ヒアリングシートのテンプレートを探すと、項目がずらりと並んだ表はいくらでも見つかります。ところが、埋めた答えを何に使うのかまで書いてあるものは、ほとんどありません。
この記事は、中小企業の経営者、営業担当、制作担当に向けて書きました。ヒアリングシートの意味、使う場面、そのまま写せる質問文の表、聞き方のコツと失敗例を順に押さえます。
最後は、集めた答えを自社のホームページの文章に変える流れまで進みます。聞いて終わりにせず、お客様の言葉でページを書くところまでが、この記事の範囲です。
先に答え:ヒアリングシートは、相手に聞くことを前もって並べた質問票で、答えは自社の文章の材料になる
ヒアリングシートとは、商談や依頼を受ける前に、相手から聞きたいことを一覧にしておく質問票のことです。打ち合わせの場で見ながら書き込み、聞き漏れを防ぎます。
使う人は、営業担当、ホームページの制作担当、コンサルタント、店舗の接客担当と幅広く、書式は紙でも表計算でもかまいません。
大事なのは項目の数よりも、聞いた答えをその後どこへ持っていくかです。
| 知りたいこと | 答え | 本文のどこで詳しく扱うか |
|---|---|---|
| ヒアリングシートとは何か | 聞きたいことを前もって並べた質問票 | この節 |
| どんな場面で使うのか | 商談、依頼を受ける前、既存のお客様への聞き取り | 使う場面の節 |
| 何を聞けばいいのか | 目的、困りごと、期限、決める人など | 項目のテンプレートの節 |
| 聞いた答えをどうするのか | お客様の言葉のまま自社サイトの文章にする | 文章に生かす流れの節 |
ヒアリングシートを一文で言うと
聞く前に質問を決めておき、聞いた答えを同じ形で残すための紙です。
同じ形で残すので、担当者が替わっても、半年後に見返しても、同じ情報が同じ場所に書かれています。
議事録やアンケートとの違い
議事録は話した内容を後から記録するもので、質問は事前に決まっていません。アンケートは多数の人に同じ質問をして、数を集計するためのものです。
ヒアリングシートは、特定の1人から深く聞くために使います。1件ずつの答えをそのまま読むことに価値があります。
| 書式 | 目的 | 聞く相手 | 使い方 |
|---|---|---|---|
| ヒアリングシート | 1人の状況を深く聞く | 特定の相手 | 会話しながら書き込む |
| 議事録 | 話した内容を残す | 会議の参加者 | 終わったあとにまとめる |
| アンケート | 全体の傾向をつかむ | 多数の人 | 集計して数を見る |
「ヒアリングシート 英語」で調べた人へ
英語で表したくて検索する方も多いようです。英語のhearingは、耳に音が聞こえてくる意味が中心で、聞き取りの質問票の名前としてはあまり使われません。
英語圏では、顧客から事前に聞く質問票を、discovery questionnaireやclient intake formのように呼ぶことがあります。海外の取引先に送る場合は、そのどちらかを題名にすると通じやすくなります。
先日見かけたQ&Aサイトの悩み:「ヒアリングシートを使いたい。みなさんはどんな方法で使っていますか」
先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。
質問した方は、仕事の依頼を受ける場面でヒアリングシートを使いたいと考えていました。自分で作るのは初めてで、表計算ソフトで作ればいいのか、ほかの人はどうしているのかを知りたいと書いていました。
回答は短く、別の人に頼んで作ってもらう方法が挙がっていました。質問した方が本当に知りたかったであろう、何を聞けばいいのか、聞いた答えをどう使うのかには、触れられていませんでした。
悩みの中心は、書式の形よりも質問の文章にある
ヒアリングシートの形は、表計算でも文書でも、紙でも変わりません。作り方を調べると、ほとんどが形の話で終わります。
