エアコンや換気扇の掃除の腕には自信があるのに、依頼が思うように入らない。
フランチャイズの本部の言うとおりにチラシを配っても反応が薄く、比較サイトからの依頼は値段で比べられて終わる。
この記事は、そうした悩みを抱えるハウスクリーニングの事業者の方と、清掃会社のホームページを任されている方に向けて書いています。
最初に、ハウスクリーニングを頼もうとしている人が、申し込みの直前にどこで迷っているのかを整理します。
次に、消費生活センターが利用者に向けて出している助言を手がかりにして、何をどの順番で直せば、初めての人が安心して依頼してくれるのかを見ていきます。
読み終えたときに、自社のホームページで最初に直す場所が1つ決まっている。
そこをこの記事のゴールにしています。
Q&Aサイトで見かけた、2つの切実な話
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
フランチャイズで始めたのに、依頼が来ない
1つは、知り合いがハウスクリーニングのチェーンのフランチャイズで開業したという話でした。
本部の指示どおりに集客をしても依頼が来ず、本部から回ってくる依頼もほんのわずか。
加盟金や道具の購入のために借りたお金を返すために、必死で働くことになってしまったそうです。
投稿者は、フランチャイズの開業はどこもそんなものなのか、本人の腕や経営の力によるものなのか、と尋ねていました。
回答には、良い本部と悪い本部を見分ける目と、最低限の経営の力が足りなかったのだろう、という厳しい言葉が並んでいました。
依頼した側にも、深い不安があった
もう1つは、依頼した側の話です。
洗面所の掃除を頼んだところ、鏡に傷をつけられた。
業者と話し合い、弁償と交換という話になったものの、経年劣化もあるので代金は折半、しかも一度自分たちが全額を立て替えてほしいと言われた。
不誠実な対応にいら立ち、後で本当に支払われるのかも不安だ、という相談でした。
回答には、傷が作業によるものかどうかさえ分からないので全額の弁償を求めるのは難しい、という冷ややかな意見もありました。
これは9割の事業者が陥る罠です
2つの話は、事業者と依頼者という反対の立場から書かれていますが、根っこは同じです。
ハウスクリーニングは、他人を家に上げ、大切な設備に手を触れさせる仕事だということです。
依頼する人は、腕の前に「家に上げてよいか」を見ている
依頼を考えている人が最初に気にするのは、汚れがどれだけ落ちるかより先に、この人を家に上げて大丈夫か、です。
どんな人が来るのか、作業の間は家にいなければならないのか、何かを壊されたらどうなるのか、当日に追加の料金を求められないか。
汚れの落ち方の写真をいくら並べても、この不安には答えられません。
依頼の手前で、人は止まる
この不安が1つでも残っていると、人は申し込みのボタンを押さずに画面を閉じます。
そして、名前を知っている大きな会社に頼むか、自分で掃除をして済ませるか、今年はあきらめるかを選びます。
ハウスクリーニングの集客で小さな事業者が依頼を逃しているのは、腕の差より、この「家に上げてよい理由」を見せていないことが原因であることがほとんどです。
大きな会社が選ばれる理由も、同じところにある
名前の知られた大きな会社が選ばれるのは、この不安に答える仕組みが、依頼する人の目に見えているからです。
腕の差は、依頼する人にはほとんど分かりません。
制服を着たスタッフ、決まった料金表、補償の決まり、問い合わせの窓口。
依頼する人は、こうした仕組みを見て、何かあっても大丈夫だろうと考えます。
小さな事業者でも、同じ不安に自分の言葉で答えておけば、大きな会社と並んで比べてもらえるようになります。
むしろ、担当する人の顔が見えるぶん、小さな事業者のほうが安心だと感じる人もいます。
| 読んでいるあなたの状況 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| フランチャイズで開業したが依頼が少ない | 本部の名前はあっても、自分の顔と地域の実績が見えない | 担当する人の顔と、地域での作業の様子を書く |
| 比較サイトからの依頼が値段で決まる | 料金以外の違いが伝わっていない | 作業の範囲と、壊したときの補償を先に書く |
| チラシの反応が落ちてきた | 料金とメニューだけで、家に上げてよい理由が無い | 当日の流れと、追加の料金の扱いを書く |
| 作業のあとに苦情が出たことがある | 作業の前の説明が足りない | 作業前の確認と、補償の範囲を書く |
| 繁忙期しか依頼が入らない | 依頼した人が次の年に思い出せない | 作業のあとの連絡と、次の時期の案内を決める |
