セールスレターを書くように言われたが、煽り文句ばかりの長い手紙になりそうで気が重い。あるいは、自社のサービスページやランディングページに、セールスレターの考え方をどう使えばいいのか分からない。
この記事は、そうした悩みを持つ中小企業の経営者と担当者の方に向けて書きました。
結論から言うと、セールスレターは、読み手の悩みから申し込みまでの段差を、一段ずつ低くしていく文章です。煽る言葉の量で成果が決まるわけではありません。
先に答え:セールスレターは「申し込みまでの段差を低くする手紙」
セールスレターとは、商品やサービスを売るために、特定の相手へ向けて書く手紙形式の文章のことです。紙のダイレクトメールにも、メールにも、ウェブページにも使われます。
目的は、読んだ人に資料請求や相談の申し込みといった、次の行動を取ってもらうことです。
読み手は、手紙を読み終えてすぐに契約するわけではありません。多くの場合は、「自分の悩みに合っていそうか」「信用してよいか」「申し込むと何が起きるか」を順に確かめています。
この確かめる順番に合わせて、文章を4つの段に分けると、長い手紙でも読み進めてもらえます。4つの段は、悩み、道筋、根拠、申し込みです。
この記事で答える4つのこと
次の4点を、順に書きます。
- 煽り型の長文が、なぜ法人の買い手に読まれにくいのか
- セールスレターの基本構成と、書き出しの作り方
- 自社のサービスページやランディングページへの置き換え方
- 景品表示法の面で、手紙の中で気をつける表現
確かめた出典と、書かない範囲
法律に関わる部分は、消費者庁のページを2026年10月26日に開いて確かめた範囲だけを書きます。
確かめられなかったことは、確かめられなかったと書きます。
費用の話と、他社の事例は書きません。実在する会社の名前も出しません。
例文は、業種ごとによくある型を私が書いたものです。実在する会社の文章ではありません。
Q&Aサイトで見た「洗脳して買わせるものですか」という問い
先日、Q&Aサイトでこのような疑問を拝見しました。原文は載せず、要点だけを書き直して紹介します。
質問者さんは、セールスレターは商品が欲しくもない人を洗脳して買わせるためのものなのか、と尋ねていました。
セールスレターという言葉に、強い言葉で押し切る印象を持っている方の、率直な疑問だと思います。
回答は「後押しのためのもの」だった
寄せられた回答は、セールスレターを見ている時点でその人は興味を持っているので、後押しするためのものだ、という趣旨でした。
私もこの考え方に近い立場です。商品に関心のない人に、手紙1通で関心を持たせることは難しいからです。
セールスレターが働くのは、すでに悩みを持っている人が、買うかどうかを決める場面です。
この質問から見える疑問
この質問から、私は2つの疑問を読み取りました。
1つ目は、セールスレターは相手を操作する文章なのか、という疑問です。
2つ目は、自社が出すとき、どこまで強い言葉を使ってよいのか、という疑問です。
どちらも、書き手が不安に思う点です。以降の章で、この2つに答えていきます。
煽り型の長文が読まれない理由
セールスレターというと、「今だけ」「このままでは危険です」といった言葉が続く長い手紙を思い浮かべる方が多いと思います。
個人向けの商品なら通用する場面もあるでしょう。ただ、法人の買い手が相手になると、同じ書き方は読まれにくくなります。
自社の原稿に、次の症状が出ていないか見てください。
| 症状 | 読み手の受け取り方 | 文章に起きていること |
|---|---|---|
| 冒頭が「驚きの事実」や「衝撃」で始まる | 大げさで、信用してよいか迷う | 悩みの前に、言葉の勢いだけが先に出ている |
| 不安をあおる文が何段も続く | 疲れて、途中で閉じる | 解決の道筋より、危機感の描写が長い |
| 「今だけ」「残りわずか」が何度も出る | 急がされている気分になる | 期限の根拠が書かれていない |
| 実績が「多数」「圧倒的」と書かれる | 具体的に何件か分からない | 数字や範囲が省かれている |
| 申し込みの案内が文末にしか出ない | 読み終えても、次に何をすればよいか迷う | 申し込みの段差が高いまま残っている |
ひとつでも当てはまれば、煽りの量が、読み手の判断材料より多くなっています。
法人の買い手は、手紙の向こうで社内に説明している
法人の買い手は、自分ひとりで決めることがほとんどありません。上司や同僚に、なぜこの会社に相談するのかを説明する必要があります。