困るのは、質問の文章です。「ご予算は?」と聞いたら失礼にならないか、「困りごとは?」と聞いて、相手が何も思いつかなかったらどうするか。こうした迷いは、書式の選び方では解決しません。
経営者や営業担当の場合も、悩みの形は同じ
商談の場でも、同じことが起きます。名刺交換のあと、何を聞けばいいのか迷っているうちに時間が過ぎ、結局は自社の商品説明で終わってしまう。
制作の依頼を受ける側でも、聞き漏らしたまま作り始めて、完成間際に「そこは違う」と言われた経験は、多くの人にあるはずです。
ヒアリングシートを使う3つの場面
ヒアリングシートは、使う場面によって、聞く項目も、書式の重さも変わります。ここでは3つの場面に分けます。
| 場面 | 聞く相手 | 聞く目的 | シートの重さ |
|---|---|---|---|
| 商談 | 見込みのお客様 | 困りごとと、決める条件を知る | 軽い。1枚で足りる |
| ホームページ制作の依頼前 | 依頼する側、または依頼を受けた側 | 目的と素材を集める | 重い。数枚になる |
| 既存のお客様への聞き取り | 買ってくれたお客様 | 選んだ理由と、使った感想を知る | 軽い。5問ほど |
商談の場面
初めて会う相手に使うので、項目は絞ります。長い質問票を渡されると、相手は尋問を受けている気持ちになります。
聞きたいのは、いま何に困っているのか、いつまでに解決したいのか、誰が決めるのか、の3点が中心です。
ホームページ制作の依頼前の場面
依頼する側にとっても、受ける側にとっても、いちばん項目が増える場面です。サイトの目的、見せたい相手、載せる素材、期限、運用する人などを聞きます。
依頼する側が自社で記入しておくと、制作会社との打ち合わせが短くなり、見積もりの食い違いも減ります。
既存のお客様への聞き取りの場面
もっとも見落とされやすいのが、この場面です。買ってくれたお客様は、自社を選んだ理由をいちばん知っています。
その理由は、お客様自身の言葉で語られるので、自社のホームページにそのまま使える文章になります。この点は、後半の節でくわしく扱います。
多くのシートが役に立たない理由:項目が、聞く側の都合で並んでいる
世の中に出回っているテンプレートの多くは、作る会社が欲しい情報の順に並んでいます。予算、納期、決裁者といった項目が上にあり、相手が話したいことは下か、そもそも欄がありません。
これは書き手の悪意から起きるわけでなく、仕組みから起きます。シートは「社内の見積もりを出すための入力票」として設計されることが多く、相手の頭の中を知るための道具として作られていません。
見積もりに必要な項目だけが埋まる
予算、納期、台数、ページ数。こうした数字は、聞けば答えてもらえるので、シートはきれいに埋まります。
けれども、相手がなぜその依頼を出そうと思ったのか、その背景が書かれた欄はありません。背景を知らないまま見積もりを出すと、条件は合っていても、決めてもらえない提案になります。
「困りごと」の欄が、いちばん埋まらない
どのテンプレートにも「課題」や「お困りごと」の欄はあります。ところが、ここは空白か、「集客を増やしたい」のような一言で終わりやすい欄です。
相手は自分の困りごとを、言葉にしたことがないからです。聞かれて初めて、頭の中でぼんやりしていたものを探します。短い欄に書けと言われても、書けません。
答えが「次の作業」につながっていない
もう一つの欠陥は、聞いた答えの行き先が決まっていないことです。
シートを埋めて、フォルダにしまって、それきり。次に開くのは、トラブルが起きて「あのとき何と言っていたか」を探すときだけ、という会社は少なくありません。
| よくある状態 | 起きていること | 本当は必要なこと |
|---|---|---|
| 項目が見積もり用に並ぶ | 数字は埋まる | 依頼の背景を聞く欄 |
| 困りごとの欄が短い | 一言で終わる | 話してもらう余白 |
| 答えを保管するだけ | 後で使われない | 使う先を先に決める |
| 相手が書き込む形式のみ | 負担が大きく途中で止まる | 会話しながら聞き手が書く形式 |
