Googleアナリティクスの管理画面を開いて、数分後にそのまま閉じた経験はないでしょうか。左側にメニューが並び、画面には数字が並び、どれが自社にとって大事なのか分からないまま、タブを閉じる。翌月も同じことをする。中小企業のウェブ担当の現場で、いちばん多く起きているのはこの光景です。
残るのは月次の報告書だけです。訪問数が前月から何パーセント、閲覧数が何件、平均滞在時間が何分何秒。数字はきれいに並んでいるのに、その報告を受けて自社サイトのどこを直すのかが決まらない。報告書のページ数だけが増えて、サイトは去年と同じ形のまま置かれている。指標が足りないからそうなるのかというと、逆です。多すぎるから決まらないのです。
この記事では、見る指標を7つまで減らします。追加の提案は1つもしません。見る数字を減らすほど、次に直す場所は決めやすくなります。あわせて、捨ててよい指標を名前で挙げ、数字が動いたときにそれが本物かどうかを確かめる手順と、見たあとに何を変えるのかまでを1本の線でつなぎます。読み終えたときに、自社サイトで今週触る場所が1つ決まっている状態を目指します。
管理画面を開いて閉じてしまうのは指標が多すぎるからです
GA4には、既定のレポートだけでも数十種類の数字が並びます。ユーザー数、新規ユーザー数、セッション数、エンゲージメントのあったセッション数、セッションあたりの平均エンゲージメント時間、表示回数、イベント数、キーイベント数。それぞれに意味はあります。ただ、意味があることと、中小企業の担当者が毎月見る価値があることは別の話です。
数字が並んでいるだけでは判断はできません
判断が生まれるのは、数字が「ある基準」と比べられたときだけです。先月と比べてどうか、同じ期間の去年と比べてどうか、目標として置いた数と比べてどうか。比較の相手が決まっていない数字は、いくら眺めても判断になりません。訪問数が1,200だったと言われても、それが良いのか悪いのかは、比較の相手がなければ誰にも分かりません。
ところが管理画面は、比較の相手を用意してくれるわけではありません。数字を出すところまでが管理画面の役目で、どれと比べるかを決めるのは見る側の仕事です。指標が30個あると、比較の設計を30回しなければならなくなります。現実には誰もそこまでやらないので、全部を眺めて何も決めずに閉じることになります。
報告書だけが増えて打ち手が変わらない状態
制作会社や広告代理店から毎月レポートが届いている会社もあります。届いたレポートを開くと、色とりどりのグラフが10ページ以上並んでいる。読むだけで20分かかる。そして最後のページに「引き続き改善を進めます」と書いてある。半年たっても、サイトのどのページも書き換わっていない。
これは報告する側が怠けているというより、報告の形が判断につながっていないだけです。数字を並べる形式のレポートは、数字を並べ終えた時点で完成してしまいます。報告書に「今月どこを直したか」と「来月どこを直すか」の欄がなければ、その報告書は判断のための道具になりません。
指標を減らすと決めた人から先に動き出します
見る数字を7つに固定すると、毎回の比較の設計が7回で済みます。7回なら現実に回ります。回るようになると、数字が動いたときに「どこが動いたのか」がすぐ分かるようになります。分かれば、直す場所が決まります。決まれば手が動きます。減らすことは、手抜きの反対側にある選択です。
| いまの自社の状態 | その裏で起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 管理画面を開くが数分で閉じる | 比較の相手が決まっていないので判断が生まれない | 見る指標を7つに固定し、比較相手を前月と前年に決める |
| 毎月レポートは届くが読み流している | 数字を並べる形式が判断の手前で止まっている | 報告書に「今月直した場所」の欄を追加してもらう |
| 訪問数だけを追いかけている | 問い合わせにつながらない流入が混ざったままになっている | 問い合わせの計測を先に整え、率で見る習慣に切り替える |
| 数字が動いた理由が毎回分からない | 見ている指標が多すぎて、どこが動いたか特定できない | 毎日・毎週・毎月で見る数字を分け、点検の順番を固定する |
| 設定を触った記憶がないまま数年たっている | 問い合わせの計測が入っていない可能性が高い | キーイベントの登録状況を今日のうちに確認する |
見る数字は7つに絞れば足ります
中小企業のサイトで、判断につながる数字は7つです。ここでいう中小企業のサイトとは、問い合わせや予約や資料請求を受け取ることが目的の、数十ページから数百ページ規模のサイトを指します。物販を主にしている場合は後述の入れ替え枠で調整します。
7つの内訳と、それぞれが答える問い
指標は、それが答える問いとセットで持たないと使えません。7つそれぞれに、1つの問いを割り当てます。問いが答えられない指標は、その時点で捨てて構いません。
| 見る指標 | この数字が答える問い | 動いたときに疑う場所 |
