夕方の4時を過ぎると、レジ前に少しずつ列ができる。
地域のスーパーを営んでいる方なら、この時間の空気は体で覚えていると思います。
ところが、列の長さは数年前より短くなった。
チラシを入れた日の朝に、前ほど客足が動かない。
大型店やドラッグストアが近くにできてから、そんな手応えの変化を感じている方は少なくありません。
この記事は、数店舗規模の地場スーパーや、個人で食品スーパーを経営している方、店長を任されている方に向けて書いています。
扱うのは、スーパーの集客の中でも「チラシの効きが落ちた」という悩みです。
特売の品数を増やす前に、売り場の中身をお客様の目に届く形にする、という順番で整理します。
あわせて、総務省と農林水産省が公表している数字のうち、一次資料で確かめられたものだけを使って、いまの買い物の事情を確認します。
読み終えたときに、自分の店のページで最初に直す場所が1つ決まっている。
そこをこの記事のゴールにしています。
Q&Aサイトで見かけた、毎週同じチラシへの違和感
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
投稿されたのは2024年の2月で、スーパーのチラシを毎週見ている買い物客の方からの相談でした。
チラシの絵柄も特売品も、一年以上ほとんど変わらない
投稿者は、近所のスーパーのチラシが、もう一年以上ほとんど同じ内容だと感じていました。
絵柄は似たまま、曜日ごとの特売品も品目がほぼ固定されているそうです。
とくに気になっていたのが生鮮の売り場で、お寿司も柵の刺身も、一年中同じものが載っている。
以前の5分の1から10分の1ほどに種類が減ったまま、養殖のぶりの100グラムあたりの値段も一年中変わらない、と書いていました。
生の魚はチラシに載らず、漁次第で毎日変わる魚が数種類あるだけ。
3、4年前にはあり得なかった、と投稿者は驚いていました。
回答に並んだのは、買い物客の側の感覚だった
寄せられた回答のひとつは、同じ感覚を持っていました。
昔は目玉商品の日替わりセールがあり、箱売りの麺類や調味料が安く並んでいたが、最近のチラシには安いと思える品が少ない、という声です。
毎週同じような商品が出ていると、買いたい気力そのものが落ちてしまう、とも書かれていました。
別の回答は、売れる実績のある商品だけが残るのは当然で、スーパーは大衆向けなのだから需要の少ない品が減るのも仕方がない、という見方でした。
どちらの回答も、チラシを見る側の目線で書かれています。
店の側から読み直すと見えること
この相談を店の側から読むと、チラシを作っている人の怠けとは別の事情が見えてきます。
毎週同じ品が並ぶのは、仕入先との取り決めで値段が安定している品、売れ行きが読める品、作業が回る品を、守りの気持ちで選んだ結果であることが多いからです。
仕入れが落ち着いている分、チラシの作り方も落ち着いてしまう。
その結果、お客様の目には「また同じ」と映り、チラシを開く手が止まります。
店の中では毎日違う魚が入り、毎日違う惣菜が揚がっているのに、その変化がチラシにも店のページにも出ていない。
先に見直すべきなのは、売り場の中で毎日動いているものを外に出す仕組みです。
特売の品数を増やすのは、そのあとで間に合います。
| 相談の中で起きていること | その奥にある問題 | 次に確かめること |
|---|---|---|
| チラシの絵柄と特売品が一年以上同じ | 守りで選んだ品だけがチラシに残っている | 去年の同じ週のチラシと今週のものを並べて違いを数える |
| 生の魚がチラシに載らない | 毎日変わる品は載せにくいと決めている | 鮮魚の入荷を店のページに載せる手段があるか |
| 刺身の種類が減ったまま戻らない | 品ぞろえの変化がお客様に伝わっていない | 売り場に並ぶ魚の種類を最近1か月で数える |
| 安いと思える品が見当たらない | 値上げの時期に、特売の見せ方が変わっていない | 特売以外に買う理由を1つ書けているか |
| 毎週見ても買う気力が出ない | 来る理由がチラシの中で更新されていない | 先週と違う情報が、今週のチラシに1つ入っているか |
