小さなバーを開いて半年、1年とたつのに、新しいお客様がほとんど入ってこない。
常連さんには支えられていて、店の雰囲気もお酒の質も悪くないと言ってもらえる。
それなのに、扉を開けて入ってくる初めての人は、週に数組しかいない。
この記事は、そうした悩みを抱えるショットバー、オーセンティックバー、ダイニングバーの店主の方に向けて書いています。
最初に、初めての人がバーの扉の前で何に迷っているのかを整理します。
次に、地図の検索、店の外、カウンターの中、そして帰り際まで、どこを直せば新しいお客様が入り、2回目にも来てくれるのかを順に見ていきます。
読み終えたときに、自分の店で最初に直す場所が1つ決まっている。
そこをこの記事のゴールにしています。
Q&Aサイトで見かけた、ある小さなバーの悩み
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
新しいお客様が週に2組か3組しか入らない
投稿者は、カウンター8席とテーブル2卓の小さなバーを営んでいる方でした。
開店から半年ほどで、数人の常連さんに支えられて、なんとか店を続けているそうです。
ただ、駅から離れた立地のせいか、新しいお客様がほとんど入らない。
平均すると週に2組か3組、悪い週は1組も来ないと書かれていました。
常連さんは週に3回から5回も通ってくれるので、売上はぎりぎり保てている。
それでも、常連さんに何かあったら店が立ち行かなくなるという不安が消えない、という相談でした。
フリーペーパーへの掲載やポスティングは定期的に続けているものの、反応は薄い。
もっと効率のよい集客の方法は無いか、自分では思いつかないような方法があれば教えてほしい、と結ばれていました。
補足に書かれていた2つのこと
この相談には補足がありました。
1つは看板のことです。
店の前には吊り下げ式の看板が1つあるだけで、値段も書いてはいるものの、大きく掲げるのは品が無い気がして控えめにしている、とありました。
もう1つは常連さんの言葉です。
常連さんは口をそろえて、この店は誰にも教えたくない自分の隠れ家だ、と言ってくれる。
うれしい言葉だけれど、新しいお客様につながっていない気がする、と書かれていました。
回答者が返した、少し厳しい言葉
いちばん支持を集めた回答は、なかなか厳しいものでした。
その回答者は、写真と文章を見た印象として、この店は「ただそこに在るだけのお店」になっていないか、と問いかけていました。
フリーペーパーに載せているのが住所と写真とちょっとしたメニューだけなら、初めての人を呼ぶのはむずかしい、とも書いていました。
そして、常連さんが言う隠れ家という言葉については、こう続けています。
「誰にも教えたくない自分の隠れ家」は、隠れ家に留まっていることを指す。
本当にいい店は、人に自慢したくなるものだ、というのです。
質問者は、この回答に少しむっとしたと正直に書いたうえで、隠れ家はほめ言葉ではなかったのだと納得した、とお礼を返していました。
質問者の店に、すでにあったもの
この相談を読んで気づくのは、質問者の店には、すでに大切なものがそろっていたことです。
週に何度も通ってくれる常連さんがいる。
その常連さんが、口をそろえて店を隠れ家だと言ってくれる。
これは、店の中で過ごす時間に、はっきりとした価値があるという証拠です。
足りなかったのは、その価値を、まだ来たことの無い人に伝える手段のほうでした。
伝え方の作り直しは、中身の作り直しに比べて、ずっと早く、ずっと少ない手間で済みます。
この記事でこれから話すことの多くは、店の中身には手を触れず、外への伝え方だけを変える方法です。
これは9割のバーが陥る罠です
この相談は、小さなバーの集客でつまずく場所を、ほとんどそのまま見せてくれています。
立地や広告の量の話に見えて、根っこにあるのは別の問題です。
初めての人は、バーの使い方を知らない
居酒屋やカフェなら、入ったあとに何が起きるかを、たいていの人が知っています。
席に着き、メニューを開き、値段を見て頼み、会計をして帰る。
バーはそうはいきません。
メニューが無い店もあれば、席に着いたらまず何かを言わなければいけない空気の店もあります。
1杯目に何を頼めばいいのか、カクテルの名前を知らなくても大丈夫なのか、どれくらいの金額になるのか。
初めての人は、こうした店の使い方が分からないまま、扉の前で立ち止まっています。
バーの新規客を止めているのは、立地より先に、店の使い方が見えないことです。
値段を出さないのは、品のためだったか
質問者は、値段を大きく出すのは品が無いと考えていました。
その気持ちはよく分かります。
落ち着いた店の雰囲気を守りたい、安売りの店に見られたくない、と考える店主は少なくありません。
ただ、初めての人の側から見ると、値段の分からない店は、それだけで入る理由を失います。
扉を開けたあとで、思っていたより高かったと気づいても、1杯だけで帰るのは気まずい。
その気まずさを想像した人は、扉を開ける前に、別の店へ足を向けます。
値段を掲げることと、店の品を落とすことは、本来は別の話です。
書き方しだいで、品を保ったまま料金の決まり方を伝えることはできます。
店主の当たり前が、初めての人の壁になっている
バーを営む人にとって、チャージやお任せの頼み方は、毎晩繰り返している当たり前のことです。
当たり前のことは、わざわざ書こうとは思いません。
けれども、バーに行き慣れていない人にとっては、その当たり前の1つ1つが、知らない決まりごとに見えます。
知らない決まりごとがある場所に、1人で入っていくのは勇気がいります。
店主が長く業界にいるほど、初めての人の目線を忘れやすくなるのは、自然なことです。
だからこそ、店の外に何が書かれていないかを、意識して探す必要があります。
隠れ家のままだと、紹介が起きない
常連さんの「誰にも教えたくない」という言葉は、店への愛着の表れです。
けれども、教えたくないと思っている人は、実際に誰にも教えません。
小さなバーの新規客は、もともと紹介から生まれることが多い商売です。
常連さんが友人を連れてくる、同僚に店の名前を伝える、2軒目に案内する。
その流れが止まっていると、新しいお客様は地図とフリーペーパーからしか来なくなります。
回答者が言った「自慢させる」とは、常連さんが人に話したくなる材料を、店の側が用意することです。
立地のせいにしたくなる気持ち
質問者は、駅から遠いからなのか、ほかに理由があるのか、と書いていました。
新しいお客様が来ないとき、まず立地を疑いたくなるのは自然なことです。
立地は、店主が今から変えられない条件の1つでもあります。
ただ、駅から遠い店でも、わざわざ人が訪ねてくる店は各地にあります。
そうした店に共通しているのは、行けば何があるのか、どう過ごせばいいのかが、行く前から分かることです。
変えられない立地を嘆くより、変えられる伝え方から手をつけるほうが、確実に前に進めます。
新しいお客様が来ないことの、本当の怖さ
週に3回から5回通ってくれる常連さんは、店にとって何よりありがたい存在です。
ただ、常連さんの暮らしも変わります。
転勤、結婚、子どもの誕生、体調の変化、引っ越し。
どれもよくあることです。
数人の常連さんに頼っている店は、そのうち1人が来なくなっただけで売上が大きく揺れます。
新しいお客様が少しずつでも入ってくる店は、常連さんの入れ替わりを自然に吸収できます。
新規客の集客は、常連さんを守るための備えでもあります。
フリーペーパーの反応が薄かった理由
質問者は、フリーペーパーやポスティングの反応が薄く、手間とお金に見合わないと感じていました。
フリーペーパーそのものが悪いわけではありません。
小さな枠に載っていたのが、店名と住所と写真だけだったことが問題です。
読んだ人は、その店がどこにあるかは分かっても、自分がそこで何をすればいいのかは分かりません。
同じ枠でも、写真をカウンターからの景色に替え、1杯目の頼み方とチャージの有無を一行ずつ書けば、読んだ人の中で店に入る場面が動き出します。
載せる場所を変える前に、載せる中身を変えてみる価値があります。
新規客の数より、新規客の入口を数える
質問者は、自分の店の新規客の割合が15%に届かないと書き、ほかのバーではどれくらいなのかを気にしていました。
