「新しいことをひととおり試したのに、新規のお客さまが増えない」という相談
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。会社の売上を伸ばすために新規顧客の獲得へ本腰を入れたい。そう思って広告も出し、SNSのアカウントも作り、チラシもまいた。ところが数か月たっても、問い合わせも見積もり依頼もほとんど増えない。投稿主は「やれることは全部やったつもりなのに、どこが悪いのか分からない」と書いていました。手を動かした分だけ疲れがたまり、成果だけが戻ってこない。読んでいて、その徒労感が画面越しに伝わってくる文面でした。
同じ景色を、私は相談の場で何度も見てきました。あるサービス業の経営者は「チャネルはひととおり試したのに、どれも問い合わせにつながらないんです」と肩を落としていました。試した施策を書き出してもらうと、一枚の紙が埋まるほどありました。足りないのは施策の数ではありませんでした。増やしたどの入口も、来た人を同じ場所で取りこぼしていたのです。入口の数を数えるより先に、来た人がどこで消えているのかを数えるべきでした。
この記事は、その取りこぼしの正体をひとつずつ解きほぐしていきます。読み終えたときに、あなたの会社で新規顧客の獲得のために今日直せる場所が、少なくとも1つは具体的に決まっている。その状態を目指して書きました。新しいチャネルをもう1つ足す前に、いま来ている見込み客を1つ多く取りこぼさない。この引き算の順番を、画面のどこに手を入れるかまで落とし込みます。専門の道具も、追加の費用も、まずは要りません。要るのは、足す発想を一度手放して、取りこぼしを塞ぐ発想に切り替える判断だけです。
チャネルを増やしても増えないという切実な声
新規顧客が増えないという悩みは、経営者にとって数字以上の重さを持ちます。かけた広告費、費やした時間、そして「うちの商品には価値がある」という信念が、まとめて宙に浮いてしまう感覚を伴います。だからこそ、原因を「まだ試していないチャネルがあるからだ」と外側に求めてしまいやすい。次はあの媒体、次はあの手法、と入口を足す方向に考えが向きます。ここで方向を間違えると、穴の空いた場所とは別のところを一生懸命に補強し続けることになります。
増えない状態の裏側には、ほぼ必ず共通した構造があります。そもそも見込み客が来ていないか、来ているのに一歩を踏まずに帰っているか、そのどちらかです。この2つは打ち手がまるで違います。来ていないなら見つけてもらう対策が要り、来ているのに動いていないなら来たあとの引き算が要る。同じ「増えない」でも、原因が正反対のことがあるのです。まず自社がどちらの状態にあるのかを見分けるところから始めます。
これは9割の企業が通る道です
安心してほしいのは、この壁が特殊な失敗ではないという事実です。新規顧客の獲得に取り組む中小企業の9割が、程度の差こそあれ同じ場所でつまずきます。入口を増やせばお客さまが来る、来れば買ってくれる、という前提のズレは、業種を問わず起こります。飲食でも、士業でも、製造でも、建築でも、同じ壁が現れます。つまり、これは営業力の問題というより、獲得の設計の考え方の問題です。誰も順番を教えてくれなかった、というだけのことです。
考え方の問題であれば、直せます。才能や予算の問題ではありません。どこに何を置き、何を消し、どの順番で足すかという判断の問題です。判断の基準さえ手に入れば、今ある入口と今あるサイトのまま、今日から手を入れられます。ここから先は、その判断の基準を、実際の画面を思い浮かべられる粒度で示していきます。
なぜ新規顧客が増えないのか。原因は「入口が足りない」ではありません
新規顧客が増えないと分かると、担当者はまず「入口が足りないのだろう」と考えます。もう1つ媒体を増やそう、別の手法も試そう、露出をもっと増やそう。前向きな努力です。ところが、この努力が成果を遠ざけることがあります。見込み客が本当につまずいているのは、入口の少なさではありません。来たあとに「これは自分向けか」を短い時間で判断できず、一歩を踏む前に帰ってしまうことです。判断できないから、読む前に戻るのです。
訪れた人は、あなたの案内を丁寧に読んでくれる前提の存在ではありません。開いた瞬間に「これは自分向けか」を判断し、少しでも迷えば戻ります。この判断にかかる時間は、およそ3秒と言われます。3秒のあいだに伝わらなければ、どれだけ良い商品でも存在しないのと同じ扱いになります。片手で、いくつも開いたタブの1つとして見られている。それが、新しく来た見込み客の現実です。
ここに、入口を足す打ち手の落とし穴があります。入口を増やすほど、1つずつの入口から来た人を受け止める力は薄まります。5つの媒体に手を広げれば、どの媒体の受け皿も中途半端になる。目立たせたい入口が5つあれば、どれも磨ききれません。結果として、手を広げた会社ほど1件あたりの獲得が重くなるという、直感に反する現象が起こります。まじめに手を広げた人ほど、この罠に深くはまります。
入口を足すほど1件が遠のく構造
なぜ足すほど遠のくのか。手も時間もお金も有限だからです。1つの入口に集中すれば、その入口の受け皿を磨き込めます。5つに散らせば、どれも磨ききる前に力が尽きます。増やした入口のひとつひとつは正しくても、合計すると受け皿がどれも中途半端になる。これが構造的な原因です。良かれと思った横展開が、1つずつの入口の質を下げています。
ある製造業の経営者は「新しいことを増やす前に、いま来ている人がどこで消えているのかを知りたい」と話していました。この一言が、順番のすべてを言い当てています。消えている場所を知らないまま入口を足すと、増えた分だけ同じ場所で消えていく。まず、いま来ている人がどこで消えているかを数える。話はそこから始まります。
見込み客は3秒で「自分向けか」を判断する