表のどの行に近いかを1つ決めておくと、この先の話を自社に当てはめやすくなります。
依頼を考える人が、申し込みの前に確かめていること
では、ハウスクリーニングを頼もうとしている人は、申し込みの前に何を確かめているのでしょうか。
依頼のきっかけで多いのは、夏の前のエアコン、年末の換気扇やレンジフード、引っ越しの前後の部屋全体、そして自分では落としきれなくなった浴室やキッチンの水あかです。
どんな人が来るのか
最初に確かめるのは、家に来る人の顔です。
特に、ひとり暮らしの女性や、高齢の方、小さな子どもがいる家庭では、どんな人が何人で来るのかを必ず見ます。
顔写真と名前、作業の経験の長さ、どんな思いでこの仕事をしているのか。
これが分かるだけで、知らない人を家に上げる不安はずいぶん小さくなります。
何を、どこまでやってくれるのか
次に確かめるのが、作業の範囲です。
エアコンなら、フィルターだけなのか、分解して内部まで洗うのか。
換気扇なら、ファンを外して洗うのか、表面を拭くだけなのか。
料金のページに「エアコン掃除」とだけ書いてあると、依頼する人は、どこまでやってもらえるのかが分かりません。
料金は、当日に増えないか
3つ目が、料金です。
表に書いてある料金で本当に済むのか、汚れがひどいと言われて当日に料金が上がらないか、駐車場の料金や出張の料金は別にかかるのか。
依頼する人がいちばん恐れているのは、作業が終わってから、思っていた倍の料金を言われることです。
壊されたら、どうなるのか
4つ目が、万が一のときの補償です。
Q&Aサイトの鏡の傷の話のように、作業の途中で何かを傷つけられたとき、きちんと直してもらえるのか。
補償の範囲や、保険に入っているかどうかが書いていないと、慎重な人ほど依頼を見送ります。
作業の間、家にいなければならないのか
最後が、作業の間の過ごし方です。
何時間くらいかかるのか、その間は家にいなければならないのか、水や電気は使うのか、どこで作業の片付けをするのか。
在宅で仕事をしている人や、休みの日に頼む人は、その日の予定を立てるためにこれを知りたがります。
| 依頼する人が確かめること | 見つからないときに起きること | ホームページに置くもの |
|---|---|---|
| どんな人が来るのか | 知らない人を家に上げるのが怖くて見送る | 担当する人の顔写真と名前、経験 |
| 何をどこまでやるのか | 料金が高いのか安いのか判断できない | 作業の範囲を、機種や場所ごとに書く |
| 料金は当日に増えないか | 追加の請求を恐れて申し込まない | 追加の料金がかかる場合と、かからない場合 |
| 壊されたらどうなるか | 補償が分からず、大きな会社を選ぶ | 補償の範囲と、加入している保険 |
| 作業の間の過ごし方 | 予定が立たず先延ばしにする | 所要時間と、家にいてもらう必要の有無 |
消費生活センターは、利用者に何を助言しているのか
ここで、ハウスクリーニングを頼もうとしている人が、どんな情報に触れているのかを確かめておきます。
国民生活センターが出した注意の呼びかけ
国民生活センターは2025年2月に「ハウスクリーニングのトラブルにご注意」という呼びかけを出しました。
2026年4月には、高齢者や家族の見守りに向けた情報としても、同じ題で呼びかけを重ねています。
紹介されている相談事例は、エアコンの掃除を頼んだら壊され、弁償すると言われたまま連絡がつかなくなったという話。
そして、電話で勧誘された換気扇の掃除に来た業者に、風呂場や洗面所、トイレの掃除まで勧められ、相場が分からないまま高額な契約をしてしまったという話です。
助言は、事業者を選ぶときの物差しになっている
同センターは、利用者に向けて次のように助言しています。
「広告等の料金でどのような作業が可能なのか、状況によってはどの程度料金がかかる可能性があるのか等を事前に確認するようにしましょう。」
「クリーニング中に故障や損傷があったときの補償について、契約前にしっかりと確認しましょう」
2026年4月の呼びかけには、次の一文もあります。
「作業当日に追加の契約を勧誘されてもその場で決めないようにしましょう。」
ほかにも、複数の会社から見積もりを取ること、エアコンの場合は掃除の方法も確かめ、必要に応じてメーカーに問い合わせること、作業のときはなるべく家族に同席してもらうことが挙げられています。
助言を読んだ人は、それを確かめにやって来る
こうした助言は、ニュースや自治体の広報を通じて、依頼を考える人の目にも届いています。
助言を読んだ人は、事業者のホームページを開いたとき、料金で何ができるのか、補償はどうなっているのか、当日に追加を勧められないか、を確かめます。
