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BtoBサイトとは|問い合わせが増える設計とよくある失敗の防ぎ方

2026 9/18
funnel

「デザインを一新したのに、問い合わせがまったく増えない」。BtoBサイトのリニューアルを終えた経営者やWeb担当者から、こうした声を聞くことは珍しくない。見た目は明らかに洗練され、社内の評判も上々なのに、フォームに届く件数だけが変わらない。原因はデザインの巧拙ではなく、多くの場合、BtoBという購買行動の特殊性そのものをサイト設計に反映できていないことにある。

国内の調査会社が2026年6月に実施した「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査」によれば、営業担当者に接触する時点で、買い手の63.5%が「すでに複数の候補をリストアップしている」、あるいは「数社に絞り込んでいる」状態にあるという。営業担当者が名刺を交換するはるか前に、勝負の大半はWebサイト上で決まっている。

この事実は、Web担当者に厳しい問いを突きつける。営業担当者が説明する前に、サイトだけで「この会社になら任せられる」と思わせられているか。値段や機能を並べるだけのサイトは、この問いに答えられない。この記事では、中小企業がBtoBサイトを新規構築・リニューアルする際に押さえるべき設計思想を、実データに基づいて具体的に解説する。

先に結論を言えば、成果が出ないBtoBサイトの多くは、情報やデザインを「足しすぎている」。何かが足りないわけではない。決裁者が稟議を通すために本当に必要な情報が、余計な要素の下に埋もれているだけだ。この記事で扱う施策の多くは、要素を足すというより、不要なものを削る発想に基づいている。

なお本稿の統計は、国内外の調査機関が公表した一次情報にもとづいている。出典を明記できない体験談やあいまいな伝聞は含めていない。

目次

BtoBサイトとBtoCサイトはなぜ根本的に違うのか

BtoBサイトの設計でもっとも致命的な誤りは、BtoC(一般消費者向け)サイトの発想をそのまま持ち込んでしまうことだ。誰が、どれくらいの時間をかけて意思決定をするのか、その前提がBtoBとBtoCではまったく異なる。

意思決定に関わる人数の多さと「拒否権の階層」

BtoCの購買は、個人の感情や直感、あるいは家族内での相談で短期間に完結することが多い。対してBtoBの購買は組織的な意思決定であり、関与するステークホルダーの数がまるで違う。海外の調査会社が公表した資料によれば、複雑なBtoBソリューションの購買グループの中央値は6〜10人とされる(2018年時点の分析。より新しい調査では、購買グループは複数部門にまたがる5〜16人程度と報告されている)。

この6〜10人は、単に頭数が多いだけではない。それぞれが異なる役割と評価基準を持っている。

役割 主な関心事
起案者(現場担当者) 操作性や業務効率化の度合い
影響者(情報システム部門・法務部門) セキュリティやシステム連携への適合性
決裁者(部長・役員クラス) 投資対効果と経営リスクの回避
利用者(現場のメンバー) 学習コストの低さ

日本企業の意思決定にはここに「拒否権の階層」が加わる。現場の起案者がどれほど製品を高く評価しても、情報システム部門が「セキュリティ基準を満たしていない」と判断すれば、その案件は容易に白紙へ巻き戻される。決裁者が「費用対効果の根拠が薄い」と感じても同じことが起きる。BtoBサイトは、これらすべての立場が抱く懸念を先回りして払拭し、社内稟議をスムーズに通すための論拠を用意する場でなければならない。

厄介なのは、これら4つの役割が同時にサイトを見に来るわけではない、という点だ。起案者が最初にサイトを訪れ、機能ページと事例ページを読み込んで社内資料をつくる。その資料をもとに決裁者が別の日にサイトへアクセスし、価格ページと会社概要だけを確認する。情報システム部門は、さらに別のタイミングでセキュリティに関するページだけを探しに来る。1人のユーザーが一連の体験として読むのではなく、複数の人物がバラバラのタイミングで、それぞれ違う目的でサイトの一部だけを見ている。だからこそ、どのページから入っても迷わず必要な情報にたどり着けるナビゲーション設計が要る。

検討期間の長さと、繰り返し訪問される前提

BtoBの商材は単価が高く、導入が業務プロセスや経営に大きな影響を与えるため、検討期間が長期化しやすい。300万円以上の大型購買に関与した会社員を対象にした国内の調査会社の調査では、約6割(63.6%)が検討開始から発注先決定までに3〜8ヶ月を要したと回答している。

この長い期間、顧客は企業のWebサイトを一度きりではなく繰り返し訪問し、比較検討の材料を蓄積していく。国内の調査機関が毎年公表している「BtoBサイト調査」でも、企業Webサイトは購入検討時の有力な情報源の一つとして位置づけられている。BtoCが衝動的な購買を誘発するエモーショナルな訴求を重視するのに対し、BtoBでは長期的な比較検討の土俵に乗り続けるための、論理的で詳細な情報開示が求められる。

「繰り返し訪問される」ということは、初回訪問時にすべてを説得しきる必要はない、という意味でもある。1回目は事例ページを読んで候補に残り、2回目は価格ページを確認して稟議の準備を始め、3回目は決裁者に見せるために会社概要と導入フローを再確認する。訪問のたびに違う情報を求められることを前提にすると、どのページも単独で完結した説得力を持たせる必要がある、という設計方針が見えてくる。

生成AIで情報収集する買い手が急増している

国内の調査会社の調査によれば、BtoB商材において「第一想起(課題が発生した際に真っ先に頭に浮かぶブランド)」した商品を導入する確率は、ソフトウェアで48.0%、ハードウェアで56.6%、全体平均で55.3%に達する。第一想起を獲得し続ける接点として、Webサイトの重みは増すばかりだ。

加えて、情報収集の手段として生成AIを使う買い手が急速に増えている。先述の調査では、BtoBの購買検討プロセスで生成AIを「頻繁に利用する」「ときどき利用する」と答えた買い手の割合は、ChatGPTで58.0%、Geminiで51.2%にのぼった。用途としては「候補となる商品・サービスの洗い出し(50.3%)」「各社の特徴・違いの整理(47.1%)」「比較表の作成(39.2%)」が上位を占める。Webサイトは、人間の訪問者だけでなく、こうしたAIに対しても情報を正確に伝えられる構造を持つ必要がある。