最初の画面で見込み客が知りたいのは、たった1つです。「ここは自分の悩みを解決してくれる場所か」。この問いに最初の画面が答えていなければ、下までは読まれません。会社の歴史も、商品のこだわりも、その問いに答えたあとで初めて意味を持ちます。順番を逆にすると、せっかくの中身が読まれないまま捨てられます。玄関で自分の家か分からなければ、誰も靴を脱ぎません。
見込み客の内心は、たとえばこうです。「この会社は自分の困りごとを分かってくれるのか、それとも違うのか」。この不安に最初の一文で応えること。それが、入口をもう1つ増やすことよりもはるかに効きます。「雨漏りを何度直しても再発して困っている方へ」と最初に書いてあれば、まさにその悩みの人は、続きを読む理由を得ます。宛先を名指しされた人は、足を止めるのです。
| 経営者の思い込み | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 入口が足りないから増えない | 入口は増えたのに受け皿がどれも中途半端 | 入口を足す前に来た人の消える場所を数える |
| 広告費が足りないから増えない | 来訪はあるのに最初の画面で戻られている | 最初の画面を「誰の何を解決するか」に絞る |
| 商品力が弱いから増えない | 商品の前に自分向けかどうかが伝わっていない | 宛先の1文で「これはあなた向け」を先に示す |
| 営業が弱いから増えない | 一歩を踏む手前で見込み客が離れている | 問い合わせまでの導線を1本に短くする |
「1対5の法則」を逆から読む
新規顧客の獲得を語るとき、よく持ち出される目安があります。新規のお客さまを1人獲得するには、既存のお客さまに続けて買ってもらう場合の5倍のコストがかかる、という1対5の法則です。もう1つ、既存客の離脱を5%抑えると利益が25%改善するという5対25の法則もあります。どちらも、新規獲得がいかに重い仕事かを示す数字として語られます。多くの経営者は、この数字を「だから新規獲得は覚悟して費用を積め」という意味に読みます。
この法則は、逆から読むと打ち手が変わります。新規獲得が5倍重いのなら、その5倍の入口に来た人を1人でも多く取りこぼさないことが、いちばん割の合う投資になります。同じ100人を集めるのに5倍の費用がかかるなら、その100人のうち取りこぼしを10人減らすほうが、新しく50人を集め直すよりずっと安い。獲得コストの高さは、入口を増やす理由ではありません。取りこぼしを塞ぐ理由です。ここが、順番を決める土台になります。
新規顧客の獲得と、来た人を離さない仕組みは、別々に設計する必要があります。中小企業庁が毎年公表している中小企業白書でも、販路開拓は中小企業の成長の要として繰り返し取り上げられています。裏を返せば、良い販路を開いても、来た人が最初の画面で迷って帰るなら、開いた販路はざるに水を注いでいるのと同じです。入口を開くことと、来た人を迷わせないこと。この2つは、まったく別の仕事です。
獲得コストが高いほど、取りこぼしは高くつく
1件の獲得にかかる費用は、来た人を取りこぼすたびに丸ごと捨てられます。広告で100人を集めて2人しか問い合わせに至らないなら、残りの98人分の費用は、受け皿の途中で消えています。獲得コストが高い商売ほど、この捨てられる額が大きくなる。つまり、獲得が重い商売ほど、受け皿の引き算が効きます。高い費用をかけて連れてきた人を、最初の画面で帰らせているなら、その1件は最も高くついた取りこぼしです。
この視点に立つと、優先順位が入れ替わります。次のチャネルを探す時間の一部を、いま来ている人がどこで消えているかを見る時間に回す。消えている場所を1つ見つけて塞げば、これまで集めてきたすべての入口の歩留まりが同時に上がります。1つの受け皿の改善が、全部の入口に効く。これが、取りこぼしを塞ぐ引き算のいちばんの利点です。
| 法則の読み方 | よくある解釈 | 逆から読んだ打ち手 |
|---|---|---|
| 1対5の法則 | 新規は重いから費用を積む覚悟をする | 重いからこそ来た人を1人多く取りこぼさない |
| 5対25の法則 | 既存客の維持に力を入れる | 一度きた人を次につなぐ受け皿を先に整える |
| 獲得コストが高い商売 | もっと集めれば数で解決すると考える | 捨てている費用が大きいほど受け皿を優先する |
| 入口の数 | 増やすほど獲得が増えると考える | 1つの受け皿改善で全入口の歩留まりを上げる |
経営者がやってしまいがちな間違った打ち手
新規顧客が増えないと分かったとき、経営者が最初に取りがちな手は決まっています。チャネルをもう1つ増やす、広告費を積み増す、値下げで振り向かせる。どれも前向きな行動です。ところが、取りこぼす構造をそのままにして入口や費用を足しても、取りこぼす人が増えるだけです。打ち手の方向が、原因とかみ合っていません。がんばるほど費用が出ていくのに、獲得は横ばい。この徒労感が、経営者をいちばん消耗させます。
ここで大切なのは、これらの打ち手を全否定することではありません。順番の問題です。取りこぼしを塞ぐ前に入口や費用を足すと、支出は増えても獲得は増えない。逆に、取りこぼしを塞いでから足せば、同じ費用がきちんと獲得に変わります。順番を守るだけで、使うお金の効きが変わります。まず穴をふさぎ、それから水を注ぐ。この順序を、次の3つの打ち手で具体的に確かめます。
チャネルをもう1つ増やす。散らして薄める
新しい媒体を1つ足せば、そこから新しい人が来る。この期待は自然です。ところが、いまある入口の受け皿が整っていないなら、新しい媒体から来た人も同じ場所で取りこぼします。しかも、手と時間が5つ目の入口に分散し、既存の入口の受け皿を磨く余力がさらに減ります。増えるのは、管理する入口の数と、取りこぼす人の数です。どの入口も中途半端なまま、疲れだけが積み上がります。
入口を足すのが効くのは、いまある入口の受け皿を磨ききって、それでも母数が足りないと数字で分かったあとです。まだ受け皿に伸びしろがあるうちに横へ広げると、伸びしろを残したまま力が散ります。まず1つの入口とその受け皿を、これ以上は上がらないところまで磨く。次の入口の話は、そのあとです。順番はここから始まります。