つまり、消費生活センターの助言は、そのまま依頼する人が事業者を選ぶときの物差しになっているのです。
| 消費生活センターの助言 | 依頼する人が確かめること | ページに書くこと |
|---|---|---|
| 料金でどんな作業ができるかを確かめる | 作業の範囲 | 機種や場所ごとの作業の範囲 |
| 状況によってどの程度料金がかかるかを確かめる | 追加の料金 | 追加がかかる場合と、その場合の知らせ方 |
| 故障や損傷の補償を契約前に確かめる | 補償の範囲 | 補償の範囲と加入している保険 |
| エアコンは掃除の方法も確かめる | 分解の仕方と洗い方 | 使う洗剤と、電気部品の守り方 |
| 当日の追加の勧誘はその場で決めない | 当日に勧められないか | 当日に追加をすすめないという約束 |
| 作業のときは家族に同席してもらう | 誰が立ち会うか | 立ち会いの要否と、作業中の過ごし方 |
高齢の家族を心配する子どもの世代も読んでいる
国民生活センターの2026年4月の呼びかけは、高齢者や家族の見守りのための情報として出されています。
離れて暮らす高齢の親が、電話で勧誘された掃除の業者を家に上げていないかを心配し、子どもの世代が情報を集めているのです。
親のために掃除を頼もうとする子どもは、自分が立ち会えないぶん、事業者の約束を厳しく読みます。
こうした人に選ばれるかどうかも、ページの書き方しだいです。
エアコンの掃除には、事故の危険もある
もう1つ、エアコンの掃除を扱う事業者が知っておきたい事実があります。
誤った洗い方による火災
独立行政法人の製品評価技術基盤機構は、エアコンの事故について繰り返し注意を呼びかけています。
同機構によると、2019年度までの5年間に、エアコンの誤った内部洗浄が原因とみられる火災の事故が20件起きていました。
洗浄液が電気の部品に入り込み、そこから発火に至るという流れです。
依頼する人も、この危険を知り始めている
この話は、エアコンの掃除を頼もうとしている人の間でも知られるようになっています。
依頼する人が、洗い方や電気の部品の守り方を気にするのは、見た目の汚れより、あとで火が出ないかを心配しているからです。
電気の部品をどう覆い、どの洗剤をどう使い、洗ったあとにどう乾かすのか。
この手順を説明できる事業者は、それだけで安心して任せられる相手に見えます。
助言に先回りして答えている事業者は、まだ少ない
地域の事業者のページをいくつか開いてみると、この助言に先回りして答えているページは、まだ多くありません。
料金と前と後の写真は載っていても、作業の範囲や追加の料金、補償の話が見当たらないページがほとんどです。
だからこそ、助言に1つずつ答えるページを作れば、それだけで地域の中で目立つ存在になれます。
仕事の入り口には、それぞれの落とし穴がある
次に、ハウスクリーニングの事業者が、どんな入り口から仕事を得ているのかを整理します。
フランチャイズの本部からの依頼
フランチャイズに加盟すると、本部の名前で仕事が回ってくることがあります。
ただ、Q&Aサイトの話のように、本部から回ってくる依頼がわずかで、自分で集客しなければならない場合も少なくありません。
本部の名前は知られていても、依頼する人が知りたいのは、自分の家に来るのがどんな人か、です。
本部の看板だけに頼っていると、この問いに答える場所がどこにもありません。
比較サイトやマッチングの仕組みからの依頼
比較サイトやマッチングの仕組みは、依頼を考える人に見つけてもらいやすい入り口です。
その一方で、料金と口コミの星の数が一覧で並ぶので、値段で比べられやすくなります。
Q&Aサイトにも、一括見積もりのサイトから選んで頼んだ業者とのやり取りで困った、という相談が寄せられていました。
依頼する人は、比較サイトで名前を見たあと、事業者の名前で検索して、自社のページを確かめることがよくあります。
不動産会社や管理会社からの依頼
引っ越しの前後の部屋の掃除は、不動産会社や管理会社から依頼されることもあります。
安定した仕事になる反面、単価や作業の日程は相手に決められます。
住んでいる人と直接話す機会が少ないので、腕のよさが自社の評判として積み上がりにくい面もあります。
自社のホームページと、依頼した人からの紹介
最後が、自社のホームページと、依頼した人からの紹介です。
どちらも、家に上げてよい理由を、事業者自身の言葉で伝えられる入り口です。
そして、比較サイトで見つけた人も、紹介を受けた人も、最後に確かめるのは自社のホームページです。
| 仕事の入り口 | 良いところ | 気をつけること |
|---|---|---|
| フランチャイズの本部 | 看板の名前が知られている | 回ってくる依頼が少ないことがある |