これは地域のスーパーの9割が入り込む落とし穴です
客足が鈍ると、まず特売を増やしたくなります。
特売を増やして客数を戻し、ついで買いで利益を取る。
スーパーの集客の定石として、これは長く使われてきた考え方です。
ところが、特売の品数を増やしても、チラシを開く手応えが戻らないことがよくあります。
この記事で「9割」と書いたのは統計の数字ではありません。
地域のスーパーの相談を受けていると、ほとんどの方が最初に「特売をどうするか」の話から始める、という実感を言葉にしたものです。
客が減ると、特売を足したくなる
特売は、効果が目に見えやすい手段です。
値段を下げれば、その日のうちにレジの動きが変わります。
だから、客足が鈍ったときに、まず特売の枠を広げる判断は自然です。
ただ、広げた特売は、すぐに追いかけてくる店の特売と同じ土俵に乗ります。
近くに大型店やドラッグストアがあれば、同じ品の値段で比べられ、比べられた先では規模の大きな店が有利になります。
毎週同じ特売は、お客様に「見なくていい」と教える
もう1つ、見落としやすいことがあります。
毎週同じ品、同じ値段のチラシは、お客様に「開かなくても中身が分かる」と教えてしまいます。
開かれなかったチラシは、どんなに丁寧に作っても、来店のきっかけになりません。
冒頭の相談で、買い物客の方が「新しいチラシを出す意味がない」とまで書いたのは、そこまで進んだ状態です。
チラシの効きが落ちたと感じたとき、先に疑うべきなのは配る枚数や特売の安さの前に、チラシの中身が毎週更新されているかどうかです。
変わっているのは売り場で、チラシは変わっていない
鮮魚の入荷は日ごとに違い、惣菜は揚げ上がりの時刻が決まっていて、青果は旬が週ごとに移ります。
売り場は、実はいつ見ても違う顔をしているのです。
その変化を知るには、来店するしかありません。
来店前のお客様の目には、同じ特売品が並ぶ紙と、営業時間だけが書かれた店の情報しか映りません。
| いまの状態 | 現場で起きていること | 先に手を打つ場所 |
|---|---|---|
| 特売の品がいつも同じ | チラシを開く人が減る | 先週と違う情報を1つ入れる |
| 客数を戻そうと特売を足す | 大型店の特売と同じ土俵に乗る | 値段の外に、来る理由を作る |
| 売り場の変化が外に出ない | 来店前の人に何も伝わらない | 毎日変わる品を店のページに書く |
| チラシ頼みで他の情報源がない | 配った日の朝だけ客足が動く | 来る前に見るページを用意する |
| 見切り品の時刻が人によって違う | 案内する人で答えが変わる | 時刻の決まりを紙にして外にも書く |
公的な数字で見る、買い物の「来る前」と「来られない人」
ここで、買い物をする人の事情を、公的な統計で確かめておきます。
感覚で「客が減った」と話すより、数字で足元を知っておくほうが、手を打つ順番を決めやすくなるからです。
世帯の9割以上が、スマートフォンを持っている
総務省が2025年5月30日に公表した令和6年の通信利用動向調査によると、スマートフォンを保有している世帯の割合は90.5%でした。
個人で見ても、スマートフォンの保有割合は80.5%で、8割を超えています。
同じ調査で、20歳から59歳までの各年齢層では、インターネットの利用機器としてスマートフォンを使う人が9割以上でした。
夕飯の買い物に行く前に、手元の画面で店の情報を見る人が、すでに多数派になっているということです。
そのとき画面に出るのが、チラシの写真と営業時間だけの店情報であれば、売り場の中身は何も伝わりません。
店まで歩いて行けない人が、全国に904万人いる
農林水産省の農林水産政策研究所は、2024年2月に、食料品アクセス困難人口の推計を公表しました。
店舗まで直線距離で500メートル以上あり、かつ65歳以上で自動車を使えない人を、食料品アクセス困難人口と定義しています。
2020年の推計は全国で904万人で、65歳以上人口の25.6%にあたります。
そのうち75歳以上は566万人で、75歳以上人口の31.0%でした。