割合を気にする気持ちは分かりますが、ほかの店と比べても、自分の店で何を直せばよいかは見えてきません。
それより役に立つのは、新しいお客様が、どこから来たのかを数えることです。
地図で見つけて来たのか、店の前を通りがかって入ったのか、常連さんに連れられて来たのか。
入口ごとに数えると、どの入口が細いのかが分かります。
地図から1人も来ていないなら地図を、通りがかりの人が入らないなら看板を、紹介が無いなら常連さんへの渡し方を直す。
直す場所が分かれば、手間とお金をかける順番も決まります。
| 読んでいるあなたの状況 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 開店したばかりで新規客が来ない | 店の存在と使い方の両方が知られていない | 地図の店情報に店の使い方を書く |
| 常連さんだけで回っている | 常連さんが人に話す言葉を持っていない | 常連さんが紹介しやすい一言を作る |
| フリーペーパーの反応が薄い | 住所と写真だけで、来る理由が書かれていない | 1杯目の頼み方と料金の決まり方を載せる |
| 店の前を人が通るのに入らない | 扉の外から中の様子と値段が分からない | 看板に料金の決まり方と一言を足す |
| 一度来た人が2回目に来ない | 次に来る理由を渡さずに帰している | 次の1杯の提案を帰り際に添える |
表のどの行に近いかを1つ決めておくと、この先の話を自分の店に当てはめやすくなります。
初めての人が使える時間は、扉の前の数十秒
バーの扉の前で立ち止まった人が、入るか通り過ぎるかを決めるまでの時間は、長くありません。
雑居ビルの階段の下、看板の前、重い木の扉の前で、たいていは数十秒のうちに決めています。
その数十秒で、ここなら1人で入って1杯飲んで帰れそうだ、と思えれば扉は開きます。
思えなければ、今夜は家で飲もうと引き返します。
同じことが、スマートフォンの地図の画面の上でも起きています。
店の名前と写真と口コミを見て、数十秒で次の店へ指を滑らせるかどうかを決めているのです。
初めての人がバーの前で迷っている4つのこと
では、初めての人はバーの扉の前で、具体的に何に迷っているのでしょうか。
お酒が好きな人ほどバーに行くように思えますが、家で飲むことに慣れた人ほど、バーの扉は重く感じられます。
迷いの中身を分けると、大きく4つになります。
1杯目に何を頼めばいいのか分からない
いちばん多いのが、1杯目の頼み方の迷いです。
メニューが置いていない店では、席に着いた瞬間に「何になさいますか」と聞かれます。
カクテルの名前を2つか3つしか知らない人は、そこで頭が真っ白になります。
知っている名前を言って、こんな有名なものを頼むなんてと思われないか。
ウイスキーを頼みたいけれど、銘柄を聞かれたら答えられない。
こうした小さな恥ずかしさの想像が、1人目の来店を止めています。
実際には、多くのバーテンダーは、好みを聞いて1杯を作ることを楽しみにしています。
それが外から分からないことが問題です。
「甘いのが苦手」「さっぱりしたもの」「強すぎないもの」と言えば大丈夫だと分かっていれば、初めての人は安心して扉を開けられます。
チャージとカクテルの値段感が読めない
次が料金の迷いです。
バーには、席料にあたるチャージがかかる店と、かからない店があります。
チャージの有無、1杯あたりのおおよその幅、ナッツやお通しの扱い。
これが外から分からないと、初めての人は会計の金額を最悪の場合で想像します。
特に、メニューに値段を書かず、時価のように見える店は、それだけで慎重な人を遠ざけます。
バーの常連さんにとって、チャージは当たり前の仕組みです。
初めての人にとっては、何に払うお金なのかが分からない、不安の種になっています。
チャージで何が用意されるのか、たとえば席と氷と最初のおつまみ、店の静けさを保つための料金だと説明されていれば、納得して払えます。
静かに飲む店か、話をする店か
3つ目は、店の過ごし方の迷いです。
1人で静かにウイスキーを味わいたい人もいれば、店主と話をしに来る人もいます。
前者は、店主や常連さんに話しかけられ続けると落ち着きません。
後者は、静まり返った店で1人だけ黙って飲むのは居心地が悪い。
どちらの店がよいという話ではありません。
問題は、外からどちらの店なのかが分からないことです。
自分の好みと違う店に入ってしまった経験がある人は、次からはバーの扉そのものを避けるようになります。
どれくらい居ていいのか、何杯で帰っていいのか
4つ目が、滞在の長さの迷いです。
1杯だけ飲んで帰ってもいいのか、2杯は頼むのが礼儀なのか。
終電までの30分だけ寄りたい人にとって、これは大きな迷いです。
2軒目として寄る人、食事のあとに軽く1杯だけ飲みたい人、待ち合わせまでの時間をつぶしたい人。
バーの使い方は、本当はとても幅が広いのです。
1杯だけでもどうぞ、と書かれている店は、こうした人たちの選択肢に入ります。
ボトルを入れないといけないのか
ウイスキーや焼酎のボトルを預けておける店では、初めての人が、自分もボトルを入れないといけないのかと迷うことがあります。
常連さんの名前が書かれたボトルがずらりと並ぶ棚は、店の歴史を感じさせる一方で、初めての人には、常連さんだけの店に見えることもあります。
ボトルを入れなくても1杯ずつ頼めることを、さりげなく書いておくと、この迷いは消えます。
ボトルの仕組みは、2回目、3回目に来てくれた人に、店主から案内すれば十分です。
1人で来る女性は、もう1つ気にしていることがある
1人でバーに来る女性は、ここまでの4つの迷いに加えて、もう1つのことを気にしています。
それは、安心して過ごせるかどうかです。
ほかのお客様に、しつこく話しかけられないか。
酔ったお客様が多い店ではないか。
帰り道は暗くないか。
店主がその場の空気に目を配っている店だと分かれば、この心配はやわらぎます。
女性の1人客が多い時間帯や、カウンターの端の席を用意していることを書いておくと、それだけで候補に入る店になります。
服装や年齢で、浮いてしまわないか
もう1つ、口に出されにくい迷いがあります。
自分の服装や年齢が、その店に合っているかどうかです。
仕事帰りの作業着のままで入っていいのか、若い自分が入ったら場違いではないか、年配の自分がにぎやかな店に入ったら浮かないか。
店の中の写真に、いろいろな年代や服装のお客様が写っていると、この迷いは小さくなります。
写真を載せるときは、常連さんの許可をもらったうえで、後ろ姿や手元だけを写す方法もあります。
迷いは、お酒に詳しくない人だけのものではない
ここまでの迷いは、バーに慣れていない人だけのものに見えるかもしれません。
実際には、お酒に詳しい人でも、初めての店の扉の前では同じことを気にしています。
ウイスキーが好きな人は、自分の好きな銘柄が置いてあるか、ボトルで頼むといくらになるかを知りたい。
カクテルが好きな人は、その店が得意とする1杯は何かを知りたい。
慣れている人ほど、外れの店に入りたくないので、事前に確かめられる店を選びます。
店の使い方を外に書くことは、初心者向けの親切であると同時に、詳しい人に選ばれるための準備でもあります。
| 初めての人の迷い | 答えが見つからないときに起きること | 店の外やページに置くもの |
|---|---|---|
| 1杯目に何を頼めばいいか | 恥をかく想像をして入らない | 好みを伝えれば作ります、という一文 |
| チャージとカクテルの値段感 | 会計を最悪の場合で想像して避ける | チャージの有無と、1杯のおおよその幅 |
| 静かな店か、話す店か | 合わない店だった経験から避ける | 店の過ごし方と、1人客の席の扱い |
| 何杯で帰っていいか | 短い時間では寄れないと思う | 1杯だけの方も歓迎です、という一文 |
| 誰がいるのか | 常連さんの輪に入れない想像をする | 客層と、初めての方の割合のめやす |
この表の右の列は、どれも店主にとっては当たり前のことばかりです。
当たり前すぎて、書かれていない。
そのことが、初めての人の足を止めています。
スナックとバーでは、迷いの中身が少し違う
同じ夜の店でも、スナックの場合は、ママや常連さんの輪に入れるかどうかという人の迷いが中心になります。
