【2026年9月19日の訂正】母数の書き方(上位3ブランドの割合の母集団)、順位の表現、アンケートの区分の書き方を訂正しました。
「SEOはやっているが、AI検索対策は別枠で考えている」という会社は多いのではないだろうか。2026年6月に公表されたある大規模調査は、この切り分け方そのものに疑問を投げかけている。
発表したのは、SEO分析ツールを提供する企業だ。2026年1月から4月にかけて、米国のAI検索プロンプト1.26億件(当初は2,500件からスタートし規模を拡大したもの)を分析し、ChatGPT・Google Gemini・Google AI Mode・Google AI Overviewsという複数のプラットフォームでのブランドの見え方を調べている。この記事では、その主要な発見と、数値を読む上で注意すべき点を整理する。
先に断っておくと、この調査の発表元はAI検索での見え方を可視化するツールを販売している当事者である。調査結果が自社の商材の必要性を後押しする方向に働きやすい構造は、読む側が織り込んでおきたい。以下では、数字そのものより、数字の性質を見極めることに重きを置いて整理する。
全プラットフォームで安定して見えるブランドは、ごく少数
調査では22業種を対象に、ブランドごとの露出状況を分析している。もっとも印象的な発見は、4つのAI検索プラットフォームすべてで毎月トップ100位以内の露出を維持できていたブランドが、わずか36社しかなかったという点だ。この36社には動画共有サービスや大手ECサイトといった巨大プラットフォームも含まれている。逆に言えば、特定の1つのプラットフォームだけで見えていても、他のプラットフォームではトップ100に入っていないブランドが大多数を占めるということだ。
業種によって、この集中度には大きな差がある。各業種のトップ10ブランドの言及のうち、ニュース・メディア業種では上位3ブランドが82.9%を占め、家電業種でも76.9%を占めるなど、少数の大手ブランドに露出が集中する寡占的な傾向が強い。一方、金融業種は41.4%、産業機器業種は42.2%と、比較的分散した構造になっている。自社の業種がどちらの傾向に近いかによって、新規参入の難易度も変わってくると考えられる。
寡占的な業種では、既に強いブランドがAI検索の回答内でも上位を占め続けやすく、新規や中小のプレイヤーが割って入る余地は小さい。一方、分散した構造の業種では、大手が独占していない分、専門性の高い情報を発信し続けることで割り込める余地が相対的に大きいと考えられる。自社の業種がどちらのタイプに近いかを把握しておくことは、AI検索対策にどれだけの投資対効果を見込めるかを判断する材料になる。
ChatGPTとGeminiでは、引用するソースの数がまったく違う
プラットフォームごとの回答生成の仕組みにも違いが見られた。ChatGPTは平均15件のソースを引用するのに対し、Geminiは平均3件と、5分の1程度にとどまる。1つのプラットフォームでの見え方を最適化したからといって、別のプラットフォームでも同じように見えるとは限らないという実務的な示唆がここにある。
この差は、単純な技術仕様の違いというより、各プラットフォームがユーザーにどんな体験を提供しようとしているかの設計思想の違いだと捉えたほうが理解しやすい。多くの情報源を薄く並べて選択肢を示すタイプの検索体験と、少ない情報源を信頼できる根拠として深く使うタイプの検索体験とでは、そこで評価されるコンテンツの性質も変わってくる。自社のコンテンツをどちらのタイプの検索体験に最適化するかを、意識的に選ぶ必要がある。
「測定できていない」という会社が大半
この調査でもう1つ興味深いのは、マーケティング担当者自身の実態についての数字だ。調査対象のマーケティングリーダーのうち45%が、AI検索の回答内での自社の見え方を正確に測定できていないと回答している。さらに、指標を追跡できていると答えたのはわずか9%にとどまった。対策以前に、そもそも現状を把握できていない会社が大半だという実態が浮き彫りになっている。
ただし、この数字も自己申告である点は押さえておきたい。「測定できていない」という回答は、測定ツールの必要性を示す材料としてそのまま使われやすい。実務で受け止めるなら、他社の割合を気にするより、自社が測定できているかどうかを実際に確かめるほうが早い。