煽り文句は、その説明に使えません。「衝撃の方法」では、社内の稟議に書く理由にならないからです。
読み手が欲しいのは、説明に使える材料です。誰の、どんな状況の悩みに対応しているのか。どう進めるのか。根拠は何か。申し込むと何が起きるのか。
この4つに答える手紙は、そのまま社内への説明資料になります。
長い手紙が、長いまま読まれる条件
長い手紙が悪いわけではありません。読み手が自分の悩みを見つけ、次の段へ進む理由があれば、長い文章も最後まで読まれます。
反対に、短くても段差が高い手紙は読まれません。悩みに触れず、いきなり商品の説明から始めるものがその例です。
文字数は、4つの段に答えるために必要な量で決まります。書き手の気持ちの量は関係しません。
セールスレターの基本構成:悩み、道筋、根拠、申し込みの4つの段
セールスレターの構成は、読み手が頭の中で確かめる順番に合わせます。次の表が全体の地図です。
| 段 | 読み手の頭の中の問い | 書く中心 | 避けたい書き方 |
|---|---|---|---|
| 1 悩み | これは自分の話か | 読み手の状況を、本人の言葉で書く | 危機をあおる言葉 |
| 2 道筋 | どう解決するのか | 進め方を順番に書く | 「簡単」「すぐに」だけの説明 |
| 3 根拠 | 本当に信用してよいか | 事実、範囲、条件を書く | 「多数」「圧倒的」 |
| 4 申し込み | 申し込むと何が起きるか | 次の一歩を1つに絞って書く | 期限や数量の根拠のない圧力 |
この4つの段を、上から順に低い階段として並べるイメージです。
段1 悩み:読み手の状況を、本人の言葉で書く
最初の段は、読み手が「自分のことだ」と思える状況を書きます。
ポイントは、問い合わせのメールや商談のメモに残っている、お客様の言葉をそのまま使うことです。書き手が考えた「お悩みの代表例」より、実際の第一声のほうが、読み手に届きます。
たとえば部品加工の会社なら、「図面はあるが、試作を1個から受けてくれる会社が見つからない」といった一文です。
段2 道筋:どう進むのかを、順番に書く
悩みを書いたら、次はその解決がどう進むのかを書きます。
ここで読み手が知りたいのは、手順です。相談して、何を渡して、いつ何が返ってきて、どこで判断するのか。順番に並べると、読み手は自分が動く場面を想像できます。
「簡単です」「すぐに結果が出ます」とだけ書いても、道筋にはなりません。
段3 根拠:事実、範囲、条件を書く
道筋を示しても、読み手は「本当にできるのか」と疑います。この疑いに答えるのが根拠の段です。
根拠には、自社が実際に対応した範囲、対応できる条件、できないことを書きます。数字を入れるなら、期間と対象の範囲を添えます。
できないことを書くと、手紙の信用が上がります。何でもできると書いた手紙より、できる範囲を示した手紙のほうが、買い手は社内に説明しやすいからです。
段4 申し込み:次の一歩を1つに絞る
最後の段は、読み手が次に何をすればよいかを示します。
案内は1つに絞ります。資料請求、相談の予約、見積もりの依頼など、複数並べると、読み手はどれを選べばよいか迷います。
申し込むと何が起きるかも書きます。「30分の電話で状況を伺い、その場で契約をお願いすることはありません」のように、申し込みの先を見せると、段差が低くなります。
手紙の書き出し:冒頭の3行で、読み手を見つける
セールスレターの書き出しは、読み手が最初に読む場所です。ここで自分の話だと感じなければ、続きは読まれません。
見出しには、読み手と悩みを入れる
見出しは、誰に向けた手紙かが分かる形にします。
「試作を1個から頼める会社をお探しの設計担当の方へ」のように、読み手と悩みを両方入れます。「驚きの方法を公開」といった、中身の見えない見出しは使いません。
冒頭の3行は、状況の描写から始める
見出しの次の3行は、読み手の状況を描写します。
「図面を送っても、最小ロットの条件で断られた経験はありませんか」と書くより、「図面を送ると、最小ロットの条件で断られる。そのたびに、別の会社を探し直している」と、状況を言い切る形のほうが読まれます。
問いかけは、読み手に考えさせる負担を作ります。状況の描写は、読み手に「そうだ」と思わせるだけで済みます。
自社の自己紹介は、悩みの後に置く
会社名や創業年は、悩みの描写のあとに置きます。
読み手は、まだ会社に興味を持っていません。自分の悩みに触れた手紙だと分かってから、書き手が誰なのかを知りたくなります。