広告費を積み増す。穴の空いたバケツに水を注ぐ
広告は、来訪を増やします。来訪が増えれば獲得も増える、という期待は自然です。ところが、最初の画面で3秒以内に「自分向け」と伝わらないなら、増えた来訪もそのまま戻ります。バケツに穴が空いたまま水を足しても、たまる水は増えません。増えるのは、注いだ水の量、つまり出ていく広告費だけです。ある経営者は「広告を止めたら、その月から問い合わせがぴたりとゼロに戻りました」と話していました。広告が獲得を生んでいたのであり、受け皿が生んでいたのではなかったのです。
広告を止めた瞬間に獲得がゼロに戻るなら、それは受け皿が獲得を生んでいたわけではありません。土台をつくらずに広告に頼ると、蛇口を締められない状態が続きます。売上を守るために広告をやめられず、利益を広告費に吸われ続ける。まず穴をふさぐ。広告の話は、そのあとです。受け皿が整えば、同じ広告費が何倍にも効きます。
値下げで振り向かせる。価格で来た人は価格で去る
反応がないと、価格が高いせいだと考えがちです。下げれば一時的に振り向く人は増えます。しかし、価格の安さで来た人は、より安いところが現れれば同じ理由で去ります。しかも一度下げた価格は戻しにくく、利益を削ったまま獲得を続けることになります。価格を下げる前に、その商品の価値が最初の画面で伝わっているかを確かめてください。伝わっていないから高く見えているだけ、ということがよくあります。
価値が伝わっていないサイトで価格を下げると、安さだけが理由の獲得が積み上がります。値引きが前提の関係は、続けるほど自社を苦しめます。まず、誰のどんな困りごとをいくらの価値で解決するのかを、言葉で伝えきる。価格の判断は、そのあとです。価値が伝われば、価格を下げなくても振り向く人がいます。
| 間違った打ち手 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| チャネルを増やす | 手が分散して既存の受け皿が磨けない | いまある入口の受け皿を磨ききる |
| 広告費を積み増す | 戻られる受け皿に来訪だけが増える | 最初の画面を直してから広告を出す |
| 値下げで振り向かせる | 安さで来た人が安さで去っていく | 価値を言葉で伝えてから価格を考える |
| とにかく数を追う | 取りこぼす構造のまま母数だけ増やす | 歩留まりを1点上げてから母数を増やす |
発想の転換。「売れるサイトはみな謙虚」という考え方
ここまでの話をひっくり返すと、1つの原則にたどり着きます。売れるサイトはみな謙虚です。謙虚なサイトとは、自社を大きく語るサイトの反対にあります。来た人の迷いを自分から引き受け、進む道をこちらで整え、余計な選択を求めない。見込み客に頭を使わせないことを、親切だと考えるサイトのことです。声を張り上げて自分を売り込む姿勢とは、対極にあります。新規顧客の獲得も、この謙虚さの上に成り立ちます。
謙虚の逆は、来た人に判断を丸投げするサイトです。「詳しくはこちら」「あれもこれもあります」と並べ、選ぶ責任を相手に預ける。見込み客はその責任を負いたくないので、静かに離れます。謙虚なサイトは、その責任を自分で引き受けます。あなたはこの道を進めば大丈夫、と手を引く。だから見込み客は迷わずに済み、次の一歩を踏み出せます。強さの誇示より、迷いの肩代わりが、獲得を生みます。
この発想の転換は、入口を足す競争から、取りこぼしを塞ぐ引き算への転換です。何本のチャネルを持つかを競うのをやめて、来た人が最初の一歩を踏むまでにどこで消えるかを考える。この視点に立つと、直す場所が急に見えてきます。獲得は、入口から一歩までの3段の道でできています。まずはその道のどこで人が漏れているかを、1枚の図で見てください。
謙虚なサイトとは、来た人の迷いを引き受けるサイト
謙虚なサイトは、来た人に「あなたはこれで合っています」と最初に伝えます。あなたの悩みはここで解決できる、進む先はこの1つ、と道を示す。見込み客は自分で地図を描く必要がなく、示された道をたどるだけで済みます。この「考えさせない」という配慮が、問い合わせという一歩につながります。案内係が先回りして「こちらへどうぞ」と言ってくれる店で、人は安心して奥まで進むのです。逆に、入った瞬間に案内板だけが並び、誰も声をかけてくれない店では、人はすぐに引き返します。謙虚なサイトは、その案内係の役目を最初の画面に持たせます。
来た人に選ばせるサイトは、丁寧に見えて実は不親切です。選択肢の多さは自由に見えて、判断の負担を相手に押しつけています。謙虚とは、その負担をこちらで引き取ること。強さを誇示せず、見込み客の一歩を静かに支える姿勢です。自社の実績を語る前に、相手の困りごとを言い当てる。その順番に、謙虚さは表れます。語る量を減らし、相手を見る量を増やすのです。
足す競争から、塞ぐ引き算へ
引き算は、施策を捨てる作業ではありません。順番をつける作業です。いちばん取りたい一歩を決め、それを邪魔する要素を最初の画面から一時的にどける。どけた要素は、必要な人が必要なときに深いページで受け取れるようにしておく。全体の情報は残しつつ、最初の一画面だけを潔くする。これが引き算の実像です。施策を消すのではありません。順番の後ろに送るだけです。
次の章から、取りこぼしを塞ぐ引き算を4つに分けます。来ている人を数える、宛先を1行にする、導線を1本にする、不安を先に消す。どれも今日から手をつけられます。順番に読み進めれば、自社のどこに手を入れるかが1つずつ見えてきます。全部をいきなりやる必要はありません。まず1つ、いちばん手をつけやすいところから始めれば十分です。
引き算1 いま来ている見込み客を数える