|---|---|---|
| キーイベント数(問い合わせ等の発生数) | 今月、成果は何件出たのか | フォームの動作、電話番号の掲載位置、案内文の分かりやすさ |
| キーイベント率(成果の発生率) | 来た人のうち何割が動いたのか | 入口ページの内容と、来ている人の関心のずれ |
| セッション数 | そもそも人は来ているのか | 検索での見え方、広告の配信状況、外部からの紹介 |
| 参照元とメディア(流入経路の内訳) | どこから来たのか | 特定経路の増減、見慣れない参照元の混入 |
| ランディングページ(入口ページ) | 最初にどのページを見たのか | 入口になっているページの内容と導線 |
| キーイベントにつながった入口ページ | 成果を生んでいるのはどのページか | そのページに似た内容を増やすか、他ページへ横展開するか |
| 国と地域 | その数字は日本の見込み客のものか | 海外からの自動的なアクセスの混入 |
なぜ7つで足りるのか
7つの内訳を見ると、成果の絶対数、成果の率、来訪の量、来訪の経路、来訪の入口、成果を生む入口、数字の信頼性という並びになっています。ウェブサイトの改善で問われることは、この6つと1つの検算にほぼ収まります。何件取れたか、取れる確率はどうか、母数は足りているか、母数はどこから来ているか、どのページが入口か、どのページが効いているか。そして、その全部が本物の数字かどうか。
8つ目以降の指標は、この7つで異常が見つかったあとに、原因を掘るための道具として使います。掘る前から持っていると、掘る場所が決まらないまま道具だけが増えます。常設で見る棚と、必要なときだけ取り出す棚を分けるのが、指標を減らすということの実態です。
業種で入れ替えてよい枠は1つです
7つのうち、入れ替えてよいのは「キーイベントにつながった入口ページ」の枠だけです。物販が主体なら、ここを購入額と購入件数に差し替えます。実店舗への来店が目的なら、地図アプリへの遷移や電話発信の件数に差し替えます。求人が目的なら、応募フォームの到達数に差し替えます。残りの6つは業種を問わず共通です。
| サイトの目的 | 差し替える枠に入れる数字 | その数字で判断すること |
|---|---|---|
| 問い合わせ・見積依頼 | 成果を生んだ入口ページの上位 | 効いているページの型を他ページへ広げるか |
| 物販 | 購入件数と購入額 | 売れている商品ページに人を集められているか |
| 来店・予約 | 電話発信と地図アプリへの遷移 | 店舗情報のページが十分に見られているか |
| 求人 | 応募フォームの到達数 | 募集要項のページで離脱が起きていないか |
| 資料請求 | 資料の請求完了と資料ページの表示数 | 資料の存在が伝わる位置に案内が置かれているか |
毎日見る数字は2つだけにします
毎日管理画面を開く必要はありません。ただ、毎日見ておくと事故を早く止められる数字が2つあります。この2つは合計で1分もかかりません。
問い合わせの発生数を毎日見る理由
1つ目は、キーイベントとして登録した問い合わせの発生数です。毎日見る目的は、増えた減ったを判断することではありません。ゼロが3日以上続いていないかを見るためです。普段は毎日1件から数件入っている会社で、3日続けてゼロなら、フォームが壊れているか、送信ボタンが押せなくなっているか、迷惑メール扱いで届いていないかを疑います。
フォームの不具合は、外から見ても分かりません。見た目は正常に表示され、入力もでき、送信ボタンも押せる。それでも送信処理の途中で止まっていて、問い合わせが1件も届いていない、という状態は実際に起こります。数字がゼロで止まっていることだけが、そのサインになります。
計測そのものが生きているかを毎日見る理由
2つ目は、そもそも計測が動いているかどうかです。サイトを改修したとき、テーマを更新したとき、プラグインを入れ替えたときに、計測用のタグが消えることがあります。消えると翌日から数字がゼロに近づきます。数日気づかないと、その期間のデータは二度と戻りません。
確認は、リアルタイムの画面で今この瞬間の利用者が1人以上いるかを見るだけで済みます。自分でサイトを開いて、自分が数えられているかを見る方法でも構いません。毎日でなくとも、サイトに何か手を入れた日の翌日は必ず見る、という決め方でも十分です。
毎日見ても打ち手が変わらない数字
訪問数を毎日見るのは、時間の使い方としてもったいない選択です。日ごとの訪問数は曜日で大きく揺れます。土日に落ち、月曜に戻る。この揺れを毎日追いかけても、月曜に取れる打ち手はありません。曜日の周期を平らにするには、最低でも1週間の単位でまとめる必要があります。
| 毎日の点検項目 | 見る場所 | おかしいと判断する目安 |
|---|---|---|
| 問い合わせの発生数 | レポートのキーイベントの一覧 | 普段1件以上ある会社で3日以上ゼロが続く |
| 計測が動いているか | リアルタイムの画面 | 営業時間中に何度見ても利用者がゼロ |