聞き方のコツ:シートは「読む」より「聞いた順に置く」ために使う
同じシートを使っても、聞き出せる量は人によって大きく違います。差が出るのは、項目の良し悪しよりも聞き方です。
ここでは、現場でそのまま使えるコツを、順番に書きます。
聞く前に、相手のことを調べておく
初対面の相手に、ホームページに書いてあることを質問するのは、時間の無駄になります。事前に相手の会社のページを開き、事業内容と扱う商品を押さえておきます。
調べたうえで「御社のページを拝見しました。この商品が主力と理解していますが、合っていますか」と聞くと、相手は話を始めやすくなります。
質問は、事実から意見へ、順に進める
最初は、答えやすい事実から入ります。いつから始めたのか、従業員は何人か、主な取引先はどんな業種か。
事実で場が温まってから、「どう感じているか」「なぜそうしたか」の質問に移ります。順番を逆にすると、相手は構えます。
| 順番 | 聞くこと | 質問文の例 |
|---|---|---|
| 1 | 事実 | いつ頃から、このお仕事を始められましたか |
| 2 | 行動 | いま、お客様はどのようにして御社を知りますか |
| 3 | 気持ち | その状況を、どのように感じておられますか |
| 4 | 望み | 半年後に、どうなっていたら良いと思いますか |
「はい」「いいえ」で終わる質問を減らす
「ホームページに満足していますか」と聞くと、「まあまあです」で終わります。「ホームページを見て、お客様から言われたことはありますか」と聞くと、具体的な出来事が出てきます。
出来事の形で聞くと、相手は思い出しながら話します。思い出した話には、本人の言葉がそのまま入ります。
沈黙を、すぐに埋めない
質問したあとで相手が黙ったら、3秒ほど待ちます。考えている時間です。
沈黙に耐えられず、聞き手が選択肢を並べてしまうと、相手はその中から選ぶだけになり、自分の言葉が出てきません。
答えは、言い換えずに、そのまま書き取る
相手が「ちゃんとしたところに頼みたい」と言ったら、「信頼できる会社」と直さずに、そのまま書きます。
聞き手の言い換えが一度入ると、元の言葉は戻せません。後半で見るとおり、この言葉こそが、自社の文章の材料になります。
最後に「ほかに言い残したことは」と聞く
シートの項目をすべて聞き終えたあとで、「ほかに、気になっていることはありますか」と一言足します。
シートに載っていない話が、ここで出ることが多くあります。本当の困りごとは、最後の1問で語られることがあります。
聞く場面で使う道具は、紙1枚で足りる
このシートは、凝った形にしなくても働きます。A4の紙1枚に、質問と書き込みの余白があれば十分です。
画面で入力する形にする場合も、聞き手が会話しながら打ち込める軽さを保つほうが、使い続けられます。
相手に書かせるか、聞き手が書くか
相手に事前に書いてもらう形は、手間を省けますが、途中で止まる人が多く出ます。聞き手が会話の中で書く形は、時間がかかりますが、言葉の質が上がります。
商談や既存のお客様への聞き取りは、聞き手が書く形が向いています。制作の依頼前は、事前記入と対面の確認を組み合わせる形が現実的です。
オンラインや電話で聞くときの工夫
画面越しや電話では、表情が見えない分、相手の迷いに気づきにくくなります。質問のあとで返事が途切れたら、「いまの聞き方で伝わっていますか」と確かめます。
聞く時間は、30分から60分の枠に収めます。それ以上になると、後半の答えが短くなります。
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 対面 | 初めての商談、制作の最初の打ち合わせ | 書き込みに気を取られて、目を見ない時間が長くならないようにする |
| オンライン | 遠方の相手、既存のお客様への聞き取り | 画面共有でシートを見せると、答えの確認が速い |
| 電話 | 短い確認、追加の質問 | 大事な答えは、通話のあとにメールで文面にして確認する |
