看板を出したのに、問い合わせの電話が鳴らない。
店の前を通る人は確かにいるのに、入ってくる人が増えた気がしない。
看板で集客したいと考えている店舗や事業者の方なら、一度はこんな気持ちになったことがあると思います。
この記事は、看板を出している、またはこれから出そうとしている店舗や地域の事業者の方に向けて書いています。
飲食店、美容室や治療院、教室、そして塗装や工務店のように地域で仕事を受ける職人の方まで、看板が集客の入口になっている業種が対象です。
看板の作り方やデザインの話は、ほとんど扱いません。
扱うのは、看板を見た人がそのあと何をしているのか、という話です。
看板を見た人の多くは、その場で店に入ったり電話をかけたりしません。
ポケットからスマートフォンを出して、看板に書かれた名前を検索します。
検索した先で何が見つかるかによって、看板にかけた手間が来店に変わるかどうかが決まります。
あわせて、看板を出すときに関わる決まりについても、法律の条文と自治体の公式の案内で確かめた範囲で整理しました。
読み終えたときに、看板を見た人が最初に開く場所が1つ思い浮かび、そこで直すことが1つ決まっている。
そこをこの記事のゴールにしています。
Q&Aサイトで見かけた、塗装業の方の貸し看板の相談
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
投稿されたのは2021年の5月で、塗装の仕事を自営でしている方からの相談でした。
道路沿いの貸し看板を借りるかどうか
相談の中身は短いものでした。
道路沿いなどにある貸し看板を借りようと考えているが、それで集客につながると思うか、という一文です。
自営の塗装業は、仕事の多くが紹介や元請けからの依頼で回っていることが少なくありません。
自分の名前で直接仕事を受けたいと考えたとき、まず目に入るのが、道路沿いで見かける貸し看板なのだと思います。
看板を出せば、毎日そこを通る人の目に自分の屋号が入ります。
広告として分かりやすく、出したあとの手間も少ないように見えます。
回答は「やめたほうがいい」が多かった
寄せられた回答は、どちらかといえば慎重なものでした。
場所や期間による、という短い答えがありました。
看板を出すくらいなら、地域のコミュニティ新聞に広告を出したほうが効果的だろう、という回答もありました。
あの手の新聞や雑誌は案外読まれている、という理由です。
広告の費用のほうが高くつくのでやめたほうがいい、と書いた回答もありました。
どの回答も、看板そのものが効くかどうか、という1点で答えています。
看板の良し悪しより、見た人がその後どうするか
回答者の言うことは、どれも間違っていません。
場所が悪ければ見られませんし、出し続ける費用に見合う仕事が来なければ赤字になります。
ただ、この相談にはもう1つ見ておきたい点があります。
道路沿いの看板で塗装業者の名前を見た人は、その場で電話をかけることはまずありません。
家の外壁が気になり始めたとき、あるいは家族と相談するときに、看板で見た名前を思い出して検索します。
その検索で、屋号と同じ名前のサイトや地図の情報が見つからなければ、看板を見たことは記憶の奥にしまわれたままです。
同じ看板でも、検索した先が整っている事業者と、整っていない事業者とでは、看板から生まれる仕事の数が大きく変わります。
塗装の集客そのものについては、外壁塗装の集客について書いた記事にもまとめています。
| 迷っていること | 看板を見た人の側で起きていること | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 貸し看板を借りるか | 屋号を見ても、何を頼める業者か分からない | 看板に業種と屋号が大きく書いてあるか |
| 看板の場所を選ぶ | 車で通る人は数秒しか見られない | 屋号を覚えて検索できる長さか |
| 看板に電話番号を載せる | 見た人は今すぐ電話をする気にならない | 屋号で検索したときに自社のページが出るか |
| 地域の新聞と比べる | 新聞を読んだ人も、名前を検索して確かめる | 検索した先に施工の写真と地域名があるか |
| 費用に見合うか悩む | 看板からの依頼かどうか数えていない | 依頼の電話で「何で知ったか」を聞いているか |
これは看板を出す事業者の9割が入り込む落とし穴です
看板で集客がうまくいかないとき、まず疑われるのは看板そのものです。
場所が悪かった、大きさが足りなかった、色が目立たなかった、と考えて、看板を作り直そうとします。
ところが、看板を作り直しても、問い合わせの数がほとんど変わらないことがよくあります。
看板は見られているのに、見た人がそのあと調べた先で、次の一歩を踏み出す材料を見つけられずにいるからです。
この記事で「9割」と書いたのは、統計の数字ではありません。
店舗や地域の事業者の方から集客の相談を受けていると、ほとんどの方が最初に看板やチラシの見た目の話から始める、という実感を言葉にしたものです。
