり、プランの一覧と空室カレンダーがずらりと並ぶ。
ここで手順が分かりにくいと、お客様は不安になり、使い慣れた予約サイトに戻ります。公式サイトと予約画面のつなぎ目は、多くの宿で見落とされている離脱の場所です。
| つなぎ目で起きること | お客様の気持ち | 起きやすい行動 |
|---|---|---|
| 画面の見た目が急に変わる | 本当に公式の予約なのか不安になる | 予約サイトに戻る |
| プランが一覧で何十も並ぶ | どれを選べばよいか分からない | 比べるのをやめて閉じる |
| 会員登録を求められる | 手間が増えて面倒に感じる | 登録済みの予約サイトで予約する |
| 支払い方法が最後まで分からない | 事前に払えるのか、現地払いか迷う | 手順が分かる予約サイトを選ぶ |
表の4つの場面は、どれも宿の側からは見えにくいところです。予約エンジンの管理画面では、途中で離れたお客様の数が分かりにくいからです。
制作会社のひな形が「写真で魅せる」構成になっている
宿の公式サイトを制作会社に頼むと、宿泊施設向けのひな形をもとに作られることがよくあります。最初の画面いっぱいに宿の写真、その下に「こだわり」、客室、料理、温泉や大浴場、周辺の観光、宿泊プラン、アクセス。
美しい写真を大きく見せることに重点が置かれた構成です。
写真は宿の魅力を伝える大切な要素です。問題は、最初の画面が写真で埋まり、お客様が予約の直前に知りたいことが下のほうに押しやられていることです。
どんな旅に向いている宿なのか、公式で予約すると何が違うのか、予約の手順はどうなっているのか。これらを探すために、お客様は何度も画面を送らなければなりません。
小さな宿ほど、更新の手が足りない
家族経営の旅館や小さなホテルでは、経営者が接客も調理も予約の管理も兼ねていることが珍しくありません。予約サイトの料金調整や口コミへの返信に追われて、公式サイトの更新は後回しになります。
更新が止まった公式サイトでは、季節のプランが古いまま残り、お知らせの日付が1年前で止まっていることもあります。お客様がそれを見ると、この宿は今も営業しているのか、情報は正しいのかと不安になります。
更新の手が足りないことが、公式サイトの信頼を少しずつ削っていきます。
口コミの点数ばかりが比べられる
予約サイトの一覧では、口コミの点数が目立つ場所に表示されます。お客様は点数の高い宿から順に見ていくので、宿の側も点数を上げることに力を注ぐようになります。
点数は大切ですが、点数だけで比べられると、宿の個性は伝わりにくくなります。
4.2点の宿と4.3点の宿の違いは、お客様にはほとんど分かりません。分かるのは、口コミの本文と、宿からの返信の文面です。
返信が定型文ばかりの宿と、一つひとつの口コミに具体的に答えている宿とでは、お客様が受け取る印象が大きく変わります。口コミへの返信は、公式サイトに書いた宿の人柄を裏付ける場所でもあります。
手数料の重さが、宿の工夫の余地を削る
予約サイトの手数料は、宿の経営にとって小さくない負担です。売上の一部が手数料として出ていくので、同じ数のお客様を迎えても、手元に残るお金は公式サイト経由より少なくなります。
その差は、料理の食材や、客室の手入れや、スタッフの手当てに回せたはずのお金です。
手数料の負担が重くなると、宿は値上げもしにくく、サービスも削りにくいという板挟みになります。結果として、スタッフの負担を増やして乗り切ろうとし、日々の接客に余裕がなくなっていきます。
公式サイトからの予約の割合を少しでも上げることは、この板挟みを和らげ、宿が本来の工夫に力を使えるようにするための作業でもあります。
宿とお客様の4つのすれ違い
ここまでの話を、宿とお客様のすれ違いとしてまとめておきます。
| 場面 | 宿が思っていること | お客様が感じていること | 生まれる結果 |
|---|---|---|---|
| 公式サイトを開いたとき | 写真で魅力が伝わる | 予約サイトと同じに見える | 公式で予約する理由が見つからない |
| プランを選ぶとき | 選択肢が多いほど親切 | どれを選べばよいか分からない | 選ぶのをやめる |
| 予約画面に移ったとき | 予約エンジンは便利な道具 | 見慣れない画面で不安になる | 予約サイトに戻る |
| 泊まったあと | 満足してもらえたから次も来る | 次の旅行では予約サイトで比べる | 再訪の予約が予約サイト経由になる |
