デザインを整えたはずのホームページで、訪れた人がすぐに戻ってしまう。広告費をかけて人を集めても、問い合わせの数が動かない。こうした状態が続くとき、原因は一つに絞れないことがほとんどです。この記事では、離脱が起きる場所を三つの層に分けて整理し、どこから順に手を入れるかを考えます。判断の物差しには、公式に公開されている定義と基準だけを使います。
「直帰率」が指しているものは変わっている
改善の話を始める前に、言葉の定義をそろえておきます。ここがずれたまま議論すると、同じ数字を見ながら別々の結論にたどり着きます。
現行のアクセス解析では、直帰率は「エンゲージメントが発生しなかったセッションの割合」と定義されています。そして、エンゲージメントのあったセッションとは、公式の説明によれば次のいずれかを満たしたものです。
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| 滞在の長さ | 10秒以上継続する |
| 成果につながる行動 | キーイベントが発生する |
| サイト内の移動 | ページビューまたはスクリーンビューが2回以上発生する |
この三つのどれか一つでも満たせば、そのセッションは直帰として数えられません。つまり、一ページしか見なかった訪問でも、10秒以上とどまっていれば直帰から外れます。以前の解析ツールでは「1ページだけ見て離れた訪問」を直帰として数えていたため、同じ言葉でも中身が違います。
この違いは実務に響きます。たとえば営業時間だけを調べに来た人は、1ページを10秒見て用が済み、満足して離れます。旧来の数え方ではこれが直帰に入り、新しい数え方では入りません。数字の上下を追う前に、自社が見ている指標がどちらの定義なのかを確かめておくと、無駄な改善作業を避けられます。
そのうえで押さえておきたいのは、直帰率そのものは目標にしにくい指標だという点です。下げること自体を目的にすると、内容を分割してページ数を増やすといった、読み手にとって手間が増えるだけの施策に流れます。見るべきは、その先で問い合わせや予約が増えたかどうかです。
離脱が起きる場所を三つの層に分ける
離脱を「使いにくさ」の一語でまとめると、手の打ちようがなくなります。起きている場所によって、原因も対処も違うためです。ここでは三つの層に分けて考えます。
| 層 | 起きていること | 典型的な離脱の時点 |
|---|---|---|
| 着地の不一致 | 探していた内容とページの中身が合っていない | 開いて数秒 |
| 読む妨げ | 内容は合っているが、読み進めるのが苦しい | 最初の画面をこえたあたり |
| 次の一歩の不在 | 読み終えたが、何をすればよいか分からない | 最後まで読んだあと |
この順に見ていくのには理由があります。着地が合っていないページをいくら読みやすくしても、離脱は止まりません。逆に、着地が合っていれば、多少読みにくくても人は読み進めます。上の層から順に潰すほうが、労力に対する見返りが大きくなります。
第一層 着地の不一致を直す
検索から来た人は、検索窓に入れた言葉への答えを探しています。広告から来た人は、広告文に書かれていたことの続きを期待しています。開いたページの冒頭がその期待とずれていると、内容を読む前に戻ります。
検索語と見出しを突き合わせる
Search Console を開くと、どのページがどの検索語で表示されているかが分かります。表示回数の多い検索語を五つ書き出し、そのページの最初の画面に映る文言と並べてみてください。言葉が一つも重なっていないページは、着地がずれています。
直し方は、検索語をそのまま見出しに入れることだけではありません。その検索語を入れた人が何を確かめたいのかを一行で書き、冒頭に置きます。「料金」で来た人には料金の考え方を、「やり方」で来た人には手順の全体像を、最初の画面で見せます。
説明文と本文の食い違いをなくす
検索結果に出る説明文と、実際のページの中身が違うと、開いた瞬間に期待を裏切ることになります。説明文を作った時期と、本文を書き直した時期がずれていると起きやすい現象です。本文を大きく直したときは、説明文も一緒に見直す手順にしておきます。
広告から来た人には広告文の続きを見せる
広告を出しているなら、広告文と着地ページの冒頭を並べて確認します。広告で「初回無料」と書いておきながら、着地ページの最初の画面に料金の話が一言もない場合、来た人は自分が正しい場所に着いたかどうかを判断できません。