| 比較サイトやマッチング | 依頼を考える人に見つけてもらいやすい | 料金と星の数で比べられる |
| 不動産会社や管理会社 | まとまった仕事になりやすい | 単価と日程を相手に決められる |
| 自社のホームページ | 家に上げてよい理由を自分の言葉で伝えられる | 育つまでに時間がかかる |
| 依頼した人からの紹介 | 信頼が先に立っている | 数が読めない |
どの入り口を使うにしても、自社のホームページを「家に上げてよい理由」がそろった場所にしておくことが、依頼が決まる割合を左右します。
依頼が増えないときに、多くの事業者がやってしまうこと
ここからは、依頼が増えないときに事業者がよく打つ手と、その後に起きることを見ていきます。
どれも一見まっとうな手ですが、「家に上げてよいか」という問いには手をつけていません。
間違い1 料金の安さを大きく打ち出す
最初に考えるのが、料金の安さを打ち出すことです。
エアコン1台いくら、今なら2台目は割引、といった打ち出し方です。
ところが、消費生活センターの助言を読んだ人は、広告の料金でどんな作業ができるのかを確かめるように言われています。
安い料金だけが大きく書かれ、作業の範囲が書かれていないと、依頼する人は「当日に上がるのでは」と身構えます。
安さで集まった依頼は、ほかの事業者がもっと安い料金を出したときに、そちらへ移っていきます。
料金を下げる代わりに、なぜこの料金になるのかを説明できるようにしておきます。
分解の手間、洗剤の使い分け、乾かす時間、養生の手間。
説明できる料金は、安さで比べる人以外にも届きます。
間違い2 汚れの前と後の写真ばかりを並べる
真っ黒なエアコンの内部が真っ白になった写真や、油でべとべとの換気扇がぴかぴかになった写真。
前と後の写真は、ハウスクリーニングの事業者がいちばん好んで載せるものです。
確かに目を引きますが、どの事業者のページにも同じような写真が並んでいます。
しかも、汚れの落ち方の写真は、「家に上げてよいか」という不安には何も答えていません。
写真を見て感心した人も、どんな人が来るのか、壊されたらどうなるのかが分からなければ、申し込みには進みません。
間違い3 メニューをどんどん増やす
エアコン、換気扇、浴室、キッチン、トイレ、窓、床、カーペット、ベランダ、家まるごと。
できることを全部並べれば、依頼の入り口が増えると考えがちです。
ところが、メニューが多いほど、依頼する人は自分の頼みたいものがどれに当たるのか迷います。
しかも、それぞれのメニューの作業の範囲が書かれていないと、どれを選んでも中身が分かりません。
メニューを増やすより、よく頼まれる数少ないメニューについて、作業の範囲と所要時間を丁寧に書くほうが、依頼は増えます。
間違い4 当日に別の場所の掃除をすすめる
作業に行った先で、ほかの場所の汚れに気づき、ついでに掃除をすすめる事業者もいます。
依頼した人のためを思ってのことでも、国民生活センターの事例にあるように、当日の追加の勧誘は、トラブルの典型として知られています。
依頼する人がこの事例を知っていれば、当日に何かをすすめられた時点で身構えます。
気づいた汚れは、作業のあとの報告で伝えるだけにとどめ、その場で契約を求めないことです。
間違い5 補償のことを書かずにおく
万が一の破損や故障のことは、書くと不安をあおるように思えて、ページに載せない事業者も多くあります。
けれども、消費生活センターは、補償の内容や保険に入っているかを契約の前に確かめるよう、はっきり助言しています。
補償のことが書いていないページは、依頼する人から見ると、確かめたいことが載っていないページです。
Q&Aサイトの鏡の傷の話のように、補償の話が作業のあとに初めて出てくると、依頼した人は不誠実な対応だと受け取ります。
間違い6 本部の看板に任せきりにする
フランチャイズで開業した事業者の中には、集客を本部の看板に任せきりにしている人もいます。
本部のページには、全国のどこでも同じ説明が載っています。
依頼する人が知りたい、自分の家に来る人の顔や、地域での作業の様子は、そこには載っていません。
本部の看板と別に、自分の顔と地域の話を載せる場所を持っておくことが大切です。
| よくある打ち手 | しばらく後に起きること | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 料金の安さを大きく打ち出す | 当日に上がるのではと身構えられ、安さで移られる | 作業の範囲と、追加の料金の扱いを書く |
| 前と後の写真ばかり並べる | どの事業者も同じに見え、不安に答えない | 担当する人の顔と、作業の手順を見せる |