4つの場面のどれを見ても、宿は「魅力」の話をしていて、お客様は「予約までの迷い」を抱えています。このずれがある限り、写真を撮り直しても、プランを増やしても、公式サイトからの予約は大きく動きません。
お客様は宿を決めたあとも比べている
見落としがちなのは、お客様が宿を決めたあとも比べ続けていることです。予約サイトで宿を見つけ、公式サイトを確かめ、もう一度予約サイトに戻って料金や条件を見比べる。
この行き来の中で、公式サイトが迷いに答えていれば、お客様はそこで予約を決めます。答えていなければ、慣れた予約サイトで予約します。
宿の側から見ると、どちらで予約されても宿泊客の数は同じです。けれども、手数料の分だけ手元に残る金額が変わり、泊まったあとにお客様と直接つながれるかどうかも変わります。
宿を決めたあとのお客様の迷いに答えることは、宿の経営の足腰を強くする作業でもあります。
海外からのお客様の迷いは、さらに大きい
観光庁の統計で外国人の延べ宿泊者数が前年比9.4%増えていたように、海外からのお客様は増えています。海外のお客様は、日本の宿の仕組みに慣れていないことが多く、迷いはさらに大きくなります。
夕食の時間は決まっているのか、大浴場の使い方はどうなっているのか、チェックインは何時までに済ませればよいのか。
こうした迷いに公式サイトが答えていれば、海外のお客様にとっても公式サイトで予約する理由になります。多言語で全ページを用意する必要はありません。
まずは予約の直前に迷いやすいことを、分かりやすい日本語で整理しておくことが、翻訳の土台にもなります。
直接予約を増やそうとして選ばれがちな遠回り
公式サイトからの予約を増やしたいとき、多くの宿が次の5つのどれかに手を伸ばします。どれも一定の効果はありますが、お客様の迷いに答えていないまま進めると、手間や費用のわりに直接の予約が増えないという結果になりやすいものです。
遠回り1 予約サイトでの割引を深くする
公式サイトの話の前に、予約サイトでの露出を上げようとして、割引やポイントを上乗せする宿は少なくありません。掲載順位が上がり、予約の件数は増えます。
ただ、割引で集めたお客様は、次の旅行でも割引の大きい宿を探します。宿に愛着を持つ前に、条件で選んでいるからです。
割引を深くするほど、一人ひとりのお客様から得られる売上は下がり、手数料の負担は変わりません。閑散期を乗り切るための一時的な手段としては意味がありますが、続けるほど宿の体力を削ります。
遠回り2 公式サイトだけの特典を増やす
公式サイトで予約してもらうために、特典を用意する宿も増えています。ウェルカムドリンク、チェックアウトの延長、客室のアップグレード。
お客様にとってうれしい特典です。
問題は、特典が公式サイトのどこに書かれているかです。最初の画面に大きく書いてあればよいのですが、プランの説明の奥や、別ページの小さな文字で書かれていることがよくあります。
お客様が気づかない特典は、無いのと同じです。また、特典の数を増やしすぎると、何が本当の違いなのかがぼやけます。
特典を増やす前に、お客様の目に入る場所に、分かりやすく書いてあるかを確かめる必要があります。
遠回り3 宿泊プランを増やす
季節ごと、記念日、連泊、素泊まり、夕食のグレード違い。宿泊プランを増やすと、いろいろなお客様の希望に応えられるように思えます。
しかし、お客様の側から見ると、プランが30も40も並んでいると、どれを選べばよいか分からなくなります。似たプランの違いを読み比べるのは、予約の直前のお客様にとって大きな負担です。
選ぶことに疲れたお客様は、予約サイトの絞り込み機能を使って選び直すか、予約そのものを先延ばしにします。プランを増やすほど、公式サイトでの予約は難しくなることがあります。
遠回り4 写真と動画を作り直す
公式サイトの見た目を良くするために、プロの写真家に撮影を頼んだり、紹介動画を作ったりする宿もあります。美しい写真や動画は、宿の魅力を伝える力があります。
ただ、写真と動画は予約サイトにも同じものを載せられます。公式サイトにだけ載せる理由が無い限り、写真を良くしても、公式で予約する決め手にはなりません。
写真と動画を作り直す前に、公式サイトでしか伝えられない情報があるかどうかを確かめることが先です。
遠回り5 公式サイトを全面的に作り直す
直接の予約が増えないのはサイトが古いからだと考えて、公式サイトを全面的に作り直す宿もあります。見た目は新しくなりますが、中身の構成が以前と同じひな形なら、お客様の迷いに答える場所は相変わらず無いままです。
作り直しには数か月かかり、その間は更新も止まります。公開してしばらくたってから、直接の予約が以前と変わらないことに気づく、という流れはよくあります。