どの方法でも、聞き終えたその日のうちに、シートを清書して残します。時間が空くと、相手の言葉は記憶から消えます。
よくある失敗例:項目を増やし、書式を整えても、答えは良くならない
シートの出来に不満があると、多くの会社は項目を足すか、書式を整えます。ところが、聞き出せる内容はそれでは変わりません。
ここでは、現場でよく起きる5つの失敗を、起きる順に見ていきます。
失敗例1:項目を増やして、相手を疲れさせる
聞き漏れが怖くなり、項目が60にも80にもふくらむシートがあります。相手は10問目あたりで疲れ、後半は「特になし」が並びます。
項目を増やすほど、1問あたりの答えの質は下がります。初回に聞くのは、20問以内に絞り、残りは2回目以降に回します。
失敗例2:最初に予算を聞いて、場が冷える
予算は大事な情報ですが、初対面でいきなり聞かれると、相手は「高く言われるのではないか」と身構えます。
先に困りごとと、解決したい期限を聞きます。そのあとで「進めるうえで、決まっている上限はありますか」と聞くと、答えが出やすくなります。
失敗例3:フォームのURLを送って、返事を待つ
打ち合わせ前に入力用のフォームを送り、埋まってから会う方法は、手間が少ない反面、未入力のまま止まる人が出ます。
送るなら、必須項目は3つまでに絞ります。残りは、会ってから口頭で聞いて埋めます。
失敗例4:聞き手が自社の説明を始める
聞く場なのに、気がつくと商品の説明をしている。相手の話が出る前に、自社の強みを話し始めてしまう失敗です。
シートに「話す時間の割合」を書き込む欄を作る必要はありませんが、聞き手が話す時間は全体の3割以内と決めておくと、守りやすくなります。
失敗例5:答えを聞いたあと、誰も見ない
もっとも多い失敗です。聞き終えたシートが共有フォルダの奥に入り、提案書や見積もりは、記憶で作られます。
答えの行き先を、聞く前に決めておきます。商談なら提案書の冒頭、制作なら構成案、既存のお客様なら自社サイトの文章、と決めておくと、聞く内容も自然に変わります。
| 失敗 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 項目の増やしすぎ | 後半が「特になし」になる | 初回は20問以内に絞る |
| 最初に予算を聞く | 相手が構える | 困りごと、期限、予算の順にする |
| フォームの丸投げ | 未入力のまま止まる | 必須は3つまで、残りは会って聞く |
| 聞き手が話しすぎる | 相手の言葉が出ない | 聞き手の発言は3割以内 |
| 答えを使わない | 同じ質問を繰り返す | 行き先を聞く前に決める |
5つの失敗に共通すること
どの失敗も、シートを「埋めること」が目的になっています。埋まった枠の数は、相手の理解度とは関係がありません。
目的を「相手の言葉を持ち帰ること」に置き直すと、項目の数も、聞く順番も、聞き手の話す量も、自然に決まってきます。
失敗したシートの見分け方
過去に使ったシートを、1枚取り出して読み返します。次の3つに当てはまるなら、直す価値があります。
| 見るところ | 失敗のしるし | 直す方向 |
|---|---|---|
| 空白の欄 | 後半に空白が集まっている | 項目を減らす |
| 答えの文体 | 聞き手の言葉に直されている | 相手の言葉のまま書く |
| シートの行き先 | その後の資料に反映されていない | 使う先を決めてから聞く |
客の言葉は、いまもネット上に書かれている:総務省の調査で確かめた数字
聞き取りで得られる客の言葉が、なぜ自社の文章の材料になるのか。その根拠として、人がネット上で自分の言葉を使う場面の多さを確かめました。
総務省は2026年5月29日に、令和7年通信利用動向調査の結果を公表しました。調査の結果には、次の一文があります。
「インターネットの利用目的・用途をみると、「SNS(無料通話機能を含む)の利用」の割合が82.3%と最も高い。」
