先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。「自社サイトへのアクセスは月に数千ある。解析ツールを開けば、たしかに人は来ている。それなのに問い合わせも資料請求も、ほとんどゼロのまま何ヶ月も過ぎていく。付き合いのあるSEO会社に相談すると『もっとアクセスを増やしましょう』と言われる。でも、今でも人は来ているのに、数を増やして何が変わるのか分からない。いったい何が悪いのか、自分でも見当がつかない」。
読んだ瞬間、胸のあたりが少し重くなりました。この方は、決してサボっているわけではありません。むしろ真面目にサイトを育て、解析を見て、業者の言葉にも耳を傾けている。やるべきことをやっているつもりなのに、結果だけが出ない。この「努力の方向は合っているはずなのに空回りする」感覚こそ、いちばん人を疲れさせます。
まず、はっきりお伝えしたいことがあります。あなたのサイトにアクセスがあるのに問い合わせが来ないのは、集客量が足りないからではありません。人はもう来ています。月に数千という数字は、広告費を積み上げてやっと出るような数字です。すでにあなたのサイトの前には、行列とまでは言わずとも、確実に人が立っている。問題は、その立っている人たちが、店の前を通り過ぎるように去っていく点にあります。
ここで一度、ネットの外の光景に置き換えてみます。駅前に一日数百人が通る立地の店を構えたとします。ショーウィンドウの前で足を止める人もいる。でも誰もドアを開けて中に入ってこない。このとき、店主が取るべき行動は「もっと人通りの多い場所に引っ越す」ことでしょうか。おそらく違います。ウィンドウに何が並んでいるのか、この店で何が買えるのか、入ったら何が起きるのか、通行人にまるで伝わっていない。だから足を止めた人すら回れ右をしてしまう。あなたのサイトで起きているのは、これとほぼ同じことです。
アクセス数は、来店客数を数えているだけの指標です。そこには「来た人がどう感じ、なぜ帰ったのか」という肝心の情報が一切含まれていません。にもかかわらず、多くの経営者がこの数字だけを毎朝眺め、上下に一喜一憂し、下がれば「増やさなければ」と焦る。増やすための費用を払う。そしてまた、増えたアクセスの大半が問い合わせに至らないまま去っていく。この循環に入り込むと、売上は伸びないのに経費だけが静かに膨らんでいきます。
私は仕事柄、中小企業のサイトを数多く拝見してきました。そのなかで確信したことがあります。売上に悩む会社のサイトほど、内容が「自分たちの言いたいこと」で埋め尽くされている。会社の沿革、代表の想い、業界での実績、独自の技術。どれも嘘ではないし、誇っていい話です。ところが訪問者が本当に知りたいのは、そこではありません。「この会社は、私の困りごとを分かってくれるのか」「頼んだら、私はどう楽になるのか」。この一点に答えていないサイトは、どれだけアクセスを集めても素通りされ続けます。
もう少し具体的に、あるサービス業の会社を例にします。この会社は月に4,000人ほどが検索から訪れていました。トップページには立派な社屋の写真、代表の挨拶、創業からの歩み、受賞歴が丁寧に並んでいます。読み物としては悪くありません。ところが訪問者が最初に知りたい「料金はいくらか」「どんな流れで進むのか」「うちのような小さな依頼でも受けてくれるのか」は、どこを探しても見当たらない。問い合わせフォームまでたどり着く人は、月にわずか数人。しかもそのフォームは入力項目が15個もあり、住所や役職まで最初から求められる。人は情報を得られないまま、しかも聞かれてもいないのに個人情報を差し出せと言われ、静かに離れていきました。この会社に足りなかったものは、あと1,000人の追加アクセスでしょうか。違います。すでに来ている4,000人の疑問に答える一枚の説明でした。
アクセスがあるのに問い合わせがゼロという状態は、裏を返せば伸びしろの塊です。集客の入り口はもう機能しています。ゼロから人を集める苦労は済んでいる。あとは、来ている人が帰る理由を一つずつ取り除くだけで、数字は動き始めます。むしろ、まだ人が来ていない会社よりも、あなたのほうが成果に近い場所に立っています。悩みの深さと、解決までの距離は、必ずしも比例しません。