| 訪問数(毎日は見ない) | 週次でまとめて見る | 曜日の揺れがあるため日ごとの増減は判断材料にしない |
| 順位(毎日は見ない) | 月次でSearch Console側を見る | 日々の上下は自然な変動の範囲に収まる |
毎週見る数字は3つです
週に1回、10分だけ取ります。曜日を固定してください。月曜の朝でも金曜の夕方でも構いませんが、決めた曜日を動かさないことが大事です。動かすと見ない週が生まれ、見ない週が続くと元に戻ります。
1つ目は流入経路の内訳です
どこから来ているかを見ます。検索からなのか、広告からなのか、SNSからなのか、他社サイトからの紹介なのか、URLを直接入力しているのか。見るのは割合の変化です。先週まで検索が7割だったのに、今週は他サイトからの紹介が5割を占めている、という変化があれば、そこには何か理由があります。
理由が良いものであることもあります。どこかで紹介されて自然に人が来ている場合です。理由が悪いこともあります。見慣れないドメインからの機械的なアクセスが増えている場合です。どちらなのかは、この段階では分かりません。分からないまま先に進まず、後述する検算をかけます。
2つ目は入口ページの上位です
訪問者が最初に開いたページの一覧を見ます。多くの中小企業サイトでは、トップページと、いくつかのサービス紹介ページと、いくつかの記事ページが上位に並びます。ここで見るのは順位の入れ替わりです。今まで入口に上がってこなかったページが急に上位に来ていたら、そのページが何かの検索で拾われ始めた可能性があります。
逆に、これまで安定して入口だったページが下がっていたら、検索での見え方が変わった可能性があります。この場合は月次のSearch Console側の確認まで判断を保留します。1週の下がりで慌てて書き換えると、元に戻ったときに何が効いたのか分からなくなります。
3つ目はエンゲージメント率の急な落ち込みです
エンゲージメント率は、一定時間以上ページを見た、複数ページを見た、何らかの反応があった、といった条件を満たしたセッションの割合です。この数字を「良い悪い」の評価に使うのは勧めません。業種でもページ構成でも大きく変わるので、他社と比べる意味がないからです。
使うのは、自社の中での急な落ち込みを見つけるときだけです。先週まで6割前後だったものが、今週3割に落ちていたら、質の低い流入が大量に混ざった疑いがあります。ここでも、判断の前に検算をかけます。
| 毎週見る数字 | 見る場所 | 動いていたときの読み方 |
|---|---|---|
| 流入経路の内訳 | 集客のトラフィック獲得 | 割合が入れ替わっていたら参照元の中身を1階層掘る |
| 入口ページの上位 | エンゲージメントのランディングページ | 新顔が上がっていれば内容を確認し、下がりは月次まで保留する |
| エンゲージメント率 | 集客またはエンゲージメントの各レポート | 自社の平常値から急落したときだけ疑い、他社比較には使わない |
| 問い合わせの週合計 | キーイベントの一覧 | 週で数えると曜日の揺れが消えて傾向が見える |
毎月見る数字は2つに絞ります
月に1回、30分取ります。月次で見るのは、週次では判断できないものだけです。1ヶ月分をまとめないと形が見えない数字が2つあります。
問い合わせの発生率を率で見ます
問い合わせの件数だけを追いかけると、良くなったのか悪くなったのかが分からなくなります。今月10件、先月8件。増えています。ところが訪問数が先月の3倍になっていたなら、実際には効率が大きく落ちています。件数は母数の影響を受けるので、率と並べて初めて読めます。
率で見ると、判断の向きが変わります。率が下がって件数が増えているなら、来る人の質が薄まっています。広告や記事で広く集めた結果、関心の遠い人が増えたときにこうなります。この場合に手を入れるのは、ページの文章より先に、集める対象のほうです。率が上がって件数が横ばいなら、ページは効いているので母数を増やしにいきます。
| 件数と率の組み合わせ | 起きていること | その月に手を入れる場所 |
|---|---|---|
| 件数が増え、率が下がった | 母数が増えた分で件数が伸びている | 集める対象を絞る。広げた経路の中身を見直す |
| 件数が横ばい、率が上がった | ページは効いているが母数が足りない | 効いている入口ページに似た内容を増やす |
| 件数も率も下がった | 入口の内容と来訪者の関心がずれている | 入口ページの見出しと最初の3行を書き直す |
| 件数も率も上がった | 直近の施策が噛み合っている | 何を変えた月なのかを記録し、同じ型を横に広げる |
| 件数がゼロ、率もゼロ | 計測が入っていないか、途中で外れている | キーイベントの登録と発火を先に確認する |
検索での見え方は別の場所で見ます