書き出しの型を、表で比べる
| 書き出しの型 | 例 | 読み手の反応 |
|---|---|---|
| 自己紹介型 | 当社は創業30年の部品加工会社です | 自分に関係があるか分からず、読み進める理由がない |
| 煽り型 | 衝撃の事実、あなたはまだ損をしています | 大げさに感じて警戒する |
| 状況描写型 | 図面を送ると、最小ロットで断られる | 自分の話として読み進める |
3つの型のうち、状況描写型を選びます。
サービスページやランディングページへの置き換え方
セールスレターの4つの段は、ウェブページに置き換えるとそのまま使えます。紙の手紙より、ページのほうが段ごとに区切りやすいからです。
段をページの区切りに対応させる
| 段 | ページの区切り | 置くもの |
|---|---|---|
| 悩み | ファーストビューと直後の1画面 | 読み手の状況を描写する数行 |
| 道筋 | 「進め方」の区切り | 番号付きの手順と、各手順で起きること |
| 根拠 | 「対応範囲」「実績の範囲」の区切り | 事実と条件、できないこと |
| 申し込み | 各区切りの末尾と、ページ末尾 | 1種類の案内と、申し込み後の流れ |
申し込みの案内は、ページの最後だけに置くと、途中で決めた人が戻る手間をかけることになります。区切りの末尾にも、同じ案内を置きます。
長さは段で決まる
ページが長くなるかどうかは、買い手が確かめたいことの数で決まります。
価格が高い商材や、導入に社内調整が必要な商材は、確かめることが多くなり、ページも長くなります。逆に、すぐに試せる商材は、短くても足ります。
紙、メール、ページで違うところ
| 媒体 | 読まれる場面 | 書き方の違い |
|---|---|---|
| 紙のダイレクトメール | 机の上で、封を開けて読む | 冒頭に宛先と悩み、末尾に連絡先と返信の方法 |
| メール | 一覧から件名を見て開く | 件名に読み手と悩みを入れ、本文は短く |
| ウェブページ | 検索や広告から着地して読む | 区切りごとに見出しを付け、途中でも申し込める |
どの媒体でも、4つの段の順番は同じです。変わるのは、段をどう区切って見せるかだけです。
煽り型の原稿を、段差型に書き直す
同じ素材でも、書き方で読まれ方は変わります。ここでは、保守点検サービスを例に、書き直しの前と後を並べます。実在する会社の文章ではありません。私が書いた型です。
煽り型の原稿
次のような原稿は、法人向けの手紙でよく見かけます。
衝撃の事実。御社の設備は、いつ止まってもおかしくありません。今すぐ対策しないと、取り返しのつかない損失が出ます。今月中にお申し込みの先着10社だけ、特別に点検をお受けします。
読み手の不安は刺激されますが、情報がほとんどありません。何を点検するのか、どう進むのか、なぜ先着10社なのかが分かりません。
段差型に書き直した原稿
同じサービスを、4つの段に沿って書き直します。
工場の設備が、予告なく止まる。そのたびに、生産計画を組み直している担当者の方へ。
当社は、設備の点検を年に2回、決まった項目で行います。まず現場を30分ほど拝見し、点検の対象を一緒に決めます。点検後は、状態を3段階で記した報告書をお渡しします。
対応できるのは、県内の工場にある回転機器と配管です。電気設備の点検は、提携する別の事業者をご紹介します。
まずは、現場を拝見する30分のご相談から承ります。この段階で、契約をお願いすることはありません。
不安をあおる言葉はありません。それでも、読み手は「自分の悩みで、進め方も分かり、できないことも書いてある」と判断できます。
書き直しで変わった点
| 項目 | 煽り型 | 段差型 |
|---|---|---|
| 冒頭 | 衝撃の事実 | 読み手の状況の描写 |
| 進め方 | 書かれていない | 30分の現場確認から報告書まで |
| 根拠 | 先着10社という数 | 対応範囲と、対応できないこと |
| 申し込み | 今月中という圧力 | 契約を求めない30分の相談 |
セールスレターで起きやすい失敗:煽る、盛る、期限を乱用する
4つの段を意識していても、書いているうちに次の失敗に流れやすくなります。
不安を、解決より長く書いてしまう
悩みの段で、不安を細かく描写しすぎることがあります。読み手が「その通りだ」と思う手前で止め、すぐに道筋の段へ進みます。
目安は、悩みの段が全体の2割から3割に収まっていることです。それを超えると、読み手は疲れます。