つまり、店が近くにあっても、歩ける距離にない人や、車に乗れない人が、地域の中に確かにいます。
その人たちにとって、店のページは「来店の前の情報」であり、配達や電話注文の案内を探す入口にもなります。
| 公的な数字 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| スマートフォンの世帯保有割合 | 90.5%(令和6年) | 総務省 通信利用動向調査 |
| スマートフォンの個人保有割合 | 80.5%(令和6年) | 総務省 通信利用動向調査 |
| 食料品アクセス困難人口 | 904万人(2020年) | 農林水産政策研究所の推計 |
| 65歳以上人口に占める割合 | 25.6%(2020年) | 農林水産政策研究所の推計 |
| うち75歳以上の人数 | 566万人(2020年) | 農林水産政策研究所の推計 |
数字を自分の店の商圏に置き換える
全国の数字は、自分の店の帳面と並べたときに意味を持ちます。
まず、レジの記録から、曜日ごとと時間帯ごとの客数を並べます。
次に、ポイントカードや会員の記録があれば、年齢の高い方がどの時間帯に来ているかを見ます。
夕方に若い世帯が集まり、昼前に高齢の方が集まる店なら、2つの時間帯で必要な情報が違います。
昼前の人には「今朝入った魚」と「配達の案内」が、夕方の人には「惣菜の揚げ上がりの時刻」が役に立ちます。
自分の店の記録と、この2つの数字を重ねるだけで、誰のために何を外に出すかの下書きができます。
スーパーの集客が、ほかの業種と違う理由
飲食店や美容室と比べると、スーパーの集客には特有の難しさがあります。
ここを押さえておくと、店のページに何を書けばいいかが見えてきます。
毎日の買い物は、行き先を考えずに決まっている
スーパーで買うものは、ほとんどが毎日、あるいは数日おきに必要になる食料品です。
だから、お客様は多くの場合、行き先を比べて決めているわけではありません。
通勤や送迎の帰り道にあるから、いつもの店にする。
その習慣を崩す理由が現れたときに、初めて別の店が候補になります。
大型店が近くにできたとき、習慣が崩れるのは、そこに新しい理由が見えたからです。
売り場は毎日変わるのに、外からは同じに見える
鮮魚の入荷、惣菜の品目、青果の産地。
売り場の中身は毎日違うのに、外から見える情報は、いつも同じ営業時間と同じ特売品です。
お客様の側に立てば、店の中の変化を知らないまま、店を選ぶことになります。
変化が外に出ていない店は、いつも同じ顔の店として、習慣の中に埋もれていきます。
比べられる相手が、大型店とドラッグストアになる
食料品を売る場所は、スーパーの専売ではなくなりました。
近くのドラッグストアでも、卵や飲料、冷凍食品を買えます。
そうなると、お客様は「今日はあちらで済ませよう」と、1回ごとに選び直せるようになります。
選び直されたときに残る理由は、他の店が簡単にまねできない、その店の売り場の中身です。
値段だけを言い続けると、値段しか残らない
値段は分かりやすい理由ですが、同じ土俵に立つ相手がいくらでも現れます。
値段で選ばれた客は、別の店がより安くすれば、すぐに動きます。
一方で、「あの店は今日、いい魚が入っている」と思ってもらえた客は、値段が少し違っても店を選びます。
売り場の中身で選ばれた記憶は、値段の差より長く残ります。
| 集客の場面 | 値段で選ばれたとき | 売り場の中身で選ばれたとき |
|---|---|---|
| 次に選び直されるとき | より安い店が出れば移る | 同じ中身が他に無ければ残る |
| 来店の前の情報 | 特売品の名前と値段だけ | 今日入った品と、惣菜の時刻 |
| お客様が店に求めるもの | 安さの確認 | 夕飯の段取りの手助け |
| 店が外に出すべき情報 | チラシの特売欄 | 毎日変わる売り場の記録 |
| 近くに大型店ができたとき | 同じ品の値段で比べられる | 比べる土俵そのものが違う |
よくある打ち手と、その先に起きること
客足が鈍ったとき、多くの店が手を付ける打ち手があります。
どれも間違った手とは言えません。