調べ物や買い物の前後に、人は自分の言葉でネットに書き込み、読んでいます。客の言葉は、特別な場でしか聞けないものではありません。
この数字から言えること
インターネットの利用目的でいちばん高いのが、人とのやり取りに使うサービスだということです。人は、検索窓や投稿欄に、自分の悩みを自分の言葉で書いています。
自社のホームページが「当社は高品質を追求し」と書いても、客が使う言葉とは一致しません。客の言葉で書いたページは、客が検索する言葉と重なりやすくなります。
数字の読み方で注意すること
この調査は、世帯を対象にした全国調査で、SNSの利用が多いことを示しています。自社の客がSNSで何を書いているかは、この数字からは分かりません。
だからこそ、自社の客本人に聞く作業が必要になります。調査の数字は、聞き取りが無駄にならない背景の確認にとどめます。
聞き取りを文章に変える3つの手順
図の流れに沿って、次の節以降で進めます。聞く、言葉を拾う、ページに置く、の順です。
| 手順 | やること | できあがるもの |
|---|---|---|
| 聞く | 項目のテンプレートで聞き、答えを書き取る | 客の言葉が残ったシート |
| 拾う | 繰り返し出る言葉に印をつける | 客の言葉の一覧 |
| 置く | ページの見出しと冒頭に使う | 客の言葉で書かれたページ |
解決の考え方:「売れるサイトはみな謙虚」の順番で、先に相手の言葉を集める
ここまでの失敗を避ける軸は、私が「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいる考え方です。
謙虚とは、会社が言いたいことを一度引いて、相手が話したいことを先に聞く順番を守ることです。控えめに振る舞うという意味はありません。
ヒアリングシートにこの順番を当てはめると、自社が知りたい項目より先に、相手が話したい項目を置くことになります。
並べ方を変える3つの決まり
決まりは3つです。1つ目は、質問を相手の状況から始めること。2つ目は、数字や条件の質問は後ろに回すこと。3つ目は、答えを相手の言葉のまま残すことです。
この3つを守るだけで、同じ項目数でも、聞き出せる内容は変わります。
聞く前に、答えの行き先を決める
シートを作る前に、「この答えを、どこで使うのか」を1行で書きます。提案書の冒頭か、構成案か、自社サイトのどのページか。
行き先が決まると、不要な質問が自然に消えます。使う先のない質問は、相手を疲れさせるだけです。
そのまま写せる項目のテンプレート:基本の項目と、用途別の質問文
ここからは、実際に使える質問文を表で示します。そのまま写して使い、自社の言い回しに少しずつ直してください。
質問文は、丁寧な口調で、相手が答えやすい形にしてあります。
どの場面でも使える基本の項目
商談でも制作でも、最初に聞く項目です。事実から入り、最後に望みを聞く順番になっています。
| 項目 | 質問文 | 聞く理由 |
|---|---|---|
| 事業の概要 | 現在のお仕事について、簡単に教えていただけますか | 前提をそろえる |
| 始めた時期 | このお仕事は、いつ頃から始められましたか | 事業の歴史を知る |
| 主なお客様 | 普段、どのようなお客様が多いですか | 客層をつかむ |
| 知られ方 | お客様は、どのようにして御社を知りますか | 入口を知る |
| いまの悩み | 最近、いちばん気になっていることは何ですか | 困りごとを聞く |
| 望む状態 | 半年後に、どうなっていたら良いと思いますか | 目的を知る |
| 決め方 | 今回の件は、どなたと相談して決めますか | 決める人を知る |
商談で使う質問文
商談は時間が短いので、5問から7問に絞ります。相手の状況、困りごと、期限、決め方の順に聞きます。
| 聞くこと | 質問文 | 答えの使い道 |
|---|---|---|
| きっかけ | 今回、ご相談くださった理由を教えてください | 提案書の冒頭 |
| いまの方法 | いまは、どのように対応されていますか | 比べる相手を知る |