遠回り6 広告で公式サイトへの流入を増やす
検索広告を出して、宿の名前や地域名で検索した人を公式サイトに呼び込む宿もあります。宿の名前で検索した人に広告を出すと、予約サイトの広告に流れるのを防げるので、一定の意味はあります。
ただし、広告で呼び込んだ先の公式サイトが迷いに答えていなければ、呼び込んだお客様はやはり予約サイトに戻ります。広告費をかけて公式サイトに連れてきたのに、そこから予約サイトに送り出していることになります。
広告を出す前に、呼び込む先の最初の画面が、お客様の迷いに答えているかを確かめてください。
遠回り7 会員制度を先に作る
公式サイトでの予約を増やすために、会員制度やポイントの仕組みを作る宿もあります。泊まるたびにポイントがたまる仕組みは、再訪のきっかけになります。
ただ、会員制度は、公式サイトで一度予約してもらってから効いてくる仕組みです。初めてのお客様にとっては、会員登録はむしろ手間に感じられることがあります。
予約の途中で会員登録を求められて、面倒になって予約サイトに戻る、ということも起きます。会員制度を作る前に、登録しなくても予約できる手順を用意し、最初の予約の壁を下げておくことが先です。
会員の特典は、泊まったあとの一通でご案内すれば十分に伝わります。
5つの遠回りの共通点
5つの遠回りを、かけるものと、一時的に増えるものと、残らないものに分けて並べてみます。
| 遠回り | かけるもの | 一時的に増えるもの | 残らないもの |
|---|---|---|---|
| 予約サイトの割引を深くする | 割引とポイントの原資 | 予約の件数 | 宿への愛着と利益 |
| 公式特典を増やす | 特典の手間と原資 | 特典の数 | お客様が気づく分かりやすさ |
| 宿泊プランを増やす | プランの企画と管理 | 選択肢の数 | 迷わずに選べる道筋 |
| 写真と動画を作り直す | 撮影と制作の費用 | 見た目の美しさ | 公式だけの決め手 |
| 公式サイトを作り直す | 数か月の打ち合わせ | 見た目の新しさ | お客様が知りたい中身 |
右端の列は、どれもお客様が予約ボタンを押す直前に必要としているものです。5つの遠回りは、見た目や数を増やしますが、予約の直前の迷いには手を付けていません。
遠回りを続けた宿で起きやすいこと
遠回りを1年ほど続けた宿で起きやすい変化を、時期ごとに整理しておきます。
| 時期 | 宿の中で起きていること | 見えてくる兆し |
|---|---|---|
| 最初の3か月 | 割引と特典で予約が少し増える | 手応えを感じる |
| 4か月目から6か月目 | 割引なしでは予約が入りにくくなる | 客室単価が下がり始める |
| 7か月目から9か月目 | プランが増え、料金の管理が複雑になる | スタッフの事務作業が増える |
| 10か月目から12か月目 | 再訪のお客様も予約サイト経由で来る | 手数料の割合が下がらない |
最後の段で、泊まったことのあるお客様まで予約サイト経由で来るのは、公式サイトとの関係が作れていないからです。一度泊まったお客様が次の旅行を考えたとき、真っ先に開くのが公式サイトであれば、手数料の割合は少しずつ下がっていきます。
5つの遠回りの根っこにある思い込み
5つの遠回りの根っこには、同じ思い込みがあります。「お客様は、条件が良ければ公式サイトで予約してくれる」という思い込みです。
この考え方に立つと、割引や特典やプランといった条件を増やすことに力が向かいます。
実際には、お客様は条件より先に、公式サイトで予約する手順が分かるか、公式で予約すると何が違うのか、自分の旅に合う宿なのかで迷っています。
条件を増やしても、この迷いが晴れなければ、慣れた予約サイトに戻ります。条件の前に、迷いを晴らすことから始める必要があります。
閑散期の考え方を変える
多くの宿にとって、いちばん頭の痛いのが閑散期です。部屋が空いていると、値下げしてでも埋めたくなります。
けれども値下げで埋めた部屋は、宿の体力を削り、次の閑散期にも同じ値下げを求められるようになります。
閑散期にこそ来てほしいお客様を思い浮かべる
閑散期には、閑散期ならではの過ごし方があります。人の少ない温泉、静かな朝の散歩道、ゆっくり話ができる夕食の時間。
混雑を避けたいお客様にとって、閑散期は一年でいちばん良い時期かもしれません。