ただ、順番を誤ると、手間と費用だけが残ります。
ここで、お客様が来店する前に店を決める流れを、図で確かめておきます。
図の2つ目の箱が、チラシの外にある「今日の売り場を見る」場面です。
この箱で答えが見つかるかどうかが、そのまま来るか来ないかの分かれ目になります。
特売の品数を増やす
特売の品数を増やすと、チラシの紙面は一時的ににぎやかになります。
しかし、品数が増えた分、1品ごとの訴えが弱くなり、お客様の目には「どれも普通に安い」としか映らなくなります。
仕入れの面でも、安く出せる品には限りがあるので、利益を削って品数を保つ形になりやすくなります。
続けるほどに、特売を外す週が怖くなり、チラシの内容は固定されていきます。
冒頭の相談の「一年中同じ」という状態は、この流れの先にあります。
チラシの配布エリアを広げる
配布エリアを広げれば、チラシを受け取る人は増えます。
ただ、大型店が近くにある地域まで広げると、同じ紙が並んで入り、受け取った人は店ごとの特売だけを見比べることになります。
遠くの人は、わざわざ来る理由が見つからなければ、チラシを見ても動きません。
配る枚数が増えても、チラシの中身が変わらなければ、開かれる割合は上がりません。
配る範囲を決め直す前に、いま配っている範囲で、チラシが開かれているかを確かめるのが先です。
ポイントやスタンプを増やす
ポイントやスタンプは、すでに来ている人を引き止める手段としては働きます。
ただ、新しく来る理由は作れません。
さらに、近くの店がもっと手厚い還元を始めれば、引き止めの力は簡単に弱まります。
お客様が「この店に行く理由」を口にするとき、ポイントの話が先に出る店は、実は選ばれる理由が薄い店かもしれません。
話題のイベントを重ねる
試食会や産地フェアは、来店のきっかけになります。
その日の売り上げは伸びますが、イベントのない日には元の客足に戻ることがよくあります。
準備の手間も大きく、人手の少ない店では、売り場の鮮度を保つ作業と取り合いになります。
イベントを否定するわけではありません。
ただ、毎日の買い物を支えるのは、何もない普通の日の売り場です。
| よくある打ち手 | その先で起きがちなこと | 先にしておくこと |
|---|---|---|
| 特売の品数を増やす | 1品ごとの訴えが弱まり、外せなくなる | 先週と違う情報を1つ、毎週入れる |
| 配布エリアを広げる | 開かれない紙が増えるだけになる | いまの範囲で開かれているかを確かめる |
| ポイントを手厚くする | 他店がまねして差が消える | 店の中身の話を、外に出す |
| イベントを重ねる | 普通の日に戻り、手間だけが残る | 普通の日の売り場の記録を書く |
| 値下げの時刻を増やす | 狙う人が増え、定価の売り場が空く | 値下げの決まりを紙にして外にも書く |
チラシと特売の表示には、守る決まりがある
売り場の中身を外に出すときは、書き方の決まりを守る必要があります。
とくにチラシや店のページで価格を扱う場面では、景品表示法に触れる書き方になっていないかを、先に確かめます。
売れる状態でない品を載せない「おとり広告」の決まり
景品表示法は、実際には買えない商品を、買えるかのように見せる表示を、おとり広告として禁じています。
おとり広告に関する表示の告示(平成5年公正取引委員会告示第17号)は、取引を行うための準備がされていない商品の表示や、供給量が著しく限られているのに、その限定の内容を分かりやすく書いていない表示を、不当な表示としています。
「限定30個」のように、数量が少ない特売品は、実際の仕入れの数と、チラシに書いた数をそろえておく必要があります。
特売品が朝のうちに売り切れたときは、売り場の入口やページで、その旨をすぐに知らせます。
比べる値段の書き方にも決まりがある
「通常価格」と「特売価格」を並べる二重価格の表示にも、消費者庁の考え方が示されています。
消費者庁のページでは、将来の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示に対する執行方針が、景品表示法のガイドラインとして公開されています。