| 困っている点 | その方法で、困っていることはありますか | 提案の中心 |
| 過去の経験 | 以前に、似たものを検討したことはありますか | 断られた理由を知る |
| 期限 | いつ頃までに形にしたいと考えておられますか | 日程の確認 |
| 条件 | 進めるうえで、決まっている条件はありますか | 範囲の確認 |
| 決め方 | 最終的には、どなたが判断されますか | 次の面談相手 |
ホームページ制作の依頼前に使う質問文
制作では、サイトの目的と素材を聞きます。依頼する側が自社で記入しておくと、打ち合わせが短くなります。
| 項目 | 質問文 | 空欄のままだと起きること |
|---|---|---|
| 目的 | ホームページで、どんなことを実現したいですか | 方向が定まらない |
| 見せたい相手 | いちばん見てほしい方は、どんな方ですか | 文章が誰にも届かない |
| 見た人の行動 | 見た方に、最終的に何をしてほしいですか | 申し込みの導線がない |
| 強み | 同業の中で、選ばれる理由は何だと思いますか | 他社と似たページになる |
| 載せる素材 | 載せられる写真、事例、お客様の声はありますか | 素材集めで日程が遅れる |
| 参考にしたい形 | 好みに近いホームページはありますか | 見た目の食い違い |
| 更新する人 | 公開後は、どなたが更新しますか | 公開後に放置される |
| 期限 | 公開したい時期は決まっていますか | 工程が組めない |
既存のお客様への聞き取りに使う質問文
買ってくれたお客様に聞く、いちばん価値の高いシートです。5問で足りますが、答えの質はどれも高くなります。
| 順番 | 質問文 | 引き出したいこと |
|---|---|---|
| 1 | 申し込む前に、どんなことで困っていましたか | 買う前の悩み |
| 2 | 申し込む前に、ほかの会社も比べましたか | 比べた相手 |
| 3 | 最終的に、うちを選んだ決め手は何でしたか | 選ばれた理由 |
| 4 | 申し込む前に、不安だったことはありますか | 迷いの理由 |
| 5 | 使ってみて、どう変わりましたか | 買った後の変化 |
業種別に足す質問文
基本の項目に、業種ごとの質問を1つか2つ足します。足しすぎないことが、使い続けるコツです。
| 業種 | 足す質問文 | 狙い |
|---|---|---|
| 工務店・リフォーム | 工事のあとで、どんな暮らしを想像していますか | 完成後のイメージ |
| 士業 | 相談する前に、いちばん不安だったことは何ですか | 相談の壁 |
| 飲食店 | 普段、どんな場面で店を使いたいですか | 利用の場面 |
| 美容・サロン | 通うときに、気になることはありますか | 来店前の不安 |
| 学習塾 | お子さんは、普段どんな様子ですか | 家庭の状況 |
| 製造業・法人向け | 発注するとき、いちばん困るのはどんなことですか | 取引の条件 |
聞かないほうがよい質問と、言い換え
質問の中には、答えを引き出せないどころか、相手の気持ちを閉じさせるものがあります。言い換えの例を並べます。
| 避けたい質問 | 起きること | 言い換えた質問文 |
|---|---|---|
| なぜ、いままで放っておいたのですか | 責められたと感じる | これまでに試されたことを教えてください |
| ご予算はいくらですか | 値踏みされたと感じる | 進めるうえで、決まっている上限はありますか |
| 競合はどこですか | 答えにくく黙る | ほかに話を聞いた会社はありますか |
| 本当にやる気はありますか | 信頼を失う | いつ頃から動き出したいですか |
| 何でもいいので、要望を言ってください | 何も出てこない | いま困っている場面を1つ教えてください |
質問文を自社の言い回しに直す手順
写した質問文は、そのまま読み上げると、話し言葉との違いが出ます。実際に声に出して読み、言いにくい箇所を直します。