公式サイトで、閑散期にこそ来てほしいお客様に向けて、その時期の過ごし方を具体的に書きます。「冬の平日は、大浴場をほぼ貸し切りのように使えることが多いです」「春先の週の半ばは、夕食のあとに宿の者と周辺の話をゆっくりできます」。
値下げで呼ぶより、その時期の良さを伝えて呼ぶほうが、宿に合ったお客様が来てくれます。
閑散期の空き状況は、公式サイトで先に見せる
閑散期の空き状況を、公式サイトで分かりやすく見せるのも1つの方法です。空室カレンダーを予約画面の奥に置いておくだけでなく、「来月の平日は、比較的お部屋に余裕があります」と一言書いておきます。
空いていることを隠すより、空いている時期の良さと一緒に伝えたほうが、お客様は予定を合わせやすくなります。
予約の「経路」を記録してみる
遠回りに入っているかどうかを確かめる簡単な方法があります。1か月だけ、予約がどの経路から入ったかを記録してみてください。
予約サイトごとの件数、公式サイトの件数、電話の件数。そして、公式サイトや電話で予約したお客様に、チェックインのときに「どこで宿を知りましたか」と一言聞いてみます。
「予約サイトで見つけて、公式サイトを見て決めた」という答えが多いなら、公式サイトが迷いに答え始めている証拠です。「前にも泊まったので」という答えが増えていけば、再訪の入口として公式サイトが機能し始めています。
件数とあわせて、この答えの変化を目安にしてください。
売れるサイトはみな謙虚という考え方を宿の公式サイトに当てはめる
ここからは、宿の公式サイトをどう直すかを具体的に見ていきます。土台にするのは、合同会社謙虚が「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいる考え方です。
売れるサイトはみな謙虚、という言葉の意味は3つにまとめられます。宿の魅力を語る前に、お客様の迷いに先回りして答えること。
お客様を旅の主役にして、宿は案内役に回ること。そして、足すより先に引き算をすること。
宿の仕事は、もともと謙虚なものです。玄関でお客様を迎え、荷物を預かり、部屋までの道を案内し、翌朝の出発までを支える。
お客様が迷わないように先回りするのが、おもてなしの基本です。その姿勢を、公式サイトの並び順にも持ち込む。
それが、謙虚なサイトへの直し方です。
お客様の迷いの順番に、トップページを並べ替える
最初にやるのは、お客様が予約ボタンを押すまでに抱く迷いを、順番どおりに書き出すことです。宿の種類によって細部は違いますが、おおむね次のような順番になります。
| 迷いの順番 | お客様の心の中 | トップページで答える場所 | 載せる中身 |
|---|---|---|---|
| 1 | この宿は自分の旅に合っているか | 最初の画面 | どんな旅に向いている宿かを一言で |
| 2 | 公式で予約すると何が違うのか | 最初の画面 | 公式で予約した方だけに伝えられることを具体的に |
| 3 | どのプランを選べばよいか | 最初の画面のすぐ下 | 旅の目的別に、おすすめを3つに絞って |
| 4 | 予約の手順は簡単か | プランの次 | 予約から到着までの流れと、支払い方法 |
| 5 | 泊まったらどう過ごせるか | 後半 | 到着から翌朝までの流れ、客室、料理、周辺の案内 |
写真や客室の紹介は消しません。5番目の中で、滞在の流れに沿って見せます。
多くの公式サイトで最初に置かれている写真を、お客様の迷いが一段落したところで改めて見せる。この並べ替えが、引き算の最初の一手です。
「どんな旅に向いている宿か」を一言で書く
最初の画面では、宿の名前と写真に加えて、どんな旅に向いている宿なのかを一言で書きます。「小さなお子さま連れのご家族が、周りを気にせず過ごせる宿です」「一人旅の方が、静かに本を読んで過ごせる宿です」「記念日のご夫婦が、夕食をゆっくり楽しめる宿です」。
すべてのお客様に向いていると書きたくなる気持ちは分かります。けれども、誰にでも向いている宿は、誰の旅にも決め手を持てません。
自分の宿がいちばん喜ばれてきたお客様の姿を思い出して、その人に向けた一言を書きます。それ以外のお客様を断るわけではありません。
最初の一言で、宿の輪郭をはっきりさせるのが目的です。
公式で予約する理由は「値段」より「伝えられること」
公式サイトで予約する理由として、値段の差だけを打ち出すのはやめておきます。値段の競争に戻ってしまうからです。
代わりに、公式で予約してくれたお客様にだけ伝えられることを、具体的に書きます。
| 公式で伝えられること | 書き方の例 | お客様に伝わること |
|---|---|---|