過去に実際に売っていた期間や数量を示せない値段を「通常価格」と書くと、不当な表示と見られるおそれがあります。
チラシを作る人は、「通常価格」と書いた値段が、いつ、どれだけ売られていた値段かを、記録で言えるようにしておきます。
産地や期限の表示は、売り場の言葉とそろえる
生鮮食品には、原産地を表示する決まりがあります。
店のページに「地元産」「国産」と書くときも、売り場の札と同じ言葉にそろえます。
売り場では産地が変わったのに、ページには前の産地が残っていると、お客様は店を信じなくなります。
惣菜や弁当についても、消費期限や原材料の表示は、売り場の表示が正本です。
ページに書く情報は、その写しになるように作ります。
惣菜と衛生は、ページの言葉も決まりに沿う
2018年に改正された食品衛生法で、食品を扱う事業者には、ハサップに沿った衛生管理が求められるようになりました。
2021年6月に完全施行され、小規模な事業者は、業界団体の手引書を参考にした簡略な形で取り組めます。
惣菜を手作りで出している店では、その衛生管理の取り組みも、お客様が安心して選ぶ材料になります。
店のページで「手作り惣菜」と書くなら、作る場所と時刻、売り切る時間の決まりを、現場と同じ内容で説明できるようにします。
| 表示の場面 | 守ること | ページに写すときの書き方 |
|---|---|---|
| 数量限定の特売 | 仕入れた数と、書いた数をそろえる | 限定の数と、売り切れの知らせ方を書く |
| 通常価格との比較 | 売っていた期間と数量を記録で言える | 比較の根拠を店内に控えておく |
| 生鮮食品の産地 | 売り場の札と同じ言葉を使う | 産地が変わったら当日中に直す |
| 惣菜の時刻と原材料 | 売り場の表示が正本 | ページは売り場の表示の写しにする |
| 衛生管理の取り組み | 現場で行っていることだけを書く | 作る場所と時刻を、実際のとおりに書く |
チラシの外に「今日の売り場」を出す
売り場の中身を外に出すといっても、毎日長い文章を書く必要はありません。
1日1行、決まった場所に、決まった形で書くだけで、チラシの毎週同じ顔に変化が生まれます。
毎日変わる品を、4つだけ選ぶ
最初に、売り場の中で毎日変わる品を、4つに絞って決めます。
たとえば、今日入った鮮魚、手作りの惣菜、旬の青果、精肉の切り落としの4つです。
全部の売り場を書こうとすると、続きません。
4つに絞れば、売り場の担当者が1行ずつ言葉を出すだけで、1日分が完成します。
書く順番を、朝の仕込みの前に決める
書く時刻は、開店前の仕込みの前に決めておきます。
朝の入荷を確かめたときに、担当者がその場で1行を書き、店長がそれを写して外に出します。
売り場の担当者にとって、書くことは入荷の確認の延長になります。
時刻を決めずに「気づいたら書く」と、忙しい日に必ず抜け落ちます。
1日1行でよい。長い説明は要らない
書き方の型は、品名と、今日の理由と、時刻の3つで十分です。
「今朝入ったぶり。脂がのっている。夕方まで」のように、短く言い切ります。
お客様が知りたいのは、今夜の献立が決まる材料です。売り場の自慢は、そのあとで足ります。
1行の中に、買うかどうかを決める情報が入っていれば、それで役目を果たします。
売り場の写真は、棚の全体と手元の1品を撮る
写真は、売り場の棚の全体と、今日の主役の1品を撮ります。
棚の全体は、品ぞろえの幅を伝えます。
手元の1品は、鮮度や大きさを伝えます。
スマートフォンで撮るだけでよく、凝った構図は要りません。
その日の日付と時刻がわかる形で載せると、昨日の写真と区別がつきます。
| 毎日変わる売り場 | 書く内容 | 書くタイミング |
|---|---|---|
| 鮮魚 | 今朝入った魚の名前と産地 | 入荷を確かめた直後 |
| 惣菜 | 今日の品目と揚げ上がりの時刻 | 仕込みの計画が決まったとき |
| 青果 | 旬の品と、地元から入ったもの | 朝の荷下ろしのとき |