看板の仕事は「名前を覚えてもらう」ところまで
看板は、通りがかった人に、店や会社の名前と何の店かを知らせる道具です。
店の前に置く看板なら、その場で入ってもらうきっかけになることもあります。
けれど、離れた場所にある看板や、車から見る看板が担えるのは、名前と業種を覚えてもらうところまでです。
料金の目安、雰囲気、実際に頼んだ人の声、空いている時間。
見た人が「行ってみよう」「頼んでみよう」と決めるための材料は、看板の小さな面には収まりません。
その材料を受け取る場所が、検索した先にあるサイトや地図の店舗情報です。
見た人は、その場でスマホを出す
看板を見て気になった人が次にするのは、たいてい検索です。
店の前に立っている人でさえ、入る前にスマートフォンで店名を調べ、口コミや中の様子を確かめることがあります。
車の助手席から看板を見た人は、店の名前を声に出し、家族が検索して地図を開きます。
その数十秒のあいだに、看板と同じ名前の店が見つかり、写真と営業時間が確かめられれば、来店の候補に残ります。
名前で検索しても別の店が出てくる、営業時間が書かれていない、写真が何年も前のまま。
そうした小さな引っかかりで、看板に惹かれた人の多くが静かに離れていきます。
| いまの状態 | 見た人の行動 | 先に手を打つ場所 |
|---|---|---|
| 看板は目立つが問い合わせがない | 名前を検索して、決める材料が見つからない | 検索した先の最初の画面 |
| 店の前で立ち止まる人はいる | 入る前にスマホで中の様子を確かめている | 地図の店舗情報の写真と営業時間 |
| 車から見える場所に看板がある | 名前だけ覚えて、あとで検索する | 屋号で検索したときに出る自社のページ |
| 看板とサイトで店名の書き方が違う | 検索しても目当ての店にたどり着けない | 店名の表記を1つにそろえる |
| 看板からの来店か分からない | 何で知ったかを誰も聞いていない | 来た人に1つだけ質問する |
数字で見る、看板を見た人の手元にあるもの
看板を見た人が検索する、という話は感覚だけで言っているわけではありません。
ここでは、総務省が公表している一次資料から、確かめられた数字だけを使って整理します。
世帯の9割以上がスマートフォンを持っている
総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査の結果によると、スマートフォンを持つ世帯は9割を超えています。
発表文には次のように書かれています。
「スマートフォンの保有状況について、世帯の保有割合が91.8%となり、引き続き9割を上回っている。」
同じ発表では、世帯のテレビの保有割合が令和2年から減り続け、スマートフォンを下回ったことも報告されています。
看板の前を通る家族連れや夫婦のうち、誰か1人はほぼ確実に検索の道具を持っている、ということです。
働く世代の約9割が、スマートフォンでネットを使っている
同じ調査の概要には、個人のインターネット利用機器について「スマートフォンが20~59歳の各年齢階層で約9割」が利用していると書かれています。
13〜19歳と60〜69歳の年齢階層でも、8割以上がスマートフォンでインターネットを使っています。
個人単位で見ると、スマートフォンを持っている人の割合は78.9%でした。
看板を見て気になった人の大半は、その場で、または家に帰ってから、手元のスマートフォンで店の名前を調べられる状態にあります。
「看板を見て来た」と答える人の中身
来店した人に「何で知りましたか」と聞くと、「看板を見て」と答える人がいます。
その中には、看板を見たあとに検索して、サイトや地図の情報を確かめてから来た人が多く混ざっています。
本人の記憶に残っているのは最初のきっかけである看板なので、検索して確かめたことまでは口にしません。
看板が効いていると感じている店ほど、実は検索の先も整っていて、その両方で来店が生まれていることがあります。
逆に、看板だけを整えて検索の先を放っておくと、看板の効き目は半分ほどしか表に出てきません。
| 数字 | 資料の名前 | 看板の集客にとっての意味 |
|---|---|---|
| 世帯のスマートフォン保有割合 91.8% | 総務省 令和7年通信利用動向調査 | 看板を見た家族の誰かが、その場で検索できる |
| 個人のスマートフォン保有割合 78.9% | 同上 | 1人で歩いている人も、多くが検索の道具を持っている |
| 20〜59歳の約9割がスマートフォンでネットを利用 | 同上 | 働く世代は、調べものをまずスマートフォンでする |
| 13〜19歳と60〜69歳も8割以上 | 同上 | 学生や退職前後の世代も、検索してから動く |
| 世帯のテレビ保有割合は減少が続く | 同上 | 地域の情報を受け取る道具がスマートフォンに移っている |
看板を見た人は、どんな順番で店を決めるのか