バーの場合は、それに加えて、お酒の頼み方や過ごし方といった、店の使い方の迷いが大きくなります。
スナックの集客の考え方は、スナックの集客は扉を開ける前の不安に答えることからでくわしくまとめています。
この記事では、バーならではの、使い方の分からなさに絞って話を進めます。
迷いに答えている店は、まだ少ない
ここまでの迷いに、店の外やページできちんと答えているバーは、まだ多くありません。
地図で近くのバーを開いてみると、紹介文にお酒のこだわりは書いてあっても、1杯目の頼み方やチャージの有無まで書いてある店は、ほんのわずかです。
裏を返せば、迷いに答えるだけで、周りの店から一歩抜け出せるということです。
大がかりな改装も、新しいメニューの開発も要りません。
書かれていない当たり前を、書くだけです。
バーの集客がむずかしくなっている構造
ここで少し視野を広げて、小さなバーを取り巻く環境を見ておきます。
集客がうまくいかないのは、店主の努力不足だけが理由ではありません。
1人で暮らす人が増え、1人で飲む人も増えた
総務省が公表した令和2年の国勢調査によると、一般世帯のうち1人で暮らす単独世帯は38.0%でした。
一般世帯のおよそ5つに2つが、1人暮らしということになります。
1人で暮らす人は、夕食のあとに誰かと話したくなったとき、近所で1杯飲める場所を探します。
その一方で、1人で入れる店かどうかを、とても気にします。
1人客の需要は確かにあり、しかもその人たちは、扉の前でいちばん慎重になる人たちでもあります。
1人で入りやすい店だと伝わるかどうかで、この大きな層に届くかどうかが決まります。
店探しの入口は、スマートフォンの地図に移った
総務省が令和6年に公表した令和5年の通信利用動向調査では、「個人でのスマートフォンの保有割合(78.9%)は増加傾向にある」とまとめられています。
世帯で見ると、スマートフォンを持っている割合は90.6%でした。
食事を終えた人が、もう1軒どこかへ寄ろうと思ったとき、最初に開くのはスマートフォンの地図です。
「近くのバー」と打ち込み、並んだ店の写真と口コミを数十秒で見比べる。
フリーペーパーを持ち歩いて店を選ぶ人は、ずいぶん少なくなりました。
質問者がフリーペーパーやポスティングの反応の薄さに悩んでいたのは、店探しの入口そのものが移ったからでもあります。
たばこの扱いが、店選びの条件になった
令和2年4月に改正健康増進法が全面的に施行され、飲食店の中での喫煙は原則としてできなくなりました。
一定の条件を満たして喫煙できる店にする場合は、その旨を示す標識を入口に掲げることが義務づけられています。
これによって、吸える店かどうかは、初めての人が店を選ぶときのはっきりした条件になりました。
たばこを吸う人は吸える店を、吸わない人は煙の無い店を探します。
どちらの店であっても、それが外から分からないと、両方のお客様を取り逃がします。
家で飲む選択肢が、ずっと身近になった
家で飲むお酒の選択肢は、ここ十数年でずいぶん増えました。
近所の店で、手ごろなウイスキーやクラフトビールが手に入り、家庭でも凝ったカクテルを作る人がいます。
質問への回答にも、お酒を飲みたいだけなら自分でいい酒を安く買って家で飲む、という客の立場からの言葉がありました。
裏を返せば、わざわざバーに足を運ぶ人は、お酒そのものより、お酒の時間を誰かに整えてもらうことを求めています。
その時間がどんなものかを外から伝えられない店は、家で飲む夜と比べられて負けてしまいます。
口コミの数と中身が、選ばれる順番を左右する
地図で店を見比べる人は、写真の次に口コミを読みます。
口コミが1件も無い店は、それだけで入る理由を1つ失います。
口コミの中身も大切です。
お酒がおいしかった、雰囲気がよかった、という口コミより、1人でも入りやすかった、好みを聞いて作ってくれた、という口コミのほうが、初めての人の迷いに直接答えてくれます。
来てくれたお客様に、よろしければ地図に感想を、とお願いするときは、入る前に何が気になっていたかも書いてもらえるとうれしいです、と添えてみてください。
2軒目の流れが細くなった
かつてのバーには、居酒屋で食事をしたあとの2軒目として、自然にお客様が流れてくる時間帯がありました。
会社の飲み会が減り、1軒で切り上げる人が増えた今、その流れは細くなっています。
ただ、2軒目の需要が消えたわけではありません。
少人数での食事のあと、もう少しだけ話したいという場面は今もあります。
その人たちが店を選ぶ時間は、食事を終えてから歩き出すまでの数分です。
その数分で見つけてもらえるかどうかが、2軒目の集客を左右します。
個人の小さな店には、店主の顔が見えるという強みがある
ここまで読むと、小さなバーには不利な話ばかりに見えるかもしれません。
けれども、大きな店や系列の店には無い強みが、小さな店にはあります。
それは、店主の顔が見えることです。
1人で来る人も、2軒目で寄る人も、最後は「この人の店なら大丈夫そうだ」と感じて扉を開けます。
系列の店では、誰が立っているかは日によって変わります。
小さなバーでは、いつ行っても同じ店主がいて、前回の話を覚えていてくれる。
この強みは、外から見える形にしたときに初めて、新しいお客様に届きます。
違いが外から見えないバーは、比べてもらえない
バーは、内装も、お酒の品ぞろえも、店主の人柄も、店ごとにまるで違います。
それなのに、外から見るとどの店も、暗い扉と小さな看板にしか見えません。
地図の上でも、薄暗い店内の写真が並び、どれが自分に合う店なのか見分けがつきません。
違いが外から見えなければ、初めての人は比べることもできず、結局は知っている店か、入りやすそうな大きな店を選びます。
小さなバーが新規客を迎えるには、店の違いを、外から見える形に置き換える必要があります。
多くの店主がやってしまう、遠回りの集客
新しいお客様が来ないとき、店主が最初に思いつく方法には、いくつか共通の型があります。
どれも間違いとは言い切れませんが、初めての人の迷いに答えていないため、手間のわりに結果がついてきません。
フリーペーパーに住所と写真だけを載せる
質問者がまさにこれでした。
フリーペーパーの小さな枠に、店名、住所、営業時間、店内の写真を1枚載せる。
これを見た人に分かるのは、そこにバーがある、ということだけです。
1杯目に何を頼めばいいのか、いくらぐらいかかるのか、1人で入れるのか。
迷いの答えが1つも書かれていないので、読んだ人の多くは、行ってみようとまでは思いません。
小さな枠でも、1行の一言を変えるだけで反応は変わります。
割引やハッピーアワーで呼ぼうとする
次に多いのが、値引きで入口を広げる方法です。
開店から何時までは1杯目がお得、初めての方は割引、といった打ち出し方です。
値段の不安を減らす効果はありますが、値引きにつられて来た人は、値引きが終わると来なくなります。
しかも、落ち着いた店の雰囲気を気に入っている常連さんにとって、急に騒がしい時間帯ができるのは歓迎しにくいことです。
値引きを考える前に、普段の料金の決まり方を外に書くほうが、同じ不安をもっと静かに消せます。
イベントで一度に人を集める
周年祭、ウイスキーの試飲会、音楽のライブ。
イベントは、店を知ってもらうきっかけとしては悪くありません。
ただ、イベントの日に来た人は、普段の店の姿を知らないまま帰ります。
にぎやかな日しか知らない人は、普段の静かな夜に1人で来ようとは思いにくいのです。
イベントに来てくれた人に、普段の夜の過ごし方を伝える工夫が無いと、その日の売上だけで終わってしまいます。
毎日のお酒の写真を投稿し続ける
ボトルを並べた写真や、作ったカクテルの写真を、毎日のように投稿する店も多くあります。
続けること自体は立派ですが、投稿を見ているのは、ほとんどがすでに店を知っている人です。
初めての人が知りたいのは、珍しいボトルより、自分がその店で過ごす様子です。
カクテルの写真を何十枚並べても、1杯目に何を頼めばいいかの答えにはなりません。
飲食店の紹介サイトに載せて、そのままにする
飲食店の紹介サイトに店を載せたものの、最初に登録した情報のまま何年もたっている店もあります。
写真は開店当時のもの、紹介文は店主のあいさつだけ、営業時間は今と違う。
紹介サイトで店を探す人は、ほかの店と見比べながら選んでいます。