| 到着前の相談 | ご予約のあと、食事の好みやアレルギーを宿の者が直接伺います | 自分に合わせてもらえる |
| 部屋の希望 | 眺めや階数のご希望を、できる範囲で調整します | 旅の記憶に残る部屋になる |
| 到着の時間の相談 | 遅い到着になる場合も、お電話一本でご相談を承ります | 移動の不安が減る |
| 周辺の過ごし方 | 宿の者がよく行く店や散歩道を、前日のご案内でお伝えします | 地元の人しか知らない旅ができる |
表の中身は、どれも宿の人が直接お客様とやり取りできるからこそ伝えられることです。予約サイトの掲載ページには書きにくく、公式サイトでしか約束できません。
お客様にとっては、値段の差よりも記憶に残る理由になります。
宿泊プランは「目的別に3つ」に絞って見せる
宿泊プランは、すべてを並べる代わりに、旅の目的別に3つに絞って最初の画面の近くに置きます。記念日向け、家族旅行向け、一人旅向けのように、目的とおすすめのプランを1対1で結びます。
他のプランは、その下に一覧で残しておけば、探したいお客様はたどり着けます。
お客様は3つの中から自分の旅に近いものを選ぶだけで済みます。似たプランの違いを読み比べる負担が無くなり、予約の手前で迷う時間が短くなります。
予約から到着までの流れを1枚の図で見せる
4番目の「予約の手順は簡単か」は、文章より図のほうが伝わります。下の図は、その一例です。
図の本体は、矢印の上に書いた小さな約束です。おすすめを3つに絞ること、予約画面に移る前に手順を示すこと、到着の前日に宿の人から連絡すること。どれも、お客様が公式サイトで予約する場面を思い描くための手がかりです。約束は、実際に守れる範囲で書いてください。
図の下には、予約画面の手順を3行ほどで書き添えます。「日付と人数を選ぶ」「プランを選ぶ」「お名前と連絡先を入力する」。
支払い方法が事前のカード払いなのか、現地払いも選べるのかも、ここで先に伝えておきます。予約画面に移る前に手順が分かっていれば、見慣れない画面に切り替わっても、お客様は落ち着いて進めます。
滞在の流れは「到着から翌朝まで」で見せる
5番目の「泊まったらどう過ごせるか」は、客室や料理の写真を並べるだけで終わらせないようにします。到着してから翌朝の出発までを、時間に沿って見せます。
| 時間 | お客様の過ごし方 | 宿がしていること |
|---|---|---|
| 到着 | 玄関で迎えられ、お茶を飲みながら館内の説明を聞く | 翌朝までの過ごし方を短くご案内する |
| 夕方 | 散歩や温泉で、旅の疲れをほどく | 周辺の散歩道を地図でお渡しする |
| 夕食 | 地元の食材を使った料理を、自分のペースで楽しむ | 好みやアレルギーに合わせて調整する |
| 夜 | 部屋でゆっくり過ごす | 静かに過ごせるよう、館内の音に気を配る |
| 翌朝 | 朝食のあと、次の目的地へ出発する | 次の目的地までの道や見どころをお伝えする |
時間の流れで見せると、お客様は自分がその宿で過ごす一日を、具体的な姿で思い描けるようになります。写真は、表のそれぞれの時間に合わせて添えれば、ただ並べるよりずっと伝わります。
周辺の案内は「宿の人が本当に行く場所」を書く
公式サイトの周辺案内は、有名な観光地を並べるだけで終わっていることがよくあります。有名な観光地の情報は、旅行の案内サイトや地図アプリでいくらでも調べられます。
公式サイトならではの価値を出せるのは、宿の人が本当に行く場所の案内です。
朝の散歩で通る川沿いの道、地元の人が通うパン屋、夕日がきれいに見える小さな公園。宿の人が自分の言葉で紹介する場所は、お客様にとって「この宿に泊まったからこそ知れた場所」になります。
旅の記憶に残り、次の旅でまたこの宿を思い出すきっかけにもなります。こうした案内は、予約サイトの掲載ページでは伝えにくく、公式サイトで予約する理由の1つになります。
食事の説明は、お客様の不安から書く
夕食や朝食の説明も、料理の写真と品数を並べるだけでは、お客様の迷いには答えきれません。お客様が食事について不安に感じているのは、アレルギーや苦手な食材に対応してもらえるか、子どもの食事はどうなるのか、量が多すぎないか、といったことです。
こうした不安に先に答えておきます。「アレルギーや苦手な食材は、ご予約のあとに伺い、できる範囲で調整します」「お子さま向けの食事もご用意できます。
年齢に合わせてご相談ください」「量が多いと感じる方には、品数を減らしたご用意もできます」。不安に答える一文があるだけで、お客様は安心して予約に進めます。