最初の引き算は、新しい入口を探すことではありません。いま来ている人の数を知ることです。アクセス解析で先月の来訪数を見て、同じ期間の問い合わせ数と並べる。この2つの数字が、次に足すべきか塞ぐべきかを決めます。来訪が二桁なら、まず見つけてもらう対策が要ります。来訪が三桁以上あって問い合わせがほとんどないなら、母数の問題ではありません。来たあとの取りこぼしの問題です。
1件の問い合わせを得るには、目安として50人から100人の来訪が要るとされます。仮に月に30人しか訪れていなければ、そもそも母数が足りません。逆に、月に500人が訪れて問い合わせが0件なら、入口をもう1つ足しても同じ場所で消えるだけです。数字を見れば、人を増やすべきか、取りこぼしを塞ぐべきかが判断できます。この判断を感覚でやると、たいてい逆の手を打ちます。
足すか塞ぐかは、2つの数字で決まる
自社の数字を確かめる手順は単純です。無料の解析でも、月間の来訪数と問い合わせ数の2つは今日から見られます。来訪が二桁なら見つけてもらう対策が先、三桁以上あって問い合わせがほぼ0件なら取りこぼしを塞ぐのが先。この一枚の判断表を持っておくだけで、次の一手を感覚で決めずに済みます。新しいチャネルの検討は、この2つの数字を見てからでも遅くありません。
数字を見る習慣がつくと、打ち手の答え合わせができるようになります。取りこぼしを塞いだあとに、最初の画面で戻る割合が下がり、問い合わせに至る割合が上がっていれば、その引き算は正解でした。感覚は当てになりません。数字が正解を教えてくれます。効いた引き算は残し、効かなかった引き算は元に戻す。この答え合わせを1つずつ積み重ねれば、獲得は確実に安定していきます。
| 数字の状態 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 月の来訪数が二桁 | 母数が足りず問い合わせが生まれにくい | 見つけてもらう対策から先に着手する |
| 来訪は三桁だが問い合わせ0件 | 来訪はあるのに来たあとで取りこぼしている | 最初の画面と導線の引き算を優先する |
| 入口ごとの数を見ていない | どの入口が効いているか分からない | 入口ごとに来訪と問い合わせを分けて見る |
| 数字を見ていない | 当てずっぽうで足して答え合わせができない | 来訪数と問い合わせ数を毎月並べて見る |
引き算2 「誰のための会社か」を1行にする
2つ目の引き算は、宛先を絞ることです。すべての人に向けた一文は、結局、誰の心にも刺さりません。「地域の皆さまへ」よりも「安城市で相続の相談先を探している方へ」の方が、当てはまる人にはまっすぐ届きます。宛先を狭めるほど、当てはまった人にとっての強さが増します。狭めることは、獲得の機会を捨てることではありません。当てはまる人の反応を、確実に拾いにいく行為です。
宛先を1行にすると、その1行が最初の画面の背骨になります。写真も、見出しも、ボタンの文言も、その1行に沿って選べるようになる。判断の基準ができるので、迷ったときに何を残し何を消すかが決まります。この写真はこの宛先に合っているか、と自問できるようになる。宛先の1行は、サイト全体の羅針盤です。羅針盤があれば、あとの引き算はずっと楽になります。
あれもこれもは、誰にも刺さりません
幅広く受けたい気持ちは分かります。ただ、幅を広げるほど一文は抽象的になり、抽象的な言葉は誰の実感にも触れません。見込み客は「自分のことだ」と感じた瞬間に読み進めます。その瞬間をつくるには、あえて対象を絞り込み、その人の言葉で語りかける必要があります。全員に呼びかける声は、雑踏のざわめきと同じで、誰も自分宛てだと気づきません。
絞ることで取りこぼす人が心配なら、宛先を複数に分けて、それぞれ別の入口を用意する手もあります。1つの入口で全員に呼びかけるのをやめる。これも立派な引き算です。法人向けと個人向けで入口を分ける、新築とリフォームで入口を分ける。分けた分だけ、それぞれの宛先に対して語りかけが濃くなります。1つに詰め込んで薄めるより、分けて濃くする方が届きます。
| 宛先の書き方 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 皆さまへ、と広く呼ぶ | 抽象的で誰の実感にも触れていない | 職業や地域や悩みで対象を1つに絞る |
| 自社の強みから語る | 見込み客の悩みより先に自慢が来ている | 相手の悩みの言葉を主語にして書き直す |
| 対象を書いていない | 来た人が自分向けか判断できず離れる | 最初の画面に「こんな方へ」を1文置く |
| 対象が多すぎる | 入口が1つに全員を詰め込んで薄まる | 宛先ごとに入口を分けて別々に語る |
引き算3 一歩までの導線を1本にする
3つ目の引き算は、次の一歩を1つに絞ることです。1つの画面で来た人に取ってほしい行動は、原則1つに決めます。問い合わせを取りたいなら、その画面では問い合わせを最も目立たせ、他の入口はいったん控えめにする。行動の選択肢が1つなら、見込み客は迷いません。迷わなければ、動きます。飲食店の前に「本日のおすすめ」が1つだけ立っていると、人は迷わず入るのと同じです。
ボタンが多いほど押されない、という現象があります。人は選べる数が増えると、選ぶこと自体をやめてしまう。取りたい行動を1つ決め、それだけを大きく、色を変えて置く。残りは小さくたたむ。これだけで、押される率は変わります。先ほどの図で「一歩」を金色で1つだけ描いたのは、この理由です。視線の行き先を1つにそろえると、指がそこへ向かいます。
1ページ1つの行動
原則は「1ページ1つの行動」です。トップは問い合わせ、商品紹介ページも最終的には問い合わせ、というように、全ページの行き先を1つの出口へそろえます。来た人がどのページから入っても、進む先が同じなら迷いません。検索から商品ページに直接入ってきた人も、読み終えたら同じ出口にたどり着く。出口をそろえることは、サイト全体を1本の道に整えることです。