この記事では、アクセスという数字の幻想を一度きれいに手放してもらいます。そのうえで、来た人が離脱せず問い合わせまでたどり着く導線をどう設計するのか、順を追って具体的にお話しします。小手先のテクニックの寄せ集めではありません。訪問者を主人公に置き換えるという、たった一つの視点の転換が土台になります。
読み終えたとき、あなたはもう「アクセスを増やしましょう」という言葉に頷かなくなっているはずです。増やすべきは数ではありません。今そこにいる数千人を、一人でも多く「問い合わせボタンを押す人」に変える設計です。まずは、なぜ人が来ているのに帰ってしまうのか、その構造から丁寧にほどいていきましょう。
なぜ人が来ているのに、誰も問い合わせないのか
アクセスがあるのに成約しないサイトには、共通した構造的な欠陥があります。集客の入り口ばかりが立派で、入ってきた人を出口まで運ぶ通路が存在しない。この歪みは、たいてい三つの犯人によって作り込まれます。順番に正体を暴いていきます。
犯人その一 「とにかくアクセスを増やす」と繰り返すSEO業者
最初の犯人は、PVの増加だけを成果として報告してくるSEO会社です。彼らの月次レポートを開くと、検索順位が何位上がった、表示回数が何割増えた、流入キーワードが何個増えた、という数字が並びます。グラフは右肩上がり。一見すると仕事はきちんと進んでいるように見えます。
ところが、その報告書のどこにも「問い合わせが何件増えたか」は書かれていません。理由は単純で、彼らが握っている責任範囲が「サイトに人を連れてくるところまで」だからです。連れてきた人が問い合わせるかどうかは、契約の対象外になっている。だから彼らは、成果が出ないと相談するたびに同じ処方箋を出します。「流入がまだ足りません。もっと記事を増やし、もっとアクセスを取りましょう」。
これは、水の抜けるバケツにひたすら水を注ぎ足す作業に似ています。穴が空いたままなら、注ぐ量を倍にしても溜まる水は増えません。増えるのは水道代、つまりあなたの広告費と外注費だけです。悪意があるとは限りません。彼らの商品がアクセスであり、アクセスを売るのが仕事だから、アクセスを勧める。それだけのことです。売り手の得意分野と、あなたの本当の課題が、最初からずれているのです。
犯人その二 数字は見せるのに理由を語らないアクセス解析
二番目の犯人は、意外にもアクセス解析ツールそのものです。正確には、解析ツールの使い方が「量の確認」で止まっている状態を指します。多くの人は解析画面を開くと、まずセッション数やユーザー数を見て、先週より増えた減ったで気分を上下させます。ここで思考が止まる。
解析ツールが本当に教えてくれるのは、量ではなく「来た人のふるまい」です。どのページで直帰したのか。問い合わせフォームの入力途中で何割の人が離脱したのか。スマホで開いた人の滞在時間が極端に短くないか。この振る舞いの層にこそ、売れない原因が生の形で記録されています。ところが多くの現場では、この宝の山が毎日開かれては閉じられ、誰にも読まれていません。
アクセス数という一つの数字だけを見続けることは、体温計だけで健康診断を終わらせるようなものです。熱がないから健康だと言い張っているうちに、血液検査でしか見つからない不調が静かに進行していく。サイトも同じで、PVという体温だけが正常でも、フォームという心臓のあたりで人がバタバタ倒れている状態は、量の指標には映りません。
犯人その三 「数を増やせば売れる」という古い神話
そして最も根が深い三番目の犯人は、あなた自身の頭のなかにいます。「露出が増えれば売上も比例して増えるはずだ」という、マスメディア時代から続く思い込みです。テレビCMを大量に流せば認知が広がり売れた時代の記憶が、いまだにWebの判断基準として残っている。
しかし検索から来る訪問者は、CMをぼんやり眺める視聴者とはまるで違います。彼らは明確な困りごとを抱え、答えを探して能動的にやってきます。目的意識が強い分、期待に応えないサイトを切り捨てる速度も容赦ない。三秒で「ここには自分の答えはない」と判断し、ブラウザの戻るボタンに指をかけます。この鋭い来訪者に対して量の論理をぶつけても、母数が増えるだけで、去っていく人の割合は一ミリも変わりません。