宿の人の顔を見せる
公式サイトで予約する理由の中でも、宿の人の顔が見えることは大きな力を持ちます。予約サイトの掲載ページでは、宿の人の紹介を載せる場所がほとんどありません。
公式サイトでは、それができます。
| 紹介する人 | 書く内容の例 | お客様に伝わること |
|---|---|---|
| 女将や支配人 | お客様をお迎えするときに大切にしていること | 宿の考え方が分かる |
| 料理長 | 季節ごとに使う地元の食材と、その理由 | 夕食への期待がふくらむ |
| フロントの担当 | 到着の前に相談を受けていること | 困ったときに頼れる人がいる |
| 客室の担当 | 部屋を整えるときに気をつけていること | 細やかな心配りが伝わる |
写真が難しいスタッフについては、手元の写真や後ろ姿に、名前と一言を添えるだけでもかまいません。お客様は、どんな人たちが自分を迎えてくれるのかを思い描けるだけで、公式サイトで予約する気持ちが強くなります。
宿の種類によって、お客様の迷い方が違う
ひと口に宿といっても、種類によってお客様の迷い方は違います。公式サイトの最初の画面で答えるべきことも変わってきます。
| 宿の種類 | お客様が最初に迷うこと | 最初の画面で答えたいこと |
|---|---|---|
| 旅館 | 夕食や大浴場の決まりごとが自分に合うか | 夕食の時間と形式、大浴場の使い方 |
| ペンションや民宿 | 家族経営の宿で気を使わずに過ごせるか | 宿の人との距離感と、ひとりの時間の過ごし方 |
| ビジネスホテル | 仕事の移動に便利か、翌朝早く出られるか | 駅からの道順、朝食の時間、早朝の出発の対応 |
| 小規模なリゾートホテル | 天気が悪い日でも楽しめるか | 館内での過ごし方と、雨の日の案内 |
表の右の列は、どれも予約サイトの一覧では伝えにくい情報です。自分の宿の種類に合わせて、最初の画面で答える迷いを選んでください。
引き算で残すものと外すもの
最後に、公式サイトのトップページで残すものと外すものを分けておきます。
| 区分 | 具体的な要素 | 理由 |
|---|---|---|
| 最初の画面に残す | どんな旅に向く宿かの一言、公式だけの違い、目的別の3プラン | 迷いの1番目から3番目に直結する |
| 下の段に移す | 宿の歴史、こだわりの説明、プランの全一覧 | 大切だが、予約の直前に最初に知りたいことではない |
| 外してよい | 意味の薄い装飾写真、古いままのお知らせ | 最初の画面を埋め、情報の新しさを疑わせる |
| 書かない | 守れない約束、実態より大きく見せる表現 | お客様の期待を裏切り、口コミで信頼を落とす |
足すより外すほうが勇気がいります。それでも、最初の画面で伝えることを絞ると、残った一言と違いとおすすめのプランが、お客様の目にはっきり入るようになります。
泊まったお客様と次の旅でつながる
公式サイトを直す作業は、初めてのお客様のためだけのものではありません。一度泊まったお客様が次の旅行を考えたとき、真っ先に開いてもらえる場所にすることも、同じくらい大切です。
チェックアウトのときに、公式サイトの役割を伝える
お客様が宿を出るときに、公式サイトのことを一言伝えます。「次にお越しの際は、公式サイトからご予約いただければ、今回のお好みを覚えておいてご用意します」。
このように伝えると、公式サイトはお客様にとって「自分のことを覚えていてくれる宿の窓口」になります。
チェックアウトのときに渡す紙に、公式サイトの二次元コードと、宿の人の名前を入れておくのもよい方法です。次の旅行を考えたとき、その紙を見て公式サイトを開いてもらえます。
泊まったあとの一通
泊まってくれたお客様には、数日以内に短いお礼を送ります。予約のときに連絡先を直接いただいている公式サイトのお客様なら、宿の側から送ることができます。
お礼の言葉、滞在中に話していたことへの一言、次の季節の宿の様子。売り込みの文言は入れずに、宿の人の言葉で書きます。
この一通があるお客様とないお客様とでは、次の旅行で宿を思い出してもらえる確率が変わってきます。予約サイト経由のお客様とは、この一通を送る手段が限られることを考えると、公式サイトからの予約を増やす意味がよく分かります。
再訪のお客様の記録を、次の滞在に生かす
公式サイトから予約してくれたお客様の好みや、滞在中に話したことを、次の滞在のために記録しておきます。部屋の眺めの好み、苦手な食材、記念日の有無。
次に予約が入ったときに、その記録を見て準備をしておけば、お客様は「覚えていてくれた」と感じます。