出口をそろえたら、その出口までの距離を短くします。問い合わせフォームまで何回押させているかを数え、押す回数を減らす。トップから3回押さないとフォームに着かないなら、1回で着くようにできないかを考える。距離が短いほど、たどり着く人は増えます。迷いを引き、道を1本にし、その道を短くする。この3つが、導線の引き算の全体像です。
フォームでの取りこぼしを削る
最初の画面まで整えても、最後のフォームで取りこぼすことがあります。せっかく一歩を決めた見込み客が、入力の途中で指を止める。ここは、いちばん惜しい離脱が起きる場所です。入力欄は、いま本当に必要なものだけに絞ります。会社名、担当者名、連絡先、用件。まずはこれで十分なことがほとんどです。住所や役職を最初から求めると、その分だけ指が止まります。後から聞けるものは、最初のフォームからどけておきます。
送信したあとに何も起きないと、来た人は「届いたのか」と不安になります。送信後の画面に「2営業日以内にご連絡します」と一言あるだけで、その不安は消えます。フォームの最後まで、相手の不安を引き受ける姿勢を通す。決めた人を最後の一歩で取りこぼさないための、小さな引き算です。ここまで通してはじめて、集めた見込み客が獲得に変わります。
| 導線の状態 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 入口が同じ大きさで並ぶ | 優先順位が伝わらず来た人が選べない | 取りたい行動を1つ決めて大きく目立たせる |
| ページごとに出口が違う | どこへ進めばいいか毎ページ迷わせる | 全ページの出口を1つの行動にそろえる |
| フォームまで手数が多い | たどり着く前に手間で離脱している | 問い合わせまでの押す回数を減らす |
| 入力欄が多い | 記入の負担で送信前に離れている | 必須の入力欄を最小限まで削る |
引き算4 見込み客の不安を先に消す
4つ目の引き算は、見込み客の不安を減らすことです。人が問い合わせをためらう理由は、商品への疑いより、不安の残りです。「しつこく営業されないか」「自分の悩みに合っているか」「費用の見当がつくか」。この不安が1つでも残ると、指は止まります。売り込む言葉を足すより、不安を先に消す方が、一歩は近づきます。背中を押すより、足を止めている小石を1つずつ取り除く発想です。
不安を消すには、来た人が口に出しにくい心配ごとを、こちらから先に言葉にします。「初めての方が多いので、いきなり契約にはなりません」「合わないと感じたら、その場で断っていただけます」。先回りして安心を渡すこと。これも、相手の負担を引き受ける謙虚さの一部です。見込み客が心の中で身構えている壁を、こちらから名指しして低くする。それだけで、獲得は近づきます。
証拠は、量より距離で選ぶ
不安を消すもう1つの方法は、証拠を見せることです。ただし、実績を並べるだけでは足りません。見込み客は「あなたと同じ悩みを持っていた人が、こうなった」という物語に安心します。数字を出すなら、その数字が相手の悩みとどうつながるかまで書く。証拠は、量で選びません。相手との距離で選びます。100件の実績より、自分とそっくりな1件の方が、はるかに背中を押します。
顧客の声を載せるときは、必ず本人の許諾を確認します。無断で載せると、信頼を得るための材料が、信頼を壊す原因に変わります。許諾が取れていないものは、業種や立場だけの匿名にして扱います。実名で載せてよいものと、匿名にすべきものを、事前に分けておく。証拠は、正しく集めて初めて安心の材料になります。集め方を誤ると、逆に不安を生みます。
| 見込み客の不安 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 自分向けか分からない | 最初の画面が自社紹介で埋まっている | 冒頭に「こんな方へ」の1文を置く |
| しつこく営業されそう | 問い合わせの先が見えず身構えている | 問い合わせ後の流れを事前に書いておく |
| 合うか判断できない | 証拠が実績の羅列で悩みと結びつかない | 同じ悩みを解いた事例を1つ具体的に書く |
| 相談していいのか迷う | 相談の心理的な壁が高いまま放置されている | 初回の相談で決めなくていいと明記する |
チャネル別の取りこぼし方
取りこぼしの塞ぎ方は、どの入口にも共通します。ただ、取りこぼし方には入口ごとの癖があります。自社が主に使っている入口の癖を知っておくと、どこから手をつけると効きやすいかが見えてきます。ここでは、相談の現場でよく見る入口の型を並べます。自社に近い型が見つかれば、そこから読み直してください。癖に名前がつくと、手の入れ方が具体的になります。
検索から来た人は、悩みの言葉で調べて着地します。着地したページが会社紹介から始まっていると、悩みの言葉と画面の言葉がずれて離れます。SNSから来た人は、興味の熱が冷めやすいので、着地して3秒で用件が見えないと戻ります。紹介から来た人は、期待値が高い分、最初の画面が期待と違うと落胆が大きい。広告から来た人は、広告の文言と着地ページの文言がずれていると、だまされた気持ちになって離れます。入口が違えば、着地ページに求められる一文も違います。
入口ごとに着地ページをそろえる
どの入口でも共通して効くのは、その入口の文言と着地ページの最初の一文をそろえることです。広告で「雨漏りの再発でお困りの方へ」と呼びかけたなら、着地ページの最初の一文も同じ言葉で受ける。検索で悩みの言葉から来たなら、その悩みの言葉を見出しに置く。入口で約束した言葉を、着地の最初の画面が裏切らない。この一致だけで、同じ入口の取りこぼしが減ります。
入口ごとに専用の着地ページを持てるなら、それが理想です。ただ、まずは1つの入口と1つの着地ページの言葉をそろえるところから始めれば十分です。いちばん来訪の多い入口を選び、その入口の言葉と着地の一文を合わせる。1つそろえて数字が動けば、次の入口へ同じことを広げていく。全部を一度にそろえる必要はありません。
| 入口の型 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 検索から来る | 悩みの言葉と着地の言葉がずれている | 悩みの言葉をそのまま見出しに置く |