実績を、大きく見せようとして盛る
「多数の実績」「業界トップクラス」といった言葉は、読み手に何も伝えません。
件数が少なくても、事実を書いたほうが伝わります。「過去3年間に、県内の製造業12社の点検を担当しました」のように、期間と範囲を添えます。
期限や数量を、根拠なく使う
「今月末まで」「先着10社」といった限定は、実際にそうなっている場合だけ使えます。
実際には、期限を過ぎても同じ条件で受けているのであれば、書いてはいけません。この点は、次の章で景品表示法の面から確かめます。
失敗を、表でまとめる
| 失敗 | 読み手の反応 | 直し方 |
|---|---|---|
| 不安の描写が長い | 疲れて閉じる | 悩みの段を全体の2割から3割に収める |
| 実績を「多数」と書く | 具体的に分からず、信用しない | 期間と範囲を添えた数に置き換える |
| 根拠のない期限を書く | 後から事実と違うと気づき、信用を失う | 実際の期限だけを書く |
| 申し込みの案内が複数ある | 選べず、何もしない | 1つに絞る |
表示の決まりと景品表示法:消費者庁のページで確かめた範囲
セールスレターは、商品やサービスの内容や条件を示す文章です。そのため、景品表示法の「表示」にあたる場面があります。
この章では、消費者庁のページを2026年10月26日に開いて確かめた範囲だけを書きます。
確かめたページ
開いたのは、消費者庁の次の3つです。
- 景品表示法の「表示規制の概要」のページ
- 同じく「優良誤認とは」のページ
- 同じく「有利誤認とは」のページ
さらに、消費者庁が公表している「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」のPDFも開きました。
セールスレターの文面ごとに、可否を直接示している箇所は、今回開いた範囲では見つけられませんでした。そのため、文面ごとの判断はここでは書きません。
優良誤認表示とは
「表示規制の概要」のページには、優良誤認表示について、商品・サービスの品質、規格その他の内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示、と書かれています。
もう1つ、事実に相違して、競争業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示も、同じ優良誤認表示に含まれます。
手紙に「他社より優れた品質」と書くときは、この2つ目に当たらないかを確かめる必要があります。
有利誤認表示とは
同じページには、価格その他の取引条件についての不当表示として、有利誤認表示も説明されています。
実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると誤認される表示が、その1つです。ページには「他社商品の2倍の内容量です」と表示していたが、実際は他社と同程度だった、という例が載っています。
限定数や期限、割引の条件を手紙に書くときは、こちらに当たらないかを確かめます。
故意でなくても規制の対象になる
「優良誤認とは」のページには、次の説明があります。
「なお、故意に偽って表示する場合だけでなく、誤って表示してしまった場合であっても、優良誤認表示に該当する場合は、景品表示法により規制されることになりますので注意が必要です。」
「有利誤認とは」のページにも、同じ趣旨の説明があります。悪意がなくても、事実と違えば対象になりえます。
根拠の資料を求められることがある
「優良誤認とは」のページには、不実証広告規制の説明もあります。
商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示が優良誤認表示にあたるかを判断する必要があるとき、消費者庁長官は、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。
資料が提出されないか、合理的な根拠と認められないときは、措置命令との関係では不当表示とみなされる、と書かれています。
手紙に書く効果や性能の言葉は、いつでも資料を示せる状態にしておくと安全です。
課徴金は、対象商品の売上額に3%を乗じた額
消費者庁の「第8条に関する考え方」には、課徴金額の算定方法が書かれています。
課徴金額は、課徴金対象期間に取引をした、対象商品または役務の売上額に、3%を乗じて得た額とされています。課徴金の額の加算がされる場合は4.5%です。