情報が古い店は、比べられる前に候補から外れます。
大事なのは、載せた情報を初めての人の目線で保ち続けることです。
広告で、店の名前を見せる回数を増やす
広告を出して、店の名前を見てもらう回数を増やそうとする店主もいます。
名前を知ってもらうことは大切ですが、店の使い方が見えないままでは、名前を見た人が扉の前で止まる場面は変わりません。
広告で連れてきた人が、地図を開いて同じ迷いにぶつかり、そこで引き返す。
これでは、広告にかけたお金が、迷いの手前で消えていきます。
広告を考えるのは、店の使い方を外に書き終えてからでも遅くありません。
内装を変えて、雰囲気で勝負する
照明を替える、カウンターを作り直す、音楽を変える。
内装に手を入れて店の雰囲気を磨くことは、店主にとって楽しく、やりがいのある仕事です。
けれども、雰囲気は扉を開けた人にしか伝わりません。
扉の外で引き返している人には、磨き上げた内装は1度も見られないまま終わります。
内装にかける手間の一部を、内装を外に伝える写真と言葉に回したほうが、新しいお客様には早く届きます。
常連さんの居心地を理由に、何も変えない
もう1つの型は、何もしないことです。
常連さんが今の店を気に入ってくれているのだから、下手に変えないほうがいい。
この判断には、もっともな理由があります。
けれども、何も変えないまま新しいお客様を待つと、店は少しずつ常連さんの数に合わせて小さくなっていきます。
常連さんの居心地を守ることと、初めての人が入れるようにすることは、両立できます。
変えるのは店の中より先に、店の外の伝え方です。
| よくある集客の方法 | 初めての人に起きていること | 代わりに直す場所 |
|---|---|---|
| フリーペーパーに住所と写真だけ | そこにバーがあると分かるだけ | 1杯目の頼み方と料金の決まり方の一言 |
| 割引やハッピーアワー | 値引きが終わると来なくなる | 普段の料金の決まり方を外に書く |
| イベントで人を集める | 普段の夜の過ごし方を知らない | イベントの日に普段の夜の案内を渡す |
| お酒の写真を毎日投稿 | 自分が過ごす様子が想像できない | 1人客の席から見た景色を載せる |
| 常連さんのために何も変えない | 店があることすら知られない | 店の外の伝え方だけを先に変える |
左の列の方法は、どれも店主が言いたいことから出発しています。
右の列は、初めての人が知りたいことから出発しています。
遠回りの方法に共通していること
遠回りの方法に共通しているのは、店の側から見た魅力を、店の側の言葉で伝えようとしていることです。
珍しいボトルがある、腕のよいバーテンダーがいる、落ち着いた内装がある。
どれも本当のことですが、初めての人が扉の前で知りたいのは、その手前の話です。
自分がこの店に入ったら、何をどう頼んで、いくらぐらい払って、どう過ごして帰るのか。
その流れが思い浮かんだとき、初めて店の魅力が伝わり始めます。
「売れるサイトはみな謙虚」をバーに当てはめる
ここで、この記事の軸になる考え方をお伝えします。
合同会社謙虚では、中小企業のホームページを見直すときに「売れるサイトはみな謙虚」という言葉を使っています。
店や会社が言いたいことを引き算し、訪れた人が知りたいことを、知りたい順に置く。
選ばれているお店のホームページや看板は、この形になっています。
主役はお客様で、店主は案内役
バーの場合、この考え方はとても分かりやすい形をとります。
店主が言いたいのは、お酒の品ぞろえや技術、店のこだわりです。
初めての人が知りたいのは、自分がこの店をどう使えばいいのか、です。
主役を初めてのお客様に置き、店主はその人が迷わず1杯目にたどり着けるように案内する役にまわる。
バーの謙虚さは、店の使い方を、初めての人の言葉で書くことに表れます。
カウンターの中で毎晩やっていることを、扉の外でもやるだけのことです。
答える順番は、お客様が店にたどり着く順番
案内には順番があります。
初めての人は、地図で店を見つけ、店の前に立ち、扉を開け、1杯目を頼み、会計をして帰ります。
その順番ごとに、知りたいことが違います。
地図の上では、どんな店で、1人で入れるのか。
店の前では、料金の決まり方と、中の様子。
席に着いたら、1杯目の頼み方。
帰り際には、また来てもいいのか、次は何を飲めばいいのか。
この順番に沿って答えを置いていけば、初めての人は途中で引き返さずに済みます。
図のどの段階で初めての人が止まっているかは、店によって違います。
地図で選ばれていない店もあれば、店の前まで来てくれているのに扉が開かない店もあります。
自分の店がどこで止まっているかを見つけることが、最初の一歩です。
謙虚な案内は、店の格を下げない
初めての人に向けて使い方を書くと、店が安っぽく見えるのでは、という心配があるかもしれません。
実際には逆のことが起きます。
格式のあるホテルのバーほど、初めてのお客様への案内が行き届いています。
席に案内し、好みを尋ね、その人に合う1杯を勧める。
その案内の丁寧さが、店の格として受け取られています。
小さなバーでも同じです。
案内が丁寧な店は、初めての人に、ここは大切に扱ってくれる店だという印象を残します。
案内の言葉は、カウンターでの言い方をそのまま使う
店の外に書く言葉を考えるとき、急にかしこまった文章を書こうとする必要はありません。
いちばん伝わるのは、店主がカウンターで初めての人に毎晩かけている言葉です。
「甘いのと、すっきりしたのと、どちらがお好きですか」
「1杯だけでも大丈夫ですよ」
こうした言葉をそのまま書けば、読んだ人は、扉の向こうの店主の声を想像できます。
引き算するのは、店主の説明したい気持ち
ここで言う謙虚は、店主の説明したい気持ちを、いったん引き算することです。
酒の産地や製法、グラスへのこだわりを語りたい気持ちは、カウンターに座ってくれた人との会話にとっておく。
店の外とページには、初めての人が扉を開けるのに必要なことだけを置く。
そうすると、伝えることはずいぶん少なくなり、そのぶん伝わりやすくなります。
初めての人の目線を、店主が自分で確かめる
店の使い方を外に書く前に、初めての人がどこで止まっているのかを、店主自身の目で確かめておきます。
長く店に立っている人ほど、初めての人の目線を思い出すのはむずかしくなります。
そこで、目線を借りる方法をいくつか紹介します。
知らない街のバーに、1人で入ってみる
いちばん手早いのは、店主自身が、知らない街のバーに1人で入ってみることです。
地図で店を探し、看板の前に立ち、扉を開けるまでに、自分が何を確かめているのかを書き留めておきます。
同業の店主であっても、初めての店の扉の前では、料金や過ごし方が気になるはずです。
その気になったことが、自分の店の外に書かれているかどうかを、帰ってから確かめます。
知人に、地図だけで店を選んでもらう
バーにあまり行かない知人に、自分の店の近くで、地図だけを見て1軒選んでもらうのも役に立ちます。
選ぶ途中で、どの写真を見て、どの言葉で迷ったのかを、声に出してもらいます。
自分の店が選ばれなかったとしたら、その理由がいちばんの手がかりです。
店主には見えていなかった迷いが、ほんの数分で見えてきます。
新しいお客様に、どこで店を知ったかを聞く
新しいお客様が来てくれたら、会話の中で、どこで店を知ったのか、入る前に何が気になったのかを聞いてみてください。
聞いた答えは、日付と一緒にノートに書き留めておきます。
1か月分たまると、地図から来た人が多いのか、紹介で来た人が多いのか、どの迷いが多いのかが見えてきます。
直す場所の順番は、その記録から決めると外れません。
ある夜、店の前で立ち止まる人を数えてみる
もし店が通りに面しているなら、ある夜の開店前の時間に、店の前で立ち止まる人を数えてみるのも1つの方法です。
看板の前で足を止めたのに、そのまま通り過ぎた人が何人いたか。
その人たちが何を見て、何が分からずに去ったのかを想像すると、看板に足りない一言が見えてきます。
立ち止まる人がほとんどいないなら、看板の明かりや位置そのものを見直す必要があります。
| 確かめる方法 | 分かること | 次に直す場所 |
|---|---|---|