| メニューをどんどん増やす | 頼みたいものがどれか迷わせる | よく頼まれるメニューを丁寧に書く |
| 当日に別の場所をすすめる | 追加の勧誘として警戒される | 気づいた汚れは報告にとどめる |
| 補償のことを書かない | 確かめたいことが載っていない | 補償の範囲と加入している保険を書く |
| 本部の看板に任せきりにする | 自分の顔と地域の話がどこにも無い | 自分の顔と地域の作業の様子を載せる |
電話や訪問で売り込むのも避ける
依頼が少ない時期に、電話をかけたり、家を回ったりして掃除をすすめる事業者もいます。
けれども、国民生活センターの事例に出てくる高額な契約は、電話での勧誘から始まっていました。
依頼する人から見ると、突然の電話や訪問は、トラブルの入り口とまったく同じ形をしています。
どれほど誠実に話しても、警戒が先に立ちます。
時間があるときは、売り込みより、ページに作業の手順や約束を書き足すことに使うほうが、あとで依頼につながります。
どの打ち手も、事業者の都合から始まっている
表に並べた6つの打ち手は、どれも事業者の側の都合から始まっています。
安く見せたい、腕を見せたい、入り口を増やしたい、1回の訪問で売上を増やしたい、不安なことは書きたくない、集客は本部に任せたい。
依頼する人が知りたい「どんな人が来るのか」「当日に料金が増えないか」「壊されたらどうなるのか」には、どれも答えていません。
腕のある事業者ほど、損をしている
もう1つ見落とされがちなのが、腕のある事業者ほど、この打ち手の中で損をしているということです。
電気の部品を丁寧に覆い、洗剤を使い分け、時間をかけて乾かす事業者も、手早く済ませる事業者も、前と後の写真では同じに見えます。
安さの競争では、手間をかける事業者ほど利益が残りません。
腕のよさは、作業の手順と、補償の約束と、担当する人の言葉の中でこそ伝わります。
依頼する人の不安の順番に並べ直す
では、どうすればよいのか。
打ち手を増やす必要はありません。
依頼する人が申し込みの前に抱えている不安を、その順番どおりに1つずつ消していくことです。
どんな人が来るのか、何をどこまでやるのか、料金は当日に増えないか、壊されたらどうなるのか、作業の間はどう過ごせばよいのか。
消費生活センターが利用者に助言していることを、事業者の側から先に答えておく、と考えると分かりやすくなります。
次の章では、その並べ直し方を具体的に見ていきます。
売れるサイトはみな謙虚という考え方
ここで、この記事の軸になる考え方をお伝えします。
合同会社謙虚では、中小企業のホームページを見直すときに「売れるサイトはみな謙虚」という言葉を使っています。
事業者が言いたいことを引き算し、訪れた人が知りたいことを、知りたい順に置く。
選ばれている事業者のホームページは、この形になっています。
ハウスクリーニングでは、謙虚さは「先に約束する」ことに表れる
ハウスクリーニングの場合、この考え方は、先に約束することとして形になります。
当日に料金を上げない、当日にほかの掃除をすすめない、壊したらこう直す、作業の前にここを確かめる。
依頼する人が作業のあとで知ることになる話を、申し込みの前に約束として書いておくのです。
先に約束を書く事業者は、家に上げてよい相手として選ばれます。
腕の自慢を引き算すると、依頼する人の不安が見えてくる
ページから、前と後の写真や、道具や洗剤の自慢をいったん外してみてください。
そこに残るのは、依頼する人がいま抱えている不安への答えを置く場所です。
腕のよさは、その答えの中で自然に伝わっていきます。
作業の手順を読めば丁寧さが分かり、補償の約束を読めば自信が分かるからです。
家に来る人の顔と言葉を、最初に見せる
最初に直すのは、ページの最初の画面です。
顔写真と名前と、ひとこと
家に来る人の顔写真と名前を、最初の画面かそのすぐ下に置きます。
作業着を着て、明るい場所で正面から撮った写真がいちばん安心されます。
その横に、この仕事を始めた理由や、作業のときに気をつけていることを、ひとことで添えます。
「お部屋に上がる前に、必ず床と家具を養生してから作業を始めます」といった、具体的な一文がよく伝わります。
何人で来るのか、誰が来るのか
何人で来るのか、女性のスタッフを選べるのか、毎回同じ人が来るのかも書いておきます。
ひとり暮らしの女性から、女性のスタッフに来てほしいという要望がよくあるなら、そのことに応えられるかどうかを書きます。
応えられない場合も、そのことを正直に書き、代わりに作業の間の過ごし方の工夫を伝えます。
地域での作業の様子
フランチャイズに加盟している場合も、自分がどの地域を回っていて、どんな家の作業をしてきたのかを書きます。