SEOとAI可視性を統合すると成果が出やすい、という調査結果の読み方
この発表では、1.26億件のプロンプト分析とは別に、570人超のマーケター・SEO担当者・事業主を対象にしたアンケート調査(注意確認でのフィルタ後、有効回答481人)も行われている。回答者は、自社がSEOとAI可視性対策をどれだけ統合して運用しているかを、「完全に統合」(22%)、「戦略は共同だが実行は別」(30%)、「並行して実行」(23%)、「ほぼ別々に運用」(14%)の区分で自己申告した(示された主な区分の割合で、合計は89%)。
その結果、「完全に統合」と回答したグループのうち81%が、AIプラットフォーム経由のトラフィックまたはリードが増加したと回答した。一方、「ほぼ別々に運用」と回答したグループでは、この割合は36%にとどまった。この差は大きく見えるが、正確に理解しておきたいのは、これは実際のアクセス解析データを比較したものではなく、あくまで回答者自身の自己申告によるアンケート結果だという点だ。「統合すれば必ず成果が出る」という因果関係を証明したものではなく、「統合できていると感じている会社ほど、成果が出ていると感じやすい」という相関を示した数字として受け止めるのが正確だろう。
この調査の限界
この調査を紹介する上で、いくつかの限界も正確に伝えておきたい。1.26億件のプロンプト分析は、米国のAI検索プロンプトを対象にしたものであり、日本を含む他地域のデータは含まれていない。日本語でのAI検索の傾向が同じ構造になっているとは限らない点には注意が必要だ。また、業種別の集中度に見られたような大きな差から分かるように、業種によって当てはまり方はかなり異なる。自社の業種がどちらの傾向に近いかを踏まえずに、この調査の数字をそのまま自社に当てはめるのは早計だ。
「81%」という数字についても、前述の通り自己申告アンケート(有効回答481人)に基づくものであり、母数として大規模とは言えない。この数字を「SEOとAI対策を統合すれば81%の確率で成果が出る」というように読み替えるのは、原典の趣旨から外れた解釈になる。あくまで「統合度の高さと、成果を感じている割合には相関が見られた」という範囲で理解しておきたい。
中小企業が持ち帰れる示唆
この調査から実務に活かせる示唆は3つある。1つ目は、複数のAI検索プラットフォームで一律に見えるブランドはごく少数だという前提を持つことだ。ChatGPTで見えているからといって、Geminiでも同じように見えるとは限らない。1つのプラットフォームでの成功に満足せず、複数のプラットフォームでの見え方を個別に確認する習慣が必要になる。
2つ目は、まず自社が「測定できているか」を確認することだ。調査対象のマーケティングリーダーの半数近くが、AI検索での自社の見え方を正確に測定できていないという実態は、対策以前の課題として重い。中小企業であればなおさら、高度な専門ツールを導入する前に、まずChatGPTやPerplexityで自社名や自社の商品・サービスに関連する質問を実際に打ち込んでみて、どう扱われているかを目視で確認するところから始めたい。
3つ目は、SEOとAI対策を別枠で考えないことだ。統合運用と成果実感の相関が示されたことは、両者を切り離さずに一体で設計する方向性を後押しする材料になる。既存のSEO施策の延長として、AI検索での見え方も同じ担当者・同じ視点で見ていく体制を作ることが、遠回りに見えて合理的な進め方だといえる。
まとめ:自己申告のアンケートは、傾向を掴む材料として使う
この調査は、AI検索での見え方が一部のブランドに集中しやすいこと、プラットフォームごとに引用の仕組みが異なること、そして多くの会社がそもそも現状を測定できていないことを、大規模なデータで示した。一方で「SEOとAI対策を統合すれば81%が流入増を実感」という数字は、あくまで自己申告アンケートに基づく相関であり、断定的な因果関係として扱うべきではない。調査を紹介する際は、誰が何のために出した数字かまで含めて見極めたうえで、自社の実務にどう活かせるかを考えることが大切だ。
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