スナックを始めたものの、新しいお客様がなかなか入ってこない。
常連さんは来てくれるけれど、顔ぶれが変わらず、平日はお客様が1人も来ない夜もある。
この記事は、そうした悩みを抱えるスナックのママやオーナーの方に向けて書いています。
最初に、初めてのお客様が店の扉の前で何を考え、なぜ引き返してしまうのかを整理します。
次に、看板と地図とページに何をどの順番で書けば、初めての人が扉を開けられるのかを見ていきます。
読み終えたときに、自分の店の看板か、地図の情報か、ページのどこを最初に直すかが1つ決まっている。
そこをこの記事のゴールにしています。
Q&Aサイトで見かけた、あるスナックの悩み
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
始めたばかりで、何をすればよいか分からない
投稿者は、スナックを始めたばかりの方でした。
お店を開けてはいるものの、思うようにお客様が来ない。
集客のために何をすればよいのか教えてほしい、という短い相談です。
短い文面でしたが、店を開けて待っている夜の長さが伝わってくる質問でした。
回答者が並べた方法
回答には、昔から言われている方法がいくつも並んでいました。
地元の情報誌に載せてもらう、知り合いの居酒屋に二次会の紹介を頼む、お手洗いにお店の案内を貼らせてもらう、といった方法です。
その中に、見落とされやすい指摘が混ざっていました。
店の外から、何を売りにしている店なのかが分かる工夫がいる、という指摘と、料金の分かりやすさが大切だ、という指摘です。
この2つの指摘は、スナックの集客の核心を突いています。
別の質問者は、お客様の側だった
同じQ&Aサイトには、反対の立場からの質問もたくさんあります。
スナックに行ってみたいけれど、1人で入るのが怖い、料金がいくらになるのか分からない、常連さんばかりだったら気まずい、という質問です。
店を開けて待っているママと、行ってみたいのに扉を開けられないお客様。
この2人は、同じ夜に、同じ店の扉をはさんで向かい合っています。
これは9割のスナックが陥る罠です
スナックを始めた人と、スナックに入ってみたい人。
2つの質問を並べると、どこで話がすれ違っているのかが見えてきます。
スナックの魅力は、扉の内側にしかない
スナックのよさは、ママの人柄と、カウンター越しの会話と、そこにいるお客様同士の空気です。
どれも、扉を開けて中に座ってはじめて分かるものです。
ところが、初めてのお客様には、扉の内側が見えません。
多くのスナックは窓が小さく、扉も重く、看板には店の名前だけが書かれています。
店の魅力が扉の内側にしかないのに、初めての人は扉の外で入るかどうかを決めています。
ここが、スナックの集客がむずかしい理由の根っこです。
入りにくさは、店を守る壁でもあった
外から中が見えない作りには、理由がありました。
常連さんが安心して飲めるように、知らない人がふらりと入ってこないように、という守りの役目です。
紹介で来た人だけが入る店は、トラブルが少なく、ママも安心して店を回せます。
けれども、紹介をしてくれる常連さんが年を重ね、転勤し、来る回数が減っていくと、守りの壁はそのまま入口をふさぐ壁になります。
新しい人が入ってこないまま、常連さんだけが少しずつ減っていく。
始めたばかりのお店では、そもそも紹介してくれる常連さんがまだいません。
お客様が怖がっているのは、ママではない
初めてのお客様がスナックを怖がる理由は、ママが怖そうだからではありません。
分からないことが多すぎるからです。
いくらかかるのか、どれくらいの時間いればよいのか、常連さんの輪に入れるのか、カラオケは歌わなければいけないのか、帰りたいときにどう言えばよいのか。
扉の前に立った人の頭の中には、こうした小さな疑問が一度に浮かんでいます。
その疑問に1つも答えが見つからないとき、人は扉に手をかけずに通り過ぎます。
| 読んでいるあなたの状況 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 開店したばかりで新規のお客様が来ない | 扉の外に、入ってよい理由が1つも出ていない | 看板に料金の決まり方と、初めての方への一言を書く |
| 常連さんは来るが顔ぶれが変わらない | 紹介の流れが細くなっている | 紹介以外で店を見つけてもらう入口を1つ作る |