もう1つは、検索でどう見えているかです。これはGA4の中では分かりません。Search Consoleで見ます。どの言葉で検索されて、何回表示されて、何回クリックされたか。GA4はクリックされたあとの世界だけを持っているので、クリックされる前の世界はそちらに任せます。この分担は後の章で詳しく扱います。
月次で見た結果は1枚にまとめます
30分の最後に、A4で1枚の記録を作ります。項目は5つで足ります。今月の問い合わせ件数、今月の発生率、来訪の量、先月から変わった点、来月に直す場所。この最後の1行がない記録は、翌月に読み返しても何も思い出せません。
中小企業が見なくてよい指標があります
ここからが、この記事のもう半分です。減らすというのは、見る指標を選ぶことと同じくらい、見ない指標を決めることを指します。以下に挙げるものは、中小企業のサイト改善の場面では、見ても打ち手が変わらないことが多い数字です。
平均エンゲージメント時間
1人あたりの滞在が2分14秒から2分38秒に伸びた。この情報から、来月何をするかを決められるでしょうか。決められません。長く読まれることが良いのか、短時間で目的の情報にたどり着けたほうが良いのかは、ページの役割によって逆になります。会社概要のページは短くていいし、料金の考え方を説明するページは長く読まれたほうがいい。1つの数字に評価をまとめること自体に無理があります。
この数字が役に立つ場面はあります。特定の1ページを書き換えた前後で比べるときです。全体の平均として毎月眺めるのは、時間の使い道として弱いという話です。
デバイスやブラウザの細かい内訳
スマートフォンが7割、パソコンが3割。ここまでは知っておく価値があります。どちらの画面で読まれる前提でページを作るかが変わるからです。ただ、ブラウザの種類の内訳や、基本ソフトのバージョン別の割合まで見る必要はありません。それを見て手を入れる場面は、表示崩れの調査のときだけです。調査が必要になってから開けば足ります。
年齢や性別の推定データ
この項目は推定値であり、条件を満たさないと表示されません。中小企業のサイトでは、母数が小さすぎて表示自体がされないことも珍しくありません。仮に表示されたとしても、40代男性が多いと分かったところで、サイトのどこを直すかは決まりません。決まるとしたら、それは元から持っていた顧客像の確認にすぎません。
直帰率
GA4の直帰率は、エンゲージメントのなかったセッションの割合として定義されています。つまりエンゲージメント率の裏返しです。裏返しの数字を2つ並べて見ても、判断の材料は増えません。どちらか片方で足ります。この記事ではエンゲージメント率のほうを採っています。
リアルタイム
今この瞬間に何人見ているかは、見ていて楽しい数字です。ただ、そこから来月の打ち手は出ません。計測が生きているかの確認と、何かを公開した直後に反応があるかを見る用途に限定してください。日常的に開く画面にすると、時間だけが溶けます。
| 捨ててよい指標 | 見ても打ち手が変わらない理由 | 代わりに見るもの |
|---|---|---|
| 平均エンゲージメント時間(全体平均) | ページの役割によって長短の評価が逆になる | 書き換えた1ページの前後比較にだけ使う |
| ブラウザ・基本ソフトの内訳 | 表示崩れの調査以外に使い道がない | スマートフォンとパソコンの比率だけ把握する |
| 年齢・性別の推定 | 推定値で母数が小さく、直す場所が決まらない | 問い合わせ内容そのものから顧客像を読む |
| 直帰率 | エンゲージメント率の裏返しで情報が重複する | エンゲージメント率を1つだけ見る |
| リアルタイム | 今の人数から来月の判断が生まれない | 計測の生死確認と公開直後の反応確認に限定する |
| イベント数の総数 | 自動収集される項目が混ざり、増減の意味が読めない | キーイベントとして登録した項目だけを見る |
数字が動いたとき本物かどうかを確かめます
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。指標を減らしても、残した数字の読み方を間違えると、判断はまとめて狂います。そして読み間違いは、増えたときにこそ起きます。
国で絞ると景色が変わります
訪問数が前月の5倍になっていた。喜ぶ前にやることが1つあります。国と地域で絞り込んで、日本からのアクセスだけを表示してください。それだけで景色が変わることがあります。
実際に立ち会った例で、全体の8割近くが海外からの自動的なアクセスで占められていたサイトがありました。そのまま全体の数字を読むと、流入が5倍に伸びた優秀な月に見えます。日本だけに絞ると、実態は前月とほとんど変わっていませんでした。この状態で「流入が伸びたので今の方針を続けよう」と決めてしまうと、1ヶ月分の打ち手をまるごと失います。どこのサイトでも起こりうる話です。
なぜ自動的なアクセスが混ざるのか
Googleと業界団体が共同で管理しているリストに載っている既知のボットは、GA4側で自動的に除外される仕組みになっています。ただし、この仕組みは既知のものにしか効きません。リストに載っていない自動アクセスや、参照元を偽装して送りつけてくる種類のものは、通常のアクセスとして数えられます。除外の仕組みを手動で追加したり、外したりする操作は用意されていません。