こうした記録は、個人情報として大切に扱う必要があります。記録する内容は、お客様の滞在をより良くするために必要なものに絞り、お客様に伝えている使い道の範囲で使ってください。
覚えていてくれる宿という印象は、どんな割引よりも強く、次の予約につながります。
予約サイトとの付き合い方
ここまで公式サイトの話をしてきましたが、予約サイトをやめる必要はありません。予約サイトは、宿を知らない多くのお客様に見つけてもらうための大切な入口です。
考え方としては、予約サイトを「見つけてもらう場所」、公式サイトを「決めてもらう場所」と役割を分けます。
予約サイトの掲載ページにも、公式と同じ約束を書く
予約サイトの掲載ページでも、どんな旅に向いている宿かの一言や、到着前に宿の人が相談を受けることを書いておきます。予約サイトで宿を見つけたお客様が、公式サイトを確かめに来たときに、同じ言葉で同じ約束が書いてあれば、宿の人柄が一貫して伝わります。
注意したいのは、予約サイトとの契約で決められている条件を守ることです。掲載ページで公式サイトへの誘導がどこまで許されているかは、予約サイトごとの規約を確かめてください。
予約の経路の割合を、少しずつ動かす
いきなり予約サイトの割合を大きく減らす必要はありません。公式サイトからの予約の割合を、半年で少しずつ上げていくことを目標にします。
割合が上がれば、手数料の負担が減り、その分をお客様への心配りや、スタッフの手当てに回せるようになります。
スタッフの負担を増やさない進め方
ここまでの作業を、経営者ひとりで進めようとすると続きません。小さな宿ほど、日々の接客と予約の管理で手一杯です。
負担を増やさないために、役割を分けて少しずつ進めます。
材料は日々の会話の中にある
公式サイトに書く材料は、机に向かって考えるより、日々の会話の中から集めるほうが確かです。チェックインのときにお客様から聞かれたこと、チェックアウトのときに言われたうれしい言葉、電話でよく受ける質問。
フロントに小さなノートを置いて、スタッフが気づいたことを一行ずつ書いておくだけで、1か月もすれば公式サイトに書くべきことがたまっていきます。
よく聞かれる質問は、そのまま公式サイトのよくある質問に載せます。お客様が実際に迷ったことなので、次のお客様の迷いにもそのまま答えられます。
月に1度、最初の画面を見直す
月に1度、10分だけ時間を取って、公式サイトの最初の画面が今の宿の実態と合っているかを確かめます。季節が変わっていないか、お知らせが古くなっていないか、おすすめのプランが今の時期に合っているか。
最初の画面だけを見直すと決めておけば、忙しい宿でも続けられます。
地図アプリのプロフィールにも同じ約束を置く
宿の名前で検索すると、地図アプリのプロフィールが表示されることがよくあります。お客様はそこで写真や口コミを見て、公式サイトへのリンクを押すこともあります。
プロフィールの説明文にも、どんな旅に向いている宿かの一言と、到着前に宿の人が相談を受けることを書いておきます。
写真には、外観や客室に加えて、夕食の時間や朝の散歩道など、滞在の流れが分かる写真を加えます。口コミには、定型文を避けて、一つひとつの内容に具体的に返信します。
プロフィール、予約サイト、公式サイトの3つが同じ言葉で同じ約束をしていると、宿の人柄が一貫して伝わります。
公式サイトで予約してくれたお客様に、理由を聞いてみる
直した公式サイトが効いているかを確かめるには、公式サイトで予約してくれたお客様に、チェックインのときに一言聞いてみるのがいちばん確かです。
「公式サイトからご予約いただいた決め手は何でしたか」。答えは人によって違いますが、「到着前に相談できると書いてあったので」「おすすめのプランが分かりやすかったので」といった言葉が返ってくれば、最初の画面の直しが効いている証拠です。
反対に「予約サイトより少し安かったので」という答えばかりなら、値段以外の理由がまだ伝わっていないということです。聞いた答えをノートに書き留め、月に1度の見直しのときに読み返せば、次に直す場所が見えてきます。
お客様の言葉は、どんな解析の数字よりも具体的に、公式サイトの効き目を教えてくれます。
今日からできる点検
ここまでの内容を、今日のうちに公式サイトを開いて確かめられる形にまとめました。上から順に確かめて、最初に「いいえ」になった行が、最初に直す場所です。
| 点検する場所 | 確かめること | いいえだった場合に今日やること |
|---|---|---|