| SNSから来る | 熱が冷めやすく3秒で用件が見えず戻る | 着地の最初の一文で用件を言い切る |
| 紹介から来る | 期待が高い分だけ画面との落差で落胆する | 紹介で聞いた話と画面の一文をそろえる |
| 広告から来る | 広告の文言と着地の文言が食い違う | 広告と着地の最初の一文を同じ言葉にする |
数字で見る獲得の歩留まり
歩留まりという言葉は工場の言葉に聞こえますが、獲得でも同じ考え方が使えます。入口に来た人のうち、最初の画面で残る割合、フォームまでたどり着く割合、たどり着いてから送信する割合。この3つを見れば、取りこぼしがどこで起きているかが分かります。感覚で直すと当てずっぽうになりますが、数字で見れば、直す場所が1つに絞れます。どの段でいちばん人が抜けているか。そこが、最初に手を入れるべき場所です。
最初の画面で大きく抜けているなら宛先の1文を、フォームの手前で抜けているなら導線を、フォームの中で抜けているなら入力欄を疑う。数字は、直す場所を名指しで教えてくれます。感覚で全体をいじる前に、いちばん漏れている一段だけを見つけて、そこに手を集中する。これが、限られた時間で獲得を伸ばす最短の道です。1つの段の歩留まりが1割上がれば、その入口から来る全員に効きます。
歩留まりを1点上げると、母数を増やさず獲得が伸びる
母数を増やすには費用と時間がかかります。歩留まりを上げるのは、いま来ている人に対する引き算なので、費用がかかりません。同じ100人の来訪でも、一歩に至る割合が2%から3%に上がれば、獲得は1.5倍になります。新しく50人を集め直すより、いまの100人の歩留まりを1点上げるほうが、ずっと軽い仕事です。獲得を伸ばす順番は、まず歩留まり、次に母数です。
歩留まりの改善は、答え合わせがしやすいのも利点です。宛先の1文を直したら、最初の画面で残る割合を1週間見る。導線を1本にしたら、フォームに着く割合を見る。1つ直して1つの数字を見る。この対応がはっきりしているので、何が効いたかが分かります。効いた引き算だけを残していけば、歩留まりは段ごとに積み上がっていきます。
| 歩留まりの段 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 最初の画面で残る割合 | 宛先が見えず3秒で戻られている | 宛先の1文を冒頭に置いて残る割合を見る |
| フォームに着く割合 | 導線が枝分かれして途中で迷う | 出口を1つにそろえ手数を減らす |
| 送信する割合 | 入力の負担で送信前に離れる | 入力欄を削り送信後の連絡を明記する |
| どの段も見ていない | 抜けている場所が特定できない | 3つの割合を並べて最も低い段を探す |
新規顧客の獲得コストを下げる考え方
取りこぼしを塞ぐと、1件あたりの獲得コストが下がります。同じ費用で集めた100人から、これまで2人しか獲得できなかったのが3人になれば、1件あたりの費用は3分の2に下がる計算です。獲得コストは、費用を削って下げるものではありません。同じ費用で取れる件数を増やして下げるものです。この考え方に立つと、値下げや費用削減より先に、歩留まりの改善に手が向きます。
もう1つ、獲得コストを長い目で下げるのは、一度きた人が二度目につながる仕組みです。1対5の法則が示すように、一度関係のできた人への案内は、新規獲得よりずっと軽く済みます。問い合わせをくれた人、資料を受け取った人の連絡先を残し、時期を見て次の一歩を案内する。この積み重ねが、新規獲得への依存を少しずつ減らします。新規で入った人を、二度目につなぐ受け皿まで用意して、はじめて獲得は割の合う投資になります。
一度きた人を、次につなぐ受け皿
問い合わせに至らなかった人も、資料だけ受け取った人も、いまは買わないだけで、将来のお客さまです。連絡先を残してもらう軽い入口を1つ用意しておくと、その人たちと関係を保てます。無料の手引きや事例集と引き換えに連絡先をいただく形なら、いきなり問い合わせよりも一歩が軽い。この軽い一歩を用意しておくことも、取りこぼしを塞ぐ引き算の一部です。
連絡先を残してもらったら、売り込みを急がないことが肝心です。相手の悩みに役立つ話を、時期を見て届ける。急かされない関係のなかで、必要になったときに思い出してもらう。この静かな積み重ねが、新規で入った人を二度目のお客さまに変えます。獲得の話は、一度きりの入口で終わらせず、次につなぐところまで含めて考えます。
| 獲得コストの見方 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 費用を削って下げようとする | 集客が細り件数がさらに減る | 同じ費用で取れる件数を増やして下げる |
| 一度きた人を追わない | 買わなかった人の連絡先が残っていない | 軽い入口で連絡先を残してもらう |
| すぐ売り込む | 急かされて相手が離れてしまう | 役立つ話を時期を見て静かに届ける |
| 新規だけに頼る | 毎月ゼロから集め直して費用が重い | 二度目につなぐ受け皿を先に用意する |
取りこぼしを塞いだ後に、初めてチャネルを足す
取りこぼしを塞いで受け皿が整ったら、そこで初めて入口を足す出番です。順番を守れば、足したチャネルがきちんと効きます。まず足すのは、見つけてもらうための対策です。見込み客が打つ言葉に合わせた記事を用意し、検索から人を呼び込む。母数を増やす施策は、取りこぼしを塞いで受け皿を整えたあとに効きます。整った受け皿があるからこそ、呼び込んだ人が一歩まで届くのです。
地域で商売をしているなら、地図アプリ上の情報を整える対策も効きます。営業時間、場所、写真、これらが正しく登録されているだけで、近くで探している人に見つけてもらえます。見つけてもらう対策と、来たあとの引き算は、両輪です。片方だけでは前に進みません。人を呼ぶ力と、取りこぼさない力。この2つがそろって、初めて新規顧客の獲得が安定して回ります。