同じ市や町の名前が出てくると、依頼する人は近所で頼まれている事業者だと感じます。
家に上がるときの決まりごとを書く
顔写真と一緒に、家に上がるときの決まりごとを書いておきます。
靴下を履き替える、床と家具を先に養生する、使う場所は事前に聞く、トイレは借りない、作業の途中で部屋の中を歩き回らない。
こうした決まりごとは、依頼する人にとって、家を大切に扱ってもらえるかどうかの目安になります。
決まりごとを守る姿を見た人は、作業の腕も信用してくれます。
作業の範囲と料金を、1つの表で見せる
次に、作業の範囲と料金を見せます。
メニューごとに、どこまでやるのかを書く
よく頼まれるメニューについて、どこまで作業をするのかを書きます。
エアコンなら、フィルターと表面だけか、パネルとルーバーを外すのか、内部の熱交換器とファンまで洗うのか。
換気扇なら、ファンとフードを外して洗うのか、表面の油を拭くだけなのか。
作業の範囲が分かれば、依頼する人は、料金が高いのか安いのかを自分で判断できます。
追加の料金がかかる場合を、先に書く
追加の料金がかかる場合があるなら、それを先に書きます。
お掃除機能のついたエアコン、汚れがとても重い場合、駐車場が無い場合、高い場所での作業など。
どんな場合に、どの程度かかるのかを書き、当日に追加がかかりそうなときは、作業の前に必ず知らせて了解をもらう、と約束します。
作業のあとに初めて追加の料金を言われることが、依頼する人がいちばん恐れていることです。
| メニュー | 作業の範囲 | 追加がかかる場合 |
|---|---|---|
| 壁掛けのエアコン | パネルとルーバーを外し、熱交換器とファンまで洗う | お掃除機能がついている場合 |
| 換気扇とレンジフード | ファンとフードを外して、つけ置きで洗う | 油汚れがとても重い場合 |
| 浴室 | 壁、床、浴槽、鏡、排水口、天井 | 浴槽の裏側の掃除を希望する場合 |
| キッチン | シンク、コンロ、作業台、壁 | 換気扇も一緒に頼む場合は別のメニュー |
| 引っ越しの前後の部屋 | 床、窓、水回り、収納の中 | 部屋の広さや、エアコンの台数による |
壊したときの補償を、はっきり書く
3つ目に、万が一のときの補償を書きます。
補償の範囲と、加入している保険
作業の途中で設備や家具を傷つけたり、掃除が原因で故障したりしたときに、どう対応するのかを書きます。
事業者が入っている賠償の保険の種類と、補償の範囲を書いておくと、依頼する人は契約の前に確かめる手間が省けます。
補償の対象にならない場合があるなら、それも正直に書きます。
たとえば、もともと傷んでいた部品が作業の途中で割れた場合の扱いです。
作業の前に、傷や不具合を一緒に確かめる
補償の話で揉めないためには、作業の前に、依頼した人と一緒に傷や不具合を確かめておくことがいちばん確かです。
エアコンなら、動くかどうか、異音がしないか、すでにある傷はどこか。
浴室なら、鏡や浴槽のコーティング、すでにあるひびや欠け。
確かめた内容を写真に撮り、依頼した人にも見せておきます。
Q&Aサイトの鏡の傷の話は、作業の前にこの確認をしていれば、揉め方がまったく違っていたはずです。
何かあったときの連絡先と、対応の早さ
作業のあとに不具合に気づいたときの連絡先と、どれくらいの日数で見に行くのかを書きます。
国民生活センターの事例には、弁償すると言われたまま連絡がつかなくなったという話がありました。
依頼する人は、この話を知っているからこそ、連絡がつくかどうかを気にしています。
補償の話は、作業の前に口でも伝える
ページに書いた補償の話は、作業の前の確認のときに、口でも短く伝えます。
「もし作業で何か傷つけてしまった場合は、こちらで直すか弁償します。いまある傷を先に一緒に見させてください」という伝え方です。
この一言があるだけで、依頼した人は作業の間、安心して任せていられます。
当日の流れを、順番に書く
4つ目に、作業の当日の流れを書きます。
到着から作業前の確認まで
到着したら、あいさつをし、作業をする場所を一緒に見て、作業の範囲と料金をもう一度確かめます。
そのうえで、すでにある傷や不具合を一緒に確かめ、写真に撮ります。
追加の料金がかかりそうなときは、ここで理由を説明し、了解をもらってから作業に入ります。
作業の間の過ごし方
作業の間、家にいてもらう必要があるのか、別の部屋で過ごしていてかまわないのかを書きます。
水と電気をどれくらい使うのか、ベランダや浴室を洗い場に使うのかも添えます。
国民生活センターは、作業のときはなるべく家族に同席してもらうよう助言しています。
家族が立ち会える日を選んでもらえるよう、日時の選び方にも配慮しておくと親切です。