混ざるものには、いくつか特徴があります。特定の国や地域に偏っている。同じページばかりを踏んでいる。滞在がほぼゼロで、複数ページを見ていない。参照元の欄に、見覚えのない文字列が並んでいる。1つでも当てはまったら、その増加は疑ってかかる価値があります。
検算の手順は4つです
手順を固定しておくと、毎回同じ判断ができます。増えたときも、減ったときも、同じ順番で確かめます。
| 疑うサイン | 確かめ方 | 本物だったときの読み方 |
|---|---|---|
| 訪問数が急に数倍になった | 国と地域で日本のみに絞って同じ期間を見る | 日本のみでも伸びていれば、経路の内訳を次に見る |
| エンゲージメント率が半分以下に落ちた | 落ちた期間の入口ページと参照元を並べる | 特定ページへの流入が伸びた結果なら内容を確認する |
| 参照元に見慣れないドメインが並ぶ | そのドメイン経由のセッションの滞在と回遊を見る | 滞在があり複数ページを見ていれば実在の紹介と判断する |
| 特定の1ページだけが突出した | そのページの流入経路を1階層掘る | 検索経由ならSearch Console側でクエリを確認する |
| 問い合わせだけが減った | フォームの送信を自分で試し、着信を確認する | 送信が届いているなら入口ページの内容変化を疑う |
除外はレポート側とタグ側で考え方が分かれます
混入が確認できたときの対処は2通りあります。1つは、レポートを見るときに毎回フィルタで日本のみに絞る方法です。設定を触らずに済み、元のデータも残るので、後から見直せます。手間はかかりますが、小さなサイトならこれで足ります。
もう1つは、タグの側で計測そのものを止める方法です。Googleタグマネージャーを使っている場合、国の情報を取得して日本以外では計測用のタグを動かさない、という組み方ができます。レポートは常にきれいな状態になりますが、止めた分のデータは残りません。あとから「実は必要だった」となっても戻せないので、判断は慎重にしてください。
どちらを選ぶにしても、大事なのはやり方を決めて記録に残すことです。去年の数字と今年の数字で、除外の条件が違っていると、比較そのものが成り立たなくなります。
問い合わせを計測していないと何も判断できません
ここまでの話には前提があります。問い合わせが数えられていることです。数えられていなければ、7つのうち3つが使えなくなります。使えない状態で残りの4つを見ても、量の話しかできません。
キーイベントがないサイトで起きること
成果が数えられていないと、判断の基準は訪問数しか残りません。すると「訪問数を増やす」以外の目標が立たなくなります。訪問数を増やす方針だけで走ると、関心の遠い人を集める方向に進みがちです。数字は伸びて、問い合わせは増えない。報告は明るいのに、営業の実感は暗い。この食い違いは、成果の計測がないところで必ず起きます。
逆に、成果さえ数えられていれば、他の指標が多少ずさんでも判断はできます。整えるべき順番があるとすれば、指標を選ぶことより、成果を数えることのほうが先です。
計測の付け方は受け方によって変わります
問い合わせの受け方はいくつかあります。それぞれで計測の付け方が変わります。
| 問い合わせの受け方 | 計測の付け方 | 自分で確認する方法 |
|---|---|---|
| 送信後に完了ページへ移動する形 | 完了ページの表示をキーイベントとして登録する | 実際に送信し、完了ページのURLが数えられているか見る |
| 同じページ内で完了が表示される形 | 送信ボタンの押下をタグ側で拾って登録する | 送信直後にリアルタイムの画面で発生を確認する |
| 電話番号のリンク | 電話番号リンクの押下を登録する | スマートフォンで押し、発生が記録されるか見る |
| 外部の予約サービスへ移動する形 | 移動先リンクの押下を登録する | 押下後に発生が1件増えるかを見る |
| メッセージアプリの友だち追加 | 追加用ボタンの押下を登録する | 押下の記録と、追加された人数を突き合わせる |
計測できているかを自分で確かめます
設定を入れたと言われても、動いているかどうかは自分で確かめてください。手順は簡単です。スマートフォンから自社サイトを開き、実際に問い合わせフォームを送信します。そのあとリアルタイムの画面を開き、自分の送信が1件として数えられているかを見ます。数えられていなければ、設定は入っていません。
この確認は、サイトを改修するたびにやってください。フォームの仕組みを入れ替えたとき、完了ページのURLを変えたとき、テーマを更新したとき。どれも計測が外れる原因になります。外れたことに気づくのは、たいてい数ヶ月後の報告書を作るときです。
電話とメッセージアプリをどう数えるか