この神話が厄介なのは、短期的にはほんの少しだけ正しく見える瞬間がある点です。アクセスを二倍にすれば、成約率が同じでも問い合わせの絶対数はいくらか増えます。その増えた数件を見て「やはり量だ」と確信を深める。ところがコストは倍かかっているので、一件あたりの獲得単価は悪化しています。売上の伸びより経費の伸びが速い状態が、成功体験の顔をして忍び寄る。数字のマジックに気づかないまま、翌年も翌々年も同じ方針で予算を積み、気づいたときには広告をやめた瞬間に問い合わせがゼロに戻る、麻薬のような構造ができあがっています。
三つの犯人を、成約という一点から見比べてみます。
| 犯人 | 見せる数字 | 隠れている真実 |
|---|---|---|
| PV重視のSEO業者 | 順位・表示回数・流入数 | 問い合わせ件数は報告範囲の外 |
| 量で止まる解析の使い方 | セッション数・ユーザー数 | 離脱地点と不安は読まれていない |
| 数を増やせば売れる神話 | 増えた問い合わせの絶対数 | 悪化した獲得単価と広告依存 |
三人の犯人に共通するのは、全員が「入り口」の話しかしていない点です。誰一人として、入ってきた人が出口までたどり着く通路の話をしていない。あなたが何ヶ月も感じてきた違和感の正体は、まさにここにあります。次の章では、この違和感を抱えたまま多くの人が突き進んでしまう、遠回りの解決策を見ていきます。あなたが今まさに手を出そうとしている一手が、そこに含まれているかもしれません。
多くの人がここで間違える 遠回りの三つの手
原因が入り口ではなく通路にあると分かっていても、いざ結果が出ないと、人はつい入り口をいじりたくなります。ここで選ばれがちな手が、実はどれも問題を先送りにし、費用だけを積み増していきます。私が現場で何度も見てきた「よくある遠回り」を、末路まで含めて具体的にたどります。
遠回り一 さらに広告費とSEO予算を上乗せする
いちばん多いのがこれです。問い合わせが来ないのは母数が足りないせいだと考え、リスティング広告を追加する。SNS広告を回す。SEO記事の本数を月10本から30本へ増やす。数字上のアクセスは、たしかに増えます。増えた瞬間だけは「動いている」という手応えがあり、少し安心もします。
問題は翌月の請求書です。仮に成約率が0.1%のサイトで、月3,000アクセスから9,000アクセスへ広告で三倍にしたとします。成約率が0.1%のままなら、問い合わせは月3件が9件に増える計算です。ところが広告経由の訪問者は検討の温度が低い層も多く、実際の成約率はしばしば0.1%を下回ります。結果として、問い合わせは6件程度しか増えないのに、広告費だけが毎月きっちり三倍かかり続ける。粗利に対して獲得コストが見合わなくなり、やめるにやめられない出血が始まります。
穴の空いたバケツに三倍の勢いで水を注いでも、漏れる速度が三倍になるだけです。順序が逆なのです。先に穴をふさげば、今の水量のままでも溜まり始めます。
遠回り二 サイト全体を「見た目」で刷新する
次に多いのが、デザインのリニューアルです。「古臭いから問い合わせが来ないのだろう」と考え、制作会社に数十万から百万円を投じて全面刷新する。トップに大きな動画が流れ、洗練された写真が並び、アニメーションが心地よく動く。社内の評判は上々です。経営者も「ようやく恥ずかしくないサイトになった」と満足する。
半年後、成約数はほとんど変わっていません。理由は明快で、刷新したのは見た目の美しさであって、訪問者の頭のなかにある不安には一つも答えていないからです。かっこよさは、訪問者の「これは自分の悩みを解決してくれるのか」という問いには無力です。むしろ凝った演出で読み込みが重くなり、スマホで開いた人が表示を待ちきれず離脱し、成約数が刷新前より落ちる例すらあります。見た目の満足は社内を向いた満足で、訪問者の判断基準とは別の座標にあります。
遠回り三 小手先のCTAテクニックを継ぎ足す
三つ目は、ノウハウ記事で見つけた部分改善の寄せ集めです。ボタンの色を赤に変える。「今すぐ」の一言を足す。ポップアップを出す。限定と煽る。一つひとつは有効な場面もあります。ところが土台の設計が「会社の言いたいこと」で埋まったままボタンだけ赤くしても、押す理由のない人が押さないという事実は変わりません。
| 打ち手 | 変わるもの | 変わらないもの |
|---|---|---|
| 広告・SEOを増やす | 訪問者の総数 | 帰る人の割合と獲得コスト |
| デザイン刷新 | 見た目の印象と社内満足 | 訪問者の不安への回答 |