| 店の前で立ち止まる人はいるのに入ってこない | 扉の前で疑問に答えが見つからない | 入口の横に、店の中の写真と料金の決まり方を貼る |
| 地図で検索されているはずなのに反応がない | 地図の店の情報が空っぽに近い | 営業時間と写真と料金の決まり方を地図に載せる |
| 初めての人は来るが2回目が無い | 最初の夜の迎え方と帰り方が決まっていない | 最初の10分の迎え方と、帰り際の一言を決める |
表のどの行に近いかを1つ決めておくと、この先の話を自分の店に当てはめやすくなります。
迷う時間は、扉の前の30秒ほど
初めてのお客様が店の前で迷う時間は、それほど長くありません。
扉の前に立って、看板を見上げ、中の音に耳を澄ませ、入るか帰るかを決めるまで、30秒ほどだと考えておくと分かりやすいでしょう。
その30秒のうちに、料金の目安と、どんな店なのかと、1人でも入ってよいことが目に入れば、扉は開きます。
目に入らなければ、その人は近くのチェーンの居酒屋に入り、二度とこの通りでは立ち止まりません。
スナックの集客は、この扉の前の30秒を、店の外に書いた言葉と写真でどう埋めるかの勝負です。
扉の前の30秒は、スマートフォンの中にもある
今では、扉の前の30秒は、店の前だけで起きているわけではありません。
駅を出たあとや、一軒目の居酒屋のトイレで、スマートフォンの地図に「スナック」と打ち込み、近くの店を探す人が増えています。
地図の画面に並んだ店の中から、写真があり、営業時間が書かれ、料金の決まり方が分かる店だけが、もう一度開かれます。
画面の上で開かれなかった店は、実際の扉の前に立ってもらうこともありません。
店の前とスマートフォンの中、2つの場所で、同じ30秒の迷いが起きています。
スナックの集客がむずかしくなっている構造
では、なぜ今、スナックの集客はこれほどむずかしくなっているのでしょうか。
ママの努力不足で片づけられる話ではありません。
店の外の環境が、ここ数年で大きく変わっています。
同じ夜の街に、深夜に開いている店がこれだけある
警察庁生活安全局保安課が2026年4月に公表した資料では、深夜に酒類を出す飲食店の届出について、次のように書かれています。
「令和7年末の届出数は25万8,163件で、前年より1,435件(0.6%)増加した」
同じ資料によると、接待を伴う飲食店などの許可数も、令和7年末で5万9,695件でした。
スナックの多くは、このどちらかの形で営業しています。
夜の街には、それだけ多くの店が、同じ時間に灯りをともしているということです。
初めてのお客様から見ると、どの店も扉が閉まっていて、看板には店の名前しか書かれていません。
違いが分からない店が何十軒も並んでいると、人は結局、知っている店か、中が見える店に入ります。
紹介の流れが細くなっている
スナックの新規のお客様は、もともと紹介で来るものでした。
会社の上司に連れられて、取引先の接待で、近所の飲み仲間に誘われて。
連れてきてくれる人がいれば、料金も雰囲気も、その人が事前に教えてくれました。
けれども、会社の飲み会が減り、二次会に流れる人も減り、職場の上司が部下をなじみの店に連れていく機会は少なくなっています。
紹介の流れが細くなると、初めての人は、自分で店を探して、自分1人で扉を開けるしかありません。
自分1人で開ける扉は、連れてきてもらうときの何倍も重く感じます。
店探しの入口が、スマートフォンに移った
総務省が2026年5月に公表した令和7年通信利用動向調査によると、世帯のスマートフォンの保有割合は91.8%でした。
インターネットの利用目的では「SNS(無料通話機能を含む)の利用」が82.3%と最も高くなっています。
初めての店を探す人の多くは、店の前を歩く前に、手元の画面で店を見比べています。
地図の検索結果、口コミ、写真、SNSの投稿。
そこで何も見つからない店は、初めての人にとっては存在しない店と同じです。
紹介の代わりに、画面の中の情報が、初めての人の背中を押す役目を担うようになりました。
扉が閉まっている店ほど、悪い噂が先に立つ
スナックを含む夜の店には、昔から「入ったら高額を請求されるのではないか」という警戒がつきまといます。
いわゆる、ぼったくりへの恐れです。
実際には、まっとうに商売をしている店がほとんどです。