広告の文言を複数試している場合は、その数だけ着地ページの冒頭を用意するのが本来の形です。手が回らないのであれば、広告の文言を一本に絞り、着地ページの冒頭をそこに合わせるほうが、結果として費用対効果は上がります。
最初の画面に自社の宣伝を置かない
最初の画面は、来た人の状況を言葉にする場所です。ここに実績や受賞歴を並べると、来た人にとっては「自分の話ではない」と判断する材料になります。訪れた人が「これは自分の状況だ」と思える一文を置き、実績はその後ろに回します。
第二層 読む妨げを取り除く
内容が合っていても、読み進める作業そのものが苦しければ、人は途中でやめます。この層で効くのは、細かい手当ての積み重ねです。
表示の待ち時間と、読み込み中のずれ
表示速度については、公開されている共通の基準があります。Core Web Vitals という指標群で、主要な要素が表示されるまでの時間を表す LCP は2.5秒以内、読み込み中に表示位置がずれる量を表す CLS は0.1以下が良好とされています。判定は読み込みの75パーセンタイルで見る、とも定められています。
このうち、離脱への影響が見落とされやすいのが CLS のほうです。押そうとしたボタンが直前に下へ動くと、人は別の場所を押してしまいます。原因の多くは、あとから読み込まれる画像や埋め込みが場所を取ることなので、表示領域を先に確保する設定で収まります。
スマートフォンでの読みやすさ
パソコンの画面で作ったページを、そのままスマートフォンで見ると、文字が小さく行間も詰まって見えることがあります。本文は16ピクセル以上、行間は1.8前後を目安にすると、拡大せずに読み進められます。
あわせて、横方向にはみ出す要素がないかを確かめます。表や大きな画像が画面幅を超えていると、横に動かしながら読むことになり、その時点で読むのをやめる人が出ます。実機で一度スクロールしてみるのがいちばん早い確認方法です。
読み進める邪魔になるもの
開いた直後に画面を覆う案内は、内容を読む前に判断を迫る形になります。出すのであれば、ある程度読み進めた時点に置くほうが、読み手の状況に合います。閉じる操作が分かりにくいものは、閉じられないまま戻られます。
広告や自動で動く要素も同じです。読んでいる最中に視線を奪う要素が多いほど、読み手は本文への集中を保ちにくくなります。載せる数を決め、その枠内に収める運用にしておくと、後から増えていく事態を防げます。
文章そのものの読みにくさ
画面の作りが整っていても、文章の形が読む妨げになることがあります。一つの段落が十行以上続くと、画面上では文字の塊に見えます。三行から五行程度で区切り、段落と段落の間に余白を置くと、目が休む場所ができます。
見出しの間隔にも同じことが言えます。見出しから次の見出しまでが長すぎると、読み手は全体のどのあたりにいるのかを見失います。目安としては、画面を二回ほど動かしたら次の見出しが現れる程度の間隔が読みやすくなります。
また、社内でしか通じない言い回しは、読み手にとって立ち止まる原因になります。業界の用語を使う場合は、初出の箇所で短く言い換えを添えます。用語を減らすより、用語に説明をつけるほうが、内容の精度を保てます。
迷わせない案内のしかた
サイト内の案内は、いま自分がどこにいて、次にどこへ行けるかが一目で分かる状態が基本です。階層は三段までに抑え、上部の項目は七つ前後までに絞ります。項目が増えるほど、選ぶ手間が増えます。
ページ数が多い場合は、階層をたどらせる案内に加えて、現在地を示す表示と検索の窓を用意します。どちらも、目的の情報にたどり着くまでの操作回数を減らすための仕組みです。
第三層 次の一歩を用意する
最後まで読んでもらえたのに問い合わせが来ない場合、原因は本文ではなく、その先にあります。
行き先を一つに絞る
記事の末尾に、問い合わせ、資料請求、電話、他記事への案内と、複数の行き先が並んでいると、読み手は選ぶ作業を先送りします。一つのページにつき、進んでほしい先は一つに決めます。
そのうえで、本文の結論と行き先が対応しているかを確かめます。料金の考え方を説明した記事の末尾に、まったく別の話題の資料請求が置かれていると、読み手の中でつながりません。
押したあとに何が起きるかを書く
ボタンの文言が「お問い合わせ」だけだと、押したあとに何が始まるのかが分かりません。「60分のオンライン相談の日程を選ぶ」のように、次に起きることと所要時間を添えると、押すかどうかの判断がその場でできます。
合わせて、費用がかかるのか、その場で契約を求められるのかといった、押す前に気になる点を短く添えます。ここが分からないまま押させる作りは、押した先での離脱を増やします。