看板を見た人が来店や依頼に至るまでには、いくつかの段階があります。
看板の種類や置き場所によって、見る人の状況はかなり違います。
店の前を通る人
店の前に置いた看板や、入口の上の看板を見るのは、いま店の前を歩いている人です。
この人は、気になればすぐに入れる距離にいます。
それでも、初めての店に入るのは誰にとっても少し勇気がいります。
中の雰囲気、値段の目安、1人でも入りやすいか、待たずに入れるか。
そうした不安を消す材料が看板に書いてあればその場で入りますし、なければスマホで店名を調べて確かめます。
調べた先に店内の写真と、メニューや料金の考え方が載っていれば、その日のうちに入ってくることも珍しくありません。
車で通り過ぎる人
道路沿いの看板や野立て看板を見るのは、車で通り過ぎる人です。
運転している人が看板を見られるのは、ほんの数秒です。
覚えられるのは、せいぜい店の名前と何の店かくらいでしょう。
この人が実際に動くのは、看板を見たときから何日も、何週間もあとのことが多いはずです。
外壁が気になったとき、歯が痛くなったとき、子どもの習いごとを探し始めたときに、「そういえば、あの道沿いに」と思い出して検索します。
そのときに名前で検索して見つからなければ、看板を何百回見てもらっていても、依頼にはつながりません。
何度も見ている近所の人
毎日の通勤や買い物で同じ看板を見ている近所の人は、名前だけはよく知っています。
けれど、知っていることと、行ったことがあることは別のことです。
近所の人は「いつでも行ける」と思っているので、かえって後回しにしがちです。
この人たちが動くきっかけは、季節の変わり目や、困りごとが起きたときです。
近所の人に向けては、看板の文言を季節ごとに変えたり、サイトに季節の便りを載せたりして、「今行く理由」を見せることが効きます。
| 看板を見る人 | 見ている時間 | その後にすること |
|---|---|---|
| 店の前を歩く人 | 数秒から数十秒 | 入るか、店名を検索して中の様子を確かめる |
| 車で通り過ぎる人 | 数秒 | 名前を覚えて、困ったときに検索する |
| 何度も見ている近所の人 | 毎日少しずつ | 困りごとが起きたときに思い出して調べる |
| 信号待ちの人 | 十数秒 | 気になれば同乗者に検索してもらう |
| 駅や待合の看板を見る人 | 数十秒 | その場で検索し、地図で場所を確かめる |
看板の集客がうまくいかない構造
看板を見た人の多くが検索するのに、その先で離れてしまう。
この食い違いは、事業者の努力が足りないから起きるのではありません。
看板と検索の先が、別々に作られてきたことに原因があります。
看板と検索結果で、名前の書き方が違う
看板には「〇〇塗装」と大きく書いてあるのに、サイトの名前は会社の正式名称で「株式会社〇〇工業」になっている。
看板はひらがなの屋号なのに、地図の店舗情報は漢字の正式名で登録されている。
こうしたずれは、驚くほどよく見かけます。
看板を見た人は、看板に書いてあった名前のまま検索します。
その名前で何も出てこない、あるいは同じ名前の別の店が出てくると、見た人はそこで探すのをやめてしまいます。
看板の電話番号だけが窓口になっている
看板に大きく電話番号を書いておけば、問い合わせが来るはずだ、という考え方があります。
けれど、初めての相手にいきなり電話をかけるのは、誰にとっても気の重いことです。
とくに塗装や工事のように金額が大きくなりそうな仕事では、電話をした瞬間に営業をかけられるのでは、と身構えます。
電話をかける前に、施工の写真や、どんな流れで見積もりが進むのかを確かめたい。
その気持ちを受け止める場所がないと、看板の電話番号はほとんど押されません。
看板を作る人と、サイトを作る人が別
看板は看板の制作会社が、サイトはサイトの制作会社が、地図の店舗情報は事業者自身が、それぞれ別々に作っていることがほとんどです。
それぞれの担当者は自分の持ち場をきちんと仕上げますが、見た人が看板から検索の先へ移る流れまでは誰も見ていません。
看板に載せた写真とサイトの写真がまったく違う、看板の宣伝文句がサイトのどこにも書かれていない、ということが起きます。
見た人にとっては、看板で惹かれたものを探しにサイトへ行ったのに、それが見つからない状態です。
看板の効果を誰も測っていない
看板を出したあと、そこからどれだけの来店や依頼があったかを数えている事業者は多くありません。
数えていないので、看板を続けるかやめるかを、感覚で決めることになります。
冒頭の相談の回答が「場所や期間による」「やめたほうがいい」と分かれたのも、看板の効果を確かめる方法がはっきりしないからだと思います。
測り方は後の節で詳しく扱いますが、来た人に1つ質問するだけでも、ずいぶん見え方が変わります。
よくある打ち手と、その先に起きること
看板からの集客が思うようにいかないとき、試される手はだいたい決まっています。
どれも一度はやってみる価値がありますが、検索の先を直さないまま続けると、手間と出費ばかりが増えていきます。