けれども、料金が外から分からない店は、初めての人から見ると、まっとうな店と危ない店の区別がつきません。
風営法の第17条は、接待を伴う店などの風俗営業者に、料金を「客に見やすいように表示しなければならない」と定めています。
多くの都道府県も、料金のトラブルを防ぐための条例を設けています。
料金を見えるようにすることは、決まりを守るためだけのものでもありません。
まっとうな店であることを、扉の外から証明する手段になります。
| 外の環境の変化 | 初めてのお客様に起きていること | 店の外に置くもの |
|---|---|---|
| 同じ時間に開いている店が多い | どの店も同じに見えて選べない | 自分の店がどんな店かを一言で書いた看板 |
| 紹介の流れが細くなった | 料金も雰囲気も教えてくれる人がいない | 料金の決まり方と、店の中の写真 |
| 店探しの入口が画面に移った | 地図と写真で店を見比べている | 写真と営業時間と料金の決まり方を載せた地図の情報 |
| 夜の店への警戒が強い | 高く請求されるのではと身構える | 料金の表を、入口の横か扉に貼る |
| 1人で来る人が増えた | 1人で入ってよいのか迷う | 1人でのご来店も歓迎ですという一文 |
初めてのお客様が、扉を開ける前に確かめていること
では、初めてのお客様は、扉を開ける前に、具体的に何を確かめているのでしょうか。
Q&Aサイトに寄せられる「スナックに行ってみたい」という質問を読んでいくと、確かめたいことはだいたい5つに集まります。
いくらかかるのか
いちばん多いのが、料金の心配です。
セット料金はいくらなのか、何分なのか、延長はどう数えるのか、ボトルを入れないといけないのか、ママに一杯ごちそうするのは決まりなのか。
スナックの料金は、慣れている人には当たり前でも、初めての人にはほとんど分かりません。
分からないものに、人はお金を払いたがりません。
いくらかかるかが分かれば、人は財布の中身と相談して、扉を開けるかどうかを自分で決められます。
どんな人がいるのか
次に気になるのが、店の中にどんな人がいるのか、です。
ママはどんな人か、年齢層はどれくらいか、常連さんばかりで盛り上がっていないか、女性1人でも浮かないか。
扉の向こうの空気が分からないと、人は自分が場違いになることを恐れます。
場違いになる恐れは、料金の心配と同じくらい強く、扉を開ける手を止めます。
1人で入ってよいのか
3つ目が、1人で入ってよいのか、です。
スナックは、誰かに連れてきてもらう店だという印象が根強く残っています。
1人で入ったら変に思われないか、何を話せばよいのか分からない、と不安になる人は少なくありません。
1人で来る人が増えている今、ここに答えている店は、それだけで選ばれます。
何をする店なのか
4つ目が、何をする店なのか、です。
カラオケは歌わないといけないのか、お酒が飲めなくてもよいのか、食事はできるのか、ママが隣に座るのか。
スナックと一口に言っても、店によって過ごし方はまったく違います。
カラオケで盛り上がる店もあれば、静かにママと話す店もあり、お酒の弱い人が多く集まる店もあります。
帰りたいときに帰れるのか
最後が、帰り方です。
1時間だけで帰ってもよいのか、お会計はどう頼めばよいのか、引き止められたら断れるのか。
初めての人は、入る前から、出るときのことを心配しています。
帰り方が分かっている店には、気軽に入れます。
| 初めてのお客様が確かめること | 答えが見つからないときに起きること | 看板やページに置くもの |
|---|---|---|
| いくらかかるのか | 高く請求されるのではと身構えて帰る | セット料金の中身と時間、延長の数え方 |
| どんな人がいるのか | 場違いになるのが怖くて入れない | ママの写真と、よく来るお客様の年齢層 |
| 1人で入ってよいのか | 連れがいないから今日はやめておく | 1人でのご来店も歓迎ですという一文 |
| 何をする店なのか | 自分に合う店か分からず選べない | カラオケの有無、静かに飲めるか、食事の有無 |
| 帰りたいときに帰れるのか | 引き止められそうで入れない | 1時間で帰る方も多いですという一文 |
この5つは、どれもママにとっては当たり前のことです。
当たり前すぎて、看板にもページにも書かれていない。
そこが、初めての人とママがすれ違っている場所です。