エアコンの電気部品の守り方
エアコンの掃除では、電気の部品をどう覆い、どの洗剤をどう使い、洗ったあとにどう乾かしてから運転を確かめるのかを書きます。
製品評価技術基盤機構が注意を呼びかけている火災の事故を知っている人にとって、この説明は何より心強いものです。
作業のあとの確認と、報告
作業が終わったら、依頼した人と一緒に仕上がりを確かめ、エアコンなら運転して異常が無いかを見てもらいます。
作業の途中で気づいた汚れや不具合は、報告として伝えるだけにとどめ、その場で追加の契約を求めないことを約束しておきます。
| 当日の段階 | 事業者がすること | 依頼した人に伝えること |
|---|---|---|
| 到着 | あいさつと、作業する場所の確認 | 作業の範囲と料金をもう一度確かめる |
| 作業前の確認 | すでにある傷や不具合を一緒に見て撮る | 追加がかかる場合は理由を説明する |
| 作業中 | 養生をして、電気の部品を守りながら洗う | 過ごし方と、水や電気の使い方 |
| 仕上がりの確認 | 一緒に見て、運転を確かめる | 気づいた汚れは報告だけにする |
| 作業のあと | 連絡先と、次の時期の目安を渡す | 不具合があったときの連絡の仕方 |
作業のあとに、次の依頼と紹介が生まれる
ハウスクリーニングは、同じ家から繰り返し頼まれやすい仕事です。
エアコンは毎年の夏の前、換気扇は年末、浴室は1〜2年ごとというように、汚れがたまる時期がだいたい決まっているからです。
次の時期の目安を、紙で渡す
作業が終わったら、次に掃除をするとよい時期の目安を、紙に書いて渡します。
依頼した人は、その紙を冷蔵庫に貼ったり、エアコンのそばに置いたりしておいてくれます。
時期が近づいたときに短い案内を送ってよいかを聞き、了解をもらえた人にだけ送るようにします。
作業の様子の写真を、報告として渡す
作業の前の確認の写真、作業の途中の写真、仕上がりの写真をまとめて、報告として渡します。
報告を受け取った人は、それを家族や知り合いに見せます。
そこに事業者の名前とホームページの場所が書いてあれば、紹介は自然に生まれます。
口コミは、仕上がりを一緒に確かめた場面で頼む
口コミを頼むなら、仕上がりを一緒に確かめ、依頼した人が満足している場面で一言添えます。
「同じように迷っている方の参考になるので、よろしければ感じたことを書いていただけると助かります」という頼み方です。
口コミの見返りに割引をすることは、やらせの疑いを招くので避けます。
事業者の状況によって変わるところ
ここまでの話は、ひとりか少人数で作業をしている事業者を想定してきました。
事業者の状況によって、力を入れる場所が少し変わります。
フランチャイズに加盟している
フランチャイズに加盟している場合は、本部のページとは別に、自分の顔と地域の話を載せる場所を持ちます。
本部の決まりで自分のホームページを持てない場合は、地図のアプリの店舗の情報や、本部のページの中の店舗紹介の欄を、できるかぎり自分の言葉で埋めます。
加盟を考えている段階の人は、本部が集客をどこまで手伝ってくれるのか、自分で集客してよい範囲はどこまでかを、加盟の前に確かめておくことです。
開業したばかりで、作業の実績が少ない
開業したばかりのうちは、作業の実績の数を誇るより、作業の前の確認と、補償と、当日の流れの約束を丁寧に書きます。
実績が少ないことは、依頼する人にとって大きな問題ではありません。
大きな問題は、どんな人が来て、何かあったときにどうなるのかが分からないことです。
不動産会社からの仕事が中心
不動産会社や管理会社からの仕事が中心の事業者は、引っ越しの前後の部屋の作業の様子を、住む人の目線で書いておきます。
新しい部屋に入る人が、自分で掃除を頼みたいときに見つけてもらえる入り口になります。
季節に偏る依頼を、ならしていく
ハウスクリーニングは、エアコンの夏の前と、年末の大掃除の時期に依頼が集中しがちです。
繁忙期の前に、次の時期の目安を渡した人へ早めの案内を送ると、依頼を少し前に動かせます。
閑散期には、浴室や窓のように季節を問わないメニューの作業の様子を、ページに書き足しておきます。
女性のスタッフや、家族の立ち会いへの配慮
依頼する人の中には、女性のスタッフに来てほしい人や、家族が立ち会える日に頼みたい人がいます。
こうした要望に応えられるかどうかを、申し込みの画面で選べるようにしておくと、迷いが1つ減ります。
直したあとに見る数字
ページを直したら、効いているかどうかを数字で確かめます。
申し込みの数と、どこから来たか
いちばん大事なのは、自社のページからの申し込みの数です。