ここでは、よく見かける打ち手と、その先で起きがちなことを順番に見ていきます。
看板を大きく、派手にする
看板が見られていないのではないかと考えて、大きさを変えたり、色を派手にしたり、照明をつけたりする。
目に留まる回数が増えるのは確かです。
ただ、目に留まった人が次に検索したとき、その先が整っていなければ、増えた分の関心もそこで止まります。
さらに、看板を大きくするほど、後の節で触れる屋外広告物の決まりに引っかかりやすくなります。
周りの景観から浮いてしまうと、「派手な店」という印象が先に立ち、落ち着いた雰囲気を求める人を遠ざけることもあります。
貸し看板の数を増やす
1枚では効かなかったので、道路沿いの貸し看板を2枚、3枚と増やしていく。
冒頭の相談の方が考えていたのも、この方向の手でした。
看板の数が増えれば、名前を目にする人の数は増えます。
けれど、名前を見た人が検索して離れていく割合が変わらなければ、出費が増えた分だけ1件あたりの依頼が高くつくことになります。
まず1枚の看板で、見た人が検索の先で何を見ているかを確かめてから増やすほうが、無駄が少なく済みます。
のぼりや置き看板を歩道に出す
店の前の歩道に、のぼり旗やスタンド看板を出して、通る人の目を引こうとする。
店の存在に気づいてもらう効果はありますが、置き場所によっては道路の決まりに触れます。
歩道は店の敷地ではないので、許可なく物を置くと、通る人の妨げになるうえ、撤去を求められることもあります。
歩道に出したスタンド看板に人がぶつかった、という相談がQ&Aサイトに寄せられることもあります。
置き看板を出すなら、まず自分の敷地の中に収まっているかを確かめるのが先です。
看板にQRコードを入れる
看板にQRコードを入れて、そこからサイトに来てもらおうとする。
店の前に置く看板や、待合の場所に貼る看板なら、読み取ってもらえることがあります。
一方、道路沿いの看板や高い位置にある看板では、QRコードを読み取ることはほとんどできません。
読み取ってもらえた場合でも、飛んだ先がサイトのトップページで、看板で惹かれた話がどこにも書かれていなければ、そこで離れていきます。
QRコードを入れるなら、看板を見た人のための案内ページを用意し、そこへ飛ばすのが筋です。
名刺に載せるサイトの入口について考えた名刺とホームページについての記事も、同じ考え方で書いています。
看板をやめて、別の広告に切り替える
看板が効かないと判断して、地域の情報誌や新聞の広告、チラシのポスティングに切り替える。
冒頭の相談でも、地域の新聞に広告を出したほうがいい、という回答がありました。
紙の広告にも、看板と同じことが起きます。
紙面で名前を見た人は、やはり検索して確かめてから動きます。
広告の種類を変えても、検索の先が同じなら、結果はあまり変わりません。
新聞広告については、新聞広告の効果について書いた記事でも詳しく扱っています。
| よくある打ち手 | その先で起きがちなこと | 先にしておくこと |
|---|---|---|
| 看板を大きく派手にする | 見た人は増えても、検索の先で離れる | 屋号で検索したときの最初の画面を整える |
| 貸し看板を増やす | 1件あたりの依頼が高くつく | 1枚目の看板で、見た人の行き先を確かめる |
| のぼりや置き看板を歩道に出す | 通行の妨げになり、撤去を求められる | 自分の敷地に収まっているかを確かめる |
| 看板にQRコードを入れる | 飛んだ先がトップページで、看板の話がない | 看板を見た人向けの案内ページを作る |
| 別の広告に切り替える | 紙面を見た人も検索して離れる | 広告より先に検索の先を直す |
看板を出す前に確かめておく決まり
看板は、自分の店の壁や敷地に出すものであっても、好きな大きさや場所に自由に出せるわけではありません。
ここでは、法律の条文と自治体の公式の案内で確かめた範囲で、看板に関わる決まりを整理します。
細かな基準は地域ごとに違うため、実際に出すときは必ず地元の自治体の窓口で確かめてください。
屋外広告物法と、自治体の条例
屋外に出す看板は、屋外広告物法という法律と、それに基づいて自治体が定める条例の対象になります。
屋外広告物法の第1条は、法律の目的を次のように定めています。
「この法律は、良好な景観を形成し、若しくは風致を維持し、又は公衆に対する危害を防止するために、屋外広告物の表示及び屋外広告物を掲出する物件の設置並びにこれらの維持並びに屋外広告業について、必要な規制の基準を定めることを目的とする。」
つまり、景観を守ることと、看板が落ちたり倒れたりして人がけがをしないようにすることの2つが、決まりの目的です。
同じ法律の第2条では、屋外広告物を「常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるもの」で、看板や立看板、はり紙などに表示されたものと定めています。