この資料の中で、対象期間は最長で3年間とされています。長く使い続けた誤った表示ほど、対象になる売上額が積み上がることになります。
手紙の表現を点検する表
| 手紙に書きたい表現 | 確かめること | 根拠が出せないとき |
|---|---|---|
| 「品質が最も高い」「他社より優れる」 | 比べた相手と基準を説明できるか | 比較を外し、自社の事実だけを書く |
| 「効果がある」「改善する」 | 効果を示す資料が手元にあるか | 事例の範囲と条件の説明にとどめる |
| 「今月末まで」「先着10社」 | 実際にその期限と数で運用しているか | 書かない |
| 「他社の半額」「業界最安」 | 比べた相手と時点を示せるか | 自社の価格の事実だけを書く |
確かめられなかったことと、専門家への相談
今回開いたページでは、個別の文面の可否や、実際の処分の数を確かめていません。
自社の手紙に不安がある場合は、書く前に、消費者庁の景品表示法の相談窓口や、弁護士などの専門家に確認してください。
解決策:「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、手紙から引き算する
煽り型の手紙を直す作業は、言葉を足す作業に見えます。実際は、引き算です。
私たちが提案している「売れるサイトはみな謙虚」の考え方は、ウェブサイトから要素を引き、訪れた人が迷わず次の一歩に進める形へ組み直すことです。セールスレターにも、そのまま当てはまります。
謙虚とは、会社を小さく見せることではない
謙虚と聞くと、遠慮して控えめに書くことだと受け取られがちです。
ここでの謙虚は、読み手が知りたいことに答える順番に、自社が語りたいことを並べ替えることです。できることを小さく書くわけではありません。事実は事実として、必要な量を書きます。
引き算の基準は3つの問い
手紙の各文について、次の3つを確かめます。
- 読み手の悩みに関係があるか
- 事実として、書く根拠が手元にあるか
- この文がなくても、次の段へ進めるか
3つのどれにも当てはまらない文は、削ります。煽りの言葉は、たいてい3つ目で落ちます。
引き算の前と後を、表で見る
| 削るもの | 理由 | 代わりに置くもの |
|---|---|---|
| 「衝撃」「驚き」の見出し | 悩みが見えない | 読み手と悩みを入れた見出し |
| 「今だけ」の連呼 | 事実の根拠がない | 実際の受付期間や条件 |
| 「多数の実績」 | 数が分からない | 期間と範囲を添えた件数 |
| 申し込みの案内の乱立 | 選べない | 1つの案内と、申し込み後の流れ |
業種の型で見る:セールスレターの例文
ここからは、法人向けの業種の型ごとに、4つの段を使った例文を示します。いずれも私が書いた型で、実在する会社の文章ではありません。
製造業の型:試作の受注
図面を送ると、最小ロットの条件で断られる。そのたびに、別の会社を探し直している設計担当の方へ。
当社は、金属部品の試作を1個から承っています。図面を拝見し、2営業日以内に、加工の可否と必要な変更点をお返しします。
過去3年間に、県内の機械メーカー8社の試作を担当しました。量産は、一定の数量を超える場合は提携工場をご紹介します。
まずは図面1枚から、お送りください。送付後に営業の電話をすることはありません。
悩み、道筋、根拠、申し込みの順になっています。「量産は紹介」と、できない範囲も書いています。
士業の型:社会保険労務士の顧問相談
就業規則を作り直したいが、何から手を付ければよいか分からない総務担当の方へ。
まず現在の規則を拝見し、法改正への対応が必要な箇所を一覧にしてお返しします。次に、会社の実態に合わせた修正案を作り、社内で説明するための資料を添えます。
当事務所は、従業員30名から100名規模の会社の就業規則の改定を、これまでに複数件担当してきました。個別の紛争の代理は、対応していません。
最初の30分の相談で、現状をうかがいます。この段階での契約はお願いしません。
「複数件」という曖昧な言葉を使う場合は、手元に件数の記録があるかを確かめます。記録があるなら、件数を書くほうが伝わります。
保守・清掃の型:ビルの定期点検
清掃業者を変えても、トイレや共用部の汚れの苦情がなくならない管理会社の方へ。
当社は、巡回の時刻と作業内容を写真つきで毎回報告します。苦情があった箇所は、次の巡回で重点的に対応します。
対応しているのは、延べ床面積が一定以内の中小規模のビルです。大規模施設の清掃は、受けていません。