この変化がBtoBサイトの設計にもたらす意味は小さくない。従来は「検索結果で自社サイトが表示されたか」だけを気にしていればよかった。今は、AIが企業リストを作成する段階で自社が候補に挙がるか、比較表をつくる段階で自社の強みが正しく引用されるか、という2段階の勝負になっている。人間の担当者向けの読みやすさと、AIが情報を抽出しやすい構造化、この両方を同時に満たすページ設計が求められる時代に入っている。

なぜ多くのBtoBサイトが問い合わせにつながらないのか

「リニューアルしたのに問い合わせが増えない」という悩みは、特定の企業に限った話ではない。成果が出ないBtoBサイトには、共通する失敗の型が存在する。

主語が「弊社」になっている

失敗するサイトにもっとも顕著な特徴は、コピーの主語が「弊社」になっていることだ。「弊社は画期的な新商品を開発しました」「創業50年の実績と高度な技術力があります」といった自社視点の羅列は、顧客の悩みを捉えきれない。顧客が知りたいのは企業の歴史ではなく、自社の課題がどう解決され、どんな利益が生まれるかである。

「弊社の新システムは高性能です」を「(御社は)経理業務の時間を半分に減らせます」に置き換えるだけで、同じ機能説明でも読み手に伝わる意味は大きく変わる。主語を顧客に変換し、相手が受け取れる利益を最優先で伝える。この転換ができているかどうかが、成果の分かれ目になる。実際の言い換え例で比べると、違いはより分かりやすい。

自社視点(We)の表現 顧客視点(You)への言い換え
創業50年の実績があります 50年分のノウハウで、御社特有の課題にも対応できます
業界最高水準の機能を搭載しています 面倒な入力作業を、御社の担当者から取り除きます
導入企業数No.1です 同じ課題を持つ企業の多くが、すでに解決しています

左側の表現は事実として間違ってはいない。しかし読み手が知りたいのは、その事実が自分にとって何を意味するかである。右側のように、必ず「読み手が得るもの」で文を締めくくる習慣をつけたい。

デザイン優先で情報と導線が消える

リニューアルの現場では、経営層や担当者の「見た目を洗練させたい」という主観的な好みが先行しやすい。しかしBtoBサイトの訪問者、つまり理想の顧客像(ICP)が本当に求めているのは、詳細な機能説明、他社との比較、導入プロセスの透明性といった泥臭い情報だ。デザイン性を優先してこれらの情報や導線を削ぎ落とすと、有効な問い合わせは目に見えて減る。

トップページに自動再生のカルーセル(スライドショー)を置くサイトも多いが、これはページの読み込み速度を下げる上に、ユーザーが動く要素を広告と誤認して視線を逸らす傾向(バナー・ブラインドネス)を招く。自分のペースで情報を読めないストレスは、そのまま離脱につながる。

よくある経緯はこうだ。リニューアルの打ち合わせで、経営者が他社の洗練されたサイトを見て「うちもこういう雰囲気にしたい」と要望する。制作会社はその要望に応えようとデザイン案を練り込むが、限られた予算と時間の中で、機能説明や事例のテキスト量を削ることでバランスを取る。結果として、見た目は狙い通りに仕上がるのに、決裁の材料になる情報量は以前より減ってしまう。デザインの相談をする際は、必ず「情報量を減らさない」という条件を最初に共有しておきたい。

フォームの入力項目が多すぎる

サイト内のコンテンツに納得し、いざ問い合わせようとフォームに到達したのに、そこで離脱するケースが後を絶たない。後述するフォーム通過率の調査が示すとおり、フォームまでたどり着いた見込み客の相当数が、最後の一歩で引き返している。もっとも大きな原因は入力項目の過多だ。営業部門の「事前に詳細を把握したい」という要望をすべて反映し、電話番号、部署名、役職、従業員規模、検討時期までを必須項目にして10項目以上並べたフォームは、ユーザーに大きな入力疲労と個人情報提供への抵抗感を与える。

公開後に放置され、情報が古いまま残る

最後に見落とされがちなのが、公開して数年が経過し、料金や機能の記述が実態と食い違ったまま放置されているケースだ。BtoBの検討者は複数回サイトを訪れ、時間をかけて比較する。その途中で「このページの情報、古くないか」と気づかれた瞬間、サイト全体の信頼性が疑われる。更新履歴や最終更新日を明示していないサイトほど、この疑念は強くなりやすい。デザインを一新するリニューアルと違い、情報の鮮度を保つ運用は地味だが、稟議の場で「今も正しい情報か」を問われたときに効いてくる。

BtoBサイトに最低限必要なページ構成

BtoBサイトで成果を出すには、カスタマージャーニーに沿って、ユーザーの疑問を解消し稟議を後押しする情報を過不足なく配置する必要がある。最低限用意したいページ構成は次の通りだ。

ページ種別 役割 BtoBでの重要ポイント
トップページ サイト全体のハブ 誰の課題を解決する会社かを一目で伝え、下層ページへ迷わず導く
サービス・製品紹介 課題解決の具体的手段の提示 現場担当者が理解できる平易な言葉と、決裁者が納得する論理を併記する
価格・プラン 予算感の提示 完全な定価公開が難しくても「月額〇万円〜」など目安を示す
導入事例 第三者視点での実績証明 匿名ではなく実名・写真付きを基本とし、定量的な成果を記載する
会社概要 信頼性と実在性の証明 資本金・設立年・所在地・取得認証を網羅する
お役立ち資料 比較検討層からのリード獲得 業界ガイドやノウハウ資料と引き換えに連絡先を取得する
問い合わせフォーム コンバージョンの受け皿 入力時の負担を極限まで減らす設計にする

会社概要ページを軽視する企業は多いが、BtoBの取引では実務上、意外な重みを持つ。新規の取引を始める際、相手企業が社内の与信審査や取引口座の開設手続きを行うことがあり、その際に資本金や設立年、主要取引先といった情報が確認される。担当者個人が製品を気に入っていても、この段階で情報不足を理由に手続きが止まってしまうケースがある。会社概要は単なる営業資料ではない。実務手続きの一部として設計しておく必要がある。

これらのページは単独で存在してよいわけではない。グローバルナビゲーションや本文中のリンクを通じて、情報収集の途中でユーザーが迷わず回遊できるよう内部リンクで結ぶ必要がある。