申し込みの入力欄に、どこで事業者を知ったかを選ぶ欄を入れておくと、検索、地図のアプリ、比較サイト、紹介のどこから来たのかが分かります。
ハウスクリーニングは季節の影響を大きく受けるので、前の年の同じ時期と比べます。
繰り返しの依頼の割合
1度頼んでくれた人のうち、次の時期にもう一度頼んでくれた人の割合を数えます。
この割合が上がっていれば、作業のあとの報告と、次の時期の案内がうまく働いている証拠です。
| 見る数字 | 数え方 | 下がっていたら見直す場所 |
|---|---|---|
| 自社のページからの申し込み | 月ごとに数え、前の年の同じ時期と比べる | 担当する人の顔と、約束の書き方 |
| どこで事業者を知ったか | 申し込みの入力欄の選択肢で集計する | 反応の少ない入り口を続けるかどうか |
| 繰り返しの依頼の割合 | 前の年に頼んだ人のうち、今年も頼んだ人 | 次の時期の目安の渡し方 |
| 作業のあとの苦情の数 | 連絡の内容を記録する | 作業前の確認と、当日の説明 |
よくある質問
Q1. 料金は安くしたほうがよいですか
安さだけを打ち出すと、当日に上がるのではと身構えられやすくなります。
料金を下げるより、作業の範囲と、追加の料金がかかる場合を分かりやすく書くほうが、申し込みにつながります。
作業の範囲がはっきりしていれば、料金が周りより少し高くても、納得して選んでくれる人はいます。
Q2. 補償のことを書くと、かえって不安をあおりませんか
消費生活センターは、補償の内容や保険に入っているかを契約の前に確かめるよう助言しています。
補償のことを書いておくと、依頼する人は確かめる手間が省け、安心して申し込めます。
Q3. 当日に気づいた汚れをすすめてはいけませんか
気づいた汚れを伝えることはかまいません。
ただし、その場で契約を求めず、報告として伝えるだけにとどめます。
国民生活センターも、当日に追加の契約を勧誘されてもその場で決めないよう、利用者に助言しています。
Q4. 前と後の写真は載せないほうがよいですか
載せてかまいません。
ただし、それだけでは家に上げてよい理由にならないので、担当する人の顔と、作業の手順と、補償の約束と一緒に載せます。
Q5. フランチャイズの本部のページがあれば十分ですか
本部のページには、自分の家に来る人の顔や、地域での作業の様子は載っていません。
本部のページとは別に、自分の言葉で、家に上げてよい理由を伝える場所を持っておくことをおすすめします。
まとめ
ハウスクリーニングは、他人を家に上げ、大切な設備に手を触れさせる仕事です。
依頼を考える人は、汚れの落ち方より先に、この人を家に上げてよいかを確かめています。
そして、消費生活センターの助言を通じて、料金で何ができるのか、補償はどうなっているのか、当日に追加を勧められないかを確かめるよう教えられています。
家に来る人の顔と言葉、作業の範囲と追加の料金の扱い、壊したときの補償、当日の流れ。
この順番でページを並べ直し、依頼する人が作業のあとで知ることを、申し込みの前に約束として書いておく。
それが、腕のある事業者が値段の比べ合いから抜け出すための近道です。
Q&Aサイトのフランチャイズの話も、鏡の傷の話も、作業の前に約束と確認があれば、違う結末になっていたかもしれません。
約束を先に書くことは、依頼する人を守り、事業者自身を守ることでもあります。
より詳しい考え方や、ほかの業種での例は、合同会社謙虚のトップページでもご紹介しています。
今日できる点検
最後に、今日のうちに確かめられることを表にまとめます。
| 点検すること | 確かめ方 | できていなかったら |
|---|---|---|
| 家に来る人の顔が最初に見えるか | スマートフォンでホームページを開く | 顔写真と名前とひとことを上に移す |
| 作業の範囲が書いてあるか | 料金のページを読む | メニューごとに、どこまでやるかを書く |
| 追加の料金がかかる場合が書いてあるか | 料金のページの下まで読む | どんな場合にかかり、いつ知らせるかを書く |
| 補償と保険のことが書いてあるか | ページ全体を探す | 補償の範囲と、入っている保険を書く |
| 当日の流れが書いてあるか | 依頼する人の目で当日を追う | 到着から作業のあとまでを順番に書く |
スマートフォンで自社のホームページを開き、家に来る人の顔が最初の画面から見えるかを確かめてください。
見えなければ、そこが最初に直す場所です。
見えていたら、次は料金のページで、追加の料金がかかる場合が書いてあるかを確かめてください。
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