まず、現場を30分ほど拝見する機会をください。見積もりをお出しするのは、その後です。
制作・IT導入の型:業務システムの相談
紙とメールで回している申請業務を、システムにしたいが、何を決めればよいか分からない担当の方へ。
最初に、現在の業務の流れを図にします。次に、システム化する範囲を一緒に決め、優先順位をつけた提案をお出しします。
これまでに、社員50名以下の会社の申請業務を担当してきました。既製品を使うほうが合う場合は、そう申し上げます。
業務の流れを確認する1時間の打ち合わせから、始められます。
4つの例文に共通する形
| 業種の型 | 悩みの描写 | できない範囲の書き方 |
|---|---|---|
| 製造業 | 試作を断られ続けている | 量産は提携工場を紹介 |
| 士業 | 規則を作り直す手順が分からない | 個別の紛争の代理は対応しない |
| 保守・清掃 | 苦情がなくならない | 大規模施設は受けていない |
| 制作・IT導入 | 何を決めればよいか分からない | 既製品が合う場合はそう伝える |
4つとも、悩みの描写から始まり、できない範囲を書き、申し込みの先で何が起きるかを示しています。
手紙を書き上げる手順
4つの段と例文が分かったら、自社の手紙に落とし込みます。担当者が1人で進める場合の手順です。
| 手順 | 作業 | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 1 | 問い合わせのメールや商談メモから、お客様の言葉を10件書き出す | 1時間から2時間 |
| 2 | 読み手を1人の典型に決める | 30分 |
| 3 | 4つの段に、1段落ずつ素材を割り当てる | 1時間 |
| 4 | できる範囲、できない範囲、対応した実績の範囲を書く | 1時間 |
| 5 | 煽りの言葉と、根拠のない言葉を削る | 30分 |
| 6 | 声に出して読み返し、冒頭の3行を確かめる | 30分 |
手順1:お客様の言葉を集める
最初の作業は、手紙を書かずに、お客様の言葉を集めることです。
問い合わせのメールの1行目、商談の最初の発言、電話の第一声を拾います。書き手が考えた悩みより、お客様が実際に口にした言葉のほうが、読み手に届きます。
手順2:読み手を1人に決める
読み手を「中小企業の経営者全般」にすると、悩みの描写がぼやけます。
典型の1人を決めます。「県内の機械メーカーで、試作を依頼する設計担当の方」のように、役割と状況まで絞ります。
手順3から5:書いて、引き算する
4つの段に素材を割り当てたら、まず一気に書きます。
書き上げたあとで、先ほどの3つの問いで引き算をします。書く段階で削りながら進めると、手が止まります。
手順6:声に出して読む
最後に、声に出して読みます。口に出して詰まる文は、読み手も詰まります。
冒頭の3行だけ、別の人に読んでもらうのも有効です。自分の話だと感じたかを聞きます。
他のページとの関係:型を借りるか、考え方を借りるか
セールスレターは、ほかの文章術や、ページの作り方と隣り合っています。関係を整理しておくと、どれを先に読めばよいかが決まります。
古典的な型との違い
セールスレターの構成には、古くから使われている型がいくつかあります。代表的なものに、問題、共感、解決、絞り込み、行動の順に進めるパソナの法則があります。
この記事の4つの段は、その考え方を煽らずに使えるようにまとめ直したものです。型の各段の意味と、法律面の注意点は、「パソナの法則で煽りっぽくならない書き方 各段の意味と法律の注意点」で詳しく整理しています。
ブランドストーリーとの関係
手紙の中に、会社の成り立ちを入れたくなることがあります。入れる場合は、読み手の悩みの後ろに、理由として置きます。
主人公を読み手に置く書き方は、「ブランドストーリーの作り方 創業の苦労話が読まれない理由と書き直し方」で書いています。
ランディングページとの関係
セールスレターの4つの段を、ページの区切りに置き換える考え方は、この記事で紹介しました。ページ全体の作り方や、必要な部品の考え方は、「ランディングページの作り方」に整理しています。
| 文章 | 主な役割 | この記事との関係 |
|---|---|---|
| セールスレター | 悩みから申し込みまでを1本でつなぐ | 本記事の主題 |
| パソナの法則 | 古典的な5段の型 | 型の意味を確かめる記事 |
| ブランドストーリー | 判断の理由を渡す | 根拠の段の素材になる |