| 知らない街のバーに1人で入る | 初めての人が扉の前で確かめること | 自分の店の外に足りない一言 |
| 知人に地図だけで選んでもらう | 写真と紹介文のどこで迷うか | 地図の最初の写真と紹介文 |
| 新しいお客様に聞く | どこで店を知り、何が気になったか | いちばん多かった迷いへの答え |
| 常連さんに紹介の仕方を聞く | 常連さんが店をどう話しているか | 紹介の一言とカード |
4つすべてをやる必要はありません。
いちばん手軽な1つから始めれば十分です。
ショットバー、オーセンティックバー、ダイニングバーで伝えることは違う
ひと口にバーといっても、店の形によって、初めての人の迷い方は少しずつ違います。
自分の店がどの形に近いのかによって、外に書く使い方の重心を変えます。
ショットバーは、1杯の気軽さを伝える
1杯ずつ注文して、気軽に飲んで帰れるのがショットバーの持ち味です。
初めての人にとっての迷いは、1杯だけで帰ってもいいのか、どれくらいの金額で済むのか、という点に集まります。
ショットバーなら、1杯だけの方も歓迎です、という一言と、1杯のおおよその幅を前に出すのが近道です。
2軒目や、終電前の短い時間の需要とも相性がよい形です。
オーセンティックバーは、作法の不安を消す
本格的なカクテルやウイスキーを出すオーセンティックバーは、店の格式が魅力である一方、初めての人には作法の不安が大きくなります。
服装はどうすればいいのか、カクテルの名前を知らなくてもいいのか、写真を撮ってもいいのか。
格式を保ったまま、初めての方には好みを伺ってお作りします、と添えるだけで、作法の不安はかなり小さくなります。
格式の高い店ほど、この一言が効きます。
ダイニングバーは、食事とお酒の両方の使い方を見せる
食事もしっかりとれるダイニングバーは、1軒目として選ばれやすい形です。
ただ、居酒屋とどう違うのか、食事だけでもいいのか、お酒を頼まないといけないのかが、外から分かりにくいことがあります。
食事だけでも、食後の1杯だけでも使える店だと書いておくと、使われる場面が広がります。
| 店の形 | 初めての人の主な迷い | 前に出す一言 |
|---|---|---|
| ショットバー | 1杯だけで帰っていいか | 1杯だけの方も歓迎です |
| オーセンティックバー | 作法や服装、頼み方 | 好みを伺ってお作りします |
| ダイニングバー | 食事とお酒の使い分け | 食事だけでも、食後の1杯だけでも |
| 店主との会話が中心の店 | 輪に入れるか | 1人の方も店主がお相手します |
自分の店が2つの形にまたがっているなら、いちばん増やしたいお客様に近い行を選んでください。
1軒目・2軒目・1人飲みで、バーの使われ方は変わる
店の使い方を書くといっても、来る人によって使い方は違います。
まず、自分の店がどんな場面で使われているのか、使われてほしいのかを整理しておきます。
1軒目として来る人は、軽い食事と落ち着きを求めている
仕事帰りに、まっすぐバーへ向かう人がいます。
この人たちは、空腹のまま強いお酒を飲むことは避けたいので、軽い食事ができるかを気にします。
ダイニングバーなら、ここは得意な場面です。
ショットバーやオーセンティックバーでも、チーズやナッツ、簡単なおつまみがあるかどうかを書いておくだけで、1軒目の候補に入ります。
早い時間帯は店も静かなので、初めての人が店主とゆっくり話せる時間でもあります。
2軒目として来る人は、話の続きができる場所を探している
食事のあとに寄る人は、すでにお腹は満ちていて、もう少しだけ話したいと思っています。
2人か3人で来て、並んで座れるか、話し声が迷惑にならないかを気にします。
この人たちが店を選ぶのは、店を出て歩き出すまでの数分です。
地図に、食事のあとの1杯にどうぞ、といった一言と、2人で座れる席の写真があれば、その数分で選ばれます。
2軒目で来た人は、1軒目で飲んでいるぶん、1杯か2杯で帰ることが多くなります。
短い時間でも歓迎していることが伝わると、気軽に寄ってもらえます。
食事のあとの数分で、選ばれる店になる
2軒目を探す人は、店を出た直後に、歩きながらスマートフォンで近くのバーを探します。
そのとき、地図の上で今から入れるかどうかが分かる店は、強い候補になります。
今夜の空き具合を投稿で知らせている店、最後の注文の時間がはっきり書かれている店、2人で座れる席の写真がある店。
こうした店は、迷っている数分のうちに選ばれ、そのまま扉を開けてもらえます。
2軒目の需要を取りにいくなら、この数分で答えが見つかる状態を作っておくことが近道です。
1人で来る人は、自分のペースを守れるかを気にしている
1人で来る人は、バーにとってとても大切なお客様です。
気に入れば1人で何度も通ってくれ、常連さんになりやすいからです。
ただ、先に見たとおり、1人の人は扉の前でいちばん慎重になります。
話しかけられたくない日もあれば、誰かと話したい日もある。
その両方を受け止めてもらえる店だと分かると、1人の人は安心して扉を開けます。
待ち合わせや、ひと息つきたい人も来る
バーを使う場面は、1軒目、2軒目、1人飲みだけではありません。
待ち合わせまでの30分を過ごしたい人、仕事の区切りにひと息つきたい人、映画や演劇の帰りに余韻を楽しみたい人もいます。
こうした人たちは、長居をするつもりは無く、静かに1杯飲める場所を探しています。
開店直後の早い時間帯が空いている店なら、そこを短い時間の人に向けて案内すると、店がいちばん静かな時間にも売上が立ちます。
曜日と時間帯で、来てほしい人を分ける
同じ店でも、曜日と時間帯によって、来る人の顔ぶれは変わります。
週末の遅い時間は2軒目の人が多く、週の初めの早い時間は1人の人が多い、といった傾向は、店主なら肌で感じているはずです。
空いている曜日や時間帯こそ、初めての人を迎えるのに向いています。
店主が1人1人と話す余裕があり、常連さんの輪に気後れする心配も少ないからです。
地図の投稿やページで、週の初めの夜は静かで初めての方にもおすすめです、と書いておくと、空いている時間に新しいお客様を呼ぶことができます。
| 来る場面 | その人が気にしていること | 地図や店の外で伝えること |
|---|---|---|
| 仕事帰りの1軒目 | 軽い食事ができるか | おつまみや軽食の有無と写真 |
| 食事のあとの2軒目 | 並んで座れるか、話せるか | 2人で座れる席と、話し声のめやす |
| 1人で静かに飲みたい | 話しかけられ続けないか | 静かに飲める席があること |
| 1人で誰かと話したい | 店主と話せるか | 店主が話し相手になれる時間帯 |
| 終電前の短い時間 | 1杯だけでもいいか | 1杯だけの方も歓迎という一文 |
自分の店で、いちばん増やしたい場面を1つ決めてください。
すべての場面に向けて書こうとすると、どの人にも響かない文章になります。
地図で「バー」と並んだときの見え方を整える
先に見たように、店探しの入口はスマートフォンの地図に移っています。
小さなバーにとって、地図の店情報は、もう1つの看板です。
しかも、店の前を通らない人にも見てもらえる看板です。
最初の写真は、カウンターに座った人の目線で
地図で店を見比べる人は、最初の1枚の写真で、その店を見るかどうかを決めます。
多くのバーは、外観の写真か、ボトルが並んだ棚の写真を最初に置いています。
外観の写真は、暗い時間に撮ると何の店か分かりにくく、ボトルの棚は、どの店も似た景色になります。
初めての人の目線で選ぶなら、カウンターに座ったときに見える景色が向いています。
自分がそこに座ったらこう見える、と想像できる写真は、扉を開けたあとの不安を先に消してくれます。
そのあとに、1杯目のグラス、2人で座れる席、外観と入口の順で並べると、店にたどり着くまでの流れが写真だけで追えます。
店の名前だけで、何の店か分かるか
地図に並ぶ店の名前は、初めての人が最初に読む文字です。
横文字の店名や、店主の名前をとった店名は、それだけでは何の店か分かりにくいことがあります。
地図の業種の設定がバーになっているか、喫茶店や居酒屋になっていないかを確かめておきましょう。
業種が違っていると、「近くのバー」と探した人の画面に、そもそも出てきません。
紹介文には、店の使い方を書く