店の壁に取りつける看板も、道路沿いの貸し看板も、この定義に入ります。
許可が要るかどうかは、地域で決まる
屋外広告物法の第4条は、都道府県が条例で、看板を出すことについて都道府県知事の許可を受けなければならないとすることができる、と定めています。
実際の基準を決めているのは、都道府県や政令指定都市、中核市、そして条例を定めた市町村です。
たとえば東京都の都市整備局は、公式の案内で次のように説明しています。
「都内のすべての区、市や町等の区域内は許可区域であり、屋外広告物を表示等するためには、原則として許可が必要となっています。」
同じ案内には、表札のような自己の氏名などを示す自家用の広告については、一定の条件のもとで規制の一部を外す仕組みがあることも書かれています。
どこまでが許可なしで出せるかは、広告の種類や面積、地域によって細かく決められています。
住宅地の中の店や、景観を守る地区にある店では、看板の大きさや色に厳しい基準がかかることもあります。
歩道に置く看板は、道路の決まりも関わる
店の前の歩道に置き看板やのぼりを出す場合は、屋外広告物の決まりに加えて、道路に関する法律も関わってきます。
道路法の第32条は、道路に広告塔などの工作物を設けて継続して道路を使おうとする場合、「道路管理者の許可を受けなければならない」と定めています。
道路交通法の第77条も、道路に広告板などの工作物を設けようとする人は、その場所を管轄する警察署長の許可を受けなければならないと定めています。
歩道は店の前にあっても店のものではない、と考えておくのが安全です。
相談する窓口はどこか
看板を出す前に相談する窓口は、地域によって名前が違います。
たいていは、都道府県や市区町村の都市計画、景観、建築の担当課が屋外広告物を受け持っています。
自治体のサイトで「屋外広告物」と検索すると、担当の窓口と、地域ごとの手引きが見つかることがほとんどです。
貸し看板を借りる場合は、看板の持ち主がすでに許可を取っているかどうかも、契約の前に確かめておくと安心です。
| 確かめること | 関わる決まり | 相談する先 |
|---|---|---|
| 店の壁や屋上に看板を出せるか | 屋外広告物法と、都道府県などの条例 | 自治体の屋外広告物の担当課 |
| 許可なしで出せる大きさか | 条例で定める自家用広告の基準 | 同上。地域の手引きで確かめる |
| 歩道に置き看板を出せるか | 道路法第32条の占用の許可 | 道路の管理者(国、県、市など) |
| 歩道にのぼりや看板を立てるか | 道路交通法第77条の使用の許可 | 場所を管轄する警察署 |
| 貸し看板を借りるか | 看板の持ち主が取っている許可 | 看板の持ち主と、自治体の担当課 |
「売れるサイトはみな謙虚」を看板に当てはめる
ここまでの話をまとめると、看板からの集客がうまくいかない事業者には共通点があります。
看板と検索の先が、それぞれ自分のことを話していて、見た人の次の一歩を誰も受け止めていない、という点です。
私たちは、この状態を直す考え方を「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいます。
主役は、看板を見た人の側にいる
謙虚なサイトでは、主役は店でも経営者でもありません。
主役は、外壁のひび割れが気になり始めた人や、仕事帰りに1人で気軽に入れる店を探している人です。
店や事業者は、その人の困りごとを片づける手伝いをする案内役として登場します。
看板もサイトも、創業の年や受賞歴、こだわりの言葉を最初に大きく並べると、主役の座を店の側に置いてしまいます。
見た人が知りたいのは、店がどれだけ立派かより、自分の困りごとをここで片づけられるかどうかです。
看板に全部を書こうとしない
看板の面は限られているので、伝えたいことを詰め込みたくなります。
屋号、業種、電話番号、住所、営業時間、得意なこと、キャンペーンの告知。
全部を書くと、文字が小さくなり、車から見た人には何も残りません。
謙虚な看板は、見た人に覚えてほしいことを1つか2つに絞ります。
たいていは「何の店か」と「何という名前で検索すればいいか」です。
残りの情報は、検索した先のページが引き受けます。
看板とページで役割を分けると、看板は短く読みやすくなり、ページには看板に書ききれなかった安心の材料をたっぷり置けます。