とりわけ優先度を上げたいのが価格ページと導入事例だ。この2つは、他のページと違って「検討を前に進めるかどうか」を直接左右する。価格ページが存在しない、あるいは「お問い合わせください」の一文しかないサイトは、稟議書を書こうとした担当者をその場で立ち止まらせる。導入事例が1本もない、または匿名の感想文だけのサイトは、決裁者に「本当に効果があるのか」という疑念を残したまま検討を進めさせることになる。ページ構成を決める段階で、この2つだけは後回しにしないと決めておきたい。

逆に、公開後に抜け漏れが発覚しやすいのが「よくある質問」ページと「導入の流れ」ページだ。営業担当者が商談の場で毎回同じ質問に答えているなら、その質問はサイトに載っていない証拠である。営業担当者に「よく聞かれる質問トップ10」を出してもらい、そのままFAQページの骨子にするだけで、問い合わせ前の不安の多くを解消できる。導入の流れページも同様で、「契約から利用開始まで何日かかるか」「初期設定に誰が対応するか」を図示するだけで、検討者の不安は大きく減る。長い文章で説明するより、「お問い合わせ」「ヒアリング」「契約」「導入設定」「利用開始」のように矢印でつないだ簡単な図にするほうが、忙しい決裁者にも一目で伝わる。

ファーストビューで押さえるべき3つの要素と3秒ルール

Webマーケティングには「3秒ルール」と呼ばれる原則がある。ユーザーはサイトにアクセスして3秒以内に、そのページが自分にとって有益かを直感的に判断し、無関係だと感じれば即座に検索結果へ戻ってしまう。この3秒の壁を突破する最重要領域が、スクロールせずに目に入る画面「ファーストビュー」だ。

効果的なファーストビューを構成する3要素

効果的なファーストビューは、次の3要素だけでシンプルに構成するのが鉄則だ。細かすぎるニュースリリースや社長の長文メッセージ、過剰な装飾はスクロール後の領域に回す。

キャッチコピーは、誰の、どんな課題を解決するかを一言で言い切る。BtoBの場合は「経理担当者の方へ」「製造業の営業DXでお悩みの管理職の方へ」のようにターゲットを名指しすると、読み手に「自分ごと」として受け止めてもらいやすい。抽象的な「業務効率化を実現するクラウドサービス」より、「毎月40時間かかる集計作業を、5時間に減らす」のように、誰の何が変わるのかを具体的な言葉で言い切ったほうが強く刺さる。

メインビジュアルはキャッチコピーを視覚的に補強する役割を担う。かっこよさよりも「何のサービスかが瞬時に伝わること」を優先する。広告で抱かせた期待とビジュアルがずれると、その瞬間に信頼を失う。CTAボタンは、次に取ってほしい行動を明確に示す。背景色と同化しない強いコントラストの色を使い、「詳しくはこちら」のような汎用的な文言ではなく、クリック後に何が起きるかが分かるマイクロコピーを添えたい。

心理効果を組み込んだコピーライティング

ファーストビューのキャッチコピーには、行動経済学の知見を組み込むと、読み進める意欲を高めやすい。「30%の人が失敗する」より「70%の人が成功する」と表現するフレーミング効果、「導入実績〇〇社突破」といった客観的な事実で安心感を与えるバンドワゴン効果、専門機関の認定やセキュリティ認証マークを添えて信頼性を瞬時に高める権威性の提示。いずれも小さな工夫だが、効果は積み重なる。

こうした心理効果は、事実を誇張するためのものではない。実際に70%が成功しているなら70%と書けばよいし、導入実績が100社に満たないなら無理に社数を強調する必要はない。手元にある正確な数字を、もっとも伝わりやすい形で提示し直すのがこの工夫の本質であり、根拠のない数字を作って当てはめる行為とは明確に区別しておきたい。

スマートフォンでの見え方を前提に設計する

BtoBサイトであっても、スマートフォンからのアクセス比率は無視できない。どの程度の比率かは業種と商材によって幅があるため、一般論ではなく自社のアクセス解析でモバイルの実数を確認したい。パソコンでは横並びに美しく見えるファーストビューも、スマートフォンでは要素が縦に積み上がる。キャッチコピー、権威付けの数字、CTAボタンがスクロールなしで画面に収まり、親指でタップしやすいボタンサイズを確保する、モバイルファーストの設計が欠かせない。

興味深いのは、BtoBの意思決定者ほど移動中や会議の合間にスマートフォンで情報を確認する傾向があることだ。パソコンでじっくり比較検討するのは現場担当者で、決裁者は隙間時間にスマートフォンで概要だけを確認し、詳細はパソコンで見た資料に任せる、という役割分担が起きやすい。決裁者向けのページほど、モバイルでの見え方を軽視できない理由はここにある。

現場担当者と決裁者、両方に刺さる導線設計

BtoBの意思決定には複数のステークホルダーが関わる。サイト内の導線は、それぞれの立場が求める情報へ最短距離で届くように設計する必要がある。

役割ごとに情報を出し分ける

現場担当者は、自分の業務課題が解決できるか、既存のシステムや業務フローと連携できるかを厳しくチェックする。課題別のソリューションページ、詳細な機能一覧表、他社製品との客観的な比較表、操作画面が分かるデモ動画、現場向けのFAQ。これらの導線が有効に働く。機能一覧表や比較表はPDFなどでダウンロードできる形にしておくと、現場担当者が社内に共有しやすくなり、稟議資料の一部としてそのまま活用してもらえる。

経営層や情報システム部門は、現場の細かな機能よりも投資対効果と信頼性・安全性に目を光らせる。同業他社の導入事例、費用対効果のシミュレーション、セキュリティポリシー、会社概要や財務情報への導線を用意しておきたい。

この出し分けを実現する仕組みとして有効なのが、グローバルナビゲーションの二重構造だ。「サービス」「機能」といった通常のメニューに加えて、ヘッダーやフッターに「導入をご検討中の方へ」のような専用の入口を1つ作り、そこから価格・導入事例・セキュリティ情報・資料一式へまとめてアクセスできるようにする。現場担当者が集めた情報を、決裁者へそのまま渡せるハブページを用意する発想である。

情報を出し分ける際に気をつけたいのが、ページごとに主張する価値がばらばらにならないようにすることだ。機能ページでは「作業時間の削減」を訴え、事例ページでは「コスト削減」を訴え、会社概要では「歴史の長さ」を訴える、というように軸がぶれると、決裁者が複数のページを読み比べたときに一貫した印象を持てない。サイト全体を通して、どの立場の読者に対しても同じ核となるメッセージ(自社が解決する中心的な課題)を土台にし、その上で立場ごとに切り口を変える、という順序を意識したい。