多くのママがやってしまう、遠回りの集客
お客様が来ないとき、ママが最初に手を伸ばす方法はだいたい決まっています。
どれも間違いとは言い切れません。
ただ、扉の前の30秒の不安に答えないまま続けると、手間とお金だけがかかって、新しいお客様は増えません。
割引や初回無料のチラシを配る
最初に思いつくのが、割引のチラシです。
初回はセット料金を割り引きます、1杯サービスします、と書いて駅前で配る。
割引は、料金の心配を一時的にやわらげます。
けれども、割引の後の料金が分からないままだと、初めての人は「割引の後で高くなるのでは」と、かえって身構えます。
割引に釣られて来た人は、割引が終わると来なくなり、店には安い店という印象だけが残ります。
割引を出す前に、割引の無い普段の料金の決まり方を、先に見せておく必要があります。
毎日SNSに写真を上げる
次によくあるのが、SNSに毎日写真を上げることです。
ボトルの写真、カラオケで盛り上がる常連さんの写真、ママの今日の服。
続けることは大切ですが、投稿が常連さん向けの内輪の話ばかりになると、初めての人には入りにくさが伝わってしまいます。
常連さんが肩を組んで歌っている写真は、常連さんには楽しい思い出でも、初めての人には「輪に入れなさそうだ」という合図に見えます。
投稿の中に、料金の決まり方も、1人で来てよいことも、初めての人の過ごし方も出てこない。
フォロワーは増えても、扉を開ける人は増えません。
看板を派手にする
外から目立てば入ってくれるだろうと、看板を明るくしたり、大きくしたりする方法もあります。
目立つことで、店の存在に気づいてもらうことはできます。
けれども、看板に書かれているのが店の名前だけなら、気づいた人は「何の店で、いくらかかるのか」が分からないまま通り過ぎます。
看板の明るさより、看板に書く言葉のほうが、扉を開けるかどうかを左右します。
常連さん向けのイベントを増やす
ママの誕生日、周年、季節のイベント。
イベントは常連さんに喜ばれ、その日の売上も立ちます。
ところが、新規のお客様を増やすつもりでイベントを打っても、来るのはいつもの顔ぶれということがよくあります。
イベントの日は、常連さん同士の話がいちばん盛り上がる日です。
初めての人がその日に入ってくると、輪に入れず、居心地の悪さを感じて帰ってしまいます。
イベントは常連さんへのお礼として続け、初めての人を迎えるのは、別の日に用意するほうがうまくいきます。
紹介サイトに載せて、そのままにする
スナックやバーを紹介するサイトに店を載せることも、よく選ばれる方法です。
載せること自体は、画面の中に入口を1つ増やすことになります。
けれども、店の名前と住所と営業時間だけを載せて、そのままにしている店が少なくありません。
写真が1枚も無く、料金の欄が空いたまま、紹介文が「アットホームなお店です」だけ。
同じ画面に並んだほかの店と見比べられたとき、何も書いていない店は選ばれません。
載せる場所を増やす前に、載せる中身を決めておく必要があります。
営業時間を延ばして待つ
お客様が来ないから、開ける時間を早くし、閉める時間を遅くする。
始めたばかりの頃には、店を開けている時間を長くすることにも意味があります。
けれども、扉の外に何も書かれていなければ、開けている時間が延びても、入ってくる人の数は大きく変わりません。
ママの疲れだけがたまり、肝心のお客様と話す時間の質が下がっていきます。
| よくある集客 | 扉の前の不安に答えないまま続けると | 代わりに先にやること |
|---|---|---|
| 割引や初回無料のチラシ | 割引の後が分からず、かえって身構えられる | 普段の料金の決まり方を先に見せる |
| 毎日のSNS投稿 | 内輪の写真が、入りにくさの合図になる | 初めての人の過ごし方が伝わる投稿を混ぜる |
| 看板を派手にする | 目立っても、何の店か分からず通り過ぎられる | 看板に料金の決まり方と、どんな店かを書く |
| 常連さん向けのイベント | 初めての人が輪に入れず帰ってしまう | 初めての人を迎える日を別に作る |
| 紹介サイトに載せて放置 | 写真も料金も無く、見比べで負ける | 写真と料金の決まり方と紹介文を入れる |
| 営業時間を延ばす | ママが疲れて、接客の質が下がる | 扉の外の言葉を変えてから時間を見直す |