看板と検索の受け皿をつなぐ4つの場所
では、看板を見た人を来店や依頼につなぐには、どこを整えればいいのか。
ここでは、どの業種にも共通して効く場所を4つに絞って見ていきます。
看板と同じ名前で、検索に出てくる
最初に確かめたいのは、看板に書いた名前で検索したときに、自分の店や会社が出てくるかどうかです。
看板の屋号と、サイトの名前、地図の店舗情報の名前が、同じ書き方になっているかを見ます。
ひらがなと漢字、略称と正式名称、「店」の有無といった小さな違いでも、見た人は迷います。
正式名称を変えられない場合は、サイトの最初の画面と地図の店舗情報に、看板と同じ屋号を併記しておきます。
地域の名前と業種を組み合わせて検索する人もいるので、ページの中に「どの地域で何をしているか」を一文で書いておくことも欠かせません。
地図アプリの店舗情報をそろえる
看板を見た人が店名で検索すると、地図アプリの店舗情報が大きく表示されることがよくあります。
ここに載っている営業時間、定休日、電話番号、写真が、看板や公式サイトと食い違っていないかを確かめます。
写真は、看板と同じ外観が分かるものを1枚目にしておくと、「さっき見た店だ」とすぐに分かってもらえます。
外観の写真と一緒に、店内の様子や、職人の仕事であれば施工の前後の写真を載せておくと、決める材料が増えます。
地図の店舗情報の整え方については、ローカルSEOについて書いた記事で詳しく扱っています。
サイトの最初の画面に、看板と同じ景色を置く
検索からサイトに来た人が最初に見る画面に、看板と同じ外観や色、同じ言葉があると、見た人は安心します。
看板で見た店と、いま開いているページが同じ店だと、一目で確かめられるからです。
最初の画面に置くのは、看板と同じ屋号、何の店かを伝える一文、そして次にしてほしいことへの入口です。
飲食店なら、営業時間と地図への入口。
塗装や工事の仕事なら、施工の写真と、見積もりの流れを説明したページへの入口です。
看板では伝えきれなかった「頼んだらどうなるか」が、ここで初めて伝わります。
看板を見た人のための案内ページを用意する
看板にQRコードを入れる場合や、看板に「〇〇で検索」と書く場合は、看板を見た人のための案内ページを1つ用意しておくと効きます。
そのページには、看板で伝えた話の続きを書きます。
看板に「外壁の点検、無料でうかがいます」と書いたなら、案内ページには点検の流れ、かかる時間、点検のあとに営業をかけないことを書きます。
看板に「1人でも入りやすいカウンター席」と書いたなら、案内ページにはカウンターの写真と、混みやすい時間帯を書きます。
看板とページが同じ話の前編と後編になっていると、見た人は迷わず次の一歩に進めます。
| 整える場所 | 確かめること | 見た人がそこで決められること |
|---|---|---|
| 検索に出る名前 | 看板と同じ屋号で、自分の店が出てくるか | 探していた店にたどり着けたか |
| 地図アプリの店舗情報 | 営業時間と写真が看板やサイトと一致しているか | 今日行けるか、どこにあるか |
| サイトの最初の画面 | 看板と同じ外観と言葉があるか | さっき見た店と同じかどうか |
| 看板を見た人の案内ページ | 看板の話の続きが書いてあるか | 電話や来店をしても大丈夫か |
| 問い合わせの入口 | 電話のほかに、気軽に聞ける方法があるか | 営業をかけられずに相談できるか |
ここまでの話を、看板を見た人が店を決めるまでの流れとして図にまとめました。
看板の効果を測る方法
看板が効いているかどうかを感覚で決めないために、簡単に始められる測り方を3つ紹介します。
どれも、特別な道具や大きな手間は要りません。
来た人に、1つだけ質問する
いちばん手軽なのは、初めて来た人や、初めて電話をくれた人に「何で知りましたか」と1つだけ聞くことです。
選択肢を「看板」「検索」「紹介」「その他」くらいに絞って、紙に正の字で数えていくだけでも十分です。
先に書いたように、看板を見て検索してから来た人は「看板」と答えることが多いので、看板と検索の両方を選んでもらえる聞き方にしておくと、実態に近づきます。
1か月ほど数えると、看板がきっかけになっている割合の見当がつきます。
看板ごとに、違う入口を用意する
看板を何枚も出している場合は、看板ごとに入口を変えておくと、どの看板が効いているかが分かります。