| CTAの色や文言 | クリックの誘目性 | 押す理由そのものの有無 |
三つの遠回りに共通する落とし穴は、どれも「訪問者が何を不安に思って帰るのか」を一度も調べていない点です。原因を診ないまま対症療法を重ねるから、費用は積み上がるのに成約率という体質は据え置かれる。気づけば、最初に感じた「増やして意味があるのか」という素朴な疑問が正しかったと、請求書の金額が証明してくれます。
なぜ、これほど多くの会社が同じ遠回りにはまるのでしょうか。理由は、どの手も「動いている実感」を即座にくれるからです。広告を出せばアクセスのグラフが動く。デザインを変えれば画面が新しくなる。ボタンをいじれば手を動かした達成感が残る。人は結果が出ないと不安になり、不安を打ち消すために「何かした」という感覚を求めます。その感覚を安く買える手ほど、選ばれやすい。ところが訪問者の不安を調べる作業は、地味で、成果が出るまで時間がかかり、動いている実感が乏しい。だから後回しにされ続け、いちばん効く一手だけが手つかずで残ります。
もう一つ、遠回りを長引かせる要因があります。それは、施策を売る側と、成約に責任を持つ側が別人だという構造です。広告代理店は広告の成果を、制作会社はデザインの完成を、それぞれ納品すれば役割を終えます。誰も「問い合わせが増えたか」を最後まで背負っていない。責任の切れ目が、そのまま成果の切れ目になる。だからこそ、成約という出口を誰か一人が最初から最後まで見通す視点が要ります。
遠回りをこれ以上増やさないために必要なのは、視点をぐるりと反転させることです。自分たちが何を伝えたいかから、来た人が何に困り何を確かめたいのかへ。次の章で、その反転を具体的な設計に落とし込みます。ここからが、この記事の本題です。
真の解決策 来た人を主人公に置き換える設計
ここで視点を反転させます。追いかけるのはアクセスの量ではありません。今そこにいる数千人のうち、離脱していた人を一人でも多く問い合わせまで運ぶこと。この一点に絞ると、やるべきことは驚くほど具体的になります。
まず、去った人が何につまずいたかを読む
最初にやるのは、新しい施策を足すことではありません。記録を読むことです。アクセス解析には、去った人の足跡が残っています。どのページで直帰が多いか。フォームのどの項目で入力が止まるか。スマホとパソコンで滞在時間にどれだけ差があるか。ヒートマップを入れれば、訪問者がどこまで読んで、どこで指を止めて画面を閉じたかまで見えます。
たとえばフォームの入力開始率は高いのに完了率が二割なら、犯人はフォームの長さや不安です。料金ページの直帰が突出して高いなら、価格の見せ方か、価格に見合う価値の説明が抜けています。数字を「増えた減った」で眺めるのをやめ、「この人はここで何に困って帰ったのか」という問いで読み直す。それだけで、直すべき場所が名指しでわかります。
訪問者の不安に、聞かれる前に答えておく
問い合わせに至らない訪問者の頭のなかは、口には出さない小さな不安で埋まっています。「うちの規模でも対応してくれるのか」「相場からかけ離れた金額を請求されないか」「問い合わせたら、しつこく営業されるのではないか」「本当にうちの業種を分かっているのか」。この不安が一つでも解けないまま残ると、指は戻るボタンへ向かいます。
売れるサイトは、この不安に先回りして答えを置いています。料金の目安を数字で示す。対応できる会社の規模や業種をはっきり書く。「無理な営業はしません」と明言する。よくある質問で、訪問者が言いにくい疑問を代わりに口にして答える。導入企業の声を、業種と課題つきで載せる。訪問者が心のなかで next に抱く問いを予測し、その答えを一段ずつ階段のように並べていく。問い合わせボタンは、その階段を上りきった先に、自然に置かれます。
独自メソッド「売れるサイトはみな謙虚」
ここで、私がたどり着いた一つの考え方をお伝えします。「売れるサイトはみな謙虚」。謙虚とは、会社が自分を主語にして語るのをやめ、お客様を物語の主人公に置くという姿勢です。
売れないサイトの主語は、いつも会社です。「当社は創業30年」「私たちの技術は業界随一」「弊社の強みは総合力」。語り手が壇上で自分を語り続け、客席の訪問者は置き去りにされます。売れるサイトは、この関係を静かにひっくり返します。主人公はお客様。会社は、主人公が困難を乗り越えるのを助ける案内役に回ります。