検索で見つけてもらう
検索から人を呼ぶには、見込み客の悩みに1つずつ答える記事を積み重ねます。この記事もその1つです。悩みの言葉で書かれた記事は、同じ悩みを持つ人に届き、その人を受け皿のサイトへ運びます。ただし、運んだ先が迷路のままなら、来ても戻られます。だから取りこぼしを塞ぐのが先なのです。記事で人を呼ぶ前に、受け皿を整えておく。この順番だけは崩さないでください。
記事は一度作れば、公開している限り見込み客を呼び続けます。広告と違い、止めても消えません。時間はかかりますが、積み上げるほど効く資産になります。1本の記事が、半年後、1年後にも、同じ悩みの人を連れてくる。手が回らない場合は、この記事づくりの部分だけを外部に任せる方法もあります。まず取りこぼしを自社で塞ぎ、呼び込みを外に任せる、という分担もよく機能します。
足す順番を間違えない
入口を足す順番は、まず1つの入口を磨ききり、次に見つけてもらう対策、そのあとに新しい媒体です。この順番を守れば、どれも成果につながります。順番を飛ばして新しい媒体から始めると、取りこぼしを増やす方向に戻ってしまいます。塞いでから足す、という一本の流れを崩さないことが肝心です。足す前に、いつも一度立ち止まって、これは受け皿が整ってからかと問い直してください。
迷ったときは、いつでも引き算に立ち返ります。足したことで受け皿の負担が増えすぎたら、また潔く1つに戻す。引くと足すを行き来しながら、来た人が迷わない状態を保ちます。獲得は一度仕組みを作って終わりのものではありません。塞いで足してを続けて育てるものです。その手入れを続けた会社だけが、新規顧客を安定して獲得し続けます。
| 足す施策 | 順番を守らないと | 順番を守ると |
|---|---|---|
| 検索で見つけてもらう | 迷路の受け皿に人を運んで戻られる | 整った受け皿へ悩みの人を運べる |
| 地図アプリを整える | 近くの人が来ても用件が見えず離れる | 近くの人を受け皿へまっすぐ運べる |
| 新しい媒体を足す | 手が分散して既存の入口が薄まる | 1つを磨いた力で次の入口も磨ける |
| 証拠を充実させる | 骨格がないまま量だけ増えて迷う | 宛先に沿った証拠が一歩を後押しする |
直す場所を1つに決める考え方
ここまで4つの引き算と、足し算の順番を見てきました。全部を一度にやる必要はありません。むしろ、一度にやると何が効いたか分からなくなります。今日は1つだけ直す。それが、この記事が目指してきた着地点です。1つ直して数字を見て、効いたら次へ進む。この繰り返しが、確実に獲得を変えます。一度に10か所直すより、1か所ずつ10回直す方が、確実に前に進みます。
どれから手をつけるか迷ったら、最初の画面の1文から始めてください。宛先を1行にする引き算は、費用もかからず、今日中に終わります。効果も出やすい。最初の一歩として、これ以上ふさわしい場所はありません。この1文が決まると、そのあとの導線も、言葉も、証拠も、すべてこの1文に沿って選べるようになります。羅針盤を先に立てるから、あとの引き算が速く進むのです。
今日1つだけ直すなら
最初の画面を開いて、そこに「こんな方へ」という宛先の1文があるかを確かめてください。なければ、あなたのいちばん来てほしいお客さまを思い浮かべ、その人に語りかける1文を書きます。あれば、その1文が具体的な悩みの言葉になっているかを見直します。この1つの作業だけで、来た人の読まれ方が変わります。誰に向けた会社なのかが、最初の3秒で伝わるようになるからです。
直したら、1週間後に数字を見ます。最初の画面で戻る割合が下がっていれば、その引き算は効いています。数字が動かなければ、別の場所に原因があります。1つずつ、確かめながら進みます。焦って全部を触ると、何が効いたか分からなくなる。1つ直し、1週間見て、次へ。この地道な歩みが、入口を足しても増えなかった獲得を、着実に伸びる獲得へ変えていきます。
よくある質問
新規顧客が増えないのは、やはりチャネルが足りないからではないですか。
チャネルの不足が原因のこともありますが、相談の現場で目立つのは受け皿での取りこぼしです。まず、来訪数と問い合わせ数の2つの数字を並べてください。来訪が三桁以上あって問い合わせがほぼ0件なら、入口をもう1つ増やしても同じ場所で消えるだけです。原因は不足の側にはありません。取りこぼしの側にあります。新しいチャネルの検討は、いまある入口の受け皿を磨ききってからでも遅くありません。まず塞いで、それから足す。この順番を守れば、足したチャネルも取りこぼしにならずに済みます。
広告を出せば新規顧客は増えますか。
最初の画面で自分向けだと伝わる受け皿であれば、広告で来訪を増やした分だけ獲得も増えます。伝わらない受け皿のまま広告を出すと、戻られる来訪だけが増えます。広告を出す前に、まず最初の画面の引き算を済ませてください。順番を守るだけで、同じ広告費の効きが変わります。穴をふさいでから水を注ぐ。この順番が、広告の費用を守ります。
値下げすれば新規のお客さまは振り向きますか。
一時的には振り向きます。ただし、安さで来た人は、より安いところが現れれば同じ理由で去ります。一度下げた価格は戻しにくく、利益を削ったまま獲得を続けることになります。値下げの前に、その商品の価値が最初の画面で伝わっているかを確かめてください。伝わっていないから高く見えているだけ、ということがよくあります。価値が伝われば、価格を下げなくても振り向く人がいます。
何から手をつければいいか分かりません。
最初の画面の宛先の1文から始めてください。費用がかからず、今日中に終わり、効果も出やすい場所です。1つ直したら1週間ほど数字を見て、戻る割合が下がったかを確かめます。効いていれば次の引き算へ進みます。全部を一度にやらず、1つずつ確かめながら進めるのが近道です。迷ったら、いちばん来てほしいお客さまの顔を思い浮かべ、その人に語りかける1文を書くところから始めます。