地図の店情報には、紹介文を書く欄があります。
ここに、お酒の品ぞろえや店のこだわりを並べている店が多いのですが、初めての人が読みたいのは使い方です。
メニューが無くても好みを伝えてもらえれば作れること、チャージの有無、1杯だけでも歓迎していること、静かに飲める店か話をする店か。
この4つが紹介文の最初の数行に入っていれば、店を選ぶ数十秒のうちに答えが届きます。
店までの道順を、写真で見せる
駅から離れた店や、路地の奥にある店は、地図の地点だけではたどり着けないことがあります。
最寄りの駅の出口、曲がる角の目印、ビルの入口、階段の先の扉。
この道順を数枚の写真で地図に載せておくと、初めての人は迷わずに店の前まで来られます。
迷いながらたどり着いた人は、扉の前ですでに疲れていて、入るのをためらいがちです。
道順の写真は、扉の前に立つ人の気持ちを軽くしておくための準備でもあります。
営業時間と最後の注文の時間を、正確に保つ
地図の営業時間が実際と違っていると、せっかく来てくれた人が閉まった扉の前で引き返すことになります。
一度でもそうした経験をした人は、二度とその店の情報を信じません。
臨時の休みや、早めに閉める日の情報は、その日のうちに直しておきます。
最後の注文の時間と、何時までなら初めての人も入りやすいかを書いておくと、2軒目の人が時間を読みやすくなります。
投稿は、その夜の店の様子を1枚
地図の店情報には、写真つきの投稿を載せることができます。
ここに新しいボトルの写真を並べる店が多いのですが、初めての人に向けるなら、その夜の店の様子を1枚載せるほうが役に立ちます。
今夜はカウンターに空きがあります、今夜は静かな夜です、という一言と、カウンターの写真。
これだけで、今から寄ろうか迷っている人の背中を押せます。
毎日でなくても、空いている夜だけで構いません。
口コミへの返事で、店の人柄を見せる
地図には口コミが並びます。
よい口コミにも、厳しい口コミにも、店主が短く丁寧に返事をしている店は、それだけで人柄が伝わります。
返事の中で、初めての方も気軽にどうぞ、次は好みを聞かせてください、と添えておくと、口コミを読んだ人への案内にもなります。
| 地図の店情報で見る場所 | よくある状態 | 初めての人に向けた直し方 |
|---|---|---|
| 最初の写真 | 暗い外観かボトルの棚 | カウンターに座った人の目線の写真 |
| 紹介文 | 品ぞろえとこだわりの説明 | 頼み方、チャージ、過ごし方を最初に書く |
| 営業時間 | 臨時休業が反映されていない | その日のうちに直し、最後の注文の時間も書く |
| 口コミ | 返事が無いまま並んでいる | 短い返事で人柄と案内を伝える |
| たばこの扱い | 書かれていない | 喫煙できるかどうかを明記する |
店の外に「店の使い方」を出す
地図で店を見つけた人は、次に店の前に立ちます。
ここで扉が開くかどうかを決めるのが、看板と入口です。
看板に、1杯目の頼み方を書く
看板に店名しか書いていない店は、少なくありません。
質問者の店も、吊り下げ式の看板が1つだけでした。
店名の下に、1杯目の頼み方を一言だけ足してみてください。
たとえば「メニューが無くても大丈夫です。好みを聞いて1杯お作りします」という一文です。
この一文は、値段の表示ほど目立たず、店の品も落としません。
それでいて、初めての人がいちばん怖がっていることに、扉の外で答えてくれます。
料金の決まり方を、静かに外へ出す
質問者は、値段を大きく掲げるのは品が無いと考えていました。
大きく掲げる必要はありません。
チャージの有無と、その中身、1杯のおおよその幅を、入口の横に小さな札で示すだけで十分です。
字体や紙を店の雰囲気に合わせれば、品を損なうことはありません。
大事なのは金額の安さより、会計が読めることです。
読める店は、それだけで初めての人の候補に残ります。
扉の外から、中の明るさと人の気配を少しだけ見せる
重い木の扉は、バーの魅力の1つです。
ただ、中がまったく見えない扉は、初めての人にとって、開けるまで何が起きるか分からない箱になります。
扉の小窓から明かりが漏れている、階段の途中に店内の写真が1枚貼ってある、それだけでも扉の重さは変わります。
雑居ビルの上の階にある店なら、ビルの入口に、店内の写真と1杯目の頼み方を書いた小さな案内を置くと効果的です。
喫煙の決まりを、標識と一緒に一言で
喫煙できる店は、入口に標識を掲げることが決まっています。
ただ、標識だけでは、どの席で吸えるのか、時間で分けているのかまでは分かりません。
吸わない人は、煙がどれくらい流れてくるのかを気にしています。
標識の横に、喫煙の決まりを一言で添えておくと、吸う人にも吸わない人にも、入る前に判断の材料が届きます。
看板の明かりは、営業中の合図になる
夜の街で、看板の明かりは、店が開いているかどうかを知らせる合図です。
明かりが暗い、あるいは消えている看板は、営業しているのか閉まっているのかが分かりません。
初めての人は、分からないときには入らないほうを選びます。
開店している間は看板の明かりを確実にともし、満席のときや貸し切りのときは、その旨を一言だけ札で示しておくと親切です。
階段と廊下は、扉までの案内図になる
雑居ビルの2階や3階、地下にある店は、扉にたどり着くまでの階段や廊下も、初めての人にとっては不安の種です。
この先で合っているのか、ほかの店と間違えていないか。
階段の途中に、店名と矢印の小さな札が1枚あるだけで、その不安は消えます。
扉の手前に、店内の写真と1杯目の頼み方を書いた案内を置けば、扉を開ける最後の一押しになります。
| 店の外の場所 | よくある状態 | 足すもの |
|---|---|---|
| 看板 | 店名だけ | 1杯目の頼み方の一言 |
| 入口の横 | 何も無い | チャージの有無と1杯の幅を書いた小さな札 |
| 扉 | 中がまったく見えない | 小窓の明かりや店内の写真 |
| ビルの入口 | 店名の表示だけ | 店内の写真と、上の階まで来る道順 |
| たばこの表示 | 標識だけが貼ってある | 吸える席や時間の決まりを一言で |
入口の札は、季節ごとに見直す
入口に置いた札や案内は、一度作るとそのままになりがちです。
紙が日に焼けて色あせていたり、書いてある内容が今の店と違っていたりすると、かえって店の印象を下げてしまいます。
季節が変わるたびに、札の内容と紙の状態を見直し、その季節のおすすめの1杯を書き添えておく。
通りがかりの人にとっても、札の中身が変わっている店は、今も手をかけている店だと伝わります。
静かに飲む店か、話をする店かをはっきりさせる
店の使い方の中で、伝えるのがいちばんむずかしいのが、過ごし方です。
けれども、ここがはっきりしている店ほど、合うお客様だけが来てくれるので、常連さんの居心地も守られます。
店の過ごし方を、1つの言葉で決める
まず、自分の店がどちらに近いのかを、1つの言葉で決めてみてください。
静かにお酒と向き合う店なのか、店主との会話を楽しむ店なのか、その間なのか。
決めた言葉を、地図の紹介文、看板、ページの最初に、同じ言い回しで置きます。
言い回しをそろえておくと、初めての人は、どこで店を知っても同じ印象を持って扉を開けます。
1人客の席と、話しかける合図を決めておく
両方のお客様を迎えたい店は、席で分けるのが確実です。
カウンターの端は静かに飲みたい方の席、真ん中は店主と話したい方の席、と店の中で決めておきます。
初めての人が入ってきたら、最初に「静かに飲まれますか、それとも少しお話ししますか」と一言聞く。
この一言で、初めての人は自分のペースを守れると分かり、肩の力が抜けます。
常連さんにも、店の過ごし方を伝えておく
店の過ごし方を外に書いたら、常連さんにも同じことを伝えておきます。
静かな席に初めての人が座ったら、話しかけるのは控えてもらう。
お話の席に初めての人が座ったら、輪に入れるように声をかけてもらう。
常連さんが店の過ごし方を知っていると、初めての人を迎える空気を、店主1人で作らずに済みます。
静かな店でも、最初の一言は店主から
静かな店では、店主が話しかけないことが、もてなしだと考えられがちです。
ただ、初めての人にとって、席に着いてから最初の一言を自分から言うのは、思った以上に負担です。