実際にどのページがどの立場に読まれているかは、ヒートマップツールやスクロール到達率の計測である程度推測できる。価格ページの滞在時間が短く離脱率が高いなら、価格ページ自体に問題があるか、そもそも価格を確認したい層がその情報にたどり着けていない可能性がある。セキュリティに関するページのアクセス数が極端に少ない場合は、情報システム部門が必要とする情報がどこにあるか分からず、探すこと自体を諦めている可能性も考えられる。感覚だけで導線を判断せず、実際の閲覧データと突き合わせる習慣を持ちたい。

「稟議書」作成を後押しする情報の透明性

BtoBのWeb担当者が持つべき視点は、現場の起案者が社内の決裁者を説得するための稟議資料を、Webサイト上でどう用意してあげるかだ。稟議で決裁者が問うのは、なぜ今導入するのか、費用はいくらか、どんな効果が得られるのか、失敗した際のリスクヘッジはどうなっているのか、この4点である。

特に料金と導入フローは稟議を通す必須情報だ。「詳細はお問い合わせください」として価格を完全に隠すサイトは、担当者に社内での説明責任だけを負わせることになり、結果として問い合わせのハードルを極端に上げてしまう。「月額〇万円〜」という目安と、導入までのステップを図示するだけで、稟議の通りやすさは大きく変わる。

導入事例ページの作り方:第三者評価による信頼の担保

BtoBにおいて導入事例は、単なる読み物ではなく、営業数値を直接押し上げる実践的なセールスツールだ。類似する企業がすでに成功しているという事実は、決裁者のリスク回避心理に対する強力な処方箋になる。

説得力のある導入事例をつくるには、「導入して便利になった」という抽象的な感想ではなく、現場の具体的な葛藤と数値を掘り下げる必要がある。次の流れに沿って情報を配置すると、読者の共感を呼びやすい。

構成要素 盛り込む内容
顧客の基本情報 可能な限り実名・顔写真。匿名なら業種・従業員数・エリアを明記し実在性を担保する
導入前の課題 「月末の集計作業に毎月40時間かかっていた」など読者が共感できる具体的な痛み
選定理由 競合と比較したうえで自社を選んだ理由を、顧客自身の言葉で語ってもらう
導入後のプロセス どのように業務に組み込み、運用を定着させたかの手順
成果 「作業時間が40時間から5時間に削減」といった定量的成果と、士気向上などの定性的成果

完成した事例ページには、必ず関連サービスの詳細ページへのリンクや資料ダウンロードのCTAを置く。高まった購買意欲をそのままコンバージョンへ橋渡しする設計を忘れてはならない。

テキストと写真だけでも十分な事例は作れるが、余力があれば1〜2分程度の短い動画を添えるのも有効だ。顧客担当者が自分の言葉で課題と成果を語る映像は、文字だけの事例より感情的な説得力が強く、決裁者が社内で共有する際の印象にも残りやすい。ただし動画の制作コストは高くなりがちなので、まずはテキストと写真で事例を揃え、反応の良かったものから動画化していく順序が現実的だ。

事例の本数が少ないうちは、業種や企業規模でカテゴリ分けをする必要はない。まずは自社に近い業種・規模の読者が1本でも「自分と同じ状況の会社が成功している」と感じられる事例を、深く掘り下げて1本つくるほうが効果的だ。数を揃えることより、1本の事例にどれだけ具体的な数字と生の声を詰め込めるかが、決裁者の背中を押す力に直結する。

事例は一度作って終わりにせず、半年〜1年ごとに顧客へ改めて連絡を取り、その後の成果を追記していくと価値が増していく。導入直後の成果に加えて、「1年後にはこう変わった」という継続的な数値が載っている事例は、単発の効果測定より説得力が高い。事例を作る際は、あわせて次回のフォローアップの時期も担当者間で決めておきたい。

CTA設計とフォーム最適化(EFO)の原則

CTAと入力フォームは、サイトへの訪問を実際のリードへと変換する最終関門だ。この設計の巧拙が、マーケティング投資の費用対効果を直接左右する。

検討フェーズに応じてCVを多層化する

BtoBサイトによくある失敗の一つが、サイト全体のコンバージョンポイントが「お問い合わせ」の1種類しか用意されていないことだ。検討期間が長いBtoBでは、訪問者の大半がまだ情報収集や比較検討の段階にある。この層にいきなり商談前提の問い合わせを求めても、大多数を取りこぼしてしまう。

そこで有効なのが、検討度合いに応じたコンバージョンの階段設計だ。次の図のように、情報収集層向けのホワイトペーパー、比較検討層向けの機能比較表や事例集、決裁直前層向けのデモ依頼や個別相談まで、段階の異なる出口を複数用意する。

よくある誤解は、コンバージョンポイントを増やせば増やすほどよい、というものだ。実際には、出口が多すぎるとどのボタンを押せばよいか読者が迷い、かえって行動を起こしにくくなる。ページ単位で見たときに主役となるCTAを1つ決め、残りは控えめな導線として補助的に配置するくらいのバランスがちょうどよい。

低ハードル(情報収集層) ホワイトペーパー・メルマガ登録 中ハードル(比較検討層) 機能比較表・事例集・ウェビナー 高ハードル(決裁直前層) デモ依頼・見積もり・個別相談

こうしてコンバージョンポイントを多層化すると、すぐには商談化しないリードも幅広く獲得できる。獲得後はメール配信などのナーチャリングによって、適切なタイミングで営業部門へ引き渡す流れをつくれる。

低ハードルの資料は、テーマ選びが成果を左右する。「自社サービスの紹介資料」ではダウンロードされにくいが、「業界の失敗事例集」や「発注前のチェックリスト」のように、まだ自社を認知していない読者にも役立つテーマにすると、ダウンロード数は伸びやすい。読者が抱える課題そのものに答える資料と、自社サービスを説明する資料は分けて考えたい。

階段を用意しても、それぞれの段に見合わないハードルを設けてしまっては意味がない。低ハードルのホワイトペーパーをダウンロードするだけなのに、電話番号や従業員規模の入力を求めていないか。逆に、デモ依頼という高ハードルの申し込みなのに、担当者名と会社名しか聞いていないため、営業側が事前準備できないまま商談に臨んでいないか。段ごとに「その段階でもらって困らない情報は何か」を先に決めておくと、フォーム設計で迷わなくなる。