具体的には、文章の主語を入れ替えます。「当社は高品質な施工を提供します」を、「築20年を過ぎて水回りの不安が出てきたあなたが、あと20年安心して住めるようにします」へ。前者はこちらの手柄の話、後者は相手の未来の話です。訪問者は後者を読んで初めて、「この会社は、自分のことを分かっている」と感じます。この「分かってもらえた」という感触が、問い合わせの引き金を静かに引きます。
謙虚な設計は、次の順序で組み立てます。第一に、訪問者が抱える悩みを、相手より先に言葉にして共感を示す。第二に、その悩みがなぜ起きているのかを整理し、あなたを理解している案内役だと示す。第三に、解決までの道筋を、相手が迷わないくらい具体的な手順で見せる。第四に、行動しなかった場合に続く困りごとと、行動した先に待つ楽な未来を、静かに描く。最後に、次の一歩として問い合わせという小さな行動を、無理なく差し出す。会社の自慢はどこにも要りません。要るのは、主人公が前に進むための道案内だけです。
先ほどのサービス業の会社が、この設計に切り替えたと想像してみます。トップの一番上には、社屋の写真の代わりに「築20年を過ぎ、水回りの不具合が増えてきたお住まいの方へ」という一行を置きます。その下に、料金の目安を三つの価格帯で示す。次に「ご相談から工事完了までの5ステップ」を、日数の目安つきで並べる。さらに「小さな依頼でもお受けします」「その場で契約を迫ることはしません」と明記する。よくある質問には「見積もりは無料ですか」「工事中は家にいる必要がありますか」といった、訪問者が電話口で聞きにくい疑問を先に並べて答える。フォームの入力項目は15個から4個へ減らし、まずは名前とざっくりした相談内容だけで送れるようにする。アクセスは4,000人のまま、追加の広告費はゼロ。それでも問い合わせは動き出します。訪問者が帰る理由を、一つずつ潰したからです。
謙虚な設計には、もう一つ大切な効き目があります。それは、こちらが選ばれるだけでなく、こちらも相手を選べるようになる点です。悩みと解決の道筋を具体的に語るサイトには、その内容に納得した人だけが問い合わせてきます。相場を理解し、進め方に合意した状態で連絡が来るので、商談は驚くほどスムーズに進みます。量を追うサイトが「とりあえず聞いてみた」という冷やかしを大量に呼び込むのと対照的に、謙虚なサイトは温度の高い相談だけを静かに集めます。問い合わせの数だけでなく、質まで変わっていきます。
この設計に切り替えると、アクセスの数字は一つも増えなくても、問い合わせが動き始めます。同じ数千人が、去る人から相談する人へ変わるからです。増やすべきだったのは母数ではありません。来た人の心のなかで「ここなら分かってくれる」が生まれる確率です。最終章で、この設計を回し続けるための考え方と、実際に寄せられる質問への答えをまとめます。
結論 増やすのは数ではなく「分かってもらえた」の確率
もう一度、最初の悩みに戻ります。アクセスは月に数千あるのに問い合わせがゼロ。業者は増やせと言う。この状況で本当に足りなかったものは、集客の量ではありませんでした。足りなかったのは、来た人の不安に答え、その人を主人公として迎える設計です。
やることの順序は決まっています。まず解析を「量の確認」から「去った人の理由の解読」へ切り替える。次に、訪問者が口に出さない不安を書き出し、聞かれる前に答えを置く。そして文章の主語を、会社からお客様へ入れ替える。この三つを回すだけで、同じ数千人のアクセスから問い合わせが生まれ始めます。新しい広告費は要りません。今あるアクセスは、もう十分な資産です。
「増やしましょう」という言葉に頷く前に、一度だけ立ち止まってください。増やす前に、今来ている人が満足して帰れているか。その問いに胸を張って「はい」と言えないうちは、母数を増やしても漏れる水が増えるだけです。順番を守れば、費用をかけずに体質から変えられます。
この改善には、大がかりな投資も、専門の制作会社への発注も、必ずしも要りません。今日からできるのは、自分のサイトを訪問者になったつもりで一度たどってみることです。トップページを開いて、料金がすぐ分かるか。どんな流れで進むのか説明があるか。自分と同じ悩みの人に向けた言葉があるか。問い合わせフォームは、気軽に送れる長さか。一つでも「ない」があれば、そこが今のあなたの伸びしろです。数千のアクセスは、その伸びしろを試す十分な母数として、すでに毎月あなたのもとへ届いています。