| 精肉 | 切り落としや焼肉用の用意 | 開店前の陳列のとき |
| 値下げの時刻 | 何時から何を下げるか | 前日までに決めた決まりを書く |
店のページに書くことと、書き方の順番
「今日の売り場」を置く場所は、お客様が来る前に開く店のページです。
ページの作りが分かりにくいと、せっかくの1行も読まれません。
来る前に知りたいことを、先頭に置く
ページの最初に置くのは、今日の営業時間、休みの日、駐車場の場所です。
その次に、今日の売り場の1行を置きます。
お客様は、行くかどうかを決めるために開いています。
会社の沿革や理念から始まるページは、その決める場面に答えていません。
駐車場と入口は、写真つきで書く
地域の店では、駐車場の入りにくさが、そのまま来店のしやすさを左右します。
どこから入り、どこに停め、どの入口を使うかを、写真で見せます。
はじめて来る人は、地図の印だけでは入口が分からず、通り過ぎてしまうことがあります。
車いすやベビーカーでの動きやすさも、1行あると安心されます。
惣菜の揚げ上がり時刻を、先に伝える
惣菜は、揚げ上がりの時刻に合わせて来る人が一番います。
その時刻をページに書いておくと、お客様は自分の予定に合わせて来店できます。
時刻が日によって違う店では、その日の分を毎朝書き換えます。
書き換えが負担なら、曜日ごとの標準の時刻を決めて、それを書きます。
取り置きと配達の案内を、1か所にまとめる
電話での取り置きや、配達の案内が、店の中の貼り紙にしか書かれていない店があります。
ページに1か所でまとめておけば、店まで来られない人や、その家族が見つけられます。
先ほどの904万人にあたる方や、その家族が近くの店を探すときは、この案内が頼りになります。
対応できる範囲、受付の時刻、連絡の方法を、短く正直に書きます。
| ページの場所 | 書く内容 | お客様が決められること |
|---|---|---|
| 先頭 | 営業時間と休み、駐車場 | 今日行けるか |
| 2番目 | 今日の売り場の1行 | 夕飯の献立が立つか |
| 3番目 | 惣菜の時刻と値下げの時刻 | 何時に行くか |
| 4番目 | 取り置きと配達の案内 | 来店か電話かの選択 |
| 最後 | 店の連絡先と問い合わせ窓口 | 困ったときの連絡先 |
地図検索の店の情報を、売り場とそろえる
店のページと並んで、お客様が見ているのが、地図検索に出る店の情報です。
ここの内容が古いと、せっかくページを整えても、食い違いからお客様は不安になります。
営業時間と臨時休業を、当日のうちに直す
年末年始や台風の日など、営業時間が変わる日は、地図の店情報にも必ず反映します。
地図の情報を見て来店した人が、閉まっている店の前で帰ることになれば、次はその店を選びません。
変更を反映する担当者を決めておけば、直し忘れを防げます。
写真は、売り場の今を保つ
地図の店情報に載る写真が数年前のままだと、売り場の様子が今と違って見えます。
月に1度、売り場の写真を入れ替えるだけで、いまの店だと分かってもらえます。
古い外観や空の棚の写真があれば、外します。
口コミへの返信は、次に来る人への案内として書く
口コミには、書いた本人だけでなく、次にその店を探す人も目を通します。
返信は、書いた人へのお礼であると同時に、次の人への案内です。
「惣菜は毎日15時ごろに揚がります」のように、事実を1行添えると、返信が売り場の情報にもなります。
否定的な書き込みには、言い訳をせず、直したことと、これからの対応だけを短く書きます。
店を主役にせず、買い物をする人の夕方を主役にする
ここまでの話は、すべて同じ考え方から出ています。
店の自慢を並べる前に、買い物をする人が夕方に何をしたいかを、先に書くということです。
私はこの考え方を「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいます。