階段の効果を最大化するには、段と段の間をつなぐ仕組みも要る。ホワイトペーパーをダウンロードした読者に、数日後「関連する事例集もあります」という案内を送る。事例集を読んだ読者には、さらに数日後「まずは30分の個別相談で状況を伺えます」という案内を送る。1回の訪問で最終段まで一気に上らせようとせず、時間をかけて段を上げていく前提でメール配信の設計を組む。この積み重ねが、検討期間の長いBtoBでは効いてくる。

フォーム離脱を防ぐ具体策

国内の調査会社が公表した分析(BtoBサイトの資料請求・無料トライアルフォーム21件を対象にした調査、実施時期は2019年前半)によれば、フォーム通過率(フォーム到達から完了までの割合)は平均で約20.37%にとどまっていた。裏を返せば、約8割の見込み客を最後の最後で取り逃がしている計算になる。同調査では、フォームの入力項目数と通過率には強い負の相関があり、1項目減らすごとに通過率は約2ポイント向上すると報告されている。実施から年数が経った調査だが、入力項目を減らすほど通過率が上がるという傾向自体は、フォーム設計の一般的な原則として現在も参考にできる。

具体的な改善策は次の4つに集約される。入力項目を徹底的に絞り込むこと。初回接点では会社名・氏名・メールアドレスなど最低限にとどめ、役職や従業員規模といった詳細情報は、その後のヒアリングで補う設計にする。メールアドレスの「@」抜けや電話番号の桁数不足を、送信後ではなく入力中にその場で知らせるリアルタイムバリデーションを実装すること。郵便番号から住所を自動入力する、氏名に合わせてフリガナを自動生成するといった入力補助で物理的な負担を減らすこと。そして、確認画面が不要な離脱ポイントになっていないかをA/Bテストで検証すること。いずれも派手さはないが、積み重ねればフォーム通過率は着実に改善する。

見落とされやすいのが、フォーム送信後の画面設計だ。「送信しました。以上で終了です」という一文だけのサンクスページは、せっかく高まった関心をそこで断ち切ってしまう。次に何が起きるのか(何日以内に誰から連絡が来るのか)を明記し、待っている間に読めるお役立ち資料や関連事例へのリンクを添える。問い合わせという行為の心理的な負担を減らすには、送信ボタンを押した後の体験まで含めて設計する必要がある。

入力項目がどうしても多くなる場合は、1つの長いフォームに全項目を並べる代わりに、複数のステップに分割する方法も有効だ。「基本情報」「導入時期」「詳細な要望」のように2〜3ステップに分け、現在の進捗が視覚的にわかる進行バーを添えると、1画面あたりの入力負担が下がり、心理的な完了率も上がりやすい。ただしステップ数を増やしすぎるとかえって離脱を招くため、2〜3ステップ程度にとどめておきたい。

BtoBサイトのSEO・コンテンツ設計の最新潮流

検討期間が長いBtoBビジネスでは、顧客との接点をつくり続け、専門家としての信頼を積み上げるコンテンツ設計が欠かせない。

トピッククラスター戦略で専門性を積み上げる

単発のブログ記事を計画性なく量産しても、BtoBの複雑な検索意図は満たせない。現在主流となっているのが「トピッククラスター戦略」だ。大きなテーマを網羅的に解説する長文の「ピラーコンテンツ」を中心に置き、その周辺に細かい疑問へ答える複数の「クラスターコンテンツ」を配置し、内部リンクで体系的に結びつける手法である。

例えば「マーケティングオートメーション」というピラーコンテンツに対し、「導入のメリット」「BtoB向けツールの比較」「費用相場」といったクラスター記事群を作成し、リンクをピラーへ集中させる。これにより検索エンジンに対して「このサイトは当該トピックで高い専門性と網羅性を持つ」と認識させ、難易度の高いキーワードでもサイト全体の評価を押し上げられる。

BtoBサイトに置き換えると、ピラーコンテンツは「自社の主力サービスとは何か」を網羅的に解説する記事になり、クラスターコンテンツは「導入事例」「価格の考え方」「よくある失敗」といった各論を扱う記事になる。この記事自体も、BtoBサイト全般というテーマのピラーとして機能させ、今後は「BtoBサイトの価格ページの作り方」「BtoBサイトの導入事例の書き方」といった、より狭いテーマの記事から内部リンクを集める設計にしていく想定だ。

AI検索最適化(AIO・GEO)への対応

BtoBの検索行動には地殻変動が起きている。ChatGPTやPerplexity、Google AI Overviewsのような生成AIを使った、検索結果画面やチャット画面上で情報収集が完結してしまう「ゼロクリック検索」の増加だ。先述の通り、BtoB購買担当者の58%がChatGPTを使って企業リストの作成や特徴の比較を行っている以上、従来の検索順位だけを追うSEOでは、情報収集の初期段階における露出を取りこぼすリスクがある。

これに対応する概念がAIO(AI Optimization)やGEO(Generative Engine Optimization)である。生成AIが回答を組み立てる際に、自社サイトのコンテンツを信頼できる根拠として引用させるための最適化だ。具体的には、FAQPageやOrganizationといった構造化データ(JSON-LD)を適切に実装してページの意味をAIクローラーに正確に伝えること。著者プロフィールや運営者情報でE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を明示すること。他サイトの寄せ集めではなく、自社で計測した独自データや実例を提示すること。「〇〇とは、△△である」という明確な定義文と、結論から先に述べる構造でコンテンツを整えること。いずれも、AIが情報を抽出しやすい形にコンテンツを整理する作業だと捉えるとわかりやすい。

よくある質問ページにFAQPageの構造化データを実装すると、質問と回答のペアがAIにとって扱いやすい単位で伝わる。次のような形式がその一例だ。

<script type="application/ld+json">
{
  "@context": "https://schema.org",
  "@type": "FAQPage",
  "mainEntity": [{
    "@type": "Question",
    "name": "BtoBサイトとBtoCサイトの違いは何ですか",
    "acceptedAnswer": {
      "@type": "Answer",
      "text": "意思決定に関わる人数と検討期間の長さが根本的に異なります。"
    }
  }]
}
</script>