遠回りの方法に共通していること
6つの方法を並べると、共通していることが見えてきます。
どれも、店の側から「来てください」と声を大きくする方法です。
声を大きくしても、扉の前の人が知りたいことには何も答えていません。
いくらかかるのか、どんな人がいるのか、1人で入ってよいのか、何をする店なのか、帰りたいときに帰れるのか。
この5つに答えないまま声を大きくしても、扉の前の30秒は埋まりません。
常連さんの居心地を守りたい気持ち
もう1つ、ママが新しいお客様を迎えることをためらう理由があります。
常連さんの居心地を壊したくない、という気持ちです。
初めての人が増えると、いつもの空気が変わってしまうのではないか、常連さんが離れてしまうのではないか。
この心配は、とてももっともです。
スナックの売上の多くは、常連さんに支えられているからです。
ただ、常連さんの居心地を守ることと、初めての人を迎えることは、やり方しだいで両立できます。
両立のやり方は、このあとの節で具体的に見ていきます。
何もしないまま待つことの代償
逆に、何も変えないまま待ち続けると、どうなるのでしょうか。
常連さんは、少しずつ年を重ね、仕事や家の事情で来る回数が減っていきます。
新しいお客様が入ってこない店では、売上は毎年少しずつ削られていきます。
減っていく速さはゆっくりなので、気づいたときには、立て直すための体力が残っていないこともあります。
店を開けて待つだけの夜が続く前に、扉の外の言葉を変えておく。
それが、遠回りをしないためのいちばんの近道です。
「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、扉の外を作り直す
ここからは、扉の前の30秒を埋めるための具体的な手順を見ていきます。
土台にするのは、私たちが中小企業のホームページを直すときに使っている「売れるサイトはみな謙虚」という考え方です。
主役はお客様で、店は案内役にまわる
「売れるサイトはみな謙虚」の考え方は、とても単純です。
ページの主役はお客様で、店は、お客様の不安を取り除いて背中を押す案内役にまわる。
スナックで言えば、主役は扉の前で迷っている初めての人です。
ママの経歴や店のこだわりを語る前に、その人の頭に浮かんでいる5つの疑問に、順番に答えていきます。
店のことを語るのは、そのあとで構いません。
疑問に答えてもらえた人は、そこではじめて、ママの話を聞きたいと思ってくれます。
答える順番は、お客様が店にたどり着く順番
疑問に答える場所は、お客様が店にたどり着くまでの順番に沿って並べます。
最初はスマートフォンの地図、次に店の前の看板、扉を開けたあとの最初の10分、そして帰り際です。
それぞれの場所で、その時点のお客様がいちばん知りたいことに1つずつ答えていきます。
全部を1か所に詰め込むと、どこにも答えが無いのと同じになります。
地図の店の情報を、最初の入口として整える
最初に整えるのは、スマートフォンの地図に出てくる店の情報です。
Googleマップなどの地図に出てくる店の情報は、Googleビジネスプロフィールという無料の仕組みで、店の側から書き込めます。
写真は、扉を開けたときの景色を最初に
地図の写真で最初に見せたいのは、扉を開けたときに目に入る景色です。
カウンターとママの立ち位置、席の数、店の明るさ。
初めての人が知りたいのは、自分がその店に入ったら、どこに座って、どんな景色を見るのか、です。
ボトルが並んだ棚の写真や、料理の写真は、そのあとで十分です。
店の外観の写真も1枚入れておくと、地図を頼りに来た人が、店の前で迷わずに済みます。
営業時間と定休日は、正確に保つ
地図の情報で、もっとも信頼を落とすのが、営業時間の間違いです。
地図に営業中と出ていたのに、行ってみたら閉まっていた。
この経験をした人は、二度とその店を地図で探しません。
臨時休業や、早じまいの日も、地図の情報に反映しておきます。
紹介文に、5つの疑問の答えを入れる
地図の紹介文には、「アットホームなお店です」と書くだけで終わらせないようにします。
1人でのご来店も歓迎していること、カラオケがあるかどうか、静かに飲めるかどうか、料金の決まり方。
短い文章でも、5つの疑問のうちいくつかに答えが入っていれば、画面の上で選ばれる店になります。