「うちの魚は新鮮です」と書く代わりに、「今朝入ったぶり。夕方まで」と書く。
店を主役にせず、買い物をする人が今夜の献立を決める手助けをする。
案内役として後ろに控えている店のほうが、お客様に選ばれます。
| 店が主役のページ | 買い物をする人が主役のページ |
|---|---|
| 創業の歴史と店の理念を先頭に置く | 今日の営業時間と今日の売り場を先頭に置く |
| 「新鮮」「安心」と形容を並べる | 今朝入った品と、売り切る時刻を書く |
| チラシの縮小版を載せる | チラシに載らない毎日の変化を載せる |
| 問い合わせは電話番号だけ | 取り置きと配達の案内を1か所にまとめる |
店まで来られない人へ、売り場を届ける
先に見た904万人は、店が遠いか、車に乗れない高齢の方です。
その方たちにとって、スーパーの集客は、来店を増やす話であると同時に、買い物の手段を届ける話でもあります。
電話と取り置きで、来店の手間を減らす
店のページに電話番号と受付の時刻があれば、家族が代わりに取りに来る形を作れます。
「今朝入った魚を、夕方に取り置きできます」と1行書くだけで、取り置きの申し込みは増えます。
受けられる数に限りがあるなら、その数も正直に書きます。
配達や移動販売は、できる範囲を小さく決める
配達や移動販売は、人手のある店でも負担が重い取り組みです。
最初から全域を対象にせず、お店から近い一帯や、週に1日だけの曜日から始めます。
対象の町名と曜日と受付の締め切りを、ページと店内の貼り紙に同じ内容で書きます。
小さく始めて、続けられると分かってから広げるほうが、お客様の信頼を保てます。
家族に向けた案内を1行入れる
高齢の方の買い物は、離れて暮らす家族が手配することもあります。
「ご家族の方からのご注文も受けます」と書いておけば、家族が店に電話をかけるきっかけになります。
ここで書くのは、受けられることの範囲です。
| 来られない理由 | 店が出せる情報 | 書く場所 |
|---|---|---|
| 歩いて行ける距離にない | 配達の対象の町名と曜日 | ページの4番目と店内の貼り紙 |
| 車に乗れない | 取り置きの受付時刻 | ページと電話の案内 |
| 荷物が重い | 重い品の取り置きと配達 | 売り場の札とページ |
| 家族が代わりに頼む | 家族からの注文の可否 | ページの1行 |
| 体調で外に出られない日がある | 電話注文の受付と届ける時刻 | ページの案内 |
店長と店主が、今週やる順番
全部を一度に直す必要はありません。
1週間の中で、手を付ける順番を決めておくと、続けられます。
月曜から水曜は、決める日にする
月曜に、毎日変わる品を4つに絞ります。
火曜に、担当者を決め、書く時刻と場所を決めます。
水曜に、地図検索の店情報を開き、営業時間と写真を確かめます。
この3日間は、お金も外注も要りません。
木曜から日曜は、書いて出す日にする
木曜から、決めた形で1行ずつ書き始めます。
金曜と土曜は、お客様が多く来る日なので、最も反応の見える日です。
日曜の夜に、1週間分の1行を並べて読み返し、書きにくかった品と、反応のあった品を見分けます。
その記録が、翌週の書き方の下書きになります。
| 曜日 | やること | 終わったときの状態 |
|---|---|---|
| 月曜 | 毎日変わる品を4つに絞る | 4つの品が決まっている |
| 火曜 | 書く担当者と時刻を決める | 誰がいつ書くかが紙にある |
| 水曜 | 地図の店情報を開き、直す | 営業時間と写真が今の店に合っている |
| 木曜から土曜 | 毎日1行を書いて出す | 3日分の1行が並んでいる |
| 日曜 | 1週間分を読み返す | 次の週に残す品と変える品が分かる |
よくある質問
Q. 小さな店でも、毎日書き続けられますか?
続けられます。
書くのは1日1行で、品名と理由と時刻だけです。
担当者が入荷を確かめた瞬間に書く形にすれば、新しい作業が増えず、入荷の確認の続きで済みます。