入力欄を減らす
フォームの項目は、営業側が「あると便利」と考えるほど増えます。ただし、増えるほど送信は減ります。初回の接点で本当に要るのは、連絡先と、状況を三択で選んでもらう程度の設問です。残りは返信のやり取りで聞けます。
入力形式の制約も見直します。電話番号のハイフンや全角半角の指定でエラーが出る作りは、そこで諦める人を生みます。受け取る側で整えられるものは、受け取る側で整えます。
遠回りになりやすい打ち手
離脱を減らそうとして、かえって遠回りになる手があります。あらかじめ知っておくと、時間の使い方が変わります。
一つは、一ページの内容を分割してページ数を増やすやり方です。見かけ上の直帰率は下がりますが、読み手にとっては読むために画面を切り替える手間が増えるだけです。指標が動いたように見えて、問い合わせの数は変わらないという結果になりがちです。
2つ目は、離脱しようとした瞬間に画面を覆う案内を出す手です。短期的には反応が取れることもありますが、次に来てもらえるかは別の話です。その場の数字と、また訪れてもらえるかどうかを分けて考えます。
3つ目は、競合サイトの構成をそのまま写す方法です。相手の構成は相手の顧客層に合わせて作られており、自社に来る人の状況とは重なりません。参考にするなら、構成そのものより「どの検索語に対してどう答えているか」という対応関係のほうです。
どこから直すかを決める
直すべき点をすべて洗い出すと、着手する前に手が止まります。順番を決める基準は二つです。影響する人数が多いか、直すのにかかる手間が小さいか。
具体的には、訪問数の多い上位五ページを対象に、着地の不一致から順に確認します。全ページを均等に見直すより、人が集まっているページを先に整えるほうが、結果に出るまでが早くなります。
そして、一度に複数の箇所を変えないようにします。同時に五か所直すと、数字が動いたときにどれが効いたのか分からなくなります。一つ変えて二週間ほど様子を見る、という進め方のほうが、社内に知見が残ります。
効果をどう確かめるか
改善の前に、いまの状態を記録します。対象ページの訪問数、エンゲージメント率、問い合わせや予約の件数。この三つを、変更日と一緒に書き留めておきます。
判断するときは、比べる期間の曜日をそろえます。平日と週末では動きが違うため、七日単位で前後を比べるのが無難です。また、季節や広告の出稿状況が変わっている期間を比べても、変更の効果は読み取れません。
最終的に見る数字は、問い合わせや予約の件数です。エンゲージメント率が改善しても件数が動かないなら、直した場所と詰まっている場所が違うということになります。そのときは、一つ下の層へ視点を移します。
よくある質問
直帰率は何パーセントを目指せばよいですか
業種やページの役割によって適正な値は変わるため、共通の目標値を置くことに意味は薄いと考えています。営業時間を知らせるページと、サービスを検討してもらうページでは、望ましい振る舞いがそもそも違います。自社の過去の値を基準に、上下の動きを見るほうが実用的です。
デザインを作り直せば解決しますか
見た目を変えても、着地の不一致が残っていれば結果は同じです。作り直す前に、検索語と冒頭の文言を突き合わせる作業を先に済ませておくと、作り直しの方向も定まります。
どれくらいで効果が出ますか
フォームの項目を減らすような変更は、翌週には送信数の変化として見えることがあります。一方、検索から来る人の数そのものが変わるまでには、数か月かかります。短期で見る指標と、長期で見る指標を分けて置いておくと、途中で判断を誤らずに済みます。
まとめ
離脱を減らす作業は、まず言葉の定義をそろえるところから始まります。現行の直帰率は「エンゲージメントのなかったセッションの割合」であり、10秒以上の滞在、キーイベントの発生、2回以上のページビューのいずれかがあれば直帰から外れます。
そのうえで、着地の不一致、読む妨げ、次の一歩の不在という三つの層に分け、上から順に手を入れます。人が集まっているページから着手し、一度に一か所だけ変え、七日単位で前後を比べる。この進め方であれば、専門の担当者がいなくても社内で回せます。
小さな不満を一つずつ取り除いた先に、問い合わせの数が動きます。まずは訪問の多い一ページを選び、検索語と冒頭の文言を並べてみるところから始めてみてください。
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