中小企業では、問い合わせの多くが電話で来ることがあります。サイトに書かれた番号を見て、そのまま手元の電話でかける人もいます。この場合、リンクの押下は記録されません。完全に数えることは無理だと割り切ったうえで、押下できる形にしておくと拾える分は拾えます。スマートフォンで見たときに番号がタップできる形になっているかを確認してください。
数え漏れがあること自体は問題ではありません。問題は、数え漏れがあることを忘れて数字を読むことです。電話の比率が高い会社では、記録された成果の件数を実際より少なく見積もることになります。営業側が受けた電話の件数と、記録された数を月に1度突き合わせておくと、どのくらいずれているかの感覚が持てます。
Search ConsoleとGA4は役割が違います
この2つを混同したまま使っている会社は多くあります。どちらもGoogleが出している無料の分析ツールで、どちらもサイトの数字を見せてくれる。ただ、見せている世界が違います。境目は「検索結果でクリックされた瞬間」です。
クリックの前と後で分かれます
Search Consoleは、検索結果に自社のページが表示されてからクリックされるまでを持っています。どんな言葉で検索されたか、何回表示されたか、何位に出たか、何回クリックされたか。ここまでです。クリックされたあと、その人がサイトの中で何をしたかは分かりません。
GA4は逆です。サイトに来てからの動きを持っています。どのページを見たか、どれだけ滞在したか、問い合わせまで進んだか。ただし、来る直前にどんな言葉で検索したかは、原則として分かりません。検索エンジン側がその情報を渡さないからです。
| 知りたいこと | どちらで見るか | 具体的に開く場所 |
|---|---|---|
| どんな言葉で検索されているか | Search Console | 検索パフォーマンスのクエリ一覧 |
| 検索結果で何位に出ているか | Search Console | 検索パフォーマンスの平均掲載順位 |
| 表示されているのにクリックされていないか | Search Console | 表示回数とクリック数を並べて見る |
| 来た人がどのページを見たか | GA4 | エンゲージメントのページとスクリーン |
| 問い合わせまで進んだか | GA4 | キーイベントの一覧 |
| 成果を生んだ入口はどこか | GA4 | ランディングページとキーイベントを組み合わせる |
順位が下がったのか、クリックされなくなったのか
検索からの流入が減ったとき、原因は大きく2つに分かれます。表示される回数そのものが減ったのか、表示はされているのにクリックされなくなったのか。この切り分けはGA4だけでは絶対にできません。GA4に見えるのは、クリックされて来た人の数だけだからです。
Search Consoleで、表示回数とクリック数を並べて期間比較します。表示回数が落ちているなら、検索での順位や取り上げられ方が変わっています。表示回数が横ばいでクリックだけ落ちているなら、検索結果に出ている見出しや説明文が読まれていない、あるいは周りに出ている他の結果のほうが押されています。この場合に直すのは、ページの中身より先に、検索結果に出る見出しと説明文です。
2つを突き合わせる場面
月に1度だけ、2つを突き合わせます。突き合わせるのは、成果を生んでいる入口ページについてだけです。そのページがどんな言葉で拾われているかをSearch Console側で確認し、その言葉と、ページに書いてある内容がずれていないかを見ます。
ずれは意外なほどよく起きます。料金の考え方を説明したページが、まったく別の一般的な言葉で拾われていて、来た人の期待に応えられていない。こういうときは、拾われている言葉に合わせて見出しを整えるか、その言葉のための別のページを用意するかの判断になります。
数字を見たあと何を変えるのかまでを1本の線にします
指標を減らす目的は、時間の節約ではありません。数字と打ち手を1対1でつなぐことです。つながっていない数字は、いくら見ても報告書の材料にしかなりません。
1つの数字に1つの打ち手を紐づけます
あらかじめ「この数字がこう動いたら、ここを触る」と決めておきます。決めておくと、数字を見た瞬間に手が動きます。決めていないと、数字を見てから何をするか考え始めることになり、たいていは考えている途中で別の仕事が入って終わります。
| 数字の動き | 疑う場所 | その週に変えること |
|---|---|---|
| 問い合わせがゼロで数日続く | フォームの送信処理と着信 | 自分で送信して確認し、壊れていれば即日直す |
| 発生率が下がって件数が伸びた | 集めている対象の広がりすぎ | 広げた経路を1つ止めるか、入口ページの対象を書き直す |
| 入口ページに新顔が上がった | そのページの内容と次の導線 | そのページの下部に問い合わせへの案内を1つ足す |
| 成果を生む入口が1ページに偏っている | 他ページの導線の弱さ | 効いているページの構成を、近いテーマの1ページに写す |