どうしても書けない日が出たら、その日は「本日は通常どおりの売り場です」の一言だけを出します。
Q. チラシは、もうやめたほうがいいですか?
やめる必要はありません。
チラシは、いまも店の前を通らない人に届く手段のひとつです。
ただ、中身が毎週同じなら、開かれる割合は下がります。
チラシの隅に、「今日の売り場は、店のページに毎日書いています」と1行足すだけでも、紙とページがつながります。
Q. 特売の値段は、ページに載せないほうがいいですか?
載せて構いません。
ただし、数量限定の品は、仕入れた数とページに書いた数をそろえます。
「通常価格」と書いた値段は、実際に売っていた期間と数量を、記録で言えるようにしておきます。
消費者庁のおとり広告や二重価格に関する考え方に沿って書けば、安心してページに載せられます。
Q. 大型店やドラッグストアと、値段で張り合わなくてよいのですか?
張り合う場面は限って構いません。
値段だけで選ばれた客は、他の店がより安くすれば移ります。
その店でしか手に入らない今日の鮮魚や惣菜が、ページで先に見えているほうが、選び直されたときにも残ります。
値段の特売は、来るきっかけとして残し、来る理由は売り場の中身に置くのが現実的です。
Q. ページを作る人手が足りません。何から始めればいいですか?
新しいページを作る前に、いまある地図検索の店情報を直すところから始めます。
営業時間、休みの日、駐車場の写真、売り場の写真が今の店と合っているかを確かめます。
そのうえで、毎日の1行を、地図の店情報の投稿欄か、店のページの一番上に書き始めます。
土台は小さくても、毎日更新される場所が1つあれば、お客様は見に来るようになります。
まとめ
スーパーの集客は、特売を増やすだけでは、チラシの毎週同じ顔という悩みが残ります。
総務省の調査では、世帯の90.5%がスマートフォンを持っていて、買い物の前に店の情報を見る人が多数派になっています。
農林水産政策研究所の推計では、店まで歩いて行けず車にも乗れない高齢の方が、全国に904万人います。
選ばれる店は、売り場の中で毎日変わる品を、決まった形でページに書き、地図検索の情報ともそろえています。
チラシや特売の表示は、おとり広告や二重価格の決まりに沿って、記録で説明できる形にします。
店を主役にせず、買い物をする人の夕方を主役にして、店は案内役として後ろに控える。
その考え方が「売れるサイトはみな謙虚」です。
今日できる点検
最後に、今日のうちに自分の店で確かめられることを表にまとめました。
全部を一度に直す必要はありません。
いちばん気になった1か所から始めてください。
| 点検する場所 | 確かめること | 直すときの方向 |
|---|---|---|
| 今週のチラシ | 先週と違う情報が1つ入っているか | 毎週1つ、変わる情報を入れる |
| 毎日変わる品 | 4つに絞って担当者を決めたか | 鮮魚と惣菜と青果と精肉から選ぶ |
| 店のページの先頭 | 営業時間と今日の売り場が最初にあるか | 会社の説明を下に移す |
| 地図検索の店情報 | 営業時間と写真が今の店と合っているか | 今日のうちに直す |
| 数量限定の特売 | 仕入れた数と書いた数が同じか | 売り切れの知らせ方も決める |
| 通常価格の表示 | 売っていた期間と数量を言えるか | 記録を店内に控える |
| 取り置きと配達の案内 | 1か所にまとめて書いてあるか | 受付の時刻と対象の範囲を書く |
点検してみて、どこから手をつければいいか迷ったときは、地図検索の店情報を開くところから始めてください。
そこが直っていれば、チラシの紙面も、店のページも、同じ売り場の上で書けます。
次のチラシを刷る前に、自分の店のページを、はじめて店を探す人の目で上から読んでみてください。
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