| 地図の項目 | 初めての人が知りたいこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 写真の1枚目 | 扉を開けたら何が見えるか | カウンターとママが写った、店の中の写真 |
| 外観の写真 | 店の前で迷わないか | 看板と扉が分かる、夜の外観の写真 |
| 営業時間 | 今行って開いているか | 臨時休業も含めて、いつも正確に保つ |
| 紹介文 | どんな店で、1人で入れるか | 1人でのご来店も歓迎です、カラオケあり、などを短く |
| 料金の決まり方 | いくらかかるか | セット料金の時間と中身、延長の数え方 |
看板と入口を、扉の前の30秒のために作り直す
次に、店の前の看板と入口です。
地図で店を見つけた人も、たまたま通りかかった人も、最後に入るかどうかを決めるのはここです。
看板には、店の名前のあとに一言を足す
店の名前だけの看板に、一言を足します。
「1人でも気軽にどうぞ」「静かに飲めるお店です」「カラオケあります」。
どの一言を選ぶかは、自分の店にどんなお客様に来てほしいかで決めます。
一言があるだけで、通りかかった人は、自分に合う店かどうかを扉の前で判断できます。
料金の決まり方を、扉の外に貼る
料金は、扉の外から読めるようにします。
セット料金の時間と、その中に何が含まれているのか、延長はどう数えるのか、ボトルは入れなくてもよいのか。
金額そのものに加えて、決まり方を書いておくことが大切です。
決まり方が分かれば、初めての人は、自分がいくら払うことになるのかを頭の中で計算できます。
計算できる店は、怖い店から、入ってみてもよい店に変わります。
中の様子を、少しだけ見せる
扉に小さな窓があるなら、そこから中の灯りが見えるようにします。
窓が無い店は、入口の横に、店の中の写真を1枚貼っておくだけでも違います。
中の様子が少しでも見えると、扉の向こうが想像できるようになり、開ける手が軽くなります。
| 入口に置くもの | 置かないときに起きること | 置いたあとに起きること |
|---|---|---|
| 店の名前のあとの一言 | 何の店か分からず通り過ぎる | 自分に合う店かを扉の前で判断できる |
| 料金の決まり方 | 高くなるのではと身構えて帰る | 払う額を計算できて、入ってみようと思える |
| 店の中の写真 | 扉の向こうが想像できず怖い | 座る場所と空気が分かって安心する |
| 営業中の札 | 開いているのか分からず帰る | 今入ってよいことがすぐ分かる |
| 初めての方への一言 | 常連さんだけの店に見える | 自分も迎えてもらえると感じる |
1枚のページに、扉の内側を書いておく
地図と看板に書ききれないことは、1枚のページにまとめます。
立派なホームページを作る必要はありません。
地図の店の情報から飛べる、1枚の案内のページがあれば十分です。
ページの順番は、5つの疑問の順番
ページの上から、初めての人が知りたい順に答えを並べます。
いちばん上に、扉を開けたときの店の写真と、どんな店かを一言で。
その下に、料金の決まり方。
続けて、1人で来てよいこと、店での過ごし方、帰り方。
ママの紹介とお店のこだわりは、そのあとに置きます。
ママの写真と言葉は、ページの真ん中に
スナックのページで、もっとも強い材料はママです。
ママの顔が見えて、ママの言葉で「初めての方も、1人の方も、どうぞ気軽に」と書かれていると、初めての人は扉の向こうにいる人を想像できます。
写真は、カウンターの中で自然に笑っている1枚が向いています。
作り込んだ宣材写真より、普段の店の空気が伝わる写真のほうが、扉を開ける後押しになります。
| ページの位置 | 書くこと | 初めての人の気持ち |
|---|---|---|
| いちばん上 | 店の中の写真と、どんな店かの一言 | ここなら自分に合いそうだ |
| 2番目 | 料金の決まり方と、延長の数え方 | これなら払える額が分かる |
| 3番目 | 1人で来てよいこと、過ごし方 | 1人でも浮かなさそうだ |
| 4番目 | ママの写真と言葉 | この人なら話してみたい |
| 5番目 | 帰り方、場所、営業時間 | 行って帰るまでの流れが見えた |
扉を開けた最初の10分を、決めておく
扉が開いたら、ここからはママの出番です。