構造化データはあくまで機械への伝達手段であり、人間の読者向けの文章の質を代替するものではない。両方を同時に満たす設計が求められる。

第三者の比較サイトやレビューサイトでの見られ方

生成AIが企業を比較する際は、自社サイトの情報だけでなく、第三者のレビューサイトや比較メディアの情報も参照する。BtoBの検討者自身も、自社サイトだけでなく外部の評判を確認してから問い合わせに至ることが多い。自社サイトの情報をどれだけ整えても、外部サイトに古い情報や誤った情報が残っていれば、そちらが検討の判断材料になってしまう可能性がある。定期的に自社名やサービス名で検索し、上位に表示される外部サイトの内容が実態と合っているかを確認しておきたい。

リニューアルで陥りやすい致命的な失敗

BtoBサイトをリニューアルする際、良かれと思った施策が成果を後退させてしまうことがある。代表的な失敗を2つ挙げる。

301リダイレクト設定漏れによるSEO資産の喪失

技術的な側面でもっとも頻発し、かつ深刻な失敗が、URL構造の変更に伴う301リダイレクトの設定漏れだ。リニューアルでディレクトリ構造やドメインが変わり、ページのURLが変更されると、旧URLに検索エンジンが長年蓄積してきた評価が宙に浮く。この評価を新しいURLへ引き継ぐ恒久的な転送処理が301リダイレクトである。

この設定を怠ると、検索エンジンは新しいURLを無評価のページとして扱い、旧URLにアクセスしたユーザーは404エラーに直面する。結果として、公開直後から検索順位が急落し、自然検索からの流入が大きく落ち込む。リニューアル前には現行サイトの全URLをリストアップし、対応する新URLへの1対1の転送マッピング表を必ず作成したい。すべての旧URLを新サイトのトップページへまとめて転送する手法は、Googleに「ソフト404」と判定され評価が引き継がれないため避けるべきだ。301リダイレクトは、最低でも1年間は維持することが推奨されている。

この失敗が厄介なのは、リニューアル公開の直後には気づきにくい点にある。デザインは無事に切り替わり、社内では「完了した」という空気になる。ところが数週間後、検索経由の問い合わせだけが目に見えて減り、原因を調べて初めて転送漏れに気づく、という順序で発覚することが多い。公開後1〜2週間は、旧URLの主要なページだけでもGoogle検索セントラルやサーチコンソールで転送状況を確認する習慣を持ちたい。

デザイン要件の先行による表示速度の低下

もう一つの陥りやすい罠が、デザイン性の刷新を優先しすぎた結果、表示速度が犠牲になるパターンだ。高解像度の画像、自動再生の大容量動画、リッチなアニメーションを多用すると、ページの読み込み時間が悪化する。特にモバイル環境での表示遅延は、ユーザーがファーストビューのキャッチコピーを読む前にブラウザを閉じる原因になる。デザイン要件を決める際は、常にPageSpeed Insightsなどのツールでパフォーマンスとのトレードオフを確認し、画像のWebP化や不要なスクリプトの排除を徹底したい。

最新技術の導入自体が目的化する

もうひとつ、規模の大きいリニューアルほど起きやすいのが、最新のフレームワークや流行りのアニメーション表現を採用すること自体が、いつの間にかプロジェクトの目的になってしまう現象だ。制作会社の提案資料に並ぶ先進的な技術は魅力的に見えるが、その技術が「決裁者の稟議を後押しする」という本来の目的に貢献するかどうかは別問題である。新しい技術を採用する前に、それが問い合わせ数や商談化率のどの部分に効くのかを、必ず一言で説明できる状態にしておきたい。説明できない施策は、優先順位を下げてよい。

リニューアルの現場でよく起きる、社内の意見対立

技術的な失敗と並んで、成果を左右するのが社内の合意形成だ。BtoBサイトのリニューアルには、経営層・マーケティング部門・営業部門という、立場も評価基準も異なる関係者が関わる。この3者の意見が食い違ったまま進行すると、どの部門も満足しない中途半端なサイトが出来上がる。

経営層とマーケティング部門の対立:見た目か、成果か

経営層は「ブランドイメージを刷新したい」「競合他社より洗練された見た目にしたい」という動機でリニューアルを発案することが多い。一方でマーケティング部門は、日々の問い合わせ数やリード獲得数という数字で評価される。この2つの動機は両立できないわけではないが、優先順位を決めずに進めると、デザインの好みをめぐる議論に時間を取られ、成果に直結する情報設計の議論が後回しになりやすい。プロジェクトの最初に「今回のリニューアルの成功は何をもって判断するか」という指標を1つに絞り、関係者全員で合意しておくことが有効だ。

営業部門の要望を、フォームに全部反映しない

営業部門は「見込み客の情報を事前に多く把握したい」という動機から、フォームの入力項目を増やす方向に要望を出しがちだ。この要望自体は理解できるが、前述の通り、入力項目の増加はフォーム通過率を直接押し下げる。営業部門が本当に欲しいのは「入力項目の多いフォーム」ではなく「質の高い商談機会」であるはずだ。フォームでは最低限の情報だけを取得し、詳細なヒアリングは商談の場やインサイドセールスの電話で行う、という役割分担を先に合意しておくと、この対立は避けられる。

インサイドセールスの機能を持つ企業であれば、フォーム送信後1営業日以内に電話でヒアリングし、そこで従業員規模や検討時期を確認する運用に切り替えるだけで、フォーム自体はシンプルに保てる。専任のインサイドセールスがいない小規模な会社でも、代表者や営業担当者が同じ役割を担えば同じ効果が得られる。フォームの項目を減らす代わりに、その後の一次対応を早くする、という交換条件で営業部門を説得すると合意を得やすい。

制作を外部に依頼するか、内製にするかの判断基準

BtoBサイトの新規構築やリニューアルを、自社で内製するか、専門の制作会社に外注するか。この判断は、予算規模、社内リソース、求める成果のスピードに左右される。

内製化(インハウス)の場合

WordPressのようなオープンソースCMSや、BtoBマーケティングに特化したSaaS型CMSを使えば、初期費用10〜20万円程度、月額数千円から十数万円のランニングコストで立ち上げ・運用が可能だ。社内にWebマーケティングの基礎知識を持ち、ツールを操作してページ更新やA/Bテストを回せるリソースがあるなら、内製は機動力の高さという強みを発揮する。