| 表示回数は同じでクリックが減った | 検索結果に出る見出しと説明文 | そのページの見出しと説明文を書き直す |
| 海外からの流入が急増した | 数字の信頼性 | 日本のみで見る運用に切り替え、判断をやり直す |
変えたら必ず日付とともに記録します
いつ、どのページの、何を変えたか。この3つを1行で残してください。表計算でも、社内の共有メモでも構いません。記録がないと、翌月に数字が動いたときに、何が効いたのかを説明できなくなります。説明できないと、同じことをもう一度やる判断もできません。
記録の粒度は粗くて構いません。「サービス紹介のページの最初の3行を書き直した」で十分です。細かく書こうとすると続きません。続かない記録は、無いのと同じです。
打ち手は1ヶ月に1つに絞ります
同じ月に3ヶ所を同時に変えると、数字が動いたときにどれが効いたのか分からなくなります。分からないまま次の月も3ヶ所変えると、永遠に分からないままです。1ヶ月に変えるのは1ヶ所と決めると、半年で6つの答え合わせができます。3ヶ所ずつ変えて18ヶ所触った会社より、この6つのほうが翌年に残ります。
月次の報告書を1枚に減らします
指標を減らしたなら、報告書もそれに合わせて減らします。むしろ、報告書のほうから先に減らすほうが、社内では話が早いこともあります。
載せる項目は5つです
問い合わせの件数、発生率、来訪の量、先月から変わった点、来月に直す場所。この5つだけで1枚に収まります。グラフは1つあれば十分です。件数の推移を12ヶ月分並べたものを1つ。それ以上は要りません。
| 報告書の項目 | 載せる・載せない | 理由 |
|---|---|---|
| 問い合わせの件数と発生率 | 載せる | 成果そのものであり、他のすべての判断の起点になる |
| 来訪の量(日本のみ) | 載せる | 母数が足りているかを見る。国で絞った値であることを明記する |
| 先月から変わった点 | 載せる | 数字の変化と、実際に行った作業を結びつける |
| 来月に直す場所 | 載せる | これがないと報告書は判断の道具にならない |
| 全ページの表示回数一覧 | 載せない | 読む人が判断に使えない。必要なときだけ管理画面で見る |
| ブラウザ・基本ソフト別の内訳 | 載せない | 表示崩れの調査以外に使い道がない |
| 年齢・性別の推定 | 載せない | 推定値であり、直す場所が決まらない |
報告書の最後に必ず書く1行
「来月は◯◯のページの△△を直します」。この形の1行を最後に置きます。主語と対象と動作が入っていれば、どんな書き方でも構いません。この1行を書くために、その月の数字を見ているのだと考えてください。書けなかった月は、数字の見方のどこかが空回りしています。
指標を減らす運用を続けるための決め事
やり方を決めても、続かなければ元に戻ります。戻る理由はだいたい共通しています。時間を取っていない、担当が決まっていない、途中で項目が増えていく。この3つを先に潰しておきます。
見る時間を先にカレンダーへ入れます
週次は10分、月次は30分。この2つを、実際の予定表に繰り返しの予定として登録してください。「時間があるときに見る」という決め方をすると、時間がある週は永遠に来ません。予定に入っていれば、忙しい週でも10分は取れます。
見る人を1人に決めます
複数人で見ると、誰も見なくなります。見る人を1人に決めて、その人が週次の10分と月次の30分を担当します。担当が休んだ週は飛ばして構いません。飛ばした週があること自体は問題になりません。担当がいない状態が続くことのほうが問題です。
項目を増やしてよいのは3ヶ月に1度です
運用していると、あれも見たい、これも見たいという声が出てきます。その都度足していくと、半年で元の数十項目に戻ります。増やす相談は3ヶ月に1度だけ、と決めておきます。そして増やすときは、必ず1つ捨てます。合計の数を7つに固定したまま中身を入れ替える、という決め方が、いちばん長持ちします。
| 戻ってしまう原因 | 起きている状態 | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 時間を取っていない | 忙しい週から順に見なくなる | 週次10分と月次30分を予定表に固定で入れる |
| 担当が決まっていない | 全員が誰かがやると思っている | 見る人を1人に決め、代役も1人だけ決める |
| 項目が増えていく | 半年で元の項目数に戻る | 増やすときは必ず1つ捨て、合計を7つに保つ |
| 数字を見るだけで終わる | 打ち手が出ないまま月が変わる | 報告書の最後に直す場所の1行を必ず書く |
| 変更を記録していない | 何が効いたのか誰も説明できない | 日付とページ名と変更内容を1行で残す |
よくある質問
訪問数がまだ月に数十しかありません。この方法は意味がありますか