初めての人がまた来てくれるかどうかは、最初の10分でだいたい決まります。
席と最初の一言を決めておく
初めての人を、どの席に案内するかを決めておきます。
常連さんの輪のまんなかより、ママの目の前で、ママと話しやすい席が向いています。
最初の一言も決めておきます。
「初めてですか、ようこそ」のあとに、料金の決まり方をもう一度、口で伝える。
看板やページで読んでいても、ママの口から聞くと、初めての人は安心して座っていられます。
常連さんに、橋渡しをお願いする
常連さんの居心地を守りながら初めての人を迎えるには、常連さんの力を借ります。
ママが一言、「この方、今日はじめて来てくださったの」と紹介し、話の合いそうな常連さんにつなぐ。
常連さんにとっても、ママから頼られることはうれしいものです。
初めての人を迎えることが、常連さんの役目の1つになると、店の空気は壊れるどころか、かえってよくなります。
帰り際に、次に来る理由を渡す
最初の夜の最後は、帰り際の一言です。
「今日はありがとう、次は何曜日がすいていますよ」と、次に来るときの目安を伝える。
店のカードに、ママの名前と、すいている曜日を書いて渡すのもよい方法です。
初めての人は、次に来るときにも、また少しだけ迷います。
その迷いを、帰り際の一言で先に消しておきます。
| 最初の夜の場面 | 決めておくこと | 初めての人に起きること |
|---|---|---|
| 扉が開いた瞬間 | 最初の一言と、案内する席 | 迎えてもらえたと感じる |
| 座ってすぐ | 料金の決まり方を口でもう一度 | 安心して飲み始められる |
| 10分ほどたったころ | 話の合いそうな常連さんへの橋渡し | 輪に入れたと感じる |
| 帰りたくなったとき | お会計の頼み方を先に伝えておく | 気持ちよく帰れる |
| 扉を出るとき | 次に来るときの目安を一言 | また来る理由ができる |
SNSの投稿を、初めての人に向けて書き直す
SNSをすでに使っているなら、やめる必要はありません。
投稿の中身を、少しだけ初めての人に向けて書き直します。
投稿の3回に1回は、初めての人に向ける
常連さんとの楽しい夜の写真は、これまでどおり上げて構いません。
その合間に、初めての人に向けた投稿を混ぜます。
今日の店の空気、すいている時間帯、1人で来たお客様がどう過ごしていたか、料金の決まり方。
3回に1回くらいの割合で、扉の前で迷っている人に向けた投稿があると、フォロワーの中から実際に来てくれる人が出てきます。
常連さんの顔は、許可をもらってから
SNSに常連さんの写真を上げるときは、必ず本人の許可をもらいます。
夜の店に通っていることを、家族や職場に知られたくない人もいます。
許可の無い写真が原因で常連さんが離れてしまっては、本末転倒です。
顔を出さずに、グラスや手元だけを写す撮り方でも、店の空気は十分に伝わります。
当日の空き具合を知らせる
SNSで、すぐに効果が出やすいのが、当日の空き具合の知らせです。
「今夜はカウンターがすいています、1人でもどうぞ」と短く投稿する。
行こうか迷っていた人にとって、すいていることが分かるのは、扉を開ける大きな後押しになります。
| 投稿の種類 | 向けている相手 | 初めての人への効き方 |
|---|---|---|
| 常連さんとの夜の写真 | 常連さん | 楽しそうだが、輪に入れるか不安にもなる |
| 店の中の空気の写真 | 初めての人 | 扉の向こうが想像できる |
| 当日の空き具合 | 迷っている人 | 今夜なら入れそうだと背中を押す |
| 料金の決まり方の案内 | 初めての人 | 払う額が分かって安心する |
| 1人客の過ごし方の紹介 | 1人で来たい人 | 自分も浮かずに過ごせると感じる |
2回目に来てもらうまでが、集客
初めての人が一度来てくれたら、集客はそこで終わりではありません。
スナックの売上は、常連さんに支えられています。
初めての人が2回目に来てくれて、はじめて、その人は常連さんへの一歩を踏み出します。
名前を覚えて、2回目に呼ぶ
2回目に来てくれたお客様の名前を、ママが覚えて呼ぶ。
Q&Aサイトの回答にも、お客様の名前を覚えて呼ぶことをすすめる声がありました。
名前を呼ばれた人は、この店に自分の居場所があると感じます。
初めての夜に、名前と、話した話題を、店を閉めたあとにメモしておくと、2回目に役立ちます。