集客の記事を書く時間も人もいません。どうすればいいですか。
まずは取りこぼしを塞ぐ引き算から始めるのがよいです。引き算は新しく作る作業ではありません。今ある受け皿を整える作業なので、時間の負担が軽く済みます。見つけてもらうための記事づくりに手が回らない場合は、その部分だけを外部に任せる方法もあります。手が足りないなら、まず1ページ分だけ試してみて、効くかどうかを確かめてから広げるのが安全です。小さく試して、効いたものだけを続ける。これが、無理なく続けるコツです。
取りこぼしを塞ぎ続けるための月1回の点検習慣
取りこぼしを塞ぐのは、一度やって終わりの作業ではありません。放っておくと、受け皿はまた足し算の方向へ戻っていきます。新しいお知らせ、新しいキャンペーン、季節のバナー。良かれと思った追加が積み重なり、気づけば最初の画面がまたにぎやかになっている。だからこそ、月に1回、決まった日に画面と数字を見直す習慣を持つと効きます。習慣にすれば、取りこぼしが小さいうちに塞げます。
点検の日には、まず最初の画面を開いて、宛先の1文がまだ生きているかを確かめます。次に、いちばん取りたい一歩がいまも1つに絞れているかを見る。そして、先月の来訪数と問い合わせ数を並べて、数字が動いたかを確かめる。この3つを毎月同じ順番で見るだけで、受け皿が足し算に流れていないかが分かります。点検は、15分もあれば終わります。
点検で「足しすぎた」と気づいたら、その場で1つだけ引きます。全部を戻す必要はありません。いちばん邪魔になっている要素を1つ、深い階層へどける。1回の点検で1つ引く。これを続けると、受け皿は足し算に戻ろうとする力に対して、静かに引き算で押し返し続けられます。育てるとは、この押し返しを毎月続けることです。
点検を仕組みにして忘れない
習慣は、意志の力に頼ると続きません。仕組みにすると続きます。毎月1日に予定を入れておく、担当者を1人決めておく、点検の順番を紙に書いて画面の横に貼っておく。こうした小さな仕組みが、点検を続けさせます。担当者が変わっても、順番が紙に残っていれば、同じ目で点検が引き継がれます。仕組みにしておけば、忙しい月でも点検が飛ばずに済みます。
点検の記録を1行だけ残すのもおすすめです。今月はどこを引いたか、数字はどう動いたか。この1行を積み重ねると、半年後に振り返ったとき、何が効いたかが見えてきます。記録は、次の判断の材料になります。感覚で覚えておくより、1行の記録が確実です。
| 点検の場面 | いま起きていること | その月にすること |
|---|---|---|
| 月初の見直しを忘れる | 気づけば足し算でにぎやかに戻っている | 毎月同じ日に点検の予定を入れておく |
| 宛先の1文が古い | 会社の変化に最初の1文が追いついていない | いまいちばん来てほしい人に1文を書き直す |
| 一歩の入口がまた増えた | 新しいお知らせが主役を奪っている | 邪魔な入口を1つ深い階層へどける |
| 効果を覚えていない | 何を引いて何が効いたか記録がない | 引いた場所と数字の動きを1行残す |
まとめ
新しいことをひととおり試したのに、新規のお客さまが増えない。この悩みの原因は、たいていの場合、チャネルが足りないことにはありません。せっかく集めた見込み客が、最初の画面で「自分向けか」を判断できず、一歩を踏む前に帰っていることにあります。入口を足すほど手は分散し、受け皿はどれも中途半端になる。新規獲得は既存客への案内より5倍重いからこそ、来た人を1人でも多く取りこぼさないことが、いちばん割の合う投資になります。売れるサイトはみな謙虚で、来た人の迷いを自分から引き受けます。
取りこぼしを塞ぐ引き算は4つです。いま来ている人を数える、宛先を1行にする、導線を1本にする、不安を先に消す。どれも今日から手をつけられます。全部を一度にやらず、まず最初の画面の宛先の1文から。1つ直して数字を見て、効いたら次へ進む。この繰り返しが、入口を足しても増えなかった獲得を、着実に伸びる獲得へ変えていきます。歩留まりを1点上げれば、これまで集めてきたすべての入口に同時に効きます。塞いでから足す。この順番を守ったとき、新規顧客の獲得は安定して回り始めます。
読み終えたいま、あなたの会社で直す場所は1つ決まっているはずです。まずは来訪数と問い合わせ数を並べ、足すべきか塞ぐべきかを見分けてください。塞ぐべきなら、最初の画面の宛先の1文を今日、書き換えてみてください。次の点検表を、その一歩の手引きに使ってください。1つずつ点検し、1つずつ直す。その積み重ねの先に、新規のお客さまが自然に届き続ける仕組みがあります。今日の1つが、半年後の景色を変えます。
| 点検する場所 | いま起きていること | その日にすること |
|---|---|---|
| 来訪数と問い合わせ数 | 数字を見ておらず足すか塞ぐか決められない | 先月の2つの数字を並べて見分ける |
| 最初の画面の1文 | 自社紹介から始まり宛先が見えない | 「こんな方へ」の1文を冒頭に置く |
| 一歩の入口の数 | 入口が並びすぎて優先順位がない | 取りたい行動を1つ決めて目立たせる |
| 問い合わせまでの手数 | フォームまで押す回数が多い | 押す回数と入力欄を1つずつ減らす |
| 見込み客の不安 | 問い合わせ後の流れが見えず身構える | 相談で決めなくていいと明記する |
| 入口と着地の言葉 | 入口で約束した言葉と画面がずれている | 入口と着地の最初の一文をそろえる |
自社のマーケティング課題を根本から解決しませんか?
ウェブサイトから要素を引き算し、訪れた人が迷わず次の一歩に進む形へ組み直す。初回60分のオンラインで御社のサイトを一緒に読み、どこから直すべきかをお伝えします。手順をまとめた無料の診断と解説動画もご用意しています。
初回は無料・60分・オンライン完結・その場で契約のお願いはいたしません