直すときは、相手が日常で使う言葉を選びます。業界の専門語は、相手が先に使ったときにだけ使います。
項目の順番を、並べ替えて試す
最初に作ったシートの順番が、最良とは限りません。3人に使ってみて、相手が詰まった質問を探します。
詰まった質問は、順番を後ろに回すか、言い換えます。2回直せば、たいていは使いやすい形になります。
集めた答えを、自社サイトの文章に変える流れ
聞いたあとの作業が、この記事の中心です。シートを埋めただけでは、売上にも問い合わせにもつながりません。答えを、ホームページの文章に変えます。
お客様の言葉を使って書いたページは、同じ悩みを持つ人が検索する言葉と重なります。
手順1:繰り返し出る言葉に印をつける
5人から10人分のシートを並べ、同じ意味の言葉に印をつけます。「安心できた」「話しやすかった」のように、複数の人が違う場面で使った言葉が、いちばん強い材料です。
1人しか言わなかった言葉は、別の箇所で使います。印のついた数が多い順に、使う場所を決めます。
手順2:言葉を、ページの場所に割り当てる
拾った言葉を、ページのどこに置くかで分けます。見出し、冒頭、事例、よくある質問の4か所が基本です。
| 拾った言葉の種類 | 置く場所 | 例 |
|---|---|---|
| 買う前の悩み | ページの見出しと冒頭 | 「何から聞けばいいか分からず…」 |
| 比べた相手との違い | 選ばれる理由のページ | 「ほかの会社は説明が難しかった」 |
| 決め手 | トップページの最初の一文 | 「質問に先に答えてくれたので」 |
| 不安だったこと | よくある質問 | 「頼んだあと連絡が減らないか」 |
| 買った後の変化 | 事例のページ | 「社内で説明しやすくなった」 |
手順3:お客様の言葉を、そのままの形で置く
お客様の声として載せる場合は、必ず本人の許可を取ります。許可が取れた言葉は、削りすぎずに置きます。
許可が取れない場合は、言葉の意味を変えずに、自社の文章に溶かして使います。「丁寧な対応」と書く代わりに、お客様が実際に言った「質問への返事が当日中だった」を使います。
手順4:強みの文章に、聞き取りの裏付けを足す
自社の強みを言葉にするとき、聞き取りの答えが裏付けになります。強みの考え方は、USPとは 意味と強みとの違い 作り方と自社サイトに置く場所で別に整理しています。
選ばれた理由をお客様の言葉で語れると、ほかの会社が簡単に真似できない文章になります。
| 書きがちな文 | 聞き取りを使った文 |
|---|---|
| 丁寧な対応を心がけています | 「質問への返事が当日中だった」と、複数のお客様に言っていただいています |
| 豊富な実績があります | 同じ悩みで来られたお客様が、これまで何社もおられます |
| 安心のサポート | 「頼んだあとも連絡が来て安心した」という声を、よくいただきます |
聞き取りは、年に1度で終わらせない
お客様の言葉は、時代や商品とともに変わります。新しいお客様が増えるたびに、5問のシートを渡し、答えをためていきます。
ためた答えは、ページの更新時に見直します。1年前のお客様の言葉が、いまの客層に合うとは限らないからです。
聞き取りから文章になるまでの時間の目安
初めて取り組む場合の、作業の流れと所要時間を示します。1人ずつ進めても、1週間ほどで最初のページ案ができます。
| 作業 | 目安の時間 | 備考 |
|---|---|---|
| 5問のシートを作る | 30分 | 前の節の質問文を写す |
| お客様に聞く | 1人あたり20分 | オンラインや電話でも可 |
| 答えを清書する | 1人あたり10分 | 聞いた当日のうちに行う |
| 言葉に印をつける | 5人分で1時間 | 同じ意味の言葉を探す |
| ページに置く | 1ページで1時間 | 見出しと冒頭を先に書く |
最初の1ページが仕上がったら、そのページを見た人の反応を、問い合わせの文面や電話の第一声で確かめます。反応が変わったら、他のページにも広げます。