よくある質問
Q. アクセスはあるのに問い合わせがゼロです。まず何から手をつければいいですか。
A. 広告やSEOを追加する前に、既存アクセスの解析を読むことから始めてください。直帰の多いページと、フォームの離脱地点を特定します。人はもう来ているので、集客の入り口ではありません。来た人が帰ってしまう出口の一点に原因が集中しています。そこを名指しできれば、直すべき場所が絞られ、費用をかけずに改善に着手できます。まず一週間、数字を「量」ではなく「去った理由」として読み直すだけでも、次の一手が見えてきます。
Q. SEO業者に「アクセスを増やしましょう」と言われます。増やす意味はありますか。
A. 今のサイトの成約率が極端に低いなら、増やす前に成約率を先に上げるべきです。成約率が0.1%のサイトにアクセスを三倍注いでも、問い合わせは三倍のコストで少し増えるだけで、漏れる割合は変わりません。先に来た人の不安へ答える設計を整え、成約率を引き上げてから量を増やすと、同じ広告費でも成果が大きく変わります。順序を逆にすると、費用だけが膨らむ出血が続きます。増やす判断は、出口を直した後で構いません。
Q. デザインをリニューアルすれば問い合わせは増えますか。
A. 見た目の刷新だけでは、ほとんど変わりません。かっこよさは、訪問者が抱える「自分の悩みを解決してくれるのか」という不安には答えないからです。凝った演出で表示が重くなり、スマホ利用者が離脱して逆効果になる例もあります。刷新するなら、写真やアニメーションの前に、料金の目安、対応範囲、営業姿勢といった訪問者の不安への回答を先に設計してください。中身が整った上での見た目の改善であれば、はじめて成果に結びつきます。
Q. 「売れるサイトはみな謙虚」とは、結局どういう意味ですか。
A. サイトの主語を会社からお客様へ入れ替える設計思想です。「当社は高品質です」という自分の手柄の話をやめ、「あなたがこう楽になります」という相手の未来の話へ書き換えます。会社は主人公の座を降り、お客様が困難を乗り越えるのを助ける案内役に回ります。この姿勢に切り替えると、訪問者は「ここは自分を分かってくれる」と感じ、その感触が問い合わせの引き金になります。自慢を並べるより、はるかに人を動かします。
Q. 成約率は、具体的にどのくらいを目指せばいいのですか。
A. 業種や商材で幅がありますが、BtoBの問い合わせ型サイトなら、まず1%を一つの目安に置いてください。月3,000アクセスで成約率0.1%なら問い合わせは月3件ですが、同じアクセスで成約率が1%になれば月30件です。アクセスを10倍にするより、成約率を0.1%から1%へ引き上げるほうが、多くの場合はるかに現実的で低コストです。いきなり1%が難しければ、0.3%、0.5%と段階を刻んでください。数字を追うより、離脱地点を一つ潰すごとに成約率がどう動くかを観察するほうが、改善は速く進みます。
Q. 社内にWebの専任担当がいなくても改善できますか。
A. できます。むしろ最初の一歩は、専門知識よりも現場感覚のほうが役立ちます。お客様から実際によく聞かれる質問、電話で最初に確認される疑問、契約前にためらわれるポイント。これらは営業や現場のスタッフが体で知っています。その生の疑問をサイトの文章に落とし込むだけで、訪問者の不安の大半は先回りして解けます。ツールの操作や細かな設定は後からでも学べますが、お客様が何につまずくかという知識は、あなたの会社の内側にしかありません。そこから始めれば十分です。
来ている人を、去らせないサイトへ
あなたのサイトには、もう人が来ています。足りないのは数ではありません。その人を主人公として迎える設計だけです。「うちのサイトは、来た人の不安に答えられているだろうか」。そう感じたなら、次の一歩として、まずは考え方の全体像に触れてみてください。
売れるサイトの作り方について、さらに詳しくは合同会社謙虚のサイトをご覧ください。
この記事で扱った内容の前提として、手法を増やしても集客が増えない理由もあわせてご覧ください。
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