外部依頼(アウトソーシング)の場合

中小企業の標準的なコーポレートサイトのリニューアルで80万〜120万円、問い合わせ獲得や採用まで本格的なマーケティング機能を持たせるBtoBサイトでは、要件定義からデザイン、実装まで含めて150万円から数百万円規模の初期投資になるのが一般的だ。加えて、保守費用やコンテンツ制作費として月額数十万円のランニングコストがかかるケースも多い。社内にノウハウやリソースが乏しい場合や、複雑なシステム連携、盤石なSEO対策の基盤構築が急ぎで必要な場合は、外部への依頼が現実的な選択になる。選定時は「綺麗なデザインを作れる会社」ではなく、BtoB特有の購買プロセスを理解し、リード獲得にコミットできる会社かどうかを見極めたい。

大規模なBtoBサイトや複数チャネルへの配信を前提とする場合は、コンテンツ管理と表示を分離した「ヘッドレスCMS」も選択肢に入る。表示パフォーマンスの高速化や柔軟な配信に優れ、従来型のCMSが抱えがちなプラグインの脆弱性リスクも下げやすい。

判断に迷う場合は、次の観点で整理すると答えが出やすい。

観点 内製が向く 外部依頼が向く
社内リソース 更新作業を回せる担当者がいる 専任者がいない、または兼任で手一杯
求めるスピード 小さく試して素早く直したい 要件定義から一気に組み上げたい
必要な専門性 基本的な機能構成で足りる 複雑なシステム連携や高度なUI設計が必要
予算の性質 月額の運用費として抑えたい まとまった初期投資を確保できる

なお、内製と外部依頼は二者択一とは限らない。骨格の設計と初期構築は外部に依頼し、公開後の細かな更新やA/Bテストは内製で回す、という併用も現実的な選択肢だ。どこまでを自社で持ち、どこから先を任せるかを最初に線引きしておくと、後々の役割分担で揉めにくい。

セキュリティ認証(ISMS・Pマーク)の使い分け

情報システム部門が拒否権を持つ以上、セキュリティに関する情報開示の重みは年々増している。取引先が大企業であるほど、発注前のチェックリストにセキュリティ項目が組み込まれていることが多く、認証マークの有無で最初の足切りが行われることも珍しくない。機密情報や個人情報の処理を受託するBtoB企業では、自社のセキュリティ管理体制を示す認証マークの掲示が、決裁者の不安を払拭する材料になる。Pマーク(JIS Q 15001)は日本国内独自の規格で、個人情報保護に特化しており、有効期間は2年。ISMS(ISO/IEC 27001)は国際標準規格で、個人情報に限らず企業が持つすべての情報資産を保護対象とし、有効期間は3年で毎年の維持審査が求められる。海外展開を見据える企業や、他社の機密情報を扱うBtoB企業では、ISMSの取得がより強力な信頼の証になる。

Pマーク ISMS
保護対象 個人情報 情報資産全般
規格の性質 国内規格 国際規格
有効期間 2年 3年(毎年審査)
向いている企業 消費者情報を扱うBtoC寄りの企業 海外展開・他社機密を扱うBtoB企業

どちらか一方に限る決まりはなく、両方を掲示している企業も少なくない。自社が扱う情報の種類と、想定する取引先の要求水準に合わせて優先順位を決めたい。取得した認証は、フッターや会社概要ページにロゴを掲示するだけでなく、決裁者が検討する価格ページやサービス紹介ページの近くにも配置すると、認証の存在が稟議のタイミングで目に触れやすくなる。なお、認証の取得自体には準備期間と費用がかかる。Pマークは申請から取得まで半年前後、ISMSも同程度の期間を見込むのが一般的で、いずれも社内規程の整備を含めた準備作業が発生する。今すぐ取得できるものではないため、取引先から要求されてから動くのではなく、事業計画に組み込んで早めに着手しておきたい。

公開後の改善・運用で見るべき指標

BtoBサイトは公開して終わりではない。公開した瞬間が、継続的な改善のスタートである。

GA4でキーイベントを正しく設計する

サイトの健康状態を把握するには、Google Analytics 4(GA4)によるトラッキングが欠かせない。「資料ダウンロード完了」「問い合わせフォーム送信完了」といったビジネス上重要なユーザー行動をカスタムイベントとして作成し、GA4の管理画面で「キーイベント」として有効化する必要がある。GA4では1プロパティにつき設定できるキーイベントの上限が30個までと決まっているため、売上や商談に直結する指標に絞り込んで登録したい。これを正しく設定しない限り、どの流入経路がリード獲得に貢献しているのか、費用対効果の検証そのものができなくなる。

GA4の管理画面は担当者以外には分かりにくいことが多いため、経営層への月次報告用には、主要なキーイベントの推移だけを抜き出した簡単な表やグラフを別途用意しておくと共有がスムーズになる。専門的なダッシュボードを毎回見せるより、「今月は資料ダウンロードが何件、問い合わせが何件」という数字だけを追える形にしたほうが、経営層の判断は速くなる。

キーイベントは、先に説明したCVの多層化とそのまま対応させるとわかりやすい。

CVの段階 キーイベントの例
低ハードル ホワイトペーパーのダウンロード完了、メルマガ登録完了
中ハードル 事例集ダウンロード完了、ウェビナー申し込み完了
高ハードル デモ依頼送信完了、見積もり依頼送信完了

段階ごとの数を追うと、どこでリードが滞留しているかが見えてくる。低ハードルの獲得数は多いのに中ハードルへの移行が極端に少ない場合、ナーチャリングのメール内容やタイミングを見直す必要がある、というように、次に打つ手が具体的になる。

イベント名の付け方も軽視できない。「form_submit」のような汎用的な名前だけを使うと、後から「どのフォームの送信か」が分からなくなる。「contact_form_submit」「whitepaper_download_ma」のように、対象のページや資料が名前から判別できる命名にしておくと、数か月後にデータを見返す際の迷いが減る。

ROIとLTV/CACで事業への貢献度を測る

経営層への報告や次期予算の判断でもっとも重視すべき指標がROI(投資利益率)だ。ROIは(利益-投資額)÷投資額×100(%)で算出する。投資額には制作費、ツール利用料、広告費、担当者の人件費まで含める。

BtoBサイトの評価を、セッション数や1リードあたりの獲得単価といった表面的な指標だけで判断してはいけない。BtoBの目的はリード獲得そのものではなく、売上と利益の創出だ。獲得したリードが何件商談化し、最終的にいくらの受注につながったのか、ファネル全体を通したデータを追いたい。1顧客の獲得にかかる総費用であるCACと、その顧客が将来もたらすLTVのバランス(実務上の目安としてLTV/CAC比率が3倍以上あるかどうか)で、サイトとコンテンツマーケティングの事業貢献度を評価する。