静かな店であっても、最初の一言だけは店主から声をかける。
「初めてですか。お好みを伺ってお作りしますね」という一言があれば、そのあとは静かに過ごしてもらえば十分です。
| 店の過ごし方 | 合うお客様 | 外に書く一言の例 |
|---|---|---|
| 静かにお酒と向き合う | 1人で考えごとをしたい人 | 1人で静かに飲める店です |
| 店主との会話を楽しむ | 誰かと話したい1人の人 | 店主がお話の相手をします |
| 両方を席で分ける | 日によって気分が違う人 | 静かな席とお話の席があります |
| 食事のあとの2人連れ | 話の続きをしたい人 | お2人の会話を楽しめる席があります |
この表のどれか1行を選び、右の列の一言をそのまま使っても構いません。
自分の店の言葉に直せれば、さらに伝わります。
常連さんが人に話したくなる一言を作る
質問者の店には、週に何度も通ってくれる常連さんがいました。
小さなバーにとって、いちばん確かな新規客の入口は、この常連さんの紹介です。
隠れ家を、自慢できる店に変える
回答者は、本当にいい店は人に自慢したくなるものだ、と書いていました。
常連さんが店を人に話さない理由の1つは、話すための言葉を持っていないことにあります。
いい店だよ、雰囲気がいいんだ、という言葉では、聞いた人は行ってみようとまでは思いません。
この店に行ったら、好みを言うだけで知らなかったウイスキーに出会える。
この店のマスターは、その日の気分に合わせて1杯を作ってくれる。
こうした具体的な一言があると、常連さんは人に話しやすくなります。
店主の仕事は、常連さんが自慢できる一言を、店の側から用意しておくことです。
常連さんに、紹介の言葉と道具を渡す
具体的な一言が決まったら、それを常連さんに渡します。
店の名前と一言、場所の案内を書いた小さなカードを作り、常連さんに何枚か持っていてもらう。
ご友人をお連れいただいたら、その方の1杯目は好みを聞いて作ります、と伝えておく。
常連さんが新しい人を連れてきたときに、その人を自然に迎える流れを決めておくと、連れてきた常連さんの顔も立ちます。
紹介されて来た人は、最初から店の使い方を常連さんに教わっているので、初めての人の迷いをほとんど持たずに入ってきます。
紹介で来た人は、紹介者の名前と一緒に迎える
常連さんに連れられて来た人や、常連さんから店の名前を聞いて来た人には、その常連さんの名前を添えて迎えます。
「いつも来てくださる方のお知り合いなんですね」という一言で、初めての人は、自分はこの店に受け入れられていると感じます。
あとでその常連さんに、ご紹介いただいた方が来てくださいました、とお礼を伝えておくと、常連さんはまた次の人を紹介したくなります。
紹介の流れは、こうした小さなお礼の積み重ねで太くなっていきます。
店主が、店のいちばんの使い方を言えるか
常連さんに紹介の言葉を渡す前に、店主自身が、自分の店のいちばんの使い方を一言で言えるかを確かめておきます。
この店は、仕事帰りに1人で静かに1杯飲む店です。
この店は、食事のあとに2人で話の続きをする店です。
店主が迷わず言えれば、その言葉は常連さんにもそのまま伝わります。
店主自身が言えなければ、常連さんも人に話すことができません。
常連さんの声を、許可をもらって外に出す
常連さんがこの店を気に入っている理由は、初めての人にとって何よりの案内になります。
店主が書く紹介文より、実際に通っている人の言葉のほうが、初めての人には信じやすいからです。
常連さんに、この店のどこが好きかを短く書いてもらい、許可をもらってページや店の外に載せてみてください。
名前は出さず、通っている年数や、どんなときに来るかだけを添える形でも十分です。
隠れ家だと言ってくれた常連さんの言葉が、ここで初めて、新しいお客様への案内に変わります。
常連さんの居心地を守る線を決めておく
紹介を増やすと、常連さんの居場所が狭くなるのではと心配になるかもしれません。
その心配には、店のほうで線を引いておくことで応えられます。
常連さんの定位置の席は残す、混み合う曜日には初めての方を少人数に絞る、といった決まりです。
線がはっきりしていれば、常連さんは安心して人を紹介できます。
2杯目の会話が、2回目の来店を決める
初めての人が扉を開けてくれたら、次は2回目に来てもらうことです。
小さなバーでは、2回目に来るかどうかは、1杯目より2杯目のときの会話で決まることが多くあります。
1杯目の感想を聞き、好みを覚える
1杯目を出したあと、少し間を置いて感想を聞いてみてください。
甘さはどうだったか、香りは好みだったか。
その答えから、その人の好みを1つ覚えておきます。
2杯目は、その好みに合わせて、少しだけ違う方向の1杯を提案します。
自分の好みを覚えてもらえた、自分のために選んでもらえた、という経験が、この店にまた来たいという気持ちを生みます。
帰り際に、次の1杯の約束を残す
会計のときに、次に来たら試してほしい1杯を、一言だけ伝えておきます。
今日のお好みなら、次はこのウイスキーが合うと思います、という程度の一言です。
次に飲む1杯が決まっている人は、それを確かめるために2回目の扉を開けます。
紙に書いて渡す必要はありません。
店主が覚えていて、2回目に来たときに「前回お話ししたあの1杯ですね」と言えれば十分です。
会計の前に、おおよその金額を伝える
初めての人がいちばん緊張するのは、会計の瞬間です。
思っていたより高かったという経験は、味の記憶よりも強く残り、2回目の来店を止めてしまいます。
2杯目を勧めるときに、こちらは少し値の張るお酒です、と一言添える。
会計の前に、今日はこれくらいになります、と伝える。
それだけで、初めての人は安心して2杯目を頼め、会計のあとにも嫌な記憶を持ち帰りません。
名前を聞くのは、2回目からでいい
初めての人に、最初から名前や連絡先を聞く必要はありません。
1回目は、好みを1つ覚えるだけで十分です。
2回目に来てくれたときに、前回の好みを覚えていることを伝え、そのうえで、よろしければお名前を、と尋ねる。
この順番なら、初めての人は身構えずに済み、2回目の人は覚えてもらえたことを喜んでくれます。
見送りは、扉の外まで
初めての人が帰るとき、カウンターの中から声をかけるだけでなく、可能なら扉の外まで見送ります。
階段の下や、ビルの入口までの短い道のりでも、見送られた記憶は残ります。
雑居ビルの上の階の店なら、帰り道で迷わないかを気にかける一言も添えられます。
最後の数十秒の印象が、2回目の扉を開けるかどうかを左右します。
2回目に来た人を、初めての人と同じに扱わない
2回目に来てくれた人は、店にとって、初めての人とは違う大切なお客様です。
前回の好みを覚えていること、前回話したことを覚えていることを、さりげなく伝えます。
初めての人と同じように、メニューの説明から始めてしまうと、2回目の人は覚えてもらえていなかったと感じます。
小さなバーでは、店主の記憶がそのまま店の財産になります。
覚えきれないときは、閉店後に、その夜のお客様の好みを短く書き留めておくと助けになります。
季節の1本で、また来る理由を作る
季節ごとに入れ替わるお酒や、その時期だけのカクテルがある店は、また来る理由を自然に持っています。
春の果物を使った1杯、秋に開けるウイスキー、冬の温かいカクテル。
その季節の1本を、地図の投稿やページで知らせると、一度来た人が思い出して戻ってくるきっかけになります。
| 来店のどの場面か | やること | お客様に残るもの |
|---|---|---|
| 1杯目を出したあと | 感想を聞いて好みを1つ覚える | 好みを分かってもらえた感覚 |
| 2杯目の提案 | 好みから少しずらした1杯を出す | 知らなかったお酒との出会い |
| 会計のとき | 次に試してほしい1杯を伝える | 次に来る理由 |
| 2回目の来店 | 前回の好みと約束の1杯を覚えている | この店は自分の店だという感覚 |
| 季節の変わり目 | 季節の1本を地図やページで知らせる | また行こうと思い出すきっかけ |
この表は、カウンターの中で毎晩していることを、順番に並べ直しただけのものです。
順番を意識するだけで、初めての人が2回目に来る割合は変わってきます。