| ランディングページ | 1つの行動に絞ったページ | 手紙をページに置き換える先 |
公開した後の確かめ方
手紙は、出して終わりにせず、反応を見て直します。
見る数字を、2つに絞る
見るのは、手紙を読んだ人のうち、申し込みの案内まで進んだ人の割合と、実際に申し込んだ人の割合です。
ウェブページなら、ページの末尾まで読まれた割合と、申し込みのボタンが押された割合です。紙やメールなら、返信や問い合わせの件数です。
直す場所は、段の順に探す
反応が悪いときは、4つの段を上から順に疑います。
| 起きていること | 疑う段 | 直し方 |
|---|---|---|
| 冒頭で閉じられる | 悩み | 冒頭の3行を、お客様の言葉に差し替える |
| 途中で離れる | 道筋 | 進め方を番号つきの手順にする |
| 最後まで読まれるが申し込まれない | 根拠・申し込み | 対応範囲と、申し込み後の流れを足す |
| 申し込みが出るが、すぐ辞退される | 申し込み | 事前に伝えていない条件がないか見直す |
一度に直すのは、1か所だけ
複数の場所を一度に直すと、何が効いたのか分からなくなります。1回に直すのは1か所にして、反応の変化を記録します。
よくある質問
Q. セールスレターは、読み手を洗脳して買わせる文章ですか。
いいえ、そのようには使いません。読んでいる時点で、読み手は何らかの関心を持っています。手紙の役割は、その関心を、買うかどうかの判断材料に変えることです。
Q. セールスレターは、どのくらいの長さが必要ですか。
長さは、4つの段に答えるために必要な量で決まります。高額で社内調整が必要な商材ほど、確かめることが増え、長くなります。
すぐに試せる商材なら、短くても足ります。
Q. 「今だけ」「先着」といった限定は、使ってはいけませんか。
実際にそうなっている場合は、書けます。期限を過ぎても同じ条件で受けている場合は、有利誤認表示に当たるおそれがあります。
消費者庁の「有利誤認とは」のページでは、誤って表示した場合も規制の対象になると説明されています。
Q. 実績の数字が少なくて、見せ方に困っています。
少ない数字でも、期間と範囲を添えて事実として書きます。「過去3年間に、県内の製造業8社を担当」のように書けば、数が少なくても信用の材料になります。
数字を大きく見せる言葉より、事実の細かさのほうが、買い手には伝わります。
Q. 生成AIに下書きを書いてもらってもいいですか。
下書きには使えます。ただし、素材を渡さずに頼むと、一般論の煽り文句が返ってきます。
お客様の言葉、対応できる範囲、できない範囲を渡し、返ってきた原稿の事実を1文ずつ確かめてください。公開する責任は、会社にあります。
まとめ
セールスレターは、読み手の悩みから申し込みまでの段差を低くする手紙です。煽る言葉の量で成果は決まりません。
構成は、悩み、道筋、根拠、申し込みの4つの段です。法人の買い手は、社内に説明できる材料を探しているため、事実、範囲、条件を書いた手紙が読まれます。
ウェブページに使うときは、4つの段をページの区切りに対応させ、申し込みの案内を区切りの末尾に置きます。
表示の決まりについて、消費者庁のページでは、故意でなく誤って表示した場合も規制の対象になると説明されています。課徴金は、対象商品の売上額に3%を乗じた額とされています。限定や効果の言葉は、根拠が出せる範囲だけ書きます。
「売れるサイトはみな謙虚」の考え方で、読み手が知りたいことに答える順番に、手紙を組み直してください。
今日できる点検
| 点検すること | 確かめ方 | 結果の使い方 |
|---|---|---|
| 冒頭の3行の主語 | 「当社は」で始まっていないか見る | 読み手の状況の描写に差し替える |
| 煽りの言葉 | 「衝撃」「今だけ」「必ず」を検索する | 事実と条件に置き換える |
| 実績の書き方 | 「多数」「圧倒的」を検索する | 期間と範囲を添えた数にする |
| 期限と数量 | 書いた期限と数が、実際の運用と一致しているか確認する | 一致しなければ削る |
| できない範囲 | 手紙の中に1つ以上書かれているか見る | 書かれていなければ足す |
| 申し込みの案内 | 案内が何種類あるか数える | 1つに絞る |
| 申し込み後の流れ | 申し込むと何が起きるかが書かれているか見る | 最初の連絡の内容と時間を書く |
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