数字で見るとイメージしやすい。年間のサイト運用・広告費が合計200万円で、そこから10件の新規契約が生まれたとすると、CACは1件あたり20万円になる。この10社が平均して3年間契約を継続し、1社あたり年間30万円の利益をもたらすなら、LTVは90万円だ。LTV/CACは4.5倍となり、目安とされる3倍を上回る。この計算ができて初めて、来期の予算を増やす判断にも根拠が持てる。

BtoBサイトによくある質問

リニューアルと新規構築、どちらを選ぶべきですか

既存サイトが一定の検索順位や被リンクを持っているなら、それを引き継げるリニューアルが基本になる。ドメインごと作り直す新規構築は、蓄積した評価をゼロから積み直すことになるため、よほどブランドを刷新する事情がない限り選びにくい。判断に迷う場合は、現行サイトの検索流入と被リンクの状況を先に棚卸ししてから決めたい。

BtoBサイトの構築には、どれくらいの期間がかかりますか

ページ数や機能の複雑さによって幅があるが、要件定義からデザイン、実装、公開までを含めると、標準的なコーポレートサイト規模で2〜3ヶ月、マーケティング機能を充実させたBtoBサイトでは3〜6ヶ月程度を見込む会社が多い。内製の場合はさらに幅が広く、社内リソースの空き状況次第で前後する。急いで公開するより、稟議に必要な情報を作り込む時間を確保するほうが、公開後の成果につながりやすい。

価格をサイトに載せると安く見られませんか

この記事で見てきた通り、価格を隠すことは稟議のハードルを上げる方向にしか働かない。「安く見られる」という懸念より、「稟議書に書ける情報がない」という理由で検討自体から外れるリスクのほうが大きい。完全な定価公開が難しい場合でも、目安となる金額のレンジは示しておきたい。

問い合わせフォームは何項目までなら許容範囲ですか

明確な正解値はないが、初回接点では会社名・氏名・メールアドレス程度にとどめるのが目安になる。役職や従業員規模といった詳細情報は、フォーム通過後のヒアリングやMAツールを使った段階的な取得で補う設計のほうが、全体の獲得数は増えやすい。

問い合わせが増えても、営業のリソースが足りません。どうすればよいですか

前述のCVの多層化を思い出してほしい。すべての問い合わせが「今すぐ商談したい」高ハードルの層とは限らない。低ハードルの資料請求と高ハードルの商談依頼を分けて設計しておけば、営業リソースは商談化の可能性が高い高ハードルの問い合わせに集中させられる。むしろ問い合わせの総数が増えて困る状況は、コンバージョンポイントを適切に階層化できているかを見直す良い機会になる。

導入事例が1本もない場合、どこから手をつければよいですか

既存の取引先の中で、比較的関係が良好な1社に事情を説明し、掲載の許諾を取るところから始めたい。実名掲載が難しければ、業種と規模だけでも明記した上で、導入前の課題と導入後の数値だけは具体的に書く。1本でも実例があれば、決裁者に向けた説得力は大きく変わる。

リニューアルの予算がどうしても限られる場合、何を優先すべきですか

デザインの全面刷新よりも、価格ページの充実、導入事例の追加、フォームの項目削減を優先したい。この記事で見てきた通り、見た目の刷新は問い合わせ数と直結しない一方で、稟議に必要な情報の充実とフォームの摩擦削減は、比較的小さな投資で効果が出やすい。

動画コンテンツは必須ですか

必須ではない。テキストと図表だけでも、稟議に必要な情報は十分に伝えられる。動画は、事例ページやサービス紹介ページで理解を深める補助として使うと効果的だが、動画の有無より先に、テキストと図表の情報量と正確さを整えるほうが優先順位は高い。

自社サイトが今どのフェーズにあるかを、どう見極めればよいですか

この記事のチェック項目に沿って、自社サイトを1つずつ照らし合わせるのが最も確実だ。価格・導入事例・フォームの3点だけでも、埋まっているか、抜けているかを紙に書き出してみてほしい。3点のうち2点以上が抜けている場合は、デザインより先に情報設計から手を付けるべき段階にある。

まとめ:足し算ではなく引き算で、稟議を通すサイトへ

BtoBサイトのリニューアルが成果につながらない最大の理由は、多くの場合、情報やデザインの「足し算」が続いた結果、決裁者が稟議を通すために本当に必要な情報が埋もれてしまうことにある。見た目を新しくすることと、問い合わせが増えることは、まったく別の話だ。

意思決定に関わる全員の懸念を先回りして払拭する情報設計、稟議書を書けるだけの価格と実績の開示、そして入力の負担を極限まで削ぎ落としたフォーム。この記事で挙げたポイントの多くは、要素を足すのではなく、不要なものを削る「引き算」の発想でこそ実現できる。次のリニューアルに着手する前に、まずは今のサイトのどこに「削るべき足し算」が残っているかを点検してみてほしい。

冒頭で紹介した通り、買い手の6割以上が営業担当者に会う前にすでに候補を絞り込んでいる。その絞り込みの場面で選ばれるかどうかは、営業トークの巧拙ではなく、サイトが稟議に必要な材料をどれだけ揃えているかで決まる。デザインを一新することよりも先に、決裁者が今すぐ稟議書を書けるだけの材料が揃っているか、その1点を確認することから始めてほしい。

この記事で紹介した施策は、どれも高額な投資を必要としない。価格ページに目安の金額を1行書き足す、事例ページの数値を1つ具体化する、フォームの項目を1つ削る。小さな引き算の積み重ねが、稟議を通すサイトへの近道になる。

今日できる点検

状態 今日やること
問い合わせフォームの項目数を数えたことがない 会社名・氏名・メールアドレス以外の必須項目を洗い出し、削れるものを探す
料金ページに具体的な数字がない 「月額〇万円〜」など、稟議書に書ける目安の金額を追加する
導入事例が匿名または感想レベルにとどまっている 1社でよいので、実名と具体的な数値を含む事例に作り直す
旧URLからの301リダイレクトを確認したことがない 直近のリニューアルで変更したURLがあれば、転送先が200で返るか実際にアクセスして確認する

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合同会社謙虚 代表社員。20代から、売る言葉だけを仕事にしてきました。電話営業で受話器を握っていた時代から、数千社のWEB集客に関わったいままで。詳しいプロフィールはこちら

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