| トップの最初の画面 | どんな旅に向いている宿かが一言で書いてあるか | いちばん喜ばれてきたお客様の姿を一言にする |
| トップの最初の画面 | 公式で予約すると何が違うかが具体的に書いてあるか | 宿の人が直接できることを3つ書き出す |
| 最初の画面のすぐ下 | 旅の目的別のおすすめプランが3つに絞ってあるか | 目的とプランを1対1で結ぶ |
| 予約ボタンの近く | 予約の手順と支払い方法が先に書いてあるか | 手順を3行で書き、支払い方法を添える |
| お知らせの欄 | 最新の日付が3か月以内か | 古いお知らせを外し、今月の宿の様子を1つ書く |
| チェックアウトの紙 | 公式サイトの案内と宿の人の名前があるか | 二次元コードと名前を入れた紙を作る |
6行すべてを一度に直す必要はありません。1週間に1行ずつ進めれば、1か月半で最初の画面の役割が入れ替わります。
冒頭の相談者にとって、何が助けになるか
冒頭のQ&Aサイトの相談者は、泊まりたいホテルは決まっているのに、どこで予約すれば損をしないのか分からずに迷っていました。もしそのホテルの公式サイトの最初の画面に、公式で予約すると何が違うのかが具体的に書いてあり、予約の手順と支払い方法が先に分かれば、相談者はQ&Aサイトで質問する前に予約を済ませていたはずです。
お客様は、宿を選んだあとも、予約する場所で迷っています。その迷いに先に答えることが、宿にとってのいちばん誠実な集客になります。
よくある質問
Q. 公式サイトの料金を予約サイトより安くしないと、直接の予約は増えませんか
値段の差は分かりやすい決め手ですが、それだけに頼ると値段の競争に戻ります。まずは、公式で予約してくれたお客様にだけ伝えられることを具体的に書いてください。
到着前の相談や部屋の希望の調整など、宿の人が直接できることは、値段の差より記憶に残ります。料金の設定については、予約サイトとの契約の条件も確かめたうえで判断してください。
Q. プランを3つに絞ると、他のプランを選びたいお客様を逃しませんか
絞るのは最初の画面で前に出すプランだけです。他のプランは、その下に一覧で残しておけば、探したいお客様はたどり着けます。
3つに絞ることで、多くのお客様が迷わずに選べるようになり、全体として予約に進む人が増えます。
Q. 予約エンジンの画面は変えられません。どうすればよいですか
予約エンジンの画面そのものを変えられなくても、その手前の公式サイトで手順を先に示すことはできます。予約ボタンの近くに「日付と人数を選ぶ」「プランを選ぶ」「お名前と連絡先を入力する」と3行で書き、支払い方法も添えておきます。
画面が切り替わる前に手順が分かっていれば、お客様は不安にならずに進めます。
Q. 海外のお客様向けに、全ページを翻訳する必要がありますか
全ページの翻訳は急がなくてかまいません。まずは、予約の直前に迷いやすいこと、たとえば夕食の時間、大浴場の使い方、チェックインの時刻、支払い方法を、分かりやすい日本語で1ページにまとめてください。
そのページを翻訳するところから始めれば、少ない手間で海外のお客様の迷いに答えられます。
Q. 公式サイトを作り直さないと、この変更はできませんか
作り直しは要りません。今のトップページの最初の画面に、どんな旅に向く宿かの一言と、公式だけの違いと、目的別の3プランを足し、大きな写真を少し下へ移すだけで始められます。
更新の仕組みが分からない場合は、制作を依頼した会社に「最初の画面の入れ替え」として頼めば、全面的な作り直しよりずっと小さな作業で済みます。
まとめ
観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊でほぼ横ばいでした。旅館の客室稼働率は38.2%、簡易宿所は29.6%と、小さな宿ほど空いている部屋が多い状況です。
その中で多くの宿は予約サイトに頼り、公式サイトは予約サイトの縮小版のようになっています。
お客様は泊まる宿を決めたあとも、どこで予約すればよいかで迷っています。割引を深くする、特典やプランを増やす、写真を作り直す前に、公式サイトの最初の画面をお客様の迷いの順番に並べ替えてください。
どんな旅に向く宿かを一言で書き、公式で予約すると何が違うのかを具体的に書き、目的別のプランを3つに絞り、予約の手順を先に見せる。
そこから始めれば、公式サイトは「決めてもらう場所」として働き始めます。
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