意味はあります。むしろ母数が小さいうちのほうが、指標を絞る効果は大きく出ます。数十しかない状態で率を見ても揺れが大きいので、当面は件数と入口ページと国だけを見てください。母数が数百を超えたあたりから、率での判断が使えるようになります。小さいうちにやっておくべきことは、問い合わせの計測を正しく入れておくことです。あとから振り返るときに、その期間のデータが残っているかどうかで差が出ます。
制作会社に任せているので自分では見ていません。それでも問題ありませんか
任せること自体は問題ありません。ただし、届いた報告書の最後に「来月どこを直すか」が書かれているかは、自分で確かめてください。書かれていなければ、書いてもらうよう依頼します。数字を集めることと、直す場所を決めることは別の作業です。前者だけを受け取っている状態が長く続くと、費用に対して何が変わったのかを説明できなくなります。
全体の数字と、日本だけの数字と、どちらを正としますか
日本の見込み客に向けたサイトなら、日本だけの数字を正とするのが自然です。大事なのは、どちらを正とするかを決めて、それを変えないことです。ある月は全体、別の月は日本だけ、という見方をすると、比較が成り立たなくなります。決めたら、報告書にも「日本のみの値」と明記してください。読む人が半年後に見返したときに、条件が分かるようにしておきます。
エンゲージメント率は何パーセントあれば良いのでしょうか
目安の数字を持つことは勧めません。業種でもページの作りでも大きく変わるので、他社の平均と比べても判断になりません。この数字は、自社の中での急な落ち込みを見つけるためだけに使ってください。平常時の値を3ヶ月ほど記録しておけば、それが自社の基準になります。基準から大きく外れた月だけ、原因を掘ればよいという使い方です。
過去のデータが古い形式のままです。今から整えても間に合いますか
今から整えるべきです。過去のデータを遡って作り直すことはできませんが、これから先のデータは今日の設定で決まります。半年後に「あのとき入れておけばよかった」と思う項目は、たいてい問い合わせの計測です。優先順位としては、問い合わせの計測、次に国での絞り込みの運用、最後に指標の絞り込み、という順で手を付けてください。
今日できる点検
記事を読み終えたところで、10分だけ取って以下を確認してください。1つでも「いいえ」があれば、それが今週直す場所になります。
| 点検する項目 | 見る場所 | 判定の仕方 |
|---|---|---|
| 問い合わせがキーイベントとして登録されているか | 管理のキーイベントの一覧 | 登録済みの項目に問い合わせに当たるものがあるか |
| その計測が今も動いているか | 自分でフォームを送信し、リアルタイムを見る | 送信直後に発生が1件増えるか |
| 先月の数字を日本のみで見たらどうなるか | 国と地域で日本に絞り、先月と比較する | 全体との差が大きければ、日本のみを正に切り替える |
| 成果を生んでいる入口ページを言えるか | ランディングページとキーイベントを並べる | 上位3ページを紙に書き出せるか |
| 先月の報告書に直す場所が書かれているか | 手元の報告書の最後のページ | ページ名と変更内容が具体的に書かれているか |
| 週次10分と月次30分が予定に入っているか | 自分の予定表 | 繰り返しの予定として登録されているか |
まとめ
Googleアナリティクスの画面を閉じてしまう原因は、知識が足りないことではありません。見る対象が決まっていないことです。決まっていないから全部を眺めることになり、全部を眺めると何も決まらない。この記事では、見る数字を7つに固定し、毎日2つ、毎週3つ、毎月2つという分け方で回す形を示しました。
そのうえで、平均滞在時間の全体平均、ブラウザや基本ソフトの内訳、年齢や性別の推定、直帰率、リアルタイムの常時監視といったものを捨てました。捨てた理由はどれも同じで、見ても翌月に直す場所が決まらないからです。
残した数字を読むときには、必ず国で絞って検算してください。海外からの自動的なアクセスが大量に混ざると、流入が数倍に伸びたように見えることが実際にあります。そのまま読むと、1ヶ月分の判断をまるごと間違えます。そして、その手前にもっと大きな前提があります。問い合わせが数えられていなければ、7つのうち3つは使えません。何よりも先に、この計測を入れてください。
検索でどう見えているかはSearch Consoleが持ち、来たあとの動きはGA4が持ちます。境目はクリックの瞬間です。この分担を覚えておくと、流入が減ったときに、順位が落ちたのか、クリックされなくなったのかを切り分けられます。
最後に、数字を見る目的は報告書を作ることではありません。今週どこを直すかを決めることです。1ヶ月に変える場所は1ヶ所に絞り、変えたら日付とともに1行で記録する。この積み重ねが、半年後に6つの答え合わせとして残ります。見る数字を減らした分だけ、手を動かす時間が増えます。まずは、今日の10分で点検の表を上から順に確かめるところから始めてください。
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