案内ページの住所を看板ごとに変える、看板ごとに違う合言葉を書いておく、といったやり方です。
合言葉を言ってくれた人に小さなおまけをつけると、言ってもらえる割合が上がります。
店名で検索された回数を見る
サイトの閲覧の記録や、地図アプリの店舗情報の管理画面では、店名で検索された回数や、地図で表示された回数を見られることがあります。
看板を出した月と出す前の月で、この数字を並べてみます。
看板を出したあとに店名での検索が増えていれば、看板は名前を覚えてもらう仕事を果たしています。
検索は増えたのに来店が増えていないなら、手を入れるべきは看板の側ではありません。
検索した先のページや地図の情報に、来店を決める材料が足りていない、ということです。
| 測り方 | 手間 | 分かること |
|---|---|---|
| 来た人に1つ質問する | 紙と鉛筆だけ | 看板がきっかけになった割合 |
| 看板ごとに入口を変える | 案内ページか合言葉を用意する | どの看板が効いているか |
| 店名の検索回数を見る | 管理画面を月に1度開く | 看板で名前が覚えられているか |
| 検索と来店を並べる | 2つの数字を毎月メモする | 直すべきが看板か、検索の先か |
| 問い合わせの中身を記録する | 電話のメモを残す | 看板を見た人が何を知りたがっているか |
業種ごとに見る、看板と受け皿の組み合わせ
看板と検索の先のつなぎ方は、業種によって少しずつ違います。
ここでは、看板が集客の入口になりやすい業種を4つ取り上げて、看板に書くことと、検索の先に置くことの組み合わせを見ていきます。
塗装や工務店など、家の仕事を受ける事業者
家の仕事は、看板を見てから依頼するまでの時間が長いのが特徴です。
道路沿いの看板や、施工中の現場に掲げる看板で名前を覚えてもらい、何か月も後に検索されます。
看板には屋号と業種、そして地域の名前を大きく書いておきます。
検索の先には、同じ地域での施工の写真、見積もりの流れ、無理な営業をしないという約束を置きます。
施工中の現場の看板は、近所の人にとって「この業者がどんな仕事をするか」を間近で見られる機会でもあります。
現場の看板に案内ページへの入口を添えておくと、工事を見ていた近所の人からの相談につながりやすくなります。
飲食店
飲食店の看板は、店の前を歩く人に「今入るかどうか」を決めてもらう道具です。
看板には何の料理の店かと、1人でも入れるか、待たずに入れるかといった、入る前の不安を消す一言を書きます。
検索の先には、店内の写真、営業時間、混みやすい時間帯を置きます。
地図アプリの店舗情報で、その日の営業時間が正しく表示されているかは、とくに大事な点検の場所です。
治療院やサロン
治療院やサロンは、初めての人が入るのにいちばん勇気がいる業種の1つです。
看板で業種と名前を知った人は、ほぼ必ず検索して、施術の流れや担当する人の顔を確かめます。
検索の先には、初めて来た日の流れ、かかる時間、予約の方法を書いておきます。
医療や施術に関わる業種は、看板やサイトに書ける内容にも別の決まりがあることが多いので、所管の窓口や業界団体の案内で確かめておきます。
教室や習いごと
教室の看板は、通う本人よりも、その家族が見ていることが多いものです。
子どもの習いごとなら、看板を見た親が名前を覚え、家に帰ってから検索します。
検索の先には、体験の申し込み方、1回の流れ、通っている人の年齢層を書いておきます。
体験の日程が一目で分かるページがあると、看板を見た家族がそのまま申し込みに進めます。
送り迎えをする親は、駐車場や近くの停め場所も気にしています。
看板の近くを通る道順と、車を停められる場所をページに書いておくと、通わせる姿を思い浮かべてもらいやすくなります。
| 業種 | 看板に書くこと | 検索の先に置くこと |
|---|---|---|
| 塗装や工務店 | 屋号、業種、地域の名前 | 地域での施工の写真、見積もりの流れ |
| 飲食店 | 何の料理か、入りやすさの一言 | 店内の写真、営業時間、混む時間帯 |
| 治療院やサロン | 業種と名前、初めての人への一言 | 初回の流れ、かかる時間、予約の方法 |
| 教室や習いごと | 何の教室か、体験ができること | 体験の申し込み方、通う人の年齢層 |
| 小売店 | 何を売っている店か | 品ぞろえの写真、営業時間、駐車場 |