連絡先は、無理に聞かない
2回目につなげるために連絡先を聞きたくなりますが、初めての夜に無理に聞く必要はありません。
店のカードを渡して、気が向いたらお店の連絡先を登録してください、と伝えるくらいで十分です。
無理に聞かれると、初めての人は「営業の連絡が来るのでは」と身構えます。
自分から連絡先を登録してくれた人には、季節のあいさつや、すいている曜日を、ときどき知らせる程度にとどめます。
よくある質問
Q. 料金を外に出すと、安い店だと思われませんか
料金の決まり方を出すことは、安さを売りにすることとは違います。
決まり方が分かる店は、まっとうな店だと受け取られます。
高いか安いかより、払う額が事前に分かることのほうが、初めての人の安心につながります。
Q. 常連さんが、初めてのお客様を嫌がりませんか
迎え方を決めておけば、多くの常連さんは協力してくれます。
ママが一言紹介して、話の合いそうな常連さんにつなぐだけで、初めての人は輪に入りやすくなります。
初めての人を迎える日を、イベントの日と分けておくと、常連さんの居心地も守れます。
Q. ホームページが無くても、集客はできますか
できます。
最初は、地図の店の情報と、店の前の看板を整えるだけでも、扉を開けてくれる人は変わります。
ページを作るのは、地図と看板が整ってからでも遅くありません。
Q. SNSは、何から始めればよいですか
いちばん始めやすいのは、当日の空き具合の知らせです。
「今夜はカウンターがすいています、1人でもどうぞ」と短く書くだけなので、毎日続けやすく、迷っている人の背中を押せます。
慣れてきたら、店の中の空気や、料金の決まり方の案内を混ぜていきます。
Q. 女性のお客様にも来てもらうには、どうすればよいですか
女性1人でも浮かないかどうかは、多くの女性が扉の前で気にしていることです。
看板やページに、女性1人のお客様も歓迎していることと、実際に女性のお客様がどれくらい来ているかを書いておきます。
ママの言葉で、無理にお酒をすすめないこと、カラオケは歌わなくてもよいことを添えると、さらに安心してもらえます。
まとめ
スナックの集客がむずかしいのは、店の魅力が扉の内側にあるのに、初めての人は扉の外で入るかどうかを決めているからです。
紹介の流れが細くなり、店探しの入口がスマートフォンに移った今、扉の外に書かれた言葉と写真が、紹介の代わりを務めています。
初めての人が扉の前で知りたいのは、いくらかかるのか、どんな人がいるのか、1人で入ってよいのか、何をする店なのか、帰りたいときに帰れるのか、の5つです。
地図、看板、1枚のページ、最初の10分、帰り際と、お客様が店にたどり着く順番に沿って、この5つに1つずつ答えていきます。
Q&Aサイトの回答者が言った「外から何を売りにしている店か分かる工夫」と「料金の分かりやすさ」は、こうして形にできます。
店の声を大きくする前に、扉の前の人の疑問に答えておく。
それが、スナックの集客でいちばん効く、遠回りに見えて近い道です。
今日できる点検
最後に、今日のうちに確かめられることを表にまとめます。
| 点検すること | 確かめ方 | できていなかったら |
|---|---|---|
| 地図に店の中の写真があるか | 自分のスマートフォンで店の名前を地図で検索する | 扉を開けたときの景色の写真を1枚目に載せる |
| 地図の営業時間が正しいか | 地図の営業時間と、実際の営業時間を見比べる | 臨時休業も含めて、正しい時間に直す |
| 看板に店の名前以外の一言があるか | 店の前に立って、看板を通りがかりの目で見る | どんな店かが分かる一言を足す |
| 料金の決まり方が外から読めるか | 扉の外から、料金の表が読めるかを確かめる | セット料金の時間と中身、延長の数え方を貼る |
| 初めての人への迎え方が決まっているか | 最初の一言と、案内する席を書き出してみる | 最初の一言と、席と、帰り際の一言を決める |
今夜、店を開ける前に、店の前に立って、看板を通りがかりの人の目で見てみてください。
店の名前しか書かれていなければ、そこが最初に直す場所です。
明日の夜までに、どんな店かが分かる一言を、看板の下に1枚だけ貼ってみてください。
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