業種や場面で変わる、聞き取りの優先順位
すべての場面を同じ重さで進める必要はありません。自社の状況で、先に取りかかる場面を決めます。
| 自社の状況 | 先に取りかかる場面 | 理由 |
|---|---|---|
| 問い合わせはあるが、決まらない | 既存のお客様への聞き取り | 選ばれた理由を知るため |
| 商談が長引く | 商談用のシート | 聞き漏れを減らすため |
| ホームページを作り直す | 制作の依頼前のシート | 方向のずれを防ぐため |
| 新しい商品を出す | 見込みのお客様への聞き取り | 悩みの言葉を知るため |
よくある質問
Q. ヒアリングシートとは、何ですか。
商談や依頼の前に、相手から聞きたいことを一覧にしておく質問票です。打ち合わせの場で、聞きながら書き込みます。
議事録やアンケートとは、聞く相手が特定の1人である点が違います。
Q. ヒアリングシートの項目は、何問くらいが適切ですか。
初回は20問以内が目安です。商談では5問から7問、既存のお客様への聞き取りは5問で足ります。
項目が増えるほど、後半の答えが短くなります。
Q. ヒアリングシートは、相手に書いてもらうほうがいいですか。
聞き手が会話しながら書く形のほうが、相手の言葉が残ります。相手に事前記入を頼む場合は、必須項目を3つまでに絞ります。
残りは、会ってから口頭で聞きます。
Q. ヒアリングシートの「英語」は、何と言いますか。
英語のhearingは聞こえることを指すので、そのままでは通じにくくなります。海外の取引先には、discovery questionnaireかclient intake formの名前で送ると伝わりやすくなります。
Q. 聞いた答えは、ホームページにそのまま載せていいですか。
お客様の言葉をそのまま載せるには、本人の許可が要ります。許可が取れない場合は、意味を変えずに、自社の文章に溶かして使います。
まとめ
ヒアリングシートは、聞きたいことを前もって並べた質問票で、商談、ホームページ制作の依頼前、既存のお客様への聞き取りの3つの場面で使います。
失敗の多くは、答えの行き先が決まっていないことから起きます。項目の数や書式は、二の次です。聞く前に、答えをどこで使うかを1行で書いておきます。
総務省が2026年5月29日に公表した令和7年通信利用動向調査では、インターネットの利用目的で「SNS(無料通話機能を含む)の利用」が82.3%と最も高くなっていました。客の言葉は、いまも身近なところに書かれています。
「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、自社が聞きたいことを一度引き、相手が話したいことから先に聞いてください。集めた答えを、お客様の言葉のまま、ページの見出しと冒頭に置けば、同じ悩みを持つ人に届く文章になります。
今日できる点検
| 点検すること | 確かめ方 | 結果の使い方 |
|---|---|---|
| 手元のシートの項目数 | 項目を数える | 20を超えるなら、後半を削る |
| 最初に聞く項目 | 上から5つを読む | 予算や期限なら、事実の質問に替える |
| 答えの行き先 | シートの上に1行で書く | 書けない質問は削る |
| 過去の答えの文体 | 直近のシートを1枚読む | 聞き手の言葉に直されていたら、相手の言葉に戻す |
| 買ってくれたお客様の数 | 直近の1年で数える | 5人以上なら、5問のシートを送る |
| 聞き取りの日程 | 今月の予定表に入れる | 1件でも先に入れる |
| ホームページの冒頭 | トップページの最初の一文を読む | 社内の言葉なら、お客様の言葉に直す |
| お客様の声の許可 | 載せている声の許可を確かめる | 無ければ、本人に連絡する |
この記事に書いたことを、そのまま御社のページに
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