ホームページは、初めての人への案内状として作る
小さなバーにホームページは要らない、と考える店主は少なくありません。
地図の店情報と投稿で十分だという考えにも一理あります。
ただ、地図の紹介文は短く、書ける量に限りがあります。
店の使い方をきちんと伝えるには、1枚のページがあると便利です。
ページの順番は、初めての人の迷いの順番
ページの最初には、店の過ごし方を表す1つの言葉と、カウンターに座った目線の写真を置きます。
その下に、1杯目の頼み方、チャージの有無と1杯のおおよその幅、1人で来る方への案内、2軒目で寄る方への案内を続けます。
最後に、場所の案内と、ビルの入口から扉までの道順の写真を載せます。
お酒の品ぞろえやこだわりは、このあとに置けば十分です。
初めての人の迷いに先に答え、こだわりはそのあとに読んでもらう順番にします。
写真は、営業中の明かりで撮る
ページや地図に載せる店内の写真は、営業中と同じ明かりで撮るのが基本です。
昼間に明るく撮った写真は、店の様子がよく分かる反面、夜に扉を開けたときの印象と大きく違ってしまいます。
写真と実際の店が違うと、初めての人は扉を開けた瞬間に戸惑います。
夜の明かりのまま、カウンターと手元がきちんと見える写真を、何枚か撮っておきましょう。
店主の写真と言葉を、ページの真ん中に
小さなバーを選ぶ人は、結局のところ、店主を選んでいます。
カウンターの中に立つ店主の写真と、どんな夜を過ごしてほしいかを書いた短い言葉を、ページの真ん中に置いてください。
上手な文章である必要はありません。
初めての方に向けて、店主自身の言葉で書かれた数行は、どんな飾った紹介文よりも扉を開ける力になります。
ページの言葉は、地図と看板とそろえる
ページを作ったら、そこで使った言葉を、地図の紹介文と看板にもそろえます。
過ごし方を表す言葉、1杯目の頼み方の一言、料金の決まり方の書き方。
どこで店を知っても同じ言葉に出会うと、初めての人はその言葉を信じて扉を開けます。
場所ごとに言い方が違うと、どれが本当なのかと、かえって迷わせてしまいます。
予約や問い合わせの受け方を書いておく
小さなバーでも、予約ができるかどうかを知りたい人はいます。
2人で確実に座りたい人、誕生日や記念日に使いたい人、貸し切りを相談したい人。
予約を受けるのか受けないのか、受けるならどの方法で連絡すればよいのかをページに書いておくと、そうした人たちの問い合わせが自然に入ってきます。
予約を受けない店なら、その旨と、空いている時間帯のめやすを書いておくだけで、無駄足を踏ませずに済みます。
| ページの順番 | 置くもの | 答えている迷い |
|---|---|---|
| 最初 | 過ごし方の言葉とカウンターの写真 | どんな店か、自分に合うか |
| 2番目 | 1杯目の頼み方 | 何を頼めばいいか |
| 3番目 | チャージの有無と1杯の幅 | いくらかかるか |
| 4番目 | 1人の方、2軒目の方への案内 | どう使えばいいか |
| 5番目 | 店主の写真と言葉 | どんな人がいる店か |
| 最後 | 道順の写真 | 迷わずたどり着けるか |
ページは、完成させてから出さなくていい
ページを作るとなると、写真も文章も完璧にそろえてからと考えがちです。
けれども、初めての人の迷いに答える数行と写真が数枚あれば、ページとしては十分に役に立ちます。
まずは1杯目の頼み方とチャージの有無、店の過ごし方の言葉だけを載せて出してしまう。
そのあと、新しいお客様から聞いた迷いを足していけば、ページは店と一緒に育っていきます。
よくある質問
Q1. 値段を外に出すと、安い店に見えませんか
金額を大きく掲げる必要はありません。
チャージの有無と1杯のおおよその幅を、店の雰囲気に合った小さな札で示すだけで、初めての人の不安は消えます。
品を落とさずに会計を読めるようにすることが、初めての人の入りやすさにつながります。
札の字体や紙を、店の内装やメニューの書き方に合わせておけば、店の雰囲気の一部として受け取ってもらえます。
Q2. 駅から遠い店でも、新しいお客様は来ますか
駅から遠い店は、通りがかりのお客様が少ないぶん、地図と紹介からのお客様が中心になります。
地図の写真と紹介文を整え、常連さんが紹介しやすい一言を作れば、立地の弱さはある程度おぎなえます。
わざわざ歩いて来る理由が1つ書かれているかどうかが、分かれ目です。
駅から店までの道順を写真で示しておくと、遠さへの不安も小さくなります。
Q3. メニューを作らないのが店のこだわりなのですが
メニューを作らないこと自体は、立派な店のこだわりです。
その場合は、メニューが無いことと、好みを伝えれば作ることを、外に書いておいてください。
メニューが無い理由が分かると、初めての人はそれを店の楽しみ方として受け取ります。
その日のおすすめを黒板に数行だけ書いておくのも、メニューを持たない店らしい案内になります。
Q4. 常連さんが、新しいお客様を嫌がりませんか
常連さんの定位置の席を残す、混み合う日の受け入れを決めておくなど、店のほうで線を引いておけば、多くの常連さんは新しい人を歓迎してくれます。
常連さんに紹介の役割をお願いすると、新しいお客様は常連さんの客人として店に入ってくるので、むしろ居心地はよくなります。
常連さんにとっても、自分が紹介した人が店を気に入ってくれるのは、うれしいことです。
Q5. イベントはやめたほうがよいですか
やめる必要はありません。
イベントの日に来てくれた人に、普段の夜の過ごし方と1杯目の頼み方を伝える工夫を足してください。
普段の静かな夜を知ってもらえれば、イベントは2回目の来店の入口になります。
イベントの帰りに、普段の夜はこんな店です、と書いた小さなカードを渡すのも1つの方法です。
まとめ
小さなバーの新規客が増えない理由は、立地や広告の量より先に、店の使い方が外から見えないことにあります。
初めての人は、1杯目に何を頼めばいいのか、チャージとカクテルの値段感、静かに飲む店か話をする店か、何杯で帰っていいのかに迷っています。
その迷いに、地図の写真と紹介文、看板の一言、入口の小さな札、ページの順番で、1つずつ答えていく。
カウンターの中で毎晩していることを、扉の外でもする。
それが、バーにおける「売れるサイトはみな謙虚」の形です。
隠れ家と言ってくれる常連さんには、人に話したくなる一言を渡し、紹介の流れを作る。
扉を開けてくれた人には、2杯目の会話で好みを覚え、次の1杯の約束を残して帰ってもらう。
この順番で店の外と中を整えれば、週に数組だった新しいお客様は、少しずつ増えていきます。
全部を一度に直す必要はありません。
地図の紹介文の最初の数行、看板の一言、入口の小さな札。
このうち1つを直すだけでも、扉の前で引き返していた人の何人かは、扉を開けてくれるようになります。
より詳しい考え方や、ほかの業種での例は、合同会社謙虚のトップページでもご紹介しています。
今日できる点検
最後に、今日のうちに確かめられることを表にまとめます。
| 点検すること | 確かめ方 | できていなかったら |
|---|---|---|
| 1杯目の頼み方が外に書いてあるか | 看板と地図の紹介文を読む | 好みを聞いて作ります、と一言足す |
| 料金の決まり方が読めるか | 入口と地図を初めての人の目で見る | チャージの有無と1杯の幅を小さな札にする |
| 過ごし方が1つの言葉で伝わるか | 地図、看板、ページの言い回しを比べる | 同じ言葉にそろえる |
| 最初の写真が座った目線か | 地図の1枚目の写真を見る | カウンターからの景色に差し替える |
| 常連さんが紹介する言葉を持っているか | 常連さんに店をどう紹介するか聞いてみる | 自慢できる一言とカードを用意する |
| 次の1杯の約束を残しているか | 今夜の会計のときの一言を振り返る | 次に試してほしい1杯を伝える |
今夜の開店前に、スマートフォンで自分の店を地図で開いてみてください。
紹介文の最初の数行に、1杯目の頼み方とチャージの有無が書いてあるかを確かめます。
書いていなければ、そこが最初に直す場所です。
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