小売店の集客については、小売店の集客について書いた記事にもまとめています。
よくある質問
Q. 看板とサイト、どちらを先に整えればいいですか?
すでに看板を出しているなら、検索の先を先に整えるのがおすすめです。
看板はもう見られているので、見た人が検索した先を直せば、その日から効き目が変わります。
これから看板を出すなら、看板に書く屋号とサイトの名前を最初にそろえてから作ると、後で直す手間がかかりません。
Q. 看板に電話番号は書いたほうがいいですか?
書いておいて損はありません。
ただ、初めての相手にいきなり電話をかける人は多くないので、電話番号だけに頼らないことが大切です。
屋号で検索すれば見つかるようにしておき、サイトには電話のほかに気軽に聞ける入口も用意しておきます。
Q. 貸し看板は効果がありますか?
場所と、看板を見た人の行き先しだいです。
毎日通る人が多い道でも、名前を見た人が検索して離れてしまえば、依頼にはつながりません。
借りる前に、屋号で検索したときの画面を確かめ、1枚で効き目を測ってから増やすかどうかを決めると、無駄が少なく済みます。
Q. 看板を出すのに許可は要りますか?
地域と看板の種類によって違います。
屋外広告物法に基づいて、都道府県や市などが条例で基準を決めており、東京都のように原則として許可が必要とされている地域もあります。
出す前に、自治体の屋外広告物の担当窓口で確かめてください。
Q. 看板を作り直すべきか、どう判断すればいいですか?
店名で検索された回数が、看板を出してから増えているかどうかで判断します。
検索が増えているなら看板は役目を果たしているので、作り直すより先に、検索の先を直します。
検索が増えていないなら、看板の場所や、屋号の読みやすさを見直す番です。
まとめ
看板で集客するとき、看板そのものの良し悪しだけを見ていると、効き目の半分を見落とします。
看板を見た人の多くは、その場で、またはあとになってから、スマートフォンで名前を検索するからです。
総務省の令和7年通信利用動向調査によると、世帯のスマートフォン保有割合は91.8%でした。
看板が担うのは、名前と何の店かを覚えてもらうところまでです。
来店や依頼を決める材料は、看板と同じ名前で見つかるサイトや地図の店舗情報に置いておきます。
看板とページを、同じ話の前編と後編としてつなぐ。
その考え方を、私たちは「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいます。
今日できる点検
最後に、今日のうちに確かめられることを表にまとめました。
全部を一度に直す必要はありません。
いちばん気になった1か所から始めてください。
| 点検する場所 | 確かめること | 直すときの方向 |
|---|---|---|
| 看板の屋号で検索した画面 | 自分の店や会社が最初に出てくるか | サイトと地図の名前に、看板と同じ屋号を書く |
| 地図アプリの店舗情報 | 営業時間と定休日が正しいか | 違っていれば今日のうちに直す |
| 地図の1枚目の写真 | 看板と同じ外観が写っているか | 看板が見える外観の写真に差し替える |
| サイトの最初の画面 | 何の店か、次に何をすればいいかが分かるか | 業種の一文と、次の一歩への入口を置く |
| 看板のQRコードの行き先 | 看板の話の続きが書いてあるか | 看板を見た人向けの案内ページへ飛ばす |
| 店の前の置き看板 | 敷地の中に収まっているか | 歩道にはみ出していれば敷地内へ移す |
| 来た人への質問 | 何で知ったかを聞いているか | 今日から1つだけ聞いて数え始める |
点検してみて、どこから手をつければいいか迷ったときは、看板の屋号で一度検索してみてください。
看板を見た人がいちばん最初に目にする画面は、きっとそこにあります。
次に看板の前を通るときは、その画面を思い浮かべながら看板を見上げてみてください。
自社のマーケティング課題を根本から解決しませんか?
ウェブサイトから要素を引き算し、訪れた人が迷わず次の一歩に進む形へ組み直す。初回60分のオンラインで御社のサイトを一緒に読み、どこから直すべきかをお伝えします。手順をまとめた無料の診断と解説動画もご用意しています。
初回は無料・60分・オンライン完結・その場で契約のお願いはいたしません


